説明

定量室追加用ユニット、この定量室追加用ユニットが取り付けられた定量バルブ機構および、この定量バルブ機構を備えたエアゾール式製品

【課題】エアゾール式製品の定量バルブ機構の設定に際して既存のバルブ機構の構成要素をそのまま利用しながら、当該定量バルブ機構の定量室容積の自由度を確保する。
【解決手段】ハウジング4の外部に上カバー体6および下カバー体7よりなる付加ユニットを取り付ける。付加ユニット内部の定量室容積は、仕切筒9を当該各カバー体の任意の下向き環凹状部6f,上向き環凹状部7gに取り付けることで選択的に設定される。ステム2が下方に押圧されると、まずステム延長用部材3のシール作用面3aが内容物流入口8を閉塞し、付加ユニットとハウジング4の内部からなる定量室が形成される。孔部2bがステムラバー12より下方に移動すると、内部通路域2aと定量室とが連通して定量室内容物が放出される。押圧操作を解除すると、当該連通状態が解除されて、内容物流入口8が開放されるので、容器本体の内容物が当該流入口より定量室空間域に流入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾール式製品に用いられる定量室追加用ユニットおよび、当該ユニットが取り付けられた定量バルブ機構などに関する。
【0002】
特にエアゾール容器のハウジングの外側に定量室追加用の付加ユニットを設け、噴射操作ごとに容器外部空間に放出される内容物の量を規定する定量室として、ハウジングの内部空間域の外にこれと連通する当該付加ユニットの追加内部空間域を用いるに際し、当該追加内部空間域の容積を選択できるようにしたものである。
【0003】
また、操作ボタンを作動モード位置に移動させると定量室の入口側が閉じられる、すなわち定量室にいたる容器内部空間域が操作ボタンの噴射孔から遮断されるといった構造に必然的になってしまう定量バルブ機構におけるガス抜き経路を、簡単な操作で設定できるようにしたものである。
【背景技術】
【0004】
従来、エアゾール式製品の定量バルブ機構はエアゾール容器のハウジング内部に定量室用の空間域を設定している。
【0005】
そして、このハウジングの内部空間域の一部(=当該内部空間域の全体からステムなどの占有スペースを除いたエリア)からなる定量室に収容された内容物の全体を一回の操作ごとに、その一部が定量室底面部分などに残留することなどなしに、効率的に容器外部空間に放出できるように工夫したものなどがある(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−263531号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このようにエアゾール式製品の内容物放出用の定量室としてハウジングの内部空間域のみを用いる手法では、一回の操作で放出される内容物の量が必然的に当該ハウジングのいわば内部容量によって制約されることになる。
【0007】
またハウジングの形状や大きさの設定に際しては、当該ハウジングの保持部材であるマウンティングキャップや当該ハウジング内部を移動するステムなどとの兼ね合いを考慮しなければならず、定量室の大きさを優先させたハウジングを設計することも難しい。
【0008】
そのため従来のハウジング内部空間域のみからなる定量室を備えた定量バルブ機構は、エアゾール式製品の用途や容器内容物(放出対象内容物)の種類などの違いに応じた定量室容量を確保するという点において、改善の余地を残したものであった。
【0009】
そこで本発明では、エアゾール容器のハウジングの外側に定量室形成用の付加ユニットを取り付けてこの付加ユニットの内部空間域がハウジング内部の定量室空間域に追加され、かつ、付加ユニット中の追加定量室部分が仕切り部材で選択されるようにして、定量バルブ機構の定量室の容量設定における自由度を積極的に担保し、これにより各種のエアゾール式製品に合致した定量内容物の放出動作の実現化,確実化を一段と図ることを目的とする。
【0010】
また、必然的に、操作ボタンを作動モード位置に移動させると定量室の入口側が閉じられて容器内部空間域が操作ボタンの噴射孔から遮断される形になってしまう、定量バルブ機構におけるガス抜き動作を、簡単な操作で確実に行えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、以上の課題を次のようにして解決する。
(1)エアゾール容器のハウジング(例えば後述のハウジング4)に取り付けられるハウジング側要素(例えば後述の上カバー体6)、当該ハウジング側要素に取り付けられた定量室入力側要素(例えば後述の下カバー体7)および、当該ハウジング側要素と当該定量室入力側要素との間に設定される付加定量室の容積を選択するための仕切り部材(例えば後述の仕切筒9,10)、からなる定量室追加用ユニットとして、
前記ハウジング側要素は、
前記ハウジングの内部空間域と連通し、かつ内容物の定量噴射操作にともなうステム(例えば後述のステム2,ステム延長用部材3)の移動を可能にするための開口部と、前記ハウジングとの第1の係合部(例えば後述の係合用の凹状部6b)と、前記定量室入力側要素との第2の係合部(例えば後述の係合用の凸状部6d)と、前記仕切り部材に対する第1の受け部(例えば後述の下向き環凹状部6f)と、を有し、
前記定量室入力側要素は、
前記ステムの移動により閉状態に設定される内容物流入部(例えば後述の被シール部分7b)と、前記第2の係合部に対する被係合部(例えば後述の係合用の凹状部7d)と、前記仕切り部材に対する第2の受け部(例えば後述の上向き環凹状部7g)と、を有し、
前記仕切り部材は、
前記第1の受け部に対応した第1の被取付け部(例えば後述の第1の環状細幅部9b,第3の環状細幅部10c)と、前記第2の受け部に対応した第2の被取付け部(例えば後述の第2の環状細幅部9d,第4の環状細幅部10f)と、を有している、
ものを用いる。
(2)上記(1)において、
前記仕切り部材は筒状部であり、
前記第1の受け部および前記第2の受け部はそれぞれ同心円状に複数形成されたものである、
ものを用いる。
(3)上記(2)において、
前記筒状部は、
一方の端部(例えば後述の第3の環状細幅部10c)が前記第1の受け部に取り付けられて、他方の端部(例えば後述の第4の環状細幅部10f)が当該第1の受け部とは異なる径の前記第2の係合部に取り付けられる態様のものである、
ものを用いる。
(4)上記(1)〜(3)に記載の定量室追加用ユニットが前記ハウジングに取り付けられた定量バルブ機構を用いる。
(5)上記(4)において、
前記ステムは、
マウンティングキャップ(例えば後述のマウンティングキャップ11)の開口部に対応した上側部が、噴射用通路を有する本体部分(例えば後述の内筒状部2d)と、当該本体部分に取り外し可能な態様で設けられた外側部分(例えば後述の外筒状部2e)と、からなるものであり、
前記本体部分は、
前記外側部分が取り外された状態で静止モード位置のまま横方向に押されて前記マウンティングキャップの開口部の範囲内で変位することにより、ステムガスケット(例えば後述のステムガスケット12)との間にガス流出路を形成する、
定量バルブ機構を用いる。
【0012】
以上の構成からなる定量室追加用ユニットや定量バルブ機構および、この定量バルブ機構を備えたエアゾール式製品を本発明の対象としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、このようにエアゾール容器のハウジングの外側に定量室追加用の付加ユニットが取り付けられ、かつ、この付加ユニット中の追加定量室部分を仕切り部材でいわば選択的に設定できる態様にすることにより、定量バルブ機構の定量室全体の容積設定に際しての自由度が確保されるようにしている。
【0014】
そのため、各種のエアゾール式製品に合致した量の内容物放出動作の実現化,確実化を図ることができる。
【0015】
また、あくまでハウジングへの外付けという構成をとっているため、当該ハウジングや、その中のステムおよびその取付け相手であるマウンティングキャップなどの構成要素は既存のものを用いればよく、定量バルブ機構を作成する上での各構成部品の有効利用化,コストダウン化を図ることができる。
【0016】
さらには、ステムの上側部分を内筒状部とその外筒状部とで構成し、当該外筒状部が取り外された状態でステムをマウンティングキャップの開口部の中で横方向に移動させることによりステム外側から当該開口部を経て外部空間にいたガス抜き経路を設定しているので、操作ボタンを作動モード位置に移動させると定量室の入口側が閉じられて容器内部空間域と噴射孔との間が遮断されてしまう定量バルブ機構におけるガス抜きを、簡単な操作で確実に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1〜図3を用いて本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0018】
ここで、
図1は液化ガスの噴射剤を用いるエアゾール式製品の定量バルブ機構であり、(a)は定量噴射モード、(b)は静止モードをそれぞれ示し、
図2は図1の付加ユニット中の追加定量室部分設定用の仕切り部材であり、(a)は単一筒状部タイプ、(b)は二重筒状部タイプをそれぞれ示し、
図3は図1の定量バルブ機構におけるガス抜きモードを示している。
【0019】
なお、以下のアルファベット付き参照番号の構成要素(例えば通路部分1a)は原則として、当該参照番号の数字部分の構成要素(例えば操作ボタン1)の一部であることを示している。
【0020】
図1〜図3において、
1は利用者の押圧操作に基づき上下動するタイプの操作ボタン,
1aは内容物や噴射剤の通路部分,
1bは当該通路部分に続く噴射孔,
2は操作ボタン1と嵌合して上下方向に連動するステム,
2aは内容物や噴射剤の内部通路域,
2bは当該内部通路域と後述のハウジング4の定量室形成用の内部空間域とを連通させる孔部,
2cは当該孔部より下方の外周面に形成されて後述のコイルスプリング5を受ける環状段部(天井面部分),
2dは孔部2bよりも上側の内筒状部,
2eは当該内筒状部の外周面部分に取り外し可能な形で係合するとともに操作ボタン1と強く嵌合している外筒状部,
3はステム2の下端面部分と係合(嵌合)したスティック状のステム延長用部材,
3aは後述の内容物流入口8に対する閉塞機能を備えたシール作用面(下端側外周面),
3bは当該シール作用面の上方外周面に形成された下側環状段部,
4はステム2を上下動可能な形で収容する筒状のハウジング,
4aは大径の上側筒状部,
4bは小径の下側筒状部,
4cは当該上側筒状部と当該下側筒状部との境界ともいえる内周面側の環状段部,
4dは当該下側筒状部の外周面の周方向に連続してまたは間歇的に形成された係合用の凸状部,
5はステム2の環状段部2cとハウジング4の環状段部4cとの間に配設されて当該ステムを上方向に付勢するコイルスプリング,
6はハウジング4に嵌合して付加ユニット(定量室追加用ユニット)を構成する上カバー体,
6aは中央上筒状部,
6bは当該中央上筒状部(上側部分)の外方にある環状起立部の内周面周方向に、連続してまたは間歇的に形成された係合用の凹状部(ハウジング4の凸状部4dに対応),
6cは当該中央上筒状部の外方に形成された環状垂下部,
6dは当該環状垂下部の下側外周面の周方向に連続してまたは間歇的に形成された係合用の凸状部,
6eは当該上カバー体の天井面部分に当該中央上筒状部を中心とする同心円状に形成された複数の下向き環凸状部,
6fは隣同士の当該下向き環凸状部の間に生成される複数の下向き環凹状部,
7は上カバー体6に嵌合して付加ユニット(定量室追加用ユニット)を構成する下カバー体,
7aは中央下筒状部,
7bは当該中央下筒状部の内周面に形成された環状の被シール部分,
7cは当該中央下筒状部の外方に形成された環鞘状部,
7dは当該環鞘状部の外側内周面の周方向に連続してまたは間歇的に形成された係合用の凹状部(上カバー体6の凸状部6dに対応),
7eは当該中央下筒状部の上面内端側に形成された環状段部,
7fは当該下カバー体の底面部分に当該中央下筒状部を中心として下向き環凸状部6eのそれぞれと同一径からなる同心円状に形成された複数の上向き環凸状部,
7gは隣同士の当該上向き環凸状部の間に生成される複数の上向き環凹状部,
8は静止モードのときステム延長用部材3の下端側外周面と下カバー体7(シール作用部分7b)の内周面との間に形成される内容物流入口(環状空間域),
9は一つの下向き環凹状部6fとこれの真下の上向き環凹状部7gとに係合して付加定量室の空間域を特定(選択)するための単一筒状部タイプの仕切筒、
9aは当該仕切筒の一方の端部側内周面に形成された第1の環状段部,
9bは当該環状段部に対応する(下向き環凹状部6fまたは上向き環凹状部7gとの係合用の)第1の環状細幅部,
9cは当該仕切筒の他方の端部側内周面に形成された第2の環状段部,
9dは当該環状段部に対応する(上向き環凹状部7gまたは下向き環凹状部6fとの係合用の)係合用の第2の環状細幅部,
10は一つの下向き環凹状部6fと、これとは径方向にずれた位置にある一つの上向き環凹状部7gとに係合して、付加定量室の空間域を特定(選択)するための二重筒状部タイプの仕切筒,
10aは小径筒状部,
10bは当該小径筒状部の端部側内周面に形成された第3の環状段部,
10cは当該環状段部に対応する(下向き環凹状部6fまたは上向き環凹状部7gとの)係合用の第3の環状細幅部,
10dは大径筒状部,
10eは当該大径筒状部の端部側内周面に形成された第4の環状段部,
10fは当該環状段部に対応する(上向き環凹状部7gまたは下向き環凹状部6fとの係合用の)係合用の第4の環状細幅部,
11は周知のエアゾール容器本体(図示省略)の開口端部側に取り付けられたマウンティングキャップ,
12はハウジング4の上側開口部分とマウンティングキャップ11の開口部側天井面との間に設けられて当該ハウジングの内部空間域のシール作用を呈するステムガスケット,
13は下カバー体7の中央下筒状部7aに取り付けられた内容物流入用のチューブ,
14はステム2の外筒状部2eが取り外された後の内筒状部2dとマウンティングキャップ11(開口部)との間のクリアランス(隙間)に差し込み、当該内筒状部を横倒ししてガス抜きモードに保持するための棒状,筒状の治具,
Aは容器本体から定量室への内容物の概略的な流れ方向,
Bは定量室から容器外部空間への内容物の概略的な流れ方向,
Cはガス抜きモードにおける残留ガスの概略的な流れ方向
をそれぞれ示している。
【0021】
ここで、操作ボタン1,ステム2,ステム延長用部材3,ハウジング4,上カバー体6,下カバー体7,単一筒状部タイプの仕切筒9,二重筒状部タイプの仕切筒10,チューブ13および治具14などはポリプロピレン,ポリエチレン,ポリアセタール,ナイロン,ポリブチレンテレフタレートなどからなるプラスチック製のものである。
【0022】
また、マウンティングキャップ11は金属製のものであり、ステムガスケット12はプラスチック製やゴム製のものである。
【0023】
図示の定量バルブ機構(定量室追加用の付加ユニット)の基本的特徴は、ステム2を保持して定量室用空間域を形成するハウジング4の外側に取り付けられる定量室追加用ユニットの内部が、仕切筒9,10(図2参照)で選択的に区分けされる態様にしたことである。
【0024】
これにより当該付加ユニット中の定量室容量は、定量バルブ機構の組立段階などで、エアゾール式製品の用途や容器内容物(放出対象内容物)の種類などの違いに応じた形に適宜設定(選択)されえる。
【0025】
図1,図2(a)の仕切筒9は、
(11)第1の環状細幅部9bおよび第2の環状細幅部9dがそれぞれ、上カバー体6の下向き環凹状部6fおよび、これと同一径で真下に位置する下カバー体7の上向き環凹状部7gに係合し、
(12)第1の環状段部9aが、これと同一径で真下に位置する上カバー体6の下向き環凸状部6eの下端面部分に当接し、
(13)当該仕切筒の内周面と上カバー体6の中央上筒状部6aとの間の空間域などを付加定量室に設定している。
【0026】
図2(b)の仕切筒10の場合は、第3の環状細幅部10cが係合する上カバー体6の下向き環凹状部6fの位置と、第4の環状細幅部10fが係合する下カバー体7の上向き環凹状部7gの位置とが、仕切筒9のような真下・真上の関係ではない。
【0027】
すなわち、第3の環状細幅部10cの上カバー体係合位置と第4の環状細幅部10fの下カバー体係合位置とがこれらカバー体の径方向にずれている。
【0028】
このずれにより、付加定量室の容量を、単一筒状部タイプの仕切筒9では実現できない大きさに設定することができる。
【0029】
換言すれば、隣同士の下向き環凹状部6fの間および隣同士の上向き環凹状部7gの間の各特定部分(中間部分など)に仮想の下向き環凹状部および上向き環凹状部を真下・真上の関係で形成して、ここに仕切筒9を取り付けた場合と等価な付加定量室容量を実現できる。
【0030】
この等価な付加定量室容量の大きさは、仕切筒10の小径筒状部10aの高さと大径筒状部10dのそれとの比や、上述の環状細幅部10cの上カバー体係合位置と環状細幅部10fの下カバー体係合位置との径方向のずれの程度を、パラメータにする形で特定される。
【0031】
例えば仕切筒10の小径筒状部10aおよび大径筒状部10dそれぞれの高さが同じであって、当該小径筒状部と当該大径筒状部との上述の径方向のずれが下向き環凹状部6f(または上向き環凹状部7g)の一つ分に相当する場合の付加定量室容量は、仕切筒10が取り付けられている下向き環凹状部と上向き環凹状部との径方向における仮想的な中間部分に単一筒状部タイプの仕切筒9を設けたときの、容量と等価になる。
【0032】
図1の定量バルブ機構は液化ガスの噴射剤を用いるタイプのものである。
【0033】
その静止モード(b)におけるステム2はコイルスプリング5の作用によってステムガスケット12と密接した被シール状態にあり、内容物流入口8は開状態になっている。
【0034】
そのため容器本体の内容物は、噴射剤(液化ガス)の作用によりチューブ13を介した概略A方向の流れで付加ユニットの内部空間域(=上カバー体6,下カバー体7およびステム延長用部材3によって画定されるエリア)とハウジング4の内部空間域とからなる定量室に流入して、そこに収容される。
【0035】
そして操作ボタン1が押圧されると、ステム2およびステム延長用部材3がコイルスプリング5の弾性力に抗しながら下動して定量噴射モード(a)に移行する。
【0036】
すなわちステム延長用部材3(ステム2)の下動にともない、そのシール作用面3aが下カバー体7の被シール部分7bに密接して内容物流入口8を閉じ、かつ、それまでのステム2とステムガスケット12とのシール状態が解除される。
【0037】
その結果、ハウジング4の内部空間域がステム2の孔部2b,内部通路域2aおよび操作ボタン1の通路部分1a,噴射孔1bを介して容器外部空間と連通する。
【0038】
そしてハウジング4の内部空間域の上流側である付加ユニットの定量室空間域(内部空間域)も勿論、当該ハウジング内部空間域を介して容器外部空間と連通する。
【0039】
この連通により、静止モードの定量室に入っていた所定量の内容物はそれといわば混在している液化ガスの作用により概略B方向の流れで噴射孔1bから外部に噴射される。
【0040】
ここで上カバー体6の中央上筒状部6aはその下端部分が下カバー体7の定量室底面の近傍まで延びる形で設定されているため、当該中央上筒状部とその外方の環状垂下部5cとの間の追加内部空間域(=定量室の主要空間域)の上側部分に収容されていた内容物は、必然的にいったん下降して中央上筒状部6aの下端部分と下カバー体7の上面(定量室底面)との隙間部分を通ってから当該中央上筒状部の内側域を上昇していくことになる。
【0041】
そのため、一般にはステム2の孔部2bから遠くて内容物が容器外部空間に放出されずに残留したままとなりやすい上記定量室底面部分においても、そこの保持内容物は、この「下降−上昇」の流れにいわば引きずられる形で確実に噴射される。
【0042】
なお、操作ボタン1の押圧操作の終了にともないステム2がコイルスプリング5の弾性力によって(b)の静止モード位置に復帰することは勿論である。
【0043】
図3は、図1の定量バルブ機構を用いたエアゾール式製品のガス抜きモードを示している。
【0044】
この定量バルブ機構におけるガス抜き動作の基本的な特徴は、通常は単一部材からなるステム2の上側部分(マウンティングキャップ11とのクリアランスが生じる範囲を含む上側部分)が、噴射対象の内容物などの内部通路域部分を備えた内筒状部2dと、これに取り外し可能な形で取り付けられた外筒状部2eと、から構成されていることである。
【0045】
そしてこの構成により、
(21)ガス抜きモードに設定されていない状態(静止モードや定量噴射モード)では内筒状部2dおよびこれと一体の外筒状部2eにより通常のステム形態(図1参照)をとり、
(22)ガス抜きモードへの移行に際しては、先ず操作ボタン1およびこれと強めに嵌合している外筒状部2eの一体物を内筒状部2dから図示上方にいわば引き抜くことにより、外筒状部が捨象されてマウンティングキャップ11の中央開口縁部とのクリアランス(隙間部分)が大きくなったガス抜き準備モードのステム形態(図示省略)とし、
(23)次に、このクリアランス部分に治具14を差し込んで内筒状部2dの部分をマウンティングキャップ11の中央開口部の中で横倒しにし、この状態を保持している。
【0046】
また、この横倒し状態では、ステム2(ステム延長用部材3)の上下方向位置は静止モードのそれと同じであり、上記定量室の入力弁(流入弁)として作動するステム延長用部材3のシール作用面3aと下カバー体7の被シール部分7bとは離間している。すなわち定量室入口側の開口域8は閉塞されずに開放されている。
【0047】
そのため容器本体内部の残留ガスなどは、矢印Cで示されるように「チューブ13−開口域8−ステム延長用部材3の外周面と中央上筒状部6a(上カバー体6)の内周面との間の環状域−ハウジング4の内部空間−横倒し状態の内筒状部2d(ステム2)とステムガスケット12との間に形成されるガス流出路」の流れによって、外部空間に放出される。ここで筒状の治具14を用いる場合、残留ガスはこの治具内部空間も通過する。
【0048】
中央上筒状部6aと仕切筒9との間の付加定量室部分の残留ガスも勿論「ステム延長用部材3の外周面と中央上筒状部6a(上カバー体6)の内周面との間の環状域−ハウジング4の内部空間−横倒し状態の内筒状部2d(ステム2)とステムガスケット12との間に形成されるガス流出路」の流れによって、外部空間に放出される。
【0049】
本発明が以上の実施形態に限定されないこと勿論であり、例えば、
(31)ステム延長用部材3の下側環状段部3bと下カバー体7の環状段部7eとの間に当該延長用部材を図示上方向に付勢してステム2と一体化させるためのコイルスプリングを設ける(この場合、ステム2とステム延長用部材3との積極的な嵌合用の凹凸状部は省略してもよい)、
(32)ステム2とステム延長用部材3とを一体化する、
(33)仕切筒9を、その上下方向の中間筒状部(第1の環状細幅部9bと第2の環状細幅部9dとの間)の断面形状が外方向または内方向に膨らんだ形のものにする、
(34)仕切筒10を図示とは上下(天地)逆にした状態で使用する、
(35)仕切筒10の筒状部を、その径が図示上下方向の全体で連続して変化し、または当該方向の一部で連続して変化する形にする、
ようにしてもよい。
【0050】
本発明が適用されるエアゾール式製品としては、洗浄剤,清掃剤,制汗剤,冷却剤,筋肉消炎剤,ヘアスタイリング剤,ヘアトリートメント剤,染毛剤,育毛剤,化粧品,シェービングフォーム,食品,液滴状のもの(ビタミンなど),医薬品,医薬部外品,塗料,園芸用剤,忌避剤(殺虫剤),クリーナー,消臭剤,洗濯のり,ウレタンフォーム,消火器,接着剤,潤滑剤などの各種用途のものがある。
【0051】
容器本体に収納する内容物は、液状,クリーム状,ゲル状など種々の形態のものを用いることができ、内容物に配合される成分としては例えば、粉状物,油成分,アルコール類,界面活性剤,高分子化合物,各用途に応じた有効成分,水などが挙げられる。
【0052】
粉状物としては、金属塩類粉末,無機物粉末や樹脂粉末などを用いる。例えば、タルク,カオリン,アルミニウムヒドロキシクロライド(アルミ塩),アルギン酸カルシウム,金粉,銀粉,雲母,炭酸塩,硫酸バリウム,セルロース,これらの混合物などを用いる。
【0053】
油成分としては、シリコーン油,パーム油,ユーカリ油,ツバキ油,オリーブ油,ホホバ油,パラフィン油,ミリスチン酸,パルミチン酸,ステアリン酸,リノール酸,リノレン酸などを用いる。
【0054】
アルコール類としては、エタノールなどの1価の低級アルコール,ラウリルアルコールなどの1価の高級アルコール,エチレングリコール,グリセリン,1,3−ブチレングリコールなどの多価アルコールなどを用いる。
【0055】
界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウムなどのアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンオレイルエーテルなどの非イオン性界面活性剤、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインなどの両性界面活性剤、塩化アルキルトリメチルアンモニウムなどのカチオン性界面活性剤などを用いる。
【0056】
高分子化合物としては、メチルセルロース,ゼラチン,デンプン,カゼイン,ヒドロキシエチルセルロース,キサンタンガム,カルボキシビニルポリマーなどを用いる。
【0057】
各用途に応じた有効成分としては、サリチル酸メチル,インドメタシンなどの消炎鎮痛剤、安息香酸ナトリウム,クレゾールなどの除菌剤、ヒレスロイド,ジエチルトルアミドなどの害虫忌避剤、酸化亜鉛などの制汗剤、カンフル,メントールなどの清涼剤、エフェドリン,アドレナリンなどの抗喘息薬、スクラロース,アスパルテームなどの甘味料、エポキシ樹脂,ウレタンなどの接着剤や塗料、パラフェニレンジアミン,アミノフェノールなどの染料,リン酸二水素アンモニウム,炭酸水素ナトリウム・カリウムなどの消火剤などを用いる。
【0058】
さらに、上記内容物以外の、懸濁剤,紫外線吸収剤,乳化剤,保湿剤,酸化防止剤、金属イオン封鎖剤なども用いることができる。
【0059】
エアゾール式製品における内容物噴射用ガスとしては、液化石油ガス,ジメチルエーテル,フロロカーボンなどの液化ガスを用いる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】液化ガスの噴射剤を用いるエアゾール式製品の定量バルブ機構であり、(a)は定量噴射モード、(b)は静止モードをそれぞれ示している。
【図2】図1の付加ユニット中の追加定量室部分設定用の仕切り部材であり、(a)は単一筒状部タイプ、(b)は二重筒状部タイプをそれぞれ示している。
【図3】図1の定量バルブ機構におけるガス抜きモードを示している。
【符号の説明】
【0061】
1:操作ボタン
1a:通路部分
1b:噴射孔
2:ステム
2a:内部通路域
2b:孔部
2c:環状段部(天井面部分)
2d:内筒状部
2e:外筒状部
3:ステム延長用部材
3a:シール作用面(下端側外周面)
3b:下側環状段部
4:ハウジング
4a:上側筒状部
4b:下側筒状部
4c:環状段部
4d:係合用凸状部
5:コイルスプリング
6:上カバー体
6a:中央上筒状部
6b:係合用凹状部(ハウジング4の凸状部4dに対応)
6c:環状垂下部
6d:係合用凸状部,
6e:複数の下向き環凸状部
6f:複数の下向き環凹状部
7:下カバー体
7a:中央下筒状部
7b:環状の被シール部分
7c:環鞘状部
7d:係合用凹状部(上カバー体6の凸状部6dに対応)
7e:環状段部
7f:複数の上向き環凸状部
7g:複数の上向き環凹状部
8:内容物流入口(環状空間域)
9:単一筒状部タイプの仕切筒
9a:第1の環状段部
9b:第1の環状細幅部
9c:第2の環状段部
9d:第2の環状細幅部
10:二重筒状部タイプの仕切筒
10a:小径筒状部,
10b:第3の環状段部
10c:第3の環状細幅部
10d:大径筒状部
10e:第4の環状段部
10f:第4の環状細幅部
11:マウンティングキャップ
12:ステムガスケット
13:チューブ
14:治具
A:容器本体から定量室への内容物の概略的な流れ方向
B:定量室から容器外部空間への内容物の概略的な流れ方向
C:ガス抜きモードにおける残留ガスの概略的な流れ方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアゾール容器のハウジングに取り付けられるハウジング側要素、当該ハウジング側要素に取り付けられた定量室入力側要素および、当該ハウジング側要素と当該定量室入力側要素との間に設定される付加定量室の容積を選択するための仕切り部材、からなる定量室追加用ユニットであって、
前記ハウジング側要素は、
前記ハウジングの内部空間域と連通し、かつ、内容物の定量噴射操作にともなうステムの移動を可能にするための開口部と、前記ハウジングとの第1の係合部と、前記定量室入力側要素との第2の係合部と、前記仕切り部材に対する第1の受け部と、を有し、
前記定量室入力側要素は、
前記ステムの移動により閉状態に設定される内容物流入部と、前記第2の係合部に対する被係合部と、前記仕切り部材に対する第2の受け部と、を有し、
前記仕切り部材は、
前記第1の受け部に対応した第1の被取付け部と、前記第2の受け部に対応した第2の被取付け部と、を有している、
ことを特徴とするエアゾール容器の定量室追加用ユニット。
【請求項2】
前記仕切り部材は筒状部であり、
前記第1の受け部および前記第2の受け部はそれぞれ同心円状に複数形成されたものである、
ことを特徴とする請求項1記載のエアゾール容器の定量室追加用ユニット。
【請求項3】
前記筒状部は、
一方の端部が前記第1の受け部に取り付けられて、他方の端部が当該受け部とは異なる径の前記第2の係合部に取り付けられる態様のものである、
ことを特徴とする請求項2記載のエアゾール容器の定量室追加用ユニット。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の定量室追加用ユニットが前記ハウジングに取り付けられている、
ことを特徴とする定量バルブ機構。
【請求項5】
前記ステムは、
マウンティングキャップの開口部に対応した上側部が、噴射用通路を有する本体部分と、当該本体部分に取り外し可能な態様で設けられた外側部分と、からなるものであり、
前記本体部分は、
前記外側部分が取り外された状態で静止モード位置のまま横方向に押されて前記マウンティングキャップの開口部の範囲内で変位することにより、ステムガスケットとの間にガス流出路を形成する、
ことを特徴とする請求項4記載の定量バルブ機構。
【請求項6】
請求項4または5に記載の定量バルブ機構を備え、かつ、噴射剤および内容物を収容した、
ことを特徴とするエアゾール式製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−308197(P2008−308197A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−157511(P2007−157511)
【出願日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(000144463)株式会社三谷バルブ (142)
【Fターム(参考)】