説明

容器検査機および製びん装置

【課題】製造された容器の全数について、人手を煩わせることなく、効率的かつ高精度に容器の底部の平滑度合を検査できるようにする。
【解決手段】びん検査機1は、導入されたびんを表面の支持面20上に支持する支持基板2を有する。前記支持面20は、表面が平滑に形成されるとともに、びんが載置される位置には、前記支持面20と支持面20上に載置されたびんの底面との間に形成される空間Sに連通する2個の孔21,22が形成されている。一方の孔21には、前記空間Sより空気を導出させて内圧を低下させるバキューム装置3が接続され、他方の孔22には、前記空間Sの内圧を検出する圧力センサ4が接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、底面の中央部が内方へ窪んだガラスびんなどの容器について、底の平滑度合を検査するのに用いられる容器検査機と、その容器検査機が用いられた製びん装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラスびんなどの容器は、複数のセクションに分かれた製びん機により、セクション毎に個々の成形型を用いて同じ容器が一斉に製造される。各セクションで次々に製造された容器は、搬送系により最終の包装工程まで搬送される。製造された容器の中には、成形型の不良や製びん機の運転状態に起因した欠陥が発生する場合があり、搬送途中の検査工程では、複数の欠陥種目について欠陥の有無が検査される。
【0003】
検査工程に設置される検査装置として、スターホイールの周囲に円陣に配置された複数の検査ステーションをもつ検査装置が採用されている(例えば特許文献1参照)。前記スターホイールは、周面に複数の切欠部を有し、各切欠部内へ次々に導入された容器は、スターホイールの間欠回転により各検査ステーションへ順送りされる。各検査ステーションには、検査機が個々に配設され、各検査機では、少なくとも1種類の欠陥種目について、欠陥の有無がそれぞれ検査される。検査の結果、欠陥をもつと判断された容器は、不良品として回収される。
【0004】
【特許文献1】特開2000−55831号公報
【0005】
また、上記構成の検査装置により良品と判断された容器を適宜抜き取り、その容器について底部の平滑度合が検査されている。抜き取った容器を表面が平滑な支持基板上に載置し、底部の全周にわたって隙間ゲージを差し込み、その隙間の有無を判断することにより底部の平滑度合の検査が行われる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した手作業による検査方法では、作業効率が悪く、検査精度も低いうえに、人件費が嵩むという問題がある。また、製造された容器の全数について検査を行っていないことから、検査の信頼性に欠けるという問題もある。
【0007】
この発明は、上記した問題に着目してなされたもので、製造された容器の全数について、人手を煩わせることなく、効率的かつ高精度に底部の平滑度合を検査し得る容器検査機およびこの容器検査機を用いた製びん装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明による容器検査機は、底面の中央部が内方へ窪んだ容器を検査対象として前記底の平滑度合を検査するものである。導入された検査対象の容器を表面の支持面上に支持する支持基板を有し、前記支持面は、表面が平滑に形成されるとともに、容器が載置される位置には、前記支持面と支持面上に載置された容器の底面との間に形成される空間に連通する2個の孔が形成されている。一方の孔には、前記空間より空気を導出させて内圧を低下させる空気吸引装置が接続され、他方の孔には、前記空間内の内圧を検出する圧力検出手段が接続されている。
【0009】
この発明の上記した構成において、「容器」は、底面の中央部が内方に窪んだ形態ものであれば、ガラス製、合成樹脂製、金属製、陶磁製などの各種の容器を含む。また、「圧力検出手段」は、支持基板の支持面と支持面上に載置された容器の底面との間に形成される空間内の内圧を検出するものであり、圧力センサなど、種々の構成のものを用いることができる。
【0010】
この発明の容器検査機によって容器の底の平滑度合を検査するには、まず、支持基板の支持面上に容器を導入し、その底面の中央部の窪んだ部分が前記支持面に形成された2個の孔の開口を包含するように載置する。空気吸引装置により前記支持面と容器の底面との間に形成される空間の空気を導出させる。容器の底が平滑であれば、容器の底面の窪みを取り囲む外周部と支持面との間に隙間が生じず、前記空間の内圧が十分に下がるが、容器の底が平滑でなければ、容器の底の外周部と支持面との間に隙間が生じ、前記空間の内圧は十分に下がらない。この内圧を圧力検出手段により検出することで、容器の底の平滑度合を検査し、容器が良品であるか不良品であるかを判断する。
【0011】
この発明によると、支持基板の支持面と容器の底面との間の空間より空気を導出すると、容器と支持面とが密着した状態になるので、前記空間の内圧を検出する際に容器ががたつくことがなく、高精度かつ安定した検査を行うことができる。
【0012】
この発明の好ましい一実施態様においては、前記空気吸引装置は、空気導入部分にフィルタが設けられている。
この実施態様によると、フィルタにより空気とともに取り込まれる容器の破片などの異物を取り除くことができるため、空気吸引装置の空気導入部に異物が詰まるのを回避でき、検査精度を向上させることができる。
【0013】
この発明による他の容器検査機は、前記一方の孔に、空気吸引装置に代えて、前記空間へ空気を導入して内圧を高める空気供給装置が接続されている。
この発明においては、空気供給装置により前記空間内に空気を導入して内圧を上昇させるが、容器の底の平滑度合が高ければ、隙間が生じず、内圧は十分に高められるが、平滑度合が低ければ、隙間が生じ、内圧は十分に高められない。空気が導入された後の前記空間内の内圧を検出し、その内圧検出値により空気の漏れ具合をチェックすることで容器の底の平滑度合を検査する。
【0014】
また、この発明による容器検査機は、上記した構成に加えて、前記圧力検出手段により検出された内圧を所定のしきい値と比較することにより容器の底の平滑度合を判別する判別装置をさらに備えている。
【0015】
上記した「判別装置」は、専用のハードウェア回路によって実現することができるが、プログラムされたコンピュータによって実現することもできる。
この実施態様によると、判別装置は、内圧検出値と予め設定されている所定のしきい値とを比較することにより、容器の底の平滑度合の良否を判別する。なお、しきい値を複数設定すれば、平滑度合の程度を判別することもできる。
【0016】
この発明による製びん装置は、複数のセクションに分かれ前記セクション毎に同じ容器を一斉に製造する製びん機と、前記製びん機の下流側に設けられ容器の欠陥の有無を検査する複数の検査ステーションを具備する検査装置とを含む。前記検査ステーションのいずれかに上記したいずれかの実施態様の容器検査機が設けられている。さらに、この発明の好ましい実施態様においては、前記複数の検査ステーションは、容器が導入される複数の切欠部をもつスターホイールの外周であって前記スターホイールを間欠駆動したときの各切欠部が停止する角度位置に設けられている。
【0017】
上記した製びん装置によると、容器の底の平滑度合の検査を、製造された全ての容器について欠陥の有無を検査する従来の検査ラインで行うことにより、平滑度合の全数検査が可能となり、検査効率が向上する。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、容器の底の平滑度合の検査を、人手を煩わせることなく、製造された容器の全数について行うことができ、検査効率および検査精度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1は、この発明のびん検査機1が導入された製びん工場内の製造ラインの概略構成を示す。
図示例の容器製造ラインは、製びん機5と、この製びん機5で次々に製造されるびん(容器の一例)Gを搬送する搬送系6と、製びん機5の下流側で搬送系6の搬送途中に設けられ、びんGの欠陥の有無を検査する検査装置7,70とを備えている。前記製びん機5は、複数個のセクションS1〜SNに分かれ、各セクションS1〜SNには、同じびんを成形するための成形型が個々に設けられており、セクション毎に個々の成形型を用いて同じびんGが一斉に製造される。なお、成形型は粗型と仕上型とを含むが、ここでは両方の型を単に「成形型」と総称する。
【0020】
各セクションS1〜SNには、「ゴブ」と称される溶融ガラスの塊が適当なタイミングで順次供給される。各セクションS1〜SNの成形型で成形されたびんは、搬送系6の第1の搬送コンベヤ6aへ送り出される。びんは、びん底の外面の中央部が内方へ窪んだ形態のものであり、びん底には、成形時、製造したセクションを表す符号として、各成形型に固有の型番が付される。
【0021】
第1の搬送コンベヤ6aは、製びん機5の各セクションS1〜SNで製造されたびんを、一列に整列した状態で第2の搬送コンベヤ6bまで搬送する。第2の搬送コンベヤ6bは、縦列のびんを横列に編成して、第3の搬送コンベヤ6cまで搬送する。なお、第2の搬送コンベヤ6bの途中にびんの冷却装置(図示せず。)が設けてある。第3の搬送コンベヤ6cは、横列のびんを縦列に編成して、最終の箱詰装置8まで搬送する。この第3の搬送コンベヤ6cの途中には、びんを次々に導入して検査するための少なくとも1台(この実施例では2台)の検査装置7,70が設けられている。なお、この実施例では、2台の検査装置7,70を直列に設けて、各検査装置7,70で個別の検査を行うようにしているが、これに限らず、複数台の検査装置を並列に設けて、各検査装置で同じ検査を行うようにすることもできる。
【0022】
図2は、この発明のびん検査機(容器検査機の一例)1が設けられている一方の検査装置7を示している。
図示例の検査装置7は、周面の等角度位置に切欠部10を備えたスターホイール11と、このスターホイール11を前記切欠部10,10間の角度ずつ間欠的に回転させる順送り機構12と、前記スターホイール11の各切欠部10が停止する位置に設定された5個の検査ステーションA〜E(図1に示す。)のうち、最初の検査ステーションAに配置されるこの発明にかかるびん検査機1と、残り4個の検査ステーションB〜Eにそれぞれ配置される他のびん検査機(図示せず。)とから成る。この検査装置7の上流側には、びん導入路9aが設けられ、びん導入路9aには各切欠部10へびんを送り込む送込み機構15が設けられている。また、検査装置7の下流側には、所定の欠陥を有する不良品のびんを回収するためのリジェクトテーブル(図示せず。)が配備されている。なお、図1において、9bは検査済の良品のびんGを次の検査装置70へ導くびん導出路である。
【0023】
前記検査ステーションAでは、びん検査機1により、びんGの底の平滑度合が検査される。他の4個のステーションB〜Eでは、各びん検査機により、びんを回転させた状態、またはびんを回転させない状態で、少なくとも1種類の欠陥種目について、欠陥が存在するかどうかが検査される。なお、図中、17はびんを次の検査ステーションへ導くためのガイド板である。
【0024】
図3は、この発明の一実施例であるびん検査機1の構成を示している。
図示例のびん検査機1は、びん底の中央部が内方へ窪んだびんGを検査対象とするものである。図示例のびんGは、びん底の外面中央部が内方へ窪み、この窪みaを外周部bが取り囲んでいる。このびん底の外周部bの平滑度合がびん検査機1により検査される。このびん検査機1は、びんGが載置される円板状の支持基板2を有し、支持基板2の下方位置にバキューム装置(空気吸引装置の一例)3と圧力センサ(圧力検出手段の一例)4とが配置されている。圧力センサ4で検出された内圧値は判別装置14に取り込まれてびん底の平滑度合が判別される。
【0025】
前記支持基板2は、図4に示すように、びんGの底を支持する平滑な支持面20を有し、びんGが載置される位置には、前記支持面20と支持面20上に載置されたびんGの底面との間に形成される空間Sに連通する2個の孔21,22が形成されている。この支持基板2は、強度および断熱性の高い合成樹脂材で形成されている。これにより、支持基板2の摩耗などによる経年変化を低減することができ、支持基板2の削れカスなどの発生を低減することができるため、長期間使用することができる。また、孔21,22に前記削れカスなどが詰まることを低減することができる。
前記各孔21,22は支持基板2を上下に貫通し、上面および下面に開口している。なお、図4において、25はステーション間に設けられている水平な床板であり、びんGは床板25上をスライドして支持基板2の支持面20上に導かれる。
【0026】
前記一方の孔21には、通気管23を介してバキューム装置3が接続されている。このバキューム装置3は、前記空間Sより空気を導出させて空間S内の内圧を低下させる。バキューム装置3には、空気導入部分にフィルタ24が取り付けられている。フィルタ24は、空気とともに通気管23より取り込まれるガラスの破片などの異物を取り除くためのものである。
なお、前記フィルタ24は、形成される孔21の大きさに応じてその取り付け個数を変化させている。すなわち、孔21の径が大きく形成されている場合は、フィルタ24の個数を増やすことにより、ガラスの破片や第3の搬送コンベヤ6cの削れカスなどの異物が孔21につまることを回避することができるため、平滑度合の検査の精度を高めることができ、良品のびんの破棄を大幅に低減させることができる。
【0027】
他方の孔22には、前記空間S内の内圧を検出するための圧力センサ4が接続されている。この圧力センサ4により、空気が導出された後の前記空間S内の内圧を検出し、その内圧検出値によりびん底の平滑度合の良否が判別される。
前記圧力センサ4は、コード線により判別装置14に電気接続されており、圧力センサ4による内圧の検出値は、電気信号に変換されて判別装置14へ出力される。判別装置14は、入力された内圧検出値を予め設定された所定のしきい値と比較し、内圧検出値が所定のしきい値より大きいときは、びんGの底の平滑度合が不良であると判断する。
【0028】
なお、この実施例では、前記空間S内の空気をバキューム装置3により導出することで空間S内の内圧を低下させ、その内圧値を検出することで、びん底の平滑度合を検査しているが、バキューム装置3に代えて、前記空間S内へ空気を導入する空気供給装置を用いて構成することもできる。空気供給装置により空間S内に空気を導入すると、内圧が上昇するが、空気の漏れ具合によって内圧が異なるので、内圧をチェックすることでびん底の平滑度合を検査する。内圧検出値が所定のしきい値より低いときは、びんGの底の平滑度合が不良であると判断する。
【0029】
上記した構成のびんの製造ラインにおいて、製びん機5で製造されたびんGが検査装置7に導入されて第1の検査ステーションAに送られると、前記びん検査機1によりびん底の平滑度合、すなわち、びん底の窪みaを取り囲む外周部bの平滑度合が検査される。
【0030】
支持基板2の支持面20上に、びんGが、その底面の中央部の窪みaに支持面20に形成された2個の孔21,22が包含されるように載置されると、バキューム装置3が駆動され、前記支持面20とびんGの底面との間に形成される空間Sの空気が導出される。これにより、前記空間Sの内圧が低下し、びんGと支持面20とが密着した状態になるので、空間Sの内圧を検出する際にびんGががたつくことがない。
【0031】
びんGの底が平滑であれば、びんGの底面の外周部bと支持基板2の支持面20との間に隙間が生じず、空間Sの内圧が十分に下がる。これに対して、びんGの底が平滑でなければ、びんGの底面の外周部bと支持面20との間に隙間が生じ、空間Sの内圧は十分に下がらない。
【0032】
この内圧を圧力センサ4により検出し、判別装置14が内圧検出値を所定のしきい値と比較する。内圧検出値が所定のしきい値より大きいときは、びんGの底の平滑度合に不良があると判断される。
【0033】
びん検査機1による検査が終了すると、前記順送り機構12の順送り動作により、第1の検査ステーションAで検査されたびんGは第2の検査ステーションBへ送られ、びん検査機13により所定の欠陥種目について、欠陥の有無が検査される。また、第1の検査ステーションAには未検査の新たなびんGが導入され、新たなびんGについてびん底の平滑度合の検査が行われる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】製びんラインの全体構成を示す説明図である。
【図2】検査装置の一部分を拡大して示す平面図である。
【図3】びん検査機の構成を示す断面図である。
【図4】支持基板の構成を示す平面図である。
【符号の説明】
【0035】
1 びん検査機
2 支持基板
3 バキューム装置
4 圧力センサ
10 切欠部
11 スターホイール
14 判別装置
20 支持面
21,22 孔
24 フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面の中央部が内方へ窪んだ容器を検査対象として前記底の平滑度合を検査する容器検査機であって、導入された検査対象の容器を表面の支持面上に支持する支持基板を有し、前記支持面は、表面が平滑に形成されるとともに、容器が載置される位置には、前記支持面と支持面上に載置された容器の底面との間に形成される空間に連通する2個の孔が形成されており、一方の孔には、前記空間より空気を導出させて内圧を低下させる空気吸引装置が接続され、他方の孔には、前記空間内の内圧を検出する圧力検出手段が接続されて成る容器検査機。
【請求項2】
前記空気吸引装置は、空気導入部分にフィルタが設けられている請求項1に記載された容器検査機。
【請求項3】
前記一方の孔には、空気吸引装置に代えて、前記空間へ空気を導入して内圧を高める空気供給装置が接続されている請求項1に記載された容器検査機。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載された容器検査機であって、前記圧力検出手段により検出された内圧を所定のしきい値と比較することにより容器の底の平滑度合を判別する判別装置をさらに備えて成る容器検査機。
【請求項5】
複数のセクションに分かれ前記セクション毎に同じ容器を一斉に製造する製びん機と、前記製びん機の下流側に設けられ容器の欠陥の有無を検査する複数の検査ステーションを具備する検査装置とを含む製びん装置であって、前記検査ステーションのいずれかに請求項1〜4のいずれかに記載された容器検査機が設けられて成る製びん装置。
【請求項6】
前記複数の検査ステーションは、容器が導入される複数の切欠部をもつスターホイールの外周であって前記スターホイールを間欠駆動したときの各切欠部が停止する角度位置に設けられている請求項5に記載された製びん装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−263665(P2007−263665A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−87625(P2006−87625)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(000178826)日本山村硝子株式会社 (140)
【Fターム(参考)】