説明

密封された高周波フロントエンド

本発明は、電子部品(3,4)を含むマルチレイヤ構造における高周波フロントエンド(例えば、送信/受信モジュール)であって、マルチレイヤ構造は、上下に重ねられ、且つ、部品(3,4)を支持する、複数の基板(1,2)を備え、基板(1,2)には、溝(7)が形成され、基板(1,2)間には、密封素子(5,8)が設けられ、密封素子は、溝(7)に係合し、且つ、基板(1,2)に接合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特許請求の範囲の請求項1記載のマルチレイヤ構造における高周波(HF)フロントエンドに関する。この高周波(HF)フロントエンドは、送信/受信モジュール、送信モジュール、又は受信モジュールに、用いられるように構成される。
【背景技術】
【0002】
本発明は、特に、レーダシステムのアクティブ電子操縦アンテナ(AESA:active electronically steerable antennas)、合成開口レーダ(SAR:synthetic aperture rader)、電子兵器(EW:electronic warfare)、又はオペレーションコマンドシステムだけでなく、ナビゲーションシステム及び通信システムにも、使用可能である。考えられるプラットフォームは、陸上システム及び海上システム、航空機、衛星、無人機、及びミサイルに加えて、建築システム又は自動車システムである。これらのモジュールのマルチレイヤ構造は、モジュールの高度な小型化だけでなく、モジュールの等角配置、及び/又は、構造的に集積されたアンテナアレイにとって、必要条件である。
【0003】
レーダシステム用送信/受信モジュールが、欧州特許EP1328042B1号から公知になっており、このレーダシステム用送信/受信モジュールは、上下に積み重ねられた複数の基板層から構成され、この複数の基板層は、半田ボールによって接合されている。半田ボールは有限であるため、ギャップが、隣接する基板層の間に残る。水分及び他の混入物が、これらのギャップを通して、モジュールの内部に浸透することができ、このことが、モジュール内の個別部品(例えば、電気部品)の電気的機能に影響を及ぼし得るか、又は、個別部品にダメージを与えて、全体の欠陥を助長させる。EP1328042B1号に記載された各層間のソルダー接続にもかかわらず、モジュールの内部を密封することは、保証されていない。しかしながら、この密封は、宇宙旅行アプリケーション用モジュール及び厳しい環境下のプラットフォーム用モジュールを使用するために、必要である。
【0004】
厳しい影響からの保護は、外部の手段(例えば、追加の溶接された保護ケース)によって、可能になるが、この外部の手段は、送信/受信モジュールの断面の寸法を増加させる。また、機械的な力が、溶接中の上記保護ケースの変形に起因して、マルチレイヤ構造に加わり、このことが、モジュールの長期間の安定性に影響を及ぼすか、又は、モジュール層間の半田接合を破壊し得る。また、上記保護ケース(例えば、プラスティック(例えば、ポリマー)製のケース)は、限定的な密封のみを可能にするが、それは、完全な密封ではない。また、上記プラスティックは、規定時間を超えてガス抜きをするので、部品と、基板に対する部品の接合と、にダメージを与えることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、密封された内部空間を有する包括的なHFフロントエンド(例えば、集積されたラジエータ素子を有する送信/受信モジュール)を提供することである。
【0006】
この目的は、請求項1の特徴に従うHFフロントエンドによって、達成される。好適な本発明の実施形態は、従属項の主題である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のHFフロントエンドは、マルチレイヤ構造において実施形態され、且つ、電子部品を含み、マルチレイヤ構造は、上下に重ねられ、且つ、当該部品を支持する、複数の基板を備えている。当該モジュールは、溝(7)が、(各レイヤ構造の端部領域で)基板(1,2)に形成され、且つ、密封素子(例えば、金属フレーム又は金属カバー)は、基板間に設けられ、この密封素子は、溝内に配置され、且つ、隣接する基板に接合される。
【0008】
本発明の第1実施形態では、密封素子は、オープンフレーム素子であって、2つの隣接する構造の溝に係合する。本発明の第2実施形態では、密封素子は、クローズドカバー素子であって、各個別の構造(モジュール層)の密封を保証する。
【0009】
本発明は、添付の図面を用いて、より詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1a】内部領域において連続する溝を有する第1実施形態の発明に係るHFフロントエンドの概略的側面図。
【図1b】図1aにおける領域Aからの溝の拡大図。
【図1c】第1実施形態の発明に係るフレーム素子の概略図。
【図2】外部領域において連続する溝を有する第1実施形態の発明に係るHFフロントエンドの概略図。
【図3】第2実施形態の発明に係るHFフロントエンドの概略的側面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係るHFフロントエンドの第1実施形態が、図1aに示されている。図1aは、上下に重ねられた2つの基板1,2を示しており、各基板1,2は、(少なくとも)1つの部品3,4(例えば、増幅器、位相シフタ、振幅制御器、送信受信切換器(サーキュレータ)、制御装置(例えば、特定用途回路ASIC若しくはFPGA)、又はアンテナ素子)を支持する。各基板1,2は、基板の周辺に沿って適切に連続する溝7を含んでいる。フレーム密封素子5(好ましくは、金属、又は外部硬化を有するプラスティック)は、この溝7に挿入される(図1c)。このフレーム素子5は、2つの隣接する基板1,2の溝7に係合する。フレーム素子5は、溝に対して、適切に、半田付け又は接着される(図1bのコンタクト領域9を参照)。
【0012】
フレーム素子5の高さHは、2つの基板1,2間のギャップSができるように、適切に選択される。フレーム素子5の高さHは、ギャップSの大きさに適合されるが、これは、隣接する基板1,2間の電気的接続及び熱的接続を形成するために、半田ボールを溶解することによるものである。半田ボール6とフレーム素子5との間の電気的接続は、回避されるべきであり、回避できなければ、電気的にショートした回路をもたらす場合があるので、HFフロントエンドの欠陥となる。
【0013】
図1bは、2つのモジュール基板1,2の内部領域におけるコンタクト領域9に接合されたフレーム素子5を有する配置を示している。この配置は、隣接するモジュール層1,2の内部領域のために、密封を実施する。
【0014】
図1aは、また、オープンな内部空間Iが、使用されるフレーム素子5を有する隣接基板1,2の2つの部品3,4間に形成されることを、示している。半田ボール6が、外部領域に配置されることで、(例えば、個別のモジュール層の電気的機能をテストするためのモジュールを準備した後に)電気的手段に対してアクセス可能にすることが好ましい。この接続領域におけるファウリングの可能性が、この配置の欠点であり、電気的動作の劣化又は欠陥をもたらし得る。このことは、適切な環境技術制約(例えば、エアフィルタ)によって、防止することができる。
【0015】
図2は、図1aにおける領域Aに対応する、本発明に係るHFフロントエンドの断面を示しており、溝7が、基板の外部領域に連続する(即ち、内部領域Iから外側を向く)点が、異なっている。次いで、フレーム素子5は、2つのモジュール基板1,2の外部領域において図示されたコンタクト領域9に、接合される。この配置は、隣接する基板1,2(モジュール層)の内部領域Iのための密封をもたらす。半田ボール6は、保護された内部領域に位置するので、その後の電気的手段に対しては、アクセス不可能である。完全なモジュール設計及び集積された部品が好ましいが、これは、十分な密封が得られるためである。追加の環境制約は、必要ない。
【0016】
本発明に係るHFフロントエンドの第2実施形態が、図3に示されている。同一の部品には、それぞれ、図1において同一の参照符号が付されている。図3の実施形態は、オープンフレーム素子が用いられていない代わりに、クローズド素子8(例えば、金属カバー)が用いられているという点において、図1及び2に示される実施形態と異なる。
【0017】
カバー素子8は、本質的には、モジュール基板の各内部空間が、個別に閉じられることにより、密封されることを特徴とする。また、隣接する基板1,2の隣接内部空間Iは、互いに分断されるので、様々なモジュール基板上の部品の電磁結合が防止される。カバー素子8は、例えば、薄い金属帯板であっても良く、これにより、従来の製造方法(例えば、コンタクト領域9に対する、半田付け又は接着)を用いて、基板1,2の溝7に対して接合することができる。本発明の第2実施形態は、個々の基板の密封に加えて、追加の利点を提供するものであり、例えば、
− 半田ボールを用いた個々の基板の電気的接続の前の、閉じられた基板を用いた予備的な電気的テスト、
− 半田ボールの半田をはずした後の、個々の基板を取り替えることによる修理オプション、
− 改善された集積部品(例えば、集積部品内で新しい技術の結果として得られる回路)を個々の基板と取り替えることによる、個々の基板の単純なモダニゼーション、
− 標準化されたモジュール基板とアプリケーション依存のモジュール基板との組合せによる、モジュール式のアンテナ構造、
− 適切なモジュール基板を組み合わせることによって、送信/受信モジュール、送信モジュール、又は受信モジュールを実現する、モジュール式のモジュール構造。また、集積された放熱素子を有する最上級のモジュール基板は、アプリケーションに応じて、全体モジュール内に集積されても良いし、省略されても良い。
【図1a−1b】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品(3,4)を含むマルチレイヤ構造における高周波フロントエンドであって、
前記マルチレイヤ構造は、上下に重ねられ、且つ、前記部品(3,4)を支持する、複数の基板(1,2)を備え、
前記基板(1,2)には、溝(7)が形成され、前記基板(1,2)間には、密封素子(5,8)が設けられ、前記密封素子は、前記溝(7)に係合し、且つ、前記基板(1,2)に接合される、ことを特徴とする高周波フロントエンド。
【請求項2】
前記密封素子(5,8)の高さ(H)は、前記基板(1,2)間にギャップ(S)ができるように、選択され、前記ギャップ(S)は、半田を挿入するために形成される、ことを特徴とする請求項1に記載の高周波フロントエンド。
【請求項3】
半田ボール(6)が、前記ギャップ(S)に挿入される、ことを特徴とする請求項2に記載の送信/受信モジュール。
【請求項4】
前記溝(7)は、前記基板(1,2)の円周に形成される、ことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の送信/受信モジュール。
【請求項5】
前記密封素子(5,8)は、前記溝(7)に対して、半田付けされる、又は、接着される、ことを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の送信/受信モジュール。
【請求項6】
前記密封素子(5)は、オープンフレーム素子であり、前記オープンフレーム素子は、隣接する各基板(1,2)の溝(7)に係合するか、又は、前記密封素子(8)は、金属カバーであり、前記金属カバーは、各基板(1又は2)の溝(7)に係合する、ことを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の送信/受信モジュール。
【請求項7】
前記密封素子(8)は、クローズドカバー素子である、ことを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の送信/受信モジュール。

【図1c】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2013−507602(P2013−507602A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−532453(P2012−532453)
【出願日】平成22年9月18日(2010.9.18)
【国際出願番号】PCT/DE2010/001105
【国際公開番号】WO2011/042000
【国際公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(501477864)イーエイーディーエス、ドイチュラント、ゲゼルシャフト、ミット、ベシュレンクテル、ハフツング (10)
【氏名又は名称原語表記】EADS DEUTSCHLAND GMBH
【Fターム(参考)】