説明

容器の抜き取り方法および容器の抜き取り装置

【課題】トレイ2の嵌合部6A、6Bに嵌合して保持されているシリンジ4を、嵌合部6A、6Bから外して吸盤16、16で取り出せるようにする。
【解決手段】長方形のトレイ2に、平行な2辺2a、2bと直交する方向を向けて2個一組の嵌合部6A、6Bが複数組形成され、各組の嵌合部6A、6Bの間にシリンジ4が嵌合して保持されている。トレイ2の前記2辺2a、2bの一方側を下方の載置プレート34と上方のロックプレート36で挟持する。挟持されている部分から遠い側の嵌合部6Bを第1プッシャ12により押圧し、トレイ2を傾斜させることにより挟持されている側の嵌合部6Aからシリンジ4のこの部分を外し、続いて、他辺2bに近い側を第2プッシャ14により押圧して、さらにトレイ2を傾斜させ、こちらの嵌合部6Bからもシリンジ4を外す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製等の変形可能なトレイに保持されている、シリンジやアンプル等の容器を前記トレイから取り出す容器の抜き取り方法および容器の抜き取り装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、シリンジやアンプル等の容器に薬液等を充填し密封する充填密封作業を行う生産ラインでは、トレイに収容されて包材メーカーから供給された容器を、ロボットを用いて取り出してラインに供給することが一般に行われている。トレイに収容された容器は、搬送中に破損することを防止するために、トレイに形成した嵌合部に嵌め込んで、しっかりとホールドした状態で供給される。
【0003】
前記のような状態でトレイに保持されている容器を、ロボットにより取り出す際の容器保持手段として吸盤を用いた場合には、トレイの嵌合部による容器に対する保持力と、吸盤による容器に対する吸着力との関係で、取り出そうとしても取り出せない場合が発生する。
【0004】
容器を確実に保持してトレイから取り出すことができるように、メカニカルな保持手段によって取り出すようにした発明がすでに知られている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載された発明では、プラスチックにより製造されたトレイはウエブを有しており、これらウエブの間に射出成形体(本発明の容器に相当する)が平行に配置され、ウエブに一体整形された突起によってトレイ内に保持されている。トレイから射出成形体を取り出す装置は、ダイの正面側に長手方向のスリットを有し、このスリットの上下位置にトレイのウエブに合致する押し付けウエブが形成されている。ダイのスリットを貫通する射出成形体の支持体が、射出成形体を押し付ける半円形の切り欠きを有しており、この切り欠きの間に、切り欠きの高さで回転運動可能な閉鎖部材が配置されている。閉鎖部材は、円筒形のピンを有しており、このピンの切り欠き側に射出成形体のための保持突起が一体整形されている。ピンは90度回転できるようになっており、一方の回転端では、切り欠きが完全に開放され、他方の回転端では保持突起が切り欠きの開口を部分的に覆うようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3983290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1に記載された装置では、射出成形体の支持体に形成された半円形の切り欠きを射出成形体に押し付けた後、閉鎖部材のピンを回転させ、保持突起によって切り欠き内の射出成形体を取り囲む。その後、ダイを前進させると、押し付けウエブがトレイのウエブを押圧して、トレイを射出成形体から離れる方向に押しやって、トレイと射出成形体を分離させる。このような構成の装置では、容器(射出成形体)を傷付けるおそれがあり、また、容器の種類に応じて射出成形体の支持体や閉鎖部材等を交換する必要があり、複数種類の部品を用意しなければならないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、変形可能な矩形のトレイの、平行する2辺と直交する方向を向けて形成された嵌合部に保持されている容器を、前記嵌合部との嵌合を外して取り出す容器の抜き取り方法において、容器を保持させたトレイの、前記両辺のいずれか一方側を挟持する工程と、プッシャにより押圧して、前記トレイの挟持された一方の辺に対して他方の辺が下方を向くように傾斜させることにより、容器の、前記挟持された辺側を上方に持ち上げて前記嵌合部から外す工程と、嵌合が外れた容器を取り出して次の工程に受け渡す工程とを有するものである。
【0008】
また、請求項2の発明は、変形可能な矩形のトレイの、平行する2辺と直交する方向を向けて形成された嵌合部に保持されている容器を、前記嵌合部との嵌合を外して取り出す容器の抜き取り方法において、容器を保持させたトレイの、前記両辺のいずれか一方側を挟持する工程と、第1プッシャにより押圧して、前記トレイの挟持された一方の辺に対して他方の辺が下方を向くように傾斜させることにより、容器を、トレイの挟持されている側の嵌合部から外す工程と、前記第1プッシャにより押さえた状態を維持したまま、トレイの第1プッシャにより押さえた位置よりもさらに他辺側を第2プッシャにより押圧して、他辺側がさらに下方になるようにトレイを変形させることにより、容器を他方側の嵌合部から外す工程と、嵌合が外れた容器を取り出して次の工程に受け渡す工程とを有するものである。
【0009】
さらに、請求項3の発明は、変形可能な矩形のトレイの、平行する2辺と直交する方向を向けて形成された嵌合部に保持されている容器を、前記嵌合部との嵌合を外して取り出す容器の抜き取り装置において、トレイの前記2つの辺の一方の側を挟持する挟持手段と、容器を吸着保持する吸盤と、この吸盤を移動させる移動手段と、前記トレイの、挟持手段に押さえられていない部分を下方へ向けて押圧するプッシャとを備え、前記トレイの一辺側を前記挟持手段により挟持した状態で、プッシャにより押圧して前記トレイの保持されていない部分を下方へ傾斜させ、容器の前記挟持手段側を持ち上げて前記嵌合部との嵌合を外し、吸盤によって吸着保持して抜き取ることを特徴とするものである。
【0010】
また、請求項4の発明は、変形可能な矩形のトレイの、平行する2辺と直交する方向を向けて形成された嵌合部に保持されている容器を、前記嵌合部との嵌合を外して取り出す容器の抜き取り装置において、トレイの前記2つの辺の一方の側を挟持する挟持手段と、容器を吸着保持する吸盤と、この吸盤を移動させる移動手段と、前記トレイの、挟持手段に押さえられていない部分を下方へ向けて押圧する第1プッシャと、この第1プッシャが押圧する位置よりも、前記挟持手段に挟持された位置から遠い位置を押圧する第2プッシャとを備え、前記トレイの一辺側を前記挟持手段により保持した状態で、第1プッシャにより押圧して前記トレイの挟持されていない部分を下方へ傾斜させ、容器の前記挟持手段側を持ち上げて、トレイの保持されている部分寄りの嵌合部から外した後、第2プッシャによって押圧して、容器をトレイの他辺側の嵌合部との嵌合を外し、吸盤によって吸着保持して抜き取ることを特徴とするものである。
【0011】
また、請求項5の発明は、前記吸盤の近傍に、容器に係合可能な切り欠きが形成されたガイドを配置し、プッシャによってトレイを押し下げることにより上方に持ち上げられた容器の一端側を前記ガイドにより支持することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る容器の抜き取り装置は、トレイの平行する2辺と直交する方向に嵌合部が形成され、この嵌合部に容器が嵌合して保持されており、前記2つの辺のいずれか一方側を上下のプレートによって挟持した状態で、他辺側をプッシャによって押圧することによりトレイを折り曲げて容器を嵌合部から外した後、吸盤によって吸着するようにしたので、容器を傷付けることなく、トレイから確実に容器を抜き取ることができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1はトレイに形成された嵌合部に容器が嵌合して保持された状態を示す平面図である。(実施例1)
【図2】図2(a)はトレイから容器を抜き取るロボットハンドの構成を示す正面図、(b)は容器を吸着保持する吸盤の近傍に設けられたガイドを示す正面図である。
【図3】図3は容器の抜き取り装置の全体の配置を示す平面図である。
【図4】図4(a)〜(d)は容器の抜き取り工程を順次説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
樹脂等の素材からなる変形可能な矩形のトレイは、平行する2つの辺に対し直交する方向を向けて嵌合部が形成されており、この嵌合部に容器が嵌合して保持された状態で供給される。容器を保持しているトレイの、前記2つの辺のうち一方の辺側の部分を載せる載置プレートと、この載置プレートの上方に昇降可能に配置されたロック用プレートとによってトレイを上下から挟持する挟持手段が構成されている。さらに、トレイの挟持手段によって挟持されている部分以外の部分を押圧して、挟持されている部分と逆側の部分を下方へ向けて傾斜させるプッシャを備えている。このプッシャによってトレイを押圧して傾斜させることにより、このトレイの嵌合部に嵌合している容器の、前記挟持された部分側を上方へ持ち上げて嵌合部から外す。また、第2プッシャを備えている場合には、トレイの、前記プッシャで押さえた部分よりも、下方へ傾斜した先端側を押圧して、さらにトレイを下方に向けて傾斜させる。このようにトレイを2段階に傾斜させることにより、1つの容器を複数の嵌合部内に嵌合させている場合でも、容器を嵌合部から外すことができるので、移動手段によって移動可能な吸盤により、その容器を吸着して確実に抜き取ることができる。
【実施例1】
【0015】
以下、図面に示す実施例により本発明を説明する。トレイ2は、平面形状が長方形であり、長手方向の一辺(例えば、図1の左側の辺2a)とこの辺2aに平行な他方の辺2bとの間に、これら両辺2a、2bと直交する方向を向けて複数の容器(この実施例ではシリンジ4)が等間隔で平行に保持されている。トレイ2の上面には、シリンジ4の直径とほぼ同じか、あるいはやや広い間隔で、シリンジ4を両側から保持する嵌合部6が設けられている。嵌合部6は各シリンジ4をその長手方向の2箇所で保持するようになっており、前記一方の辺2a寄りと、他方の辺2b寄りにそれぞれ1箇所ずつ設けられている。これらの嵌合部6(以下、図1の左側の嵌合部を第1嵌合部6A、右側の嵌合部を第2嵌合部6Bと呼ぶ)は、シリンジ4を確実に保持するために、シリンジ4の直径よりもやや大きい高さを有している。また、各嵌合部6A、6Bは、これらの間に嵌合されたシリンジ4を保持するために、シリンジ4に係合する保持用の突起6Aa、6Baが設けられている。中間の嵌合部6A、6B(図1の上から2番目の嵌合部から下から2番目の嵌合部までの各嵌合部)はそれぞれの両側に、そして、両端(図1の一番上と一番下)の嵌合部6A、6Bはシリンジ4を保持する側に保持用の突起6Aa、6Baが設けられている。
【0016】
トレイ2は、前記両辺2a、2bを含む端部側が肉厚の厚い平坦部(以下、第1肉厚部2A、第2肉厚部2Bと呼ぶ)になっており、これら肉厚部2A、2Bの内側(中央部寄り)にそれぞれ前記第1嵌合部6Aおよび第2嵌合部6Bが設けられ、これら両嵌合部6A、6Bの中間に、肉厚が薄い薄肉部2Cが形成されている(後に説明する図4(a)参照)。従って、いずれか一方の辺2a、2b側の肉厚部2A、2Bを固定した状態(この実施例では後に説明するトレイ挟持手段によって挟持した状態)で、他方の辺2a、2b側の肉厚部2A、2Bまたは嵌合部6A、6Bを押圧すると、中央の薄肉部2Cで折れ曲がって、固定されていない側が下方へ向けて傾斜した状態になる。
【0017】
前記トレイ2からシリンジ4を抜き取るロボットに取り付けられるハンド8は、図2(a)に示すように、トレイ2の嵌合部6A、6Bから外れたシリンジ4を吸着保持する吸着手段10と、前記両嵌合部6A、6Bに嵌合して保持されているシリンジ4を、嵌合部A、6Bから外すための第1プッシャ12、および第2プッシャ14を備えている。
【0018】
前記吸着手段10は、細長い形状のシリンジ4を2箇所で吸着できるように、所定の間隔を空けて2個の吸盤16、16が設けられている。また、この吸着手段10の一端(図2(a)の左端)にガイド部材18が設けられている。このガイド部材18は、図2(b)に拡大して示すように、シリンジ4の外径とほぼ一致する半円弧状の切り欠き18aが形成されている。吸着手段10の吸盤16、16およびガイド部材18は、トレイ2に保持されている各シリンジ4に対応して設けられており、この実施例では、一対の吸盤16、16とガイド部材18が、トレイ2に保持されているシリンジ4と同数の10組設けられている。
【0019】
また、第1プッシャ12は、前記吸盤16、16を備えた吸着手段10に近接した位置に取り付けられている。吸着手段10は、一方の端面側に前記ガイド部材18が取り付けられており、第1プッシャ12は吸着手段10に対してガイド部材18と逆側に配置されている。この第1プッシャ12は、エアシリンダ20のピストンロッド20aに取り付けられており、吸盤16、16の吸着面が向いている方向と同一方向に進退動するようになっている。
【0020】
第2プッシャ14は、吸着手段10に対して、前記第1プッシャ12よりも離れた位置に配置されている。この第2プッシャ14もエアシリンダ22のピストンロッド22aに取り付けられて進退動するようになっている。この第2プッシャ14は、吸着手段10および第1プッシャ12の方向に対してやや傾けて配置されている。
【0021】
複数本のシリンジ4を保持している前記トレイ2は、トレイマガジン26内に多段に積み重ねられて収容された状態で、トレイ供給コンベヤ24(図3参照)によって供給される。このトレイ供給コンベヤ24の下流端の側部に、第1ロボット28が配置されており、このロボット28のハンド30によってトレイマガジン26からトレイ2が一枚ずつ取り出されて、取り出しポジションPに配置されているトレイ挟持手段32の載置プレート34上に載せられる。載置プレート34は、トレイ2を下方へ曲げる際にトレイ2の長手方向の一辺(この実施例では図1の左側の辺2a)側を支持するもので、トレイ2を支持するために必要な長さを有するとともに、トレイ2を折り曲げ可能にするために幅が狭くなっている。この実施例では、図4(a)に示すように、載置プレート34は、長手方向の一辺2a側に設けられている第1肉厚部2Aとその隣の第1嵌合部6Aの下面側を支持できるだけの幅を有している。
【0022】
また、載置プレート34の上方には、この載置プレート34とともにトレイ2を上下から挟持するロック用プレート36が配置されている。このロック用プレート36は、図4(a)に示すように、鉛直方向を向けて固定されたエアシリンダ38のピストンロッド38aに取り付けられて昇降できるようになっており、下降時にはトレイ2の一方の辺2a側の第1肉厚部2Aを上方から押さえて、前記載置プレート34とともにトレイ2を上下から挟持する。このように上下のプレート34、36によって挟持することによって、トレイ2の折り曲げ工程を行う際に動かないように固定する。このロック用プレート36は、トレイ2の上方に突出している第1嵌合部6Aを避けて第1肉厚部2Aだけを押さえるようになっているので、載置プレート34よりも狭い幅を有している。
【0023】
これら載置プレート34とロック用プレート36を備えたトレイ挟持手段32が設けられているシリンジ4の取り出しポジションPに隣接して、取り出されたシリンジ4を搬送するスクリュー40が配置されている。トレイ挟持手段32とスクリュー40とが配置されている位置の近くに、トレイ2からシリンジ4を取り出してスクリュー40に引き渡す第2ロボット42が配置されている。この第2ロボット42に、前記吸着手段10や第1、第2のプッシャ12、14が設けられているロボットハンド8が取り付けられて、トレイ2からのシリンジ4の取り出し作業を行う。なお、この第2ロボット42が、請求項3および請求項4の移動手段に相当する。また、載置プレート34とロック用プレート36を備えたトレイ挟持手段32が、請求項3および請求項4に記載した挟持手段である。
【0024】
以上の構成に係る容器の抜き取り装置の作動について説明する。容器(シリンジ)4はトレイ2上に形成された2個一組の嵌合部(第1嵌合部6Aと第2嵌合部6B)が2組平行している間に嵌合して、トレイ2から簡単に外れない状態で保持されている。この実施例では、一枚のトレイ2に10本のシリンジ4が保持されており、このトレイ2が前記トレイマガジン26内に複数段積み重ねられ、トレイ供給コンベヤ24によって供給される。
【0025】
トレイ供給コンベヤ24の下流端に停止したトレイマガジン26から、第1ロボット28が一枚のトレイ2を取り出し、取り出しポジションPに設置されているトレイ挟持手段32の載置プレート34上に載せる。このトレイ2は、シリンジ4を取り出す際にプッシャ12、14に押されて折り曲げられるので、この実施例では、トレイ2の長手方向の一方の辺2a側の第1肉厚部2Aと第1嵌合部6Aの下面側がこの載置プレート34上に載せられ、他方の辺2b側の第2肉厚部2Bと第2嵌合部6Bおよび中央の薄肉部2Cは、下面側に支持が無く空中に浮いた状態になっている。その後、昇降用エアシリンダ38の作動によってロック用プレート36が下降して、トレイ2の前記第1肉厚部2Aに上方から当接し、前記載置プレート34とともにトレイ2を上下から挟持して固定した状態にする(図4(a)参照)。
【0026】
取り出しポジションPで、トレイ挟持手段32によってトレイ2を水平な状態で挟持した後、第2ロボット42により、図2に示す構成のロボットハンド8をトレイ2の上方に移動させる。2個の吸盤16、16を備えた吸着手段10は、トレイ2に保持されている各シリンジ4に対応するように、シリンジ4の数と同じ数(この実施例では10本)だけ、シリンジ4の間隔と同じ間隔で設けられており、各吸着手段10の一対の吸盤16、16が各シリンジ4の上方に位置するようにロボットハンド8を移動させ、さらにトレイ2に向かって下降させる。
【0027】
1対の吸盤16、16がシリンジ4に接近した位置までロボットハンド8が下降した後、第1プッシャ12のエアシリンダ20を作動させて第1プッシャ12を鉛直方向に下降させる。この実施例では、第1プッシャ12が第2嵌合部6Bの上面に当たってこれを押し下げる。前記載置プレート34は、第1嵌合部6Aとその隣の第1肉厚部2Aの下面側を支持しているので、トレイ2は、第1嵌合部6Aに隣接している薄肉部2Cの位置で下方へ折られて、トレイ挟持手段32に挟持されている部分と逆側(第2肉厚部2B側)が下方へ向けて傾斜した状態になる(図4(b)参照)。トレイ2の第2嵌合部6Bとこの第2嵌合部6Bに嵌合しているシリンジ4は一体的に傾斜した状態になるが、第1嵌合部6Aは前述のように傾斜しないので、シリンジ4のこの第1嵌合部6Aに嵌合していた部分は上方に持ち上げられた状態になって第1嵌合部6Aから外れる。吸盤16、16を備えた吸着手段10の側部にガイド部材18が取り付けられており、後端部側が上方へ持ち上げられた状態のシリンジ4がこのガイド部材18の円弧状の切り欠き18aに係合し、または接近した状態になる。なお、この実施例では、シリンジ4は嵌合部6A、6B内に完全に嵌り込んで嵌合部6A、6Bの上面よりも上方に露出していないので、第1プッシャ12が第2嵌合部6Bの上面を押圧するが、シリンジ4の一部を嵌合部6A、6Bの上方へ出した状態で嵌着するように構成することも可能であり、この場合には、第1プッシャ12は直接シリンジ4を押圧することになる。
【0028】
第1プッシャ12によってトレイ2を押圧して、トレイ挟持手段32によって挟持されていない部分を下方へ向けて傾斜させた後、第1プッシャ12はその位置を維持したまま、第2プッシャ14をエアシリンダ22の作動により下降させる。第2プッシャ14は鉛直方向に対して傾斜して配置されており、第1プッシャ12によって下方へ向けて傾斜した状態のトレイ2に対してほぼ直角方向を向けて下降し、トレイ2の第2肉厚部2Bを押圧してさらに下方へ向けて傾斜を大きくする(図4(c)参照)。トレイ2の挟持手段32に保持されていない部分(薄肉部2C、第2嵌合部6Bおよび第2肉厚部2B)はさらに大きく傾斜するが、第2嵌合部6Bに嵌合していたシリンジ4は、後端部4b側がガイド部材18の円弧状切り欠き18aに係合してこれ以上傾斜できないので、第2嵌合部6B側の嵌合も外れる。第1プッシャ12および第2プッシャ14による2回の押圧工程によりシリンジ4は2箇所の嵌合部6A、6Bから外れて自由に取り出せる状態になる。
【0029】
この状態から第1プッシャ12および第2プッシャ14を戻して(エアシリンダ20、22により上昇させ)トレイ2およびシリンジ4を水平な状態にする。この状態では、シリンジ4は嵌合部6(6A、6B)からはずれてその上に載った状態になっている。ここで吸着手段10の両吸盤16、16をシリンジ4の外面に当て、バキュームを作用させて吸着する(図4(d)参照)。その後、ロボットハンド8を上昇させてシリンジ4をトレイ2上から取り上げ、この取り出しポジションPに近接して配置されているスクリュー40に受け渡し、スクリュー40の回転により搬送させて次の工程に送る。このようにシリンジ4をトレイ2の嵌合部6A、6Bから外して吸盤16、16によって吸着して取り出すので、取り出しミスが無く確実に取り出すことができる。また、吸盤16、16で取り出すことが可能なので、シリンジ4を傷付けてしまうおそれがない。
【符号の説明】
【0030】
2 トレイ
2a トレイの一方の辺
2b トレイの他の辺
4 容器(シリンジ)
6 嵌合部
6A 第1嵌合部
6B 第2嵌合部
12 第1プッシャ
14 第2プッシャ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変形可能な矩形のトレイの、平行する2辺と直交する方向を向けて形成された嵌合部に保持されている容器を、前記嵌合部との嵌合を外して取り出す容器の抜き取り方法において、
容器を保持させたトレイの、前記両辺のいずれか一方側を挟持する工程と、プッシャにより押圧して、前記トレイの挟持された一方の辺に対して他方の辺が下方を向くように傾斜させることにより、容器の、前記挟持された辺側を上方に持ち上げて前記嵌合部から外す工程と、嵌合が外れた容器を取り出して次の工程に受け渡す工程とを有する容器の抜き取り方法。
【請求項2】
変形可能な矩形のトレイの、平行する2辺と直交する方向を向けて形成された嵌合部に保持されている容器を、前記嵌合部との嵌合を外して取り出す容器の抜き取り方法において、
容器を保持させたトレイの、前記両辺のいずれか一方側を挟持する工程と、第1プッシャにより押圧して、前記トレイの挟持された一方の辺に対して他方の辺が下方を向くように傾斜させることにより、容器を、トレイの挟持されている側の嵌合部から外す工程と、前記第1プッシャにより押さえた状態を維持したまま、トレイの第1プッシャにより押さえた位置よりもさらに他辺側を第2プッシャにより押圧して、他辺側がさらに下方になるようにトレイを変形させることにより、容器を他方側の嵌合部から外す工程と、嵌合が外れた容器を取り出して次の工程に受け渡す工程とを有する容器の抜き取り方法。
【請求項3】
変形可能な矩形のトレイの、平行する2辺と直交する方向を向けて形成された嵌合部に保持されている容器を、前記嵌合部との嵌合を外して取り出す容器の抜き取り装置において、
トレイの前記2つの辺の一方の側を挟持する挟持手段と、容器を吸着保持する吸盤と、この吸盤を移動させる移動手段と、前記トレイの、挟持手段に押さえられていない部分を下方へ向けて押圧するプッシャとを備え、
前記トレイの一辺側を前記挟持手段により挟持した状態で、プッシャにより押圧して前記トレイの保持されていない部分を下方へ傾斜させ、容器の前記挟持手段側を持ち上げて前記嵌合部との嵌合を外し、吸盤によって吸着保持して抜き取ることを特徴とする容器の抜き取り装置。
【請求項4】
変形可能な矩形のトレイの、平行する2辺と直交する方向を向けて形成された嵌合部に保持されている容器を、前記嵌合部との嵌合を外して取り出す容器の抜き取り装置において、
トレイの前記2つの辺の一方の側を挟持する挟持手段と、容器を吸着保持する吸盤と、この吸盤を移動させる移動手段と、前記トレイの、挟持手段に押さえられていない部分を下方へ向けて押圧する第1プッシャと、この第1プッシャが押圧する位置よりも、前記挟持手段に挟持された位置から遠い位置を押圧する第2プッシャとを備え、
前記トレイの一辺側を前記挟持手段により保持した状態で、第1プッシャにより押圧して前記トレイの挟持されていない部分を下方へ傾斜させ、容器の前記挟持手段側を持ち上げて、トレイの保持されている部分寄りの嵌合部から外した後、第2プッシャによって押圧して、容器をトレイの他辺側の嵌合部との嵌合を外し、吸盤によって吸着保持して抜き取ることを特徴とする容器の抜き取り装置。
【請求項5】
前記吸盤の近傍に、容器に係合可能な切り欠きが形成されたガイドを配置し、プッシャによってトレイを押し下げることにより上方に持ち上げられた容器の一端側を前記ガイドにより支持することを特徴とする請求項3または請求項4のいずれかに記載の容器の抜き取り装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−230904(P2011−230904A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−103772(P2010−103772)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(000253019)澁谷工業株式会社 (503)
【Fターム(参考)】