説明

容器の注出口

【課題】注出口の係止部を、金型成形時の無理抜きに対応できる形状とし、生産効率を向上させた容器の注出口を提供する。
【解決手段】筒状のノズル部3aと、このノズル部3a下方の取付部3gに設けた係止部7とを備え、容器1を構成するカートンに設けた穴部6に嵌装し、係止部7によって穴部6に係止させ、カートンに固着する、可塑性樹脂からなる容器1の注出口3において、係止部7は、複数のリブ7aからなるとともに、取付部3gの少なくとも3箇所に配設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズル部と、該ノズル部下方の取付部に設けた係止部とを備え、容器を構成するカートンに設けた穴部に嵌装し、前記係止部によって前記穴部に係止させ、前記カートンに固着する、可塑性樹脂からなる容器の注出口に関し、より詳細には、前記係止部は、上端にテーパを設けた複数のリブからなるとともに、前記取付部の少なくとも3箇所に配設させた容器の注出口に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、牛乳、ジュース、酒などを収容する容器には、例えば、カートンから構成される容器の上部に有する傾斜屋根に設けた、カートンの開口部(穴部)に、低密度ポリエチレン(LDPE)などの可塑性樹脂からなる筒状の注出口を取付けたものがあり、この注出口を取付ける際、注出口の底部外周縁に設けた爪形状の係止部に、カートンの穴部周縁を嵌合させて係止させている間に、注出口のフランジを熱溶着などして、注出口を容器のカートンに固着させるもの(例えば、特許文献1や特許文献2など)がある。
【0003】
【特許文献1】特開2000−25816号公報
【特許文献2】実公昭60−37296号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような容器では、前記注出口を射出金型成形により成形しているが、溶融樹脂を冷却して固化した後、金型をスライドさせて成形した注出口を取り出しているのが一般的であり、スライド機構が大掛かりなため、所定の金型からは、これら注出口の取り数をさらに増やすことができない。これに対し、成形した注出口を、スライド機構を用いず、金型から無理抜きして取り出すことができれば、所定の大きさの金型において、注出口の取り数をさらに増やすことが可能となり、コストダウンが期待できる。しかしながら、注出口は柔らかい可塑性の樹脂から構成されているため、無理抜きする際、注出口の爪形状の係止部が変形してしまうことから、その機能を果たせず、カートンに注出口を円滑に取り付けることができなくなるという問題を生じる。
従って、この発明の目的は、注出口の係止部を、金型成形時の無理抜きに対応できる形状とし、生産効率を向上させた容器の注出口を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このため、請求項1に記載の発明は、筒状のノズル部と、該ノズル部下方の取付部に設けた係止部とを備え、容器を構成するカートンに設けた穴部に嵌装し、前記係止部によって前記穴部に係止させ、前記カートンに固着する、可塑性樹脂からなる容器の注出口において、前記係止部は、複数のリブからなるとともに、前記取付部の少なくとも3箇所に配設することを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の容器の注出口において、前記リブは、該リブの上端にテーパを設けることを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の容器の注出口において、前記リブの外径の先端は、前記穴部の周縁の外方に位置することを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の容器の注出口において、前記リブの外径は、前記取付部より、0.2mm〜1.0mmとする。
【0009】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の容器の注出口において、前記リブは、該リブの上端部に、外方に膨出する膨出部を備えることを特徴とする。
【0010】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の容器の注出口において、前記膨出部は、該膨出部の先端を、前記リブの外径の先端より外方に位置させるとともに、その膨出量は、0.05mm〜0.3mmとする。
【0011】
請求項7に記載の発明は、請求項1に記載の容器の注出口において、前記リブの各箇所は、2の突起からなるとともに、該突起は、前記取付部に角度θをもって左右対称に備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、筒状のノズル部と、このノズル部下方の取付部に設けた係止部とを備え、容器を構成するカートンに設けた穴部に嵌装し、係止部によって穴部に係止させ、カートンに固着する、可塑性樹脂からなる容器の注出口において、係止部は、複数のリブからなるとともに、取付部の少なくとも3箇所に配設するので、金型成形により注出口を無理抜きした場合でも係止部の変形を防ぎ、これら係止部が少なくとも3箇所からカートンの穴部周縁を確実に係止することができる。従って、生産性に優れた容器の注出口を提供することができる。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、リブは、このリブの上端にテーパを設けるので、リブにカートンの穴部を容易に案内させてカートンを係止することができる。従って、使用性に優れた容器の注出口を提供することができる。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、リブの外径の先端は、穴部の周縁の外方に位置するので、リブにカートンの穴部周縁を嵌合させる際、穴部周縁が湾曲させたリブの応力によりリブに確実に係止することができる。従って、生産性に優れた容器の注出口を提供することができる。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、リブの外径は、取付部より、0.2mm〜1.0mmとするので、リブに適度な湾曲性を与えるとともに、リブと穴部との遊びを適度に小さくして取付部の位置決めを容易にし、リブをカートンの穴部周縁に、この穴部周縁を破損させることなく、かつ、確実に嵌合係止可能に挿入させることができる。従って、生産性に優れた容器の注出口を提供することができる。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、リブは、リブの上端部に、外方に膨出する膨出部を備えるので、リブに嵌合し係止させたカートンの穴部周縁を、この膨出部でリブに固定するとともに、リブからの脱着を防止することができる。従って、生産性に優れた容器の注出口を提供することができる。
【0017】
請求項6に記載の発明によれば、膨出部は、この膨出部の先端を、リブの外径の先端より外方に位置させるとともに、その膨出量は、0.05mm〜0.3mmとするので、金型から離型させる際に形状を損なうことなく形成されるとともに、穴部周縁を確実に固定でき、よりいっそうリブからの脱着を防止することができる。従って、生産性に優れた容器の注出口を提供することができる。
【0018】
請求項7に記載の発明によれば、リブの各箇所は、2の突起からなるとともに、この突起は、取付部に角度θをもって左右対称に備えるので、穴部を嵌合させたとき、2つの突起がそれぞれ反対方向に湾曲し、カートンを、よりバランスよく確実に取付部に係止させることができる。従って、生産性に優れた容器の注出口を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ本発明を実施するための最良の形態について説明する。
図1は本発明の一実施例を示す、注出部を備える容器の全体斜視図、図2は注出部の拡
大斜視図、図3は蓋部を取外した注出口の拡大斜視図、図4は注出口の平面図、図5は注
出口の断面正面図、図6は注出口における係止部にカートンを係止させた、注出口の一側
の拡大側面図、図7は膨出部を示すリブの断面側面図、図8はリブの湾曲によるカートン
の係止を示す注出口の平面模式図である。
【0020】
本発明の容器1は、図1に示すように、例えば、牛乳、ジュース、酒など液状の内容物を収容するための本体2と、この本体2の上部における傾斜屋根の適宜位置に取付けられた、本体2内の内容物を注出させる注出口3およびこの注出口3に着脱可能に備えられた蓋部4からなる注出部5とから構成される。
【0021】
本体2は、例えば、紙繊維が長いものからなる腰の強い原紙の表面に外側ポリエチレン層および原紙の裏面に順に、層間ポリエチレン層、アルミニウム層、内側ポリエチレン層をそれぞれ積層したカートンで構成される。
【0022】
また、上記層間ポリエチレン層の代わりにアイオノマー樹脂を用いたものや、内側ポリエチレン層の内側にさらにポリエステル層およびポリエチレン層を積層させることもできる。さらには、層間ポリエチレン層の代わりとして、延伸ポリエステル、延伸ナイロン、未延伸ナイロン、延伸ポリプロピレン、未延伸ポリプロピレンのいずれかの層を積層させることもできる。そして、アルミニウム層は蒸着層であってもよい。なお、カートンの材質は周知であり、上記は一例を示したに過ぎず、その材質は限定されない。
【0023】
そして、本体2は、上述したような材質からなり、長方形などの形状を有するカートンを、周知の方法により組み立て、側部および底部を閉鎖するとともに、頂部は切妻型に閉鎖してもよい。なお、この頂部の傾斜屋根におけるカートンの任意位置には、内容物を注出する後述の注出口3を取付けるための、例えば、円形の開口した穴部6が設けられる。 なお、本体2の形状は上述に限定されるものではなく、穴部6に注出口3が取付けられたものであれば、どのような形状であってもよい。
【0024】
次に、注出口3は、図3に示すように、中空の、例えば、円筒形状(限定されない)を有するものであり、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリプロピレン(PP)などの材質(限定されない)からなる。
【0025】
この注出口3は、図4に示すように、例えば、上部の外周に螺旋溝3fなどを備えるノズル部3aと、底部の、側方に張り出したフランジ3bと、ノズル部3aの内部であって、ノズル部3aを閉じる遮蔽部3cと、この遮蔽部3cの一部を開封するための環状の薄肉部3dと、この薄肉部3dを開封するためのプルタブ3eとから構成される。
【0026】
また、図2に示すように、蓋部4は、内周に螺旋溝4aを有し、ノズル部3aに螺合可能とする、下端を開口するとともに、上端を閉鎖した、注出口3に着脱自在に装着可能なキャップであり、限定しないが、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリプロピレン(PP)などの可塑性樹脂からなる。なお、注出口3への蓋部4の装着方法は上述した螺合に限定されず、嵌合など適宜方法を用いることができる。
【0027】
従って、内容物を収容し、本体2の穴部6に取付けた注出部5から内容物を注出する際には、蓋部4を取外した後、注出口3のプルタブ3eを引き上げて薄肉部3dを破断することで、ノズル部3aの内部を開口し、この注出口3から内容物を注出する。また、注出後は、ノズル部3aに蓋部4を螺合などにより再び装着する構成とされる。
【0028】
次に、本願発明における、注出口の係止部について、その具体的構成を説明する。まず、図4〜5に示すように、注出口3のノズル部3aと、フランジ3bとの間には、この注出口3を、本体2の穴部6周縁に係止させるための係止部7を設けた、取付部3gが形成される。なお、取付部3gの外径は、穴部6の内径に略等しい、もしくは若干小さなものとする。
【0029】
この係止部7は、取付部3gの周面から外方に向け、かつ、縦方向全高に亘って並設した2本のリブ7aからなり、取付部3gの周面の少なくとも3箇所以上(図中では4箇所)に均等に配設させることが好ましい。このリブ7aの上端には、図7に示すような、穴部6周縁の外方に向けて高さが低くなるように、適度な勾配を有するテーパtが設けられる。
【0030】
また、リブ7aの外径l(リブ7aの基端から先端までの長さで、リブ7aの本体であり、後述する膨出部8を含まない)は、リブ7aの先端を、穴部6の周縁の外方に位置させる、リブ7aの基端から0.2mm〜1.0mmとすることが好ましい。
【0031】
さらに、リブ7aの上端部には、外方に膨出させた膨出部8が設けられる。この膨出部8は、膨出部8の先端を、リブ7aの先端より外方に位置させるとともに、その膨出量は、リブ7aの先端から0.05mm〜0.3mmとすることが好ましい。
【0032】
ここで、上記のような構成にした、キャップ4と本体2の組合体である注出口3を、本体2の穴部6に取付けるには、まず、本体2の組立工程において、穴部6下方からキャップ4を取付けた状態の注出口3を、穴部6内に挿入する。
【0033】
このとき、穴部6の周縁が、注出口3における取付部3gの係止部7に当接するが、穴部6の周縁のカートンが、各係止部7におけるリブ7aのテーパtに案内されつつ、図8に示すように、リブ7aを湾曲させることにより、リブ7aの外径が一時的に短くなったところで、取付部3gの係止部7がカートンの穴部周縁に挿入可能となり、湾曲したリブ7aの応力により、係止部7が穴部6周縁に確実に嵌合される。しかも、係止部7が、少なくとも3箇所以上から面状にカートンの穴部6周縁を係止するため、係止部7が穴部6周縁を、強く確実に係止することができる。
【0034】
このとき、フランジ3bの上面を、穴部6周辺のカートン内面に接着固定することで、本体2に注出口3を安定、かつ確実に取付けることができる。
【0035】
また、リブ7aの外径を、取付部3gから(カートンの穴径に対して)0.2mm〜1.0mmとするので、リブに適度な湾曲性を与えるとともに、リブと穴部との遊びを適度に小さくして取付部の位置決めを容易にし、リブ7aをカートンの穴部6周縁に、この穴部6周縁を破損させることなく、かつ、確実に嵌合係止可能に挿入させることができる。
【0036】
さらに、リブ7aの上端部には、外方に膨出する膨出部8を備えるので、リブ7aに嵌合し係止させたカートンの穴部6周縁を、この膨出部8でリブ7aに固定するとともに、リブ7aからの脱着を防止することができる。
【0037】
そして、この膨出部8の先端を、リブ7aの先端より外方に位置させるとともに、の膨出量を、リブ7aの先端から0.05mm〜0.3mmとするので、カートンの穴部6周縁を破損させることなく、穴部6周縁を確実に固定できるとともに、リブ7aからの脱着を防止することができる。
【0038】
このような係止部7を設けた注出口3にすることで、注出口3を金型成形により製造するとき、溶融樹脂を冷却固化後、形成された注出口3を、金型から無理抜きしても、係止部7は変形や破損することがなく、上述のようにカートンの穴部6周縁に注出口3を取付ける際に係止部7がカートンの穴部6周縁を確実に係止することができる。
【0039】
従って、金型から、成形した注出口3を取り出す工程として、従来のスライド構造に代えて無理抜き式にできるため、所定の金型からの注出口3の取り数(成形個数)を増やす(例えば、スライド構造の場合は、所定の金型に16個の注出口3の型を設定できるのに対して、無理抜き式では32個の注出口3の型を設定できる)ことができるため、成形サイクルの短縮および、コストダウンが可能となり、生産性を向上させることができる。
【0040】
以下に、周知技術である無理抜き式による金型成形での、注出口3の成形方法を簡単に説明する。図9は無理抜き式による金型成形での注出口の成形工程を、金型の一部で示した説明図である。
【0041】
図9において、まず(a)に示すように、金型部イ〜ホからなる金型9の樹脂ゲート口10から、溶融樹脂を充填(b)した後、(c)のように金型部イ,ロが、注出口3のノズル部3a方向(注出口3の縦方向)に抜かれる。そして、(d)に示すように、ノズル部3a側面に位置し、係止部7に接する金型部ハが、注出口3のノズル部3a方向に無理抜きされた後、(e)のように金型部ニが、成形した注出口3を突き上げて、注出口3が取り出される。
【0042】
このような構成により、上述したように、注出口3の係止部7を変形させず確実に成形できるとともに、成形サイクルの短縮および、コストダウンが可能となり、生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施例を示す、注出部を備える容器の全体斜視図である。
【図2】注出部の拡大斜視図である。
【図3】蓋部を取外した注出口の拡大斜視図である。
【図4】注出口の平面図である。
【図5】注出口の断面正面図である。
【図6】注出口における係止部にカートンを係止させた、注出口の一側の拡大側面図である。
【図7】膨出部を示すリブの断面側面図である。
【図8】リブの湾曲によるカートンの係止を示す注出口の平面模式図である。
【図9】無理抜き式による金型成形での注出口の成形工程を、金型の一部で示した説明図である。
【符号の説明】
【0044】
1 容器
2 本体
3 注出口
3a ノズル部
3b フランジ
3c 遮蔽部
3d 薄肉部
3e プルタブ
3f,4a 螺旋溝
3g 取付部
4 蓋部
5 注出部
6 穴部
7 係止部
7a リブ
8 膨出部
9 金型
10 樹脂ゲート口
l 外径
t テーパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のノズル部と、
該ノズル部下方の取付部に設けた係止部と、を備え、
容器を構成するカートンに設けた穴部に嵌装し、前記係止部によって前記穴部に係止させ、前記カートンに固着する、可塑性樹脂からなる容器の注出口において、
前記係止部は、複数のリブからなるとともに、
前記取付部の少なくとも3箇所に配設することを特徴とする容器の注出口。
【請求項2】
前記リブは、該リブの上端にテーパを設けることを特徴とする、請求項1に記載の容器の注出口。
【請求項3】
前記リブの外径の先端は、前記穴部の周縁の外方に位置することを特徴とする、請求項1に記載の容器の注出口。
【請求項4】
前記リブの外径は、前記取付部より、0.2mm〜1.0mmとする、請求項3に記載の容器の注出口。
【請求項5】
前記リブは、該リブの上端部に、外方に膨出する膨出部を備えることを特徴とする、請求項1に記載の容器の注出口。
【請求項6】
前記膨出部は、該膨出部の先端を、前記リブの外径の先端より外方に位置させるとともに、その膨出量は、0.05mm〜0.3mmとする、請求項5に記載の容器の注出口。
【請求項7】
前記リブの各箇所は、2の突起からなるとともに、該突起は、前記取付部に角度θをもって左右対称に備えることを特徴とする、請求項1に記載の容器の注出口。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−126161(P2010−126161A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−299030(P2008−299030)
【出願日】平成20年11月25日(2008.11.25)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【出願人】(000175397)三笠産業株式会社 (71)
【Fターム(参考)】