説明

容器の吐出部材、容器、容器詰め食品及び容器の吐出部材の製造方法

【課題】ディスペンサに装着される容器の吐出部材において、使用開始時の吐出孔の変形、損傷を防止し、なおかつ使用前の吐出孔の封止性を向上する。
【解決手段】吐出部材50は、吐出孔60aが形成されたシート部60と、引張り部70と蓋枠状部71を有し、シート部60の外周部60bより内側に密着された蓋部61と、一の面側の開口部62aに引張り部70が露出するように、他の面側が蓋枠状部71に密着しシート部60の外周部60bに固着している外枠部62と、を有している。シート部60と蓋部61は、少なくとも互いに密着した部分の表面材質が異なっており、シート部60と外枠部62は、少なくとも互いに固着した部分の表面材質が同じである。蓋部61は、シート部60に対しインモールド成形法により成形されて剥離可能に密着し、外枠部62は、シート部60に対しインモールド成形法により成形されて蓋枠状部71に密着しシート部60の外周部60bに固着している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内容物を吐出するためのディスペンサに装着可能で前記内容物を収容する容器が有し、前記内容物が吐出される吐出部材、容器、容器詰め食品及び容器の吐出部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばマヨネーズ、ケチャップなどの粘性を有する内容物をパンなどの食品に添加する際には、例えば内容物を所定量ずつ吐出することができるディスペンサが用いられる。
【0003】
上述のディスペンサは、例えば内容物を収容した変形可能な容器が装着され、当該容器をピストンにより押すことによって、内容物を押し出すことができる。
【0004】
上述の容器は、一端側に枠状の注出部が形成され、当該注出部には、用途に合った形状の吐出孔が形成されたシートが貼られている。使用前には、シートに剥離可能なシールが貼られて吐出孔が封止されている。そして、使用開始時には、シールが剥された後、容器の他端側がピストンにより押されて変形し、内容物がシートの吐出孔から吐出されている(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−270771号公報
【特許文献2】特開2003−267463号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のように使用開始時にシールをシートから剥すと、その接着力によりシートが破損して吐出孔が変形したり損傷する可能性がある。この場合、容器から所定の分量の内容物が吐出されず、例えば所望の味の食品が製造されなくなる。また、シートに剥離可能なシールを貼り付けているので、その封止性が低く容器内の内容物が外気に触れたり、容器の吐出孔から内容物が漏れる可能性もある。この場合、外気により内容物が変質したり、内容物により容器が汚染されることがある。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、使用開始時の吐出孔の変形、損傷を防止し、なおかつ使用前の吐出孔の封止性を向上する容器の吐出部材と、容器、容器詰め食品及び容器の製造方法を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明は、内容物を吐出するためのディスペンサに装着可能で前記内容物を収容する容器が有し、前記内容物が吐出される吐出部材であって、内容物が通る切り込み状の吐出孔が形成されたシート部と、引張により取り外されて蓋開口部を形成可能な引張り部と、その引張り部の周りの蓋枠状部を有し、前記シート部の外周部より内側に密着された蓋部と、開口部を有する枠状に形成され、その枠状の一の面側の開口部に前記蓋部の引張り部が露出するように、前記枠状の他の面側が前記蓋部の蓋枠状部に密着し前記シート部の少なくとも外周部に固着している外枠部と、を有し、前記シート部と前記蓋部は、少なくとも互いに密着した部分の表面材質が異なっており、前記シート部と前記外枠部は、少なくとも互いに固着した部分の表面材質が同じであり、前記蓋部は、前記シート部に対しインモールド成形法により成形されて剥離可能に密着し、前記外枠部は、前記蓋部が成形された前記シート部に対しインモールド成形法により成形されて前記蓋部の蓋枠状部に密着し前記シート部の少なくとも外周部に固着している。
【0009】
本発明によれば、シート部と蓋部は、少なくとも互いに密着した部分の表面材質が異なっており、シート部に対し蓋部がインモールド成形法により成形され、蓋部がシート部に対し剥離可能に密着し、さらにシート部と外枠部は、少なくとも互いに固着した部分の表面材質が同じであり、シート部に対し外枠部がインモールド成形法により成形され、外枠部が蓋部の蓋枠状部に対し密着しシート部の外周部に対し固着している。この結果、蓋部と外枠部によるシート部の吐出孔の封止性が向上し、使用前に容器内の内容物が外気に触れたり、使用前に吐出孔から内容物が漏れることを防止できる。また、シート部と蓋部は、少なくとも互いに密着した部分の表面材質が異なっており、シート部と蓋部がインモールド成形法により成形されているので、蓋部の引張り部を引っ張ってシート部から容易に取り外すことができる。外枠部は、蓋部の蓋枠状部に密着して蓋枠状部を押さえているので、引張り部だけを適切に取り外すことができる。この結果、使用開始時のシート部の吐出孔の変形、破損を防止でき、ディスペンサにより容器から所望の分量の内容物を吐出できる。
【0010】
前記蓋部の蓋枠状部には、当該枠に沿った複数の貫通孔が成形され、前記シート部と前記外枠部は、前記貫通孔を通じて固着されていてもよい。かかる場合、シート部と外枠部の固着の強度が上がる。また、シート部及び外枠部に対して蓋部が周方向に回転したり、ずれることが防止され、シート部及び外枠部と、蓋部との間の密着性が向上する。これにより、シート部の吐出孔の封止性をさらに向上できる。
【0011】
前記蓋部の蓋枠状部には、前記外枠部の他の面側に突出する突出部が成形されていてもよい。かかる場合、外枠部がインモールド成形により成形された結果、外枠部と蓋枠状部が凹凸状に嵌合して密着する。この結果、外枠部と蓋枠状部との密着性が向上し、シート部の吐出孔の封止性をさらに向上できる。
【0012】
前記シート部の吐出孔は、互いに交差する複数の切込みから構成され、前記切込みは、放射状に延びる直線部と、当該直線部の外側端部から左右のいずれかに曲がる曲部から構成されていてもよい。かかる場合、内容物の吐出等により切込みに圧力がかかっても、切込みが直線部から外側に避けることを防止できる。よって、長期に亘って、シート部の吐出孔から所望の分量の内容物を吐出できる。
【0013】
別の観点による本発明は、上記容器の吐出部材と、当該吐出部材の外枠部に接続され変形自在な筒状部と、を有する容器である。
【0014】
別の観点による本発明は、上記容器に粘性を有する食品が充填され密封された、容器詰め食品である。
【0015】
別の観点による本発明は、内容物を吐出するためのディスペンサに装着可能で前記内容物を収容する容器が有し、前記内容物が吐出される吐出部材の製造方法であって、内容物が通る切り込み状の吐出孔が形成されたシート部に対し、引張により取り外されて蓋開口部を形成可能な引張り部とその引張り部の周りの蓋枠状部を有した蓋部を、インモールド成形法により成形して剥離可能に密着させる第1の工程と、前記蓋部が成形されたシート部に対し、開口部を有する枠状に形成された外枠部を、インモールド成形法により成形して、前記外枠部の一の面側の前記開口部に前記蓋部の引張り部が露出するように、前記外枠部の他の面側を、前記蓋部の蓋枠状部に密着させ、前記シート部の前記蓋部より外側の少なくとも外周部に固着させる第2の工程と、を有し、前記シート部と前記蓋部は、少なくとも互いに密着した部分の表面材質が異なっており、前記シート部と前記外枠部は、少なくとも互いに固着した部分の表面材質が同じである。
【0016】
本発明によれば、蓋部と外枠部によるシート部の吐出孔の封止性が向上し、使用前に容器内の内容物が外気に触れたり、使用前に吐出孔から内容物が漏れることを防止できる。また、蓋部の引張り部を引っ張ってシート部から容易に取り外すことができる。外枠部は、蓋部の蓋枠状部に密着して蓋枠状部を押さえるので、引張り部だけを適切に取り外すことができる。この結果、使用開始時のシート部の吐出孔の変形、破損を防止でき、ディスペンサにより容器から所望の分量の内容物を吐出できる。
【0017】
前記第1の工程において、前記蓋部の蓋枠状部に、当該枠に沿った複数の貫通孔が成形され、前記第2の工程において、前記シート部と前記外枠部は、前記貫通孔を通じて固着されてもよい。
【0018】
前記第1の工程において、前記蓋部の蓋枠状部に、前記外枠部の他の面側に突出する突出部が成形されてもよい。かかる場合、第2の工程において、外枠部がインモールド成形により成形されることにより、外枠部と蓋枠状部が凹凸状に嵌合して密着する。この結果、外枠部と蓋枠状部との密着性が向上し、シート部の吐出孔の封止性をさらに向上できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、使用開始時の吐出孔の変形、損傷を防止できるので、ディスペンサから所定の分量の内容物を吐出することができ、例えば所望の味の食品を製造できる。また、使用前の吐出孔の封止性を向上できるので、外気に触れることによる内容物の変質、漏れによる容器の汚染等を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】容器が装着されたディスペンサの斜視説明図である。
【図2】容器の斜視図である。
【図3】吐出部材の断面図である。
【図4】シート部の正面図である。
【図5】蓋部が成形されたシート部の正面図である。
【図6】蓋部とシート部の断面図である。
【図7】外枠部が成形された吐出部材の正面図である。
【図8】インモールド成形法によりシート部に蓋部を成形する例を示す模式図である。
【図9】インモールド成形法によりシート部に外枠部を成形する例を示す模式図である。
【図10】容器の蓋部の引張り部を取り外した状態を示すディスペンサの斜視説明図である。
【図11】別の態様の吐出孔を有するシート部の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態について説明する。図1は、本実施の形態にかかる吐出部材を有する容器1が装着されたディスペンサ2の構成の概略を示す斜視図である。
【0022】
ディスペンサ2は、例えば略円筒状の容器収容部10と、当該容器収容部10の後端に取り付けられたハンドル部11と、容器収容部10内の容器1を後方側から押して容器1内の内容物Aを容器収容部10の先端から押し出すための押出し部材12を有している。なお、容器1には、内容物Aとして、例えばマヨネーズ、ケチャップ、クリーム、からしなど、粘性を有する液状物やペースト状物などの食材が収容される。また、ディスペンサ2の先端側は、図1に示すX方向側であり、後方側は、X方向の逆方向側である。
【0023】
容器収容部10は、例えば環状に形成され中央に円形の開口部20aを有する先端部20と、中央に後述のロッド41が挿通する後端部21と、円筒状の胴部22を有している。胴部22は、上半分のカバー22aを取り外し可能であり、上半分を開口させることができる。
【0024】
ハンドル部11は、例えば容器収容部10の後端部21に固定された固定ハンドル30と、固定ハンドル30に対し回動自在に設けられたレバー31を有している。ハンドル部11の内部には、例えば図示しないスプリングが設けられており、レバー31を引いた力を除去すると、レバー31が元の位置に戻るようになっている。
【0025】
押出し部材12は、例えば容器収容部10内に設けられた円盤状の押圧板40と、当該押圧板40から、容器収容部10の後端部21及びハンドル部11を貫通し、後方に突出するロッド41を有している。ロッド41には、長手方向に沿って一定間隔の複数の溝41aが形成されており、レバー31を各溝41aに引っ掛かけることができる。これがラチェット機構になっており、ある溝41aに引っ掛けられたレバー31を引くと、ロッド41が溝41aの間隔分前方に送られ押圧板40が前進し、レバー31を戻すと、レバー31が次の溝41aに引っ掛かる。複数の溝41aがあるため、この動作を繰り返すことができる。また、ロッド41は、軸周りに反転させることにより溝41aとレバー31の引っ掛かりを解除でき、後方に引き戻すことができる。
【0026】
以上の構成からディスペンサ2は、容器収容部10に容器1を収容した状態で、レバー31を引き、押圧板40を所定ピッチ前進させ容器1を押圧することによって、容器1から所定量の内容物Aを吐出させることができる。
【0027】
容器1は、例えば図2に示すように容器1の先端に設けられ内容物Aが吐出される吐出部材50と、吐出部材50に接続され変形自在な筒状部51を有している。筒状部51は、前方(図2のY方向)の開口部が突出部材50に接続され、後方(図2のY方向の逆方向)の開口部がシールされて袋状になる。筒状部51の内側の層は、例えばポリプロピレン等の多層チューブフィルムで形成されている。筒状部51には、例えば後述する吐出部材50の外枠部62と、少なくとも互いに接続した部分の表面材質が同じであるものが用いられている。
【0028】
吐出部材50は、例えば図3に示すようにシート部60と、いわゆるプルトップ式の蓋部61と、外枠部62を有している。
【0029】
シート部60は、図4に示すように薄膜の円形状を有し、切り込み状の吐出孔60aが例えば3か所に形成されている。なお、吐出孔60aは、3か所に限られず、何か所であってもよい。シート部60の材質には、例えばポリプロピレンなどの樹脂を用いることができる。なお、このシート部60の材質の樹脂は、単層のものであってもよいし積層されたものであってもよい。
【0030】
蓋部61は、少なくともシート部60と密着した部分の表面材質が異材質の例えばポリエチレンなどの樹脂を用いて成形されている。蓋部61は、インモールド成形法により、例えば図5及び図6に示すようにシート部60の外周部60bの内側に剥離可能に密着されて成形されている。蓋部61は、引張により取り外されて蓋開口部61aを形成可能な引張り部70と、引張り部70の外周の蓋枠状部71を有している。
【0031】
引張り部70は、略円形状に形成され、図5及び図6に示すように中央より上方寄りにプルタブ70aを有している。蓋枠状部71は、最外周に二重の環状の突出部71a、71bを有し、その突出部71a、71bの間には、周方向に沿った複数の貫通孔71cを有している。引張り部70と蓋枠状部71の境界には、切り込みの溝72が形成されている。
【0032】
外枠部62は、蓋部61が成形されたシート部60に対しインモールド成形法により成形されている。外枠部62は、図3及び図7に示すように中央に開口部62aを有する環状に成形されている。外枠部62は、少なくともシート部60と固着した部分の表面材質が同材質の例えばポリプロピレンなどの樹脂を用いて成形されている。外枠部62は、前方側(図3のY方向側)の面の開口部62aに蓋部61の引張り部70が露出するように、後方側(図3のY方向の逆方向側)の面が蓋部61の蓋枠状部71に密着している。例えば、外枠部62、蓋部61およびシート部60がそれぞれ単一材質の場合は、外枠部62は、蓋部61の全体と異材質になり、接触する蓋部61の蓋枠状部71とは固着されずに密着し、同材質のシート部60との接触部分、すなわちシート部60の外周部60bに固着している。これにより、蓋枠状部71は、シート部60と外枠部62との間に気密に挟まれて押さえられている。また、シート部60は、蓋部61の貫通孔71cを通じて外枠部62に露出しているので、外枠部62は、貫通孔71cを通じて、シート部60の貫通孔71cに対向する部分にも固着している。
【0033】
外枠部62は、例えば図3に示すように断面がシート部60の外周部60bの前面側を径方向に延びる中間部62bと、中間部62bから後方に延びる後方部62cと、中間部62bから前方に延びる前方部62dと、前方部62dの内側から径方向の中心側に延びて蓋部61の蓋枠状部71を前方側から押さえる押え部62eを有している。押え部62eは、蓋枠状部71の形状に合致するように、蓋枠状部71の突出部71a、71bが嵌合する凹部80、81と、貫通孔71cに嵌合しシート部60に接続される突出部82を有している。後方部62cには、容器1の筒状部51が接続されている。なお、シート部60、蓋部61及び外枠部62の材質は、ポリプロピレンやポリエチレンに限定されるものではなく、適宜選択できる。
【0034】
次に、以上のように構成された吐出部材50の製造方法について説明する。先ず、予め形成されたシート部60が、図8に示すように成形金型B内に装着され、加熱した蓋部61の素材に所定の圧力をかけて蓋部61がシート部60に射出されてインモールド成形される(第1の工程)。このとき、蓋部61は、シート部60に隙間なく密着するが、少なくともシート部60と密着した部分の表面材質が異なっているため、シート部60に対し溶着せずに剥離可能な状態に成形される。
【0035】
次に、蓋部61が成形されたシート部60が、図9に示すように成形金型C内に装着され、加熱した外枠部62の素材に所定の圧力をかけて外枠部62がシート部60に対しインモールド成形される(第2の工程)。このとき、外枠部62は、少なくともシート部60と固着した部分の表面材質が同じであるため、接触するシート部60の外周部60bと、シート部60における蓋部61の貫通孔71cの対向部分に溶着し固着する。また、例えば、外枠部62、蓋部61およびシート部60がそれぞれ単一材質の場合は、外枠部62は、蓋部61と異材質となるため、蓋部61の蓋枠状部71に固着せずに密着する。この結果、シート部60と外枠部62の間に蓋部61の蓋枠状部71を挟んだ状態で、シート部60の外周部60b等でシート部60と外枠部62が固着されている。
【0036】
以上のように構成された吐出部材50を有する容器1と、ディスペンサ2を用いて、ハンバーガーやホットドックなどの食品に、マヨネーズやケチャップ等の粘性を有する内容物Aを吐出する際には、先ず、図2に示すように内容物Aが容器1の筒状部51内に収容され、筒状部51の後端部がシールされ、容器1が密封される。次に図1に示すように内容物Aが収容された容器1がディスペンサ2の容器収容部10内に装着される。このとき、容器1の吐出部材50が容器収容部10の先端部20の内側に嵌め込まれる。次に、図10に示すように吐出部材50の蓋部61の引張り部70がプルタブ70aを引っ張ることにより取り外される。これにより、シート部60の吐出孔60aが、蓋部61の蓋開口部61aを通じて外枠部62の開口部62aに露出する。その後、ディスペンサ2のレバー31を引き、押圧板40を所定ピッチ前進させ容器1の筒状部51を後ろ側から押圧することによって、吐出部材50の吐出孔60aから所定量の内容物Aが吐出される。
【0037】
以上の実施の形態によれば、シート部60と蓋部61は、少なくとも互いに密着した部分の表面材質が異なっているため、シート部60に対し蓋部61がインモールド成形法により成形されて、蓋部61がシート部60に対し剥離可能に密着し、さらにシート部60と外枠部62は、少なくとも互いに固着した部分の表面材質が同じであるため、シート部60に対し外枠部62がインモールド成形法により成形され、外枠部62が蓋部61の蓋枠状部71に対し密着しつつシート部60の外周部60bに対し固着している。この結果、蓋部60と外枠部62によってシート部60の吐出孔60aが十分に封止されるので、使用前に容器1内の内容物Aが外気に触れたり、吐出孔60aから内容物Aが漏れることを防止できる。この結果、外気に触れることによる内容物Aの変質、漏れによる容器1等の汚染を防止できる。また、シート部60と蓋部61は、少なくとも互いに密着した部分の表面材質が異なっており、シート部60と蓋部61がインモールド成形法により成形されているので、蓋部61の引張り部70を引っ張ってシート部60から容易に取り外すことができる。また、蓋部61の蓋枠状部71は、外枠部62に密着して押さえられているので、引張り部70だけを適切に取り外すことができる。この結果、使用開始時のシート部60の吐出孔60aの変形、破損を防止でき、ディスペンサ2により容器1から所望の分量の内容物Aを吐出できる。この結果、所望の味の食品を製造できる。
【0038】
蓋枠状部71には、当該枠に沿った複数の貫通孔71cが成形され、シート部60と外枠部62は、貫通孔71cを通じても固着されているので、シート部60と外枠部62の固着の強度が上がる。また、シート部60及び外枠部62に対して蓋部61が周方向に回転したり、ずれることが防止され、シート部60及び外枠部62と、蓋部61との密着性が向上する。これにより、吐出孔60aの封止性をさらに向上できる。
【0039】
蓋枠状部71には、外枠部62の他の面側に突出する突出部71a、71bが成形されているので、外枠部62がインモールド成形により成形された結果、外枠部62に凹部80、81が成形され、外枠部62と蓋枠状部71が凹凸状に嵌合して密着する。この結果、外枠部62と蓋枠状部71との密着性が向上し、吐出孔60aの封止性をさらに向上できる。
【0040】
以上の実施の形態におけるシート部60の吐出孔60aは、例えば図11に示すように互いに交差する複数、例えば3つの切込み90から構成され、切込み90は、放射状に延びる直線部90aと、直線部90aの外側端部から左右のいずれかに曲がる曲部90bから構成されていてもよい。かかる場合、内容物Aの吐出等により切込み90に圧力がかかっても、切込み90が直線部90aから外側に避けることを防止できる。よって、長期に亘って、シート部60の吐出孔60aから所望の分量の内容物Aを吐出できる。なお、切込み90の数は、3つに限定されるものでなく、4つであってもよいし、他の数であってもよい。
【0041】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0042】
例えば以上の実施の形態では、容器1に収容される内容物Aが食品に添加する物であったが、食品以外の対象物に吐出する物であっても本発明は適用できる。また、容器1は、必ずしも変形可能な筒状部51を有するものでなくてもよく、本発明は、変形しない容器の場合にも適用できる。また、ディスペンサも、以上の実施の形態のようにガン式である必要ななく、他の構造のものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明によれば、ディスペンサに装着される容器の吐出部材において、使用開始時の吐出孔の変形、損傷を防止し、なおかつ使用前の吐出孔の封止性を向上する際に有用である。
【符号の説明】
【0044】
1 容器
2 ディスペンサ
50 吐出部材
60 シート部
60a 吐出孔
61 蓋部
62 外枠部
70 引張り部
71 蓋枠状部
A 内容物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物を吐出するためのディスペンサに装着可能で前記内容物を収容する容器が有し、前記内容物が吐出される吐出部材であって、
内容物が通る切り込み状の吐出孔が形成されたシート部と、
引張により取り外されて蓋開口部を形成可能な引張り部と、その引張り部の周りの蓋枠状部を有し、前記シート部の外周部より内側に密着された蓋部と、
開口部を有する枠状に形成され、その枠状の一の面側の開口部に前記蓋部の引張り部が露出するように、前記枠状の他の面側が前記蓋部の蓋枠状部に密着し前記シート部の少なくとも外周部に固着している外枠部と、を有し、
前記シート部と前記蓋部は、少なくとも互いに密着した部分の表面材質が異なっており、前記シート部と前記外枠部は、少なくとも互いに固着した部分の表面材質が同じであり、
前記蓋部は、前記シート部に対しインモールド成形法により成形されて剥離可能に密着し、
前記外枠部は、前記蓋部が成形された前記シート部に対しインモールド成形法により成形されて前記蓋部の蓋枠状部に密着し前記シート部の少なくとも外周部に固着している、容器の吐出部材。
【請求項2】
前記蓋部の蓋枠状部には、当該枠に沿った複数の貫通孔が成形され、前記シート部と前記外枠部は、前記貫通孔を通じて固着されている、請求項1に記載の容器の吐出部材。
【請求項3】
前記蓋部の蓋枠状部には、前記外枠部の他の面側に突出する突出部が成形されている、請求項1又は2に記載の容器の吐出部材。
【請求項4】
前記シート部の吐出孔は、互いに交差する複数の切込みから構成され、
前記切込みは、放射状に延びる直線部と、当該直線部の外側端部から左右のいずれかに曲がる曲部から構成されている、請求項1〜3のいずれかに記載の容器の吐出部材。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の容器の吐出部材と、当該吐出部材の外枠部に接続され変形自在な筒状部と、を有する容器。
【請求項6】
請求項5に記載の容器に粘性を有する食品が充填され密封された、容器詰め食品。
【請求項7】
内容物を吐出するためのディスペンサに装着可能で前記内容物を収容する容器が有し、前記内容物が吐出される吐出部材の製造方法であって、
内容物が通る切り込み状の吐出孔が形成されたシート部に対し、引張により取り外されて蓋開口部を形成可能な引張り部とその引張り部の周りの蓋枠状部を有した蓋部を、インモールド成形法により成形して剥離可能に密着させる第1の工程と、
前記蓋部が成形されたシート部に対し、開口部を有する枠状に形成された外枠部を、インモールド成形法により成形して、前記外枠部の一の面側の前記開口部に前記蓋部の引張り部が露出するように、前記外枠部の他の面側を、前記蓋部の蓋枠状部に密着させ、前記シート部の前記蓋部より外側の少なくとも外周部に固着させる第2の工程と、を有し、前記シート部と前記蓋部は、少なくとも互いに密着した部分の表面材質が異なっており、前記シート部と前記外枠部は、少なくとも互いに固着した部分の表面材質が同じである、容器の吐出部材の製造方法。
【請求項8】
前記第1の工程において、前記蓋部の蓋枠状部に、当該枠に沿った複数の貫通孔が成形され、
前記第2の工程において、前記シート部と前記外枠部は、前記貫通孔を通じて固着される、請求項7に記載の容器の吐出部材の製造方法。
【請求項9】
前記第1の工程において、前記蓋部の蓋枠状部に、前記外枠部の他の面側に突出する突出部が成形される、請求項7又は8に記載の容器の吐出部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−125828(P2011−125828A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−289225(P2009−289225)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(000001421)キユーピー株式会社 (657)
【出願人】(502038989)ベスパック株式会社 (19)
【出願人】(397058666)カーギル インコーポレイテッド (60)
【Fターム(参考)】