実体顕微鏡装置
【課題】高分解能で立体観察することができる実体顕微鏡装置を提供する。
【解決手段】観察光学系10により集光された標本Sからの光をそれぞれ受ける位置に配列された複数のマイクロレンズMLを有するマイクロレンズアレイ14と、マイクロレンズMLごとに複数の画素が割り当てられてなる撮像素子15と、撮像素子15の出力に対して所定の処理を施して左眼用画像及び右眼用画像を生成する画像処理回路22と、画像処理回路22において生成された左眼用画像及び右眼用画像をそれぞれ表示する左眼用表示装置16L及び右眼用表示装置16Rとを備え、画像処理回路22は、マイクロレンズMLに割り当てられた複数の画素ごとに互いに同一の配置となる所定数の画素の画素データをそれぞれ抽出し、この抽出された画素データを当該配置に応じて合成することで互いに視差の異なる複数の視差画像を生成し、複数の視差画像の中から左眼用画像及び右眼用画像を取得する。
【解決手段】観察光学系10により集光された標本Sからの光をそれぞれ受ける位置に配列された複数のマイクロレンズMLを有するマイクロレンズアレイ14と、マイクロレンズMLごとに複数の画素が割り当てられてなる撮像素子15と、撮像素子15の出力に対して所定の処理を施して左眼用画像及び右眼用画像を生成する画像処理回路22と、画像処理回路22において生成された左眼用画像及び右眼用画像をそれぞれ表示する左眼用表示装置16L及び右眼用表示装置16Rとを備え、画像処理回路22は、マイクロレンズMLに割り当てられた複数の画素ごとに互いに同一の配置となる所定数の画素の画素データをそれぞれ抽出し、この抽出された画素データを当該配置に応じて合成することで互いに視差の異なる複数の視差画像を生成し、複数の視差画像の中から左眼用画像及び右眼用画像を取得する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、標本を立体的に観察することができる実体顕微鏡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、生物分野や工業分野等において立体観察などの用途で実体顕微鏡が広く利用されている。例えば、平行系実体顕微鏡では、単対物レンズで被検物体(標本)からの光を集光した後、左右独立した光学系(アフォーカルズームレンズと結像レンズを組み合わせた結像光学系)に分割することにより、互いに視差の異なる像をそれぞれ結像させる。観察者は、各像を接眼レンズを通して個別に左右の眼で観察することにより立体視が可能である。
【0003】
このような平行系実体顕微鏡では、対物レンズで集光された光が左右の光学系において2つの光路に分割されるため、左右の光学系の各有効径(光束のNA)が対物レンズの有効径の約半分程度になってしまい、それに応じて分解能が低下することとなる。そのため、有効径を左右の光学系で非対称に構成して有効径に差を付けることで、有効径の大きい一方の光学系では分解能を向上させ、有効径の小さい他方の光学系では焦点深度を深くさせた実体顕微鏡が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−65651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の実体顕微鏡においても、対物レンズからの光を2つの光路に分割しているため、左右の光学系で有効径に差を付けた場合に、一方の光学系の有効径を大きく確保すると、他方の光学系の有効径は小さくしなければならず、それに応じて分解能がさらに低下するという課題があった。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、高分解能で立体観察することができる実体顕微鏡装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を達成するため、本発明に係る実体顕微鏡装置は、標本からの光を集光する観察光学系と、前記観察光学系により集光された前記標本からの光をそれぞれ受ける位置に配列された複数のマイクロレンズを有するレンズアレイと、前記マイクロレンズごとに複数の画素が割り当てられてなる撮像素子と、前記撮像素子の出力に対して所定の処理を施して左眼用画像及び右眼用画像を生成する画像処理部と、前記画像処理部において生成された前記左眼用画像及び前記右眼用画像をそれぞれ表示する左眼用表示部及び右眼用表示部とを備え、前記画像処理部は、前記マイクロレンズに割り当てられた前記複数の画素ごとに互いに同一の配置となる所定数の画素の画素データをそれぞれ抽出し、この抽出された画素データを当該配置に応じて合成することで互いに視差の異なる複数の視差画像を生成し、前記複数の視差画像の中から前記左眼用画像及び前記右眼用画像を取得する。
【0008】
なお、本発明に係る実体顕微鏡装置において、前記複数の画素において、前記左眼用画像を生成するために抽出される前記所定数と、前記右眼用画像を生成するために抽出される前記所定数とが互いに相違するように構成してもよい。
【0009】
また、本発明に係る実体顕微鏡装置において、前記左眼用画像を生成するために抽出される前記所定数と、前記右眼用画像を生成するために抽出される前記所定数とのうちの、いずれか一方の所定数が1であり、他方の所定数が複数である構成でもよい。
【0010】
また、本発明に係る実体顕微鏡装置において、前記観察光学系が、前記標本からの光を入射させて略平行光束として射出する対物レンズと、前記対物レンズからの光束を受けて当該光束径を変更する変倍光学系と、前記変倍光学系からの光束を受けて前記マイクロレンズの近傍位置に一次像面を形成する結像レンズとを有し、以下の条件式を満足することが好ましい。
NAL ≦ D/2f
p/f ≦ NAH
但し、
NAL:前記変倍光学系の最低倍率時における1次像面での光束のNA、
NAH:前記変倍光学系の最高倍率時における1次像面での光束のNA、
f :前記マイクロレンズの焦点距離、
D :前記マイクロレンズの有効径、
p :前記撮像素子の画素ピッチ。
【0011】
また、本発明に係る実体顕微鏡装置において、前記結像レンズと前記レンズアレイとの間の光路に、フィールドレンズが前記変倍光学系の変倍率に応じて挿抜自在に配置されている構成でもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高分解能で立体観察することができる実体顕微鏡装置を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態に係る実体顕微鏡の斜視図である。
【図2】上記実体顕微鏡の要部構成を示す図である。
【図3】本実施形態の光学系の概要を説明するための図である。
【図4】撮像素子面におけるML領域の一例を示す図である。
【図5】ML領域における画素信号の検出方法を説明するための図である。
【図6】1画素単位の画素ブロックによる画素信号の検出方法を説明するための図である。
【図7】1画素単位の画素ブロックにおいて撮像素子の出力から左眼用画像及び右眼用画像を生成する処理を示す図である。
【図8】複数画素単位の画素ブロックによる画素信号の検出方法を説明するための図である。
【図9】複数画素単位の画素ブロックにおいて撮像素子の出力から左眼用画像及び右眼用画像を生成する処理を示す図である。
【図10】ズーム光学系を変倍したときの一次像面での光束のNAの変化を示す図である。
【図11】上記実体顕微鏡においてフィールドレンズを配置した変形例を示す図である。
【図12】ズーム光学系の変倍に応じてフィールドレンズを挿抜したときの光線の変化の様子を示す図である。
【図13】画素ブロックの取り方の変形例を示す図である。
【図14】画素ブロックの上記変形例において、撮像素子の出力から左眼用画像及び右眼用画像を生成する処理を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態に係る実体顕微鏡について図面を参照して説明する。なお、以下の実施の形態は、発明の理解の容易化のためのものに過ぎず、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲において当業者により実施可能な付加・置換等を施すことを排除することは意図していない。
【0015】
図1に本実施形態に係る実体顕微鏡100の斜視図を示しており、先ず、この図を参照して実体顕微鏡100の全体構成を概要説明する。この実体顕微鏡100は、単対物双眼構成の顕微鏡装置であり、透過照明装置を内蔵するベース部(照明部)101と、内部にズーム光学系を有するズーム鏡体103と、ズーム鏡体103の上部に取り付けられた鏡筒104と、この鏡筒104に取り付けられた左右の双眼部105と、ズーム鏡体103を上下動させる焦準機構106等を備えて構成される。
【0016】
ベース部101の上面にはステージガラスを埋め込んだ標本載置台102が設けられている。また、ベース部101の基部側に支柱107が立設されて、この支柱107に焦準機構106が設けられている。
【0017】
ズーム鏡体103は、焦準機構106を介してベース部101に設けられており、その下部には対物レンズ取付部108が設けられ、この対物レンズ取付部108に交換可能な対物レンズが取り付けられている。この対物レンズ取付部108には、予め定められた複数の低倍率の対物レンズ及び複数の高倍率の対物レンズのうちから一つが選択されて取り付けられる構成の場合と、予め定められた複数の低倍率の対物レンズ及び複数の高倍率の対物レンズのうちから複数が選択されて取り付けられる構成の場合などがある。
【0018】
ズーム鏡体103の内部にはズーム光学系(アフォーカルズームレンズ)が配置され、このズーム鏡体103の外側にはズーム光学系を移動させるためのズームハンドル109が配置されている。ズーム光学系は、変倍のための可動群を含んでおり、ズームハンドルの回動操作に連動して予め定められた移動量に則り光軸方向に移動してズーム変倍される。また、ズーム鏡体103の上部には、鏡筒104が取り付けられ、この鏡筒104には接眼レンズを有する左右の双眼部105が取り付けられている。
【0019】
焦準機構106は、標本に焦点を合わせるための焦準ハンドル110と、この焦準ハンドル110の回動操作に伴いズーム鏡体103を軸に沿って上下動させる機構部(図示せず)とを有している。そのため、焦準機構106は、ズーム鏡体103と共に鏡筒104及び双眼部105を一体的に標本載置台102に対して相対的に上下動させ、標本に対する焦点合わせを行う。
【0020】
標本は、ベース部101の標本載置台(ステージガラス)102上に載置され、対物レンズの光軸近傍に配置されるとともに、ベース部101の内部に配設された透過照明装置により透過照明される。照明された標本は、ズーム鏡体103、鏡筒104及び双眼部105等を介して観察される。以上のようにして、左右両眼において標本を立体視可能な実体顕微鏡100が構成されている。
【0021】
引き続き、図2及び図3を追加参照して、実体顕微鏡100について更に詳細な構成を説明する。ここで、図2は実体顕微鏡100の要部構成を示す図である。
【0022】
この実体顕微鏡100では、標本Sに照明光を照射する透過照明装置(図示せず)と、標本Sの像を観察するための対物レンズを含む観察光学系10と、観察光学系10によって形成される一次像面に配置されたマイクロレンズアレイ14と、マイクロレンズアレイ14の焦点面に配置された撮像素子15と、撮像素子15からの出力に基づいて左眼用画像及び右眼用画像を表示する左眼用表示装置16L及び右眼用表示装置16Rと、左右一対の接眼レンズ17L,17Rとを備えており、これらが前述のベース部101、ズーム鏡体103、鏡筒104及び双眼部105に搭載されている。観察光学系10は、標本S側から順に、対物レンズ11、この対物レンズ11から射出された略平行光束の径を変倍して再び略平行光束として射出するズーム光学系(変倍光学系)12、ズーム光学系12からの平行光束を集光して物体の像を結像する結像レンズ13を有している。
【0023】
更に、実体顕微鏡100は、この顕微鏡の作動を統括的に制御する制御ユニット20として、駆動回路21、画像処理回路22、メモリ23、制御回路24、ユーザインターフェース25等を備えている。結像レンズ13の焦点面近傍に入射した結像光束は、撮像素子15において電気信号に変換される。この撮像素子15は駆動回路21によって駆動され、撮像素子15からの出力信号は、この駆動回路21を介して画像処理回路22に取り込まれる。画像処理回路22は、その出力信号に基づき標本の画像データを合成する。合成された画像データは、メモリ23に格納されるとともに、左眼及び右眼表示装置16L,16Rにおいて画像表示される。
【0024】
また、以上の駆動回路21、画像処理回路22、及びメモリ23は、制御回路24によって制御される。制御回路24は、例えばマイクロコンピュータなどにより構成され、ユーザインターフェース25を介してユーザから入力された指示に従ってその制御を実行する。このユーザ操作は、例えば、所定のディスプレイに表示されるGUI(Graphical User Interface)の表示画面に基づく、マウスやキーボード操作等の入力装置の操作によって実現される。
【0025】
図3は、この実体顕微鏡100において左右二視点の視差画像を生成する原理を示しており、以下において実体顕微鏡100の光学系の概要を中心としてこれを説明する。なお、その説明を簡略化するために、図3においては、観察光学系10を構成する対物レンズ11、ズーム光学系12及び結像レンズ13を、纏めて主レンズ10Lとして図示している。
【0026】
この構成では、所定の位置にある標本Sの表面(以下、標本面Sとも称する)が主レンズ10Lで結像する面にマイクロレンズアレイ14を配置し、マイクロレンズアレイ14の焦点距離だけ離れた位置に撮像素子15を配置している。マイクロレンズアレイ15は、複数のマイクロレンズMLを二次元状に配列してなる光学素子である。このとき、撮像素子15の面が、主レンズ10L(対物レンズ11)の瞳面と共役になっており、各マイクロレンズMLで結像した像のできる領域(以下、「ML領域」と称する)から得られる各画素の画像信号は、瞳を分割した像となっている。換言すると、結像された光線が、瞳面から見て違う角度ごとの光線に振り分けられている。
【0027】
撮像素子15は、マイクロレンズ14からの光を受光して撮像データを取得するものである。撮像素子15は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)センサや、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサなどの固体撮像素子であり、各マイクロレンズMLを通過した光を受光する画素配列を、マイクロレンズMLに対応した配置パターンで配置してなる。すなわち、ML領域として複数の画素群が割り当てられるようになっている。
【0028】
図4は、撮像素子15における撮像面上のML領域の一例を示す図である。図4において、6×6個の円の各々は、マイクロレンズアレイ14を主レンズ10Lの光軸方向から見た場合に二次元状に配列されたマイクロレンズMLを示しており、これに重なるように格子状に配列された6×6個の四角のそれぞれの領域が、撮像素子15におけるML領域を示している。1つのML領域に注目してみると、(各マイクロレンズMLに割り当てられた)ML領域の縦方向の画素数及び横方向の画素数はそれぞれ5個(つまり、5×5個の画素配列)である。すなわち、マイクロレンズアレイ14を構成する36個のマイクロレンズMLによって結像された像のそれぞれが、撮像素子15の撮像面上の5×5個からなる画素群上にML領域を形成している。この図4の例では、撮像素子15の画素数は30×30個を想定しており、各マイクロレンズMLを通過してきた光線がML領域における25個(5×5個)の画素の各々に受光されるようになっている。
【0029】
ここで、図3においては説明を分かり易くするために、撮像素子15において光軸と垂直な面内における一方向(これをX方向(左右方向)とする)に並んだ5つの画素a,b,c,d,eに入射する各光線(対応するマイクロレンズMLの中心を通る主光線のみ)を示している。図3において、標本面S上の点S1からの光線は、主レンズ10Lを通過する際に瞳面を通って(ここではr1〜r5の)光線群となり、各マイクロレンズMLで結像した像のできる領域、すなわち各ML領域の撮像素子15の画像信号となる。図示のように、焦点位置(ピント面)からの光線r1,r2,r3,r4,r5は、マイクロレンズアレイ14の表面の1点に集まり、マイクロレンズMLのレンズ作用によって撮像素子15の面上では、各ML領域のそれぞれの画素a,b,c,d,eに対応して、ai,bi,ci,di,eiの画素信号となる。ここで、符号ai,bi,ci,di,eiで示すのは、X方向に並ぶ5つの画素a,b,c,d,eが個別に出力する画素信号(画素値)の概念である。なお、ここでは、X方向に並ぶ5つの画素a,b,c,d,eのみに着目しているが、実際はX,Y方向(互いに直交する2方向)に並ぶ25個の画素の各々から個別に画素信号が出力される。
【0030】
撮像素子15では、駆動回路21による駆動動作に応じて、画素単位で光線情報の読み出しが行われて、画像データが得られる。このように撮像素子15で捉えた画像データでは、標本面Sからの光線に対して、その強度情報とともに、マイクロレンズMLの配置によって光線の位置情報と、各マイクロレンズMLに割り当てられたML領域内の画素の配置によって光線の進行方向とが独立に検出される。すなわち、光線の視差情報を検出することができる。
【0031】
本実施形態では、例えば、標本面S上の点S1からの光線のうち、中心の光線r3よりも右側にある光線(例えば、光線r4,r5)については右眼用の視差情報を有しているとみなせる。一方、中心の光線r3よりも左側にある光線(例えば、光線r1,r2)については左眼用の視差情報を有しているとみなせる。
【0032】
画像処理回路22は、撮像素子15からの出力に基づいて、所定の画像処理を施して、左右2つの視点における視差画像を生成する。この視差画像の解像度はマイクロレンズMLの個数で決まり、視差数は各マイクロレンズMLに割り当てられたML領域の画素数で決まる。ここで、各マイクロレンズMLに割り当てられたML領域を、1画素単位もしくは複数画素単位でいくつかの領域に分割し、それぞれの領域だけで選択処理した画像データを生成する。主レンズ10L(対物レンズ11)の瞳面と撮像素子15の撮像面とは共役なので、これにより、領域分割の数だけその瞳面が分割された画像が得られる。
【0033】
このようにML領域を1画素単位または複数画素単位で分割してなる一つの領域(所定数の画素からなる画素領域)を以降では画素ブロックGBと称して説明する。ML領域を1画素単位で領域分割する場合(すなわち画素ブロックGBが1画素の場合)、生成できる視差画像(多視点画像)の数は最大で5×5=25個である。
【0034】
図5はML領域における画素信号の検出方法を説明するための図であり、図6は撮像素子15全体としての画素信号の検出方法を説明するための図である。ここでは説明を簡略化するために、ML領域においてX方向(左右方向)に異なる5つの領域で、画素ブロックGBを1画素単位として検出することで視差画像を生成する場合を例示する。撮像素子15は主レンズ10L(対物レンズ11)の瞳面と光学的に共役な関係になっているので、左右方向5つの視点(角度)で、1画素に相当するレンズの開口からの光線により画像データが生成されることになる。ここで検出した5つの画素は、図3における画素a,b,c,d,eと同じ画素と考えてよい。各マイクロレンズMLに割り当てられた画素ブロックGBの画素数は、共役関係にある瞳面での検出する光線の大きさ(光束径)を決める。つまりレンズのF値に相当し、これが小さいと焦点深度が深くなり、大きいと焦点深度が浅くなる。よって、画素ブロックGBとして1画素検出した場合では焦点深度の深い画像(視差画像)が得られる。
【0035】
図6において、各ML領域で互いに同じ位置の画素(ここでは、X方向に並ぶ画素a,b,c,d,eごと)における画素信号をそれぞれ抽出し、この抽出した画素信号同士を合成することで、互いに視差の異なる5つの視差画像が得られる。つまり、ML領域ごとに、画素信号aiを集めた画像、画素信号biを集めた画像、画素信号ciを集めた画像、画素信号diを集めた画像、及び画素信号eiを集めた画像、のそれぞれが視差画像として生成される。なお、ここでは、ML領域でX方向に並ぶ5つの画素a,b,c,d,eのみに着目し、それら5つの画素に基づいて5つの視差画像を生成しているが、実際はML領域でX,Y方向(2方向)に並ぶ25個の画素に基づいて25個の視差画像を生成できる。
【0036】
画像処理回路22は、このように生成される視差画像のうち、左視点における視差画像を左眼用画像とし、右視点における視差画像を右眼用画像として取得する。例えば、図7に示すように、各ML領域の最左列中央に位置する画素aの出力に基づいて得られる左視点の視差画像を左眼用画像30Lとし、各ML領域の最右列中央に位置する画素eの出力に基づいて得られる右視点の視差画像を右眼用画像30Rとする。このとき、各ML領域の画素aの出力(画素信号)が左眼用画像30Lの画素1つ1つに対応され、各ML領域の画素eの出力(画素信号)が右眼用画像30Rの画素1つ1つに対応される。ここで、画素a及び画素eの出力のみに基づいて左右二視点の左眼用画像30L及び右眼用画像30Rを取得する場合には、画素a及び画素e以外の画素信号は実質的に不要であるため、駆動回路21の制御により、撮像素子15からは必要とされる画素a及び画素eの画素信号のみを選択的に取り出すようにすることが好ましい。
【0037】
なお、これに限定されず、画素bの出力から生成した視差画像を左眼用画像とし、画素dの出力から生成した視差画像を右眼用画像としてもよく、また、画素aの出力から生成した視差画像を左眼用画像とし、画素cの出力から生成した視差画像を右眼用画像としてもよく、これらはユーザインターフェース25を利用してユーザが任意に指定することが可能である。
【0038】
一方、図8では、撮像素子15の各ML領域において光軸と垂直な面内におけるX方向に異なる領域で、画素ブロックGBとして複数画素単位(例えば、短冊状に6個(2×3個)の画素)で検出する場合を例示する。図8において、各ML領域で互いに同じ位置の画素領域(ここでは、図8で塗り潰された6画素の画素ブロックGB)における画素信号をそれぞれ抽出し、この画素ブロックGBを構成する6つの画素の画素信号の和を視差画像の1画素分の画素信号として求め、この画素信号同士をその配置に応じて合成することで互いに視差の異なる4つの視差画像が得られる。
【0039】
画像処理回路22は、このように生成される視差画像のうち、左視点における視差画像を左眼用画像とし、右視点における視差画像を右眼用画像として取得する。例えば、図9に示すように、ML領域の左端中央に位置する6つの画素(画素ブロック)の出力に基づいて得られる左視点の視差画像を左眼用画像40Lとし、右端中央に位置する6つの画素(画素ブロック)の出力に基づいて得られる右視点の視差画像を右眼用画像40Rとする。このとき、ML領域の左端中央に位置する6つの画素の出力(画素信号)が左眼用画像40Lの画素1つ1つに対応され、ML領域の右端中央に位置する6つの画素の出力(画素信号)が右眼用画像40Rの画素1つ1つに対応される。ここでも、1画素単位の画素ブロックGBの場合と同様に、撮像素子15からは必要とされる画素ブロックGBの画素信号のみを選択的に取り出すようにすることが好ましい。また、図8(B)に示す6つの画素(画素ブロック)の出力から生成した視差画像を左眼用画像とし、図8(C)に示す6つの画素(画素ブロック)の出力から生成した視差画像を右眼用画像としてもよく、これらはユーザインターフェース25を利用してユーザが任意に指定することが可能である。
【0040】
なお、この画素ブロックGBとして6画素単位の検出においては、この画素ブロックGBで捉える瞳面を通過する光線は上述の1画素単位の検出の場合と比して6倍広いので(F値が小さくなり)、得られる視差画像(左眼用画像40L及び右眼用画像40R)の焦点深度は浅くなるが、分解能は高められる。従って、画素ブロックGB(光束のNA)を小さくとると焦点深度の深い視差画像が得られ、画素ブロックGB(光束のNA)を大きくとると分解能の高い視差画像が得られることになる。ここで、画素ブロックGBの取り方としては、上述の形態に限定されず、所望の分解能及び焦点深度に応じて、1画素単位または複数画素単位で任意に設定することが可能である。
【0041】
画像処理回路22は、これら左右二視点の視差画像を左眼用画像及び右眼用画像としてメモリ23に記憶するとともに、左眼用表示装置16L及び右眼用表示装置16Rに出力して標本の拡大像として画像を表示させる。ユーザは、左右の眼で個別に表示装置16L,16R(双眼部105)を覗くと、視差を持った左眼用画像及び右眼用画像を左右の眼で個別に捉えられるので、標本の立体視が実現する。
【0042】
ここで、ユーザインターフェース25(ユーザ操作)によって、各ML領域内で画素ブロックGBを任意に選択設定して、左眼用画像及び右眼用画像を、左右視点で共に焦点深度の深い視差画像としてそれぞれ表示させたり、左右視点で共に分解能の高い画像としてそれぞれ表示させることができるが、左眼用画像と右眼用画像とを異なる画素数の画素ブロックGBから取得し、これを左右視点の視差画像として表示させることも可能である。より具体的には、左眼用画像及び右眼用画像のうち、一方の画像を1画素単位の画素ブロックGBで生成(例えば、図6(A)に示すように上述の画素aの出力に基づく左視点の視差画像30Lを生成)し、他方の画像を複数画素単位の画素ブロックGBで生成(例えば、図8(D)に示すように、上述の右端中央の6画素の出力に基づく右視点の視差画像40Rを生成)することで、一方の眼では焦点深度の深い視差画像として捉え、他方の眼では分解能の高い視差画像として捉えることができ、これにより、焦点深度の深い画像と分解能の高い画像とを両眼視差の画像として同時に観察することができる。
【0043】
以上説明した本実施形態に係る実体顕微鏡によれば、対物レンズ11で集光された光束を複数の光路に分割する必要がないため、観察光学系10の開口数を大きく確保して、標本Sを高分解能で立体観察することが可能である。また、左右の像を形成する光束のNAの比率を調整することで(左右で画素ブロックGBの取り方を相違させることで)、一方では分解能の高い画像を取得し、他方では焦点深度の深い画像を取得して、高分解能で深い焦点深度の画像を同時に観察することができる。従って、所望の分解能及び焦点深度を得ることが可能な実体顕微鏡を提供することが可能である。
【0044】
ところで、図10に示すように、実体顕微鏡100において、ズーム光学系(アフォーカルズームレンズ)12を用いるとき、以下の条件式(1),(2)を満足することが好ましい。
NAL < D/2f …(1)
2p/2f < NAH …(2)
但し、
NAL:ズーム光学系12の最低倍率時における一次像面での光束のNA、
NAH:ズーム光学系12の最高倍率時における一次像面での光束のNA、
f:マイクロレンズMLの焦点距離、
D:マイクロレンズMLの有効径、
p:撮像素子15の画素ピッチ(画素サイズ)。
【0045】
条件式(1),(2)は、一次像面での光束のNAの適切な範囲を規定するものであり、その光束径を画素サイズpの2倍以上の大きさであってマイクロレンズMLの有効径Dよりも小さい範囲で調整することが望ましい。これは左右視点の視差画像を得るためには、各マイクロレンズMLに割り当てられる撮像素子15のML領域として、少なくとも1画素単位の画素ブロックGBで一方向(X方向)に並ぶ2つ以上の画素が必要だからである。この条件式(1),(2)を満足する範囲内においてズーム光学系12を変倍操作して、光束のNAを大きくすることで分解能の高い視差画像が得られ、光束のNAを小さくすることで焦点深度の深い視差画像を得ることができる。なお、図10においては、マイクロレンズMLに割り当てられる画素の数が、ズーム光学系12の最低倍率時に3×3個(図10ではX方向の3個のみが現れる)、最高倍率時に5×5個(図10ではX方向の5個のみが現れる)となっているが、このマイクロレンズMLによる画素割り当て数はこれに限定されるものではなく、上記条件式(1),(2)を満足する範囲において、必要な分解能に応じて適宜設定されることが望ましい。
【0046】
なお、本実施形態に係る実体顕微鏡100は、上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の形態についても、本発明の範囲内に含まれる。
【0047】
例えば、実体顕微鏡の変形例を図11に示す。この実体顕微鏡においては、図11に示すように、マイクロレンズアレイ14の直前に(結像レンズ13とマイクロレンズアレイ14との間に)、不図示のアクチュエータ等によりフィールドレンズFLが挿抜自在に配置されていることが好ましい。ズーム光学系12では射出瞳の位置が変倍の際に焦点距離の変化に応じて移動する(一般に変倍比が高くなるほど射出瞳位置の変動は大きくなる)ため、このズーム光学系12の変倍の際に撮像素子15における結像位置が面内方向(画素配列方向)にずれてしまうおそれがある。そこで、一次像面の近傍にフィールドレンズFLを配置することで、ズーム光学系12の変倍による射出瞳位置の変動を補正することができる。例えば、図12では、ズーム光学系12の低倍率時にフィールドレンズFLを系外へ抜脱し、高倍率時にマイクロレンズアレイ14の直前にフィールドレンズFLを挿入してその射出瞳位置のずれを補正する形態が例示されている。これとは反対に、フィールドレンズFLをズーム光学系12の低倍率時に挿入し、高倍率時に系外へ抜脱する形態としてもよい。
【0048】
また、上述の実体顕微鏡100では、照明光学系としてベース部101に内蔵された透過照明光学系(透過照明装置)を用いた場合について例示したが、落射照明光学系を採用してもよい。
【0049】
また、画素ブロックGB(における画素の個数、画素の配列)の取り方としては上述の実施形態に限定されず、観察に必要とする分解能及び焦点深度などに応じて適宜設定することができる。例えば、図13に示すように、画素ブロックGBとして9個の画素(3×3個の画素)を選択して、左眼用画像50L及び右眼用画像50Rを生成してもよい。このとき、図13及び図14に示すように、ML領域内において左右視点で選択した一対の画素ブロックに互いにオーバーラップする領域(ここでは縦方向に並ぶ中央3個の画素)が生じているが、当該オーバーラップする領域が大きすぎると、その分だけ視差情報の共有量が大きくなるため、左右で適度な視差が得られない。そのため、画素ブロックGBの取り方としては、左右の視点でオーバーラップする領域が生じないように選択することが望ましい。
【符号の説明】
【0050】
10 観察光学系
11 対物レンズ
12 ズーム光学系(変倍光学系)
13 結像レンズ
14 マイクロレンズアレイ
15 撮像素子
17L 左眼用表示装置
17R 右眼用表示装置
20 制御ユニット
22 画像処理回路
100 実体顕微鏡
S 標本
ML マイクロレンズ
GB 画素ブロック(所定数)
FL フィールドレンズ
【技術分野】
【0001】
本発明は、標本を立体的に観察することができる実体顕微鏡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、生物分野や工業分野等において立体観察などの用途で実体顕微鏡が広く利用されている。例えば、平行系実体顕微鏡では、単対物レンズで被検物体(標本)からの光を集光した後、左右独立した光学系(アフォーカルズームレンズと結像レンズを組み合わせた結像光学系)に分割することにより、互いに視差の異なる像をそれぞれ結像させる。観察者は、各像を接眼レンズを通して個別に左右の眼で観察することにより立体視が可能である。
【0003】
このような平行系実体顕微鏡では、対物レンズで集光された光が左右の光学系において2つの光路に分割されるため、左右の光学系の各有効径(光束のNA)が対物レンズの有効径の約半分程度になってしまい、それに応じて分解能が低下することとなる。そのため、有効径を左右の光学系で非対称に構成して有効径に差を付けることで、有効径の大きい一方の光学系では分解能を向上させ、有効径の小さい他方の光学系では焦点深度を深くさせた実体顕微鏡が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−65651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の実体顕微鏡においても、対物レンズからの光を2つの光路に分割しているため、左右の光学系で有効径に差を付けた場合に、一方の光学系の有効径を大きく確保すると、他方の光学系の有効径は小さくしなければならず、それに応じて分解能がさらに低下するという課題があった。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、高分解能で立体観察することができる実体顕微鏡装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を達成するため、本発明に係る実体顕微鏡装置は、標本からの光を集光する観察光学系と、前記観察光学系により集光された前記標本からの光をそれぞれ受ける位置に配列された複数のマイクロレンズを有するレンズアレイと、前記マイクロレンズごとに複数の画素が割り当てられてなる撮像素子と、前記撮像素子の出力に対して所定の処理を施して左眼用画像及び右眼用画像を生成する画像処理部と、前記画像処理部において生成された前記左眼用画像及び前記右眼用画像をそれぞれ表示する左眼用表示部及び右眼用表示部とを備え、前記画像処理部は、前記マイクロレンズに割り当てられた前記複数の画素ごとに互いに同一の配置となる所定数の画素の画素データをそれぞれ抽出し、この抽出された画素データを当該配置に応じて合成することで互いに視差の異なる複数の視差画像を生成し、前記複数の視差画像の中から前記左眼用画像及び前記右眼用画像を取得する。
【0008】
なお、本発明に係る実体顕微鏡装置において、前記複数の画素において、前記左眼用画像を生成するために抽出される前記所定数と、前記右眼用画像を生成するために抽出される前記所定数とが互いに相違するように構成してもよい。
【0009】
また、本発明に係る実体顕微鏡装置において、前記左眼用画像を生成するために抽出される前記所定数と、前記右眼用画像を生成するために抽出される前記所定数とのうちの、いずれか一方の所定数が1であり、他方の所定数が複数である構成でもよい。
【0010】
また、本発明に係る実体顕微鏡装置において、前記観察光学系が、前記標本からの光を入射させて略平行光束として射出する対物レンズと、前記対物レンズからの光束を受けて当該光束径を変更する変倍光学系と、前記変倍光学系からの光束を受けて前記マイクロレンズの近傍位置に一次像面を形成する結像レンズとを有し、以下の条件式を満足することが好ましい。
NAL ≦ D/2f
p/f ≦ NAH
但し、
NAL:前記変倍光学系の最低倍率時における1次像面での光束のNA、
NAH:前記変倍光学系の最高倍率時における1次像面での光束のNA、
f :前記マイクロレンズの焦点距離、
D :前記マイクロレンズの有効径、
p :前記撮像素子の画素ピッチ。
【0011】
また、本発明に係る実体顕微鏡装置において、前記結像レンズと前記レンズアレイとの間の光路に、フィールドレンズが前記変倍光学系の変倍率に応じて挿抜自在に配置されている構成でもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高分解能で立体観察することができる実体顕微鏡装置を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態に係る実体顕微鏡の斜視図である。
【図2】上記実体顕微鏡の要部構成を示す図である。
【図3】本実施形態の光学系の概要を説明するための図である。
【図4】撮像素子面におけるML領域の一例を示す図である。
【図5】ML領域における画素信号の検出方法を説明するための図である。
【図6】1画素単位の画素ブロックによる画素信号の検出方法を説明するための図である。
【図7】1画素単位の画素ブロックにおいて撮像素子の出力から左眼用画像及び右眼用画像を生成する処理を示す図である。
【図8】複数画素単位の画素ブロックによる画素信号の検出方法を説明するための図である。
【図9】複数画素単位の画素ブロックにおいて撮像素子の出力から左眼用画像及び右眼用画像を生成する処理を示す図である。
【図10】ズーム光学系を変倍したときの一次像面での光束のNAの変化を示す図である。
【図11】上記実体顕微鏡においてフィールドレンズを配置した変形例を示す図である。
【図12】ズーム光学系の変倍に応じてフィールドレンズを挿抜したときの光線の変化の様子を示す図である。
【図13】画素ブロックの取り方の変形例を示す図である。
【図14】画素ブロックの上記変形例において、撮像素子の出力から左眼用画像及び右眼用画像を生成する処理を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態に係る実体顕微鏡について図面を参照して説明する。なお、以下の実施の形態は、発明の理解の容易化のためのものに過ぎず、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲において当業者により実施可能な付加・置換等を施すことを排除することは意図していない。
【0015】
図1に本実施形態に係る実体顕微鏡100の斜視図を示しており、先ず、この図を参照して実体顕微鏡100の全体構成を概要説明する。この実体顕微鏡100は、単対物双眼構成の顕微鏡装置であり、透過照明装置を内蔵するベース部(照明部)101と、内部にズーム光学系を有するズーム鏡体103と、ズーム鏡体103の上部に取り付けられた鏡筒104と、この鏡筒104に取り付けられた左右の双眼部105と、ズーム鏡体103を上下動させる焦準機構106等を備えて構成される。
【0016】
ベース部101の上面にはステージガラスを埋め込んだ標本載置台102が設けられている。また、ベース部101の基部側に支柱107が立設されて、この支柱107に焦準機構106が設けられている。
【0017】
ズーム鏡体103は、焦準機構106を介してベース部101に設けられており、その下部には対物レンズ取付部108が設けられ、この対物レンズ取付部108に交換可能な対物レンズが取り付けられている。この対物レンズ取付部108には、予め定められた複数の低倍率の対物レンズ及び複数の高倍率の対物レンズのうちから一つが選択されて取り付けられる構成の場合と、予め定められた複数の低倍率の対物レンズ及び複数の高倍率の対物レンズのうちから複数が選択されて取り付けられる構成の場合などがある。
【0018】
ズーム鏡体103の内部にはズーム光学系(アフォーカルズームレンズ)が配置され、このズーム鏡体103の外側にはズーム光学系を移動させるためのズームハンドル109が配置されている。ズーム光学系は、変倍のための可動群を含んでおり、ズームハンドルの回動操作に連動して予め定められた移動量に則り光軸方向に移動してズーム変倍される。また、ズーム鏡体103の上部には、鏡筒104が取り付けられ、この鏡筒104には接眼レンズを有する左右の双眼部105が取り付けられている。
【0019】
焦準機構106は、標本に焦点を合わせるための焦準ハンドル110と、この焦準ハンドル110の回動操作に伴いズーム鏡体103を軸に沿って上下動させる機構部(図示せず)とを有している。そのため、焦準機構106は、ズーム鏡体103と共に鏡筒104及び双眼部105を一体的に標本載置台102に対して相対的に上下動させ、標本に対する焦点合わせを行う。
【0020】
標本は、ベース部101の標本載置台(ステージガラス)102上に載置され、対物レンズの光軸近傍に配置されるとともに、ベース部101の内部に配設された透過照明装置により透過照明される。照明された標本は、ズーム鏡体103、鏡筒104及び双眼部105等を介して観察される。以上のようにして、左右両眼において標本を立体視可能な実体顕微鏡100が構成されている。
【0021】
引き続き、図2及び図3を追加参照して、実体顕微鏡100について更に詳細な構成を説明する。ここで、図2は実体顕微鏡100の要部構成を示す図である。
【0022】
この実体顕微鏡100では、標本Sに照明光を照射する透過照明装置(図示せず)と、標本Sの像を観察するための対物レンズを含む観察光学系10と、観察光学系10によって形成される一次像面に配置されたマイクロレンズアレイ14と、マイクロレンズアレイ14の焦点面に配置された撮像素子15と、撮像素子15からの出力に基づいて左眼用画像及び右眼用画像を表示する左眼用表示装置16L及び右眼用表示装置16Rと、左右一対の接眼レンズ17L,17Rとを備えており、これらが前述のベース部101、ズーム鏡体103、鏡筒104及び双眼部105に搭載されている。観察光学系10は、標本S側から順に、対物レンズ11、この対物レンズ11から射出された略平行光束の径を変倍して再び略平行光束として射出するズーム光学系(変倍光学系)12、ズーム光学系12からの平行光束を集光して物体の像を結像する結像レンズ13を有している。
【0023】
更に、実体顕微鏡100は、この顕微鏡の作動を統括的に制御する制御ユニット20として、駆動回路21、画像処理回路22、メモリ23、制御回路24、ユーザインターフェース25等を備えている。結像レンズ13の焦点面近傍に入射した結像光束は、撮像素子15において電気信号に変換される。この撮像素子15は駆動回路21によって駆動され、撮像素子15からの出力信号は、この駆動回路21を介して画像処理回路22に取り込まれる。画像処理回路22は、その出力信号に基づき標本の画像データを合成する。合成された画像データは、メモリ23に格納されるとともに、左眼及び右眼表示装置16L,16Rにおいて画像表示される。
【0024】
また、以上の駆動回路21、画像処理回路22、及びメモリ23は、制御回路24によって制御される。制御回路24は、例えばマイクロコンピュータなどにより構成され、ユーザインターフェース25を介してユーザから入力された指示に従ってその制御を実行する。このユーザ操作は、例えば、所定のディスプレイに表示されるGUI(Graphical User Interface)の表示画面に基づく、マウスやキーボード操作等の入力装置の操作によって実現される。
【0025】
図3は、この実体顕微鏡100において左右二視点の視差画像を生成する原理を示しており、以下において実体顕微鏡100の光学系の概要を中心としてこれを説明する。なお、その説明を簡略化するために、図3においては、観察光学系10を構成する対物レンズ11、ズーム光学系12及び結像レンズ13を、纏めて主レンズ10Lとして図示している。
【0026】
この構成では、所定の位置にある標本Sの表面(以下、標本面Sとも称する)が主レンズ10Lで結像する面にマイクロレンズアレイ14を配置し、マイクロレンズアレイ14の焦点距離だけ離れた位置に撮像素子15を配置している。マイクロレンズアレイ15は、複数のマイクロレンズMLを二次元状に配列してなる光学素子である。このとき、撮像素子15の面が、主レンズ10L(対物レンズ11)の瞳面と共役になっており、各マイクロレンズMLで結像した像のできる領域(以下、「ML領域」と称する)から得られる各画素の画像信号は、瞳を分割した像となっている。換言すると、結像された光線が、瞳面から見て違う角度ごとの光線に振り分けられている。
【0027】
撮像素子15は、マイクロレンズ14からの光を受光して撮像データを取得するものである。撮像素子15は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)センサや、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサなどの固体撮像素子であり、各マイクロレンズMLを通過した光を受光する画素配列を、マイクロレンズMLに対応した配置パターンで配置してなる。すなわち、ML領域として複数の画素群が割り当てられるようになっている。
【0028】
図4は、撮像素子15における撮像面上のML領域の一例を示す図である。図4において、6×6個の円の各々は、マイクロレンズアレイ14を主レンズ10Lの光軸方向から見た場合に二次元状に配列されたマイクロレンズMLを示しており、これに重なるように格子状に配列された6×6個の四角のそれぞれの領域が、撮像素子15におけるML領域を示している。1つのML領域に注目してみると、(各マイクロレンズMLに割り当てられた)ML領域の縦方向の画素数及び横方向の画素数はそれぞれ5個(つまり、5×5個の画素配列)である。すなわち、マイクロレンズアレイ14を構成する36個のマイクロレンズMLによって結像された像のそれぞれが、撮像素子15の撮像面上の5×5個からなる画素群上にML領域を形成している。この図4の例では、撮像素子15の画素数は30×30個を想定しており、各マイクロレンズMLを通過してきた光線がML領域における25個(5×5個)の画素の各々に受光されるようになっている。
【0029】
ここで、図3においては説明を分かり易くするために、撮像素子15において光軸と垂直な面内における一方向(これをX方向(左右方向)とする)に並んだ5つの画素a,b,c,d,eに入射する各光線(対応するマイクロレンズMLの中心を通る主光線のみ)を示している。図3において、標本面S上の点S1からの光線は、主レンズ10Lを通過する際に瞳面を通って(ここではr1〜r5の)光線群となり、各マイクロレンズMLで結像した像のできる領域、すなわち各ML領域の撮像素子15の画像信号となる。図示のように、焦点位置(ピント面)からの光線r1,r2,r3,r4,r5は、マイクロレンズアレイ14の表面の1点に集まり、マイクロレンズMLのレンズ作用によって撮像素子15の面上では、各ML領域のそれぞれの画素a,b,c,d,eに対応して、ai,bi,ci,di,eiの画素信号となる。ここで、符号ai,bi,ci,di,eiで示すのは、X方向に並ぶ5つの画素a,b,c,d,eが個別に出力する画素信号(画素値)の概念である。なお、ここでは、X方向に並ぶ5つの画素a,b,c,d,eのみに着目しているが、実際はX,Y方向(互いに直交する2方向)に並ぶ25個の画素の各々から個別に画素信号が出力される。
【0030】
撮像素子15では、駆動回路21による駆動動作に応じて、画素単位で光線情報の読み出しが行われて、画像データが得られる。このように撮像素子15で捉えた画像データでは、標本面Sからの光線に対して、その強度情報とともに、マイクロレンズMLの配置によって光線の位置情報と、各マイクロレンズMLに割り当てられたML領域内の画素の配置によって光線の進行方向とが独立に検出される。すなわち、光線の視差情報を検出することができる。
【0031】
本実施形態では、例えば、標本面S上の点S1からの光線のうち、中心の光線r3よりも右側にある光線(例えば、光線r4,r5)については右眼用の視差情報を有しているとみなせる。一方、中心の光線r3よりも左側にある光線(例えば、光線r1,r2)については左眼用の視差情報を有しているとみなせる。
【0032】
画像処理回路22は、撮像素子15からの出力に基づいて、所定の画像処理を施して、左右2つの視点における視差画像を生成する。この視差画像の解像度はマイクロレンズMLの個数で決まり、視差数は各マイクロレンズMLに割り当てられたML領域の画素数で決まる。ここで、各マイクロレンズMLに割り当てられたML領域を、1画素単位もしくは複数画素単位でいくつかの領域に分割し、それぞれの領域だけで選択処理した画像データを生成する。主レンズ10L(対物レンズ11)の瞳面と撮像素子15の撮像面とは共役なので、これにより、領域分割の数だけその瞳面が分割された画像が得られる。
【0033】
このようにML領域を1画素単位または複数画素単位で分割してなる一つの領域(所定数の画素からなる画素領域)を以降では画素ブロックGBと称して説明する。ML領域を1画素単位で領域分割する場合(すなわち画素ブロックGBが1画素の場合)、生成できる視差画像(多視点画像)の数は最大で5×5=25個である。
【0034】
図5はML領域における画素信号の検出方法を説明するための図であり、図6は撮像素子15全体としての画素信号の検出方法を説明するための図である。ここでは説明を簡略化するために、ML領域においてX方向(左右方向)に異なる5つの領域で、画素ブロックGBを1画素単位として検出することで視差画像を生成する場合を例示する。撮像素子15は主レンズ10L(対物レンズ11)の瞳面と光学的に共役な関係になっているので、左右方向5つの視点(角度)で、1画素に相当するレンズの開口からの光線により画像データが生成されることになる。ここで検出した5つの画素は、図3における画素a,b,c,d,eと同じ画素と考えてよい。各マイクロレンズMLに割り当てられた画素ブロックGBの画素数は、共役関係にある瞳面での検出する光線の大きさ(光束径)を決める。つまりレンズのF値に相当し、これが小さいと焦点深度が深くなり、大きいと焦点深度が浅くなる。よって、画素ブロックGBとして1画素検出した場合では焦点深度の深い画像(視差画像)が得られる。
【0035】
図6において、各ML領域で互いに同じ位置の画素(ここでは、X方向に並ぶ画素a,b,c,d,eごと)における画素信号をそれぞれ抽出し、この抽出した画素信号同士を合成することで、互いに視差の異なる5つの視差画像が得られる。つまり、ML領域ごとに、画素信号aiを集めた画像、画素信号biを集めた画像、画素信号ciを集めた画像、画素信号diを集めた画像、及び画素信号eiを集めた画像、のそれぞれが視差画像として生成される。なお、ここでは、ML領域でX方向に並ぶ5つの画素a,b,c,d,eのみに着目し、それら5つの画素に基づいて5つの視差画像を生成しているが、実際はML領域でX,Y方向(2方向)に並ぶ25個の画素に基づいて25個の視差画像を生成できる。
【0036】
画像処理回路22は、このように生成される視差画像のうち、左視点における視差画像を左眼用画像とし、右視点における視差画像を右眼用画像として取得する。例えば、図7に示すように、各ML領域の最左列中央に位置する画素aの出力に基づいて得られる左視点の視差画像を左眼用画像30Lとし、各ML領域の最右列中央に位置する画素eの出力に基づいて得られる右視点の視差画像を右眼用画像30Rとする。このとき、各ML領域の画素aの出力(画素信号)が左眼用画像30Lの画素1つ1つに対応され、各ML領域の画素eの出力(画素信号)が右眼用画像30Rの画素1つ1つに対応される。ここで、画素a及び画素eの出力のみに基づいて左右二視点の左眼用画像30L及び右眼用画像30Rを取得する場合には、画素a及び画素e以外の画素信号は実質的に不要であるため、駆動回路21の制御により、撮像素子15からは必要とされる画素a及び画素eの画素信号のみを選択的に取り出すようにすることが好ましい。
【0037】
なお、これに限定されず、画素bの出力から生成した視差画像を左眼用画像とし、画素dの出力から生成した視差画像を右眼用画像としてもよく、また、画素aの出力から生成した視差画像を左眼用画像とし、画素cの出力から生成した視差画像を右眼用画像としてもよく、これらはユーザインターフェース25を利用してユーザが任意に指定することが可能である。
【0038】
一方、図8では、撮像素子15の各ML領域において光軸と垂直な面内におけるX方向に異なる領域で、画素ブロックGBとして複数画素単位(例えば、短冊状に6個(2×3個)の画素)で検出する場合を例示する。図8において、各ML領域で互いに同じ位置の画素領域(ここでは、図8で塗り潰された6画素の画素ブロックGB)における画素信号をそれぞれ抽出し、この画素ブロックGBを構成する6つの画素の画素信号の和を視差画像の1画素分の画素信号として求め、この画素信号同士をその配置に応じて合成することで互いに視差の異なる4つの視差画像が得られる。
【0039】
画像処理回路22は、このように生成される視差画像のうち、左視点における視差画像を左眼用画像とし、右視点における視差画像を右眼用画像として取得する。例えば、図9に示すように、ML領域の左端中央に位置する6つの画素(画素ブロック)の出力に基づいて得られる左視点の視差画像を左眼用画像40Lとし、右端中央に位置する6つの画素(画素ブロック)の出力に基づいて得られる右視点の視差画像を右眼用画像40Rとする。このとき、ML領域の左端中央に位置する6つの画素の出力(画素信号)が左眼用画像40Lの画素1つ1つに対応され、ML領域の右端中央に位置する6つの画素の出力(画素信号)が右眼用画像40Rの画素1つ1つに対応される。ここでも、1画素単位の画素ブロックGBの場合と同様に、撮像素子15からは必要とされる画素ブロックGBの画素信号のみを選択的に取り出すようにすることが好ましい。また、図8(B)に示す6つの画素(画素ブロック)の出力から生成した視差画像を左眼用画像とし、図8(C)に示す6つの画素(画素ブロック)の出力から生成した視差画像を右眼用画像としてもよく、これらはユーザインターフェース25を利用してユーザが任意に指定することが可能である。
【0040】
なお、この画素ブロックGBとして6画素単位の検出においては、この画素ブロックGBで捉える瞳面を通過する光線は上述の1画素単位の検出の場合と比して6倍広いので(F値が小さくなり)、得られる視差画像(左眼用画像40L及び右眼用画像40R)の焦点深度は浅くなるが、分解能は高められる。従って、画素ブロックGB(光束のNA)を小さくとると焦点深度の深い視差画像が得られ、画素ブロックGB(光束のNA)を大きくとると分解能の高い視差画像が得られることになる。ここで、画素ブロックGBの取り方としては、上述の形態に限定されず、所望の分解能及び焦点深度に応じて、1画素単位または複数画素単位で任意に設定することが可能である。
【0041】
画像処理回路22は、これら左右二視点の視差画像を左眼用画像及び右眼用画像としてメモリ23に記憶するとともに、左眼用表示装置16L及び右眼用表示装置16Rに出力して標本の拡大像として画像を表示させる。ユーザは、左右の眼で個別に表示装置16L,16R(双眼部105)を覗くと、視差を持った左眼用画像及び右眼用画像を左右の眼で個別に捉えられるので、標本の立体視が実現する。
【0042】
ここで、ユーザインターフェース25(ユーザ操作)によって、各ML領域内で画素ブロックGBを任意に選択設定して、左眼用画像及び右眼用画像を、左右視点で共に焦点深度の深い視差画像としてそれぞれ表示させたり、左右視点で共に分解能の高い画像としてそれぞれ表示させることができるが、左眼用画像と右眼用画像とを異なる画素数の画素ブロックGBから取得し、これを左右視点の視差画像として表示させることも可能である。より具体的には、左眼用画像及び右眼用画像のうち、一方の画像を1画素単位の画素ブロックGBで生成(例えば、図6(A)に示すように上述の画素aの出力に基づく左視点の視差画像30Lを生成)し、他方の画像を複数画素単位の画素ブロックGBで生成(例えば、図8(D)に示すように、上述の右端中央の6画素の出力に基づく右視点の視差画像40Rを生成)することで、一方の眼では焦点深度の深い視差画像として捉え、他方の眼では分解能の高い視差画像として捉えることができ、これにより、焦点深度の深い画像と分解能の高い画像とを両眼視差の画像として同時に観察することができる。
【0043】
以上説明した本実施形態に係る実体顕微鏡によれば、対物レンズ11で集光された光束を複数の光路に分割する必要がないため、観察光学系10の開口数を大きく確保して、標本Sを高分解能で立体観察することが可能である。また、左右の像を形成する光束のNAの比率を調整することで(左右で画素ブロックGBの取り方を相違させることで)、一方では分解能の高い画像を取得し、他方では焦点深度の深い画像を取得して、高分解能で深い焦点深度の画像を同時に観察することができる。従って、所望の分解能及び焦点深度を得ることが可能な実体顕微鏡を提供することが可能である。
【0044】
ところで、図10に示すように、実体顕微鏡100において、ズーム光学系(アフォーカルズームレンズ)12を用いるとき、以下の条件式(1),(2)を満足することが好ましい。
NAL < D/2f …(1)
2p/2f < NAH …(2)
但し、
NAL:ズーム光学系12の最低倍率時における一次像面での光束のNA、
NAH:ズーム光学系12の最高倍率時における一次像面での光束のNA、
f:マイクロレンズMLの焦点距離、
D:マイクロレンズMLの有効径、
p:撮像素子15の画素ピッチ(画素サイズ)。
【0045】
条件式(1),(2)は、一次像面での光束のNAの適切な範囲を規定するものであり、その光束径を画素サイズpの2倍以上の大きさであってマイクロレンズMLの有効径Dよりも小さい範囲で調整することが望ましい。これは左右視点の視差画像を得るためには、各マイクロレンズMLに割り当てられる撮像素子15のML領域として、少なくとも1画素単位の画素ブロックGBで一方向(X方向)に並ぶ2つ以上の画素が必要だからである。この条件式(1),(2)を満足する範囲内においてズーム光学系12を変倍操作して、光束のNAを大きくすることで分解能の高い視差画像が得られ、光束のNAを小さくすることで焦点深度の深い視差画像を得ることができる。なお、図10においては、マイクロレンズMLに割り当てられる画素の数が、ズーム光学系12の最低倍率時に3×3個(図10ではX方向の3個のみが現れる)、最高倍率時に5×5個(図10ではX方向の5個のみが現れる)となっているが、このマイクロレンズMLによる画素割り当て数はこれに限定されるものではなく、上記条件式(1),(2)を満足する範囲において、必要な分解能に応じて適宜設定されることが望ましい。
【0046】
なお、本実施形態に係る実体顕微鏡100は、上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の形態についても、本発明の範囲内に含まれる。
【0047】
例えば、実体顕微鏡の変形例を図11に示す。この実体顕微鏡においては、図11に示すように、マイクロレンズアレイ14の直前に(結像レンズ13とマイクロレンズアレイ14との間に)、不図示のアクチュエータ等によりフィールドレンズFLが挿抜自在に配置されていることが好ましい。ズーム光学系12では射出瞳の位置が変倍の際に焦点距離の変化に応じて移動する(一般に変倍比が高くなるほど射出瞳位置の変動は大きくなる)ため、このズーム光学系12の変倍の際に撮像素子15における結像位置が面内方向(画素配列方向)にずれてしまうおそれがある。そこで、一次像面の近傍にフィールドレンズFLを配置することで、ズーム光学系12の変倍による射出瞳位置の変動を補正することができる。例えば、図12では、ズーム光学系12の低倍率時にフィールドレンズFLを系外へ抜脱し、高倍率時にマイクロレンズアレイ14の直前にフィールドレンズFLを挿入してその射出瞳位置のずれを補正する形態が例示されている。これとは反対に、フィールドレンズFLをズーム光学系12の低倍率時に挿入し、高倍率時に系外へ抜脱する形態としてもよい。
【0048】
また、上述の実体顕微鏡100では、照明光学系としてベース部101に内蔵された透過照明光学系(透過照明装置)を用いた場合について例示したが、落射照明光学系を採用してもよい。
【0049】
また、画素ブロックGB(における画素の個数、画素の配列)の取り方としては上述の実施形態に限定されず、観察に必要とする分解能及び焦点深度などに応じて適宜設定することができる。例えば、図13に示すように、画素ブロックGBとして9個の画素(3×3個の画素)を選択して、左眼用画像50L及び右眼用画像50Rを生成してもよい。このとき、図13及び図14に示すように、ML領域内において左右視点で選択した一対の画素ブロックに互いにオーバーラップする領域(ここでは縦方向に並ぶ中央3個の画素)が生じているが、当該オーバーラップする領域が大きすぎると、その分だけ視差情報の共有量が大きくなるため、左右で適度な視差が得られない。そのため、画素ブロックGBの取り方としては、左右の視点でオーバーラップする領域が生じないように選択することが望ましい。
【符号の説明】
【0050】
10 観察光学系
11 対物レンズ
12 ズーム光学系(変倍光学系)
13 結像レンズ
14 マイクロレンズアレイ
15 撮像素子
17L 左眼用表示装置
17R 右眼用表示装置
20 制御ユニット
22 画像処理回路
100 実体顕微鏡
S 標本
ML マイクロレンズ
GB 画素ブロック(所定数)
FL フィールドレンズ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
標本からの光を集光する観察光学系と、
前記観察光学系により集光された前記標本からの光をそれぞれ受ける位置に配列された複数のマイクロレンズを有するレンズアレイと、
前記マイクロレンズごとに複数の画素が割り当てられてなる撮像素子と、
前記撮像素子の出力に対して所定の処理を施して左眼用画像及び右眼用画像を生成する画像処理部と、
前記画像処理部において生成された前記左眼用画像及び前記右眼用画像をそれぞれ表示する左眼用表示部及び右眼用表示部とを備え、
前記画像処理部は、前記マイクロレンズに割り当てられた前記複数の画素ごとに互いに同一の配置となる所定数の画素の画素データをそれぞれ抽出し、この抽出された画素データを当該配置に応じて合成することで互いに視差の異なる複数の視差画像を生成し、前記複数の視差画像の中から前記左眼用画像及び前記右眼用画像を取得することを特徴とする実体顕微鏡装置。
【請求項2】
前記複数の画素において、前記左眼用画像を生成するために抽出される前記所定数と、前記右眼用画像を生成するために抽出される前記所定数とが互いに相違することを特徴とする請求項1に記載の実体顕微鏡装置。
【請求項3】
前記左眼用画像を生成するために抽出される前記所定数と、前記右眼用画像を生成するために抽出される前記所定数とのうちの、いずれか一方の所定数が1であり、他方の所定数が複数であることを特徴とする請求項2に記載の実体顕微鏡装置。
【請求項4】
前記観察光学系が、前記標本からの光を入射させて略平行光束として射出する対物レンズと、前記対物レンズからの光束を受けて当該光束径を変更する変倍光学系と、前記変倍光学系からの光束を受けて前記マイクロレンズの近傍位置に一次像面を形成する結像レンズとを有し、
以下の条件式を満足することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の実体顕微鏡装置。
NAL ≦ D/2f
p/f ≦ NAH
但し、
NAL:前記変倍光学系の最低倍率時における1次像面での光束のNA、
NAH:前記変倍光学系の最高倍率時における1次像面での光束のNA、
f :前記マイクロレンズの焦点距離、
D :前記マイクロレンズの有効径、
p :前記撮像素子の画素ピッチ。
【請求項5】
前記結像レンズと前記レンズアレイとの間の光路に、フィールドレンズが前記変倍光学系の変倍率に応じて挿抜自在に配置されていることを特徴とする請求項4に記載の実体顕微鏡装置。
【請求項1】
標本からの光を集光する観察光学系と、
前記観察光学系により集光された前記標本からの光をそれぞれ受ける位置に配列された複数のマイクロレンズを有するレンズアレイと、
前記マイクロレンズごとに複数の画素が割り当てられてなる撮像素子と、
前記撮像素子の出力に対して所定の処理を施して左眼用画像及び右眼用画像を生成する画像処理部と、
前記画像処理部において生成された前記左眼用画像及び前記右眼用画像をそれぞれ表示する左眼用表示部及び右眼用表示部とを備え、
前記画像処理部は、前記マイクロレンズに割り当てられた前記複数の画素ごとに互いに同一の配置となる所定数の画素の画素データをそれぞれ抽出し、この抽出された画素データを当該配置に応じて合成することで互いに視差の異なる複数の視差画像を生成し、前記複数の視差画像の中から前記左眼用画像及び前記右眼用画像を取得することを特徴とする実体顕微鏡装置。
【請求項2】
前記複数の画素において、前記左眼用画像を生成するために抽出される前記所定数と、前記右眼用画像を生成するために抽出される前記所定数とが互いに相違することを特徴とする請求項1に記載の実体顕微鏡装置。
【請求項3】
前記左眼用画像を生成するために抽出される前記所定数と、前記右眼用画像を生成するために抽出される前記所定数とのうちの、いずれか一方の所定数が1であり、他方の所定数が複数であることを特徴とする請求項2に記載の実体顕微鏡装置。
【請求項4】
前記観察光学系が、前記標本からの光を入射させて略平行光束として射出する対物レンズと、前記対物レンズからの光束を受けて当該光束径を変更する変倍光学系と、前記変倍光学系からの光束を受けて前記マイクロレンズの近傍位置に一次像面を形成する結像レンズとを有し、
以下の条件式を満足することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の実体顕微鏡装置。
NAL ≦ D/2f
p/f ≦ NAH
但し、
NAL:前記変倍光学系の最低倍率時における1次像面での光束のNA、
NAH:前記変倍光学系の最高倍率時における1次像面での光束のNA、
f :前記マイクロレンズの焦点距離、
D :前記マイクロレンズの有効径、
p :前記撮像素子の画素ピッチ。
【請求項5】
前記結像レンズと前記レンズアレイとの間の光路に、フィールドレンズが前記変倍光学系の変倍率に応じて挿抜自在に配置されていることを特徴とする請求項4に記載の実体顕微鏡装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図7】
【図10】
【図11】
【図12】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図7】
【図10】
【図11】
【図12】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−145747(P2012−145747A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−3809(P2011−3809)
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】
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