説明

家屋構造

【課題】蜘蛛の巣を妨ぐ家屋構造を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の家屋構造11は建物12の屋外面の隅角部16が三側面13(軒天井材14、軒天井材14、壁面15)又は二側面13(軒天井材14、壁面15)で形成され、三側面13又は二側面13の少なくとも一側面13の表面13a又は表面部分13bに表面処理17が施工される。表面処理17の構成は、表面13aに光触媒粒子18を担持させるとともに、蜘蛛等忌避剤19が固着される。詳しくは、光触媒粒子18と、触媒層20としてのルチル型の酸化チタン系のゾルと、蜘蛛等忌避剤19としての不揮発性のピレスロイド化合物とを混合して表面13aに塗布することで表面処理17が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建物の家屋構造に関し、詳しくは、隅角部の出隅又は入隅に蜘蛛等の巣を妨げる表面処理が施される家屋構造の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の隅角部は蜘蛛等により汚れが目立つ等の問題が発生していた。この問題を解決するため、従来技術として特許文献1に記載の内容が知られている。
【0003】
この特許文献1によれば、図8に示す如く、建物の隅角部における蜘蛛等の巣を妨げる家屋構造1の表面処理は、隅角部を構成する側面10に蜘蛛が留まったり這い回ったりするのを防止するため蜘蛛等忌避剤9を有している。
【0004】
蜘蛛等忌避剤9には剥離剤が使用され、特に、シリコーン系剥離剤で塗装された蜘蛛等忌避剤9の表面は極めて表面張力の小さい面となり、表面張力の値が例えば20dyn/cm又はそれ以下になる。
【0005】
このように、表面のぬれが極めて悪くなるため蜘蛛等は歩行が困難になるので蜘蛛等の忌避効果が得られる。また、蜘蛛が巣を張るときの糸が付着しにくくなるため蜘蛛の巣が張ることを防止できる。
【特許文献1】特開平11−349862号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の家屋構造1は、蜘蛛等忌避剤に剥離剤を使用して極めて表面張力の小さい表面にすることで、蜘蛛が近寄りにくくして蜘蛛の巣が張らないようする構成である。
【0007】
ところが、このような家屋構造1でも、蜘蛛の巣を張ることを完全に防止することは困難であり、一旦蜘蛛の巣が張ってしまった場合には掃除をして巣を取払う必要があった。また、蜘蛛等忌避剤の忌避効果に長期の持続性がなく、防汚効果もないため、水垢による汚れ掃除等のメンテナンスが不可欠であった。
【0008】
そこで、本発明はかかる従来技術の問題に鑑みなされたものであって、蜘蛛等忌避作用の持続性を向上させて蜘蛛が巣を張るのを妨げるとともに、仮に蜘蛛の巣が張った場合でも、自然に蜘蛛の巣の切断ができて汚れの防止・除去ができる表面処理がなされた家屋構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、建物の屋外面の隅角部に表面処理が施される家屋構造であって、前記隅角部は三側面又は二側面で形成され、前記三側面又は二側面の少なくとも一側面の表面に前記表面処理として光触媒粒子を有することを特徴としている。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1記載の家屋構造であって、前記光触媒粒子を前記表面に担持させるとともに、蜘蛛等忌避剤を前記表面に有することを特徴としている。
【0011】
請求項3の発明は、請求項2記載の家屋構造であって、前記蜘蛛等忌避剤はマイクロカプセルに内包された状態で前記表面に有することを特徴としている。
【0012】
請求項4の発明は、請求項2に記載の家屋構造であって、前記光触媒粒子によって分解して蜘蛛等忌避効果のある物質を生成する有機性材料を前記表面に有することを特徴としている。
【0013】
請求項5の発明は、請求項1に記載の家屋構造であって、前記光触媒粒子とともに蜘蛛等忌避剤を前記表面に樹脂を介して有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の発明によれば、建物の屋外面の隅角部に表面処理が施される家屋構造であって、前記隅角部は三側面又は二側面で形成され、前記三側面又は二側面の少なくとも一側面の表面に前記表面処理として光触媒粒子を有するので、光触媒作用により汚れを分解する防汚作用及び抗菌作用が働くので蜘蛛の巣が張るのを抑制できるので、前記側面のメンテナンス性が向上する。
【0015】
また、前記側面に蜘蛛の巣が張った場合でも、光触媒粒子の光触媒作用によって、有機物である付着した蜘蛛の糸の表面から徐々に分解していき、蜘蛛の糸の表面が脆なくなり、このような状態のときに風などの作用によって脆なくなった部分がちぎれることで自然に蜘蛛の巣の切断ができる。
【0016】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の家屋構造であって、前記光触媒粒子を前記表面に担持させるとともに、蜘蛛等忌避剤を前記表面に有するので、光触媒作用により前記側面にクモの巣が張ることを抑制するとともに汚れも分解するのでメンテ性が向上する効果に加えて、忌避効果を有する物質を有することで忌避効果の持続性も長くできて忌避効果が向上する。
【0017】
請求項3記載の発明によれば、請求項2記載の家屋構造であって、前記蜘蛛等忌避剤はマイクロカプセルに内包された状態で前記表面に有するので、マイクロカプセルに内包することで忌避効果の持続性を向上することができる。
【0018】
請求項4記載の発明によれば、請求項2に記載の家屋構造であって、前記光触媒粒子によって分解して蜘蛛等忌避効果のある物質を生成する有機性材料を前記表面に有するので、忌避効果とその持続性を向上することができる。
【0019】
請求項5記載の発明によれば、請求項1に記載の家屋構造であって、前記光触媒粒子とともに蜘蛛等忌避剤を前記表面に樹脂を介して有するので、前記光触媒粒子と蜘蛛等忌避剤を厚めに塗布することができるので忌避効果とその持続性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
<本発明の第1の実施形態>
以下に、本発明の第1の実施形態を図1〜図2に基づいて説明する。
【0021】
<家屋構造の構成>
図1、図2に示すように、本発明の家屋構造11は建物12の屋外面の隅角部16(入隅の状態)に表面処理17が施される。隅角部16は三側面13(軒天井材14、軒天井材14、壁面15)又は二側面13(軒天井材14、壁面15)で形成され、三側面13又は二側面13の少なくとも一側面13の表面13aに表面処理17が施工される。
【0022】
表面処理17の構成は、表面13aに光触媒粒子18を担持させるとともに、蜘蛛等忌避剤19が表面13aに固着される。
【0023】
より詳しくは、触媒層20(光触媒粒子18を含むルチル型の酸化チタン系のゾル)と、蜘蛛等忌避剤19(不揮発性のピレスロイド化合物)とを混合して表面13aに塗布することで表面処理17が形成される。
【0024】
<家屋構造の作用>
光触媒粒子18の抗菌作用によって側面13の表面13aにクモの巣が張ることを抑制できるとともに、光触媒粒子18の防汚作用により汚れを分解するので隅角部16のメンテナンスに手間が掛からなくなりメンテ性が向上する。さらに、蜘蛛等忌避剤19の忌避効果によっても蜘蛛の巣が張るのが抑制できるので相乗効果が得られる。
【0025】
側面13に蜘蛛の巣が張った場合でも、光触媒粒子の光触媒作用によって、有機物である付着した蜘蛛の糸の表面から徐々に分解していき、蜘蛛の糸の表面が脆なくなり、このような状態のときに風などの作用によって脆なくなった部分がちぎれるので、蜘蛛の巣を側面13から自然に剥がすことができる。
【0026】
<本発明の第2の実施形態>
以下に、本発明の第2の実施形態を図3に基づいて説明する。図3に示すように、家屋構造11は、側面13の表面13aに光触媒粒子18を担持させるとともに、蜘蛛等忌避剤19を含有する無機材料21が表面13aに固着される。
【0027】
より詳しくは、触媒層20(光触媒粒子18を含むルチル型の酸化チタン系のゾル)と、蜘蛛等忌避剤19(不揮発性のピレスロイド化合物)を含有する無機材料21(ゼオライト)とを混合して表面13aに塗布することで表面処理17が形成される。
【0028】
このため、蜘蛛等忌避剤19は無機材料21に含有されて側面13の表面13aに固着されるので、表面13aから剥がれにくくなるため忌避効果の持続時間が長くなる。特に、蜘蛛等忌避剤19が揮発性の場合には、更に忌避効果の持続時間を長くする顕著な効果が得られる。
【0029】
なお、図3は模式図であるため、蜘蛛等忌避剤19と無機材料21の領域の触媒層20が光触媒粒子18の領域よりも大きく突出しているように描かれているが、実際には略平面状に形成される。
【0030】
<本発明の第3の実施形態>
以下に、本発明の第3の実施形態を図4に基づいて説明する。図4に示すように、家屋構造11は、側面13の表面13aに光触媒粒子18を担持させるとともに、蜘蛛等忌避剤19はマイクロカプセル22に内包されて表面13aに固着される。
【0031】
より詳しくは、触媒層20(光触媒粒子18を含むルチル型の酸化チタン系のゾル)と、ポリアクリロニトリルを主成分としたマイクロカプセルに内包した蜘蛛等忌避剤19(不揮発性のピレスロイド化合物)とを混合して表面13aに塗布することで表面処理17が形成される。
【0032】
このため、蜘蛛等忌避剤19がマイクロカプセル22に内包されているため、忌避効果の持続時間が長くなる。特に、揮発性の蜘蛛等忌避剤19の場合には更に顕著な効果が得られる。マイクロカプセルは有機系の材料であれば、特に材質にはこだわらない。
【0033】
なお、図4は模式図であるため、マイクロカプセル22の領域の触媒層20が光触媒粒子18の領域よりも大きく突出しているように描かれているが、実際には略平面状に形成される。
【0034】
<本発明の第4の実施形態>
以下に、本発明の第4の実施形態を図5に基づいて説明する。図5に示すように、家屋構造11は、側面13の表面13aに光触媒粒子18を担持させるとともに、蜘蛛等忌避剤19と、光触媒で分解されると忌避効果のある物質を作成する有機物23で構成される。
【0035】
より詳しくは、触媒層20(光触媒粒子18を含むルチル型の酸化チタン系のゾル)と、蜘蛛等忌避剤19(不揮発性のピレスロイド化合物)と、光触媒で分解されると忌避効果のある物質を作成する有機物23(酢酸ビニル樹脂)とを混合して表面13aに塗布することで表面処理17が形成される。
【0036】
このため、有機物23が光触媒で分解されると忌避効果のある物質を発生するため、忌避性能が向上し効果の持続性も長くできる。
【0037】
<本発明の第5の実施形態>
以下に、本発明の第5の実施形態を図6に基づいて説明する。図6に示すように、家屋構造11は、側面13の表面13aに光触媒粒子18を担持させるとともに、蜘蛛等忌避剤19と、光触媒で分解されると忌避効果のある物質を作成する有機物23を内包したマイクロカプセル22から構成される。
【0038】
より詳しくは、蜘蛛等忌避剤19(不揮発性のピレスロイド化合物)と光触媒で分解されると忌避効果のある物質を作成する有機物23(酢酸ビニル樹脂)とを同時にマイクロカプセル22で内包する。そして、このマイクロカプセル22と、触媒層20(光触媒粒子18を含むルチル型の酸化チタン系のゾル)とを混合して表面13aに塗布することで表面処理17が形成される。
【0039】
このため、有機物23は光触媒で分解されると忌避効果のある物質を発生するとともにマイクロカプセル内部から忌避効果のある物質が表面にでてくるため、忌避効果の持続性を長くできて忌避性能が向上する。マイクロカプセルは有機系の材料であれば、特に材質にはこだわらない。
【0040】
なお、図6は模式図であるため、マイクロカプセル22の領域の触媒層20が光触媒粒子18の領域よりも大きく突出しているように描かれているが、実際には略平面状に形成される。
【0041】
<本発明の第6の実施形態>
以下に、本発明の第6の実施形態を図7に基づいて説明する。図7に示すように、家屋構造11は、側面13の表面部分13b(表面13aを含み表面上に厚みを持つ領域)に、光触媒粒子18、蜘蛛等忌避剤19、触媒層20が樹脂26によってコーティングされる。
【0042】
より詳しくは、触媒層20(光触媒粒子18を含むルチル型の酸化チタン系のゾル)と、蜘蛛等忌避剤19(不揮発性のピレスロイド化合物)と、樹脂26(光触媒で分解されにくいアクリルシリコン樹脂)を用い、これらを混合して側面13の表面部分13bに塗布することで表面処理17が形成される。この状態は光触媒粒子18を側面13の表面13aに担持させない状態である。
【0043】
このため、光触媒粒子18が樹脂26で固着されているため表面13aから剥がれることがないので、耐久性のある塗膜構造が得られる。
【0044】
なお、好ましくは、光触媒で分解されると忌避効果のある物質を作成する有機物を同時に触媒層20に混合すると、さらに忌避性能が向上し忌避効果の持続性を長くできる。
【0045】
以上、本発明の実施形態を図面に基づいて説明したが、上記の実施例はいずれも本発明の一例を示したものであり、本発明はこれらに限定されるべきでないということは言うまでもない。
【0046】
たとえば、光触媒を粒子の状態で用いる代わりに、光触媒を無機材料に担持させて使用することもできる。光触媒で分解されると忌避効果のある物質を発生する有機物の材質は酢酸ビニル樹脂以外の材質でも構わない。
【0047】
触媒層20は、アナターゼ型やブルッカイト型の結晶構造でも構わない。また、酸化タングステンや酸化亜鉛などの光触媒でもよい。触媒層20を表面13aに固着させることができれば、触媒層20の固着方法はゾルに限定されるものではない。
【0048】
蜘蛛等忌避剤19は、揮発性のピレスロイド化合物でもよい。無機材料21はシリカゲルやシリカ、アルミナ等を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の第1の実施形態における、建物12の屋外面の隅角部16に表面処理17が施される家屋構造11の状態を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態における、表面13aに光触媒粒子18を担持させるとともに、蜘蛛等忌避剤19が表面13aに固着される表面処理17の状態を示す断面摸式図である。
【図3】本発明の第2の実施形態における、表面13aに光触媒粒子18を担持させるとともに、蜘蛛等忌避剤19を含有する無機材料21を表面13aに固着する状態を示す断面摸式図である。
【図4】本発明の第3の実施形態における、表面13aに光触媒粒子18を担持させるとともに、蜘蛛等忌避剤19をマイクロカプセル22に内包して表面13aに固着する状態を示す断面摸式図である。
【図5】本発明の第4の実施形態における、表面13aに光触媒粒子18を担持させるとともに、蜘蛛等忌避剤19と光触媒で分解されると忌避効果のある物質を作成する有機物23を表面13aに固着する状態を示す断面摸式図である。
【図6】本発明の第5の実施形態における、表面13aに光触媒粒子18を担持させるとともに、蜘蛛等忌避剤19と、光触媒で分解されると忌避効果のある物質を作成する有機物23を内包したマイクロカプセル22を表面13aに固着する状態を示す断面摸式図である。
【図7】本発明の第6の実施形態における、表面部分13bに、蜘蛛等忌避剤19、触媒層20(光触媒粒子18を含む)が樹脂26によってコーティングして固着する状態を示す断面摸式図である。
【図8】従来例における、建物の隅角部を構成する側面10に蜘蛛等忌避剤9を有する家屋構造1の状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0050】
11 家屋構造
12 建物
13 側面
13a 表面
13b 表面部分
14 軒天井材
15 壁面
16 隅角部
17 表面処理
18 光触媒粒子
19 蜘蛛等忌避剤
20 触媒層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の屋外面の隅角部に表面処理が施される家屋構造であって、
前記隅角部は三側面又は二側面で形成され、前記三側面又は二側面の少なくとも一側面の表面に前記表面処理として光触媒粒子を有することを特徴とする家屋構造。
【請求項2】
請求項1記載の家屋構造であって、前記光触媒粒子を前記表面に担持させるとともに、蜘蛛等忌避剤を前記表面に有することを特徴とする家屋構造。
【請求項3】
請求項2記載の家屋構造であって、前記蜘蛛等忌避剤はマイクロカプセルに内包された状態で前記表面に有することを特徴とする家屋構造。
【請求項4】
請求項2に記載の家屋構造であって、前記光触媒粒子によって分解して蜘蛛等忌避効果のある物質を生成する有機性材料を前記表面に有することを特徴とする家屋構造。
【請求項5】
請求項1に記載の家屋構造であって、前記光触媒粒子とともに蜘蛛等忌避剤を前記表面に樹脂を介して有することを特徴とする家屋構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−170058(P2007−170058A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−369740(P2005−369740)
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】