説明

容器および容器処理方法

【課題】 肉汁・血汁などの液の液切性が良く、かつ、肉汁・血汁などの液が逆流し難く、よって載せた物の商品価値が低下し難く、かつ、購入後において廃棄する際には、溜まっている肉汁・血汁などの液を簡単に捨てることが出来、その廃棄の取扱性に優れ、即ち、廃棄保管中における悪臭被害に悩まされることが大きく改善され、更には製造工場から出荷される輸送のコストが低廉な容器を提供することである。
【解決手段】 容器本体部11と中敷体14とを有し、前記中敷体14には凹部14bが形成されると共に前記凹部の低い位置に孔15が形成されてなる容器Tにおいて、
前記中敷体14は、前記容器本体部11を引っ繰り返しても該容器本体部11から落ちないように該容器本体部11に対して掛止、かつ、取り外し可能に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、生鮮食肉魚介類用のトレイと言った容器に関する。
【背景技術】
【0002】
スーパー等の販売店においては、食肉や刺身などの生鮮食肉魚介類は、プラスチック製のトレイ上に載せられて販売されている。ところで、従来のトレイは、トレイ底面部に凹凸が形成されているものの、液切れ機能が充分ではない。この為、魚・肉類が血汁・肉汁などに浸かってしまい、商品価値が低下してしまう。又、見栄えも悪い。特に、溜まった血汁・肉汁などが目に付き易く、見栄えが悪い。
【0003】
尚、場合によっては、トレイ上に吸水性シートを配置し、この吸水性シート上に生鮮食肉魚介類が乗せられて販売されている。すなわち、生鮮食肉魚介類から生じた血汁・肉汁などを吸水性シートに吸わせ、血汁・肉汁などが目に付き難くすると共に、生鮮食肉魚介類の品質低下を防ごうとしたのである。しかし、この場合でも、吸水性シートが血汁・肉汁で変色し、この変色部分が拡がったりする為、見栄えが悪い。かつ、吸水性シートをトレイ上に配置し、この吸水性シート上に生鮮食肉魚介類を乗せる作業は手間が掛かる。
【0004】
そこで、上記の問題点を解決する為、本願出願人は、先に、図3及び図4に示すトレイ(容器)を提案(特開平11−165724号公報)している。
【0005】
図3及び図4中、1は、樹脂を用いて成型された容器本体部である。容器本体部1の上端周縁部には、フランジ2が一周に亘って形成されている。又、容器本体部1の内側の中腹部には、段部3が一周に亘って形成されている。尚、後述の中敷とは異なり、容器本体部1の底面部には孔は形成されていない。
【0006】
4は、樹脂を用いて成型されたシート状の中敷である。中敷4の外周形状は、容器本体部1の段部3が形成された中腹部の内形にほぼ一致したものである。従って、中敷4を容器本体部1の段部3上に配置でき、中敷4はヒートシール等により容器本体部1の段部3に対して一周に亘って一体化(固着)される。中敷4は、容器本体部1の段部3の領域に合致する平坦な領域4aより内側の領域4bにあっては、略擂鉢形状(断面が逆円錐形状あるいは逆角錐形状)の形状単位が繰り返して構成されたものである。そして、中敷4は、領域4bにあっては、略擂鉢形状の形状単位が繰り返して構成されたものであるから、平坦な領域4a側である周辺部側は高い位置(凸部)にあり、その内側が低い位置(凹部)にあり、更にその内側が高い位置(凸部)にある。
【0007】
中敷4は、凹部位置において孔5が形成されている。従って、傾斜面を伝わって流れて来た液は、孔5から中敷4下方の空間に流れ落ち、そこに溜まる。この意味において、中敷4の下面と容器本体部1の底面との間には隙間(貯留空間)が形成されるよう離れて設けられている。中敷4の表面には、高い位置(凸部)から低い位置(凹部)の孔5に向かって溝(凹条)6が形成されている。従って、液体は、溝6に案内されてスムーズに孔5に向かって流れ落ちて行く。
【0008】
上記のように構成させたトレイの中敷4上に、例えば刺し身が置かれた場合を考えてみる。刺し身を作る時に水洗等により付着した水滴などは、時間の経過につれて、中敷4の傾斜面、特に溝6に案内されて孔5に向かってスムーズに流れ落ちて行く。孔5の位置まで流れ落ちて来た水は、孔5から下方の貯留空間Aに溜まるようになる。従って、刺し身が、常に、水で濡れていると言った状況を回避でき、味が損なわれないものとなる。すなわち、液切性が良く、商品価値が低下し難い。
【0009】
さて、刺し身が盛り付けされ、トレイ全体がフィルムによりラップされた状況下において、トレイが引っ繰り返された状態になっても、貯留空間Aに溜まった水は中敷4上の刺し身側に逆流し難い。なぜならば、孔5自体の径が小さいのみならず、引っ繰り返された場合には、その状態では、孔5の位置が、凹部に相当する位置ではなく、逆に、凸部に相当する位置となるから、水は孔5から刺し身側に逆流し難い。すなわち、トレイが引っ繰り返された場合に、水はBで示す箇所に溜まるだけであり、水は孔5から刺し身側に逆流しない。
【0010】
従って、上記のように構成させた中敷4は、中敷4上に載せられた生鮮食肉魚介類からの肉汁・血汁・液などは中敷4の下に流れ落ち易く、かつ、トレイが乱暴に取り扱われても、中敷4の下に溜まっている肉汁・血汁・液などが逆流せず、生鮮食肉魚介類は肉汁・血汁・液などに浸り難く、商品価値の低下を効果的に防止できる。
【特許文献1】特開平11−165724号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、上記構造のトレイは、中敷4上に載せられた生鮮食肉魚介類からの肉汁・血汁・液などが中敷4の下に流れ落ち易く、かつ、トレイが乱暴に取り扱われても中敷4の下に在る肉汁・血汁・液などが逆流しないものとしたが故に、新たな問題の発生していることが判って来た。
【0012】
すなわち、トレイ上に載せられた生鮮食肉魚介類を購入した後、家庭で生鮮食肉魚介類を取り出し、そしてトレイをポリ袋に捨てる際、上記トレイの容器本体部1の底面上に溜まっている肉汁・血汁などの液を簡単には排出できないことである。つまり、トレイを引っ繰り返しても、溜まっている肉汁・血汁・液などを取り出せない。その理由は中敷が上記した特殊な構造であるが故である。かつ、洗い流すことすら容易ではない。
【0013】
ところで、肉汁・血汁が溜まったままのトレイを、台所のポリ袋の中に捨てていると、それが2〜3日後には腐敗し、悪臭を引き起こす原因になる。又、雑菌も繁殖し易く、衛生的では無い。特に、近年、廃棄物のリサイクルの観点から、一般家庭ゴミにあっては分別収集が要請されおり、樹脂製トレイの収集は1週間において1日の割合であることが多い。従って、肉汁・血汁が溜まったままのトレイを1週間も家庭で一時保管することになる。その結果、台所では腐敗した肉汁・血汁による悪臭が蔓延してしまうことになる。又、衛生面でも問題が有る。特に、腐敗し易い夏季においては著しい。冬季においても、暖房が普及しているから、やはり悪臭被害は大きい。
【0014】
さて、肉汁・血汁などを簡単に取り出すことが出来ないのは、中敷4が上記した特別な構造であるからによる。
【0015】
そこで、中敷4の改良に全力を注いだ。
しかしながら、思ったような中敷は出て来なかった。すなわち、意図した時のみ、溜まった肉汁・血汁を捨てることが出来、望まない時には溜まっている肉汁・血汁が出て来ないようにする都合の良い中敷は得られなかった。
【0016】
そこで、視点を変えて検討を進めた。
すなわち、中敷4がヒートシールにより容器本体部1に固着されているから、肉汁を捨て難いのであることに気付いた。すなわち、中敷4を容器本体部1にヒートシールしてなければ、容器本体部1の底面上に溜まった肉汁・血汁を簡単に捨てることが出来る。
【0017】
しかしながら、中敷4が、単に、置かれたに過ぎないものであると、顧客は、トレイ上に載せられた生鮮食肉魚介類を購入する際、手に取って子細に観察する為、即ち、トレイを引っ繰り返したりすることから、容器本体部1の底面上に溜まった肉汁・血汁が中敷4上に流れて来ることが有る。そうすると、肉汁・血汁が中敷4上に載せられている生鮮食肉魚介類に付き、問題が発生する。これでは、中敷4を、何の為に、上記のような特殊構造、即ち、トレイを引っ繰り返しても、容器本体部1の底面上に溜まった肉汁・血汁が中敷4上に流れて来ないようにしたのか、その意味が無くなる。
【0018】
又、上記提案のトレイは、中敷4が有る為、トレイを重ねると、その高さが中敷分だけ嵩張る。例えば、容器本体部1の底面と中敷4との間の高さ寸法が1cm、中敷4と容器本体部1の開口面との間の寸法が1cmとすると、1000枚のトレイを重ねると、高さが約10mにもなる。
従って、嵩張るものとなるから、一度に輸送できる数は、軽量と言っても限られてしまい、輸送コストが高く付いている。
【0019】
従って、本発明が解決しようとする課題は、肉汁・血汁などの液の液切性が良く、かつ、肉汁・血汁などの液が逆流し難く、よって載せた物の商品価値が低下し難く、かつ、購入後において廃棄する際には、溜まっている肉汁・血汁などの液を簡単に捨てることが出来、その廃棄の取扱性に優れ、即ち、廃棄保管中における悪臭被害に悩まされることが大きく改善され、又、衛生面でも改善され、更には製造工場から出荷される輸送のコストが低廉な容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
前記の課題は、容器本体部と中敷体とを有し、前記中敷体には凹部が形成されると共に前記凹部の低い位置に孔が形成されてなる容器において、
前記中敷体は、前記容器本体部を引っ繰り返しても該容器本体部から落ちないように該容器本体部に対して掛止、かつ、取り外し可能に構成されてなる
ことを特徴とする容器によって解決される。
【0021】
特に、容器本体部と中敷体とを有し、肉・魚介類を載せる為の前記中敷体には凹部が形成されると共に前記凹部の低い位置に孔が形成されてなる容器において、
前記中敷体は、前記容器本体部を引っ繰り返しても該容器本体部から落ちないように該容器本体部に対して掛止、かつ、取り外し可能に構成されてなる
ことを特徴とする容器によって解決される。
【0022】
上記容器において、容器本体部の側壁部には嵌合部を設け、かつ、中敷体には前記嵌合部に嵌合する被嵌合部を設けておけば、両者の嵌合によって、容器本体部を引っ繰り返しても、中敷体は容器本体部から落ちず、又、簡単に中敷体を取り外すことが出来る。
【0023】
又、上記容器において、容器本体部の側壁部には凹部及び/又は凸部が設けられており、中敷体には前記凹部及び/又は凸部に嵌合する凸部及び/又は凹部が設けられると共に、更に前記凸部及び/又は凹部の上側にフランジ部が設けられてなるものが好ましい。
【0024】
又、前記の課題は、上記構造の容器の容器本体部を成形工場で成形する容器本体部成形工程と、
上記構造の容器の中敷体を成形工場で成形する中敷体成形工程と、
前記容器本体部成形工程で成形された容器本体部を重ねると共に前記中敷体成形工程で成形された中敷体を重ねて成形工場から所望の箇所に輸送する輸送工程と、
前記輸送工程で輸送された容器本体部と中敷体とを組み合わせて上記構造の容器とする組立工程と、
前記組立工程で組み立てられた容器の中敷体上に所望の商品を載せ、販売する販売工程と、
前記中敷体上に載せられた所望の商品を購入して該商品を取り出した後、該中敷体を容器本体部から取り外して捨てる処理工程
とを具備することを特徴とする容器処理方法によって解決される。
【発明の効果】
【0025】
血や肉汁などの液切れ性に優れたものである。
すなわち、例えば刺し身が置かれた場合において、刺し身を作る時に水洗等により付着した水滴などは、時間の経過につれて、中敷体の凹部より孔を介して下に流れ落ちて行く。そして、孔から下方の容器本体部の底面上に溜まるようになる。従って、刺し身が、常に、水で濡れていると言った状況を回避でき、味が損なわれないものとなる。すなわち、液切性が良く、商品価値が低下し難い。
【0026】
さて、刺し身が盛り付けされ、容器がフィルムによりラップされた状況下において、容器が引っ繰り返された(販売中に顧客が手にして中身を調べたり、或いは手にしたものを販売ケースに返したりした時には、しばしば、容器が引っ繰り返る時が有る。)状態になっても、容器本体部の底面上に溜まった肉汁・血汁・水は、中敷体上の刺し身側に逆流し難い。なぜならば、孔自体の径が小さいのみならず、引っ繰り返された場合には、その状態では、孔の位置が、凹部に相当する位置ではなく、逆に、凸部に相当する位置となるから、肉汁・血汁・水は孔から刺し身側に逆流し難い。
【0027】
特に、中敷体を容器本体部に対してヒートシールしていなくとも、凹凸による嵌合構造を採用しておけば、中でも、中敷体の周囲の一周に亘って凹凸による嵌合構造を採用しておけば、中敷体の下側に溜まっている肉汁・血汁・水は逆流し難い。
【0028】
すなわち、肉汁・血汁などの液の液切性が良く、かつ、肉汁・血汁などの液が逆流し難く、よって載せた物の商品価値が低下し難い。
【0029】
ところで、商品の販売中などでは、容器を引っ繰り返したりしても、溜まっている肉汁・血汁は、中敷体上に載せている商品側には逆流し難い。このことは、中敷体より下の空間に落ちて行った肉汁・血汁を取り出すことが困難なことを意味している。
【0030】
しかしながら、商品購入後において、包んでいるフィルムを取り除き、商品を取り出した後では、中敷体を容器本体部から簡単に取り外せる。特に、中敷体のフランジ部の部分に爪とかナイフの先端などを差し込めば、中敷体を容器本体部から極めて簡単に取り外せる。
【0031】
従って、商店にて魚・肉などを購入後に、台所で魚・肉などを取り出した後、中敷体を容器本体部から外し、そして容器本体部の底面上に溜まっている肉汁・血汁をシンク(流し)に流して捨てた後、水洗いしてポリ袋に捨てることが出来る。すなわち、腐敗し易い肉汁・血汁を、簡単に、かつ、綺麗にシンク(流し)に流すことが出来るから、数日間に亘って台所で保管していても、悪臭が漂う恐れは非常に少ないものになる。例えば、分別収集の為に一週間に一度程度の割合でしか収集してくれない容器を家庭で一時保管していても、悪臭がそれ程のものとならない。又、洗い流しておれば、衛生面でも大幅に良くなる。
【0032】
又、後述の輸送の場合と同様に、家庭で一時保管していても、容器本体部と中敷体とを分離しておけば、嵩張らない為に、非常に好都合である。
【0033】
又、製造メーカーにて製造した後、それを目的の場所まで輸送するに際して、容器本体部は容器本体部のみを重ねた状態で、中敷体は中敷体のみを重ねた状態で輸送すれば、それだけ嵩張らないので、輸送コストが低廉なものとなる。すなわち、上記の場合と同様、容器本体部の底面と中敷体との間の高さ寸法が1cm、中敷体と容器本体部の開口面との間の寸法が1cmとすると、1000枚のトレイを重ねても、容器本体部の肉厚が1mmとすれば、その高さは約1m〜2m程度に過ぎない。すなわち、上記の場合の1/5〜1/10程度である。従って、それだけ多くの容器(トレイ)を一度に輸送できるから、輸送コストが低廉になる。
【0034】
そして、上記特長を奏させる為の要件は、図3及び図4に示した従来例のものに対して、中敷体を容器本体部に対して掛止・取外可能に構成するのみの簡単な要件、例えば嵌合構造を構成するのみでも済み、従来の容器に比べても殆ど同程度のコストで得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
図1は本発明になる肉・魚介類を載せる生鮮食肉魚介類用の容器の平面図、図2は断面図である。
【0036】
各図中、Tは、本発明になる肉・魚介類を載せる生鮮食肉魚介類用の容器(トレイ)である。トレイTは、容器本体部11と中敷(中敷体)14とからなる。
【0037】
11は、樹脂を用いて成型された半透明ないしは不透明な容器本体部である。ここで、半透明ないしは不透明な素材で構成させたのは、溜まっている肉汁・血汁を見え難くする為である。尚、容器本体部11の半透明ないしは不透明性は、樹脂そのものが半透明あるいは不透明性のものであっても良く、又、透明ないしは半透明な樹脂からなる容器本体部11の表面を粗すことによって半透明ないしは不透明性が確保させられたものでも良く、或いは樹脂組成物中にセラミック粉末を添加することによって半透明ないしは不透明性が確保させられたものでも良い。樹脂としては、例えばポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系の樹脂、或いはポリスチレンやポリエチレンテレフタレート等の樹脂を用いることが出来る。
【0038】
容器本体部11の上端周縁部には、フランジ12が一周に亘って形成されている。又、容器本体部11の内側の中腹部には、平坦な平行段部13a,13bが一周に亘って形成されている。特に、段部13aと段部13bとの高さ方向における間隔(寸法)は小さく、かつ、段部13aと段部13bとの間の側壁は下側が楔型に外側に食い込んだ楔型溝条部13cに形成されている。
【0039】
そして、言うまでもないが、後述の中敷体14とは異なり、容器本体部11の底面部11aには孔は形成されていない。尚、中敷体14を支える為の凸部11bが底面部11aに設けられている。又、適宜な凹凸形状が底面部11aに形成されている。
【0040】
14は、樹脂を用いて成型された半透明ないしは不透明なシート状の中敷体である。ここで、半透明ないしは不透明な素材で構成させたのは、溜まっている肉汁・血汁を見え難くする為である。中敷体14の半透明ないしは不透明性は、樹脂そのものが半透明あるいは不透明性のものであっても良く、又、透明ないしは半透明な樹脂からなるシートの表面を粗すことによって半透明あるいは不透明性が確保させられたものでも良いが、本実施形態では、樹脂組成物中に遠赤外線を放射するセラミック粉末を添加することによって確保させられたものである。樹脂としては、例えばポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系の樹脂、或いはポリスチレンやポリエチレンテレフタレート等の樹脂を用いることが出来る。尚、中敷体14に用いる樹脂と容器本体部11に用いた樹脂とは同系統のものであっても、異質なものであっても良い。すなわち、中敷体14を容器本体部11に対してヒートシールするものでは無いから、同質のものである必要は無い。但し、近年における廃棄物のリサイクルの為の分別収集の観点からすると、同系統のもので構成する方が好ましい。
【0041】
中敷体14の外周形状は、容器本体部11の段部13a,13bが形成された中腹部の内形にほぼ一致したものである。中敷体14は、フランジ部14aと、生鮮食肉魚介類などの商品が載せられる載置面部14bと、フランジ部14aと載置面部14bとを連結する連結部14cとを有する。尚、フランジ部14aの内側端と載置面部14bの外側端とは、フランジ部14aの内側端の方が内方に位置している。従って、連結部14cは、フランジ部14aの側の上側が内側に傾斜した構成である。そして、中敷体14を容器本体部11の上から押し込むと、中敷体14の連結部14cが容器本体部11の段部13aと段部13bとの間の楔型溝条部13cに嵌り込み、容器本体部11を逆に引っ繰り返しても中敷体14は落下しないようになっており、しかも楔型溝条部13cと連結部14cとが容器本体部11の一周に亘って面接触しており、かつ、段部13aとフランジ部14aとが容器本体部11の一周に亘って面接触しており、垂直方向と水平方向の二方向における面において面接触しているから、容器本体部11を引っ繰り返しても中敷体14の下方に溜まっている液が前記接合面間から漏れ出て来る恐れは無い。
【0042】
尚、水平方向における面接触は、中敷体14の連結部14cと容器本体部11の楔型溝条部13cとの嵌合部よりも上側の位置において面接触、即ち、フランジ部14aと段部13aとが面接触するようにしているが、これは、図2にも示されている通り、下側の位置にて面接触するのみでも良い。但し、フランジ部14aが有ると、中敷体14の取外作業が容易である。
【0043】
本実施形態の中敷体14は容器本体部11に対してヒートシールされていない。すなわち、図3,4に示された従来のものは、中敷が容器本体部に対してヒートシールにより固着されていたが、本実施形態の中敷体14は容器本体部11に対して固着されていない。そして、中敷体14は容器本体部11に対して機械的手段で掛止しているに過ぎないから、又、容器本体部11や中敷体14は薄肉のプラスチックで構成されているから、容器本体部11から中敷体14は取外可能になっている。
【0044】
生鮮食肉魚介類などの商品が載せられる中敷体14の載置面部14bは、図1や図2からも判る通り、略擂鉢形状(断面が逆円錐形状、逆角錐形状の形状も含まれるものであって、ある箇所に向かって高さが低くなる傾斜面を有する形状のものを本明細書では略擂鉢形状と言う。)の形状単位が繰り返して構成されている。そして、中敷体14は、載置面部14bにあっては、略擂鉢形状の形状単位が繰り返して構成されたものであるから、周辺部側は高い位置(凸部)にあり、その内側が低い位置(凹部)にあり、更にその内側が高い位置(凸部)にある。尚、高い位置(凸部)とか低い位置(凹部)とは、容器本体部11の中敷体14上に物を乗せた普通の状態においてのことである。凹凸の高低差は、例えば数mm程度である。すなわち、水が低い位置(凹部)に流れる程度の傾斜面が構成されるものであれば良い。
【0045】
略擂鉢形状部が構成されている載置面部14bの最も低い位置に、孔15が形成されている。従って、傾斜面を伝わって流れて来た液は、孔15から中敷体14下方の空間に流れ落ち、そこに溜まる。この意味において、中敷体14の下面と容器本体部11の底面との間には隙間(貯留空間)が形成されるよう離れて設けられている。中敷体14の表面には、高い位置(凸部)から低い位置(凹部)の孔15に向かって溝(凹条)16が形成されている。従って、肉汁・血汁などの液体は、溝16に案内されてスムーズに孔15に向かって流れ落ちて行く。尚、溝16の幅は、上流側(高い位置側:フランジ部14a側)にあっては狭く、下流側(孔15側)にあっては広いように形成されている。これは、液滴は、下流側に移るにつれて合体により大きくなるからである。
【0046】
上記構造の容器本体部11や中敷体14が、製造メーカーにて製造される。そして、製造後に、所定枚数の容器本体部11のみを重ね、又、所定枚数の中敷体14のみを重ね、例えばトラックにより所望の箇所に輸送する。この時、容器本体部11に中敷体14を組み込んだ形態で輸送するものでは無く、別々に重ね合わして梱包し、輸送できるものであるから、占有体積は少なくて済み、輸送コストの低減が図れる。例えば、容器本体部11の底面と中敷体14との間の高さ寸法が1cm、中敷体14と容器本体部11の開口面との間の寸法が1cmとすると、1000枚のトレイTを重ねると、中敷体14が容器本体部11に固着・一体化された形態の場合には、その高さが10mにもなるのに対して、上記の如く、別々に梱包した形態の場合には、その高さが約1m〜2m程度で済み、それだけ多くの容器(トレイ)を一度に輸送できるから、輸送コストが低廉になる。
【0047】
そして、上記特長を奏させる為の要件は、図3及び図4に示した従来例のものに対して、中敷体を容器本体部に対して掛止・取外可能に構成するのみの簡単な要件、例えば嵌合構造を構成するのみで済むから、従来の容器に比べても殆ど同程度のコストで得られる。
【0048】
そして、別々に梱包・輸送された販売店にてトレイTの組み立てが行われる。販売店に輸送された後、販売店では、直ちに、全部を使用するものでも無い。当然にストックもされる。このストックに際して、容器本体部11と中敷体14とを別々にして保管すれば、その保管に必要な占有空間も少なくて済む。そして、組み立てとは言うものの、中敷体14を容器本体部11に押し込むのみで済む。従って、組立作業は、実に、簡単に行える。
【0049】
さて、中敷体14を容器本体部11に押し込んで組み立てられたトレイTの中敷体14上に、例えば刺し身が置かれた場合を考えてみる。刺し身を作る時に水洗等により付着した水滴などは、時間の経過につれて、中敷体14の傾斜面、特に溝16に案内されて孔15に向かってスムーズに流れ落ちて行く。孔15の位置まで流れ落ちて来た水は、孔15から下方の貯留空間Aに溜まるようになる。従って、刺し身が、常に、水で濡れていると言った状況を回避でき、味が損なわれないものとなる。従って、商品価値が低下し難い。
【0050】
又、刺し身が盛り付けされ、トレイT全体がフィルムによりラップされた状況下において、トレイTが引っ繰り返された状態になっても、貯留空間Aに溜まった水は中敷体14上の刺し身側に逆流し難い。なぜならば、孔15自体の径が小さいのみならず、引っ繰り返された場合には、その状態では、孔15の位置が、凹部に相当する位置ではなく、逆に、凸部に相当する位置となるから、水は孔15から刺し身側に逆流しない。すなわち、トレイTが引っ繰り返された場合に、水はBで示す箇所に溜まるだけであり、水は孔15から刺し身側に逆流しない。
【0051】
本実施形態のトレイTは、中敷体14を容器本体部11に対してヒートシールしていない。しかしながら、容器本体部11と中敷体14とは、楔型溝条部13cと連結部14cとが容器本体部11の一周に亘って面接触しており、かつ、段部13aとフランジ部14aとが容器本体部11の一周に亘って面接触しており、垂直方向と水平方向の二方向における面において面接触しているから、容器本体部11が引っ繰り返されても、中敷体14の下方の容器本体部11の底面上に溜まっていた液が漏れ出て来ることは無い。
【0052】
すなわち、肉汁・血汁などの液の液切性が良く、かつ、肉汁・血汁などの液が逆流し難く、よって中敷体14上に載せた物の商品価値が低下し難い。
【0053】
ところで、トレイTを引っ繰り返しても、溜まっている肉汁・血汁が中敷体14上に載せている商品側には逆流し難いことは、中敷体14より下の空間に落ちて溜まっている肉汁・血汁を取り出すことが困難なことを意味している。
【0054】
しかしながら、商品購入後において、トレイTを包んでいるフィルムを取り除き、商品を取り出した後では、中敷体14を容器本体部11から簡単に取り外せる。特に、中敷体14のフランジ部14aの端部に爪とかナイフの先端などを差し込めば、中敷体14を容器本体部11から極めて簡単に取り外せる。
【0055】
従って、商店にて魚・肉などを購入後に、台所で魚・肉などを取り出した後、中敷体14を容器本体部11から外し、そして容器本体部11の底面上に溜まっている肉汁・血汁をシンク(流し)に流して捨てた後、水洗いしてポリ袋に捨てることが出来る。すなわち、腐敗し易い肉汁・血汁を、簡単に、かつ、綺麗にシンク(流し)に流すことが出来るから、数日間に亘って台所で保管していても、悪臭が漂う恐れは非常に少ないものになる。
【0056】
又、ポリ袋内に家庭で一時保管していても、容器本体部11と中敷体14とを分離しておけば、嵩張らない為に、非常に好都合である。
【0057】
尚、容器本体部11や中敷体14は半透明ないしは不透明であるから、中敷体14の下の貯留空間Aに血汁や肉汁などが溜まっていても、これが普通に置かれている場合には、目にされず、清潔感に富み、商品価値を低下させない。
【0058】
又、中敷体14を遠赤外線放射物質を含む樹脂で構成させているから、中敷体14上に置かれた食肉や魚介類の品質低下が起き難いものとなる。又、上記のような中敷体14を設けたので、吸水性シートを敷かなくても済む。従って、吸水性シートを用いる場合の欠点が解消する。又、吸水性シートを敷いてないので、雑菌が繁殖する恐れが少ない。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明になる容器(トレイ)の平面図
【図2】本発明になる容器(トレイ)の断面図
【図3】従来の容器(トレイ)の平面図
【図4】従来の容器(トレイ)の断面図
【符号の説明】
【0060】
T 容器(トレイ)
11 容器本体部
13a,13b 段部
13c 楔型溝条部
14 中敷体
14a フランジ部
14b 載置面部
14c 連結部
15 孔
16 溝

代 理 人 宇 高 克 己

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体部と中敷体とを有し、前記中敷体には凹部が形成されると共に前記凹部の低い位置に孔が形成されてなる容器において、
前記中敷体は、前記容器本体部を引っ繰り返しても該容器本体部から落ちないように該容器本体部に対して掛止、かつ、取り外し可能に構成されてなる
ことを特徴とする容器。
【請求項2】
容器本体部の側壁部には嵌合部が設けられており、
中敷体には前記嵌合部に嵌合する被嵌合部が設けられてなる
ことを特徴とする請求項1の容器。
【請求項3】
容器本体部の側壁部には凹部及び/又は凸部が設けられており、
中敷体には前記凹部及び/又は凸部に嵌合する凸部及び/又は凹部が設けられると共に、前記凸部及び/又は凹部の上側にフランジ部が設けられてなる
ことを特徴とする請求項1の容器。
【請求項4】
肉・魚介類を載せる為のものであることを特徴とする請求項1〜請求項3いずれかの容器。
【請求項5】
請求項1〜請求項4いずれかの容器の容器本体部を成形工場で成形する容器本体部成形工程と、
請求項1〜請求項4いずれかの容器の中敷体を成形工場で成形する中敷体成形工程と、
前記容器本体部成形工程で成形された容器本体部を重ねると共に前記中敷体成形工程で成形された中敷体を重ねて成形工場から所望の箇所に輸送する輸送工程と、
前記輸送工程で輸送された容器本体部と中敷体とを組み合わせて請求項1〜請求項4いずれかの容器とする組立工程と、
前記組立工程で組み立てられた容器の中敷体上に所望の商品を載せ、販売する販売工程と、
前記中敷体上に載せられた所望の商品を購入して該商品を取り出した後、該中敷体を容器本体部から取り外して捨てる処理工程
とを具備することを特徴とする容器処理方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−151400(P2006−151400A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−340625(P2004−340625)
【出願日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(391024250)第一プラスチック工業株式会社 (7)
【出願人】(504275801)新日化ポリマー株式会社 (1)
【Fターム(参考)】