説明

容器

【課題】各種の電子素子を収納して実用可能な形態とする容器であって、特に、経済的で、過酷な温度変化に対応することができる容器を提供する。
【解決手段】容器10の一部が誘電体材料で構成され、容器10内において電子素子30に接続される内部電極21と、容器10外で回路に接続される外部電極22とが、誘電体材料を介して電気的に接続されている。電子素子30の収納空間を形成する枠体部13と、枠体部13の表裏を閉塞する表面板11及び裏面板12により構成される。裏面板12が誘電体材料で構成され、内部電極21及び前記外部電極22が、裏面板12の内外に対向して設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の電子素子を収納して実用可能な形態とする容器に関し、特に、経済的で、過酷な温度変化にも対応することができる容器に関する。
【背景技術】
【0002】
ICを含む各種の電子素子は、非常に小さな密閉容器に収納されて使用されている。例えば、特許文献1には、種々の電子素子を収納し、厳しい環境変化に耐えることができる容器とその製造方法が記載されている。図5はその概略図であり(a)は裏面図、(b)は断面図を示している。この容器110は、セラミックス材料の矩形板からなる下層板116の上にフレーム状の中層板117及び上層板118を積層した本体部111と、金属材料からなる蓋部112で構成されている。
【0003】
蓋部112と上層板118との間は、ロウ付けによってシールリング119が形成されており、容器110の内部を気密に封止することができる。そして、下層板116には封止穴141が設けられ、これを用いて容器110の内部を真空状態又は不活性ガスで置換した状態として、気密に封止している。
【0004】
容器110内部には、圧電共振子等の電子素子130が収納されている。この電子素子130の電極(図示せず)は、容器110内の内部電極121に接続され、内部電極121から配線層123を経由して外部電極122に接続されている。したがって、実装置における回路では、この外部電極122に結線することによって電子素子130を使用することができる。
【0005】
容器本体111を製造する方法は、次のように記載されている。(1)原料となるアルミナ粉やガラス粉などを練り上げて複数のグリーンシートを作成する。(2)各層の形状に合わせて型抜きする。(3)各層のグリーンシートに、内部電極、配線層、外部電極、その他のパターンを、タングステン又はモリブデンなどを用いてメタライズ印刷する。(4)所定のグリーンシートを重ね合せて熱プレスなどにより一体化して積層板とする。(5)積層板に上下から楔状のスナップ溝を入れる。(6)積層板を1000℃以上の温度で焼成する。(7)メタライズ印刷した部分に1回目のNiメッキを施す。(8)シールリングをロウ付けし、凹所を形成する。(9)2回目のNiメッキを施す。(10)Auメッキを施す。(11)楔状のスナップ溝に沿って個片に分割する。
【0006】
以上のように、電子素子130を収納する従来の容器110は、気密封止を行うために精密に製造されることが要求される。一方、内部電極121と外部電極122とを接続するために配線層123を形成しているので、その構造は非常に複雑である。このために、製造工程が複雑となり、安価に製造することができないという問題がある。
【0007】
配線層123を形成する代わりに、容器に貫通孔を設けてリード線を通し、リード線の一端を電子素子130の電極に接続して、他端を容器外の外部電極とすることも行われている。この場合、容器の構造を簡略化することができる。しかし、容器を気密封止するためには、従来から行われているガラス系のハーメチックシール以外に方法がなく、使用温度に大きな制約を受けることになる。
【0008】
容器110の使用温度について、特許文献1では、車載用機器に用いるので厳しい温度環境に曝されると記載されている。しかしながら、温度範囲としては高々100℃程度と考えられる。一方、収納する電子素子が圧電共振子であり、これを温度測定用のセンサーとして用いる場合には、測定する温度範囲はなるべく広い方が好ましい。例えば、特許文献2には、ランガサイト構造を有する酸化物結晶からなる圧電共振子を使用して、1000℃以上の高温でも安定して精度の高い温度測定が可能であると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−182709号公報
【特許文献2】特開2009−250843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明の目的は、各種の電子素子を収納して気密に封止するとともに使い易い形態とした容器であって、安価に製造できる容器を提供することである。同時に、厳しい温度環境に対応できる容器を提供することである。例えば、温度範囲としては、−270℃の低温から1000℃の高温までの広範囲であり、温度変化としては、毎分100℃の急激な熱衝撃に耐えることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明の請求項1に係る容器は、電子素子を収納する容器であって、少なくともその一部が誘電体材料で構成され、容器内において前記電子素子に接続される内部電極と、容器外で回路に接続される外部電極とが、前記誘電体材料を介して電気的に接続されている手段を採用している。
【0012】
また、本発明の請求項2に係る容器は、請求項1に記載の容器において、前記電子素子の収納空間を形成する枠体部と、該枠体部の表裏を閉塞する表面板及び裏面板により構成される手段を採用している。また、本発明の請求項3に係る容器は、請求項1又は2に記載の容器において、外観形状が直方体である手段を採用している。
【0013】
また、本発明の請求項4に記載の容器は、請求項2又は3に記載の容器において、前記表面板及び/又は前記裏面板が前記誘電体材料で構成され、前記内部電極及び前記外部電極が、前記表面板及び/又は前記裏面板の内外に対向して設けられている手段を採用している。
【0014】
また、本発明の請求項5に記載の容器は、請求項1乃至4の何れかに記載の容器において、前記誘電体材料が、セラミックである手段を採用している。また、本発明の請求項6に記載の容器は、請求項1乃至5の何れかに記載の容器において、前記電子素子が、温度測定用の圧電共振子である手段を採用している。
【発明の効果】
【0015】
上記のような構成としたことにより、本発明の容器は、構造が簡単であり、確実に気密封止を行うことができるとともに、安価に製造することができる。そして、−270℃〜1000℃の広範囲な温度で使用できるとともに、1分間に100℃の急激な熱衝撃にも耐えることができる。したがって、温度測定用のセンサー容器として有効であり、また、非常に広い応用分野を備えていると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の容器の外観を示す概略図であり、(a)は表面図、(b)は正面図、(c)は側面図、(d)は裏面図を示す。
【図2】図1の容器の、内部を示す概略図であり、(a)は図1に示すA−A矢視断面図、(b)は図2(a)に示すB−B矢視断面図、(c)は図2(a)に示すC−C矢視断面図、(d)は図2(a)に示すD−D矢視断面図である。
【図3】本発明の容器と従来の容器とを比較して示す説明図であり、(a)は本発明の容器の部分図、(b)は本発明の容器内回路図、(c)は従来の容器の部分図、(d)は従来の容器内回路図を示す。
【図4】温度測定における容器の結線と実際の回路構成を示す説明図であり、(a)は1個の容器を測定器にリード線で直接接続した例であり、(b)は1個の容器を測定器にアンテナを用いて接続した例であり、(c)は2個の容器を直列に接続するとともに測定器にアンテナを用いて接続した例であり、(d)は2個の容器を並列に接続するとともに測定器にアンテナを用いて接続した例であり、(e)は従来の例である。
【図5】従来の容器を示し、(a)裏面図であり、(b)は断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は本発明の容器10の外観を示す概略図であり、(a)は表面図、(b)は正面図、(c)は側面図、(d)は裏面図を示す。容器10の主な構成は、電子素子を収納するための収納空間を形成する枠体部13と、枠体部13の表裏を閉塞する表面板11及び裏面板12により構成されている。そして、裏面板12の外部には、外部電極22a、22b及びダミー電極24が設けられている。容器10の大きさとしては、例えば、縦横が7mmで厚さが1.5mm程度とすることができる。なお、収納する電子素子30の種類によって容器10の態様は多少変化するが、ここでは、代表的な温度測定用の圧電共振子の場合を説明する。
【0018】
容器10は、外観形状が直方体であるが、電子素子を収納するのに適当であり外部回路との接続に適した形状であれば、どの様な形状とすることもできる。例えば、枠体部13は、4角形に限らず、他の多角形や円形、楕円形等とすることができる。また、枠体部13と裏面板12とを一体に形成して容器本体部とし、表面板11が蓋部となるように形成することもできる。
【0019】
本発明の容器10は、少なくともその一部を誘電体材料で構成することを必須の要件としている。後述するように、本発明では、容器内部の内部電極と容器外部の外部電極とを誘電体を介して対峙させ、コンデンサーを形成することを特徴としている。さらに、容器10は厳しい温度変化に対応できることが望ましいことから、全体をセラミックとすることが好ましい。用途によっては、シリコンを使用することもある。本明細書においては、「セラミック」という用語は、は「石英」を含む意味で用いることとする。
【0020】
図2は、容器10の内部を示す概略図であり、(a)は図1(b)に示すA−A矢視断面図、(b)は(a)に示すB−B矢視断面図、(c)は(a)に示すC−C矢視断面図、(d)は(a)に示すD−D矢視断面図である。
【0021】
容器10の裏面板12は誘電体材料で構成され、裏面板12の内側には2つの内部電極21a、21bが設けられており、裏面板12の外側には2つの外部電極22a22bが設けられている。そして、内部電極21a及び外部電極22aが、裏面板12の内外に対向して設けられている。また、内部電極21b及び外部電極22bが、裏面板12の内外に対向して設けられている。図1(d)に示すダミー電極24に対向して、ダミーの内部電極を設けることもできる。
【0022】
圧電共振子の場合、その両面において銅、銀、白金等でメタライズ加工することにより電極を形成している。すなわち、電子素子30の表面に素子電極31aが、裏面に素子電極31bが設けられている。素子電極31aは、電子素子30の表面から端部を通って裏面に回りこみ内部電極21aに接続されている。素子電極31bは、電子素子30の裏面において内部電極21bに接続されている。
【0023】
本発明の容器10は、裏面板12の内外に対向して、内部電極21a、21bと外部電極22a、22bを形成しているが、他の部分、例えば表面板11の内外に対向して内部電極及び外部電極を形成することもできる。さらに、枠体部13と裏面板12とを一体に形成して容器本体部とし、表面板11が蓋部となるように形成した場合には、容器本体部の裏面板12の内外に対向して内部電極及び外部電極を形成することが好ましい。
【0024】
図3は、本発明の容器10と従来の容器110とを比較して示す説明図である。従来の容器110は、(c)に示すように、内部電極121と外部電極122が配線層123によって結線されている。したがって、容器110内の回路図は、(d)に示すように、電子素子130の素子電極131a、131bが、それぞれ外部電極122a、122bに直接結線されていることになる。
【0025】
本発明の容器10では、(a)に示すように、内部電極21aと外部電極22aとが、誘電体材料である裏面板12を介して対向して設けられることにより、内部電極21a、外部電極22a及び裏面板12が、コンデンサー32aを形成することになる。すなわち、(b)に示すように、素子電極31aと外部電極22aとが、コンデンサー32aによって電気的に接続された回路を形成することになる。
【0026】
同様にして、内部電極21bと外部電極22bとが、誘電体材料である裏面板12を介して対向して設けられることによって、内部電極21b、外部電極22b及び裏面板12が、コンデンサー32bを形成することになる。そして、素子電極31bと外部電極22bとが、コンデンサー32bによって電気的に接続された回路を形成することになる。
【0027】
このように、容器10に収納された電子素子30は、これを回路に組み込むと、本来の電子素子30に加えて2つのコンデンサー32a、32bを直列に接続したことになる。したがって、直流回路では使用することができないが、交流回路では有効に使用することが可能であり、また、これを活用することができる。特に、電子素子30が温度測定用の圧電共振子である場合には、従来の容器110に収納された場合と全く同様に、測定温度に対応する特異周波数を測定することができる。
【0028】
圧電共振子としては、従来から使用されている水晶の他、ランタン、ガリウム、珪素、ニオブ、タンタル、アルミニウム等を含み、ランガサイト構造を有する酸化物結晶材料を使用することができる。ランガサイト構造の結晶材料は、厳しい温度環境に対応することが可能であり、測定する温度範囲が非常に広いとともに、急激な熱衝撃にも耐えることができる。
【0029】
容器10内は、特許文献1に記載されているようなロウ付け等の方法によって、内部を気密に封止することができる。そして、容器10の内部を真空状態又は不活性ガスで置換した状態とすることができる。このような状態とするために、特許文献1では、容器110に封止穴141を設けているが、このような穴を設けないで封止することもできる。
【0030】
図4は、温度測定用の圧電共振子を用いた温度測定の説明図であり、(a)〜(c)は本発明の容器40を使用した場合であり、(e)は従来の容器110を用いた場合を示している。各図において、左側の図は容器の結線を示す図であり、右側の図は実際の回路構成を示す図である。
【0031】
温度の測定には、例えばネットワークアナライザのような、測定温度に対応する特異周波数の測定手段を内蔵した測定器50を用いる。この測定器50は、圧電共振子を備える回路に周波数の変化する高周波の交流信号を供給することにより、温度に対応する圧電共振子の特異周波数を測定することができる。(e)に示すように、温度測定用の圧電共振子を従来の容器110に収納した場合は、容器110を測定器50に接続すると、電子素子130は直接測定器50に接続されたこととなる。これは従来の温度測定方法である。
【0032】
(a)に示すように、温度測定用の圧電共振子を本発明の容器10に収納した場合は、容器10を測定器50に接続すると、電子素子30とコンデンサー32a、23bが直列に結線された回路となる。(a)の回路は、(e)とは総合的なインピーダンスが異なるものの、同様なLC回路を構成することになり、(e)と同様に(a)においても温度測定を行うことができる。
【0033】
(b)に示すように、容器10と測定器50とをアンテナ51、52によって非接触で接続することもできる。この場合、回路にはコンデンサー32a、32bに加えてコイルを含むことになるが、(a)と同様にLC回路を構成することになり、温度測定を行うことができる。アンテナ51、52を用いて非接触とすることによって、例えば、動いている物体における温度を測定することができる。
【0034】
(c)は容器10を2個直列に接続した例であり、(d)は容器10を2個並列に接続した例である。このように、複数の容器10を使用することも可能である。そして、複数点の温度を測定することができる。何れにおいても、コンデンサー32a、32b等の数が増加するが、(a)及び(b)と同様に温度測定を行うことができる。
【0035】
以上のように、本発明の容器10は構造が簡単であり、確実に気密封止を行うことができるとともに、安価に製造することができる。また、容器10全体をセラミックで構成することにより、−270℃〜1000℃の広範囲な温度で使用できるとともに、1分間に100℃の急激な熱衝撃にも耐えることができる。したがって、温度測定用のセンサー容器として有効であり、また、非常に広い応用分野を備えていると考えられる。
【符号の説明】
【0036】
10、110 容器
11 表面板
12 裏面板
13 枠体部
21、21a、22b、121 内部電極
22、22a、22b、122 外部電極
24 ダミー電極
30、130 電子素子
31a、31b 素子電極
32a、32b コンデンサー
50 測定器
51、52 アンテナ
111 本体部
112 蓋部
116 下層板
117 中層板
118 上層板
119 シールリング
123 配線層
141 封止穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子素子を収納する容器であって、少なくともその一部が誘電体材料で構成され、
容器内において前記電子素子に接続される内部電極と、容器外で回路に接続される外部電極とが、前記誘電体材料を介して電気的に接続されていることを特徴とする容器。
【請求項2】
前記電子素子の収納空間を形成する枠体部と、該枠体部の表裏を閉塞する表面板及び裏面板により構成されることを特徴とする請求項1に記載の容器。
【請求項3】
外観形状が直方体であることを特徴とする請求項1又は2に記載の容器。
【請求項4】
前記表面板及び/又は前記裏面板が前記誘電体材料で構成され、
前記内部電極及び前記外部電極が、前記表面板及び/又は前記裏面板の内外に対向して設けられていることを特徴とする請求項2又は3に記載の容器。
【請求項5】
前記誘電体材料が、セラミックであることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の容器。
【請求項6】
前記電子素子が、温度測定用の圧電共振子であることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−204672(P2012−204672A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−68752(P2011−68752)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000136561)株式会社フルヤ金属 (48)
【Fターム(参考)】