説明

容器封入食品の製造方法

【課題】 製造途中で容器内の水がこぼれたり穴開け治具が容器内に落下するようなことがなく、且つ品質ムラを生じずに加熱処理を行うことができる容器封入食品の製造方法を提供すること。
【解決手段】 食品1を容器2内に入れ、この食品1入り容器2を、連通孔3を穿設した一次フィルム4で封止して容器封入食品Aとし、この容器封入食品Aを、蒸気流入部5と蒸気排出部6とを備えた加熱容体7内に配置し、前記蒸気流入部5から加熱容体7内に水蒸気を流入せしめると共に、この水蒸気を前記蒸気排出部6から排出しながら容器封入食品Aを加熱処理した後、前記一次フィルム4の上から前記連通孔3を覆うようにして二次フィルム8を止着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、パック詰ご飯などの容器封入食品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パック詰ご飯などの容器封入食品は、容器に一食分の米を入れて加熱処理(完全調理若しくは半調理)し、容器をフィルムで封止して完成する。
【0003】
ところで、出願人は、これまでに食品に高圧処理を施すことをテーマにした種々の特許出願を行っているが、この高圧処理は基本的に静水圧による高圧処理を用いるため、この高圧処理に際しては被処理物を水没させなければならず、予め密封包装する必要がある。
【0004】
また、高圧処理の有無にかかわらず、予め食品を入れた容器をフィルムで封止しておくことは、次工程へ移行する際に容器内に雑菌等が浸入することを防ぐことができたり、容器内の水等がこぼれなくなったりするために非常に有効である。
【0005】
しかし、このように予め容器を密封してしまうと、密封後に加熱処理を要するような食品の場合には密封容器内で加熱による蒸気が発生し、内圧が高くなって破裂してしまう可能性があるため、密封容器に蒸気の逃し孔を形成してから加熱処理を行う(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
【特許文献1】特開2000−32965号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1においては、食品を収納した容器をフィルムで封止した後、このフィルムに上方から穴開け治具で逃し孔を形成しているが、この際に穴開け治具がフィルムを下方へ押し付けるために、容器内の水がこぼれたり、穴開け治具が容器内に落下する危険性があった。
【0008】
ところで、このような容器封入食品を100℃以上に加熱して殺菌並びに調理する場合は、一般的に加熱加圧器が用いられる。この加熱加圧器には安全弁が装着されており、所定の圧力に達すると安全弁が開き、過剰な水蒸気を逃す働きをする。
【0009】
しかし、加熱加圧器内が設定圧力に達するまでは安全弁が開かないので、加熱加圧器内での蒸気の流動性が悪く、加熱し初めは加熱源(例えば、コンロ)に最も近い加熱加圧器内の底部から伝熱されることになるため、加熱加圧器内の上部との温度差が激しく、加熱加圧器の下部に配置されたものと上部に配置されたものとでは、品質にムラ(加熱ムラ)を生じてしまう問題があった。
【0010】
本発明は、このような現状に鑑み、製造途中で容器内の水がこぼれたり穴開け治具が容器内に落下するようなことがなく、且つ品質ムラを生じずに加熱処理を行うことができる画期的な容器封入食品の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0012】
食品1を容器2内に入れ、この食品1入り容器2を、連通孔3を穿設した一次フィルム4で封止して容器封入食品Aとし、この容器封入食品Aを、蒸気流入部5と蒸気排出部6とを備えた加熱容体7内に配置し、前記蒸気流入部5から加熱容体7内に水蒸気を流入せしめると共に、この水蒸気を前記蒸気排出部6から排出しながら容器封入食品Aを加熱処理した後、前記一次フィルム4の上から前記連通孔3を覆うようにして二次フィルム8を止着することを特徴とする容器封入食品の製造方法に係るものである。
【0013】
また、前記加熱処理に際して、前記蒸気流入部5からの水蒸気流入量を調整することにより前記加熱容体7内の加熱温度制御を行うことを特徴とする請求項1記載の容器封入食品の製造方法に係るものである。
【0014】
また、カバー体9で覆った前記容器封入食品Aを前記加熱容体7内に配置し、このカバー体9に向けて前記蒸気流入部5から水蒸気を流入させて加熱処理することを特徴とする請求項1,2のいずれか1項に記載の容器封入食品の製造方法に係るものである。
【0015】
また、勾配屋根9Aを有する前記カバー体9で前記容器封入食品Aを覆うことを特徴とする請求項3記載の容器封入食品の製造方法に係るものである。
【0016】
また、前記一次フィルム4に、U字状若しくはV字状若しくはX字状の切り込み3を形成してこの切り込み3を前記連通孔3としたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の容器封入食品の製造方法に係るものである。
【0017】
また、前記連通孔3は、切断具により一次フィルム4に前記切り込み3を形成すると同時に切り込み3の切断片3Aに上向きのくせ付けを行うか若しくは、切り込み3を形成した後、この切り込み3の切断片3Aに上向きのくせ付けを行うことを特徴とする請求項5記載の容器封入食品の製造方法に係るものである。
【0018】
また、1000気圧以上の高圧処理を施した食品1を容器2内に入れ、この食品1入り容器2を、連通孔3を穿設した一次フィルム4で封止して容器封入食品Aとすることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の容器封入食品の製造方法に係るものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明は上述のように、予め連通孔が形成された一次フィルムで食品入り容器を封止するため、従来のように穴開け治具がフィルムを下方へ押し付けることで容器内の水がこぼれたり、穴開け治具が容器内に落下したりするようなことはない上、製造ラインの移送装置の動作速度を高速化して生産効率の向上を図ることもでき、しかも、安全弁を備えた既存の加熱加圧器を用いて加熱処理するのではなく、本発明では、蒸気流入部と蒸気排出部とを備えた加熱容体を用い、蒸気流入部から水蒸気を加熱容体内に流入しつつ、この水蒸気を蒸気排出部から排出しながら容器封入食品を加熱処理するので、加熱容体内では水蒸気が良好に流動してどの領域でも温度差を生じにくく略均一の温度に保持されることになり、これにより容器緒封入食品を加熱容体内に多量に収納して加熱処理を行う場合であっても、各容器封入食品は略均一の温度で加熱処理されることになるので、品質にムラ(加熱ムラ)のない製品を多数製造可能となるなど、極めて実用性に秀れた画期的な容器封入食品の製造方法となる。
【0020】
また、請求項2記載の発明においては、加熱容体内への水蒸気の流量を調整することで加熱処理温度を容易に調整可能であり、更に、水蒸気の流量調整により加熱容体内を常圧以上に加圧して、既存の加熱加圧器と同様に100℃以上の温度での加熱処理も可能であるなど、一層実用性に秀れた容器封入食品の製造方法となる。
【0021】
また、請求項3記載の発明においては、容器封入食品をカバー体で覆い、このカバー体に向けて水蒸気を流入して加熱処理するので、加熱処理に際して発生する水(ドレン)はカバー体に付着し易く、このカバー体に付着したドレンはカバー体を伝って流れ落ちることになるため、ドレンが一次フィルムの連通孔から容器内に浸入しにくくなる一層実用性に秀れた容器封入食品の製造方法となる。
【0022】
また、請求項4記載の発明においては、勾配屋根付のカバー体で容器封入食品を覆うため、容器封入食品の一次カバーに一層ドレンが付着しにくくなり、且つ勾配屋根の水勾配を、この勾配屋根の内面に付着したドレンがこの内面に沿って伝わり落ちるように勾配設定することで、勾配屋根の内面に付着したドレンが確実に一次カバー上に落下しない構造を簡易に設計実現可能となるので、ドレンが一次フィルムの連通孔から容器内に一層浸入しにくい極めて実用性に秀れた容器封入食品の製造方法となる。
【0023】
また、請求項5記載の発明においては、一次フィルムに円形や角形の貫通孔を形成するのではなく、切断片が残る切り込みを形成してこれを連通孔としたので、切断片の存在によって連通孔が常に大きく開放した状態とはならないために、一次フィルム上に付着した水(ドレン)が連通孔から浸入しにくいこととなり、しかも、単に切り込みを形成するだけでこの連通孔は実現できるので、製作容易であるなど一層実用性に秀れた容器封入食品の製造方法となる。
【0024】
また、請求項6記載の発明においては、切り込みの切断片が上向きにくせ付けられているため、加熱処理に際して一次フィルム上に発生する水(ドレン)がこの上向きの切断片によって切り込みへの浸入を遮られことになるので、この切り込み(連通孔)から容器内へドレンが浸入しにくくなる一層実用性に秀れた容器封入食品の製造方法となる。
【0025】
また、請求項7記載の発明においては、例えば、食品が澱粉を含むものであった場合に、1000気圧以上の高圧処理によって糊化度が向上した美味しい澱粉食品ができあがることになり、しかも、前記特許文献1の構成よりも一回の高圧処理で多量の食品を処理可能となるので、生産効率が向上することになるなど、一層実用性に秀れた容器封入食品の製造方法となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
好適と考える本発明の実施形態(発明をどのように実施するか)を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0027】
食品1を容器2内に入れ、この食品1入り容器2を、連通孔3を穿設した一次フィルム4で封止して容器封入食品Aとする。
【0028】
即ち、従来の特許文献1のように食品を入れた容器をフィルムで封止した後でフィルムに孔を穿設するのではなく、予め連通孔3が形成された一次フィルム4で食品1入り容器2を封止するため、穴開け治具がフィルムを下方へ押し付けることで容器内の水がこぼれたり、穴開け治具が容器内に落下するようなことはない。
【0029】
また、この種容器封入食品Aの一般的な製造ラインでは、容器をベルトコンベア等の移送装置で次工程へと移動するが、この際、容器内に製造ライン中のホコリや異物や空中浮遊菌などが混入する場合があったり、移送装置の反動により容器内の水がこぼれてしまう場合があったり、こぼれることを防止するために動作速度を遅くしたりしなければならなかった。しかし、本発明のように容器2を一次フィルム4で封止しておくことにより、容器2内へのホコリ等の浸入も阻止できるし、移送装置の動作速度を早くしても容器2内の水等がこぼれないため生産効率を向上させることができる。
【0030】
この容器封入食品Aを、蒸気流入部5と蒸気排出部6とを備えた加熱容体7内に配置し、前記蒸気流入部5から加熱容体7内に水蒸気を流入せしめると共に、この水蒸気を前記蒸気排出部6から排出しながら容器封入食品Aを加熱処理し、容器2内の食品1を調理若しくは半調理(消費者が電子レンジ等で加熱することにより調理が完了する調理状態)する。
【0031】
即ち、加熱容体内が所定の圧力に達すると蒸気逃す安全弁を備えた既存の加熱加圧器を用いて加熱処理するのではなく、本発明では、蒸気流入部5から水蒸気を加熱容体7内に流入しつつ、この水蒸気を蒸気排出部6から常に排出しながら容器封入食品Aを加熱処理するので、この加熱容体7内での水蒸気の流動性が良く、よって加熱し初めでも加熱容体1内では温度差を生じ難く、加熱容体7内はどの領域でも略均一の温度に保持される。従って、容器緒封入食品Aを加熱容体7内に多量に収納して加熱処理を行う場合であっても、各容器封入食品Aは略均一の温度で加熱処理されることになり、品質にムラ(加熱ムラ)のない製品を多数製造可能となる。
【0032】
また、この際、加熱されることで容器2内では蒸気が発生して内圧が高くなるが、この蒸気は連通孔3から容器2外へと逃げるので、容器封入食品Aが加熱中に破裂することはない。
【0033】
また、この加熱処理は、前記蒸気流入部5からの蒸気流入量を調整することにより前記加熱容体7内の加熱温度制御を行うことができる。
【0034】
即ち、既存の加熱加圧器においては、加熱温度は安全弁が作動する圧力(安全弁たる錘の重さやバネやネジ)をどのように設定するかによって決まる。そのため、この安全弁の作動を変更するには、重りやバネやネジを一々調理用途・目的に合わせて調整しなければならないが、本発明によれば、例えば、水蒸気を強制的に流入させる装置を用いて水蒸気の流量を多くすればするほど加熱容体7内の内圧が高くなって高い温度での加熱処理が可能となるし、逆に低い温度で加熱する場合には水蒸気の流量を少なくすれば良いなど、この温度調整を容易に行うことが可能である。また、もちろん、水蒸気の流量調整により加熱容体7内を常圧以上に加圧して、既存の加熱加圧器と同様に100℃以上の温度での加熱処理も可能であり、様々な調理用途・目的に対応できる。
【0035】
また、この加熱処理に際して、水蒸気が容器封入食品Aと熱交換を行うと、凝縮して水(ドレン)になり、容器封入食品Aが濡れて連通孔3から容器2内に水が浸入する場合がある。
【0036】
この点を防止するためには、例えば、容器封入食品Aをカバー体9で覆い、このカバー体9に向けて水蒸気を流入させて加熱処理する。これにより、カバー体9にドレンが付着して容器封入食品Aには付着しにくくなるため、容器2内に水が浸入しにくくなる。
【0037】
また、例えば、勾配屋根9Aを有する前記カバー体9で前記容器封入食品Aを覆うようにすれば、容器封入食品Aの一次カバー4に一層ドレンが付着しにくくなり、且つ勾配屋根9Aの水勾配を、この勾配屋根9Aの内面に付着したドレンがこの内面に沿って伝わり落ちるように勾配設定することで、勾配屋根9Aの内面に付着したドレンが確実に一次カバー4上に落下しない構造を簡易に設計実現可能となるので、ドレンが一次フィルム4の連通孔3から容器2内に一層浸入しにくくなる。
【0038】
また、例えば、前記一次フィルム4に、U字状若しくはV字状若しくはX字状の切り込み3を形成してこの切り込み3を前記連通孔3とし、この連通孔3たる切り込み3の切断片3Aに上向きのくせ付けを行うことでも、連通孔3から容器2内への水の浸入を防止できる。
【0039】
即ち、切り込み3の切断片3Aが下向きで一次フィルム4の内側へ入り込んでいるようであると、この切断片3Aを伝って水が容器2内に浸入し易いが、切断片3Aが上向きにくせ付けられていると、この上向きの切断片3Aによって水が切り込み3に流れ込もうとすることが遮られるので、切り込み3から容器2内へ水が浸入しにくくなる。
【0040】
加熱処理終了後、前記一次フィルム4の上から前記連通孔3を覆うようにして二次フィルム8を止着することで、製品完成となる。
【0041】
また、この完成にあたっては、容器2内をガス置換するか若しくは脱酸素材を一緒に封入して保存性を向上させることが望ましいが、この際、前記連通孔3をガスの導入孔・排出孔として利用できるので、ガス置換を容易に行えるし、脱酸素剤を使用する場合には、脱酸素剤を一次フィルム4と二次フィルム8の間に挟み込むようにして封入することで、脱酸素剤の誤食の防止効果が期待できる。
【0042】
また、例えば、食品1が澱粉を含むものであった場合、予め1000気圧以上の高圧処理を施した食品1を容器2内に入れ、この食品1入り容器2を、連通孔3を穿設した一次フィルム4で封止して容器封入食品Aとすれば、高圧処理による圧力履歴が食品1に残り、その後に前記加熱処理を行うことによって、糊化度が向上した美味しい澱粉食品ができあがることになる(詳しくは、特許第3420521号,特開2000−152756号参照。)。
【0043】
また、前記特許文献1として示した特開2000−32965号では、予め容器に米と水を入れて封止した上で高圧処理を行っていたが、この方法の場合は容器毎高圧処理器内に投入する都合上、一回の高圧処理の処理量(容器封入食品Aを高圧処理装置内に一度に投入できる量)がさほど多くない。この点、予め食品1に高圧処理を行ってから容器2内に入れて封止するようにすることにより、高圧処理装置内に容器2を投入しない分多量の食品1を投入して処理できるため、一回の高圧処理による処理効率が著しく向上して生産効率が向上することになる。
【実施例】
【0044】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0045】
本実施例は、上部開口形の浅底容器2内に食品1としての米(以下、米1と称す。)と水を入れ、この容器2の上部開口周縁部全周にフィルムをシール止着して密封したパック詰ご飯(容器封入食品A)を示しており、電子レンジなどの加熱調理器で加熱可能としたパック詰ご飯の製造方法に本発明を適用した場合である。
【0046】
具体的に説明すると、先ず、米1と適量の水とを入れた容器2を、連通孔3を穿設した一次フィルム4で封止して容器封入食品Aとする。尚、水の「適量」とは、消費者が容器封入食品Aを開封する際に、水が不用意に容器2外へ流出するなど取扱性に支障となることのない水量であり、且つ容器2内に、加熱調理に際して米1が水を吸って膨張する余裕を生じる量であって、米3の炊き上がりが良好となる量のことを言う。
【0047】
一次フィルム4は、予め連通孔3を穿設してある。
【0048】
図面では、一次フィルム4の二箇所にU字状の切り込み3を形成してこの夫々の切り込み3を前記連通孔3としている。また、この連通孔3たる切り込み3は、本実施例では一次フィルム4の下方から切断具を上動することで切断形成して、同時にこの切り込み3の切断片3Aに上向きのくせ付けを行い、この切断片3Aが一次フィルム4の下方へ沈み込まないようにしている。この切断片3Aに上向きのくせ付けを行うのは、後述する加熱処理に際して容器封入食品Aと水蒸気とが熱交換を行うと凝縮して水(ドレン)になるが、容器封入食品Aに付着したこのドレンが連通孔3から容器2内に浸入することを防ぐためである。即ち、一次フィルム4上を流れる水滴が、切り込み3を遮るようにして設けられる上向きの切断片3Aに当たることよって連通孔3を避けるように流路を変更され、連通孔3から容器2内に水滴が浸入しにくくなる構成である。
【0049】
尚、この連通孔3は、一次フィルム4にV字状若しくはX字状の切り込み3を形成して構成しても良い。また、その他の形状の連通孔3を形成しても良いが、丸孔や角孔のように常に開放する孔ではなく、切断片3Aを有してこの切断片3Aにより連通孔3を塞ぐことができるような構成として、連通孔3より水を入りにくくすることが好ましい。
【0050】
また、切断片3Aの上向きのくせ付けは、切り込み3の形成と同時に行わずとも、切り込みを形成した後で行っても良い。また、一次フィルム4の上方から切断具を下動することで切り込み3を切断形成し、その後、この切り込み3の切断片3Aに上向きのくせ付けを行っても良い。
【0051】
尚、米1(穀類)に予め1000気圧以上の高圧処理を行ってから加熱処理を行うと、糊化度が高くなり、おいしくなることがわかっているが、この場合、前記特許文献1のように、容器2に米1を詰めてこの容器2ごと処理容体(装置)内に収納して高圧処理を行うより、容器2に詰める前に予め米1だけを処理容体内に収納する方が米1を多量に収納できて一回の高圧処理における米1の処理量が多くなり、その後容器2に詰めるようにする方が生産効率が向上することになるので、好ましい。
【0052】
次いで、この容器封入食品Aを、蒸気流入部5と蒸気排出部6とを備えた加熱容体7内に配置し、前記蒸気流入部5から加熱容体7内に1.0気圧(絶対圧)以上の水蒸気を流入させると共に、この水蒸気を前記蒸気排出部6から排出しながら容器封入食品Aを加熱処理する。
【0053】
本実施例の加熱容体7について説明すると、所定の気体圧力を保持し得る耐圧性と共に断熱性を有する構成とし、内部下方に容器封入食品Aを載置するための棚板7Aを備えている。また、この加熱容体7及び棚板7Aは、例えばステンレス製として耐食性をもたせることが好ましい。
【0054】
また、この加熱容体7の下部に前記蒸気流入部5を設け、加熱容体7の上部に蒸気排出部6を設けている。
【0055】
従って、この下部の蒸気流入部5から、水蒸気が加熱容体7内に流入すると加熱容体7内が加熱されると共に、この加熱容体7内に流入した水蒸気は自然に上部の蒸気排出部6から流出する構成としている。
【0056】
尚、この加熱容体7に対する蒸気流入部5と蒸気排出部6との位置は、本実施例に限定されるものではない。
【0057】
また、本実施例では、加熱容体7内を常圧以上に保持し、100℃以上の温度での加熱処理を行えるように構成している。
【0058】
更に詳しくは、蒸気流入部5の蒸気流入口の口径を、蒸気排出部6の蒸気排出口の口径よりも径大に設定し、この口径の違いによる水蒸気の流入量と排出量の差(水蒸気の流入量の方が排出量より多いこと)によって加熱容体7内を常圧以上に保持できる構成としている。
【0059】
また、蒸気排出部6付近に温度センサー(図示省略)を設け、前記蒸気流入部5からの蒸気流入量を調整することにより、調理用途・目的等に応じて前記加熱容体7内の加熱温度制御を行うことができるようにしている。
【0060】
また、本実施例では、前記容器封入食品Aをカバー体9で覆い、このカバー体9に向けて前記蒸気流入部5から水蒸気を流入させて加熱処理する。
【0061】
更に詳しくは、カバー体9は、横長の筒形ケース状とし、このカバー体9内に横から複数の容器封入食品Aをスライド収納できる上、このカバー体9を加熱容体7内の棚板7A上に多段多列積み重ね状態に配置して加熱処理を行うことができる構成としている。
【0062】
また、このカバー体9は、例えば、熱伝導性の良い金属製として、このカバー体9を介して容器封入食品Aが良好に加熱される構成としている。
【0063】
従って、このカバー体9を用いたことにより、加熱容体7内での容器封入食品Aの配置及び整理が容易になり、この配置作業のロボットなどによる自動化も可能となって作業性や量産性に秀れることになる。
【0064】
また、この筒形のカバー体9は、中程より下側部が断面箱形であって、中程より上側部が、下部より幅広であって断面切妻屋根形(勾配屋根9A)を呈する形状に形成し、このカバー体9の中程部の幅の違いによって表れる段差部分9Bに容器2周囲の鍔部2Aを載置して収納し得るように構成している。
【0065】
また、このカバー体9の勾配屋根9Aは、図2に示すように、その水勾配角度θを、tanθ=1/100〜1の範囲に設定している。
【0066】
この勾配屋根9Aの設定勾配は、勾配屋根9Aの内面に付着した水が垂直落下せず、この勾配屋根9Aの内面を伝って流れ落ちることになる勾配である。即ち、この設定勾配により、前記蒸気流入部5からカバー体9に向けて流入する水蒸気がカバー体9に対して熱交換を行うとこのカバー体9に凝縮した水(ドレン)が付着するが、この際、勾配屋根9Aの内面にドレンが付着しても、一次フィルム4上にドレンが落下して前記連通孔3から流入することのない構成としている。
【0067】
尚、tanθ=1(45°)以上では、この勾配屋根9Aの内部空間が広くなりすぎて、加熱容体7内へのこのカバー体9の収納(配置)効率が低下するので好ましくない。
【0068】
また、この加熱処理について更に詳しく説明すると、製品化に当たっての前調理を施している。
【0069】
この前調理は、予めできあがって(炊き上がって)いるご飯を家庭の電子レンジなどで再加熱する商品とするか、半完成のご飯を家庭用の電子レンジなどで加熱して炊き上がらせる商品とするかにより二通りの調理を選択する。即ち、前者のような製品とする場合には、この加熱処理によって食品1(米1)を完成(炊き上がり)状態にまで調理し、後者のような製品とする場合には、この加熱処理によって食品1(米1)を半完成状態にまで調理する。
【0070】
また、この際、前記連通孔3を閉塞せずに加熱処理を行い、この連通孔3を加熱処理を行う際の蒸気逃し孔として機能させ、加熱処理中に容器封入食品Aの食品包装体1の内圧が上昇して破裂してしまうことを防止する。
【0071】
また、この加熱処理は、蒸気流入部5からの水蒸気の流入量を調整することで、100℃以上の温度での加熱を行うことができるので、様々な調理目的や殺菌目的等に利用可能である。
【0072】
また、加熱容体7内を一定の圧力に設定、維持(保持)できるので、食品1(本実施例では米1)に等方的に圧力が加わることになり、その際、熱源の水蒸気が食品1に対して等方的に伝わるため、食品1が均等にムラなく加熱されることになる。
【0073】
特に、加圧下では食品1中の含有水分が沸騰しないため、この食品1中の水分が蒸発することなく、食品1(食材)の水分量や重量に変化を生じずに加熱処理することができ、食品1中の香気成分も外圧が加わっているために蒸発しにくいという利点がある。
【0074】
次いで、この加熱処理後、前記一次フィルム4の上から前記連通孔3を覆うようにして二次フィルム8を止着する。
【0075】
更に詳しくは、二次フィルム8は、一次フィルム4と略同形状のものを採用し、一次フィルム4外表面(上面)側の周縁部全周に二次フィルム8の裏面(下面)側の周縁部全周をシール止着している。
【0076】
尚、この二次フィルム8を止着する前に、保存性を向上させるため、容器2内の空気をガス置換するか、若しくは脱酸素剤(図示省略)を封入する。
【0077】
ガス置換を行う場合は、前記連通孔3を利用して行うことができる。
【0078】
例えば、本実施例では、一次フィルム4の二箇所に連通孔3を設けたため、一方の連通孔3から容器2内にガスを流入し、この際他方の連通孔3から容器2内の空気が排出されるようにすると、効率良くガス置換が行える。
【0079】
また、脱酸素剤を封入する場合は、一次フィルム4の外表面と二次フィルム8の裏面(内面)との間に空隙に脱酸素剤を封入することができる。即ち、この二枚のフィルム4・8間の空隙と前記容器2の内部とが前記連通孔3を介して連通状態となり、この連通孔3を介して脱酸素機能が果たされるように設けると共に、この空隙に脱酸素剤6を接着剤によって接着せずに封入することができる。
【0080】
また、この場合、二次フィルム8を容器2から引き剥がすと(容器2の上部開口部を開放すると)、この二次フィルム8と共に前記一次フィルム4も容器2より引き剥がされることになるように二次フィルム8の一次フィルム4へのシール止着強度を設定構成する。
【0081】
このパック詰ご飯のような容器封入食品Aの場合、脱酸素剤をふりかけと勘違いしてご飯にかけて食してしまう可能性がある(脱酸素材の中身がごましおに似ているため、特にご飯ものの場合には誤食される可能性が高いと考えられる。)が、このように一次フィルム4と二次フィルム8の間に脱酸素剤を封入する構成とすることで、容器2を開放しようとして二次フィルム8を引き剥がしても二次フィルム8が一次フィルム4から剥がれないから、簡単には脱酸素剤を取り出すことができず、この脱酸素剤の誤食の可能性の著しい低減が期待できる。
【0082】
尚、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本実施例の容器封入食品を示す斜視図である。
【図2】本実施例の容器封入食品をカバー体に収納した状態を示す説明正面図並びに説明側面図である。
【図3】本実施例の加熱処理時を示す説明正面図である。
【図4】本実施例の容器封入食品に二次フィルムを止着しようとする状態を示す説明正面図並びに説明側面図である。
【図5】本実施例の容器封入食品の完成状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0084】
1 食品
2 容器
3 連通孔(切り込み)
3A 切断片
4 一次フィルム
5 蒸気流入部
6 蒸気排出部
7 加熱容体
8 二次フィルム
9 カバー体
9A 勾配屋根
A 容器封入食品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品を容器内に入れ、この食品入り容器を、連通孔を穿設した一次フィルムで封止して容器封入食品とし、この容器封入食品を、蒸気流入部と蒸気排出部とを備えた加熱容体内に配置し、前記蒸気流入部から加熱容体内に水蒸気を流入せしめると共に、この水蒸気を前記蒸気排出部から排出しながら容器封入食品を加熱処理した後、前記一次フィルムの上から前記連通孔を覆うようにして二次フィルムを止着することを特徴とする容器封入食品の製造方法。
【請求項2】
前記加熱処理に際して、前記蒸気流入部からの水蒸気流入量を調整することにより前記加熱容体内の加熱温度制御を行うことを特徴とする請求項1記載の容器封入食品の製造方法。
【請求項3】
カバー体で覆った前記容器封入食品を前記加熱容体内に配置し、このカバー体に向けて前記蒸気流入部から水蒸気を流入させて加熱処理することを特徴とする請求項1,2のいずれか1項に記載の容器封入食品の製造方法。
【請求項4】
勾配屋根を有する前記カバー体で前記容器封入食品を覆うことを特徴とする請求項3記載の容器封入食品の製造方法。
【請求項5】
前記一次フィルムに、U字状若しくはV字状若しくはX字状の切り込みを形成してこの切り込みを前記連通孔としたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の容器封入食品の製造方法。
【請求項6】
前記連通孔は、切断具により一次フィルムに前記切り込みを形成すると同時に切り込みの切断片に上向きのくせ付けを行うか若しくは、切り込みを形成した後、この切り込みの切断片に上向きのくせ付けを行うことを特徴とする請求項5記載の容器封入食品の製造方法。
【請求項7】
1000気圧以上の高圧処理を施した食品を容器内に入れ、この食品入り容器を、連通孔を穿設した一次フィルムで封止して容器封入食品とすることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の容器封入食品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−28949(P2007−28949A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−214657(P2005−214657)
【出願日】平成17年7月25日(2005.7.25)
【出願人】(593201958)越後製菓株式会社 (22)
【Fターム(参考)】