説明

容器組立素材

【課題】耐熱性、耐久性に優れ、搬送効率が高いと共に保管スペースを節約でき、さらに、所望の形状を容易に保つことができ、かつ、適度な容器間の間隔を容易に確保することも可能な焼成容器を形成するための容器組立素材を提供する。
【解決手段】本発明に係る容器組立素材10は、紙材により形成された薄板基材20の少なくとも片面を被覆する被覆層としての耐熱離型層30を備え、2つの長辺21及び2つの短辺22で囲まれる略長方形状の側面形成部23と、各短辺22近傍に設けられる両端係合部24と、各長辺21を折曲又は湾曲して前記両端係合部24を係合させて両底面が開放した中空筒状の焼成容器1を形成した際に、各長辺21の対向する位置から反対方向に突出する複数組の補強部26と、を備え、前記各組の補強部26は、前記中空筒状の外側方へ折り曲げた状態で互いに係合可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パン及び焼き菓子等、生地を焼成して製造する食品の焼成の際に焼き型(特にセルクル)として用いられる容器組立素材に関する。
【背景技術】
【0002】
パンや菓子の中には、生地を所定の形状の焼き型に入れ、必要に応じてその状態で発酵工程を経た後、焼成して製造されるものがある。このような焼き型としては従来アルミニウムのような金属で形成されるものが主であったが、近年は耐熱性のシリコーン樹脂やその他の耐熱性樹脂で形成されるものも開示されている(特許文献1)。
また、焼き型のうち、底がなく外枠のみで形成されたセルクルと呼ばれるものには、紙製のものもある(特許文献2参照)。このような紙製のセルクルは、金属棒の周囲にボール紙などの紙材を巻き付けて長尺の筒体と成し、これを適当な長さの輪切りにしたのち、表面にシリコーン樹脂をコーティングして形成されている。このセルクルは、天板の上に載置し、その内部に生地を入れて焼成し、焼成の完了後に型抜きをするものである。
【0003】
なお、長方形状のコート紙の両端をつなげて円筒形状の焼き型を形成することについては特許文献3に開示がある。また、パンやパイの焼き型に使用するシートに耐熱性の樹脂素材を配設することについては特許文献4に開示がある。さらに、パンや菓子の焼成用紙トレーを合成樹脂をラミネートしたラミネート紙で形成し、さらにその内面にシリコーン被膜を形成させることについては特許文献5に開示がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−242591号公報
【特許文献2】特開2007−228886号公報
【特許文献3】登録実用新案第3013085号公報
【特許文献4】特開2001−204367号公報
【特許文献5】登録実用新案第3140826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の焼き型や特許文献2に記載の紙製のセルクルは、金属製品に比べ安価であるものの、嵩張るので大量に搬送する場合には効率が悪く、保管場所にも広いスペースを要するという問題点があった。
一方、特許文献3に記載するような長方形状の紙で、底面が四角形のような、全部又は一部に直線部分を有する筒状形状を形成しようとするときには所望の形状を保つことが困難であったりするものである。
また、上述のセルクルのようなものを用いて焼成トレー状で複数個のパンや菓子等の焼成を行うときには、均一な焼成温度を保つために、個々のセルクル間には適度な間隔を空ける必要がある。そのためには、セルクルを焼成トレー状に並べる際、作業員が意識して間隔を空けるようにして載置する必要があるが、ときには接触したりすることもあり、焼きムラが生ずる原因ともなっていた。
【0006】
そこで、本願発明は、以上の問題点に鑑み、耐熱性、耐久性に優れ、搬送効率が高いと共に、保管スペースを節約でき、さらに、所望の形状を容易に保つことができ、かつ、適度な容器間の間隔を容易に確保することも可能な焼成容器を形成するための容器組立素材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、紙材により形成された薄板基材20を折曲又は湾曲して食品の焼成製造に用いる焼成容器1を形成するための容器組立素材10であって、前記薄板基材20の少なくとも片面を被覆する被覆層としての耐熱離型層30を備えるとともに、2つの長辺21及び2つの短辺22で囲まれる略長方形状の側面形成部23と、各短辺22近傍に設けられる両端係合部24と、各長辺21を折曲又は湾曲して前記両端係合部24を係合させて両底面が開放した中空筒状の焼成容器1を形成した際に、各長辺21の対向する位置から反対方向に突出する複数組の補強部26と、を備え、前記各組の補強部26は、前記中空筒状の外側方へ折り曲げた状態で互いに係合可能となることを特徴とする。
【0008】
ここで、「焼成容器1」は、パン及びケーキ、クッキー等の焼き菓子のような食品を焼成する際に焼き型として用いられる容器であって、特に、枠のみで構成された筒型のものをいう。必要に応じて、焼成前の生地の発酵工程もその中で実施可能である。
また、「容器組立素材10」は、前記焼成容器1を形成するものであって、紙材で形成された薄板基材20を基に形成される薄板状の部材である。この紙材を用いた薄板基材20は、被覆層の被覆前に脱湿処理を行うのが好ましい。
「耐熱離型層30」は、薄板基材20の少なくとも片面を被覆する層であって、焼成容器1で焼成して形成された食品の離型性を向上させるために耐熱性及び離型性を備えた層である。耐熱離型層30としては、たとえば、シリコーン樹脂を被覆したシリコーン樹脂層30とすることができる。シリコーン樹脂層30としては、非粘着性に富むとともに耐熱性にも優れている上、食品衛生の点でも問題がない反応硬化型のものが望ましい。耐熱離型層30は、薄板基材20の少なくともいずれか一方の面を被覆していればよく、薄板基材20の両面を被覆していてもよい。少なくとも、容器組立素材10を焼成容器1と成したときに、食品に触れる内面となる面が耐熱離型層30で被覆されている必要がある。
【0009】
また、本発明においては、耐熱離型層30の下層に、被覆層として、結晶性ポリエチレンテレフタレート(C−PET)又はポリブチレンテレフタレート(PBT)のような、耐熱性を備える樹脂で形成された耐熱樹脂層40をさらに設けることができる。換言すると、紙材をC−PET又はPBTから成る耐熱樹脂層40で被覆し、さらにその上層として耐熱離型層30、好ましくはシリコーン樹脂層30を被覆することも可能である。このような耐熱樹脂層40を設けることにより、容器組立素材10の耐熱性が増すとともに、紙材に復元力が付与されて、筒状に形成された容器組立素材10の両端係合部24同士の係合力が強化される。この係合力の強化は、耐熱樹脂層40を薄板基材20の両面に設けることでより効果的に発揮されることになる。
【0010】
薄板基材20の「長辺21」とは、容器組立素材10を湾曲させ又は折曲させる際に、湾曲又は折曲される辺のことであり、「短辺22」とは、長辺21を湾曲又は折曲することにより互いに重複して結合可能となる辺のことである。
この長辺21と短辺22とにより囲まれる略長方形状の部分が「側面形成部23」であり、長辺21を折曲又は湾曲させて形成された筒状の焼成容器1の側面を形成する部分である。
「両端係合部24」は、2つの短辺22の近傍にそれぞれ設けられている。この両端係合部24は、短辺22に設けられていてもよいし、長辺21における短辺22の近傍に設けられていてもよい。また、両端係合部24の形状は、互いに係合可能であって短辺22付近を重ね合わせて結合させることが可能なものであればどのような形状であってもよい。たとえば、一方の長辺21における一方の端部近傍に両端係合部24としての切り欠きを設け、他方の長辺21における他方の端部近傍にも両端係合部24としての切り欠きを設け、これらの切り欠き同士を係合させることで側面形成部23を筒状に形成することができる。ここで、側面形成部23が「略長方形状」であるとは、必ずしも正確な長方形状ではなくとも、たとえば角を丸めたものであるとか、前記両端係合部24の箇所が突出又は切り欠かれているようなものをも含むことを意味するものである。
【0011】
また、「補強部26」は、長辺21を折曲又は湾曲させ、両端係合部24を係合させて側面形成部23を筒状に形成した状態において、各長辺21の対向する位置から反対方向に突出して形成された部位である。この補強部26は、2つの長辺21を挟んで対向する2つを1組として、これが複数組設けられている。各組の補強部26は、外側方へ折り曲げた状態で、互いに係合する形状を呈している。この形状については特に限定はないが、たとえば、前記各組の補強部26の一方には係合孔27、他方には係合片28が設けられており、前記係合孔27に前記係合片28を挿入することによって各組の補強部26が互いに係合可能であるものが望ましい。この係合孔27は、スリット状に形成されていてもよい。
【0012】
さらに、前記係合孔27は、前記側面形成部23の長辺21側から離れるにつれて幅を減じる台形状に形成され、前記係合片28は、前記側面形成部23の長辺21側から離れるにつれて幅を増す台形状に形成され、前記各組の補強部26のうち、前記係合片28を有する方を側面外方へ折り曲げ、さらに前記係合孔27を有する方を同様に側面外方へ折り曲げて重ねた場合に、前記係合孔27と前記係合片28との形状はほぼ一致しているように形成することもできる。なお、ここで「ほぼ一致」とは、前記係合孔27に前記係合片28を通すことが可能な程度に一致していることを意味する。このように形成すれば、前記各組の補強部26のうち、前記係合片28を有する方を側面外方へ折り曲げ、さらに前記係合孔27を有する方を同様に側面外方へ折り曲げて重ね、手を離せば紙の復元力により、係合片28の幅狭の近位部分が係合孔27の幅狭の遠位部分に嵌り込むことになる。これによって、補強部26同士が係合し合い、自然に離れることはなくなる。このため、所望の筒状形状が保持できることになる。さらに、この補強部26があることで、隣接する焼成容器1同士が、互いの側面を接触させることがなくなる。
なお、前記係合片28の幅は、前記係合孔27の幅より広く形成されているとともに、前記係合片28の幅のうち、前記係合孔27の幅からはみ出る部分が、前記係合孔28からの抜け止め部29として形成されていることとしてもよい。
【0013】
また、各長辺21の全長にわたり補強部26が設けられることとすると、完成した焼成容器1は底面形状多角形の筒状形状をなすこととなる。また、各長辺21の一部に補強部26が設けられることとすると、底面において補強部26の設けられている箇所が直線をなし、補強部26の設けられていない部分が曲線をなす形状を呈することとなる。
なお、複数組の補強部26のうち1組は両端係合部24が係合する部分を含む位置に設けられることが望ましい。こうすることにより、補強部26は両端係合部24による係合が外れることをも防止することが可能となる。
本発明に係る容器組立素材10においては、耐熱離型層30が設けられる面が内側になるように側面形成部23を折曲又は屈曲して両端にある両端係合部23を互いに係合させることによって、中空筒状の焼成容器1を形成することができる。この状態で、長辺21に設けられている対向する補強部26を外側方へ折り曲げ、互いに係合させることで、焼成容器1の底面形状が扁平に潰れたりすることなく保持されることになる。そして、たとえば天板上にこの焼成容器1を載置し、筒状形状の内部空間に、パンや菓子等の生地を流し込み、必要に応じて発酵等の処置を行った後、オーブン等に入れて焼成に供されることになる。焼成後は、焼成容器1の内面に耐熱離型層30が設けられていることから、パンや菓子等を焼成容器1から容易に取り出すことが可能となっている。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る容器組立素材は、上記の通り構成されているので、以下に記す効果を奏する。すなわち、耐熱離型層が設けられているため、耐熱性、耐久性に優れ、焼成容器に組み上げる前は薄板形状を呈しているため搬送効率が高いとともに、使用後も容易に薄板形状へ分解可能なため使用前及び使用後の保管スペースを節約できる。さらに、補強部が設けられていることによって所望の形状を容易に保つことができ、かつ、適度な容器間の間隔を容易に確保することも可能な焼成容器を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る容器組立素材の展開図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る容器組立素材の拡大断面図である。
【図3】図1の容器組立素材から焼成容器を形成する途中段階を示す斜視図である。
【図4】図1の容器組立素材から焼成容器を形成する途中段階を示す斜視図である。
【図5】図1の容器組立素材から焼成容器を形成する途中段階を示す斜視図である。
【図6】図1の容器組立素材から形成された焼成容器の斜視図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係る容器組立素材の展開図(A)及びこの容器組立素材から形成された焼成容器の斜視図(B)である。
【図8】本発明の第3の実施の形態に係る容器組立素材の展開図(A)及びこの容器組立素材から形成された焼成容器の斜視図(B)である。
【図9】補強部の変形例を部分展開図で示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態を図面を参照しつつ以下に説明する。
(1)第1の実施の形態
図1は、第1の実施の形態に係る容器組立素材10を展開図で示したものである。容器組立素材10は、焼成容器1を形成するための薄板状の部材である。具体的には、容器組立素材10は、互いに対向する2つの長辺21及び互いに対向する2つの短辺22とで囲まれた長方形状の側面形成部23と、各長辺21から反対方向に突出するように設けられた複数組(図1中では4組)の補強部26とから成る。また、各長辺21の端部付近においては短辺22方向の幅を減ずるように一部が切り欠かれているとともに、さらに楔状の切り欠きとしての両端係合部24が形成されている。補強部26は、両端係合部24が設けられている部分を除き、長辺21に沿って隙間なく配列されている。
【0017】
各補強部26のうち、一方の側に位置する方には、台形状の係合孔27が、長辺21にその底辺を接した位置に設けられている。この係合孔27においては、長辺21に対して近位側の底辺27aの長さが、遠位側の底辺27bの長さよりも長い。また、各補強部26のうち、他方の側に位置する方には、台形状に突出する係合片28が設けられている。この係合片28においては、長辺21に対して近位側の底辺28aの長さが、遠位側の底辺28bの長さよりも短い。そして、係合孔27の近位側の底辺27aと、係合片28の遠位側の底辺28bとはほぼ同じ長さである。また、係合孔27の遠位側の底辺27bと、係合片の近位側の底辺28aとはほぼ同じ長さである。さらに、係合孔27を形成する台形の高さと、係合片28を形成する台形の高さとはほぼ同じ長さである。すなわち、係合片28は、係合孔27を通り抜けられる程度に、係合孔27とほぼ同じ大きさとなっている。
【0018】
次に、容器組立素材10の素材構成について説明する。
容器組立素材10の拡大断面図を図2に示す。容器組立素材10は、図2(A)に示すように、前記薄板基材20の両面を、被覆層で被覆したものである。すなわち、薄板基材20としての紙材の両面に耐熱樹脂層40がコーティングされているとともに、耐熱樹脂層40の上層を被覆するように、低温硬化シリコーン樹脂による耐熱離型層30としてのシリコーン樹脂層30がコーティングされている。
ここで、薄板基材20としては、秤量200〜450g/m2、好ましくは250〜350g/m2の紙が使用される。薄板基材20の厚さは、0.3〜1.0mm、好ましくは0.4〜0.7mmである。また、食品に用いることから、薄板基材20はバージンパルプを抄紙したものが好ましい。なお、薄板基材20は数重量%、通常7重量%程度の水分を含有しているので、耐熱樹脂層40でコーティングする前に脱湿処理を行うのが好ましい。
【0019】
前記耐熱樹脂層40としては、結晶性ポリエチレンテレフタレート(C−PET)又はポリブチレンテレフタレート(PBT)が用いられる。耐熱樹脂層40としてC−PET又はPBTを用いると、紙材から成る薄板基材20に、より強力な復元力を付与することができ、筒状に折曲又は湾曲された薄板基材20の復元力によって両端係合部24同士の係合力及び補強部26同士の係合力が強化される。
前記シリコーン樹脂層30の材料としては、室温硬化型(RTV)のシリコーン樹脂が好ましい。なお、室温硬化型のシリコーン樹脂は、たとえば、一液型RTVゴム KE45(信越化学工業)の商品名で市販されているものを使用できる。このシリコーン樹脂は、シロキサン結合によって形成されたポリマーにシリカが配合されたものである。これを樹脂含有比率5〜20重量%になるようにトルエン等の溶媒で希釈し、スプレーなどで塗布する。これを一晩室温で放置すれば樹脂が硬化し、シリコーン樹脂層30が形成されることになる。
【0020】
なお、上記の室温硬化型のシリコーン樹脂の代わりに、付加反応型の加熱硬化性シリコーン樹脂を用いることとしてもよい。このような樹脂としては、たとえば、KS−774(信越化学工業)の商品名で市販されているものを用いることができる。このような加熱硬化性シリコーン樹脂をそのまま、あるいは適宜にトルエン等の溶媒に使用しやすい粘度になるように希釈し、硬化触媒として白金などの金属の塩類を加えよく攪拌して、焼成容器の内面にスプレーなどで塗布する。次いで、150℃前後で加熱する硬化処理に付し、加熱硬化性シリコーン樹脂を硬化させれば同様にシリコーン樹脂層30を形成することができる。
【0021】
なお、容器組立素材10は、図2(B)に示すように、薄板基材20の両面を耐熱離型層30としてのシリコーン樹脂層30のみでコーティングした構成としてもよい。
また、特に図示しないが、シリコーン樹脂層30を、薄板基材20の片面のみにコーティングした構成としてもよい。この場合には、容器組立素材10で焼成容器1を形成したときに、シリコーン樹脂層30が筒内面側(食品と接触する面)となるようにする。
次に、容器組立素材10から焼成容器1への組み立てを、図3〜図6を参照しつつ説明する。
短辺22と平行な折り線25(図1参照)に沿って山折りにしつつ、側面形成部23を折り曲げる(図3)。そして、側面形成部23をややひねるようにして、両端係合部24同士を噛み合わせ(図3)、そして係合させる(図4)。同時に、各補強部26も長辺21に沿って谷折りにしつつ(図3)、外側方へ折り曲げる(図4)。ここで、両端係合部24同士が係合する位置を挟むようにして、補強部26のうちの1組が対向している(図4)。
【0022】
そして、まず最初に係合片28を有する方の補強部26を折り畳み、その上を覆うように係合孔27を有する方の補強部26を折り畳む(図5)。このとき、係合片28と係合孔27とがほぼ一致している。この状態から折り畳まれた補強部26から手指を離すと、図6に示すように、薄板基材20の復元力によって、補強部26が外方に膨らむように拡がる。このとき、係合片28が係合孔27を通り抜け、係合片28の近位側の底辺28a部分が、ほぼ同じ長さの係合孔27の遠位側の底辺27b部分(図4参照)と係合し、補強部26同士が係合されることとなる(図6)。この状態では、特に外力を加えない限り、係合孔27から係合片28が抜けることはない。このような係合孔27と係合片28との係合関係は4つの側面においてそれぞれ等しく釣り合っているため、結果として、焼成容器1の形状が、特に外力を加えなくとも保持されることとなっている。特に、両端係合部24が係合している箇所の補強部26は、その係合の保持にも寄与することとなっている。
【0023】
以上のように形成した焼成容器1を天板の上に載置し、その筒内部に、パンや菓子類の生地を入れ、必要に応じて発酵工程に供してから、コンベアオーブンで焼成してパンや菓子類を製造する。このとき、上述の通り筒内面にはシリコーン樹脂層30が形成されているため、焼成された食品を容易に離型することができる。また、シリコーン樹脂層30により離型性が増しているので、離型油を塗布する必要がないため、焼成容器1の耐熱樹脂層40の劣化が起こらず、繰り返しの使用にも耐え得ることとなっている。
このように、本実施の形態によれば、薄板状の容器組立素材10を組み立てて焼成容器1を形成するものであるため、立体形状の焼成容器1に比べて搬送時に嵩張ることもなく、保管時のスペースもとらない。また、容器組立素材10の両端部を、それぞれの側に設けられた両端係合部24同士の係合によって結合させ、また複数組の補強部26の係合によって形状を保持させるようにしてあるので、組み立て及び組み外し作業が比較的容易であり、リサイクルにも適している。
【0024】
また、薄板基体20をシリコーン樹脂層30で被覆してあるので、離型性に富み、薄板基体20にC−PET又はPBTを耐熱樹脂層40としてコーティングすることにより、耐熱性を強化することができる。さらに、C−PET又はPBTを耐熱樹脂層40として用いることによって容器組立素材10の復元力が増大し、容器組立素材10を筒状にしたとき、元の形状に戻ろうとする力で両端係合部24同士の係合が強化されるとともに、補強部26同士の係合も強化され、型崩れを防止することができる。
加えて、図6に示すように補強部26が筒状形状の側面より外方へ突出することとなっているため、天板上に焼成容器1を複数個並べたときに、この補強部26の突出部分同士で側面間に適度な間隔が確保できる。これによって、焼成容器1同士が接触せずに、中の生地に均等に熱が通り焼きムラが防止できることにもなっている。
【0025】
(2)第2の実施の形態
本発明の第2の実施の形態に係る容器組立素材10は、図7(A)に示すように、長辺21に沿って3組の補強部26が設けられている。そして、各補強部26は間隙をもって隔てられている。
本実施の形態においても、第1の実施の形態と同様に組み立てられるが、補強部26の設けられていない箇所が図7(B)に示すように、略3分の1の円弧状のアールを形成するように湾曲し、平面視で、頂点部分が丸められた正三角形状の底面形状を呈することとなっている。
【0026】
(3)第3の実施の形態
本発明の第3の実施の形態に係る容器組立素材10は、図8(A)に示すように、長辺21に沿って2組の補強部26が設けられている。そして、各補強部26は間隙をもって隔てられている。
本実施の形態においても、第1の実施の形態と同様に組み立てられるが、補強部26の設けられていない箇所が図8(B)に示すように略半円形のアールを形成するように湾曲し、平面視で、小判状の底面形状を呈することとなっている。
(4)その他
前記各実施の形態では、1組の補強部26に設けられる係合孔27と係合片28とはほぼ同一の形状を呈していたが、図9に示す変形例のように、係合片28の幅を係合孔27の幅より大きく形成することもできる。この場合、係合片28において係合孔27の幅からはみ出る部分(抜け止め部29)をあらかじめ折り曲げておいてから、図5に示すように折り畳み、そして図6に示すように補強部26を復元させた状態で、折り曲げておいた抜け止め部29を拡げることで、係合孔27から係合片28が外れるのを防ぐことができる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、パンや焼き菓子等の焼成容器として使用可能である。
【符号の説明】
【0028】
1 焼成容器 10 容器組立素材
20 薄板基材 21 長辺 22 短辺
23 側面形成部 24 両端係合部 25 折り線
26 補強部
27 係合孔 27a 近位側の底辺 27b 遠位側の底辺
28 係合片 28a 近位側の底辺 28b 遠位側の底辺
29 抜け止め部
30 耐熱離型層(シリコーン樹脂層) 40 耐熱樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙材により形成された薄板基材を折曲又は湾曲して食品の焼成製造に用いる焼成容器を形成するための容器組立素材であって、
前記薄板基材の少なくとも片面を被覆する被覆層としての耐熱離型層を備えるとともに、
2つの長辺及び2つの短辺で囲まれる略長方形状の側面形成部と、
各短辺近傍に設けられる両端係合部と、
各長辺を折曲又は湾曲して前記両端係合部を係合させて両底面が開放した中空筒状の焼成容器を形成した際に、各長辺の対向する位置から反対方向に突出する複数組の補強部と、を備え、
前記各組の補強部は、前記中空筒状の外側方へ折り曲げた状態で互いに係合可能となることを特徴とする容器組立素材。
【請求項2】
前記各組の補強部の一方には係合孔、他方には係合片が設けられており、
前記係合孔に前記係合片を挿入することによって各組の補強部が互いに係合可能であることを特徴とする請求項1記載の容器組立素材。
【請求項3】
前記係合孔は、前記側面形成部の長辺側から離れるにつれて幅を減じる台形状に形成され、
前記係合片は、前記側面形成部の長辺側から離れるにつれて幅を増す台形状に形成され、
前記各組の補強部のうち、前記係合片を有する方を側面外方へ折り曲げ、さらに前記係合孔を有する方を同様に側面外方へ折り曲げて重ねた場合に、前記係合孔と前記係合片との形状はほぼ一致していることを特徴とする請求項2記載の容器組立素材。
【請求項4】
前記係合片の幅は、前記係合孔の幅より広く形成されているとともに、
前記係合片の幅のうち、前記係合孔の幅からはみ出る部分が、前記係合孔からの抜け止め部として形成されていることを特徴とする請求項2記載の容器組立素材。
【請求項5】
前記耐熱離型層の下層に、被覆層として、結晶性ポリエチレンテレフタレート又はポリブチレンテレフタレートにより形成されている耐熱樹脂層をさらに備えていることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の容器組立素材。
【請求項6】
前記薄板基材としての紙材は、被覆層の被覆前に脱湿処理されていることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の容器組立素材。
【請求項7】
前記耐熱離型層は、シリコーン樹脂により形成されていることを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載の容器組立素材。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−147700(P2012−147700A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−7529(P2011−7529)
【出願日】平成23年1月18日(2011.1.18)
【特許番号】特許第4755318号(P4755318)
【特許公報発行日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【出願人】(505052917)技研プロセス有限会社 (3)
【出願人】(502447815)
【Fターム(参考)】