説明

容量性負荷駆動装置及びPDP表示装置

【課題】PDP表示装置の行電極駆動回路において、容量性負荷の発光の維持状態で、配線の断線などに起因して駆動部への電源供給が停止した際に、出力部のローサイドトランジスタがOFF動作して破壊されてしまうことを防止する。
【解決手段】容量性負荷10の発光の維持状態では、出力部23のN型MOSローサイドトランジスタ5はON状態にある。いま、外部電源14から低電圧電源端子1への配線1aが断線することなどに起因して駆動部16への電源供給が停止してしまった場合には、この電源供給の停止が検知部22のN型MOS検知トランジスタ9のOFF動作により検知され、駆動部16内のOFF動作したP型MOSトランジスタ7の寄生ダイオード17を経て低電圧電源端子1に至る電流経路が遮断される。その結果、出力部23のN型MOSローサイドトランジスタ5は、そのドレイン−ゲート間の寄生容量6に容量性負荷10の充電電荷が蓄積されて、そのゲート電位が高く保持されるので、ON状態を維持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は容量性負荷駆動装置に関し、特に、プラズマ・ディスプレイ・パネル(以下、PDPと呼ぶ)表示装置の走査駆動用ドライバの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、PDP表示装置は、PDPパネルのガラス基板内に封じたガスをパネル制御回路で制御しており、列電極駆動回路と行電極駆動回路とにより選択した電極間に所定電位で放電させて発光させており、この発光を維持させるために2つの維持電極駆動回路が備えられる。特に、前記行電極駆動回路は、各横線での電極の発光を選択するために線順次走査ないしインターレス走査を行うための駆動回路である。
【0003】
図5は、従来のPDP表示装置に備える行電極駆動回路の要部の構成を示す。同図において、行電極駆動回路29は、高電圧電源端子3に接続されたP型MOSハイサイドトランジスタ4とN型MOSローサイドトランジスタ5とがプッシュプル回路を構成して、その回路の出力端子OUTはPDPパネルを模した容量性負荷10を介して維持電極駆動回路15と接続される。
【0004】
前記P型MOSハイサイドトランジスタ4は高電圧電源端子保護ダイオード25を介して高電圧電源28に接続され、一方、N型MOSローサイドトランジスタ5は他の維持電極駆動回路35に接続される。
【0005】
また、前記P型MOSハイサイドトランジスタ4はレベルシフト部13により駆動され、N型MOSローサイドトランジスタ5は駆動部16内のP型MOSトランジスタ7とN型MOSトランジスタ8とからなるインバータにより駆動される。制御回路部24は、制御信号を受けて、前記レベルシフト部13及び駆動部16を制御する。
【0006】
前記制御回路部24及び駆動部16は、外部電源14から低電圧電源端子1を介して低電圧VDDの供給を受けて動作する。尚、17はP型MOSトランジスタ7の寄生ダイオード、18はN型MOSトランジスタ8の寄生ダイオード、19はP型MOSハイサイドトランジスタ4の寄生ダイオード、20はN型MOSローサイドトランジスタ5の寄生ダイオードである。
【0007】
次に、前記従来の行電極駆動回路の動作を説明する。初めに、N型MOSローサイドトランジスタ5はOFF状態にあることを前提とする。即ち、駆動部16のN型MOSトランジスタ8が制御回路部24により制御されてONし、低電圧となっている維持電極駆動回路35の電位がN型MOSローサイドトランジスタ5のゲートに伝わって、N型MOSローサイドトランジスタ5はOFF状態にあることを前提とする。この状態において、レベルシフト回路13からP型MOSハイサイドトランジスタ4のゲートに信号が伝わると、P型MOSハイサイドトランジスタ4がONして、容量性負荷10に高電圧電源端子3の高電圧VDDHが伝わって、パネル容量と等価な容量性負荷10に電荷が充電される。
【0008】
その後、前記P型MOSハイサイドトランジスタ4がレベルシフト回路13により制御されてOFFすると、今度は駆動部16のN型トランジスタ8が制御回路部24により制御されてOFFすると共に、駆動部16のP型トランジスタ7が制御回路部24により制御されてONし、外部電源14から供給された低電圧電源端子1の低電圧VDDがN型MOSローサイドトランジスタ5のゲートに伝わって、N型MOSローサイドトランジスタ5がONし、前記容量性負荷10に蓄えられた充電電荷がN型MOSローサイドトランジスタ5を介して、低電圧となっている維持電極駆動回路35へと放出される。このように容量性負荷10での充放電を行って、所定容量性負荷10を発光させる。
【0009】
このように容量性負荷10を発光させた後、その発光を維持するために、前記2つの維持電極駆動回路15、35が備えられる。以下、この発光維持のための制御を説明する。
【0010】
PDPパネルの所定電極の発光の維持駆動の一例として、図6を用いて説明する。発光の維持のための2つの電極は容量性負荷10として作用する。この発光維持の際には、前記図5に示した行電極駆動回路29では、P型MOSハイサイドトランジスタ4はOFF状態で且つN型MOSローサイドトランジスタ5がONしている。
【0011】
この発光維持状態においては、2つの維持電極駆動回路15、35は、図6に示したように、高電位VDHと接地電位GNDとの間で交互に変化する電圧を容量性負荷10に与える。この時、一方の維持電極駆動回路(例えば15)の電位が高電位VDHのときには他方の維持電極駆動回路(例えば35)の電位は接地電位GNDに変化しており、この両維持電極駆動回路15、35の電位の変化は相互に逆相の関係に設定されており、これにより、容量性負荷10への充放電が繰り返し行われる。
【0012】
いま、N型MOSローサイドトランジスタ5が正常にON動作している際において、一方の維持駆動回路15の電位が高電位VDHとなり、他方の維持駆動回路35の電位が接地電位GNDとなった時には、容量性負荷10の電荷はON状態のN型MOSローサイドトランジスタ5を経て接地に流れ込み、ON状態のローサイドトランジスタ5のドレイン−ソース間の電圧は0電位である。また、逆に、一方の維持駆動回路15の電位が接地電位GNDとなり、他方の維持駆動回路35の電位が高電位VDHとなった時にも、電流はN型MOSローサイドトランジスタ5のバックゲート−ドレイン間の寄生ダイオード20を経て容量性負荷10に流れ込み、N型MOSローサイドトランジスタ5のドレイン−ソース間の電圧は0電位である。
【0013】
以上のように2つの維持電極駆動回路を用いて容量性負荷の発光を維持する構成は、例えば特許文献1に記載されている。
【特許文献1】特開2004−46160号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、前記従来の構成では、下記の問題点がある。
【0015】
すなわち、外部電源14に接続された低電圧電源端子1の配線1aが断線したり、この配線1aが接地されてしまった場合には、次の問題が生じる。すなわち、この場合には、低電圧電源端子1から駆動部16への低電圧VDDへの供給が停止するため、駆動部16ではP型MOSトランジスタ7からN型MOSローサイドトランジスタ5のゲートに対して低電圧VDDの供給ができず、その結果、このN型MOSローサイドトランジスタ5のゲートでの電荷は駆動部16のP型MOSトランジスタ7のドレイン−バックゲート間の寄生ダイオード17や制御回路部24を介して接地に流れて、電圧降下し、やがて接地電位となって、N型MOSローサイドトランジスタ5はON状態からOFF状態に切り換わる。このようにN型MOSローサイドトランジスタ5がOFF状態になった状態では、他方の維持電極駆動回路35の電位が高電位VDH(例えば240V)となると、電荷は前記OFF状態のN型MOSローサイドトランジスタ5のバックゲート−ドレイン間の寄生ダイオード20を経て出力端子OUTから容量性負荷10に流れ込むため、N型MOSローサイドトランジスタ5のソース−ドレイン間の電位差は0電位となる。その後、他方の維持電極駆動回路35の電位が接地電位GNDに変化すると、前記容量性負荷10に流れ込んだ電荷(出力端子OUTの電荷)は、前記OFF状態のN型MOSローサイドトランジスタ5や寄生ダイオード20に阻止されて接地に流れ込むことができず、高電位VDHを維持するため、OFF状態のN型MOSローサイドトランジスタ5のソース−ドレイン間電圧は、図6に示すように一気に高電圧VDH(例えば240V)に上昇して、このN型MOSローサイドトランジスタ5の破壊電位を越えてしまい、出力端子OUTが破損することとなる。
【0016】
本発明は前記従来の問題点を解決するものであり、その目的は、駆動部に低電圧を供給する低電圧電源端子の配線の断線や、接地への短絡が生じてしまった場合であっても、出力端子の破損を招くことがない容量性負荷駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
以上の目的を達成するため、本発明では、駆動部に低電位を供給する低電圧電源端子の配線の断線や、接地への短絡が生じてしまった場合、すなわち、容量性負荷に接続されるローサイドトランジスタがON状態からOFF状態に切り換わる場合には、そのローサイドトランジスタのON状態を強制的に維持する構成を採用する。
【0018】
具体的に、請求項1記載の発明の容量性負荷駆動装置は、第1の基準電位を電源とするハイサイドトランジスタ及び少なくとも2段階に変化する第2の基準電位を電源とするローサイドトランジスタを備え、容量性負荷を駆動するプッシュプル型の出力部と、第3の基準電位に基づいて前記出力部のローサイドトランジスタをON駆動すると共に、前記第2の基準電位に基づいて前記出力部のローサイドトランジスタをOFF駆動する駆動部と、前記出力部のハイサイドトランジスタ及び前記駆動部を制御する制御回路部と、前記駆動部への前記第3の基準電位の電力供給がなくなったことを検出して、前記出力部のローサイドトランジスタのON状態を維持する検知部とを備えたことを特徴とする。
【0019】
請求項2記載の発明は、前記請求項1記載の容量性負荷駆動装置において、前記駆動部は、前記出力部のローサイドトランジスタのゲートに接続されたP型トランジスタを有し、前記P型トランジスタは、前記制御回路部によりON制御されて、前記第3の基準電位を前記出力部のローサイドトランジスタのゲートに印加して前記ローサイドトランジスタをON駆動することを特徴とする。
【0020】
請求項3記載の発明は、前記請求項2記載の容量性負荷駆動装置において、前記駆動部は、前記P型トランジスタと、前記出力部のローサイドトランジスタのゲートに接続されたN型トランジスタとから成るインバータを有することを特徴とする。
【0021】
請求項4記載の発明は、前記請求項2又は3記載の容量性負荷駆動装置において、前記検知部は、前記第3の基準電位から電力供給を受け、この電力供給がなくなった時にOFF動作する検知トランジスタを有することを特徴とする。
【0022】
請求項5記載の発明は、前記請求項4記載の容量性負荷駆動装置において、前記検知部の検知トランジスタは、前記駆動部のP型トランジスタのドレイン−バックゲート間の寄生ダイオードを経て前記第3の基準電位に至る配線の電流パスに配置されることを特徴とする。
【0023】
請求項6記載の発明は、前記請求項4又は5記載の容量性負荷駆動装置において、前記検知部の検知トランジスタは、N型トランジスタで構成され、そのバックゲートは前記第2の基準電位に、ゲート及びドレインは第3の基準電位に、ソースは前記駆動部のP型トランジスタのバックゲートに接続されることを特徴とする。
【0024】
請求項7記載の発明は、前記請求項4又は5記載の容量性負荷駆動装置において、前記検知部の検知トランジスタは、P型トランジスタで構成され、そのゲートは第2の基準電位に、ドレインは第3の基準電位に、ソース及びバックゲートは前記駆動部のP型トランジスタのバックゲートに接続されることを特徴とする。
【0025】
請求項8記載の発明のPDP表示装置は、プラズマ・ディスプレイ・パネルの行方向に位置する電極を前記容量性負荷として駆動する行電極駆動回路としての前記請求項1〜7の何れか1項に記載の容量性負荷駆動装置と、前記プラズマ・ディスプレイ・パネルの列方向に位置する電極を駆動する列電極駆動回路と、前記プラズマ・ディスプレイ・パネルの各電極の発光を維持する2つの維持電極駆動回路とを備えたことを特徴とする。
【0026】
請求項9記載の発明は、前記請求項8記載のPDP表示装置において、前記2つの維持電極駆動回路のうち一方は、前記容量性負荷の一方の電極に接続され、他方の維持電極駆動回路は、前記容量性負荷の他方の電極に、前記容量性負荷駆動装置の出力部のローサイドトランジスタを介して接続されることを特徴とする。
【0027】
請求項10記載の発明は、前記請求項8又は9記載のPDP表示装置において、前記2つの維持電極駆動回路は、発光を維持する電極に対して、互いに逆相の電圧を印加することを繰り返すことを特徴とする。
【0028】
請求項11記載の発明は、前記請求項9記載のPDP表示装置において、前記他方の維持電極駆動回路は、所定の電極の発光を維持するに際し、前記第2の基準電位を少なくとも2段階に交互に繰り返し変化させることを特徴とする。
【0029】
以上により、請求項1〜11記載の発明では、駆動部が第3の基準電位に基づいて出力部のローサイドトランジスタをON駆動している際において、前記第3の基準電位の駆動部への供給が断線等に起因して停止してしまった場合には、前記出力部のローサイドトランジスタはOFF状態に変化しようとするが、前記第3の基準電位の供給の停止を検知部が検知して、その検知部自体が例えば容量性負荷からの充電電荷を前記ローサイドトランジスタのゲート容量に蓄積して、そのローサイドトランジスタのON状態を維持する。従って、このON状態のローサイドトランジスタのソ−ス−ドレイン間の電圧は、前記第3の基準電位の供給の停止状態であっても、0電圧に維持されるので、このローサイドトランジスタの破壊は生じず、出力端子の破損を招くことがない。
【発明の効果】
【0030】
以上説明したように、請求項1〜11記載の発明では、電源供給端子の配線の断線などが生じた場合にも、ローサイドトランジスタのON状態を維持して、そのソース−ドレイン間に破壊電圧以上の電圧がかからないようにしたので、出力端子の破損を招くことがない容量性負荷駆動装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照しながら説明する。
【0032】
(第1の実施形態)
図1は、PDP表示装置の要部構成を示す。同図において、40はガスがガラス基板内に封じられたPDPパネル、41は列方向に配置された複数の電極を選択して駆動する列電極駆動回路、42は行方向に配置された複数(例えば2160本)の電極を選択して駆動する行電極駆動回路、15は前記行方向に配置された複数の電極と交互に配置された複数(例えば2160本)の電極を駆動する維持電極駆動回路、35は前記維持電極駆動回路15と共に、前記列電極駆動回路41と行電極駆動回路42とによって位置決めされた発光電極の発光を維持する他の維持電極駆動回路、45は前記4つの駆動回路の動作を制御するパネル制御回路である。
【0033】
前記行電極駆動回路42の内部のブロック構成を図2に示す。同図において、行電極駆動回路42は、P型MOSハイサイドトランジスタ4とN型MOSローサイドトランジスタ5とを接続したインバータを備えたプッシュプル型の出力部23を備え、前記インバータの出力端子には、PDPパネルである容量性負荷10の一方の電極が接続され、この容量性負荷10の他方の電極には、発光を維持するための維持電極駆動回路15が接続される。前記出力部23のP型MOSハイサイドトランジスタ4は第1の基準電位VDDHを電源とし、N型MOSローサイドトランジスタ5には、電極の発光を維持する他の維持電極駆動回路35が接続される。
【0034】
また、前記行電極駆動回路42には、前記出力部23のP型MOSハイサイドトランジスタ4をON/OFF駆動するレベルシフト部13と、前記出力部23のN型MOSローサイドトランジスタ5をON/OFF駆動する駆動部16と、制御信号を受けて前記レベルシフト部13及び駆動部16を制御する制御回路部24とが備えられる。前記駆動部16及び制御回路部24は、共に、低電圧電源端子1及び配線1aを介して低電圧VDDの外部電源14が接続されており、この低電圧VDDを電源として動作する。
【0035】
そして、本発明に特徴的な構成として、前記行電極駆動回路42には検知部22が備えられる。この検知部22には、前記外部電源14の低電圧VDDが配線1a及び低電圧電源端子1を介して供給されており、後述するようにこの低電圧VDDの供給がなくなったことを検出する。
【0036】
次に、前記行電極駆動回路42の内部の詳細な回路構成を図3に基づいて説明する。同図の行電極駆動回路42において、出力部23では、P型MOSハイサイドトランジスタ4は、そのソースが高電圧電源端子保護ダイオード25のカソードと寄生ダイオード19のカソードに接続され、そのドレインは容量性負荷10と寄生ダイオード19のアノードとに接続され、そのゲートはレベルシフト部13に接続される。前記高電圧電源端子保護ダイオード25は、そのアノードが高電位(第1の基準電位)VDDHである高電圧電源端子3から行電極駆動回路42用の高電圧電源28に接続されている。この高電圧電源端子保護ダイオード25は、高電圧電源端子3に流れ込む電流を防止する機能を有する。また、N型MOSローサイドトランジスタ5は、そのソースが維持電極駆動回路35と寄生ダイオード20のアノードとに接続され、そのドレインは寄生ダイオード20のカソードと前記P型MOSハイサイドトランジスタ4のドレインと接続される。前記N型MOSローサイドトランジスタ5のゲート・ドレイン間には寄生容量6が形成されている。
【0037】
更に、駆動部16は、P型MOSトランジスタ7とN型MOSトランジスタ8とを接続したインバーター構成を持つ。前記P型MOSトランジスタ7は、そのソースが低電圧電源端子1に接続され、そのドレインは寄生ダイオード17のアノードに接続され、バックゲートは寄生ダイオード17のカソードに接続される。一方、N型MOSトランジスタ8は、そのソースが維持電極駆動回路35と寄生ダイオード18のアノードに接続され、そのドレインは寄生ダイオード18のカソードに接続される。そして、駆動部16の出力点(P型MOSトランジスタ7のドレインとN型MOSトランジスタ8のドレインとの接続点)は、前記出力部23のN型MOSローサイドトランジスタ5のゲートに接続される。
【0038】
加えて、検知部22はN型MOS検知トランジスタ9を備える。このN型MOS検知トランジスタ9は、そのソースが駆動部16のP型MOSトランジスタ7のバックゲートと寄生トランジスタ17のカソードとに接続され、そのゲートとドレインとは低電圧電源端子1に接続され、そのバックゲートは維持電極駆動回路35に接続される。このN型MOS検知トランジスタ9には、低電圧電源端子1とバックゲートとの間に寄生ダイオード21が形成されている。
【0039】
前記一方の維持電極駆動回路15は、少なくとも2段階に変化する第2の基準電位、すなわち、高電圧(例えば240v)VDHの電源端子11と低電圧(例えば0v)VDLの電源端子12とに接続されている。同様に、他方の維持電極駆動回路35は、高電圧(例えば240v)VDHの電源端子11に接続されると共に、接地されている。この両維持電極駆動回路15、35は、発光すべき容量性負荷10が決定された後、即ち、出力部23のP型MOSハイサイドトランジスタ4がOFF態でN型MOSローサイドトランジスタ5がON状態となった状態では、図6に示すように、相互に逆相で高電圧VDHと低電圧VDL(=0v)とを交互に印加する。
【0040】
以上のように構成された本実施形態の容量性負荷駆動装置について、以下、動作を説明する。
【0041】
容量性負荷10の発光を維持する通常動作時では、N型MOSローサイドトランジスタ5がON状態なので、従来例で示した動作と同様であるので、省略する。
【0042】
一方、前記容量性負荷10の発光を維持する通常動作時において、例えば外部電源14と低電圧電源端子1とを接続する配線1aが断線したり接地電位と短絡したりするなどに起因して、低電圧電源端子1の電圧が0電圧となった異常時には、駆動部16ではP型MOSトランジスタ7がOFFし、そのドレイン−バックゲート間の寄生ダイオード17は存在しているが、検知部22のN型MOS検知トランジスタ9のゲート電圧が低下して、N型MOS検知トランジスタ9がOFFとなり、低電圧電源端子1から駆動部16への低電圧(第3の基準電位)VDDの供給がなくなったことが検出される。この検出時には、前記N型MOS検知トランジスタ9のOFF動作によって、駆動部16のP型MOSトランジスタ7のバックゲートから低電圧電源端子1への電流経路が遮断されて、N型MOSローサイドトランジスタ5のゲートから低電圧電源端子1への電流経路が遮断される。その結果、容量性負荷10の充電電荷は、N型MOSローサイドトランジスタ5のゲート・ドレイン間の寄生容量6に蓄積され、これにより、N型MOSローサイドトランジスタ5のゲート電位が上昇して、N型MOSローサイドトランジスタ5がON状態に保持される。
【0043】
その結果、維持電極駆動回路35の電位が高電位VDH(例えば240v)となった際には、その電荷は出力部23のN型MOSローサイドトランジスタ5の寄生ダイオード20及び出力端子OUTを経て容量性負荷10の一方の電極に充電されるが、その後、維持電極駆動回路35の電位が低電位VDL(例えば0電位)に変化したときには、N型MOSローサイドトランジスタ5がON状態を維持しているので、前記容量性負荷10での充電電荷がこのN型MOSローサイドトランジスタ5を経て接地に流れ出す電流経路を確保される。よって、低電圧電源端子1の配線1aが断線又は接地電位と短絡した場合であっても、N型MOSローサイドトランジスタ5はそのソース−ドレイン間電圧は0電位を維持して、その破壊を招かず、出力端子OUTの破損を招くことがない。
【0044】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態を図4に基づいて説明する。
【0045】
前記第1の実施形態では、検知部22をN型MOS検知トランジスタ9で構成したが、本実施形態ではP型MOS検知トランジスタ26で構成したものである。
【0046】
即ち、本実施形態の行電極駆動回路31において、検知部22では、P型MOS検知トランジスタ26が備えられる。このP型MOS検知トランジスタ26は、そのソース及びバックゲートが駆動部16のP型MOSトランジスタ7のバックゲートと寄生ダイオード17のカソードに接続され、そのドレインは低電圧電源端子1に接続され、ゲートは維持電極駆動回路35に接続される。このP型MOS検知トランジスタ26では、そのドレイン−バックゲート間に寄生ダイオード27が形成される。
【0047】
従って、本実施形態では、容量性負荷10の発光を維持している通常動作時においては、出力部23のN型MOSローサイドトランジスタ5はON状態にあるが、この状態において、例えば外部電源14と低電圧電源端子1とを接続する配線1aが断線したり接地電位と短絡したりするなどに起因して、低電圧電源端子1の電圧が0電圧となった異常時には、駆動部16ではP型MOSトランジスタ7がOFFし、そのドレイン−バックゲート間の寄生ダイオード17は存在しているが、検知部22のP型MOS検知トランジスタ26のドレイン電圧が低下して、P型MOS検知トランジスタ26のゲート電圧が維持電極駆動回路35の接地電圧になると、P型MOS検知トランジスタ26がON状態からOFF状態に切り換わって、低電圧電源端子1から駆動部16への低電圧VDDの供給がなくなったことが検出される。この検出時には、前記P型MOS検知トランジスタ26のOFF動作によって、駆動部16のP型MOSトランジスタ7のバックゲートから低電圧電源端子1への電流経路が遮断されて、N型MOSローサイドトランジスタ5のゲートから低電圧電源端子1への電流経路が遮断される。その結果、容量性負荷10の充電電荷は、N型MOSローサイドトランジスタ5のゲート・ドレイン間の寄生容量6に蓄積され、これにより、N型MOSローサイドトランジスタ5のゲート電位が上昇して、N型MOSローサイドトランジスタ5がON状態に保持される。
【0048】
その結果、前記第1の実施形態と同様に、維持電極駆動回路35の電位が高電位VDH(例えば240v)となった際には、その電荷は出力部23のN型MOSローサイドトランジスタ5の寄生ダイオード20及び出力端子OUTを経て容量性負荷10の一方の電極に充電されるが、その後、維持電極駆動回路35の電位が低電位VDL(例えば0電位)に変化したときには、N型MOSローサイドトランジスタ5がON状態を維持しているので、前記容量性負荷10での充電電荷がこのN型MOSローサイドトランジスタ5を経て接地に流れ出す電流経路を確保される。よって、低電圧電源端子1の配線1aが断線又は接地電位と短絡した場合であっても、N型MOSローサイドトランジスタ5の破壊を招かず、出力端子OUTの破損を招くことがない。
【0049】
尚、前記第1及び第2の実施形態では、トランジスタをMOSトランジスタで構成したが、N型MOSローサードトランジスタ5はIGBTなど、他のパワーデバイスの構成に置換しても同様の効果を得ることができるのは勿論である。
【0050】
また、前記第1及び第2の実施形態では、本発明をPDP表示装置の行電極駆動回路に適用したが、他の容量性負荷駆動装置について同様に適用できるのは、勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0051】
以上説明したように、本発明は、配線の断線などに起因して駆動部への電源供給がなくなった際にも、出力部のローサイドトランジスタのON状態を維持できて、そのローサイドトランジスタのの破壊を防止できるので、出力端子の破損を常に有効に防止できる容量性負荷駆動装置を提供できる。従って、特に、この容量性負荷駆動装置をPDP表示装置の行電極駆動回路として適用すれば、有用である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】PDP表示装置の全体概略構成を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の行電極駆動回路の内部ブロック構成を示す図である。
【図3】同行電極駆動回路の具体的回路構成を示す図である。
【図4】本発明の第2の実施形態の行電極駆動回路の具体的回路構成を示す図である。
【図5】従来の行電極駆動回路の内部回路構成を示す図である。
【図6】同従来の行電極駆動回路の動作タイムチャート図である。
【符号の説明】
【0053】
4 P型MOSハイサイドトランジスタ
5 N型MOSローサイドトランジスタ
6 N型MOSローサイドトランジスタのゲート・ドレイン間寄生容量
7 P型MOSトランジスタ
8 N型MOSトランジスタ
9 N型MOS検知トランジスタ
10 容量性負荷
13 レベルシフト部
14 外部電源
15、35 維持電極駆動回路
16 駆動部
22 検知部
23 出力部
24 制御回路部
25 高電圧電源端子保護ダイオード
26 P型MOS検知トランジスタ
40 PDPパネル
41 列電極駆動回路
31、42 行電極駆動回路
45 パネル制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基準電位を電源とするハイサイドトランジスタ及び少なくとも2段階に変化する第2の基準電位を電源とするローサイドトランジスタを備え、容量性負荷を駆動するプッシュプル型の出力部と、
第3の基準電位に基づいて前記出力部のローサイドトランジスタをON駆動すると共に、前記第2の基準電位に基づいて前記出力部のローサイドトランジスタをOFF駆動する駆動部と、
前記出力部のハイサイドトランジスタ及び前記駆動部を制御する制御回路部と、
前記駆動部への前記第3の基準電位の電力供給がなくなったことを検出して、前記出力部のローサイドトランジスタのON状態を維持する検知部とを備えた
ことを特徴とする容量性負荷駆動装置。
【請求項2】
前記請求項1記載の容量性負荷駆動装置において、
前記駆動部は、前記出力部のローサイドトランジスタのゲートに接続されたP型トランジスタを有し、
前記P型トランジスタは、前記制御回路部によりON制御されて、前記第3の基準電位を前記出力部のローサイドトランジスタのゲートに印加して前記ローサイドトランジスタをON駆動する
ことを特徴とする容量性負荷駆動装置。
【請求項3】
前記請求項2記載の容量性負荷駆動装置において、
前記駆動部は、前記P型トランジスタと、
前記出力部のローサイドトランジスタのゲートに接続されたN型トランジスタとから成るインバータを有する
ことを特徴とする容量性負荷駆動装置。
【請求項4】
前記請求項2又は3記載の容量性負荷駆動装置において、
前記検知部は、
前記第3の基準電位から電力供給を受け、この電力供給がなくなった時にOFF動作する検知トランジスタを有する
ことを特徴とする容量性負荷駆動装置。
【請求項5】
前記請求項4記載の容量性負荷駆動装置において、
前記検知部の検知トランジスタは、
前記駆動部のP型トランジスタのドレイン−バックゲート間の寄生ダイオードを経て前記第3の基準電位に至る配線の電流パスに配置される
ことを特徴とする容量性負荷駆動装置。
【請求項6】
前記請求項4又は5記載の容量性負荷駆動装置において、
前記検知部の検知トランジスタは、
N型トランジスタで構成され、そのバックゲートは前記第2の基準電位に、ゲート及びドレインは第3の基準電位に、ソースは前記駆動部のP型トランジスタのバックゲートに接続される
ことを特徴とする容量性負荷駆動装置。
【請求項7】
前記請求項4又は5記載の容量性負荷駆動装置において、
前記検知部の検知トランジスタは、
P型トランジスタで構成され、そのゲートは第2の基準電位に、ドレインは第3の基準電位に、ソース及びバックゲートは前記駆動部のP型トランジスタのバックゲートに接続される
ことを特徴とする容量性負荷駆動装置。
【請求項8】
プラズマ・ディスプレイ・パネルの行方向に位置する電極を前記容量性負荷として駆動する行電極駆動回路としての前記請求項1〜7の何れか1項に記載の容量性負荷駆動装置と、
前記プラズマ・ディスプレイ・パネルの列方向に位置する電極を駆動する列電極駆動回路と、
前記プラズマ・ディスプレイ・パネルの各電極の発光を維持する2つの維持電極駆動回路と
を備えたことを特徴とするPDP表示装置。
【請求項9】
前記請求項8記載のPDP表示装置において、
前記2つの維持電極駆動回路のうち一方は、前記容量性負荷の一方の電極に接続され、
他方の維持電極駆動回路は、前記容量性負荷の他方の電極に、前記容量性負荷駆動装置の出力部のローサイドトランジスタを介して接続される
ことを特徴とするPDP表示装置。
【請求項10】
前記請求項8又は9記載のPDP表示装置において、
前記2つの維持電極駆動回路は、
発光を維持する電極に対して、互いに逆相の電圧を印加することを繰り返す
ことを特徴とするPDP表示装置。
【請求項11】
前記請求項9記載のPDP表示装置において、
前記他方の維持電極駆動回路は、
所定の電極の発光を維持するに際し、前記第2の基準電位を少なくとも2段階に交互に繰り返し変化させる
ことを特徴とするPDP表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−197878(P2010−197878A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−44673(P2009−44673)
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】