説明

実装用基板及びそれを使用した駆動装置

【課題】 部品点数を増加させることなく、高い放熱性を持つ実装用基板を提供する。
【解決手段】 金属製の板材を加工して絶縁性材料でモールドしてなり、高発熱性回路部品を含む回路部品(FET7等)を搭載して、ベース基板(後述する脚部35等の図中上側に配置される主基板)に実装される実装用基板30であって、内部に前記板材が加工されてなる回路パターン31が形成され、前記回路部品が搭載される矩形板状の基板部32と、基板部32の両端側から略直角に伸びて、内部に前記板材が加工されてなる接続用導体33a〜33gが配設され、先端には前記接続用導体の端部がモールドより露出してベース基板への接続用端子34a〜34gが形成された脚部35〜37と、前記板材が加工されることにより、基板部32の一端側に設けられた放熱板38とを備え、この放熱板38に、基板部32から伸びてモールドされていない放熱部38aを設けた構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両におけるパワーウインドウシステムなどに好適な実装用基板及びそれを使用した駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のパワーウインドウなどの制御方式としては、挟み込み検出時のウインドウの自動反転機能(挟み込み防止機能)等を実現する電子制御が主流になっている。このため、前記開閉機構の駆動源であるモータに適宜電源供給してその動作を制御する駆動装置としては、例えば特許文献1に示されるように、リレーによる駆動方式を採用し、マイクロコンピュータ(以下、マイコンという)などの制御処理手段を含む制御回路を備えたものが一般的になっている。
【0003】
即ち、基本的にこの種の駆動装置は、モータに電源供給してモータをそれぞれ正転方向(例えば車両ウインドウを開けるDOWN方向)又は逆転方向(例えば車両ウインドウを閉じるUP方向)に駆動するための二つのリレーと、操作部(操作ノブ)の動作に応じてモータの正転方向又は逆転方向の作動を指令するためのスイッチと、このスイッチの操作入力を受けてリレーを制御する制御回路(例えば、前記リレーを駆動するトランジスタと、このトランジスタを制御するワンチップのマイコンとを含むもの)とを有する。
【0004】
また、車両のパワーウインドウなどでは、制御対象(例えば、ウインドウガラス)の動作速度等を適宜変化させて滑らかで高度な動作を実現するといった制御が行われるものが、市場のニーズに応じて出現し始めているが、このような制御を行う駆動装置としては、次のような方式がある。即ち、モータの通電ラインにFETなどのスイッチング素子を接続し、モータ作動時に、このスイッチング素子を制御目標に対応した所定のデューティでPWM制御するものがある。
【0005】
なお、特許文献2には、バスバー(金属製の回路導体)をインナーモールドしてなる逆U字状断面のボックスという部品(別基板)を、絶縁基板14の上面に実装し、このボックスのバスバーによって大部分の電源系の配線パターンを構成し、電源系のヒューズやリレー等をこのボックスのバスバーに取り付けた構造の電気接続箱が開示されている。
また、特許文献3には、大電流が流れる配線パターンをモールド成型にて固定された金属製板材にて構成するとともに、マイコンを実装するプリント基板とは別の放熱板にスイッチング素子を実装し、この放熱板とプリント基板とを所定間隔をあけて重合させた構造のパワーステアリング回路装置が開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開平10−169311号公報
【特許文献2】特開平10−201050号公報
【特許文献3】特開平8−11732号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、前述したような制御機能を有する駆動装置では、単純に上記スイッチング素子などのPWM制御のための回路部品を、前述したリレーやスイッチなどの基本回路部品と同一の基板上に実装した構成とすると、次のような問題がある。
即ち、装置が基板に平行な横方向に大型化し、車両などにおいて許容される設置スペース内に納めることが困難になるといった問題が生じる。
また、PWM制御を行わない種類の駆動装置に対して、基板全体の構成が異なることになるため、共用化が図れず、生産性が低下する問題がある。
【0008】
また、一般的で安価なプリント基板上に上記回路部品を全て実装した構成では、上記スイッチング素子などのPWM制御のための回路部品で発生する熱を、外部に効果的に放熱できず、上記スイッチング素子などやその周辺回路の過熱を防止できない。一方、例えば回路導体となる金属製板材(プリント基板の導体層よりも格段に厚いもの)を樹脂モールドしてなる基板に、上記回路部品を全て実装する構成では、回路導体(特にモータの通電ライン)の抵抗を低減できて過熱の問題がプリント基板よりも改善されるものの、装置がより大型化し、コストや重量も増大する問題がある。
【0009】
そして、この問題を解決する基本構造として、例えばPWM制御のための回路部品を別基板(実装用基板)に実装し、この別基板を基本回路部品を実装した主基板(ベース基板)に実装して設ける構成が考えられる。
しかし、このような構成を実現するにあたり、以下のような解決すべき課題がある。
即ち、スイッチング素子などのPWM制御のための回路部品で発生する熱を、外部に効果的に放熱する構成とする必要があるが、単純に別基板を特許文献2に開示されているような構成(金属製板材を樹脂モールドしてなる構成)とするだけでは、放熱性が十分でない。
なお、特許文献3に開示されているように、金属製板材を樹脂モールドしてなる別基板とは別個に、放熱板を設ける構成も考えられるが、この場合、部品点数が増加し、コスト増などの弊害が生じる。
【0010】
また、主基板上に別基板を実装する構成であると、部材の干渉を避けて、主基板上のスイッチと操作部をどのように連結するかが問題となる。即ち、特許文献2に開示された一般的な構成(リレーやスイッチを実装した基板の実装面側に操作ノブを配置して、実装面上のスイッチと操作ノブを連結する構成)において、単純にリレーやスイッチを実装した基板(主基板)上に別基板を実装する構成とすると、主基板を横方向に大型化(実装面の大型化)しなければ、スイッチと操作ノブの連結部と、別基板との干渉を避けることが困難である。
【0011】
そこで本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、部品点数を増加させることなく、高い放熱性が確保された実装用基板、及びそれを使用した駆動装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願の実装用基板は、金属製板材を絶縁性材料でモールドしてなり、高発熱性回路部品を含む回路部品を搭載して、前記回路部品を制御する基本回路が搭載されるベース基板に実装される実装用基板であって、
内部に前記金属製板材よりなる回路パターンが形成され、前記回路部品が搭載される矩形板状の基板部と、
前記基板部の両端側から略直角に伸びて、内部に前記金属製板材よりなる接続用導体が配設され、先端には前記接続用導体の端部がモールドより露出してベース基板への接続用端子が形成された脚部と、
前記金属製板材により、前記基板部の少なくとも一端側に設けられた放熱板とを備え、
前記放熱板は、前記基板部から伸びて露出している放熱部を有するものである。
【0013】
なお、「高発熱性回路部品」としては、例えばモータのPWM制御に使用するFETなどの半導体スイッチング素子やフライホイールダイオードなどがあり得る。
また、「接続用導体」は、上記実装用基板における基板部の特定の回路パターンを、ベース基板の対応する回路パターンに接続するためのものである。
また、「接続用端子」は、例えばインサート実装用の端子であるが、表面実装用でもよい。
【0014】
本実装用基板では、モールドされていない放熱部を有する金属製の放熱板が備えられているため、特許文献2のような単純な別基板に比較して格段に放熱性が高くなり、高発熱性回路部品やその周辺の回路の過熱を回避できる性能が十分高まる。
しかも本願では、放熱板が、基板部の配線パターンと同一の部材(金属製板材)により、実装用基板の一部として設けられる。このため、フープ材を連続して打抜くなどすることにより効率的に(即ち、安価に)造ることができる。なお、放熱板として異なる部材を用いても、実装用基板に相当するものが製作できるものの、材料の歩留まりや生産工程が複雑になる(即ち、高価になる)デメリットがある。また、別部品として放熱板が設けられる構成に比べて、部品点数が増加せず、部品点数増加によるコスト増(組立工数増加)などの弊害が回避できる利点もある。
【0015】
また、本実装用基板の好ましい態様は、前記脚部の少なくとも一つと前記放熱板が、前記基板部の同端側に並んで設けられているものである。
この態様では、前記金属製板材の加工前の状態(通常は矩形板状)において、前記脚部を構成する接続用導体となる部分と、前記放熱板となる部分が、前記基板部となる部分の同じ端側に位置し、前記基板部となる矩形部分の一辺に沿う方向において並んで配置されることになる。このため、前記金属製板材において、脚部を構成する接続用導体となる部分の前記方向における隣の部分(放熱板が無ければ不要となる素材部分)を、放熱板として利用することになり、金属製板材の加工前の寸法(素材寸法)を必要最小限とし、また金属製板材の加工により切り捨てられて無駄となる素材部分を減らして、低コスト化を図ることができる。
【0016】
また、本実装用基板の別の好ましい態様は、前記放熱板が、前記基板部の内部に配置される受熱部を有し、前記高発熱性回路部品が、前記受熱部にモールドの薄肉部分を介して又は直接的に接合した状態で実装されている態様である。
この態様であると、高発熱性回路部品で発生した熱が、上記受熱部から放熱板に効率良く伝わり、放熱部で外部に放熱されるので、放熱性がより高まる。
【0017】
なお、上記受熱部を持つ態様の場合、前記高発熱性回路部品が、前記基板部のベース基板に対向する内面に実装され、前記基板部のベース基板に対向しない外面側のモールド部分には、前記受熱部をモールドから露出させる放熱用開口が形成されている構成が好ましい。
この構成であると、高発熱性回路部品で発生し前記受熱部に伝わった熱が、上記放熱用開口からも外部に効果的に放熱され、さらに放熱性が高まる。
【0018】
また、上記受熱部と放熱用開口を持つ構成の場合、前記放熱用開口内には、前記回路部品接続用の半田が積層されている構成が望ましい。このようにすると、放熱板の熱容量が増加して、高発熱性回路部品を冷却する能力(過熱を防止する能力)がさらに高まる。
【0019】
また、本実装用基板の別の好ましい態様は、前記高発熱性回路部品が、前記放熱部の近傍に実装されているものである。
このような態様であると、放熱性がさらに高まる。
【0020】
次に、本願の駆動装置は、モータに電源供給してモータを作動させるリレーを有し、モータの作動を指令する操作部の作動状態に応じて、前記リレーを作動させてモータを駆動する駆動装置であって、
ベース基板と、このベース基板に実装される本願の実装用基板とを備え、
ベース基板には、前記リレーと、前記操作部の作動状態に応じて接点の状態が切り替わるスイッチと、このスイッチの接点の状態に応じて前記リレーを制御する制御回路と、を含む基本回路が搭載され、
前記実装用基板には、モータの通電ラインに接続されてモータの作動時にモータの制御を可能とするスイッチング素子を含む制御用回路部品が搭載されていることを特徴とするものである。
【0021】
なお、「操作部」とは、モータの動作を指令するためにユーザが指などで動かす部分であり、例えば、引き上げたり押し下げたりするノブ式、又はシーソー式などがあり得る。
また「操作部」は、動作が指令される特定の操作位置において節度感が生じるように構成されていてもよいし、節度感のないものであってもよい。「節度感」とは、いわゆるクリック感のことであり、操作部を操作するのに必要な操作力が、特定の操作位置(ピーク位置)において増加して操作力のピークが形成され、その後、所定のエンド位置まで操作力が減少することにより、操作部を操作するユーザに与えられる手ごたえ感であり、操作が実行されたことをユーザに実感させるとともに、操作部の操作時の動作を安定させ、これによって操作の確実性を担保するためのものである。
【0022】
また、「モータ」とは、可動体を駆動するアクチュエータを意味し、必ずしも回転型のモータに限らない。
ここで、「可動体」としては、例えば乗物や建物におけるウインドウ(サンルーフ含む)又は座席、或いは、乗物や建物における扉などがあり得る。またここで、「乗物」には、車両や飛行機の他、エレベータなども含まれる。
また、「駆動装置」としては、例えば、乗物におけるパワーウインドウ、パワーシート、又はパワースライドドア、建物における電動自動ドアなどの駆動装置があり得る。
また、「モータの制御」としては、PWM制御があり得るが、それに限定されるものではない。
【0023】
本願の駆動装置は、制御用回路部品が搭載された本願の実装用基板と、基本回路及び前記実装用基板が搭載されるベース基板とよりなる。
このため、上記2つの基板を重合させ、各回路部品を立体的に(2階建式に)配置することによって、所定の制御機能を持ちながら、装置が少なくとも基板に平行な横方向に大型化することを回避できる(即ち、装置の横方向の寸法は、制御用回路部品を持たないベース基板のみの場合と、略同等に維持できる)。これにより、車両などにおいて許容される設置スペース内に納めることが容易になる。
また、所定の制御機能を持たない種類の駆動装置(例えば、PWM制御用回路部品を持たないタイプ)に対して、ベース基板の共用化が図れるため、生産性が向上する。
また、ベース基板を一般的で安価なプリント基板で構成したとしても、制御用回路部品の高発熱性回路部品で発生する熱を、前述の実装用基板の機能によって外部に効果的に放熱でき、回路部品の過熱を信頼性高く回避できる。
【0024】
また、本駆動装置の好ましい態様は、前記基本回路を構成する回路部品(主要な部品であり、外面に実装する必要のある例えば小型なLED等を除く)が、ベース基板の実装用基板に対向する内面に実装され、
前記操作部が、ベース基板の実装用基板に対向しない外面側に配置され、
前記操作部と一体的に又は連動して動く操作片が、ベース基板に形成された操作用開口を介して、ベース基板の内面側に挿入されて前記スイッチに連結され、これにより、前記操作部の作動状態に応じて前記スイッチの接点の状態が切り替わる構成である。
【0025】
なお、「連結」とは、機械的な連結でもよいし、光学的又は電磁的な連結でもよい。即ち、操作部と一体の操作片が、例えばスイッチのスライド式操作子に係合し、操作部の動作(例えば、回転又は揺動)によって、前記操作子がスライドしてスイッチが作動するタイプ(機械的な連結)でもよい。この場合、上記「係合」が上記「連結」に相当する。或いは、例えば特開2001−118465号公報に記載されたように、ホール素子や光学式センサ等によって操作片の動きを非接触で検出する方式のスイッチを使用する方式でもよい。この方式の場合、このスイッチ(センサ)に対して、操作片を所定位置に配置することが、上記「連結」に相当する。
【0026】
この態様では、ベース基板の外面側(実装用基板のない裏面側)において、スイッチと操作ノブの連結が行われる。このため、ベース基板(主基板)上に実装用基板(別基板)を実装する構成でありながら、大型化することなく部材の干渉を避けて、主基板上のスイッチと操作部を連結できる。即ち、ベース基板を横方向に大型化(実装面の大型化)しなくても、スイッチと操作ノブの連結部と実装用基板との干渉を避けることができる。
【発明の効果】
【0027】
本願の実装用基板によれば、モールドされていない放熱部を有する金属製の放熱板が備えられているため、特許文献2のような単純な別基板に比較して格段に放熱性が高くなり、高発熱性回路部品の過熱を回避できる性能が十分高まる。
しかも本願では、放熱板が、基板部の配線パターンと同一の部材(金属製板材)により、実装用基板の一部として設けられる。このため、フープ材を連続して打抜くなどすることにより効率的に(即ち、安価に)造ることができる。なお、放熱板として異なる部材を用いても、実装用基板に相当するものが製作できるものの、材料の歩留まりや生産工程が複雑になる(即ち、高価になる)デメリットがある。また、別部品として放熱板が設けられる構成に比べて、部品点数が増加せず、部品点数増加によるコスト増(組立工数増加)などの弊害が回避できる利点もある。
【0028】
また、本願の駆動装置によれば、2つの基板を重合させ、各回路部品を立体的に(2階建式に)配置することによって、所定の制御機能を持ちながら、装置が少なくとも基板に平行な横方向に大型化することを回避できる(即ち、装置の横方向の寸法は、例えばPWM制御用回路部品を持たないベース基板のみの場合と、略同等に維持できる)。これにより、車両などにおいて許容される設置スペース内に納めることが容易になる。
また、所定の制御機能を持たない種類の駆動装置(例えばPWM制御用回路部品を持たないタイプ)に対して、ベース基板の共用化が図れるため、生産性が向上する。
また、ベース基板を一般的で安価なプリント基板で構成したとしても、制御用回路部品の高発熱性回路部品で発生する熱を、前述の実装用基板の機能によって外部に効果的に放熱でき、回路部品の過熱を信頼性高く回避できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態例を図面に基づいて説明する。
図1は、本例の駆動装置(車両のパワーウインドウの駆動ユニットであって、例えば運転席以外の他席用のもの)の表面側を示す分解斜視図である。図2は、本駆動装置の裏面側を示す分解斜視図である。また図3(a)は、実装用基板(部品実装状態)を示す斜視図、図3(b)は、ベース基板(部品実装状態)を示す斜視図である。また、図4は、本駆動装置の主要回路を示す回路図である。また、図5〜8は、実装用基板の製造工程を説明する図である。また図9は、他の形態例を示す図である。
【0030】
まず、図4及び図2等により主要回路の構成を説明する。この回路は、例えば車両における他席のウインドウ開閉用のモータ1に電源供給してモータ1をそれぞれ正転方向(例えばウインドウを開ける方向)又は逆転方向(例えばウインドウを閉じる方向)に駆動するためのリレー2,3と、モータ1のそれぞれ正転方向又は逆転方向の動作(マニュアル動作又はオート動作)を指令するための摺動式のスイッチ4(図2や図3(b)に示す)と、図示省略した制御処理回路(例えば、ワンチップのマイコンなど)の制御でリレー2,3をそれぞれ駆動するトランジスタ5,6と、PWM制御用のFET7やフライホイールダイオード8を備える。
【0031】
ここで、トランジスタ5,6と上記制御処理回路は、本発明の制御回路を構成し、さらに、この制御回路と上記リレー2,3やスイッチ4は、本発明の基本回路を構成する。また、FET7やフライホイールダイオード8は、本発明のPWM制御用回路部品に相当する。なお、トランジスタ5,6と上記制御処理回路を含む制御回路は、この場合HIC(ハイブリッドIC)として実現されており、図2等において符号10で示す。
また、図4において、符号11〜15で示す抵抗やコンデンサは、上述の制御処理回路によりFET7を制御し監視するためのものであり、やはりPWM制御用回路部品に相当する。また、符合16で示すコンデンサ(フライホイールダイオード8と並列に接続されたコンデンサ)も、PWM制御に必要なものであり、PWM制御用回路部品に相当する。また、符号17で示す電解コンデンサと、符号18で示すコイルは、ノイズ除去用の回路部品である。
【0032】
ここでリレー2,3は、それぞれ励磁用のコイル(符号省略)と、いわゆる1C接点(即ち、コモン端子;C端子、ノルマルオープン端子;N.O端子、及びノルマルクローズド端子;N.C端子)を有し、コイルの通電が行われていない非作動状態ではC端子とN.C端子が接続された状態となり、コイルの通電が行われた作動状態ではC端子とN.O端子が接続された状態となる。
これらリレー2,3のN.O端子は、コイル18を介して電源の高電位ラインE1に接続され、N.C端子は、FET7を介してグランドラインG1(電源の低電位ライン)に接続されている。またリレー2のC端子は、モータ1のモータコイルの両端子のうち、電源側に接続されたときにモータが正転する側の端子1aに接続されている。またリレー3のC端子は、モータ1のコイルの両端子のうち、電源側に接続されたときにモータが逆転する側の端子1bに接続されている。
【0033】
またスイッチ4は、第1から第4までの四つの接点(この場合、a接点)を内蔵するもので、各接点の一方の端子が、抵抗を介して例えば電源ラインE1に接続されるとともに、前述した制御処理回路の各入力ラインに接続され、各接点の他方の端子がグランドラインG1に接続されているものである。このスイッチ4は、その摺動子(図示省略)が一方向に動かされることにより、まず第1接点が閉じた状態になり、次いで第2接点が閉じた状態になる。また、その摺動子が他方向に動かされることにより、まず第3接点が閉じた状態になり、次いで第4接点が閉じた状態になるように構成されている。
【0034】
なおこの場合、スイッチ4の何れかの接点が閉じた状態になると、対応する入力ラインの電圧がHレベル(しきい値以上)からLレベル(しきい値未満)に変化して、対応する操作信号が入力されたものと前記制御処理回路が判断することになる。すなわち本例では、第1接点が閉じると、ウインドウをマニュアル動作で閉動させる操作信号(以下、マニュアルアップ信号という。)が入力されたと判断する。また、第2接点が閉じると、ウインドウをオート動作で閉動させる操作信号(以下、オートアップ信号という。)が入力されたと判断する。また、第3接点が閉じると、ウインドウをマニュアル動作で開動させる操作信号(以下、マニュアルダウン信号という。)が入力されたと判断する。また、第4接点が閉じると、ウインドウをオート動作で開動させる操作信号(以下、オートダウン信号という。)が入力されたと判断する構成となっている。
【0035】
次に、トランジスタ5,6は、リレー2,3の各コイルの通電ラインにおけるこの場合グランド側に設けられ、前記制御処理回路によって、これらトランジスタ5,6の駆動制御がなされる構成となっている。
すなわち、マニュアルアップ信号が前記制御処理回路に入力されると、この信号が入力されている期間中、前記制御処理回路はトランジスタ6のみを作動させる制御処理を行う。これによって、電源ラインE1の電圧によりリレー3の励磁用のコイルのみに電流が流れてリレー3の接点のみが作動し、この接点を介してモータ1の端子1bのみが電源E1に接続され、前記期間中だけモータ1が逆転してウインドウがマニュアル動作で閉動する。また、オートアップ信号が一時的でも前記制御処理回路に入力されると、ウインドウが全閉になるまでの間、前記制御処理回路はトランジスタ6のみを作動させる制御処理を継続し、これによりウインドウが全閉になるまで自動的に閉動する。
【0036】
また、マニュアルダウン信号が前記制御処理回路に入力されると、この信号が入力されている期間中、前記制御処理回路はトランジスタ5のみを作動させる制御処理を行う。これによって、電源ラインE1の電圧によりリレー2の励磁用のコイルのみに電流が流れてリレー2の接点のみが作動し、この接点を介してモータ1の端子1aのみが電源E1に接続され、前記期間中だけモータ1が正転してウインドウがマニュアル動作で開動する。また、オートダウン信号が一時的でも前記制御処理回路に入力されると、ウインドウが全開するまでの間、前記制御処理回路はトランジスタ5のみを作動させる制御処理を継続し、これによりウインドウが全開になるまで自動的に開動する。
なお、ウインドウが全閉又は全開になったか否かの判定は、モータ1の回転量又は回転位置やウインドウの作動量又は作動位置などを検出するセンサ(図示省略)の検出出力に基づいて前記制御処理回路が行う構成となっている。
【0037】
また、前記制御処理回路は、上記トランジスタ5,6の駆動(リレー2,3の駆動)を行なう際には、FETを所定のデューティ比でPWM駆動することによって、モータ1の電流を調整し、モータ1(ウインドウ)の速度を制御する。
また、挟み込み防止機能が設けられる場合には、例えば上記センサの検出出力に基づいて前記制御処理回路が挟み込み判定を行い、例えばオートアップの動作中に挟み込みが生じていると判定された場合には、スイッチ4からの操作信号にかかわらず強制的にウインドウを少なくとも一定距離開動させる制御が行われるように、前記制御処理回路の動作プログラムが設定される。また、通信機能が設けられる場合には、図示省略した受信手段により例えば無線通信による操作信号が受信される構成とされ、この信号が前記制御処理回路に入力されて、スイッチ4からの操作信号と同様の動作が実現される構成とされる。
なお、オートアップやオートダウンの機能が無い場合もあり、そのような場合には、スイッチ4の接点は二つでよく、前記制御処理回路もマニュアル動作の制御のみを行なう。
【0038】
次に、本駆動装置(主に運転席の駆動ユニット)の機械的構成を説明する。
本例の駆動ユニットは、図1及び図2に示すように、全体として長方形状のベース基板21が、上ケース22と下ケース23の間に挟まれるように固定され、これらケース22,23内に収納されてなり、上ケース22の上面側に操作ノブ24が設けられ、下ケースの下面側に配線接続用のコネクタ部27が設けられたものである。コネクタ部27には、後述のコネクタ28が配置される。なお以下では、長方形状のベース基板21の長い方の辺に沿った方向を長手方向といい、短い方の辺に沿った方向を幅方向という。
【0039】
ここで、ベース基板21には、図2や図3(b)に示すように、既述した基本回路の部品(トランジスタ5,6や前記制御処理回路を含むHIC10、リレー2,3、スイッチ4)、ノイズ除去用の回路部品(電解コンデンサ17やコイル18)、及び外部接続用のコネクタ28が搭載されているとともに、実装用基板30が実装されている。実装用基板30には、図8に示すように、PWM制御用回路部品(FET7、フライホイールダイオード8、抵抗11〜13、コンデンサ14〜16)が実装されている。
なお、実装用基板30の詳細については、後述する。
【0040】
次に、操作ノブ24は、本駆動装置の組み付け状態において例えば車両ドアの肘置きなどに配置される操作部であり、スイッチ4を作動させてその接点の状態を切替えるための手動操作入力部である。この操作ノブ24は、操作者の指などにより、中立位置(非操作位置)から引き上げ方向(ウインドウの閉動を指令する方向)と押し込み方向(ウインドウの開動を指令する方向)に揺動操作されるものである。
ここで操作ノブ24は、ベース基板21に対して平行でベース基板21の幅方向に配置された軸(図示省略)によって上ケース22に対して揺動自在に取付けられたものである。そして、この操作ノブ24の内側下方に伸びるように操作ノブ24と一体的に設けられた操作片(図示省略)が、ベース基板21に設けられた操作用開口21aを介してベース基板21の実装面(基本回路を構成する前述の主要な部品を実装する実装面)側に挿入され、スイッチ4の摺動子(図示省略)に係合しており、これにより、操作ノブ24の揺動操作に応じて、スイッチ4の摺動子が何れかの方向に摺動し、前述の如くスイッチ4の各接点が作動する構成となっている。
【0041】
また、操作ノブ24には、各操作方向において1段階又は2段階の節度感が付与されている。例えば、オート動作機能のあるウインドウ用の操作ノブは、1段目の節度感が得られる操作によりマニュアル動作(オート動作でない動作)を指令し、2段目の節度感が得られる操作によりオート動作を指令するために、各方向において2段階の節度感が付与され、操作段数が各方向について2段となっている。また、オート動作機能のないウインドウ用の操作ノブは、1段目の節度感が得られる操作によりマニュアル動作を指令するために、各方向において1段階の節度感が付与され、操作段数が各方向について1段となっている。
【0042】
なお、上述したような節度感を発生させる手段(節度感生成手段)としては、例えば、特開2001−118465号公報に記載されたようなバネとカム機構よりなるものがある。
即ち、操作ノブと一体に形成され、下方に伸びて下端が開口する円筒部と、この円筒部内に装填されて、この円筒部の軸方向に摺動自在な摺動部材と、前記円筒部内の前記摺動部材よりも奥側(上方)に装填されて、前記摺動部材を下方に付勢するコイルバネと、前記操作ノブを支持する固定側(例えば、ケース22)に固定されて、前記摺動部材の先端(下端)がはまり込む凹部を上面に有する受け部材とよりなる構成である。
ここで、受け部材の凹部と摺動部材の先端の嵌合面の形状は、操作ノブが自然状態(外力を加えていない状態)においてコイルバネの復元力により所定の中立位置(非操作位置)に復帰してその位置に維持されるように、全体として円錐状の形状となっている。またこれら嵌合面は、局部的に見ると、操作ノブを各方向に揺動操作する際にそれぞれ1段階又は2段階に節度感が生じるように、凹凸(段部)のある形状となっている。
そして、この操作ノブ24の各方向の節度感と、スイッチ4の作動状態が対応するように、各部材の寸法や位置が設定されている。
【0043】
また、コネクタ28は、ベース基板21の各配線パターン(外部に接続する必要のあるもの)を外部の機器(モータ1等)や他の座席の駆動ユニット、或いは電源やアースに接続するためのものである。ちなみに、ベース基板21に実装されたリレー2,3のC端子は、このコネクタ28とこれに接続された電線を介して車両の運転席ドア内等に配設された前述のモータ1のコイル端子1a,1bにそれぞれ接続されている。
【0044】
次に、上ケース22と下ケース23について説明する。組立状態において、下ケース23の周壁は、上ケース22の周壁内にはまり込み、下ケース23の周壁外面に形成された複数の突起23aが、上ケース22の周壁に形成された係合穴22aに弾力的に係合し、これにより組立状態が保持される構成となっている。また、下ケース23には、組立状態においてコネクタ28を露出させる開口23b(コネクタ28に相手方のコネクタをはめ込むための開口)が形成されており、これにより前述のコネクタ部27が構成される。
そして、各回路部品(実装用基板30含む)を搭載したベース基板21は、図1に示すように、実装用基板30に対向しない外面を上面側(操作ノブ24のある表面側)に向けて、上ケース22と下ケース23内に収納される。この際、ベース基板21の周縁下面に下ケース23の上端縁が当接し、ベース基板21は、下ケース23の上端縁と上ケース22内の天井面との間に挟まれた状態に保持される。
【0045】
次に、実装用基板30の構成について説明する。
実装用基板30は、金属製板材(例えば、銅製の板材)を加工して絶縁性材料(例えば、スーパーエンジニアリングプラスチック)でモールドしてなり、前述した高発熱性回路部品(FET7やダイオード8)を含む回路部品を搭載して、ベース基板21に実装される基板である。
この実装用基板30は、図8に示すように、内部に前記金属製板材が加工されてなる回路パターン31(図6に示す)が形成され、前記回路部品が搭載される長方形板状の基板部32と、基板部32の両端側から略直角に伸びて、内部に前記金属製板材が加工されてなる接続用導体33a〜33g(図6に示す)が配設され、先端には接続用導体33a〜33gの端部がモールドより露出してベース基板への接続用端子34a〜34gが形成された脚部35〜37と、前記金属製板材が加工されることにより、基板部32の一端側に設けられた放熱板38(図6に示す)とを備える。なお、放熱板38は、基板部32から断面L字状に伸びてモールドされない放熱部38aを有する。
【0046】
ここで、脚部35,36は、長方形状の基板部32の一端側(放熱板38と同端側)における両隅(放熱板38の両側)に設けられ、これら脚部35,36と放熱板38が、基板部32の幅方向において並んで設けられている。また、脚部35,36内には、接続用導体33a又は33bがそれぞれ配設されている。
また、脚部37は、基板部32の他端部(放熱板38と反対の端側)に設けられた幅広のものであり、内部に接続用導体33c〜33gが配設されている。
また、放熱板38は、基板部32の内部に配置される受熱部38b(図6に示す)を有し、基板部32におけるこの受熱部38bの実装面側に位置するモールド部分には、FET7とダイオード8がそれぞれはまり込む凹部32a,32bが形成されている(図7に示す)。これら凹部32a,32bは、高発熱性回路部品であるFET7又はダイオード8を、受熱部38bにモールドの薄肉部分を介して又は直接的に接合した状態で実装するためのものである。
【0047】
また、受熱部38b及び各凹部32a,32bには、ネジ挿通孔39,40(図7に示す)が形成されている。そして、このネジ挿通孔39,40に挿通されてモールド部分に形成されたネジ孔にねじ込まれるネジ部材41,42(図8に示す)により、FET7とダイオード8が基板部32に固定されている。
また、FET7とダイオード8を含むPWM制御用の回路部品は、図2や図8に示すように、基板部32のベース基板21に対向する内面に平面的に実装され、図2に示すように、基板部32のベース基板21に対向しない外面側(裏面側)のモールド部分には、受熱部38bをモールドから露出させる放熱用開口43が形成されている。そして、この放熱用開口43内には、回路部品接続用のフロー半田(図示省略)が積層されている。
【0048】
次に、実装用基板30の製造工程について説明する。
実装用基板30は、次のようにして製作可能である。まず、前記金属製板材の素材をプレス加工(切断、打ち抜き加工)することによって、図5に示すような第1中間品を得る。なお、図5において符号51で示すものは、位置決め或いは搬送用のフレームである。
次に、第1中間品の接続用導体33a〜33gや放熱部38aとなる部分の曲げ加工を行い、さらに図5において点線で囲んだ部分(回路パターン31になる部分における不要部分)を切断し除去する。これにより、図6に示すような第2中間品が得られる。
【0049】
その後、絶縁性樹脂の射出成型により、第2中間品の基板部32となる部分、及び脚部35〜37となる部分を、モールド成型する。これにより、図7に示すような第3中間品が得られる。ここで、基板部32を構成する上記絶縁性樹脂としては、耐熱性、特に耐半田性を考慮して、例えばスーパーエンジニアリングプラスチックを用いることが望ましい。スーパーエンジニアリングプラスチックであれば、フロー半田が問題無く可能となり、FET7等が発熱した際にも、変形を予防することがでるためである。ちなみに、絶縁性のみを求めるのであれば、ABS樹脂等の廉価な樹脂を使用することが可能であるが、ABS樹脂は耐熱温度が低くフロー半田を行った際に溶けてしまう恐れがある。
次いで、図7に示す第3中間品に対して、基板部32に形成した対応するスルーホールに各回路部品の端子を挿入し(FET7とダイオード8は前述のネジ止めも行う)、フロー半田により挿入した各端子を対応するスルーホールに接続して、図8に示すように基板部32の内面(実装面)に各回路部品を実装する。なお、フロー半田は、例えば実装面と反対の外面側から噴流方式で塗布するが、この際、各端子が挿入されたスルーホールに塗布するのと同工程において、放熱用開口43内にも塗布して積層させる。
そして最後に、フレーム51を切断し除去する。
【0050】
以上説明した本例の実装用基板では、モールドされていない放熱部38aを有する金属製の放熱板38が備えられているため、特許文献2のような単純な別基板に比較して格段に放熱性が高くなり、高発熱性回路部品(FET7とダイオード8)やその周辺回路の過熱を回避できる性能が十分高まる。
しかも本例では、放熱板38が、基板部32の配線パターン31と同一の部材(金属製板材)により、実装用基板30の一部として同一の製造工程で設けられる。このため、フープ材を連続して打抜くなどすることにより効率的に(即ち、安価に)造ることができる。なお、放熱板38として異なる部材を用いても、実装用基板30に相当するものが製作できるものの、材料の歩留まりや生産工程が複雑になる(即ち、高価になる)デメリットがある。また、別部品として放熱板38が設けられる構成に比べて、部品点数が増加せず、部品点数増加によるコスト増(組立工数増加)などの弊害が回避できる利点もある。
【0051】
また本例の実装用基板では、実装用基板30の脚部35,36と放熱板38が、基板部32の同端側に設けられ、基板部32の幅方向において並んで設けられている。
このため、前記金属製板材の加工前の状態(通常は矩形板状)において、脚部35,36を構成する接続用導体33a,33bとなる部分と、放熱板38となる部分が、基板部32となる部分の同じ端側に位置し、基板部32となる矩形部分の幅方向において並んで配置されることになる(図5,6参照)。このため、前記金属製板材において、脚部35,36を構成する接続用導体33a,33bとなる部分の前記幅方向隣の部分(放熱板38が無ければ不要となる素材部分)を、放熱板38として利用することになり、金属製板材の加工前の寸法(素材寸法)を必要最小限とし、また金属製板材の加工により切り捨てられて無駄となる素材部分を減らして、低コスト化を図ることができる。
特に本例の場合には、脚部35,36と放熱板38を併せた部分の幅方向の全体的な大きさが、基板部32の幅寸法内の大きさに収められているため、前記金属製板材の素材寸法が特に幅方向にも小型になっており、駆動装置全体の小型化が特に図られている。
【0052】
また本例の実装用基板では、放熱板38が、基板部32の内部に配置される受熱部38bを有し、高発熱性回路部品が、受熱部38bにモールドの薄肉部分を介して又は直接的に接合した状態で実装されている。
このため、高発熱性回路部品で発生した熱が、上記受熱部38bから放熱板38に効率良く伝わり、放熱部38aで外部に放熱されるので、放熱性がより高まる。
しかも本例の実装用基板は、高発熱性回路部品が放熱部38aの近傍に実装されている(即ち、受熱部38bと放熱部38aが近接している)から、特に放熱性が高い。
【0053】
また本例の実装用基板では、高発熱性回路部品が、基板部32のベース基板21に対向する内面に実装され、基板部32のベース基板に対向しない外面側のモールド部分には、受熱部38bをモールドから露出させる放熱用開口43(図2に示す)が形成されている。
このため、高発熱性回路部品で発生し受熱部38bに伝わった熱が、上記放熱用開口43からも外部に効果的に放熱され、さらに放熱性が高まる。
さらに本例では、上記放熱用開口43内に回路部品接続用のフロー半田が積層されているため、放熱板38の熱容量が増加して、高発熱性回路部品を冷却する能力(過熱を防止する能力)がさらに高まる。
【0054】
また本例の実装用基板では、各回路部品が、基板部32のベース基板21に対向する内面に平面的に(即ち、基板に直交する方向に部品を重合させない状態に)実装されている。
このため、ベース基板21上に実装される回路部品と、実装用基板30上に実装される回路部品との干渉を避けながら、ベース基板21における実装用基板30に対向する実装面位置(即ち、実装用基板30の内側の位置)にも回路部品(この場合、リレー3やスイッチ4等)を実装して、各回路部品を全体として立体的かつ高密度に配置し易くなる。しかも、実装用基板30のベース基板21からの高さ(実装用基板30の脚部35〜37の長さに応じた実装高さ)を必要最小限に低減できる。このため、装置の小型化(特に厚さ方向の小型化)に貢献できる。
【0055】
また、上述した本例の駆動装置は、PWM制御用回路部品が搭載された本例の実装用基板30と、基本回路及び前記実装用基板30が搭載されるベース基板21とよりなる。
このため、上記2つの基板を重合させ、各回路部品を立体的に(2階建式に)配置することによって、PWM制御機能を持ちながら、装置が少なくとも基板に平行な横方向に大型化することを回避できる(即ち、装置の横方向の寸法は、PWM制御用回路部品を持たないベース基板のみの場合と、略同等に維持できる)。これにより、車両などにおいて許容される設置スペース内に納めることが容易になる。
【0056】
また、PWM制御機能を持たない種類の駆動装置(PWM制御用回路部品を持たないタイプ)に対して、ベース基板の共用化が図れるため、生産性が向上する。例えば、PWM制御機能を持つ上記形態例の駆動装置に対して、実装用基板30を異なるもの(基本回路の構成上必要な配線パターンを実現するだけのもの)に付け替えるだけで、PWM制御機能を持たない種類の駆動装置が製造でき、PWM制御機能を持つタイプと持たないタイプの作り分けが容易になる。
また、ベース基板21を一般的で安価なプリント基板で構成したとしても、PWM制御用回路部品の高発熱性回路部品で発生する熱を、前述の実装用基板30の機能によって外部に効果的に放熱でき、回路部品の過熱を信頼性高く回避できる。
【0057】
また本例の駆動装置では、前記基本回路を構成する回路部品(主要な部品であり、外面に実装する必要のある例えば小型なLED等を除く)が、ベース基板21の実装用基板30に対向する内面に実装され、操作ノブ24(操作部)が、ベース基板21の実装用基板30に対向しない外面側に配置され、操作ノブ24と一体的に又は連動して動く操作片が、ベース基板21に形成された操作用開口21aを介して、ベース基板21の内面側に挿入されてスイッチ4に連結され、これにより、操作ノブ24の作動状態に応じてスイッチ4の接点の状態が切り替わる構成である。
【0058】
即ち、ベース基板21の外面側(実装用基板30のない裏面側)において、スイッチ4と操作ノブ24の連結が行われる。このため、ベース基板21(主基板)上に実装用基板30(別基板)を実装する構成でありながら、大型化することなく部材の干渉を避けて、主基板上のスイッチ4と操作ノブ24を連結できる。即ち、ベース基板21を横方向に大型化(実装面の大型化)しなくても、スイッチ4と操作ノブ24の連結部と実装用基板30との干渉を避けることができる。
【0059】
なお、本発明は上述した形態例に限られず、各種の変形や応用があり得る。
例えば、放熱部38aは、図9(a)に示すように波型に湾曲した形状としてもよいし、図9(b)に示すように複数の孔を持つ構造としてもよいし、図9(c)に示すように複数の突起を持つ構造としてもよい。このようにすると、放熱部38aの表面積が増加して、放熱性がさらに高まる。また、放熱板や放熱部を、基板部の別の端部にも設けてもよい。例えば、基板部の両端側に放熱部を設けて、さらに放熱性を高めた構成もあり得る。
【0060】
また上記形態例は、車両のパワーウインドウシステムにおける操作ノブが一つだけの座席(通常は、運転席以外)の駆動装置に本発明を適用した例であるが、他の座席の分も含めて操作ノブが複数ある座席(通常は、運転席)の駆動装置に、本発明を適用することも可能である。
通常、車両における運転席のパワーウインドウの駆動装置は、基本回路の部品として、他席(運転席以外の座席)のウインドウ用のスイッチや、他席のウインドウロック用のスイッチも搭載しており、またこれに対応して操作ノブも複数備える。このような運転席ウインドウの駆動装置に対しても、本願発明は同様に適用可能である。
【0061】
また上記形態例では、マイコンなどの制御処理回路を備える駆動装置を例示したが、制御回路の構成要素としてマイコンなどの制御処理回路を持たない駆動装置であってもよい。例えば、運転席ウインドウの駆動装置の制御処理回路が、他席ウインドウの駆動装置のリレーやFETの制御も実行するようなケースもあり得るからである。
また、上記形態例と同様の構成で、車両のサンルーフやパワーシート又はパワースライドドアの駆動装置、或いは建物のドアの駆動装置などにも本願発明を適用し、同様の効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】駆動装置の表面側を示す分解斜視図である。
【図2】駆動装置の裏面側を示す分解斜視図である。
【図3】(a)は実装用基板を示す斜視図、(b)はベース基板を示す斜視図である。
【図4】駆動装置の主要回路を示す回路図である。
【図5】実装用基板の製造工程を説明する図である。
【図6】実装用基板の製造工程を説明する図である。
【図7】実装用基板の製造工程を説明する図である。
【図8】実装用基板の製造工程を説明する図である。
【図9】他の形態例を示す図である。
【符号の説明】
【0063】
1 モータ
2,3 リレー
4 スイッチ
7 FET(スイッチング素子、PWM制御用回路部品、高発熱性回路部品)
8 フライホイールダイオード(PWM制御用回路部品、高発熱性回路部品)
10 HIC(制御回路)
11〜13 抵抗(PWM制御用回路部品)
14〜16 コンデンサ(PWM制御用回路部品)
21 ベース基板
21a 操作用開口
24 操作ノブ(操作部)
30 実装用基板
31 回路パターン
32 基板部
33a〜33g 接続用導体
34a〜34g 接続用端子
35〜37 脚部
38 放熱板
38a 放熱部
38b 受熱部
43 放熱用開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製板材を絶縁性材料でモールドしてなり、高発熱性回路部品を含む回路部品を搭載して、前記回路部品を制御する基本回路が搭載されるベース基板に実装される実装用基板であって、
内部に前記金属製板材よりなる回路パターンが形成され、前記回路部品が搭載される矩形板状の基板部と、
前記基板部の両端側から略直角に伸びて、内部に前記金属製板材よりなる接続用導体が配設され、先端には前記接続用導体の端部がモールドより露出してベース基板への接続用端子が形成された脚部と、
前記金属製板材により、前記基板部の少なくとも一端側に設けられた放熱板とを備え、
前記放熱板は、前記基板部から伸びて露出している放熱部を有することを特徴とする実装用基板。
【請求項2】
前記脚部の少なくとも一つと前記放熱板が、前記基板部の同端側に並んで設けられていることを特徴とする請求項1に記載の実装用基板。
【請求項3】
前記放熱板は、前記基板部の内部に配置される受熱部を有し、
前記高発熱性回路部品は、前記受熱部にモールドの薄肉部分を介して又は直接的に接合した状態で実装されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の実装用基板。
【請求項4】
前記高発熱性回路部品は、前記基板部のベース基板に対向する内面に実装され、前記基板部のベース基板に対向しない外面側のモールド部分には、前記受熱部をモールドから露出させる放熱用開口が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の実装用基板。
【請求項5】
前記放熱用開口内には、前記回路部品接続用の半田が積層されていることを特徴とする請求項4に記載の実装用基板。
【請求項6】
前記高発熱性回路部品が、前記放熱部の近傍に実装されていることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の実装用基板。
【請求項7】
モータに電源供給してモータを作動させるリレーを有し、モータの作動を指令する操作部の作動状態に応じて、前記リレーを作動させてモータを駆動する駆動装置であって、
ベース基板と、このベース基板に実装される請求項1乃至6の何れかに記載の実装用基板とを備え、
ベース基板には、前記リレーと、前記操作部の作動状態に応じて接点の状態が切り替わるスイッチと、このスイッチの接点の状態に応じて前記リレーを制御する制御回路と、を含む基本回路が搭載され、
前記実装用基板には、モータの通電ラインに接続されてモータの作動時にモータの制御を可能とするスイッチング素子を含む制御用回路部品が搭載されていることを特徴とする駆動装置。
【請求項8】
前記基本回路を構成する回路部品は、ベース基板の実装用基板に対向する内面に実装され、
前記操作部が、ベース基板の実装用基板に対向しない外面側に配置され、
前記操作部と一体的に又は連動して動く操作片が、ベース基板に形成された操作用開口を介して、ベース基板の内面側に挿入されて前記スイッチに連結され、これにより、前記操作部の作動状態に応じて前記スイッチの接点の状態が切り替わる構成となっていることを特徴とする請求項7に記載の駆動装置。
【請求項9】
前記モータが車両における可動体を駆動するモータであることを特徴とする請求項7又は8に記載の駆動装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2006−24620(P2006−24620A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−199264(P2004−199264)
【出願日】平成16年7月6日(2004.7.6)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】