説明

定量吐出容器

【課題】 高粘度の内容物を定量吐出することができ、しかも、内容物の詰替えが容易であり、使用後に加温洗浄が容易であるばかりでなく、繰返しの加温洗浄においてもシール部が変形せず、容器の機能が損なわれることがない定量吐出容器を提供すること。
【解決手段】 高粘度内容物用の定量吐出容器として、高粘度の内容物を収容する収容部を備えた容器本体と、容器本体の下部に装着され、シリンダー筒を立設した基板と、内周面を弁座とした吐出筒とを備えた容器基台と、容器本体の上部と容器基台との間に装着され、作動杆と、弁部材を垂設したピストン部材と、ピストン部材のばね受面と、容器基台の基板との間に弾装されたばねとを備えた作動部材と、容器本体の上部に装着された蓋部材とを具備していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定量吐出容器、とくに、高粘度の内容物を定量吐出する吐出容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高粘度の食品を収納し、指で押出し盤を押圧することにより吐出する容器であって、卓上において使用できる容器は、従来から知られている(例えば特許文献1参照)。
しかし、特許文献1に記載されている吐出容器は、内容液の定量吐出ができないという問題があった。
また、キャップ部材と収納容器のノズル部等の分解組立が簡単でなく、食品収納部の洗浄、内容物の詰替えが容易にできないという問題があった。
【0003】
また、高粘度のケチャップ、マスタード等を収納し、所定量吐出するようにした容器であって、ファーストフード店等で使用される吐出容器も、従来から知られている(例えば特許文献2参照)。
しかし、特許文献2に記載されている吐出容器は、全体構造、特に、排口部のピストン装置、弁機構が複雑であるため、分解が簡単にできず、洗浄が容易にできなかった。
使用頻度の激しいファーストフード店等においては、頻繁に洗浄を要求されるが、その都度吐出容器の使用をやめなければならず、不都合が生ずるという問題があった。
【0004】
また、吐出容器の洗浄にあたっては、熱水が用いられるようになっているが、樹脂材料によっては、容器が変形し、繊細なシール部があると、シール機構が損なわれるという問題があった。
【特許文献1】実用新案登録第2503509号公報
【特許文献2】特開平6−247478号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記の問題を解決することを課題として、高粘度の内容物を定量吐出することができ、しかも、内容物の詰替えが容易であり、使用後に加温洗浄が容易であるばかりでなく、繰返しの加温洗浄においてもシール部が変形せず、容器の機能が損なわれることがない定量吐出容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記の課題を解決するために、高粘度内容物用の定量吐出容器として、高粘度の内容物を収容する収容部を備えた容器本体と、容器本体の下部に装着され、シリンダー筒を立設した基板と、内周面を弁座とした吐出筒とを備えた容器基台と、容器本体の上部と容器基台との間に装着され、作動杆と、弁部材を垂設したピストン部材と、ピストン部材のばね受面と、容器基台の基板との間に弾装されたばねとを備えた作動部材と、容器本体の上部に装着された蓋部材とを具備していることを特徴とする構成を採用する。
【0007】
蓋部材の実施例として、蓋部材が、中央部に押下片と蛇腹部材を設けた頂壁を備え、作動部材の押下操作部の頭部が、蓋部材の押下片下面に当接するようにしたことを特徴とする構成を採用する。
【0008】
蓋部材の他の実施例として、蓋部材が、貫通孔を穿孔した頂壁を備え、作動部材の押下操作部が貫通孔から突出するようにしたことを特徴とする構成を採用する。
【0009】
作動部材の弁部材および吐出筒の弁座の実施例として、作動部材の弁部材を、弁部とその端部に設けた膨出部とから構成し、容器基台の吐出筒の内周を、弁部に対応する形状とした弁座としたことを特徴とする構成を採用する。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、シール部材や複雑な弁機構を必要とせず、内容物が高粘度である性質を利用して、構造が単純な弁機構を採用したものである。
そのため、部品点数を少なくし、全体構造も単純にできるので、製造が容易であり、コストを下げることができた。
【0011】
使用にあたって、加温洗浄が容易であるばかりでなく、繰返しの加温洗浄においても変形せず、容器の機能が損なわれることがないものとなった。
また、単純な片手による操作だけで、1回分の吐出量がほぼ一定となるため、迅速に定量吐出ができるようになった。
内容物に粒状のものが含まれている場合であっても、吐出できるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本発明の定量吐出容器について、図面を参照して説明する。
図1において、Aは容器本体、Bは吐出部を具えた容器基台、Cは作動部材、Dは蓋部材である。
【0013】
本発明の定量吐出容器は、容器本体Aが、内部に作動部材Cを挿入して容器基台Bに取着され、内容物を収納した上で、蓋部材Dを被蓋して組立てられ、内容物として、マヨネーズ、ケチャップ、マスタードなどの高粘性の調味料が収納される。
【0014】
容器本体Aは、開口部を備えた蓋部材装着部1と、上部円筒部2と、中間部を膨出させた収容部3と、容器基台Bを装着する基台装着部4とから構成されている。
【0015】
蓋部材装着部1の内周面5は、シール部材としての機能を果たすために平滑な面に形成されており、外周面には、ねじ6が螺設されている。
【0016】
上部円筒部2は、外周面の大きさを使用者が把持できる程度のものとし、内周面は、平滑な面とされている。
その長さについては、作動部材Cのストロークに必要な程度とする。
【0017】
収容部3は、内容物の容量を大きくするために、膨出させた形状のものとするが、洗浄液、および中身を流れやすくするため、緩やかに連続する面としている。
【0018】
基台装着部4の内周面7は、シール部材としての機能を果たすために平滑な面に形成されており、外周面には、ねじ8が螺設されている。
【0019】
図2に示すように、容器基台Bは、基板10と、その外周縁に連設され、上部を取付筒11とし、下部を末広がり状の円筒体とした脚12とからなる基部B1と、基板10の内周縁に沿って設けられたロート状の吐出部B2とを具えている。
【0020】
基板10には、取付筒11の内側にシリンダー筒13が立設されており、その内側は、ばね受面14となっている。
基板10の内周縁には、ばね支持筒15が立設されている。
取付筒11の内周には、容器本体Aの基台装着部4のねじ8に螺合するねじ16が螺設されており、シリンダー筒13の外周は、基台装着部4の内周面7と係合して容器内をシールするようにしている。
【0021】
吐出部B2は、基板10の内周縁に沿って垂設された円錐筒17と、円錐筒17の中央に設けられた開口から垂設された吐出筒18とからなり、吐出筒18の内周面は、弁座19となっており、その下端は、吐出口20となっている。
【0022】
図1、2に示すように、作動部材Cは、容器本体Aの内部を貫通して装着され、上端を押下操作部21とし、その下方に案内部材22を設けた作動杆23と、下面にばね受面24を設けたピストン部材25と、ピストン部材25に連設された弁部材26とから構成されており、撓みにくい比較的硬質の合成樹脂によって一体成形されている。
【0023】
押下操作部21の先端は先細形状とされており、作動杆23は、図3に示すように、断面が薄い十字形のリブ27で構成することによって、小さな断面積でも座屈に耐えることができるようにしている。
案内部材22は、容器本体Aの上部円筒部2の内周面によって摺動自在に案内されるように、リブ27に連設した延長リブ28によって構成されている。
【0024】
ピストン部材25の外周面29は、シリンダー筒13の内周面に往復動自在に係合するように構成されている。
【0025】
相互の寸法については、収容する内容物が、高粘度で、なかには粒状の混雑物もあるため、クリアランスのある係合状態とすることが有効である。
収容する液状物が乳液等の低粘度の液体の場合には、厳密な嵌合状態の採用が要求されるが、高粘度の場合には、クリアランスがあっても流出しにくいため、定量の吐出が可能である。
【0026】
ピストン部材25のばね受面24と、容器基台Bの基板10のばね受面14との間には、ばねSが弾装されている。
ばねSは、圧縮ばねであり、剛性の大きなステンレス鋼製の細いものが使用されている。
【0027】
弁部材26は、ピストン部材25の中央下面に垂設された支持軸30に連設され、弁部31とその端部に設けた膨出部32とから構成されている。
支持軸30は、先細形状に形成されており、弁部31は、支持軸30より大きく拡径され、弁部材26が開かれたときに、内容物の吐出路を大きくすることができる。
【0028】
弁部31は、若干のテーパーが付され、吐出部B2の弁座19と共同してテーパー型弁の弁体としての機能を果たし、膨出部32は、前記弁座19の端部との間でフランジ型弁体としての機能を果たす。
【0029】
本発明における弁部材26は、テーパーを付した弁部31と膨出部32とを組合わせた形状のものを採用したので、弁部31を短縮してストロークを短くしても、膨出部32により封鎖できるので、短いストロークで、高粘度で粒状の混雑物のある内容物を一挙に吐出させ、かつ、容易に封鎖できるという効果を奏するものである。
【0030】
また、開口時において、弁部材26と弁座19との間隙が比較的大きくなるため、内容物のマスタード等に混入している粒状物があっても詰まることがない。
【0031】
図1に示すように、蓋部材Dは、側周壁35と、頂壁36、頂壁36から垂設された密封リング37、頂壁36の中央部に設けられた押下片38と蛇腹部材39とから構成されている。
側周壁35の内周には、蓋部材装着部1の外周面に形成されたねじ6と螺合するねじ40が形成されている。
【0032】
頂壁36の外周縁は、張出部41となっており、密封リング37は、容器本体Aの蓋部材装着部1の内周面5を密封するようになっている。
押下片38は、使用者が親指で押下げるのに適した大きさと形状が適宜選択される。 張出部41は、フランジ状として、使用者の手によって支持して持ち上げ易くする大きさと形状が適宜選択される。
蛇腹部材39は、可撓性を大きくするために薄肉形状が採用される。
【0033】
次に、本発明の定量吐出容器の使用態樣および作用効果について説明する。
本発明の定量吐出容器は、高粘度の内容物、さらには、粒状の混合物を含むようなケチャップやマヨネーズ、マスタード等を定量吐出する容器として使用される。
【0034】
まず、蓋部材Dを開放して、容器本体Aの収容部3、および容器基台Bのシリンダー筒13に内容物を収容する。
この段階においては、弁部材26がばねSにより上方に付勢され、吐出口20が閉鎖されるので、内容物が吐出することはない。
【0035】
吐出にあたっては、図4に示すように、作動部材Cを押下げると、まず、弁部材26が弁座19内で摺動し、作動部材Cのピストン部材25の外周面29が下降する。
次いで、容器基台Bのシリンダー筒13の上端部13aに達すると、弁部31が弁座19から離れ、吐出口20が開口するとともに、ピストン部材25とシリンダー筒13とが嵌合して、ピストンとシリンダーとしての機能を開始し、吐出を開始する。
ピストン部材25が、図5に示すような最下降位置に到達すると、1回分の定量吐出が終了する。
【0036】
本発明においては、ストロークが常に一定の長さであるピストンとシリンダーとの作用により1回分の吐出量が決定されるため、1回分の吐出量がほぼ一定となる。
内容物が低粘度の流体の場合は、弁部材26の移動と同時に自重により流出してしまうため、1回分の吐出量が一定とならないが、本発明においては、内容物が高粘度であるため、弁部材26の移動だけでは吐出しにくいため、1ストロークにおける吐出量をほぼ一定とすることが可能となる。
【0037】
使用者が作動部材Cの押下げを解除すると、ばねSによりピストン部材25が元の位置に復元する。
この位置において、ピストン部材25の外周面29とシリンダー筒13の上端部13aとの間隙から、次回の吐出に必要となる内容物がシリンダー筒13内に流入して、次回の吐出に備える。
【0038】
ピストン部材25が元の位置に復元し、弁部材26が吐出口20を封鎖してしまうまでの間に、ピストン部材25の戻り行程の作用により所定量の空気が内部に吸い込まれるため、内容物が吐出されても、容器本体Aの内部が負圧となることはない。
【0039】
作動部材Cを上下動させるにあたり、作動杆23の案内部材22が、容器本体Aの上部円筒部2の内周面によって摺動自在に案内されているために、円滑な動きとすることができる。
【0040】
本発明の定量吐出容器を分解するには、容器基台Bと蓋部材Dを、容器本体Aとの螺合を解いて取外し、作動部材CとばねSとを取出せばよいだけである。
また、弁機構に繊細な構造を採用していないので、再組立や加温洗浄が容易である。
ファーストフード店等において業務用としての使用にあたり、一回の操作で定量吐出ができるという目的を達成すると同時に、加温洗浄や内容物の詰替えが容易にできるという要求も満足させることができる。
【0041】
容器本体Aの上部円筒部2を把持し、押下片38を親指で押下げるだけで吐出させることができるから、ファーストフード店等における迅速な対応に答えることができる。
【0042】
次に、作動部材Cと蓋部材Dとの構造を変更した変形実施例について説明する。
本実施例は、作動部材Cの押下操作部の先端を丸くして、直接に親指で押下げることができる形状とするとともに、蓋部材に押下操作部が挿入される貫通孔を穿孔したものである。
【0043】
図6に示すように、蓋部材Daは、側周壁45と頂壁46とからなり、頂壁46の中央には、貫通孔47が穿孔されており、押下操作部21aは、該貫通孔47に上下動自在に挿入されている。
押下操作部21aの上端は、貫通孔47からストロークに必要なだけ突出するようにされている。
他の部分の構造については、前記実施形態と同じである。
【0044】
この変形実施例においては、蓋部材Daの構造を簡単にすることができる。
押下操作部21aと蓋部材Daの貫通孔47との間には、押下操作部21aのリブ27によって大きな間隙が生じるが、空気の流通孔として作用し、容器内の圧力の変動に対応することができる。
その他の作用効果については、前記実施形態のそれと同一の作用効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の定量吐出容器は、高粘度の内容物を定量吐出することができ、ケチャップやマスタード等の調味料、食品等の吐出容器として好適に利用できる。
また、化粧料、液体石けん等、その他の高粘度の内容物に対応する定量吐出容器として広く利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明吐出容器の断面立面図である。
【図2】容器基台部分の断面立面図である。
【図3】図1のA−A線における横断面図である。
【図4】作動部材押下時の吐出口の未開状態の説明図である。
【図5】吐出口の開状態の説明図である。
【図6】変形実施例の断面立体図である。
【符号の説明】
【0047】
A 容器本体
B 容器基台
B1 基部
B2 吐出部
C 作動部材
D、Da 蓋部材
S ばね
1 蓋部材装着部
2 上部円筒部
3 収容部
4 基台装着部
5、7 内周面
6、8、16、40 ねじ
10 基板
11 取付筒
12 脚
13 シリンダー筒
14 ばね受け面
15 ばね支持筒
17 円錐筒
18 吐出筒
19 弁座
20 吐出口
21、21a 押下操作部
22 案内部材
23 作動杆
24 ばね受面
25 ピストン部材
26 弁部材
27 リブ
28 延長リブ
29 外周面
30 支持軸
31 弁部
32 膨出部
35、45 側周壁
36、46 頂壁
37 密封リング
38 押下片
39 蛇腹部材
41 張出部
47 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高粘度の内容物を収容する収容部を備えた容器本体と、
容器本体の下部に装着され、シリンダー筒を立設した基板と、内周面を弁座とした吐出筒とを備えた容器基台と、
容器本体の上部と容器基台との間に装着され、作動杆と、弁部材を垂設したピストン部材と、ピストン部材のばね受面と、容器基台の基板との間に弾装されたばねとを備えた作動部材と、
容器本体の上部に装着された蓋部材とを具備していることを特徴とする高粘度内容物用の定量吐出容器。
【請求項2】
蓋部材が、中央部に押下片と蛇腹部材を設けた頂壁を備え、
作動部材の押下操作部の頭部が、蓋部材の押下片下面に当接するようにしたことを特徴とする請求項1記載の定量吐出容器。
【請求項3】
蓋部材が、貫通孔を穿孔した頂壁を備え、作動部材の押下操作部が貫通孔から突出するようにしたことを特徴とする請求項1記載の定量吐出容器。
【請求項4】
作動部材の弁部材を、弁部とその端部に設けた膨出部とから構成し、
容器基台の吐出筒の内周を、弁部に対応する形状とした弁座としたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の定量吐出容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−206116(P2006−206116A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−21578(P2005−21578)
【出願日】平成17年1月28日(2005.1.28)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】