説明

定電流回路および電子機器

【課題】 コストを抑制しつつ、高い精度で電流調整が可能な定電流回路およびそれを備えた電子機器を提供する。
【解決手段】 制御部20は、出力開始指令を受けた直後の最初のオン期間、および、電流設定値が更新された直後の最初のオン期間においてのみ差動電圧VをトランジスタTRのゲートへ与え、その他のオン期間においては、保持電圧VをトランジスタTRのゲートへ与えるような切換指令を出力する。そして、制御部20は、差動電圧VがトランジスタTRのゲートへ与えられた後、演算増幅器OP1が出力電流IOUTを電流設定値に略一致させることのできる所定の時間経過後に、保持部30へ保持指令を与える。保持電圧Vは、PWM信号のオン・オフに関係なく一定値に保持されるので、オン期間の開始直後から、トランジスタTRのゲートへ一定の保持電圧Vを与えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電源をスイッチングすることにより供給電流を調整する定電流回路およびそれを備えた電子機器に関し、特にスイッチング素子に与えるゲート電圧の遅れによる調整誤差を抑制する定電流回路およびそれを備えた電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、電源供給回路をスイッチングして供給電流や供給電圧を調整する電源装置が知られている。このような電源装置では、パルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation;以下、PWMと称す)方式により、一周期内のオン時間の割合(以下、Duty比と称す)を変化させて供給電流や供給電圧を調整することが一般的である。
【0003】
たとえば、特許文献1には、PWM方式により供給電圧を調整し、かつ、100%に近い最大Duty比を設定できるDC/DCスイッチングコンバータが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、LED(Lighting Emitting Diode)などの電流駆動型素子に電流を駆動する定電流回路が開示されている。
【0005】
図9は、従来のPWM方式の定電流回路200の概略構成図である。なお、定電流回路200は、特許文献2に開示される定電流回路において出力電流値を負帰還させるように変形したものである。
【0006】
図9を参照して、電源ノード2と基準電位との間に、負荷LED、定電流回路200および抵抗Rが直列に接続される。そして、定電流回路200は、回路をスイッチングすることで、電源ノード2から負荷LEDへ供給される電流を調整する。
【0007】
定電流回路200は、分圧抵抗R1,R2と、演算増幅器OP(Operational Amplifier)1と、PWM信号発生部80と、トランジスタTRと、スイッチSW6とからなる。
【0008】
分圧抵抗R1およびR2は、電源ノード2と基準電位との間に直列に接続され、電源電圧VCCを分圧抵抗R1とR2との比に応じた電流設定値Vに変換して演算増幅器OP1へ出力する。
【0009】
演算増幅器OP1は、分圧抵抗R1およびR2から受けた電流設定値Vと抵抗Rに生じる電圧(=R×IOUT)との差を増幅して差動電圧Vを発生し、スイッチSW6へ出力する。
【0010】
PWM信号発生部80は、所定の周期をもち、かつ、外部から受けたDuty比に応じたパルス幅を有するPWM信号を生成し、スイッチSW6へ出力する。
【0011】
トランジスタTRは、電源ノード2と基準電位との間に介挿され、ゲート電圧に応じた出力電流IOUTを負荷LEDへ供給する。
【0012】
スイッチSW6は、PWM信号発生部80からPWM信号を受け、PWM信号のオン期間においては、トランジスタTRのゲートへ差動電圧Vを与え、オフ期間においては、トランジスタTRのゲートへ接地電位を与える。よって、トランジスタTRは、PWM信号のオン期間においては、差動電圧Vに応じた出力電流IOUTを供給し、オフ期間においては、電流を遮断する。
【0013】
さらに、オン期間中には、抵抗Rに生じる電圧が負帰還され、負荷LEDへ供給される出力電流IOUTは、IOUT=V/Rで安定する。したがって、定常的に見れば、定電流回路200は、オン期間中の出力電流IOUTにDuty比を乗算した電流値を負荷LEDへ供給することになる。
【特許文献1】特開2003−219638号公報
【特許文献2】特開平7−321623号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、図9に示す定電流回路では、オフ期間中において出力電流IOUTがゼロとなっているため、オン期間の開始直後における出力電流IOUTの立ち上がり時間が問題となる。
【0015】
図10は、従来の定電流回路200における各部の時間波形を示す図である。
図10(a)は、PWM信号の時間波形である。
【0016】
図10(b)は、スイッチSW6の時間波形である。
図10(c)は、出力電流IOUTの時間波形である。
【0017】
図10(a)および図10(b)を参照して、PWM信号発生部80から出力されるPWM信号に応じて、スイッチSW6は、オンとオフとを交互に切換える。なお、図10(a)は、Duty比が約50%の場合を示す。一方、図10(c)を参照して、出力電流IOUTは、PWM信号に完全には追従することができない。
【0018】
図11は、図10(c)に示す拡大区間における各部の時間波形である。
図11(a)は、PWM信号の時間波形である。
【0019】
図11(b)は、出力電流IOUTの時間波形である。
図11(c)は、差動電圧Vの時間波形である。
【0020】
図11(a)および(b)を参照して、PWM信号のオン期間の開始直後から出力電流IOUTが所定値となるまでには、むだ時間Td1および遅れ時間Td2が存在する。むだ時間Td1の期間においては、出力電流IOUTは全く増加せず、遅れ時間Td2の期間においては、出力電流IOUTは所定の時定数をもって漸増する。むだ時間Td1は、主として、スイッチSW6の応答速度およびトランジスタTRのゲート容量の充放電時間に起因するものであり、この期間においては、トランジスタTRは未だ導通状態になっていない。また、遅れ時間Td2は、主として、演算増幅器OP1の応答速度に起因するものである。
【0021】
図11(c)を参照して、むだ時間Td1が経過し、トランジスタTRが導通状態になると、定電流回路200から負荷LEDへの電流供給が開始される。一方、PWM信号のオフ期間において出力電流IOUTはゼロであるため、演算増幅器OPへ負帰還する電圧もゼロとなっている。そのため、オン期間になっても演算増幅器OPは、出力である差動電圧Vを瞬時に増加させることができず、自己の応答速度に応じて差動電圧Vを増加させる。
【0022】
このように、PWM信号のオンタイミングに対して、出力電流IOUTの立ち上がりが遅れると、所望の電流値を負荷LEDへ供給することができない。特に、Duty比が小さい場合などにおいては、出力電流IOUTが立ち上がるまでにPWM信号のオン期間が終了することもあり、その誤差はより顕著に現れてしまう。
【0023】
ところで、むだ時間Td1は、数μ秒であるのに対して、遅れ時間Td2は、十数μ秒となる場合もある。そのため、出力電流IOUTの立ち上がりを早めるには、遅れ時間Td2の主要因である演算増幅器OP1の応答速度を高める必要がある。
【0024】
しかしながら、高速な演算増幅器を採用すると製造コストが上昇するといった問題があった。
【0025】
そこで、この発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、その目的は、コストを抑制しつつ、高い精度で電流調整が可能な定電流回路およびそれを備えた電子機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0026】
この発明によれば、電流調整指令に従い負荷へ供給する電流を調整する電流調整部と、第1の設定値と負荷へ供給される電流値に応じた値とを比較し、電流値が第1の設定値と一致するように第1の電流調整指令を出力する比較部と、第2の設定値に基づいて、電流調整部から電流が供給される時間比率を調整するための切換指令を出力する制御部と、制御部からの切換指令に基づいて第1の電流調整指令を断続し、電流調整部へ与えるスイッチ部と、保持指令を受けると、その時点における第1の電流調整指令を保持し、保持した第1の電流調整指令を第2の電流調整指令として出力する保持部とを備える定電流回路である。そして、制御部は、負荷へ供給される電流値が第1の設定値と略一致した時点において、保持部へ保持指令を与え、その後、スイッチ部に対して、第1の電流調整指令に代えて保持部から出力される第2の電流調整指令を断続して電流調整部へ与えるための切換指令を出力する。
【0027】
好ましくは、切換指令は、オンとオフとが交互に繰返されるパルス信号であり、制御部は、外部から電流の供給を開始するための出力開始指令を受けて、切換指令の出力を開始し、かつ、切換指令の出力を開始した後の最初のオン期間において、保持部へ保持指令を与える。
【0028】
好ましくは、制御部は、第1の設定値が更新されると、スイッチ部に対して、第1の電流調整指令を断続して電流調整部へ与えるための切換指令を出力し、その後、負荷へ供給される電流値が更新された第1の設定値と略一致した時点において、保持部へ保持指令を与える。
【0029】
好ましくは、保持部は、第1の電流調整指令をデジタル値に変換して記憶する。
好ましくは、保持部は、第1の電流調整指令に応じた電荷量を蓄電することにより第1の電流調整指令を保持する。
【0030】
好ましくは、保持部は、出力バッファを介して第2の電流調整指令を出力する。
好ましくは、比較部は、さらに、保持部から出力される第2の電流調整指令の出力バッファとして機能する。
【0031】
また、この発明によれば、電源と、電源と接続された負荷と、電源および負荷と直列に接続され、電流調整指令に従い負荷へ供給する電流を調整する電流調整部と、第1の設定値と負荷へ供給される電流値に応じた値とを比較し、電流値が第1の設定値と一致するように第1の電流調整指令を出力する比較部と、第2の設定値に基づいて、電流調整部から電流が供給される時間比率を調整するための切換指令を出力する制御部と、制御部からの切換指令に基づいて第1の電流調整指令を断続し、電流調整部へ与えるスイッチ部と、保持指令を受けると、その時点における第1の電流調整指令を保持し、保持した第1の電流調整指令を第2の電流調整指令として出力する保持部とを備える電子機器である。そして、制御部は、負荷へ供給される電流値が第1の設定値と略一致した時点において、保持部へ保持指令を与え、その後、スイッチ部に対して、第1の電流調整指令に代えて保持部から出力される第2の電流調整指令を断続して電流調整部へ与えるための切換指令を出力する。
【発明の効果】
【0032】
この発明によれば、第1の設定値に等しい電流値を負荷へ供給させるための電流調整指令が保持され、比較部を介することなく、その保持された電流調整指令が電流調整部へ与えられる。そのため、負荷へ供給される電流の断続に伴い、比較部から出力される第1の電流調整指令に生じる時間遅れの影響を回避できる。よって、負荷電流の断続にかかわらず、第1の設定値に応じた電流を供給できるので、高い精度で電流調整が可能な定電流回路およびそれを備えた電子機器を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
この発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分については、同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0034】
[実施の形態1]
図1は、実施の形態1に従う定電流回路101の概略構成図である。
【0035】
図1を参照して、電源ノード2と基準電位との間に、負荷LED、定電流回路101および抵抗Rが直列に接続される。定電流回路101は、回路を開閉することで、電源ノード2から負荷LEDへ供給される電流を調整する。そして、定電流回路101は、電流設定部10と、演算増幅器OP1と、制御部20と、トランジスタTRと、スイッチSW1と、保持部30とからなる。
【0036】
電流設定部10は、外部から電流設定値(デジタル値)を受け、電流設定値Vを演算増幅器OP1へ出力する。そして、電流設定部10は、レジスタ12と、デジタル/アナログ変換器(D/A)14とからなる。なお、電流設定値は、電流設定値Vが抵抗Rとオン期間における出力電流IOUTとの積(V=R×IOUT)に一致するように決定される。
【0037】
レジスタ12は、外部から受けた電流設定値を記憶する。
デジタル/アナログ変換器14は、レジスタ12に記憶された電流設定値を読出し、その値に応じた電圧を発生し、演算増幅器OP1へ出力する。
【0038】
演算増幅器OP1は、電流設定部10から受けた電流設定値Vと抵抗Rに生じる電圧(=R×IOUT)との差を増幅して差動電圧Vを発生し、スイッチSW1へ出力する比較部である。すなわち、演算増幅器OP1は、抵抗Rに生じる電圧を負帰還させ、出力電流IOUTが電流設定値Vに応じた電流値と一致するように、電流指令値である差動電圧Vを変化させる。
【0039】
保持部30は、制御部20からの保持指令を受けると、その時点における演算増幅器OP1から出力される差動電圧Vを記憶する。そして、保持部30は、その記憶した差動電圧Vを保持電圧Vとして、スイッチSW1へ出力する。すなわち、保持部30は、保持指令を受けた時点における電流設定値Vを保持し、電流指令値である保持電圧Vとして出力する。さらに、保持部30は、アナログ/デジタル変換器(A/D)32と、レジスタ34と、デジタル/アナログ変換器(A/D)36と、演算増幅器OP2とからなる。
【0040】
アナログ/デジタル変換器32は、演算増幅器OP1から出力される差動電圧Vを受け、デジタル値に変換してレジスタ34へ出力する。
【0041】
レジスタ34は、制御部20から保持指令を受けると、アナログ/デジタル変換器32から出力される差動電圧Vのデジタル値を記憶する。
【0042】
デジタル/アナログ変換器36は、レジスタ34に記憶された差動電圧Vのデジタル値を読出し、アナログ値に変換して演算増幅器OP2へ出力する。
【0043】
演算増幅器OP2は、デジタル/アナログ変換器36から受けた差動電圧Vに対して、自己の出力を負帰還させた結果を増幅して出力する。すなわち、演算増幅器OP2は、ユニティ・ゲイン・バッファであり、保持部30の出力バッファとしてとして機能する。そのため、保持部30は、デジタル/アナログ変換器36から受けた差動電圧Vと同一の電圧で、かつ、大きな出力容量をもった保持電圧VをスイッチSW1へ出力する。
【0044】
スイッチSW1は、制御部20から受けた切換指令に応じて、3つのポートA、BおよびCのうちいずれか1つのポートをトランジスタTRのゲートと接続し、電流指令を与える。すなわち、スイッチSW1は、演算増幅器OP1から出力される差動電圧V(ポートA)、保持部30から出力される保持電圧V(ポートB)および基準電位(ポートC)のうち、いずれか1つをトランジスタTRのゲートへ与える。
【0045】
トランジスタTRは、電源ノード2と基準電位との間に介挿され、ゲートに与えられた電圧に従い負荷LEDへ供給する出力電流IOUTを調整する調整部である。そして、トランジスタTRは、たとえば、NMOSトランジスタなどからなる。
【0046】
制御部20は、PWM信号発生部24を含み、出力開始指令を受けると、所定の周期で、かつ、外部から受けたDuty比に応じたPWM信号を発生する。そして、制御部20は、発生したPWM信号に基づいて、そのオン期間においては、差動電圧Vまたは保持電圧VをトランジスタTRのゲートへ与え、そのオフ期間においては、基準電位をトランジスタTRのゲートへ与えるための切換指令をスイッチSW1へ出力する。また、制御部20は、定期的にレジスタ12から電流設定値を読出し、その値が更新されているか否かを判断する。
【0047】
さらに、制御部20は、出力開始指令を受けた直後の最初のオン期間、および、電流設定値が更新された直後の最初のオン期間においてのみ差動電圧VをトランジスタTRのゲートへ与え、その他のオン期間においては、保持電圧VをトランジスタTRのゲートへ与えるような切換指令を出力する。そして、制御部20は、差動電圧VがトランジスタTRのゲートへ与えられた後、演算増幅器OP1が出力電流IOUTを電流設定値に略一致させることのできる所定の時間経過後に、保持部30へ保持指令を与える。
【0048】
負荷LEDは、たとえば、液晶のバックライトなどに用いられるLEDであり、供給される電流の供給時間に応じて、その発光輝度を変化させる。
【0049】
抵抗Rは、定電流回路101と基準電位との間に介挿され、出力電流IOUTを検出するための電圧を発生する。そのため抵抗Rの値は、出力電流IOUT、演算増幅器OP1および電流設定値Vなどに応じて適宜設計される。
【0050】
以下、実施の形態1に従う定電流回路101の動作について詳細に説明する。
図2は、出力開始指令が与えられた直後における定電流回路101の各部の時間波形を示す図である。
【0051】
図2(a)は、PWM信号発生部24が発生するPWM信号の時間波形である。
図2(b)は、スイッチSW1の時間波形である。
【0052】
図2(c)は、差動電圧Vの時間波形である。
図2(d)は、保持電圧Vの時間波形である。
【0053】
図2(e)は、トランジスタTRへ与えられるゲート電圧Vの時間波形である。
図2(f)は、出力電流IOUTの時間波形である。
【0054】
図2(a)を参照して、制御部20は、出力開始指令を受けると、PWM信号の発生を開始する。図2(b)を参照して、制御部20は、PWM信号のオン期間においては、スイッチSW1にポートAまたはBを選択させ、PWM信号のオフ期間においては、スイッチSW1にポートCを選択させる。特に、制御部20は、出力開始指令を受けた直後の最初のオン期間において、スイッチSW1にポートAを選択させ、それ以降のオン期間においては、スイッチSW1にポートBを選択させる。
【0055】
図2(c)を参照して、演算増幅器OP1は、所定の応答速度をもって、電流設定値Vと抵抗Rに生じる電圧との差に応じた差動電圧Vを変化させる。
【0056】
図2(d)を参照して、制御部20は、オン期間の開始から所定の時間が経過し、演算増幅器OP1から出力される差動電圧Vが所定値に到達すると、保持指令を保持部30へ出力する。保持部30は、保持指令を受けた時点における差動電圧Vをレジスタ34へ記憶し、その記憶した差動電圧Vと同一である保持電圧VをスイッチSW1へ出力する。すなわち、制御部20は、電流設定値Vに相当する出力電流IOUTを供給するためのゲート電圧Vを保持部30に保持させる。
【0057】
図2(e)を参照して、トランジスタTRのゲートへ与えられるゲート電圧Vは、出力開始指令を受けた直後の最初のオン期間では、演算増幅器OP1から出力される差動電圧Vとなり、それ以降のオン期間では、保持部30から出力される保持電圧Vとなる。保持電圧Vは、PWM信号のオン・オフに関係なく一定値に保持されるので、オン期間の開始直後から、立ち上がり時間無しに、トランジスタTRのゲートに対して保持電圧Vが与えられる。
【0058】
図2(f)を参照して、トランジスタTRのゲート電圧Vに対応して、トランジスタTRから出力電流IOUTが供給される。そのため、出力開始指令を受けた直後の最初のオン期間においては、PWM信号に対して出力電流IOUTの遅れが生じるが、それ以降のオン期間においては、PWM信号に同期して急峻に立ち上がる出力電流IOUTが供給される。
【0059】
なお、定電流回路101に対して、同一の電流設定値を与えたとしても、トランジスタTRの製造バラツキ、電気的特性および温度特性などに起因して、演算増幅器OP1から出力される差動電圧Vは定まらない。そのため、制御部20は、出力開始指令を受けると、その最初のオン期間においてのみ、演算増幅器OP1から出力される差動電圧VをトランジスタTRへ与え、電流設定値Vに相当する出力電流IOUTを供給するためのゲート電圧Vを保持部30に保持させる。
【0060】
ところで、出力電流の調整は、主として、制御部20へ与えられるDuty比を変化させることで行なわれるが、電流設定値Vが変更されることもある。電流設定値Vが変更された場合には、その電流設定値Vに相当する出力電流IOUTを供給するためのゲート電圧Vを保持部30に再度記憶させる必要がある。
【0061】
そこで、制御部20は、電流設定値Vが変更されたか否かを監視し、変更された場合には、再度、保持指令を保持部30へ与える。
【0062】
図3は、電流設定値Vが変更された場合における定電流回路101の各部の時間波形を示す図である。
【0063】
図3(a)は、PWM信号発生部24が発生するPWM信号の時間波形である。
図3(b)は、電流設定値Vの時間波形である。
【0064】
図3(c)は、スイッチSW1の時間波形である。
図3(d)は、差動電圧Vの時間波形である。
【0065】
図3(e)は、保持電圧Vの時間波形である。
図3(f)は、トランジスタTRへ与えられるゲート電圧Vの時間波形である。
【0066】
図3(g)は、出力電流IOUTの時間波形である。
図3(a)および(b)を参照して、電流設定部10へ新たな電流設定値が与えられると、電流設定部10は、新たな電流設定値Vを出力する。
【0067】
図3(c)を参照して、制御部20は、電流設定値Vが変更された直後の最初のオン期間において、スイッチSW1にポートAを選択させ、それ以降のオン期間においては、スイッチSW1にポートBを選択させる。
【0068】
図3(d)を参照して、演算増幅器OP1は、いずれの電流設定値Vに対しても、所定の時定数をもって、電流設定値Vと抵抗Rに生じる電圧との差に応じた差動電圧Vを変化させる。
【0069】
図3(e)を参照して、制御部20は、電流設定値Vの変更後における最初のオン期間の開始から所定の時間が経過し、演算増幅器OP1から出力される差動電圧Vが所定値に到達すると、保持指令を保持部30へ出力する。すなわち、制御部20は、出力開始指令を受けた場合と同様に、新たな電流設定値Vに相当する出力電流IOUTを供給するためのゲート電圧Vを保持部30に保持させる。
【0070】
図3(f)を参照して、トランジスタTRのゲートへ与えられるゲート電圧Vは、電流設定値Vの変更後における最初のオン期間では、演算増幅器OP1から出力される差動電圧Vとなり、それ以降のオン期間では、保持部30から出力される保持電圧Vとなる。
【0071】
図3(g)を参照して、トランジスタTRのゲート電圧Vに対応して、トランジスタTRから出力電流IOUTが供給される。そのため、電流設定値Vの変更後における最初のオン期間においては、PWM信号に対して出力電流IOUTの遅れが生じるが、それ以降のオン期間においては、PWM信号に同期した方形状の出力電流IOUTが供給される。
【0072】
図4は、定電流回路101の制御部20における処理フローチャートである。
図4を参照して、制御部20は、出力開始指令を受けたか否かを判断する(ステップS100)。出力開始指令を受けていない場合(ステップS100においてNOの場合)には、制御部20は、出力開始指令を受けるまで待つ(ステップS100)。
【0073】
出力開始指令を受けた場合(ステップS100においてYESの場合)には、制御部20は、PWM信号の発生を開始する(ステップS102)。そして、制御部20は、最初のオン期間中において、ポートAを選択するための切換指令をスイッチSW1へ与える(ステップS104)。さらに、制御部20は、最初のオン期間の開始から所定の時間が経過した否かを判断する(ステップS106)。所定の時間が経過していない場合(ステップS106においてNOの場合)には、制御部20は、所定の時間が経過するまで待つ(ステップS106)。
【0074】
所定の時間が経過した場合(ステップS106においてYESの場合)には、制御部20は、保持指令を保持部30へ与える(ステップS108)。そして、制御部20は、オン期間が終了すると、ポートCを選択するための切換指令をスイッチSW1へ与える(ステップS110)。さらに、制御部20は、オフ期間が終了すると、ポートBを選択するための切換指令をスイッチSW1へ与える(ステップS112)。
【0075】
その後、制御部20は、電流設定値が更新されたか否かを判断する(ステップS114)。電流設定値が更新された場合(ステップS114においてYESの場合)には、制御部20は、次のオン期間中において、ポートAを選択するための切換指令をスイッチSW1へ与える(ステップS104)。そして、制御部20は、上述のステップS106,S108,S110,S112を再度実行する。
【0076】
電流設定値が更新されていない場合(ステップS114においてNOの場合)には、制御部20は、出力開始指令が継続しているか否かを判断する(ステップS116)。
【0077】
出力開始指令が継続している場合(ステップS116においてYESの場合)には、制御部20は、上述のステップS110,S112,S114を繰返す。
【0078】
出力開始指令が継続していない場合(ステップS116においてNOの場合)には、制御部20は、処理を終了する。
【0079】
なお、制御部20が保持部30へ保持指令を与えるタイミングは、演算増幅器OP1の応答速度に応じて決定されるが、演算増幅器OP1の応答速度に比較して、オン期間が短い場合には、オン期間内において出力電流IOUTが電流設定値まで上昇できないことがある。
【0080】
そこで、制御部20は、Duty比を無視して、出力開始指令を受けた直後の最初のオン期間、および、電流設定部10が新たな電流設定値を受けた直後の最初のオン期間を演算増幅器OP1の応答速度に応じて延長してもよい。
【0081】
なお、上述の実施の形態1においては、定電流回路101がLEDに電流を供給する場合について説明したが、負荷はLEDに限らず、供給電流を調整させる必要がある定電流負荷であれば、同様に適用できることは言うまでもない。
【0082】
この発明の実施の形態1によれば、保持部において電流設定値に相当する出力電流を流すための差動電圧が保持され、制御部は、保持部により出力される保持電圧をトランジスタのゲートへ与えるように切換指令を出力する。そのため、演算増幅器からの差動電圧に時間遅れの影響を受けることなく、一定のゲート電圧をトランジスタのゲートへ与えることができる。よって、Duty比やPWM信号の周期にかかわらず、電流設定値に相当する出力電流を供給できるので、高い精度で電流調整が可能な定電流回路を実現できる。
【0083】
また、この発明の実施の形態1によれば、制御部は、出力開始指令を受けた直後の最初のオン期間、および、電流設定値が更新された直後の最初のオン期間においてのみ、演算増幅器から出力される差動電圧をトランジスタのゲートへ与え、電流設定値に相当する出力電流を流すための差動電圧を生じさせる。そのため、トランジスタのゲートへ電流設定値に応じたゲート電圧を正確に与えることができ、かつ、演算増幅器の応答遅れによる影響を最小限にすることでできる。よって、高い精度で電流調整が可能な定電流回路を実現できる。
【0084】
また、この発明によれば、保持部は、演算増幅器から出力される差動電圧をデジタル値に変換してレジスタに記憶するので、時間の経過や外乱などによりその値が変化することはない。よって、電流設定値の更新頻度が低く、かつ、長時間の電流供給が必要とされる場合などにおいて、安定した電流供給を実現できる。
【0085】
[実施の形態2]
実施の形態1においては、保持部がトランジスタのゲートへ与える差動電圧をデジタル値に変換して保持する構成について説明した。
【0086】
一方、実施の形態2では、保持部が差動電圧をその電圧値に応じた電荷量として保持する構成について説明する。
【0087】
図5は、実施の形態2に従う定電流回路102の概略構成図である。
図5を参照して、定電流回路102は、実施の形態1に従う定電流回路101において、保持部30および制御部20をそれぞれ保持部40および制御部22に代えたものである。
【0088】
保持部40は、演算増幅器OP1から出力される差動電圧Vを受け、その電圧に応じた電荷量を蓄える。そして、保持部40は、その電荷量に応じた電圧を保持電圧Vとして出力する。すなわち、保持部40は、サンプル・ホールド回路として機能する。さらに、保持部40は、スイッチSW2およびSW3と、キャパシタ46と、演算増幅器OP2とからなる。
【0089】
スイッチSW2は、演算増幅器OP1の出力側とキャパシタ46との間に配置され、制御部22からポートBまたはCを選択するための切換指令を受けると閉路する。スイッチSW3は、キャパシタ46と演算増幅器OP2の入力側との間に配置され、制御部22からポートAを選択するための切換指令を受けると閉路する。そのため、スイッチSW2およびSW3は、同時に接続を「閉」となることはなく、いずれの時点においても、いずれか一方のみが「閉」となる。
【0090】
キャパシタ46は、スイッチSW2およびSW3と基準電位との間に介挿され、スイッチSW2が「閉」となっている期間は、演算増幅器OP1の出力側と接続され、スイッチSW3が「閉」となっている期間は、演算増幅器OP2の入力側と接続される。そして、キャパシタ46は、スイッチSW2が「閉」となっている期間において、差動電圧Vに応じた電荷を蓄積し、スイッチSW3が「閉」となっている期間において、蓄積した電荷に基づく差動電圧Vを演算増幅器OP2へ出力する。
【0091】
演算増幅器OP2は、実施の形態1と同様に、ユニティ・ゲイン・バッファであり、出力バッファとして機能する。そして、演算増幅器OP2は、キャパシタ46から受けた差動電圧Vと同一の電圧で、かつ、大きな出力容量をもった保持電圧VをスイッチSW1へ出力する。
【0092】
制御部22は、PWM信号発生部24を含み、出力開始指令を受けると、所定の周期で、かつ、外部から受けたDuty比に応じたPWM信号を発生する。そして、制御部22は、PWM信号に基づいて、そのオン期間においては、差動電圧Vまたは保持電圧VをトランジスタTRのゲートへ与え、そのオフ期間においては、基準電位をトランジスタTRのゲートへ与えるための切換指令をスイッチSW1へ出力する。また、制御部22は、定期的にレジスタ12から電流設定値を読出し、その値が更新されているか否かを判断する。
【0093】
さらに、制御部22は、出力開始指令を受けた直後の最初のオン期間、および、電流設定値が更新された直後の最初のオン期間においてのみ差動電圧VをトランジスタTRのゲートへ与え、その他のオン期間においては、保持電圧VをトランジスタTRのゲートへ与えるような切換指令を出力する。また、制御部22は、差動電圧VをトランジスタTRのゲートへ与えると同時に、スイッチSW2を「閉」とし、キャパシタ46に電荷を蓄えさせる。そして、制御部22は、それ以外の期間において、スイッチSW3を「閉」として、キャパシタ46に蓄えられている電荷に応じた電圧を保持電圧Vとして出力させる。
【0094】
以下、実施の形態2に従う定電流回路102の動作について詳細に説明する。
図6は、出力開始指令が与えられた直後における定電流回路102の各部の時間波形を示す図である。
【0095】
図6(a)は、PWM信号発生部24が発生するPWM信号の時間波形である。
図6(b)は、スイッチSW1の時間波形である。
【0096】
図6(c)は、スイッチSW2の時間波形である。
図6(d)は、スイッチSW3の時間波形である。
【0097】
図6(e)は、差動電圧Vの時間波形である。
図6(f)は、キャパシタ電圧Vchの時間波形である。
【0098】
図6(g)は、保持電圧Vの時間波形である。
図6(h)は、トランジスタTRへ与えられるゲート電圧Vの時間波形である。
【0099】
図6(a)および(b)を参照して、実施の形態1と同様に、制御部22は、出力開始指令を受けると、PWM信号の発生を開始する。そして、制御部22は、PWM信号のオン期間においては、スイッチSW1にポートAまたはBを選択させ、PWM信号のオフ期間においては、スイッチSW1にポートCを選択させる。特に、制御部22は、出力開始指令を受けた直後の最初のオン期間において、スイッチSW1にポートAを選択させ、それ以降のオン期間においては、スイッチSW1にポートBを選択させる。
【0100】
図6(c)を参照して、スイッチSW2は、スイッチSW1がポートBまたはCを選択している期間において「開」となり、スイッチSW1がポートAを選択している期間において「閉」となる。
【0101】
図6(d)を参照して、スイッチSW3は、スイッチSW1がポートAを選択している期間において「開」となり、スイッチSW1がポートBまたはCを選択している期間において「閉」となる。
【0102】
図6(e)を参照して、演算増幅器OP1は、所定の時定数をもって、電流設定値Vと抵抗Rに生じる電圧との差に応じた差動電圧Vを変化させる。
【0103】
図6(f)を参照して、スイッチSW2が「閉」となると、キャパシタ46への電荷の蓄積が開始される。その後、所定の時間が経過すると、キャパシタ46には、差動電圧Vに応じた電荷が蓄積され、キャパシタ46のキャパシタ電圧Vchは、差動電圧Vまで上昇する。
【0104】
図6(g)を参照して、キャパシタ46に差動電圧Vに応じた電荷が蓄積された後、スイッチSW2が「開」となり、かつ、スイッチSW3が「閉」となると、演算増幅器OP2は、キャパシタ電圧Vchを保持電圧Vとして出力する。その後、演算増幅器OP2は、スイッチSW3が「開」となるまで、保持電圧Vの出力を継続する。
【0105】
図6(h)を参照して、トランジスタTRのゲートへ与えられるゲート電圧Vは、出力開始指令を受けた直後の最初のオン期間では、演算増幅器OP1から出力される差動電圧Vとなり、それ以降のオン期間では、保持部40から出力される保持電圧Vとなる。保持電圧Vは、PWM信号のオン・オフに関係なく一定値に保持されるので、オン期間の開始直後から、立ち上がり時間無しに、トランジスタTRのゲートに対して保持電圧Vが与えられる。
【0106】
ところで、抵抗成分によるリークの発生や、演算増幅器OP2の増幅率が有限であることなどから、キャパシタ46に蓄積される電荷は時間と共に減少する。その減少率が緩やかであれば、ほとんど問題は生じないが、電荷が急速に減少する場合やノイズの影響を受けやすい場合には、トランジスタTRへ十分なゲート電圧Vを与えることができなくなる。そこで、キャパシタ46の電荷の減少速度が大きい場合やノイズの影響を受けやすい場合には、定期的に蓄電動作を行なうとしてもよい。
【0107】
図7は、定期的に蓄電動作を行なう場合における定電流回路102の各部の時間波形を示す図である。
【0108】
図7(a)は、PWM信号発生部24が発生するPWM信号の時間波形である。
図7(b)は、スイッチSW1の時間波形である。
【0109】
図7(c)は、スイッチSW2の時間波形である。
図7(d)は、スイッチSW3の時間波形である。
【0110】
図7(e)は、差動電圧Vの時間波形である。
図7(f)は、キャパシタ電圧Vchの時間波形である。
【0111】
図7(g)は、保持電圧Vの時間波形である。
図7(h)は、トランジスタTRへ与えられるゲート電圧Vの時間波形である。
【0112】
図7(a)、(b)、(c)および(d)を参照して、制御部22は、定期的に蓄電動作を行なうようにスイッチSW1,SW2,SW3に対して切換指令を与える。
【0113】
図7(e)および(f)を参照して、スイッチSW2が「閉」となると、キャパシタ46への電荷の蓄積が開始され、キャパシタ電圧Vchが上昇する。その後、スイッチSW2が「開」となり、スイッチSW3が「閉」となると、キャパシタ電圧Vchが保持電圧VとしてトランジスタTRのゲートへ与えられる。一方、キャパシタ46に蓄積されている電荷の減少に従い、キャパシタ電圧Vchは所定の速度をもって低下する。そこで、制御部22は、キャパシタ電圧Vchの電圧低下分ΔVchが所定の範囲内に収まるように、スイッチSW2を「閉」、およびスイッチSW3を「開」に切換え、定期的に蓄電動作を行なう。蓄電動作の直後には、キャパシタ電圧Vchは、差動電圧Vまで上昇する。
【0114】
図7(g)を参照して、保持電圧Vは、キャパシタ電圧Vchに従い所定の速度をもって低下するが、定期的に蓄電動作を行なうことで、差動電圧Vまで引き上げられるため、トランジスタTRのゲートへ必要な電圧を与えることができる。
【0115】
図7(h)を参照して、蓄電動作を行なうオン期間においては、差動電圧VがトランジスタTRのゲートへ与えられ、それ以外のオン期間においては、保持電圧VがトランジスタTRのゲートへ与えられる。
【0116】
なお、キャパシタ46は、最初のオン期間においてのみ蓄電動作を行なうため、オン期間が短い場合やキャパシタ46の時定数(静電容量)が大きい場合には、必要な保持電圧Vまで蓄電することができないことがある。
【0117】
そこで、制御部22は、Duty比を無視して、出力開始指令を受けた直後の最初のオン期間、および、電流設定部10が新たな電流設定値を受けた直後の最初のオン期間を延長してもよい。
【0118】
この発明の実施の形態2によれば、保持部は、演算増幅器から出力される差動電圧に応じた電荷量を蓄え、その蓄えた電荷量に基づいて、保持電圧を出力する。そのため、保持部は、電荷を蓄えるためのキャパシタおよび蓄電動作を制御するためのスイッチだけで実現できるので、より簡略化した構成となり、コストを抑制することができる。
【0119】
また、この発明の実施の形態2によれば、保持部は、出力バッファを介して、蓄電された電荷量に応じた保持電圧を出力するので、保持電圧の出力に伴う電荷量の減少を抑制できる。また、保持部は、トランジスタのゲートへ十分な電流を供給できるので、ゲート容量が大きいトランジスタに対しても、高速なスイッチングを行なわせることができる。
【0120】
[実施の形態3]
実施の形態1および2においては、保持部に含まれる出力バッファを介して保持電圧が出力される構成について説明した。
【0121】
一方、実施の形態3では、出力電流値を負帰還させるための演算増幅器を出力バッファとしても利用する構成について説明する。
【0122】
図8は、実施の形態3に従う定電流回路103の概略構成図である。
図8を参照して、定電流回路103は、実施の形態2に従う定電流回路102において、スイッチSW4を付加し、かつ、保持部40およびスイッチSW1をそれぞれ保持部50およびスイッチSW5に代えたものである。
【0123】
スイッチSW4は、演算増幅器OP1の入力側に配置され、制御部20から受けた切換指令に応じて、演算増幅器OP1へ与える信号を切換える。そして、制御部22からポートAを選択するための切換指令を受けると、スイッチSW5は、演算増幅器OP1の「+」側に電流設定値Vを与え、「−」側に抵抗Rに生じる電圧を与える。すなわち、スイッチSW5は、実施の形態1および2と同様に、電流設定値Vに相当する出力電流IOUTを供給するための負帰還回路を形成する。
【0124】
一方、制御部22からポートBまたはCを選択するための切換指令を受けると、スイッチSW4は、演算増幅器OP1の「+」側にキャパシタ電圧Vchを与え、「−」側に演算増幅器OP1の出力電圧を与える。すなわち、スイッチSW4は、演算増幅器OP1からなるユニティ・ゲイン・バッファを形成し、保持部50の出力バッファとして機能させる。
【0125】
保持部50は、実施の形態2に従う定電流回路102における保持部40において、出力バッファである演算増幅器OP2を取除いたものである。その他の部位は、保持部40と同様であるので、詳細な説明は繰返さない。
【0126】
スイッチSW5は、トランジスタTRのゲートの入力側に配置され、制御部20から受けた切換指令に応じて、トランジスタTRのゲートへ与える電圧を切換える。そして、制御部22からポートAまたはBを選択するための切換指令を受けると、スイッチSW5は、演算増幅器OP1から出力される差動電圧V(ポートAへの切換指令時)または保持電圧V(ポートBへの切換指令時)をトランジスタTRのゲートへ与える。一方、制御部22からポートCを選択するための切換指令を受けると、スイッチSW5は、基準電位をトランジスタTRのゲートへ与える。
【0127】
以下、実施の形態3に従う定電流回路103の動作について詳細に説明する。
PWM信号のオン期間において、制御部22からポートAを選択するための切換指令が与えられると、演算増幅器OP1は、電流設定値Vおよび抵抗Rに生じる電圧を受ける。そして、演算増幅器OP1は、抵抗Rに生じる電圧が負帰還されることで、出力電流IOUTが電流設定値Vに応じた電流値と一致するように、電流指令値である差動電圧Vを変化させる。同時に、トランジスタTRのゲートには、演算増幅器OP1から出力された差動電圧Vが与えられる。また、保持部50は、演算増幅器OP1から出力される差動電圧Vを受け、その電圧に応じた電荷量を蓄える。
【0128】
次に、PWM信号のオン期間が終了し、制御部22からポートCを選択するための切換指令が与えられると、保持部50は、差動電圧Vによる電荷の蓄電を終了し、キャパシタ46に蓄えられた電荷量に応じたキャパシタ電圧Vchを出力する。同時に、演算増幅器OP1は、キャパシタ電圧Vchおよび自己の出力電圧を受ける。そして、演算増幅器OP1は、キャパシタ電圧Vchの出力容量を増大させて、保持電圧Vとして出力する。
【0129】
また、トランジスタTRのゲートには、基準電位が与えられる。
さらに、PWM信号のオフ期間が終了し、制御部22からポートBを選択するための切換指令が与えられると、保持部50および演算増幅器OP1の状態は変化せず、トランジスタTRのゲートに、演算増幅器OP1から出力された保持電圧Vが与えられる。
【0130】
以下、制御部22から出力される切換指令に応じて、同様の動作が繰返される。
上述のように、保持部から出力される保持電圧VがトランジスタTRのゲートへ与えられる期間においては、原則として、抵抗Rに生じる電圧を負帰還させる必要がない。そのため、負帰還動作を中止し、演算増幅器OP1を出力バッファとして機能させることができる。
【0131】
この発明の実施の形態3によれば、実施の形態2における効果に加えて、出力電流を調整するための演算増幅器を保持部の出力バッファとして機能させるため、1つの演算増幅器で定電流回路を構成することができる。よって、定電流回路の構成がより簡素化され、製造コストを抑制することができる。
【0132】
上述した実施の形態以外にも、たとえば、複数のトランジスタがそれぞれ負荷へ電流を供給する定電流回路において、各トランジスタへ保持電圧を与える共通の保持部をもつように構成してもよい。また、保持部に含まれるレジスタを不揮発性のレジスタとし、初回のオン期間以降または電流設定値が変更された後の最初のオン期間以降においては、外部から供給される電源が喪失した場合であっても差動電圧の取込みを省略するように構成してもよい。さらに、出力開始後の最初のオン期間または電流設定値が変更された後の最初のオン期間以降において、電流設定部や演算増幅器の動作を停止するように構成してもよい。
【0133】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1】実施の形態1に従う半導体装置の概略構成図である。
【図2】出力開始指令が与えられた直後における定電流回路の各部の時間波形を示す図である。
【図3】電流設定値が変更された場合における定電流回路の各部の時間波形を示す図である。
【図4】定電流回路の制御部における処理フローチャートである。
【図5】実施の形態2に従う定電流回路の概略構成図である。
【図6】出力開始指令が与えられた直後における定電流回路の各部の時間波形を示す図である。
【図7】定期的に蓄電動作を行なう場合における定電流回路の各部の時間波形を示す図である。
【図8】実施の形態3に従う定電流回路の概略構成図である。
【図9】従来のPWM方式の定電流回路の概略構成図である。
【図10】従来の定電流回路における各部の時間波形を示す図である。
【図11】図10(c)に示す拡大区間における各部の時間波形である。
【符号の説明】
【0135】
2 電源ノード、10 電流設定部、12,34 レジスタ、14,36 デジタル/アナログ変換器(D/A)、20,22 制御部、24,80 PWM信号発生部、30,40,50 保持部、32 デジタル/アナログ変換器(D/A)、46 キャパシタ、101,102,103,200 定電流回路、IOUT 出力電流、LED 負荷、OP1,OP2 演算増幅器、R 抵抗、R1,R2 分圧抵抗、SW1,SW2,SW3,SW4,SW5,SW6 スイッチ、Td1 むだ時間、Td2 遅れ時間、TR トランジスタ、V 差動電圧、V 保持電圧、VCC 電源電圧、Vch キャパシタ電圧、V ゲート電圧、V 電流設定値、ΔVch 電圧低下分。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流調整指令に従い負荷へ供給する電流を調整する電流調整部と、
第1の設定値と前記負荷へ供給される電流値に応じた値とを比較し、前記電流値が前記第1の設定値と一致するように第1の電流調整指令を出力する比較部と、
第2の設定値に基づいて、前記電流調整部から電流が供給される時間比率を調整するための切換指令を出力する制御部と、
前記制御部からの前記切換指令に基づいて前記第1の電流調整指令を断続し、前記電流調整部へ与えるスイッチ部と、
保持指令を受けると、その時点における前記第1の電流調整指令を保持し、保持した前記第1の電流調整指令を第2の電流調整指令として出力する保持部とを備え、
前記制御部は、
前記負荷へ供給される電流値が前記第1の設定値と略一致した時点において、前記保持部へ前記保持指令を与え、その後、
前記スイッチ部に対して、前記第1の電流調整指令に代えて前記保持部から出力される前記第2の電流調整指令を断続して前記電流調整部へ与えるための前記切換指令を出力する、定電流回路。
【請求項2】
前記切換指令は、オンとオフとが交互に繰返されるパルス信号であり、
前記制御部は、
外部から電流の供給を開始するための出力開始指令を受けて、前記切換指令の出力を開始し、かつ、
前記切換指令の出力を開始した後の最初のオン期間において、前記保持部へ前記保持指令を与える、請求項1に記載の定電流回路。
【請求項3】
前記制御部は、
前記第1の設定値が更新されると、前記スイッチ部に対して、前記第1の電流調整指令を断続して前記電流調整部へ与えるための前記切換指令を出力し、その後、
前記負荷へ供給される電流値が更新された前記第1の設定値と略一致した時点において、前記保持部へ前記保持指令を与える、請求項1または2に記載の定電流回路。
【請求項4】
前記保持部は、前記第1の電流調整指令をデジタル値に変換して記憶する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の定電流回路。
【請求項5】
前記保持部は、前記第1の電流調整指令に応じた電荷量を蓄電することにより前記第1の電流調整指令を保持する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の定電流回路。
【請求項6】
前記保持部は、出力バッファを介して前記第2の電流調整指令を出力する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の定電流回路。
【請求項7】
前記比較部は、さらに、前記保持部から出力される前記第2の電流調整指令の出力バッファとして機能する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の定電流回路。
【請求項8】
電源と、
前記電源と接続された負荷と、
前記電源および前記負荷と直列に接続され、電流調整指令に従い負荷へ供給する電流を調整する電流調整部と、
第1の設定値と前記負荷へ供給される電流値に応じた値とを比較し、前記電流値が前記第1の設定値と一致するように第1の電流調整指令を出力する比較部と、
第2の設定値に基づいて、前記電流調整部から電流が供給される時間比率を調整するための切換指令を出力する制御部と、
前記制御部からの前記切換指令に基づいて前記第1の電流調整指令を断続し、前記電流調整部へ与えるスイッチ部と、
保持指令を受けると、その時点における前記第1の電流調整指令を保持し、保持した前記第1の電流調整指令を第2の電流調整指令として出力する保持部とを備え、
前記制御部は、
前記負荷へ供給される電流値が前記第1の設定値と略一致した時点において、前記保持部へ前記保持指令を与え、その後、
前記スイッチ部に対して、前記第1の電流調整指令に代えて前記保持部から出力される前記第2の電流調整指令を断続して前記電流調整部へ与えるための前記切換指令を出力する、電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−350608(P2006−350608A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−174870(P2005−174870)
【出願日】平成17年6月15日(2005.6.15)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】