説明

密封装置

【課題】限られたスペースで、十分な嵌合力を備えると共に、センサ−の検出する磁力を低下させないボアプラグを使用した密封装置を提供することを目的としている。
【解決手段】ハウジングと、前記ハウジングの内周側に挿入された状態で回転する軸部材と、前記軸部材の一端部に固定されたエンコーダと、前記ハウジングの内周面に嵌着固定されて前記ハウジングの開口を塞ぐ非磁性の鋼板から製作されたボアプラグと、前記ボアプラグを介して前記エンコーダと対峙して配置されている前記エンコーダの回転速度を検出するセンサーとより成る密封装置において、
前記ボアプラグは、前記ハウジング内周面と嵌合する円筒状部と、前記円筒状部の前記センサー側の軸方向端部と連結して前記開口を塞いでいる円盤状部とより構成され、前記円盤状部が前記エンコーダ側に窪んでいる窪み部を形成していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密封装置に関するものであり、更に詳しくは、自動車等の車輪の回転速度を検出する回転速度センサ内臓軸受装置に用いられる密封装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、図3に示す密封装置が知られている。
すなわち、外輪に相当するハウジング100と、このハウジング100の内周側に挿入された状態で回転する内輪に相当する軸部材200と、この軸部材200の一端部に固定されたエンコーダ300と、ハウジング100の内周面に嵌着固定されてハウジング100の開口110を塞ぐ非磁性の鋼板から製作されたボアプラグ400と、ボアプラグ400を介してエンコーダ300と対峙して配置されているエンコーダ300の回転速度を検出するセンサー500とより構成されている。
【0003】
そして、このボアプラグ400は、ハウジング100の内周面と嵌合する円筒状部410と、円筒状部410のセンサー500側の軸方向端部と連結して開口110を塞いでいる円盤状部420とより構成されている。
また、円筒状部410のセンサー500側の軸方向端部外周面には、ゴム状弾性材製のシール部412が一体形成されている。
【0004】
このボアプラグ400は、開口110を塞ぐふた状の形状であり、受圧面積が広いため、内部圧力の影響を受け易い。
この為、ボアプラグ400が抜け難くするためには、ボアプラグ400の板厚を厚くして、円筒状部410のハウジング100の内周面と嵌合する嵌合力を高めるか、又は、円筒状部410の金属嵌合幅を増大させる必要がある。
【0005】
しかし、エンコーダ300とセットで使用される部品であり、センサ−500とエンコーダ300との間に配置されるため、ボアプラグ400の板厚を厚くするとエンコーダ300とセンサー500と間の距離が離れてしまう為、回転速度を検出する磁力が低下する。
このため、板厚を厚くすることにより、ボアプラグ400が抜け難くする対策には問題があった。
【0006】
また、円筒状部410の軸方向長さを長くして、金属嵌合幅を増大させることは、自動車等の車輪の軸受けの限られたスペースで使用される事が多い為、困難で有った。
【0007】
図3に示す様に、従来のボアプラグ400は、外輪に相当するハウジング100の内周部に対し、ボアプラグ400の金属環による嵌合及びゴム状弾性材製のシール部412で流体の漏洩を阻止する形態としているが、ボアプラグ400の金属環による嵌合幅が十分取れない為、ボアプラグ400が開口110から抜け落ちる問題を惹起した。
【0008】
特に、円盤状部420が内圧の増大により、センサ−500側に膨らむ様に変形した場合、円筒状部410の円筒状部410と円盤状部420との連結部4110近傍にゴム状弾性材製のシール部412存在する事及び円盤状部420の膨らみ変形は、ハウジング100の内周面と嵌合する嵌合力を低下させる方向に作用するため、ボアプラグ400が開口110から抜け落ちる作用を助長した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−249138号公報
【特許文献2】特開2010−125866 号公報
【特許文献3】特開2008−196553 号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明が前述の状況に鑑み、限られたスペースで、十分な嵌合力を備えると共に、センサ−の検出する磁力を低下させないボアプラグを使用した密封装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明にあっては、ハウジングと、前記ハウジングの内周側に挿入された状態で回転する軸部材と、前記軸部材の一端部に固定されたエンコーダと、前記ハウジングの内周面に嵌着固定されて前記ハウジングの開口を塞ぐ非磁性の鋼板から製作されたボアプラグと、前記ボアプラグを介して前記エンコーダと対峙して配置されている前記エンコーダの回転速度を検出するセンサーとより成る密封装置において、
前記ボアプラグは、前記ハウジング内周面と嵌合する円筒状部と、前記円筒状部の前記センサー側の軸方向端部と連結して前記開口を塞いでいる円盤状部とより構成され、前記円盤状部が前記エンコーダ側に窪んでいる窪み部を形成していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、以下に記載されるような効果を奏する。
請求項1記載の発明の密封装置によれば、限られたスペースで、十分な嵌合力を備えると共に、センサ−の検出する磁力を低下させることが無い。
また、請求項2記載の発明の密封装置によれば、内部圧力が増大したとしても、ボアプラグのセンサー側への膨出を抑えると共に、ボアプラグが抜け落ちる事が無い。
【0013】
更に、請求項3記載の発明の密封装置によれば、内部圧力が増大したとしても、ボアプラグのセンサー側への膨出を抑え、ボアプラグが抜け落ちる事を効果的に阻止すると共に、センサ−の検出する磁力を低下させることも無い
また、請求項4記載の発明の密封装置によれば、エンコーダとセンサーとの間隙を最小限に出来る為、センサ−の検出する磁力を低下させる事が無い。
【0014】
更に、請求項5記載の発明の密封装置によれば、嵌合力を低下させる事無く、良好な機密性が維持出来る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る密封装置の第1の態様を示す縦断面図。
【図2】本発明に係る密封装置の第2の態様を示す縦断面図。
【図3】従来技術に係る密封装置の縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
図1及び図2に基づき発明を実施するための形態について説明する。
【0017】
本発明に係る密封装置の第1の態様は、図1に示す様に、外輪に相当するハウジング1と、このハウジング1の内周側に挿入された状態で回転する内輪に相当する軸部材2と、この軸部材2の一端部に固定されたエンコーダ3と、ハウジング1の内周面に嵌着固定さ
【0018】
れてハウジング1の開口11を塞いでいる非磁性の鋼板から製作されたボアプラグ4と、このボアプラグ4を介してエンコーダ3と対峙して配置されているエンコーダ3の回転速度を検出するセンサー5とより構成されている。
【0019】
そして、このボアプラグ4は、ハウジング1内周面と嵌合する円筒状部41と、円筒状部41のセンサー5側の軸方向端部と連結して開口11を塞いでいる円盤状部42とより構成されている。
【0020】
また、この円盤状部42がエンコーダ3側に窪んでいる窪み部421を形成している。
更に、円盤状部42は、円筒状部41との連結部411近傍において、センサー5側に突出する断面円弧状の環状突起部422と、この環状突起部422の内周端に連結した平らな板状部423とにより構成されている。
【0021】
この様な構成とした事により、ハウジング1内の内圧が上昇した場合、この内圧は、板状部423をセンサー5側に膨出させるように作用する。
そして、この板状部423に作用する力は、環状突起部422を支点として、円筒状部41との連結部411近傍をハウジング1内周面に押圧する様に作用する。
この結果、ハウジング1内の内圧の上昇に伴い、ボアプラグ4の円筒状部41と、ハウジング1内周面との嵌合力が増大する為、ボアプラグ4がハウジング1の開口11から抜け落ちる事が無い。
【0022】
また、エンコーダ3とセンサー5とは、板状部423を介して対峙する構成としている為、エンコーダ3とセンサー5との間隙を最小限に出来る為、センサ−5の検出する磁力を低下させる事が無い。
更に、円筒状部41のエンコーダ3側端部外周面には、ハウジング1内周面と密着するゴム状弾性材製シール部412が形成されている。
従って、図3に示す従来技術は、円筒状部410と円盤状部420との連結部4110近傍にゴム状弾性材製のシール部412が存在する態様としている為、ハウジング100内の内圧の上昇に伴い、該圧力による円筒状部410をハウジング100内周面に向かって押圧する力が、シール部412により吸収され、円筒状部410とハウジング100内周面との嵌合力の向上に寄与出来ないが、本発明は、シール部412を、円筒状部41のエンコーダ3側端部外周面に設ける態様としている為、円筒状部41外周面とハウジング1内周面との間の嵌合力を低下させる事無く、良好な機密性が維持出来る。
【0023】
ついで、図2に基づき、本発明に係る密封装置の第2の態様を説明する。
先に説明した第1の態様と相違する点は、円盤状部42が、円筒状部41との連結部411近傍から軸中心に向かって連続する傾斜面となっている点である。
この傾斜面の形状は、曲面形状であっても、円錐形状であっても良い。
【0024】
この様な形状とする事により、円盤状部42の耐圧性を高める事は出来るが、エンコーダ3とセンサー5との間隙が、第1の態様に比べ大きくなる欠点を有している。
【0025】
また、本発明は上述の発明を実施するための最良の形態に限らず本発明の要旨を逸脱することなくその他種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【産業上の利用可能性】
【0026】
自動車等の車輪の回転速度を検出する回転速度センサ内臓軸受装置に使用される密封装置として好適に用いられる。
【符号の説明】
【0027】
1 ハウジング
2 軸部
3 エンコーダ
4 ボアプラグ
5 センサー
11 開口
41 円筒状部
42 円盤状部
411連結部
412シール部
421窪み部
422環状突起部
423板状部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(1)と、前記ハウジング(1)の内周側に挿入された状態で回転する軸部材(2)と、前記軸部材(2)の一端部に固定されたエンコーダ(3)と、前記ハウジング(1)の内周面に嵌着固定されて前記ハウジング(1)の開口(11)を塞ぐ非磁性の鋼板から製作されたボアプラグ(4)と、前記ボアプラグ(4)を介して前記エンコーダ(3)と対峙して配置されている前記エンコーダ(3)の回転速度を検出するセンサー(5)とより成る密封装置において、
前記ボアプラグ(4)は、前記ハウジング(1)内周面と嵌合する円筒状部(41)と、前記円筒状部(41)の前記センサー(5)側の軸方向端部と連結して前記開口(11)を塞いでいる円盤状部(42)とより構成され、前記円盤状部(42)が前記エンコーダ(3)側に窪んでいる窪み部(421)を形成していることを特徴とする密封装置。
【請求項2】
前記円盤状部(42)が、前記円筒状部(41)との連結部(411)近傍から軸中心に向かって連続する傾斜面となっていることを特徴とする請求項1記載の密封装置。
【請求項3】
前記円盤状部(42)が、前記円筒状部(41)との連結部(411)近傍において、前記センサー(5)側に突出する断面円弧状の環状突起部(422)と、前記環状突起部(422)の内周端に連結した平らな板状部(423)とにより構成されていることを特徴とする請求項1記載の密封装置。
【請求項4】
前記エンコーダ(3)と前記センサー(5)とが前記板状部(423)を介して対峙していることを特徴とする請求項3記載の密封装置。
【請求項5】
前記円筒状部(41)の前記エンコーダ(3)側端部外周面には、前記ハウジング(1)内周面と密着するゴム状弾性材製シール部(412)が形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の密封装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−167726(P2012−167726A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−28254(P2011−28254)
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【出願人】(000004385)NOK株式会社 (1,527)
【Fターム(参考)】