説明

対人距離危険度警告装置

【課題】工事車両周囲に存在する作業員の位置安全を容易に認識できる装置を提供する。
【解決手段】信号を発信するための発信機と、信号を受信するための受信機との組み合わせよりなる装置において、受信機に受信信号処理部と警告発信部および警告表示部を設け、警告表示部において用いる表示パネルに、信号強度に応じて選択的に点灯する表示ランプを設けることにより、受信機と発信機の距離変化を認識できるよう構成したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、バックホウなどの工事車両等に設置することにより、周囲の近接人物を感知して事前にオペレーターに警告することにて、人身事故を未然に防止することに役立つ、警告装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、各種工事車両が多用されているが、この車両に近接した人物を感知して警告を発するための装置は現在のところ見あたらない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
工事現場ではバックホウ、ロータリー、タイヤローラーその他の工事車両が多用されている。この車両にはオペレーターが搭乗してこれを操作するが、車輌周囲に作業員が個別に作業する場合が多く、オペレーターは目視にて危険がないかどうかを判断しながら操作を行っている。しかし、オペレーターによる視認は前方に比べて後方は不確実性が高く、とりわけ回転部分を有するバックホウではより一層の危険感知が重要である。
平成11年から17年までの建設業における死亡事故の中で、建設機械等によるものは全体の25%にも及んでいる。この災害を防ぐ手段として現在用いられているものは、車両後部にCCDカメラを設置し、オペレーターがモニターにて確認するものであるが、モニターに表示されない死角も多く、とりわけ薄暮時の作業ではその効果も少なくなる。
本発明は、以上のような従来からの作業現場における危険災害を防止するために発明されたもので、工事車両に対する周囲作業員位置を感知してオペレーターに警告を発することのできる、新規かつ有用なる装置を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
課題を解決する手段として本発明は以下の構成とした。
すなわち、信号を発信するための発信機と、信号を受信するための受信機との組み合わせよりなる装置において、受信機に受信信号処理部および警告表示部を設け、警告表示部において用いる表示パネルに、信号強度に応じて選択的に点灯する表示ランプを設けることにより、受信機と発信機の距離変化を認識できるよう構成する。本発明は以上の構成よりなる対人距離危険度警告装置である。なお、各種付加的要素を加えることにてさらに利便性を高めることができる。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、工事車両と周囲作業員の距離を常時把握し、危険域に作業員が移行すると直ちにこれを感知して車輌オペレーターに光もしくは光と音にて知らせることができるので、工事作業時の人的災害を未然に防止できる有用なる装置を得ることができる。
なお、本装置は発信機と受信機の距離変化を自動感知するものであるため、工事現場以外の種々の用途にも用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図において、1は発信機で、作業員が個々に所有するものである。2は発信部、3は電池、4は電池残量計測部、5は残量警告表示部である。この警告表示は、ブザーによる発音や、発音に加えて発光ダイオード等によるランプ表示により行われる。また、発信部にはアンテナが内蔵される。この発信機はコンパクトなケース内に収容され、ヘルメットに装着や作業員のベルトに装着される。なおメインスイッチおよびスイッチランプがケース適所に設けられる。
10は受信機である。この受信機は工事車両に設けられる。11は受信信号処理部、12は受信感度制御部、13は警告表示部、14はバッテリー、15はバッテリー残量計測部、16は残量警告表示部である。なお、受信機内の警告表示部は次の形態である。
図2において、20は受信機を内蔵した適宜サイズ箱体表面の表示パネル、21は該パネルほぼ中央に位置するスイッチランプ、22はスイッチランプに近接して位置するバッテリー残量警告ランプ、23は表示パネルの中央から放射状に四方向に向けて位置する位置表示ランプ、24は箱体側面に位置する発音器としてのブザー、25はブザー音量調整のためのブザーボリューム、26は受信感度調整のための感度調整ボリューム、27はメインスイッチである。この表示パネル部分はオペレーター運転席の適所に設けられ、アンテナは工事車両後部両端近傍にマグネットその他の手段にて設けられ、受信機と結線接続される。
以上が本発明の一実施形態である。
【0007】
次に、本発明の使用について説明する。
オペレーターは工事作業前に受信機のメインスイッチを投入し、スイッチランプ21の点灯を確認する。各作業者は発信機のスイッチを投入し、スイッチランプが点灯してこれを確認する。このスイッチ投入にて、発信機は特有の信号を常時発信し続けることとなる。
受信機はこの信号を常時受信し続け、作業員が設定半径以外の位置にいるときは、その受信信号強度は所定レベル以下となるので、受信信号処理部でこれを認識して警告表示部を制御し、表示パネルの位置表示ランプは最外方位置のランプが緑に点灯し続けて、オペレーターは危険域に作業員が存在しないことを認識することができる。作業員が工事車両にさらに接近すると信号強度はより大きくなり、同様に位置表示ランプは中間位置が黄色に点滅してオペレーターに注意を促し、ブザーは弱く断続的に発音する。
作業員がさらに接近すると、最内側のランプが赤色に点滅するとともにブザーは強く断続的に発音し、作業員が危険域に存在することをオペレーターに知らせることとなる。
また、受信機にはブザーボリューム25と感度調整ボリューム26が設けられており、現場の騒音状況に対応でき、また工事車両サイズにも対応することができる。つまり、小型車輌では感度調整ボリュームを下げ、大型車輌ではこのボリュームを上げることにて、危険域の範囲を調整することができる。図示の表示パネルは、工事車両の四隅に受信アンテナを設けた場合を想定しており、各ランプ列は各アンテナに対応しているので、どの方向に危険域内作業員がいるのかを点灯するランプ位置にて概略方向を知らせることができる。なお、発信機と受信機はともに電池やバッテリーにて電力が供給されるので、これらの残量が低下すると各機器の作動に支障が出る。これを防ぐためにバッテリー残量計測部および残量警告表示部を設け、ランプ点灯やブザー発音にて知らせるよう構成した。
【0008】
以上、本発明について記したが、本発明は発信機を所持する作業員が危険域にいると、表示パネルにて直ちにオペレーターに知らせることができるところにその特徴を有するものである。従来は既述のように、画像にてオペレーターが確認するしか手段がなく、警告表示がないので危険回避が不完全なものであったが、本発明にてこれが解決できるものとなったのである。本発明にて用いる信号形態としては、電波、赤外線、超音波などを想定している。また、発信機所持者の位置のみを認識するので、物的障害物による誤認を防ぐことができる。また、付加的要素として、工事車両の目立つ個所に警告ランプや発音器を設け、危険域にいる作業員に警告を発する手段も可能であり、自動的にこれを行い、あるいはオペレーターの操作にて警告を発するよう構成してもよい。
発信機からの信号は電波では球状に広がるので、前後左右のみならず上下位置の認識も可能である。既述の例では、作業員位置と方向をランプ色別にて区別して認識することができ、発音器との併用にて作業環境の騒音や明るさに関係なく明瞭に警告を認識することができる。なお、受信機に用いるバッテリーは受信機ケース内に収納するが、工事車両用のバッテリーから電力を供給する方式としてもよい。
本発明は、工事車両に固定して設ける、あるいは着脱式に設けてもよく、着脱式のときは必要に応じて他の工事車両に移転して使用することができる。本発明の用途として、工事現場を想定しているが、これに限らず危険防止のための種々の用途に利用することができる。以上のごとく、本発明によって作業員危険回避のための有用なる手段を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】 本発明の機能構成説明図
【図2】 本発明の表示パネル説明図
【図3】 本発明の信号処理図
【図4】 本発明の使用状態図
【符号の説明】
【0010】
1 発信機
2 発信部
3 電池
4 電池残量計測部
5 残量警告表示部
10 受信機
11 受信信号処理部
12 受信感度制御部
13 警告表示部
14 バッテリー
15 バッテリー残量計測部
16 残量警告表示部
17 受信アンテナ
20 表示パネル
21 スイッチランプ
22 バッテリ残量警告ランプ
23 位置表示ランプ
24 ブザー
25 ブザーボリューム
26 感度調整ボリューム
27 メインスイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号を発信するための発信機と、信号を受信するための受信機との組み合わせよりなる装置において、受信機に受信信号処理部および警告表示部を設け、警告表示部において用いる表示パネルに、信号強度に応じて選択的に点灯する表示ランプを設けることにより、受信機と発信機の距離変化を認識できるよう構成したことを特徴とする対人距離危険度警告装置。
【請求項2】
表示パネルに発音器を付加して、表示ランプと発音器の双方にて受信機に対する発信機の距離変化を認識できるよう構成してなる請求項1記載の対人距離危険度警告装置。
【請求項3】
表示パネルに受信信号感度調整手段を設けてなる請求項1又は2記載の対人距離危険度警告装置。
【請求項4】
発信機と受信機に、電池残量警告手段を設けてなる請求項1〜4のいずれかの項に記載の対人距離危険度警告装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−225130(P2010−225130A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−99358(P2009−99358)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(509107493)
【Fターム(参考)】