説明

容器入り冷凍食品および容器入り冷凍食品の製造方法

【課題】容器内の飲食物に加熱むらが生じない電子レンジ用容器を提供することと、だし汁のある容器入り冷凍食品の食感が損なわれないようにすることである。
【解決手段】周壁2の外周にマイクロ波を遮蔽する金属製の遮蔽部材4を設けて、遮蔽部材4をマイクロ波を通す材料で形成されたカバー部材5で覆い、周壁2から離れた底の中央部に周壁2と略等しい高さで突起する突起部3を設けることにより、突起部3のアンテナ効果によってマイクロ波を集めて、容器1の中央部の食品を積極的に加熱するとともに、周壁2の外周の遮蔽部材4で周壁2からの加熱を抑制して、容器1内の飲食物に加熱むらが生じないようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子レンジ用容器と容器入り冷凍食品およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子レンジでミルク、酒等の飲み物や、おかず類、麺類等の食べ物の飲食物を加熱する電子レンジ用容器には、マイクロ波を通す樹脂や陶器等の材料で周壁のある皿状または椀状に形成されたものが多く使用されている。また、近年は、このような電子レンジ用容器に冷凍食品を入れ、そのまま電子レンジで解凍、加熱できるようにした容器入り冷凍食品も多く製造されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載された容器入り冷凍食品は、玉子丼、親子丼、他人丼、木の葉丼、天津丼、玉子とじうどん、ニラ入り玉子とじ等に用いられる玉子入り冷凍食品であり、電子レンジで加熱調理したときに、玉子が半熟状態となるように、卵白と卵黄を混合した混合液を、加熱調理した具およびだし汁とともに容器に入れて凍結させている。
【0004】
【特許文献1】特開平8−116941号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した周壁のある皿状や椀状に形成された従来の電子レンジ用容器は、電子レンジのマイクロ波がアンテナ効果によって高くなった周壁に集まりやすいので、容器内の外周部の飲食物が優先的に加熱され、中央部の飲食物が加熱不足となる加熱むらが生じる問題がある。
【0006】
また、特許文献1に記載された容器入り冷凍食品は、加熱調理した具を玉子やだし汁と一緒に凍結することにより、電子レンジでの加熱時間を短くして、玉子を半熟状態とすることができるが、玉子を具やだし汁と一緒に凍結しているので、具やだし汁の塩分等の成分やだし汁の水分が凍結前に玉子に混じり込み、半熟玉子の食感が損なわれる問題がある。上述した加熱むらによって、外周部の玉子が半熟状態よりも煮え過ぎたり、中央部の玉子が未半熟となったりする問題もある。
【0007】
そこで、本発明の課題は、容器内の飲食物に加熱むらが生じない電子レンジ用容器を提供することと、だし汁のある容器入り冷凍食品の食感が損なわれないようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の電子レンジ用容器は、マイクロ波を通す材料で周壁のある皿状または椀状に形成され、内部に入れられる飲食物を電子レンジで加熱する電子レンジ用容器において、前記周壁の外周にマイクロ波を遮蔽する金属製の遮蔽部材を設けて、この遮蔽部材をマイクロ波を通す材料で形成されたカバー部材で覆い、前記周壁から離れた底の中央部に周壁と略等しい高さで突起する少なくとも一つの突起部を設けた構成を採用した。
【0009】
すなわち、周壁の外周にマイクロ波を遮蔽する金属製の遮蔽部材を設けて、この遮蔽部材をマイクロ波を通す材料で形成されたカバー部材で覆い、周壁から離れた底の中央部に周壁と略等しい高さで突起する少なくとも一つの突起部を設けることにより、中央部の突起部のアンテナ効果によってマイクロ波を集めて、容器の中央部の食品を積極的に加熱するとともに、周壁の外周の遮蔽部材で周壁からの加熱を抑制して、容器内の飲食物に加熱むらが生じないようにした。なお、金属製の遮蔽部材をカバー部材で覆ったのは、電子レンジでのスパークの発生を防止するためである。
【0010】
前記周壁の輪郭を角部のない滑らかなものとすることにより、角部へのマイクロ波の集中をなくして、容器の外周側からの加熱を均一にすることができる。角部のない周壁の輪郭としては、円形、楕円形、長円形、コーナ部を丸めた多角形等がある。
【0011】
また、本発明の容器入り冷凍食品は、食材とだし汁とからなり、マイクロ波を通す材料で周壁のある皿状または椀状に形成された容器に入れて凍結され、電子レンジで解凍、加熱される容器入り冷凍食品において、前記容器を上述したいずれかの電子レンジ用容器とし、前記食材とだし汁を別々に凍結し、凍結しただし汁を前記電子レンジ用容器の下側に入れ、その上側に凍結した食材を入れた構成を採用した。
【0012】
すなわち、容器を上述したいずれかの電子レンジ用容器として、食材とだし汁を別々に凍結し、凍結しただし汁を電子レンジ用容器の下側に入れ、その上側に凍結した食材を入れることにより、容器内の食材とだし汁に加熱むらが生じないようにするとともに、食材が解凍されるまで、だし汁の塩分等の成分や水分が食材に混じり込まないようにして、冷凍食品の食感が損なわれないようにした。
【0013】
前記だし汁は加熱調理された具を含むものとすることができる。
【0014】
前記食材は、生玉子またはその蛋白質が変性しない程度に予備加熱された玉子とすることができる。また、凍結前の玉子は、卵白と卵黄を混ぜてもよいし、混ぜなくてもよい。
【0015】
前記蛋白質が変性しない程度に予備加熱された玉子をジュール加熱で予備加熱されたものとすることにより、ジュール熱による内部加熱によって、玉子を均一に予備加熱することができ、内部まで満遍なく殺菌することができる。また、電子レンジでの加熱時間も短縮することができる。なお、玉子の蛋白質は50〜60℃で変性するので、これよりも低い温度に予備加熱するとよい。
【0016】
さらに、本発明の容器入り冷凍食品の製造方法は、食材とだし汁とをマイクロ波を通す材料で周壁のある皿状または椀状に形成された容器に入れて凍結し、電子レンジで解凍、加熱される容器入り冷凍食品の製造方法において、前記容器を上述したいずれかの電子レンジ用容器として、前記食材とだし汁を別々に凍結し、凍結しただし汁を前記電子レンジ用容器の下側に入れ、その上側に凍結した食材を入れる方法を採用することにより、容器内の食材とだし汁に加熱むらが生じないようにするとともに、食材が解凍されるまで、だし汁の塩分等の成分や水分が食材に混じり込まないようにして、冷凍食品の食感が損なわれないようにした。
【0017】
前記食材とだし汁を別々に凍結し、凍結しただし汁を電子レンジ用容器の下側に入れ、その上側に凍結した食材を入れる手段は、だし汁を容器に入れて先に凍結し、その後からこれらの上に入れた食材を凍結する方法が簡便である。食材やだし汁を容器の突起部を回避する形状に容器の外で凍結するようにし、これらを凍結した後で容器内へ上下に入れることもできる。
【0018】
前記だし汁は加熱調理された具を含むものとすることができる。
【0019】
前記食材は生玉子またはその蛋白質が変性しない程度に予備加熱された玉子とすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の電子レンジ用容器は、周壁の外周にマイクロ波を遮蔽する金属製の遮蔽部材を設けて、この遮蔽部材をマイクロ波を通す材料で形成されたカバー部材で覆い、周壁から離れた底の中央部に周壁と略等しい高さで突起する少なくとも一つの突起部を設けたので、容器内の飲食物に加熱むらが生じないようにすることができる。
【0021】
前記周壁の輪郭を角部のない滑らかなものとすることにより、容器の外周側からの加熱を均一にすることができる。
【0022】
また、本発明の容器入り冷凍食品は、容器を上述したいずれかの電子レンジ用容器として、食材とだし汁を別々に凍結し、凍結しただし汁を電子レンジ用容器の下側に入れ、その上側に凍結した食材を入れたので、容器内の食材とだし汁に加熱むらが生じないようにできるとともに、冷凍食品の食感が損なわれないようにすることができる。
【0023】
前記食材を蛋白質が変性しない程度にジュール加熱で予備加熱された玉子とすることにより、玉子を均一に予備加熱することができ、内部まで満遍なく殺菌することができる。また、電子レンジでの加熱時間も短縮することができる。
【0024】
さらに、本発明の容器入り冷凍食品の製造方法は、容器を上述したいずれかの電子レンジ用容器として、食材とだし汁を別々に凍結し、凍結しただし汁を電子レンジ用容器の下側に入れ、その上側に凍結した食材を入れるようにしたので、容器内の食材とだし汁に加熱むらが生じないようにできるとともに、冷凍食品の食感が損なわれないようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図面に基づき、本発明の実施形態を説明する。図1および図2は、電子レンジ用容器1の実施形態を示す。この電子レンジ用容器1は、電子レンジのマイクロ波を通す無機物を混ぜたポリプロピレンで皿状に形成され、周壁2の輪郭が円形とされて、底の中心部に周壁2と略等しい高さの円錐状の突起部3が設けられており、周壁2の外周にはマイクロ波を遮蔽するアルミニウム箔で形成された遮蔽部材4が取り付けられ、さらにその外周に、遮蔽部材4を覆うカバー部材5が取り付けられている。カバー部材5は、容器1と同じ無機物を混ぜたポリプロピレンで形成されている。
【0026】
前記周壁2の上端には、ラップ(図示省略)が取り付けられる外向きのフランジ部6aが設けられ、周壁2の上部と底の外周部には、それぞれ段差部7a、8aが設けられており、遮蔽部材4は周壁2の段差部7aの下側から底の段差部8aの外周側までを遮蔽するように取り付けられている。なお、突起部3はラップの邪魔とならないように、周壁2よりも少し低く形成されている。ラップをしない場合は、周壁2より少し高く形成してもよい。
【0027】
前記カバー部材5は、容器1の底の中央部を除いて容器1の外側に重なり合うように、フランジ部6bと周壁の上部および底の外周部の段差部7b、8bとが設けられている。なお、遮蔽部材4を容器1の底側まで回り込ませたのは、容器1への取り付けを容易にするためであり、遮蔽部材4は周壁2側のみを遮蔽するものとしてもよい。
【0028】
図3(a)、(b)は、それぞれ前記電子レンジ用容器1の変形例を示す。図3(a)は、周壁2の輪郭を正四角形の各コーナ部を滑らかに丸めたものとし、その底の中心部に突起部3を設けたもの、図3(b)は、周壁2の輪郭を長円形とし、長円の各円弧部の中心部に2つの突起部3を設けたものである。いずれの変形例もその他の部分は実施形態のものと同じであり、周壁2の上端にはフランジ部6aが設けられ、周壁2の上部と底の外周部には、それぞれ段差部7a、8aが設けられている。また、図示は省略するが、これらの周壁2の外周にはマイクロ波を遮蔽する遮蔽部材が取り付けられ、さらにその外周に遮蔽部材を覆うカバー部材が取り付けられている。
【0029】
図4は、前記電子レンジ用容器1を用いた容器入り冷凍食品を示す。この容器入り冷凍食品は、食材としての玉子11と鶏肉等の具12を含むだし汁13とから成り、電子レンジで解凍、加熱される親子丼用の冷凍食品であり、容器1の下側に、凍結された具12とだし汁13が入れられ、その上側に別に凍結された玉子11が入れられている。
【0030】
したがって、前記容器1の底部の突起部3のアンテナ効果によってマイクロ波が集められ、容器1の中央部の食品が積極的に加熱されるとともに、遮蔽部材4で周壁2からの加熱が抑制され、容器1内の食品に加熱むらが生じないようにすることができ、玉子11も均等に半熟状態にすることができる。
【0031】
前記玉子11は、卵白と卵黄を混ぜて、その蛋白質が変性しない程度にジュール加熱で予備加熱したものであり、具12も予め加熱調理されている。この実施形態では、具12とだし汁13を容器1に入れて先に凍結した後、その上から玉子11を容器1に入れて凍結している。したがって、電子レンジで解凍されるまで、具12やだし汁13の塩分等の成分やだし汁13の水分が玉子11に混じり込むことはない。
【0032】
上述した実施形態では、電子レンジ用容器を皿状として、冷凍食品を解凍、加熱するものとしたが、本発明に係る電子レンジ用容器は、冷凍食品以外の食べ物や飲み物を加熱するものとすることもでき、椀状のものとすることもできる。また、容器を無機物を混ぜたポリプロピレンで形成し、周壁の遮蔽部材をアルミニウム箔としたが、容器は電子レンジのマイクロ波を通し、ある程度の耐熱性を有するのであればよく、他の種類の樹脂や、ガラス、陶器等によって形成することもでき、遮蔽部材は他の金属の箔や細かいメッシュ等で形成することもできる。
【0033】
上述した実施形態では、容器入り冷凍食品を玉子を食材とする親子丼用のものとし、具を含むだし汁を容器に入れて先に凍結した後、その上から玉子を容器に入れて凍結したが、玉子やだし汁を容器の突起部を回避する形状に容器の外で凍結し、これらを凍結した後で容器内へ上下に入れることもできる。また、本発明に係る容器入り冷凍食品は親子丼用のものに限定されることはなく、玉子を食材とする他の玉子丼、他人丼、木の葉丼、天津丼、玉子とじうどん、ニラ入り玉子とじ等用のものとすることもでき、玉子を食材としないものや、だし汁付きのうどん等とすることもできる。
【0034】
上述した実施形態では、玉子を卵白と卵黄を混ぜて、その蛋白質が変性しない程度にジュール加熱で予備加熱したものとしたが、玉子は生の状態のものとしてもよく、卵白と卵黄を混ぜないものとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】電子レンジ用容器の実施形態を示す縦断面図
【図2】図1の平面図
【図3】a、bは、それぞれ図2の容器の変形例を示す平面図
【図4】図1の容器を用いた容器入り冷凍食品の実施形態を示す縦断面図
【符号の説明】
【0036】
1 容器
2 周壁
3 突起部
4 遮蔽部材
5 カバー部材
6a、6b フランジ部
7a、7b 段差部
8a、8b 段差部
11 玉子
12 具
13 だし汁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波を通す材料で周壁のある皿状または椀状に形成され、内部に入れられる飲食物を電子レンジで加熱する電子レンジ用容器において、前記周壁の外周にマイクロ波を遮蔽する金属製の遮蔽部材を設けて、この遮蔽部材をマイクロ波を通す材料で形成されたカバー部材で覆い、前記周壁から離れた底の中央部に周壁と略等しい高さで突起する少なくとも一つの突起部を設けたことを特徴とする電子レンジ用容器。
【請求項2】
前記周壁の輪郭を角部のない滑らかなものとした請求項1に記載の電子レンジ用容器。
【請求項3】
食材とだし汁とからなり、マイクロ波を通す材料で周壁のある皿状または椀状に形成された容器に入れて凍結され、電子レンジで解凍、加熱される容器入り冷凍食品において、前記容器を請求項1または2に記載された電子レンジ用容器として、前記食材とだし汁を別々に凍結し、凍結しただし汁を前記電子レンジ用容器の下側に入れ、その上側に凍結した食材を入れたことを特徴とする容器入り冷凍食品。
【請求項4】
前記だし汁が加熱調理された具を含むものである請求項3に記載の容器入り冷凍食品。
【請求項5】
前記食材が生玉子またはその蛋白質が変性しない程度に予備加熱された玉子である請求項3または4に記載の容器入り冷凍食品。
【請求項6】
前記蛋白質が変性しない程度に予備加熱された玉子をジュール加熱で予備加熱されたものとした請求項5に記載の容器入り冷凍食品。
【請求項7】
食材とだし汁とをマイクロ波を通す材料で周壁のある皿状または椀状に形成された容器に入れて凍結し、電子レンジで解凍、加熱される容器入り冷凍食品の製造方法において、前記容器を請求項1または2に記載された電子レンジ用容器として、前記食材とだし汁を別々に凍結し、凍結しただし汁を前記電子レンジ用容器の下側に入れ、その上側に凍結した食材を入れるようにしたことを特徴とする容器入り冷凍食品の製造方法。
【請求項8】
前記だし汁を加熱調理された具を含むものとした請求項7に記載の容器入り冷凍食品の製造方法。
【請求項9】
前記食材を生玉子またはその蛋白質が変性しない程度に予備加熱された玉子とした請求項7または8に記載の容器入り冷凍食品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−132450(P2009−132450A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−114792(P2008−114792)
【出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【特許番号】特許第4240336号(P4240336)
【特許公報発行日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【出願人】(300086632)アイン食品 株式会社 (4)
【Fターム(参考)】