説明

密閉型回転圧縮機

【課題】密閉型回転圧縮機の運転時、シリンダのベーン溝で摺動するベーンにより跳ね上げられた冷凍機油が密閉容器の外に冷媒ガスと共に放出される。また、冷凍機油が放出される量を抑制する為に、前記ベーン溝上部の主軸受の鋳抜き穴を無くすとベーン及び前記ベーン溝の潤滑は、密閉容器下部にたまっている冷凍機油に依存するだけであり、潤滑性が低下するという課題を有していた。
【解決手段】本発明の圧縮機は、シリンダ6のベーン溝13とその上部の主軸受4の鋳抜き穴12を無くし、また、前記ベーン溝13とその上部の主軸受4のフランジ部に隙間を設けることにより、前記ベーン溝13で摺動するベーン8により跳ね上げられる冷凍機油11が密閉容器10の外に放出される量を抑制し、かつ、上部からも前記ベーン溝に冷凍機油11を冷凍機油の流れ14に示すように供給することができ、潤滑性を確保できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は密閉型回転圧縮に関するものであり、特に性能向上を図りながらシリンダベーン溝部の潤滑性の保持の両立を図った圧縮機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の密閉型回転圧縮機は、固定子1、回転子2で、この両者で電動機構部を構成する。シャフト3、主軸受4、副軸受5、シリンダ6、ローラー7、ベーン8、吐出マフラー9でこれらは圧縮機構部を形成する。密閉容器10、冷凍機油11である。そして圧縮機構部は、密閉容器10に主軸受4のフランジ部分を溶接により固定される構造になっている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開昭62−10494号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら前記従来技術では、密閉型回転圧縮機の運転時、シリンダのベーン溝で摺動するベーンにより跳ね上げられた冷凍機油が前記ベーン溝の上部の主軸受のフランジ部鋳抜き穴を通り、密閉容器の外に冷媒ガスと共に放出される冷凍機油の増加につながる。そして、更に性能低下にも影響を及ぼしている。冷凍機油が放出される量を押さえる為に、前記ベーン溝の上部の主軸受の鋳抜き穴を無くすとベーン及び前記ベーン溝の潤滑は、ほとんど、密閉容器の下部にたまっている冷凍機油に依存するだけであり、冷凍機油の油面がシリンダの下端より低下した場合、ベーン及び前記ベーン溝の潤滑性が低下するという課題を有していた。
【0004】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、前記ベーン溝の潤滑性を保ちつつ性能の向上を図る圧縮機の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記従来の課題を解決するために、本発明の圧縮機は、シリンダのベーン溝とその上部の主軸受のフランジ部の鋳抜き穴を無くす。また、前記ベーン溝とその上部の主軸受のフランジ部に隙間を設ける。
【0006】
これによって、前記ベーン溝で摺動するベーンにより跳ね上げられる冷凍機油が密閉容器の外に放出されるのを抑制し、かつ、上部からも前記ベーン溝に冷凍機油を冷凍機油の流れに示すように供給することができる。
【発明の効果】
【0007】
以上のように本発明の圧縮機は、シリンダのベーン溝の潤滑性を低下させることなく、冷凍機油が密閉容器から放出される量を抑制し、性能の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
第1の発明は、シリンダのベーン溝とその上部の主軸受のフランジ部の鋳抜き穴を無くし、前記ベーン溝とその上部の主軸受のフランジ部に隙間を設けることにより、前記ベーン溝で摺動するベーンにより跳ね上げられる冷凍機油が密閉容器の外に放出されるのを抑制し、かつ、上部からも前記ベーン溝に冷凍機油を冷凍機油の流れに示すように供給することにより、前記ベーン溝の潤滑性を低下させることなく、冷凍機油が密閉容器から放出される量を抑制し、性能の向上を図ることができる。
【0009】
第2の発明は、特に、第1の発明の冷媒を塩素を含まない代替冷媒にすること。
【0010】
第3の発明は、特に、第1の発明の冷媒を二酸化炭素等の自然冷媒にすること。
【0011】
(実施の形態1)
図1および図2、図3は、本発明の第1の実施の形態における圧縮機の圧縮機構部を示すものである。
【0012】
図1において、図2および図3と同じ機構要素に関しては同じ符号を用い、説明を省略する。
【0013】
図1において、固定子1、回転子2で、この両者で電動機構部を構成する。シャフト3、主軸受4、副軸受5、シリンダ6、ローラー7、ベーン8、吐出マフラー9でこれらは圧縮機構部を形成する。シャフト3は電動機構部からの動力を圧縮機構部に伝達し、ローラー7は回転圧縮を行い、ベーン8はシリンダ6の空間を低圧室と高圧室に仕切る。なお、これら電動機構部と圧縮機構部は密閉容器10によって密閉されている。
【0014】
これにより、シリンダ6のベーン溝13で摺動するベーン8により跳ね上げられる冷凍機油11が密閉容器10の外に吐出されるのを抑制し性能の向上を図り、かつ、上部からもシリンダ6のベーン溝に冷凍機油11を冷凍機油の流れ14に示すように供給することで潤滑性を保持することが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0015】
以上のように、本発明にかかる圧縮機は、冷凍空調機のみでなく、除湿機やヒートポンプ給湯器の用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態1における圧縮機の断面図
【図2】本発明の実施の形態1における圧縮機の鋳抜き穴形状を示す図
【図3】本発明の実施の形態1における圧縮機のシリンダベーン溝部付近の断面図
【符号の説明】
【0017】
1 固定子
2 回転子
3 シャフト
4 主軸受
5 副軸受
6 シリンダ
7 ローラー
8 ベーン
9 吐出マフラー室
10 密閉容器
11 冷凍機油
13 シリンダのベーン溝部
14 冷凍機油の流れ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉容器内に電動機構部と圧縮機構部を収納し、前記圧縮機構部は円筒状シリンダと前記円筒状シリンダに圧縮室を構成する主軸受と副軸受と前記圧縮室内で公転運動するローラーと前記ローラーに公転運動を与える前記電動機構と結合しているシャフトと前記シリンダの円筒状内周面とをさらに複数の密閉空間に仕切るベーンと前記主軸受と副軸受に取り付けられた吐出マフラーを構成要素に持つ密閉圧縮機にあって、シリンダベーン溝上部の主軸受フランジ部の穴を無くし、かつ、冷凍機油が通る隙間を十分に設けた密閉型回転圧縮機。
【請求項2】
圧縮されるガスが、塩素を含まない代替冷媒である請求項1に記載の密閉型回転圧縮機。
【請求項3】
圧縮されるガスが、二酸化炭素等の自然冷媒である請求項1に記載の密閉型回転圧縮機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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