説明

害虫防除用組成物

【課題】 害虫、特に双翅目害虫に対して優れた防除効力を有する害虫防除用組成物を提供する。
【解決手段】 2,3,5,6−テトラフルオロベンジル 3−(2,2−ジクロロビニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレートと、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−(メトキシメチル)ベンジル 2,2−ジメチル−3−(2−メチルプロプ−1−エニル)シクロプロパンカルボキシレートとを含有することを特徴とする害虫防除用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、害虫防除用組成物、害虫の防除方法、及び該組成物の使用に関し、特に双翅目害虫防除に適した組成物、双翅目害虫の防除方法、及び該組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
2,3,5,6−テトラフルオロ−4−(メトキシメチル)ベンジル 2,2−ジメチル−3−(2−メチルプロプ−1−エニル)シクロプロパンカルボキシレートは、双翅目害虫等の害虫防除用組成物の有効成分として知られている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、害虫防除用組成物は、より優れた防除効力が必要とされる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−11022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、害虫防除用組成物、及びこれを使用する害虫の防除方法に関する。特に、双翅目害虫の防除に適した害虫防除用組成物、及びこれらを使用する双翅目害虫の防除方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、害虫に対して優れた防除効力を有する組成物を見出すべく鋭意検討した結果、[a]2,3,5,6−テトラフルオロベンジル 3−(2,2−ジクロロビニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート(以下、本エステル化合物Aと記す。)と、[b]2,3,5,6−テトラフルオロ−4−(メトキシメチル)ベンジル 2,2−ジメチル−3−(2−メチルプロプ−1−エニル)シクロプロパンカルボキシレート(以下、本エステル化合物Bと記す。)とを含有する組成物が、害虫、特に双翅目害虫に対して優れた防除効力を有することを見出し、本発明に到った。
【0006】
即ち、本発明は以下の発明に係るものである。
[1]
本エステル化合物Aと、本エステル化合物Bとを含有する害虫防除用組成物(以下、本防除組成物と記す。)。
[2]
本エステル化合物A:本エステル化合物Bの質量比が10:1〜1:5である前記[1]記載の組成物。
[3]
双翅目害虫防除の為の、前記[1]又は[2]に記載の害虫防除用組成物。
[4]
前記[1]又は[2]に記載の組成物の有効量を、害虫または害虫の生息場所に施用する害虫の防除方法。
[5]
前記[1]又は[2]に記載の組成物の有効量を、双翅目害虫または双翅目害虫の生息場所に施用する双翅目害虫の防除方法。
[6]
害虫防除の為の、前記[1]又は[2]に記載の組成物の使用。
[7]
双翅目害虫防除の為の、前記[1]又は[2]に記載の組成物の使用。
【発明の効果】
【0007】
本防除組成物は、害虫、特に双翅目害虫の防除において優れた効力を有する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本防除組成物は、本エステル化合物Aと本エステル化合物Bとを含有することを特徴とする。
本エステル化合物Aとしては、例えばトランスフルトリン[2,3,5,6−テトラフルオロベンジル (1R)−トランス−3−(2,2−ジクロロビニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート]が挙げられ、斯かる化合物は、下記式(I)で示される化合物である。
【0009】
【化1】

【0010】
また、本エステル化合物Bは、ジメフルトリン[2,3,5,6−テトラフルオロ−4−(メトキシメチル)ベンジル 2,2−ジメチル−3−(2−メチルプロプ−1−エニル)シクロプロパンカルボキシレート]であり、下記式(II)で示される化合物である。
【0011】
【化2】

【0012】
本エステル化合物Aおよび本エステル化合物Bには、シクロプロパン環上の2つの不斉炭素に基づく異性体が存在する。本明細書中においては、(1R)および(1S)は、本エステル化合物Aおよび本エステル化合物Bのシクロプロパン環上の位置とその絶対立体配置を意味する。本防除組成物に含まれている本エステル化合物Aおよび本エステル化合物Bとしては、(1R)体または(1R)体に富む異性体混合物が好ましい。なお、シクロプロパン環上の3位における立体配置は、1位における置換基との相対的位置によっても表され得ることから、本明細書においては次に述べるシス/トランスによって示す。
【0013】
また、本エステル化合物Aおよび本エステル化合物Bには、シクロプロパン環上の1位と3位との置換基相互の相対的位置がシス又はトランスである異性体が存在する。本明細書中においては、シスおよびトランスはシクロプロパン環上の1位と3位の置換基相互の相対的位置を意味する。本防除組成物に含まれている本エステル化合物Aおよび本エステル化合物Bとしては、(1R)−トランス体または(1R)−トランス体に富む異性体混合物が好ましい。
【0014】
本防除組成物において、本エステル化合物Aと本エステル化合物Bとの含有割合は、害虫に対して防除効果をより発揮し得るという点で、好ましくは質量比で10:1〜1:5であり、より好ましくは3:1〜1:1である。
【0015】
本エステル化合物Aは、例えば特開昭63−203649号公報に記載された方法により製造できる。また、本エステル化合物Bは、例えば特開2001−11022号公報に記載された方法により製造できる。
【0016】
本防除組成物は、害虫、特に双翅目害虫に対して防除効果を有する。双翅目害虫としては、カ類(アカイエカ、コガタアカイエカ、ネッタイイエカ等のイエカ類;ネッタイシマカ、ヒトスジシマカ等のヤブカ類;シナハマダラカ等のハマダラカ類;ユスリカ類等)やハエ類(イエバエ、クロイエバエ、オオイエバエ、ヒメイエバエ、オオキモンノミバエ、キイロショウジョウバエ、ツヤホソバエ、クロバエ、ニクバエ等)が挙げられる。
【0017】
本防除組成物は、双翅目害虫以外の害虫、例えば下記の節足動物に対しても実用的な防除効力を有する。
即ち、ニカメイガ、コブノメイガ、ノシメマダラメイガ等のメイガ類;ハスモンヨトウ、アワヨトウ、ヨトウガ等のヨトウ類;モンシロチョウ等のシロチョウ類;コカクモンハマキ等のハマキガ類;シンクイガ類;ハモグリガ類;ドクガ類;ウワバ類;カブラヤガ、タマナヤガ等のアグロティス属害虫(Agrotis spp.);ヘリコベルパ属害虫(Helicoverpa spp.);ヘリオティス属害虫(Heliothis spp.);コナガ、イチモンジセセリ、イガ、コイガ等のイガ類;チャバネゴキブリ、クロゴキブリ、ワモンゴキブリ、トビイロゴキブリ、コバネゴキブリ等のゴキブリ類;
アリ類;スズメバチ類;アリガタバチ類;カブラハバチ等のハバチ類;
イヌノミ、ネコノミ、ヒトノミ等のノミ類;
ヒトジラミ、ケジラミ、アタマジラミ、コロモジラミ等のシラミ類;
ヤマトシロアリ、イエシロアリ等のシロアリ類;
ヒメトビウンカ、トビイロウンカ、セジロウンカ等のウンカ類;ツマグロヨコバイ、タイワンツマグロヨコバイ等のヨコバイ類;アブラムシ類;カメムシ類;コナジラミ類;カイガラムシ類;トコジラミ等のトコジラミ類;グンバイムシ類;キジラミ類;
ヒメカツオブシムシ、ヒメマルカツオブシムシ、ウエスタンコーンルートワーム、サザンコーンルートワーム等のコーンルートワーム類;ドウガネブイブイ、ヒメコガネ等のコガネムシ類;コクゾウムシ、イネミズゾウムシ、ワタミゾウムシ、アズキゾウムシ等のゾウムシ類;チャイロコメノゴミムシダマシ、コクヌストモドキ等のゴミムシダマシ類;イネドロオイムシ、キスジノミハムシ、ウリハムシ等のハムシ類;シバンムシ類、ニジュウヤホシテントウ等のエピラクナ属(Epilachna spp.);ヒラタキクイムシ類;ナガシンクイムシ類;カミキリムシ類;アオバアリガタハネカクシ等のハネカクシ類;ミナミキイロアザミウマ、ミカンキイロアザミウマ、ハナアザミウマ等のアザミウマ類;ケラ類;バッタ類;
コナヒョウヒダニ、ヤケヒョウヒダニ等のヒョウヒダニ類;ケナガコナダニ、ムギコナダニ等のコナダニ類;チリニクダニ、イエニクダニ、サナアシニクダニ等のニクダニ類;クワガタツメダニ、フトツメダニ等のツメダニ類;ホコリダニ類;マルニクダニ類;イエササラダニ類;ナミハダニ、カンザワハダニ、ミカンハダニ、リンゴハダニ等のハダニ類;フタトゲチマダニ等のマダニ類;トリサシダニ、ワクモ等のワクモ類;
に対しても実用的な防除効力を有する。
【0018】
本防除組成物は、本エステル化合物Aと本エステル化合物Bとの混合物がそのまま用いられているものであってもよいが、本発明の目的を損なわない範囲で、他の成分が含まれていてもよい。なお、本防除組成物は、通常、下記のような製剤形態で使用される。
【0019】
詳しくは、本防除組成物の一般的な製剤形態としては、以下のようなものが挙げられる。その製剤形態としては、例えば油剤、乳剤、水和剤、フロアブル剤(水中懸濁剤、水中乳濁剤等)、マイクロカプセル剤、粉剤、粒剤、錠剤、エアゾール剤、炭酸ガス製剤、加熱蒸散剤(殺虫線香、電気殺虫マット、吸液芯型加熱蒸散殺虫剤等)、ピエゾ式殺虫製剤、加熱燻煙剤(自己燃焼型燻煙剤、化学反応型燻煙剤、多孔セラミック板燻煙剤等)、非加熱蒸散剤(樹脂蒸散剤、紙蒸散剤、不織布蒸散剤、編織物蒸散剤等)、煙霧剤(フォッキング等)、ULV剤、接触剤(防虫シート、防虫ネット)及び毒餌が挙げられる。
【0020】
本防除組成物の製造方法としては、例えば以下の方法を挙げることができる。
(1)本エステル化合物Aと本エステル化合物Bとを、固体担体、液体担体、ガス状担体、餌等と混合し、必要であれば界面活性剤その他の製剤用補助剤をさらに添加・加工する方法。
(2)本エステル化合物Aと本エステル化合物Bとを、基材に含浸する方法。
(3)本エステル化合物A、本エステル化合物B及び基材を混合した後に成形加工する方法。
これらの本防除組成物には、本エステル化合物A及び本エステル化合物Bを、製剤形態にもよるが、合計量にして通常0.001〜98質量%含有させる。
【0021】
前記固体担体としては、例えば粘土類(カオリンクレー、珪藻土、ベントナイト、フバサミクレー、酸性白土等)、合成含水酸化珪素、タルク、セラミック類、その他の無機鉱物(セリサイト、石英、硫黄、活性炭、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、水和シリカ等)、化学肥料(硫安、燐安、硝安、塩安、尿素等)等の微粉末及び粒状物、
常温で固体の物質(2,4,6−トリイソプロピル−1,3,5−トリオキサン、ナフタリン、p−ジクロロベンゼン、樟脳、アダマンタン等)、並びに、
羊毛、絹、綿、麻、パルプ、合成樹脂(例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等のポリエチレン系樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体等のエチレン−ビニルエステル共重合体;エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル共重合体等のエチレン−メタクリル酸エステル共重合体;エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体等のエチレン−アクリル酸エステル共重合体;エチレン−アクリル酸共重合体等のエチレン−ビニルカルボン酸共重合体;エチレン−テトラシクロドデセン共重合体;プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレン共重合体等のポリプロピレン系樹脂;ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリブテン−1、ポリブタジエン、ポリスチレン;アクリロニトリル−スチレン樹脂;アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、スチレン−共役ジエンブロック共重合体、スチレン−共役ジエンブロック共重合体水素添加物等のスチレン系エラストマー;フッ素樹脂;ポリメタクリル酸メチル等のアクリル系樹脂;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレエート、ポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリアクリルサルフォン、ポリアリレート、ヒドロキシ安息香酸ポリエステル、ポリエーテルイミド、ポリエステルカーボネート、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリウレタン、発泡ポリウレタン、発泡ポリプロピレン、発泡ポリエチレン等の多孔質樹脂)、ガラス、金属、セラミック等の1種または2種以上からなるフェルト、繊維、布、編物、シート、紙、糸、発泡体、多孔質体及びマルチフィラメントが挙げられる。
【0022】
前記液体担体としては、例えば芳香族または脂肪族炭化水素類(キシレン、トルエン、アルキルナフタレン、フェニルキシリルエタン、ヘキサン、シクロヘキサン等、並びにケロシン(灯油)、軽油、イソパラフィン等)、ハロゲン化炭化水素類(クロロベンゼン、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン等)、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ヘキサノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール等)、エーテル類(ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等)、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル、クエン酸アセチルトリブチルやアジピン酸イソノニルなどのエステル油等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)、ニトリル類(アセトニトリル、イソブチロニトリル等)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシド等)、酸アミド類(N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−ピロリドン等)、炭酸アルキレン類(炭酸プロピレン等)、植物油(大豆油、綿実油等)、植物精油(オレンジ油、ヒソップ油、レモン油等)、及び水が挙げられる。
【0023】
前記ガス状担体としては、例えばブタンガス、フロンガス、液化石油ガス(LPG)、ジメチルエーテル、及び炭酸ガスが挙げられる。
【0024】
前記界面活性剤としては、例えばアルキル硫酸エステル塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩、アルキルアリールエーテル類、アルキルアリールエーテル類のポリオキシエチレン化物、ポリエチレングリコールエーテル類、多価アルコールエステル類、及び糖アルコール誘導体が挙げられる。
【0025】
本防除組成物の製剤化の際に用いられるその他の製剤用補助剤としては、例えば固着剤、分散剤及び安定剤等が挙げられる。具体的には、例えばカゼイン、ゼラチン、多糖類(α澱粉などのでんぷん、アラビアガム、セルロース誘導体、アルギン酸等)、リグニン誘導体、ベントナイト、糖類、合成水溶性高分子(ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン)、ポリアクリル酸等、BHT(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール)、及びBHA(2−tert−ブチル−4−メトキシフェノールと3−tert−ブチル−4−メトキシフェノールとの混合物)が挙げられる。
【0026】
加熱蒸散剤としての殺虫線香の基材としては、例えば木粉や粕粉等の植物性粉末とタブ粉、スターチ、グルティン等の結合剤との混合物が挙げられる。
【0027】
加熱蒸散剤としての電気殺虫マットの基材としては、例えばコットンリンターを板状に固めたもの、及びコットンリンターとパルプとの混合物のフィリブルを板状に固めたものが挙げられる。
【0028】
加熱燻煙剤としての自己燃焼型燻煙剤の基材としては、例えば、硝酸塩、亜硝酸塩、グアニジン塩、塩素酸カリウム、ニトロセルロース、エチルセルロース、木粉等の燃焼発熱剤、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、重クロム酸塩、クロム酸塩等の熱分解刺激剤、硝酸カリウム等の酸素供給剤、メラミン、小麦デンプン等の支燃剤、珪藻土等の増量剤及び合成糊料等の結合剤が挙げられる。
【0029】
加熱燻煙剤としての化学反応型燻煙剤の基材としては、例えば、アルカリ金属の硫化物、多硫化物、水硫化物、酸化カルシウム等の発熱剤、炭素質物質、炭化鉄、活性白土等の触媒剤、アゾジカルボンアミド、ベンゼンスルホニルヒドラジド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、ポリスチレン、ポリウレタン等の有機発泡剤、及び、天然繊維片、合成繊維片等の充填剤が挙げられる。
【0030】
非加熱蒸散剤としての樹脂蒸散剤の基材としては、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等のポリエチレン系樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体等のエチレン−ビニルエステル共重合体;エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル共重合体等のエチレン−メタクリル酸エステル共重合体;エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体等のエチレン−アクリル酸エステル共重合体;エチレン−アクリル酸共重合体等のエチレン−ビニルカルボン酸共重合体;エチレン−テトラシクロドデセン共重合体;プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレン共重合体等のポリプロピレン系樹脂;ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリブテン−1、ポリブタジエン、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン樹脂;アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、スチレン−共役ジエン共重合体、スチレン−共役ジエンブロック共重合体水素添加物等のスチレン系エラストマー;フッ素樹脂;ポリメタクリル酸メチル等のアクリル系樹脂;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリアクリルサルフォン、ポリアリレート、ヒドロキシ安息香酸ポリエステル、ポリエーテルイミド、ポリエステルカーボネート、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリウレタンが挙げられ、これらの基材は、単独で用いても2種以上の混合物として用いても良く、これらの基材には必要によりフタル酸エステル類(フタル酸ジメチル、フタル酸ジオクチル等)、アジピン酸エステル類、ステアリン酸等の可塑剤が添加されていてもよい。
前記樹脂蒸散剤は、本エステル化合物Aおよび本エステル化合物Bを上記基材中に混練した後、射出成型、押出成型、プレス成型等により成型することにより得ることができる。得られた樹脂製剤は、必要により更に成型、裁断等の工程を経て、板状、フィルム状、テープ状、網状、ひも状等の形状に加工することもできる。これらの樹脂製剤は、例えば動物用首輪、動物用イヤータッグ、シート製剤、誘引ひも、園芸用支柱として加工される。
【0031】
毒餌の基材としては、例えば、穀物粉、植物油、糖、結晶セルロース等の餌成分、ジブチルヒドロキシトルエン、ノルジヒドログアイアレチン酸等の酸化防止剤、デヒドロ酢酸等の保存料、トウガラシ粉末等の子どもやペットによる誤食防止剤、及びチーズ香料、タマネギ香料、ピーナッツオイル等の害虫誘引性香料が挙げられる。
【0032】
次に、本発明の防除方法を、防除対象がハエ類の場合を例にとり説明する。防除方法としては、本防除組成物をハエ類またはハエ類の生息場所に施用する方法が挙げられる。
【0033】
本防除組成物の施用方法としては、具体的には、例えば以下の方法が挙げられ、それぞれの形態、使用場所等に応じて適宜選択できる。
(1)本防除組成物をそのままハエ類またはハエ類の生息場所に処理する方法。
(2)本防除組成物を水等の溶媒で希釈した後に、ハエ類またはハエ類の生息場所に散布処理する方法。
この場合には、乳剤、水和剤、フロアブル剤、マイクロカプセル製剤等の形態に製剤化された本防除組成物を、最終的に本エステル化合物A及び本エステル化合物Bの濃度が合計で0.01〜1000ppmとなるように希釈する。
(3)本防除組成物をハエ類の生息場所で加熱し、有効成分を揮散させる方法。
この場合、本エステル化合物A及び本エステル化合物Bの施用量、施用濃度は、いずれも本防除組成物の形態、施用時期、施用場所、施用方法、又は被害状況等に応じて適宜定めることができる。
【0034】
本防除組成物を防疫用として用いる場合は、その施用量は、空間に適用するときは本エステル化合物A及び本エステル化合物Bの量として通常0.0001〜1000mg/m3であり、平面に適用するときは通常0.0001〜1000mg/m2である。製剤形態が殺虫線香、電気殺虫マット等の形態である場合は、その製剤形態に応じて加熱により有効成分を揮散させて本防除組成物を施用できる。製剤形態が樹脂製剤、紙製剤、錠剤、不織布製剤、編織物製剤、シート製剤等の形態である場合は、例えば施用する空間に該製剤をそのまま放置する、又は該製剤に送風することにより本防除組成物を施用できる。
本防除組成物を防疫用として施用する空間としては、例えばクローゼット、押入れ、和ダンス、食器棚、トイレ、浴場、物置、居間、食堂、倉庫、車内等が挙げられる。さらには、野外の開放空間を挙げることもできる。
【0035】
本防除組成物をウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリ等の家畜、イヌ、ネコ、ラット、マウス等の小動物の外部寄生虫防除に用いる場合は、獣医学的に公知の方法で動物に使用することができる。具体的な使用方法としては、全身抑制(systemic control)を目的にする場合には、例えば錠剤、飼料混入、坐薬、注射(筋肉内、皮下、静脈内、腹腔内等)等の形態により投与する方法を採用でき、非全身的抑制(non-systemic control)を目的とする場合には、例えば油剤若しくは水性液剤を噴霧する、ポアオン(pour-on)処理若しくはスポットオン(spot-on)処理する、又は、シャンプー製剤で動物を洗うまたは樹脂蒸散剤を首輪や耳札にして動物に付ける等の方法を採用することができる。なお、動物体に投与する場合の本エステル化合物A及び本エステル化合物Bの量は、通常動物の体重1kgに対して、0.01〜1000mgの範囲である。
【実施例】
【0036】
以下、製剤例及び試験例等により、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、これらの例に限定されるものではない。
まず、本防除組成物の製剤例を示す。尚、実施例において、特に明記しない限り、部は質量部を意味する。
【0037】
製剤例1
トランスフルトリン 9部とジメフルトリン 0.9部とを、キシレン 37.5部およびN,N−ジメチルホルムアミド 37.5部に溶解し、これにポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル 9.1部およびドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム 6部を加え、よく撹拌混合して、乳剤を得る。
【0038】
製剤例2
トランスフルトリン 20部とジメフルトリン 20部とに、ソルポール5060(東邦化学登録商標名)5部を加え、よく混合して、カープレックス#80(塩野義製薬登録商標名、合成含水酸化ケイ素微粉末)32部、300メッシュ珪藻土 23部を加え、ジュースミキサーで混合して、水和剤を得る。
【0039】
製剤例3
トランスフルトリン 3部とジメフルトリン 0.3部とに、合成含水酸化珪素微粉末5部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 5部、ベントナイト 30部およびクレー 56.7部を加え、よく撹拌混合し、ついでこれらの混合物に適当量の水を加え、さらに撹拌し、増粒機で製粒し、通風乾燥して、粒剤を得る。
【0040】
製剤例4
トランスフルトリン 5部、ジメフルトリン 0.5部、合成含水酸化珪素微粉末 1部、凝集剤としてドリレスB(三共社製)1部およびクレー 7部を乳鉢でよく混合した後に、ジュースミキサーで撹拌混合する。得られた混合物にカットクレー 85.5部を加えて、充分撹拌混合し、粉剤を得る。
【0041】
製剤例5
トランスフルトリン 10部、ジメフルトリン 1部、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートアンモニウム塩を半分量含むホワイトカーボン 35部及び水 54部を混合し、湿式粉砕法で微粉砕することにより、粉剤を得る。
【0042】
製剤例6
トランスフルトリン 0.05部とジメフルトリン 0.1部とを、ジクロロメタン10部に溶解し、これをイソパラフィン溶剤(アイソパーM、エクソン化学登録商標名)89.85部に混合して、油剤を得る。
【0043】
製剤例7
トランスフルトリン 0.1部、ジメフルトリン 0.05部およびネオチオゾール(中央化成株式会社製)49.85部をエアゾール缶に入れ、エアゾールバルブを装着した後、ジメチルエーテル 25部及びLPG 25部を充填し、振とうを加え、アクチュエータを装着することにより、油性エアゾールを得る。
【0044】
製剤例8
トランスフルトリン 0.5部、ジメフルトリン 0.05部、BHT 0.01部、キシレン 5部、脱臭灯油 3.44部および乳化剤{アトモス300(アトモスケミカル社登録商標名)}1部からなる混合物と、蒸留水 50部とをエアゾール容器に充填し、バルブ部分を取り付け、該バルブを通じて噴射剤(LPG)40部を加圧充填して、水性エアゾールを得る。
【0045】
製剤例9
0.5cm(厚さ)×69cm(長さ)×0.2cm(幅)のハニカム構造の紙細工片を一方の端から巻いて、直径5.5cm、高さ0.2cmの略円柱状の担体を作製する。トランスフルトリン 5部とジメフルトリン 0.5部とをアセトン94.5部に溶解した溶液の適量を、前記担体に均一に塗布した後、アセトンを風乾させて、紙蒸散剤を得る。
【0046】
製剤例10
立体編地(商品名:フュージョン、型番:AKE69440、販売元:旭化成せんい株式会社、厚さ:4.3mm、目付:321g/m2、ポリアミド製)を直径5cmの略円形状に裁断する。トランスフルトリン 5部とジメフルトリン 0.5部とをアセトン94.5部に溶解した溶液の適量を、前記の裁断した立体編地に均一に塗布した後、アセトンを風乾させて、編織物蒸散剤を得る。
【0047】
製剤例11
エチレン−メタクリル酸メチル共重合体(メタクリル酸メチル含有量:10質量%、MFR=2〔g/10分〕)97.8部、トランスフルトリン 2部およびジメフルトリン 0.2部を、45mmφ同方向二軸押出機にて130℃で溶融混練し、更に40mmφ押出機にて150℃で溶融混練し、Tダイからシート状に押出し、冷却ロールにて冷却して、樹脂蒸散剤を得る。
【0048】
製剤例12
エチレン−酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含有量:10質量%、MFR=2〔g/10分〕)97.8部、トランスフルトリン 2部およびジメフルトリン 0.2部を、45mmφ同方向二軸押出機にて130℃で溶融混練し、更に40mmφ押出機にて150℃で溶融混練し、Tダイからシート状に押出し、冷却ロールにて冷却して、樹脂蒸散剤を得る。
【0049】
製剤例13
トランスフルトリン 5部とジメフルトリン 0.5部とをアセトン94.5部に溶解する。この溶液の適当量を折り畳み可能な構造を有する紙(2000cm2)に塗布し、アセトンを風乾して、紙蒸散剤を得る。
【0050】
製剤例14
トランスフルトリン 3部とジメフルトリン 0.3部とをアセトン 14.6部に溶解し溶液を得る。この溶液に、酸化亜鉛 0.2部、α澱粉 1.0部及びアゾジカルボンアミド 42.8部を加え、更に水38.1部を加えて混練し、押出機で顆粒状に成形、乾燥して、顆粒を得る。中央部がアルミ製隔壁で区分された容器の上部空間に前記顆粒を、酸化カルシウム50gをこの容器の下部空間に収容し、燻煙剤を得る。
【0051】
製剤例15
酸化亜鉛 0.5部、α澱粉 2部およびアゾジカルボンアミド 97.5部を混合し、ここに水を加えて混練し、混練物を押出機で顆粒状に成形し、乾燥して顆粒を得る。この顆粒2gに、トランスフルトリン 0.58gとジメフルトリン 0.058gとを含有するアセトン溶液を均一に含浸させた後、乾燥して顆粒を得る。中央部がアルミ製隔壁で区分された容器の上部空間に前記顆粒を、酸化カルシウム50gをこの容器の下部空間に収容し、燻煙剤を得る。
【0052】
製剤例16
トランスフルトリン 0.5gとジメフルトリン 0.05gとをアセトン20mLに溶解し、該溶液を蚊取り線香用担体(タブ粉:粕粉:木粉を4:3:3の質量比で混合)99.4gおよび緑色色素 0.3gの混合物に加え、均一に攪拌混合した後、水120mLを加え、充分練り合わせたものを成型乾燥して、蚊取り線香を得る。
【0053】
製剤例17
トランスフルトリン 10部、ジメフルトリン 1部、クエン酸アセチルトリブチル 39.5部、アジピン酸イソノニル 39.5部、青色色素 5部および香料 5部を混合して得られる溶液を、3.4cm×2.1cm、厚さ0.22cmの電気マット用基材(コットンリンターとパルプの混合物のフィブリルを板状に固めたもの)に均一に含浸させて、電気蚊取り用マットを得る。
【0054】
製剤例18
トランスフルトリン 0.1部とジメフルトリン 0.01部とを、脱臭灯油99.89部に溶解して、塩化ビニル製容器に入れ、上部をヒーターで加熱できるようにした吸液芯(無機粉体をバインダーで固め、焼結したもの)を挿入することにより、吸液芯型加熱蒸散剤用の部品を得る。
【0055】
製剤例19
トランスフルトリン 0.2部、ジメフルトリン 0.02部およびネオチオゾール(中央化成株式会社製)49.78部をエアゾール缶に入れ、エアゾールバルブを装着した後、ジメチルエーテル 25部及びLPG 25部を充填し、振とうを加え、全量噴射型エアゾール用アクチュエータを装着することにより、エアゾール剤を得る。
【0056】
製剤例20
トランスフルトリン 0.2部とジメフルトリン 0.02部とに、ジエチレングリコールモノエチルエーテル 99.78部を加え、よく撹拌混合することにより、動物の外部寄生虫防除用のスポットオン剤を得る。
【0057】
製剤例21
2,4,6−トリイソプロピル−1,3,5−トリオキサン 4gを加圧成形(4t/cm2)して得た円盤状の固形物(直径3cm、厚さ3mm)に、トランスフルトリン 3部、ジメフルトリン 0.3部およびアセトン 96.7部とからなる溶液1mLを均一に塗布した後に乾燥することにより、錠剤を得る。
【0058】
製剤例22
トランスフルトリン 0.2g、ジメフルトリン 0.02gおよび2,4,6−トリイソプロピル−1,3,5−トリオキサン 4gとの均一混合物を、加圧成形(4t/cm2)して円盤状の固形物(直径3cm、厚さ3mm)とすることにより、錠剤を得る。
【0059】
製剤例23
トランスフルトリン 0.2g、ジメフルトリン 0.02gおよび2,4,6−トリイソプロピル−1,3,5−トリオキサン 4gを、50mLスクリュー管に入れて加熱溶融させ、次いで室温まで冷却することにより、錠剤を得る。
【0060】
続いて、本防除組成物が害虫に対して優れた防除効力を有することを試験例として示す。
【0061】
尚、以下の試験例においては、本エステル化合物Aの1つとしてトランスフルトリンを使用した。
また、本エステル化合物Bとして2,3,5,6−テトラフルオロ−4−(メトキシメチル)ベンジル (1R)−トランス−2,2−ジメチル−3−(2−メチルプロプ−1−エニル)シクロプロパンカルボキシレート(以下、本エステル化合物B1と記す)を使用した。
【0062】
試験例1
トランスフルトリンと本エステル化合物B1とを所定量のイソパラフィン溶剤(アイソパーM、エクソン化学登録商標名)に希釈して、下記の表1に示す有効成分含量の油剤(以下、本発明組成物(1)と記す。)を調製した。
【0063】
一辺70cmの立方体チャンバー内にイエバエ10頭(雄雌各5頭)を放ち、該チャンバー入口の小窓から本発明組成物(1)0.7mLをスプレーガンを用いて噴霧した(噴霧圧力0.9kg/cm2)。その結果、本発明組成物(1)は、イエバエに対し、高いノックダウン効果を示した。
【0064】
【表1】

【0065】
試験例2
一辺70cmの立方体チャンバー内にアカイエカ10頭(雌10頭)を放ち、該チャンバー入口の小窓から上記試験例1で調整した本発明組成物(1)0.7mLをスプレーガンを用いて噴霧した(噴霧圧力0.9kg/cm2)。その結果、本発明組成物(1)は、アカイエカに対し、高いノックダウン効果を示した。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の害虫防除組成物は、優れた害虫防除効力を有するため、ハエ類を始めとする害虫を効果的に防除することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
[a]式(I)

で示される2,3,5,6−テトラフルオロベンジル 3−(2,2−ジクロロビニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレートと、
[b]式(II)

で示される2,3,5,6−テトラフルオロ−4−(メトキシメチル)ベンジル 2,2−ジメチル−3−(2−メチルプロプ−1−エニル)シクロプロパンカルボキシレートとを含有することを特徴とする害虫防除用組成物。
【請求項2】
[a]:[b]の質量比が10:1〜1:5である請求項1記載の害虫防除用組成物。
【請求項3】
双翅目害虫防除の為の、請求項1又は2記載の害虫防除用組成物。
【請求項4】
請求項1又は2記載の害虫防除用組成物の有効量を、害虫または害虫の生息場所に施用する害虫の防除方法。
【請求項5】
害虫防除の為の、請求項1又は2記載の組成物の使用。

【公開番号】特開2010−90135(P2010−90135A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2009−274852(P2009−274852)
【出願日】平成21年12月2日(2009.12.2)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】