説明

密閉型圧縮機

【課題】バランスウェイトの取り付け工程に有する工数を削減し、組み立て作業効率を良化させることを目的とする。
【解決手段】回転子260の端面に、一部に直角曲げ部を有した圧延材からなるウエイト部262aを一体化した端板262を設けたことで、圧縮要素203によって生じる往復運動のアンバランスを矯正でき、組み立て作業性が向上するとともに、部品点数の増加を防止した組み立て作業効率のよい密閉型圧縮機を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に家庭用の電気冷凍冷蔵庫などに使用される密閉型圧縮機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、冷凍機器分野において、高効率の一環として、固定子および永久磁石が埋め込まれた回転子からなる電動要素を用いたインバータ駆動方式の密閉型圧縮機や、同期運転方式の密閉型圧縮機が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
以下、図面を参照しながら上記従来の密閉型圧縮機を説明する。
【0004】
図3は、特許文献1に記載された従来の密閉型圧縮機の縦断面図、図4は、回転子分解斜視図である。
【0005】
図3、図4において、密閉容器1の底部には、冷凍機油である潤滑油2を貯留しており、圧縮要素3が電動要素4の上方に配置されている。圧縮要素3を駆動する電動要素4は、固定子5および回転子6とから構成され、インバータ駆動回路(図示せず)によって駆動される。
【0006】
回転子6は、鉄心内に永久磁石61を備えており、永久磁石61の軸方向への脱落を防止するために、上部端板62と下部端板62を回転子6の両端面に配設している。上部端板62と下部端板63は、回転子6の磁束漏れを防止するために非磁性体圧延材の金属で形成されている。回転子6の軸方向端部には、薄板の積層体によって形成された鉄心64がリベット65によって端板62、63と同時固定したバランスウェイト66が取り付けられており、圧縮要素3によって生じる往復運動のアンバランスを矯正するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−65236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来の構成では、バランスウェイトの取り付け工程に有する工数が発生し、組み立て作業効率が悪化することがあった。
【0009】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、組み立て作業効率のよい圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記従来の課題を解決するために、本発明の密閉型圧縮機は、回転子の端板の一部に、ウエイト機能を持たせた直角曲げ部を設けたもので、端板と一体になっているため、組み立て作業効率を向上することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の密閉型圧縮機は、圧縮要素によって生じる往復運動のアンバランスを矯正することができ、さらに、部品点数の増加を抑制し、組み立て作業効率のよい密閉型圧縮機を
提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態1における密閉型圧縮機の縦断面図
【図2】同実施の形態1における回転子の拡大斜視図
【図3】従来の密閉型圧縮機の縦断面図
【図4】従来の密閉型圧縮機の回転子分解斜視図
【発明を実施するための形態】
【0013】
請求項1に記載の発明は、密閉容器内に冷凍機油を貯溜するとともに、冷媒を圧縮する圧縮要素と、前記圧縮要素の下方に配設され、かつ前記圧縮要素を駆動する電動要素を収納し、前記電動要素を、回転子鉄心に永久磁石を内蔵した永久磁石型電動機とし、また、前記圧縮要素を、前記回転子を固定したクランクシャフトと、前記クランクシャフトを軸支する軸受部を備えるとともに前記電動要素を構成する固定子を固定したブロックと、圧縮室を形成するシリンダとを備えた構成とし、さらに、前記回転子の端面に、一部に直角曲げ部を有した圧延材からなるウエイト部を一体化した端板を設けたものである。
【0014】
かかることにより、前記圧縮要素によって生じる往復運動のアンバランスを矯正でき、また組み立て作業性が向上するとともに、部品点数の増加も防止することができる。
【0015】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記端板と一体化したウエイト部を、前記回転子の下面に設置したものである。
【0016】
かかることにより、冷凍機油の冷媒溶け込みによる油面上昇時の接触においても攪拌が少なく、発泡を少なくすることができる。
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しながら説明する。なお、本実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
【0018】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における密閉型圧縮機の縦断面図、図2は、回転子の拡大斜視図である。
【0019】
密閉容器201内には、電動要素204と圧縮要素203を一体化した電動圧縮要素207が、電動要素204の上方に圧縮要素203が配置されるように、複数のサスペンションスプリング210を介して弾性的に支持されて収容されている。
【0020】
次に、圧縮要素203の詳細を以下に説明する。
【0021】
ブロック220は、略円筒形のシリンダ221を有するとともに軸受部244を形成している。
【0022】
クランクシャフト230は、主軸231および偏心軸234から構成されており、主軸231は、ブロック220の軸受部222に回転自在に軸支されている。また、主軸231には、回転子260が固定され、下端には冷凍機油である潤滑油202に浸漬した給油機構218が形成されている。
【0023】
偏心軸234には、バランスウェイト236が固定されている。
【0024】
ピストン250は、シリンダ221に往復動自在に挿入されており、偏心軸234との
間をコンロッド225によって連結されている。
【0025】
バルブプレート270は、シリンダ221の端面243を封止している。吐出室を形成したシリンダヘッド280は、バルブプレート270の反シリンダ221側に固定されている。
【0026】
PBT等の樹脂で成型されるサクションマフラー290は、一端がバルブプレート270を介してシリンダ221に連通し、密閉容器201内に開口する開口部(図示せず)を備えている。
【0027】
インバータ駆動回路(図示せず)によって駆動される電動要素204は、フェライト系または、ネオジウム等の希土類を用いた永久磁石261を内蔵する回転子260と、鉄心に銅材料の巻線240を直接巻回した固定子205で構成されている。
【0028】
回転子260は、積層された電磁鋼板によって形成された鉄心264を備え、鉄心264の内部に永久磁石261を配設している。また鉄心264の両端面には、一部に円周方向に直角曲げ部を有したウエイト部262aを一体化した上部端板262と、下部端板263が設置され、回転子260の軸方向に貫通するリベット265にて固定されている。
【0029】
以上のように構成された密閉型圧縮機において、以下その動作を説明する。
【0030】
インバータ駆動回路(図示せず)によって電動要素204が駆動され、回転子260がクランクシャフト230を回転することで、偏心軸234の運動がコンロッド225を介してピストン250に伝えられる。これに伴い、ピストン250は、シリンダ221内を往復運動する。この往復運動に伴い、サクションチューブ295から密閉容器201内に流入した冷媒ガスは、サクションマフラー290の開口部から吸入され、シリンダ221内でピストン250の往復運動により、連続して圧縮され、ディスチャージチューブ296より冷却システムへ再び吐き出される。
【0031】
密閉型圧縮機が運転されると、圧縮要素203のピストン250の往復慣性力、コンロッド255の往復慣性力、および遠心力とクランク偏心部234の遠心力により発生する振動は、バランスウエイト236と上部端板262のウエイト部262aによって抑制される。特に、上部端板262のウエイト部262aが一体になっていることより、組立て作業性のよい圧縮機を提供することができる。
【0032】
また、ウエイト部262aと一体化した上部端板262は、回転子260の下面にも設けることができる。この場合、潤滑油202の油面と接近する配置としても、特に長時間停止による冷媒の溶け込みによる油面上昇時に、ウエイト部262aが油面と接することとなるが、ウエイト部262aは、回転軌跡に位置していることから、起動時においても潤滑油202の攪拌を少なくすることができ、低騒音の圧縮機を提供することができる。
【0033】
なお、本実施の形態1では、インバータ駆動方式を用いた電動要素204を例に挙げて説明したが、一低速の誘導同期電動機を構成する電動要素においても同様の効果を得ることができる。
【0034】
また、直接巻線240を巻回した固定子205を例に挙げて説明したが、直接巻回していない固定子においても同様の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
以上のように、本発明にかかる密閉型圧縮機は、組立て作業性のよい低コスト化と低騒
音が可能となるので、冷凍ショーケース、除湿機エアーコンディショナーや自動販売機等に用いられる密閉型圧縮機等の用途にも適用できる。
【符号の説明】
【0036】
201 密閉容器
202 潤滑油
203 圧縮要素
204 電動要素
205 固定子
220 ブロック
221 シリンダ
222 軸受け部
230 クランクシャフト
260 回転子
261 永久磁石
262 端板
262a ウエイト部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉容器内に冷凍機油を貯溜するとともに、冷媒を圧縮する圧縮要素と、前記圧縮要素の下方に配設され、かつ前記圧縮要素を駆動する電動要素を収納し、前記電動要素を、回転子鉄心に永久磁石を内蔵した永久磁石型電動機とし、また、前記圧縮要素を、前記回転子を固定したクランクシャフトと、前記クランクシャフトを軸支する軸受部を備えるとともに前記電動要素を構成する固定子を固定したブロックと、圧縮室を形成するシリンダとを備えた構成とし、さらに、前記回転子の端面に、一部に直角曲げ部を有した圧延材からなるウエイト部を一体化した端板を設けた密閉型圧縮機。
【請求項2】
前記端板と一体化したウエイト部を、前記回転子の下面に設置した請求項1に記載の密閉型圧縮機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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