説明

密封容器及びその製造方法

【課題】内容物充填後に容器側壁部内面と蓋材の側壁部をレーザ溶着するタイプの密封容器において、容器側壁部内面に付着した内容物等に起因する密封不良が防止された密封容器を提供することである。
【解決手段】少なくとも底部及び側壁部から成る容器1と、該容器の開口部に嵌合可能な蓋10とから成り、レーザ溶着により密封一体化される密封容器において、前記蓋10が容器1の側壁部2の上方内面と接触可能な複数の環状突起14が形成された側壁12を有しており、該環状突起14のうち最下方の環状突起14a以外の環状突起14bが、容器側壁2と密着する位置で容器1とレーザ溶着されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ溶着により密封される密封容器及びその密封方法に関するものであり、より詳細には、レーザ溶着部の内容物等の付着に起因する密封不良が防止された密封容器及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
容器を蓋材で密封する方法としては、一般に容器及び蓋材の当接面に接着剤を施して接着する方法のほか、容器及び蓋材の当接面をヒートシール性樹脂から形成し、ヒートシールにより溶着させて密封することが行われており、ヒートシールによる溶着は、簡便な方法であることから一般的に広く採用されているが、熱溶着工程、及びその後に行われる冷却工程に時間がかかるため、生産効率の向上が望まれている。
また一般的なヒートシールバーを用いるヒートシール方式においては、溶着部分にある程度の面積が必要であると共に、溶着面が平面状であることが必要である。また溶着部分の外面からシール面に熱が伝導する必要があることから、厚肉の容器では熱の伝導に時間がかかり、生産性が低下するため、肉厚に制約があり、形状の自由度が低いという問題がある。
【0003】
またヒートシール部が冷却され、完全に密閉されるまでに所定の時間がかかるため、特に自生圧力を有する内容物を充填する場合や熱間充填する場合などでは、シール熱で熱膨張したヘッドスペースの気体が溶融状態のシール部から逃げることで、シール剥離を発生するおそれもある。
一方、容器及び蓋材等の溶着方法としては、従来よりレーザによる溶着も知られており、例えば、下記特許文献1には、容器本体に底蓋及び上蓋をレーザ溶着により溶着して一体化することが提案されている。
このようなレーザ溶着による包装体の部材の溶着においては、ヒートシールの場合に比して、レーザビームを照射した後すぐ溶着されるため、溶着に要する時間が短縮されている。また、レーザ溶着による容器及び蓋材の密封方法においては、レーザビームの照射方向によって、容器側壁部の外面側、内面側、或いはフランジ部等種々の溶着箇所を選択することができ、形状に制約を受けることなく確実に溶着を行うことが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−128166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、蓋材の形状が、落とし蓋のように天面の周囲に環状側壁部を有し、この環状側壁部と容器側壁部の内面を、内容物を充填後にレーザ溶着する場合に、密封不良が生じ、内容物の漏洩や或いは内容物の腐敗等の問題を生じるおそれがあることがわかった。
すなわち、容器内に内容物を充填する際、或いは充填から密封までの製造ラインにおける搬送時の揺れ等によって充填された内容物が容器側壁部内面に付着する場合や、或いは熱間充填により内容物からの水蒸気が付着する場合等があり、このような状態で、容器内面及び蓋材の側壁部の密着箇所にレーザビームが照射されても、両者の溶着がうまく行われず、密封性を確保できないことがわかった。
このような問題を解決する方法として、内容物の量を減らし、ヘッドスペースを大きくすることも考えられるが、経済性の点で不利である。
【0006】
従って本発明の目的は、内容物充填後に容器側壁部内面と蓋材の側壁部を溶着するタイプの密封容器において、密封不良が有効に防止された密封容器を提供することである。
本発明の他の目的は、容器側壁部内面に付着した内容物を、蓋材を嵌合させるときに効果的に除去することが可能な密封容器の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、少なくとも底部及び側壁部から成る容器と、該容器の開口部に嵌合可能な蓋とから成り、レーザ溶着により密封一体化される密封容器において、前記蓋は、前記容器の側壁部上方内面と接触可能な複数の環状突起が形成された側壁を有しており、該環状突起のうち最下方の環状突起以外の環状突起が、容器側壁と密着する位置で容器とレーザ溶着されていることを特徴とする密封容器が提供される。
本発明の密封容器においては、
1.容器と蓋の嵌合が、レーザ溶着部において最も嵌合力が大きいこと、
2.容器又は蓋の一方が着色されていること、
3.容器又は蓋の一方が、中間層が着色された多層構造であること、
4.蓋の側壁よりも内側に位置する天面には、開口部が形成されており、該開口部がシール材によって密封されていること、
が好適である。
【0008】
本発明によればまた、少なくとも底部及び側壁部から成る容器と、該容器の側壁部上方内面と接触可能な複数の環状突起が形成された側壁を有する蓋とから成る密封容器の製造方法であって、前記蓋を、環状突起の最下方の環状突起が容器側壁内面と接触させながら
容器開口部に嵌合し、環状突起のうち最下方の環状突起以外の環状突起が容器側壁部内面
と密着する位置にレーザ照射を行うことにより、容器と蓋をレーザ溶着することを特徴とする密封容器の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の密封容器によれば、内容物充填後に容器側壁部内面と蓋の側壁部を溶着するタイプの密封容器に生じていた密封不良を有効に防止することができる。
また本発明の密封容器によれば、内容物の入れ目線を容器開口の近傍に設定することができるため、容器のヘッドスペースを減すことができ、ヘッドスペースのガス置換の量を低減することができ、また内容物の量に対する容器の大きさを低減させることもでき、材料使用量及び容器重量の低減によるコスト削減を図ることができると共に、搬送性にも優れている。
また本発明の密封容器の製造方法によれば、容器側壁部内面に付着した内容物や水滴を、特別な工程を経ることなく除去することができるため、安定してレーザ溶着を行うことができ、生産性よく、密封性に優れた密封容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の密封容器の一例の一部拡大断面図である。
【図2】本発明の密封容器の他の一例の一部拡大断面図である。
【図3】本発明の密封容器の他の一例の一部拡大断面図である。
【図4】本発明の密封容器の他の一例の一部拡大断面図である。
【図5】本発明の密封容器の一例の斜視図である。
【図6】本発明の密封容器の他の一例の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(密封容器)
図1は、本発明の密封容器の一例の一部拡大断面図であり、(A)は、カップ型容器1に落とし蓋10を嵌合させている状態を示す図であり、(B)は落とし蓋10がカップ型容器1に嵌合された状態を示す図である。
カップ型容器1は、底部(図示せず)、側壁部2及びフランジ部3から成り、側壁部2は、下部2aが下方に行くに従って径が減少するテーパ状で、上部2bが上方に行くに従って径が減少する逆テーパ状であり、下部2aの上端及び上部2bの下端の間に段差部4が形成されている。この段差部4は、複数のカップ型容器1を重ねるときのスタッキング位置になっている。
落とし蓋10は、天面11の周縁から上方に突出する環状の側壁部12が形成されており、側壁部12の上端から、カップ型容器1のフランジ部3に対応するフランジ13が形成されている。
【0012】
本発明の密封容器は、落とし蓋10の側壁部12の外面に複数個の環状突起が形成されていることが重要な特徴であり、図1に示す具体例では、2個の環状突起14a,14bが形成されている。この2個の環状突起14a,14bは何れもカップ型容器1の側壁部2の上方内面と接触可能に形成されている。
下方に位置する環状突起14aは、上方に位置する環状突起14bよりも、当該部位における落とし蓋の外径が大きくなるように形成されており、図1(A)に示すように、カップ型容器1に蓋部材10を嵌合させる際、カップ型容器1の側壁部2の内面を密着しながら下方へ移動する(図1(A)矢印P方向)。そのため、カップ型容器1の側壁部2の上方内面に内容物等が付着していた場合には、付着内容物等を掻き落としながら下降して行き、図1(B)に示す嵌合状態になる。
図1(B)に示す嵌合状態において、上方に位置する環状突起14bの位置にカップ型容器1側からレーザ照射(矢印L)することにより、環状突起14bを溶融してカップ型容器1及び落とし蓋10を溶着するが、上述したように、環状突起14bが位置する溶着箇所は既に環状突起14aが通過することにより付着した内容物等を掻き落としているため、安定してレーザ溶着を行うことができ、密封不良を生じることなく、密封包装体を形成することができる。
【0013】
尚、図1に示す具体例においては、レーザ照射を容器外側から行っており、この場合には、後述するように、落とし蓋10にレーザビームを吸収し発熱する箇所(図示せず)が形成されているが、勿論、レーザ照射を蓋部材側から照射することもでき、この場合には、容器1にレーザビームを吸収し発熱する箇所が形成されていればよい。
【0014】
図2は、本発明の密封容器の他の一例を示す一部拡大断面図であり、図1に示した具体例と基本的な構造は同じで、環状突起の形状が異なる態様を示すものである。
すなわち図2に示す態様では、環状突起14a及び14bが先端に行くに従って厚みが
減少する、可撓性を有する環状突起として形成されている。
この態様では、環状突起14a,14bがカップ型容器の側壁部2の内面をワイパーのように密着して下方に進むため、容器側壁部内面に付着した内容物等を効果的に掻き落とすことができる。
【0015】
本発明の密封容器に用いる容器は、図1及び2に示した、横断面の形状がカップ型容器に限定されず、横断面の形状が四角形、楕円形等の形状を有するトレイ型等、種々の形状を採用することができる。
また容器の側壁部も、図1及び図2に示したように、上部が逆テーパ状及び下部がテーパ状のもののみならず、上部が逆テーパ状及び下部の内径が底部から開口部まで同一のストレート状のものや、側壁部全体が下方に行くに従って内径が減少するテーパ状のもの、或いは側壁部全体がストレート状のもの等種々の形状を採用できるが、レーザ溶着部の嵌合を強固にできると共に、付着内容物の掻き落としやすさの点で上部が逆テーパ状であることが特に好ましい。
上部のテーパ角度は、これに限定されないが、軸線に対して8乃至12°の範囲にあることが好ましい。
【0016】
本発明の密封容器に用いる蓋は、図1及び図2に示した、落とし蓋形状のものに限定されず、容器の側壁部内面と接触可能な環状突起を形成可能な側壁を有する限り種々の形状を採用することができる。
例えば、これに限定されないが、図3に示すように、側壁部が天面から垂下し、所謂インナーリングとして容器側壁内面と密着するタイプのものや、或いは図4に示すように、天面から円柱状の側壁部が垂下する栓タイプのもの等を挙げることができる。
蓋の側壁に形成されるに環状突起の形状も、図1に示した縦断面の形状が半円形のもの、三角形状のものの他、四角形状等であっても良い。
【0017】
環状突起の数は、容器側壁部内面に付着した内容物等を掻き落とすための最下方に位置する環状突起、及びレーザ溶着部となる上方の環状突起の少なくとも2個形成されていればよい。
また3個以上の環状突起を設けた場合には、容器側壁部内面に付着した内容物等の量が多い場合には、最下方の環状突起及び該環状突起の直上の環状突起の間がポケットとなって、掻き落としきれなかった内容物等を収納することができるため、レーザ溶着部への内容物等の付着を完全に防止することができる。
また複数の環状突起は、上下の環状突起の付け根の連続したものであっても、或いは上下の環状突起の付け根の間に間隔があいたものであっても何れでもよい。
環状突起は、容器と蓋の嵌合状態において、レーザ溶着部となる部分において最も嵌合力が大きくなることが密封容器のレーザ溶着による密封性を向上する上で好ましく、このため、レーザ溶着部となる部分の容器の内径D1及びレーザ溶着部となる上方の環状突起部分の外径D2との関係はD2>D1であることが好ましく、特にD2−D1が0.5乃至2.0mmの範囲になるように、環状突起の突出量或いは容器のテーパ角度を調整することが好ましい。
また容器側壁部内面に付着した内容物の掻き落としという点からは、レーザ溶着部となる容器の内径D1及び最下方の環状突起部分の外径D3の関係がD1≦D3であることが重要である。
【0018】
また本発明の密封容器においては、レーザ溶着により密封された部分は、手により容易に開封することができないことから、密封容器に易開封性能を付与する場合には、易開封性を有する他の開口部を形成しておくことが望ましい。例えば、図5及び図6に示すように、落とし蓋10の天面11に、図5に示す具体例では天面11の一部、図6に示す具体例では天面11の外周縁以外に、開口部15を形成し、この開口部15を手で開封できる程度のシール強度で接着されたシール材16で密封することが望ましい。
【0019】
本発明の密封容器を構成する容器及び蓋は、レーザ照射により発熱して両者を溶着して密封するものであることから、少なくとも溶着部分のレーザビームの入射側においてレーザビームを透過可能な透明或いは半透明であることが必要であると共に、レーザビームを熱に変換するために溶着部分の界面近傍に発熱部が設けられていることが必要であり、また容器及び蓋の溶着される部分のそれぞれの樹脂が同種の樹脂であることが好適である。
レーザビームを透過可能な透明或いは半透明の層を形成し得る樹脂としては、従来包装容器に用いられていた熱可塑性樹脂を用いることができるが、レーザ透過率が70%以上、特に80%以上の熱可塑性樹脂であることが好適であり、このような熱可塑性樹脂としてはオレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂等を挙げることができる。レーザ透過率は、使用するレーザ光の波長に対応する光について分光光度計を用いて透過率を測定し求めることができる。
尚、レーザ透過率は、同一の熱可塑性樹脂であっても、層の厚みによって異なるものであり、本発明においては、後述する容器或いは蓋(環状突起を含む)が採りうる厚みの範囲内において70%以上の透過率を有することを意味するものである。
【0020】
またレーザ溶着部分は、上述したレーザビームを透過可能な樹脂の中でも、低−、中−、高−密度のポリエチレン、アイソタクチックポリプロピレン、プロピレン・エチレン共重合体、ポリブテン−1、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・ブテン−1共重合体、プロピレン・ブテン−1共重合体、エチレン・プロピレン・ブテン−1共重合体等のオレフィン系樹脂等を用いることが望ましく、特に融点が160℃以下の熱可塑性樹脂を用いることが容易に溶着できるので好適である。
発熱部は、容器或いは蓋の何れか一方に形成されていればよいが、容器及び蓋の環状突起の界面付近に形成されていることが溶着効率の点から好ましい。発熱部を構成し得るものとしては、金属箔や金属板等の金属、黒色等の着色塗料から成る塗膜、或いは鉄粉等の酸素吸収剤やカーボンブラック等を含有した樹脂、或いは溶着部自体をレーザ照射により自己発熱可能なポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂等を挙げることができるが、生産性等の点から熱可塑性樹脂から成る着色層とすることが好適である。
【0021】
上記発熱部を有する材料としては、レーザビームを透過可能でレーザ溶着可能な熱可塑性樹脂から成る層及び発熱部となる層から成る少なくとも2層を有する積層体が、別途発熱部を形成する必要がないので好適に使用できる。これに限定されないが、例えば、レーザビームを透過可能でレーザ溶着可能な熱可塑性樹脂から成る外層又は内層、及びポリアミド樹脂、鉄系酸素吸収剤含有樹脂或いはアルミニウム箔等の発熱部となる中間層の3層構成等の多層構造を有していることが特に好適である。勿論、溶着部分に黒色の塗膜を形成する等、溶着部分のみに別途発熱部を形成することもできる。
また容器或いは蓋の何れか一方を樹脂被覆金属板から成形し、組み合わせる他方の部材を、レーザビームを透過可能な樹脂から成るものとすることもできる。
【0022】
レーザビームを透過可能な層の厚みは、5乃至500μm、特に20乃至100μmの範囲にあることが好ましい。上記範囲よりも厚みが薄い場合には、確実な溶着を行うことができず、一方上記範囲よりも厚みが厚い場合には、レーザビームを通常の条件で発熱部に到達させることが困難になり、やはり確実な溶着を行うことができない。
レーザビームを透過可能な層以外は、容器及び蓋の積層構造、包装体の形態、或いは用途によって適宜設定することができ、一概に規定することができないが、例えば、容器がレーザビームを透過可能なオレフィン系樹脂の単層から成り、蓋が内面側から順に、オレフィン系樹脂(レーザ透過溶着部)/着色剤含有オレフィン系樹脂(発熱部)/オレフィン系樹脂(外層)の積層体から成り、容器側からレーザ照射するような場合は、容器の厚みは200乃至1500μmの範囲であり、蓋の溶着部の厚み(環状突起を含む)は、5乃至500μm、発熱部の厚みは10乃至500μm、外層の厚みは10乃至500μmの範囲あることが好ましい。また容器が内面側から順に、オレフィン系樹脂(レーザビーム透過溶着部)/着色剤含有オレフィン系樹脂(発熱部)/オレフィン系樹脂(外層)の積層体から成り、蓋がレーザビームを透過可能なオレフィン系樹脂から成り、蓋側からレーザ照射するような場合は、容器の溶着部の厚みは、5乃至500μm、発熱部の厚みは10乃至500μm、外層の厚みは10乃至500μmの範囲であり、蓋の溶着部の厚みは200乃至1500μmの範囲にあることが好ましい。
【0023】
上述した積層体の製造は、共押出法、熱接着法、接着剤を用いたドライラミネーション法等従来公知の方法により行うことができる。
本発明の密封容器に用いる容器及び蓋は、フィルム及びシート状の積層材料から真空成形、圧空成形、プラグアシスト成形等の熱成形によって成形されたカップ或いはトレイ等の容器や、絞り成形、インジェクション成形等によって成形することできる。
【0024】
(密封方法)
本発明の密封方法においては、前述した容器及び蓋を、蓋の側壁部に形成された環状突起で容器側壁部内面に付着した内容物等を掻き落としながら嵌合させ、上部に位置する環状突起部分における当接部分を、容器側或いは蓋側からレーザビームを照射することにより、容器及び環状突起の当接面を溶融密着させる。
本発明においては、前述したように、嵌合状態において、容器及び蓋に形成された環状突起の当接面が互いに押圧するような位置関係になっているので、レーザ照射に際して特別な固定具を用いる必要はないが、勿論、更に嵌合を強固にするために固定具を用いることもできる。
【0025】
本発明に用いるレーザビームとしては、ガスレーザ、固体レーザ、或いは半導体レーザ等を使用することができ、中でも半導体レーザを好適に使用することができる。
レーザ発振器の出力は20乃至150W、特に30乃至100Wの範囲にあることが好ましく、またレーザビームの波長は200nm乃至20μm、特に400nm乃至15μmの範囲にあることが好ましい。これは商業的には樹脂の透過性とレーザビームを吸収して発熱する物質の性質、およびレーザ発振器の出力、値段、安全性により決まる。
本発明においては、レーザビームのスポット径が0.2乃至3mm、特に0.5乃至2mmの範囲にあることが包装体の密閉性の点から好ましい。
またレーザビームの焦点距離は10乃至200mm、特に50乃至150mmの範囲にあることが好ましく、レーザビームを透過可能な層の厚み+30乃至70mmの範囲にあることが溶着による密閉性を確保しつつ、樹脂の劣化を防止する上で好ましい。
またレーザビームの掃引速度は、50乃至300mm/秒、特に100乃至200mm/秒の範囲にあることが、溶着による密閉性を確保しつつ、樹脂の劣化を防止する上で好ましい。
【0026】
また溶着についての条件は、溶着部分が融点以上になる発熱量を得られるならば、様々な条件で溶着が可能であり、例えば、溶着時間を短くしようとするならば、レーザ出力を上げて回転スピードを上げれば良く、高出力のレーザが使用できない状況ならば、溶着部分への照射時間を長くすればよく、容器の場合には、容器の回転スピードを落とせば良い。更に、充分に溶融できるレーザ出力が得られているならば、レーザ光径を大きくして、溶着幅を大きくすることもできる。
【実施例】
【0027】
[評価]
密封軟包装、容器の試験方法であるJIS Z0238に基づき破裂強さ試験を行った。
また、破裂強さに関しては、前記試験においてレトルト殺菌用容器等に要求される破裂強さの0.02Mpa以上を密封性の判断基準とした。
【0028】
[レーザ溶着条件]
レーザ発振器:イエナオプティック社製
半導体(GaAs)レーザ
波長807±3nm
最大出力140W
レーザ照射条件:出力50W
スポット径1mm
照射時間4秒(照射線速度118mm/秒)
受け台を0.5回転/秒で回転させ、2回転分照射した。
照射方法:容器側から蓋側に水平方向で照射を行った。
【0029】
[実施例1]
(外面側)450μmポリプロピレン/30μm接着剤層/90μmEVOH(エチレン・ビニルアルコール共重合樹脂)/30μm接着剤層/400μmポリプロピレン(融点:160℃)(内面側)の層構成の樹脂シートから、真空成形法にて、側壁部の上部が上方に行くに従って径が減少する逆テーパ状(テーパ角:10度)で、開口部外径が75mm、内容量が150mlの図1に示すフランジ部を形成したカップ型容器を成形した。
一方、ポリプロピレン樹脂(融点160℃)にカーボンブラックを500ppm添加し、インジェクション成形で厚さが0.8mm、天面の周縁から上方に突出する側壁部の外径が75mmの図1に示す落とし蓋を成形した。
そして、前記落とし蓋に、側壁部の上端から4mmの位置に断面半円形状の上側環状突起を設け、その下方に1mmの間隔をあけて下側環状突起を設けた。
尚、上側環状突起の外径は63.5mm、下側環状突起の外径は64.5mm、レーザ溶着部となる部分の前記容器の内径は62.4mmとした。
前記容器に水を130g充填し、前記容器のフランジ部を受台で支え、蓋を押し込み、前記条件にて容器側から蓋側へレーザを照射して溶着を行い、溶着部の強度を前記破裂強さ試験で評価したところ、0.1Mpaまで加圧しても破裂は発生せず、十分な密封性を有していた。
【0030】
[比較例1]
実施例1において、落とし蓋の側壁部の下側環状突起を設けなかった以外は、同様にレーザを照射して評価したところ、破裂強さは0.02Mpa未満であり、十分な密封性は得られなかった。
【0031】
この結果から、前記容器の側壁部に水が付着した状態であっても、蓋の側壁に容器の側壁部上方内面と接触可能な複数の環状突起を形成することにより、下側環状突起によって容器の側壁部に付着した水が除去され、レーザ溶着部となる前記蓋の側壁の上側環状突起部と容器の側壁部に水が残存しない状態となる。このため、前記レーザ溶着部において、レーザ溶着が確実に行われて十分な密封性が得られることが判る。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の密封容器は、容器側壁部内面に付着した内容物や内容物から放出される水蒸気等を効果的に除去して密封されているため、熱間充填が必要な内容物や、或いは炭酸飲料等の自生圧力を有する内容物に好適に使用することができる。
また容器のヘッドスペースを減すことができるため、ヘッドスペースのガス置換の量や内容物の量に対する容器の大きさを低減させることもでき、材料使用量及び容器重量の低減によるコスト削減を図ることができると共に、搬送性にも優れている。
また本発明の密封包装体の密封方法によれば、従来の熱板を用いたヒートシールによる溶着のような冷却工程が必要でないため、生産性を向上することができる。また比較的厚肉の部材であっても高速且つ安定的に、しかも低コストで効率よく密封することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 容器、2 側壁部、3 フランジ部、4 段差部、10 落とし蓋、11 天面、12 側壁部、13 フランジ、14 環状突起、15 開口部、16 シール材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも底部及び側壁部から成る容器と、該容器の開口部に嵌合可能な蓋とから成り、レーザ溶着により密封一体化される密封容器において、
前記蓋は、前記容器の側壁部上方内面と接触可能な複数の環状突起が形成された側壁を有しており、該環状突起のうち最下方の環状突起以外の環状突起が、容器側壁と密着する
位置で容器とレーザ溶着されていることを特徴とする密封容器。
【請求項2】
前記容器と蓋の嵌合が、レーザ溶着部において最も嵌合力が大きい請求項1記載の密封容器。
【請求項3】
前記容器又は蓋の一方が着色されている請求項1又は2記載の密封容器。
【請求項4】
前記容器又は蓋の一方が、中間層が着色された多層構造である請求項1乃至3の何れかに記載の密封容器。
【請求項5】
前記蓋の側壁よりも内側に位置する天面には、開口部が形成されており、該開口部がシール材によって密封されている請求項1乃至4の何れかに記載の密封容器。
【請求項6】
少なくとも底部及び側壁部から成る容器と、該容器の側壁部上方内面と接触可能な複数の環状突起が形成された側壁を有する蓋とから成る密封容器の製造方法であって、前記蓋を、環状突起の最下方の環状突起が容器側壁内面と接触させながら容器開口部に嵌合し、環状突起のうち最下方の環状突起以外の環状突起が容器側壁部内面と密着する位置にレーザ照射を行うことにより、容器と蓋をレーザ溶着することを特徴とする密封容器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−51627(P2011−51627A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−202603(P2009−202603)
【出願日】平成21年9月2日(2009.9.2)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【Fターム(参考)】