説明

対物レンズの球面収差を調整するシステム及び方法

複数の対物レンズを備える球面収差調整システムが開示される。複数の対物レンズのうちの少なくとも1つは球面収差カラーを有する。複数の対物レンズは対物レンズ保持器上に載置され、対物レンズ保持器は、複数の対物レンズのうちの少なくとも1つを結像位置に配置するように構成される。機械的連結部によって複数の対物レンズのうちの少なくとも1つに駆動機構が結合され、機械的連結部は駆動機構から球面収差カラーに動きを伝達するように構成される。制御システムは駆動機構を、結像位置における複数の対物レンズのうちの少なくとも1つの球面収差カラーを特定の球面収差調整設定まで移動させるように操作するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顕微鏡システムの対物レンズの球面収差設定を調整するシステム及び方法に関する。
【0002】
[関連出願の相互参照]
本願は、2007年2月9日に出願された米国仮特許出願第60/889,042号に対する優先権を主張し、当該特許文献の開示は、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【背景技術】
【0003】
試料上の微小な関心領域を調査する場合に、研究者は、顕微鏡を利用して試料を観察することが多い。顕微鏡は、従来の広視野の、蛍光顕微鏡又は共焦点顕微鏡とすることができる。このような顕微鏡の光学的構成は通常、光源と、照明光学系と、対物レンズと、試料保持器と、結像光学系と、検出器とを含む。光源からの光は、照明光学系及び対物レンズを通じて伝搬した後に、試料上の関心領域を照明する。顕微鏡対物レンズは、アイピースを介して観察することができる物体の拡大像を形成するか、又はデジタル顕微鏡の場合には、拡大像は、検出器によって捕捉され、ライブ観察、データストレージ、及びさらなる分析のためにコンピュータに送信される。このような構成において、対物レンズが顕微鏡の重要な部分を形成することは明らかである。
【0004】
多くの試料は顕微鏡によって直接見ることができる。すなわち、対物レンズと試料との間に光学材料は存在しない。しかしながら、倒立顕微鏡又は落射蛍光顕微鏡のようないくつかの他の結像構成では、試料は、ガラスカバースリップ、スライドガラス及び試料保持器(たとえば、ペトリ皿、マイクロタイタープレート)の底板を通じて見られる。通常、市販の対物レンズは、0.17mm顕微鏡カバースリップのような特定の厚さのこのような試料保持器又はカバー向けに設計される。異なる厚さの底板を有する試料保持器が使用される場合、指定の厚さから逸脱することによって、試料保持器によって導入される球面収差に起因して像品質の重大な劣化が生じる。対物レンズの設計において、試料が異なる厚さの試料支持体を通じて結像される場合に球面収差の補償を可能にする補正カラーを設けることができる。一般的な研究室業務において、顕微鏡を使用する研究者は、(1)コンピュータ画面上でライブ画像を観察しながらカラーを手動で回転させること、(2)顕微鏡対物レンズ上に配置されている目盛りを使用してカラーを既知の試料保持器厚さに設定することによって、球面収差補正設定を調整する。
【0005】
自動顕微鏡システムの場合、対物レンズにアクセスして対物レンズの球面収差設定を補正することは常に可能ではない。ユーザの、対物レンズにアクセスして球面収差設定を補正する能力が、レーザ走査顕微鏡のレーザ安全基準に起因して制限されるおそれがあるか、又は、自動顕微鏡が自己密閉設計であること(すなわち、対物レンズが機器の中程に配置され且つ顕微鏡の他の構成要素によって取り囲まれる場合)に起因して、物理的なアクセスが限定されるおそれがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
顕微鏡において電動(又は自動)球面収差補正システムを利用することによって、ユーザが、試料の鮮明な像を得るために、簡単且つ効果的に対物レンズの球面収差を補正することが可能になる。それゆえ、ユーザが、対物レンズの球面収差補正設定を調整すること、又は、自動モードにおいて球面収差補正の異なる設定を必要とする複数の試料の結像を実施することを可能にするシステム及び方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記の技術的背景を考慮して完成されており、本発明の目的は、対物レンズの球面収差補正を自動調整するシステム及び方法を提供することである。
【0008】
複数の対物レンズを備える結像系が開示される。複数の対物レンズのうちの少なくとも1つは球面収差カラーを有する。複数の対物レンズは、対物レンズ保持器上に載置され、対物レンズ保持器は、複数の対物レンズのうちの少なくとも1つを結像位置に配置するように構成される。機械的連結部によって複数の対物レンズのうちの少なくとも1つに駆動機構が結合され、機械的連結部は駆動機構から球面収差カラーに動きを伝達するように構成される。制御システムは駆動機構を、複数の対物レンズのうちの少なくとも1つの球面収差カラーを特定の球面収差調整設定まで移動させるように操作するように構成される。
【0009】
本発明のこれらの利点及び他の利点は、以下の説明を添付の図面と併せて読むとより明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態による、対物レンズの球面収差を調整するシステムのブロック図を示す。
【図2】本発明による図1の受像装置の概略図である。
【図3】本発明による自動球面調整システムを有する対物レンズの一実施形態を示す。
【図4】本発明による自動球面調整システムを有する対物レンズの別の実施形態を示す。
【図5】本発明による自動球面調整システムを有する対物レンズの別の実施形態を示す。
【図6】対物レンズの球面収差調整システムの別の実施形態の概略図を示す。
【図7】球面収差システムを本発明に従って利用する方法の流れ図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の現在好ましい実施形態を、図面を参照して説明する。図面において、同様の構成要素は同じ参照符号を用いて識別される。好ましい実施形態の説明は例示であり、本発明の範囲を限定するようには意図されていない。
【0012】
図1は、対物レンズの球面収差を調整するシステムを備える一般的な倒立デジタル顕微鏡システムの必須の構成要素のブロック図を示す。この自動デジタル顕微鏡システム100は補正された結像光学系に基づき、以下の構成要素、すなわち、光源105と、光伝達光学系101と、ビームフォールディング光学系109と、対物レンズ123を保持する対物レンズタレット102と、コントローラ125と、試料115と、試料保持器121と、結像レンズ108と、光検出器107と、通信リンク117と、コンピュータ103とを備える。
【0013】
本発明の例示的な一実施形態では、コントローラ125は、機械的アクチュエータと、駆動機構ドライバ(アクチュエータドライバ)とを備える。駆動機構ドライバは、回転アクチュエータ若しくは線形アクチュエータ、又は、駆動機構301c、302c(図3)、404(図4)、504(図5)及び604(図6)を操作することが可能な任意の他のデバイスとすることができる。回転アクチュエータは、ステッパモータ、直流(DC)モータ又はサーボモータとすることができる。線形アクチュエータは、圧電モータ又はソレノイドとすることができる。本発明の別の実施形態では、コントローラ125は、ワイヤによって、ジョイスティック又は回転つまみ電位差計のような、対物レンズ(複数可)123の球面収差を調整するための信号を提供するコントローラに機械的に連結されてもよい。コントローラ125は、それぞれの駆動機構301c及び302c(図3)、404(図4)、駆動機構504(図5)並びに駆動機構604(図6)に動きを伝達する駆動機構ドライバを含む。
【0014】
対物レンズ123の球面収差カラー123aを調整するために、コンピュータ103は、その機械的アクチュエータを利用してSAカラー123aに接続される機械的連結部を通じて動きを伝達するコントローラ125にコマンドを送信し、それによってSAカラー123aが移動される。
【0015】
光源105は、ランプ、レーザ、複数のレーザ、発光ダイオード(LED)、複数のLED、又は、当業者に既知の、光線106を生成する任意の種類の光源とすることができる。光線106は、光伝達光学系101、ビームフォールディング光学系109及び対物レンズ123によって伝達され、試料115を照明する。試料115から放出又は反射される光は対物レンズ123によって収集され、光検出器107上の結像レンズ108によって試料115の像が形成される。光検出器107は、光電子増倍管、電荷結合素子(CCD)、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)像検出器又は当業者によって利用される任意の光検出器とすることができる。光検出器107は、通信リンク117によってコンピュータ103に電気的に又は無線で接続される。別の実施形態では、光検出器107を、対物レンズタレット102内に載置される対物レンズ123と協働して中間像をさらに拡大する一般的な顕微鏡アイピース又は接眼レンズに置き換えてもよく、それによって被検査物の細部を観察することができる。試料115は、一般的なマイクロタイタープレート、顕微鏡スライド、チップ、板ガラス、ペトリ皿、又は任意の種類の試料保持器とみなすことができる試料保持器121上に載置される。システムは、異なる厚さを有する2つ以上の試料保持器を結像するのに使用することができる。
【0016】
別の実施形態では、顕微鏡システム100を、通信リンク117によって従来のコンピュータ103に電気的に又は無線で接続してもよい。通信リンク117は、ローカルアクセスネットワーク(LAN)、無線ローカルネットワーク、広域ネットワーク(WAN)、ユニバーサルサービスバス(USB)、イーサネットリンク、光ファイバー等のような、自動顕微鏡システム100とコンピュータ103との間でのデータの転送を促進することが可能である任意のネットワークとすることができる。顕微鏡は、複数の対物レンズ111を有することもできる。コンピュータ103は、受像装置103又は像検出デバイス103とみなすことができる。本発明の別の実施形態では、受像装置103をデジタル顕微鏡100の内部に配置してもよい。受像装置103は、光検出器107から試料115の画像を受け取ることが可能な一般的なコンピュータの機能を果たし、その場合、受像装置103は、標準的な画像処理ソフトウェアプログラム、アルゴリズム又は式を利用することによって画像を表示、保存、又は処理することが可能である。また、コンピュータ103は、個人情報端末(PDA)、ラップトップコンピュータ、ノートブックコンピュータ、携帯電話、ハードドライブベースのデバイス、又は、通信リンク117を通じて情報を受信、送信及び記憶することができる任意のデバイスとすることができる。本発明においては1つのコンピュータが利用されるが、コンピュータ103の代わりに複数のコンピュータを利用してもよい。
【0017】
顕微鏡システム100は図1において、必須の構成要素のみを強調表示されて概略的に示されている。顕微鏡法の技術分野の熟練者(当業者)には、このブロック図が対物レンズを使用するすべての顕微鏡を説明することは明らかであろう。例は、限定ではないが、従来の広視野顕微鏡、蛍光顕微鏡、点走査共焦点顕微鏡、線走査共焦点顕微鏡を含む。これらの種類の顕微鏡は、高スループットスクリーニングのような種々の用途に役立つ自動化装置を用いて強化することができる。しかしながら、それらは本発明の範囲から除外されない。また、顕微鏡システム100は、ニュージャージー州ピスカタウェイ所在のGE Healthcareによって製造されるINCELL(商標)分析器1000又は3000とすることもできる。
【0018】
図2は、図1のデジタル顕微鏡システム100の受像装置の概略図を示す。受像装置103は、従来のコンピュータに関連付けられる一般的な構成要素を含む。受像装置103は、プロセッサ103aと、入出力(I/O)コントローラ103bと、マスストレージ103cと、メモリ103dと、ビデオアダプタ103eと、接続インタフェース103fと、上記のシステムの構成要素をプロセッサ103aに動作可能に、電気的に又は無線で結合するシステムバス103gとを備える。また、システムバス103gは、一般的なコンピュータシステム構成要素をプロセッサ103aに電気的に又は無線で、動作可能に結合する。プロセッサ103aは、処理装置、中央処理装置(CPU)、複数の処理装置又は並列処理装置とみなすことができる。システムバス103gは、従来のコンピュータに関連付けられる一般的なバスとすることができる。メモリ103dは、読出し専用メモリ(ROM)及びランダムアクセスメモリ(RAM)を含む。ROMは、起動中のコンピュータの構成要素間の情報の転送を補助する基本ルーチンを含む一般的な入出力システムを含む。
【0019】
入出力コントローラ103bは、バス103gによってプロセッサ103aに接続され、この場合、入出力コントローラ103bは、ユーザが、球面収差GUI、及び、キーボード及びポインティングデバイスのような入力デバイス104によってコンピュータにコマンド及び情報を入力することを可能にするインタフェースの機能を果たす。利用される一般的なポインティングデバイスは、ジョイスティック、マウス、ゲームパッド等である。ディスプレイ106は、ビデオアダプタ103eによってシステムバス103gに電気的に又は無線で接続される。ディスプレイ106は、一般的なコンピュータモニタ、プラズマテレビ、液晶ディスプレイ(LCD)、又は、コンピュータ103によって生成される文字及び/又は静止画像を有することが可能な任意のデバイスとすることができる。コンピュータ103のビデオアダプタ103eには、接続インタフェース103fが隣接している。接続インタフェース103fは、上述のように、通信リンク117によって光検出器107に接続されるネットワークインタフェースとみなすことができる。また、受像装置103は、受像装置103が他のコンピュータに結合されることを可能にするネットワークアダプタ又はモデムを含むことができる。
【0020】
上記のメモリ103dは、1.ハードディスクからの読出し及びハードディスクへの書込みのためのハードディスクドライブコンポーネント(図示せず)及びハードディスクドライブインタフェース(図示せず)、2.磁気ディスクドライブ(図示せず)及び磁気ディスクドライブインタフェース(図示せず)、並びに3.CD−ROM又は他の光媒体のような取外し可能光ディスクからの読出し及び取外し可能光ディスクへの書込みのための光ディスクドライブ(図示せず)及び光ディスクドライブインタフェース(図示せず)を含むマスストレージ103cである。上記のドライブ及びそれらの関連付けられるコンピュータ可読媒体は、コンピュータ−可読命令、データ構造体、プログラムモジュール及び他のデータの不揮発性ストレージをコンピュータ103に提供する。また、上記のドライブは、本発明の、複数の対物レンズの球面収差を調整するためのアルゴリズム、ソフトウェア又は式を有するという技術的効果を含む。当該アルゴリズムについては図7の流れ図において説明する。
【0021】
複数の対物レンズの球面収差を調整するためのソフトウェアプログラム内には、球面収差グラフィカルユーザインタフェース(GUI)が存在する。球面収差グラフィカルユーザインタフェースは、コンピュータのユーザがコンピュータ103と容易に対話することを可能にするように設計されるソフトウェアプログラムである一般的なGUIと同じ機能性の一部を有する、特別にプログラムされたGUIである。球面収差GUIは、1.試料保持器121の厚さ、及び2.対物レンズ301、302、401、402、501、502、601及び602に対する球面収差調整設定を表示する。試料保持器121の厚さは、ユーザによって供給される情報に基づく。ユーザは、試料保持器121の製造者から当該情報を受け取ることができる。加えて、試料115は、0mm〜1mmの範囲内の媒体深さを有するゲル、緩衝液又は溶液のような媒体に入れることができる。試料115のこの媒体深さを試料保持器121の厚さと組み合わせると、対物レンズ301、302、401、402、501、502、601及び602の球面収差カラーを調整するのに使用することができる厚さが結果として求められる。また、球面収差GUIは図7において考察されるように、データ入力デバイス104(マウス、ジョイスティック、キーボード等)と協働して、ユーザが対物レンズ301、302、401、402、501及び502の球面収差調整設定を調整することを可能にする。球面収差カラー301a、302a、401a、402a、501a、502a、601a及び602aは、球面収差補正カラー又は補正カラーとして既知のものとすることもできる。
【0022】
試料保持器121の厚さは、球面収差ソフトウェアプログラム上に記憶されているか又はユーザによって入力される、プレート、チップ、顕微鏡スライド、ペトリ皿又はガラスの一般的な厚さに基づくことができる。任意選択的に、ユーザは、試料保持器121に対する特定の球面収差調整設定をコンピュータ103に入力することもできる。対物レンズ301及び302に対する一般的な球面収差調整設定も球面収差ソフトウェアプログラム内に記憶される。
【0023】
球面収差補正システムは、2つのモード、すなわちプロトコル駆動モード及び手動モードのうちの一方において動作する。プロトコル駆動モードでは、それぞれの対物レンズ301、302の球面収差カラー301a及び302a(図3)が、試料保持器121(図1)の厚さ又はプロトコル内に記録されている結果として求められた試料保持器121の厚さ及び試料115の媒体深さに関連する上記の球面収差ソフトウェアプログラム内のプロトコルに基づいて、球面収差補正システムによって自動的に調整される。たとえば、被検査物保持器121が0.2mmの厚さを有する場合、対物レンズ301又は302の球面収差カラーのうちの少なくとも1つが0.2mmの球面収差設定に調整される。手動動作モードでは、対物レンズ301又は302の球面収差補正カラーが、グラフィカルユーザインタフェース(GUI)を介して選択されるユーザ定義の設定に調整される。たとえば、ユーザは、コンピュータ103上に記憶されている球面収差グラフィカルユーザインタフェース(GUI)を使用して球面収差カラー301a及び302aのうちの少なくとも1つを、0.2mmである試料保持器121の厚さに基づいて0.2mmのような球面収差調整設定に調整する。
【0024】
図3は、球面収差調整システムの一実施形態の概略図を示す。システム300は、対物レンズ301と、対物レンズ302と、対物レンズ保持器303と、第1の駆動機構301cと、第2の駆動機構302cと、第1の駆動機構マウント301dと、第2の駆動機構マウント302dと、第1の任意選択の位置センサ301eと、第2の任意選択の位置センサ302eと、第1の機械的連結部301bと、第2の機械的連結部302bとを備える。対物レンズ保持器303は、顕微鏡システムにおいて、一般的な対物レンズ301及び302を支持すると共にこれらの対物レンズを結像位置に移動させるのに利用される、タレット又はリボルバのような一般的な対物レンズ切換装置である。結像位置とは、ユーザが顕微鏡を利用して対物レンズ301又は302のいずれか一方を配置する場所であり、それによってユーザは試料115の像を見ることができる。対物レンズ保持器303が、所望の対物レンズを結像位置に配置するように回転している間、対物レンズ301及び302は、それぞれの駆動機構301c及び302cと常に作用可能に係合している。駆動機構301c及び302cは、球面収差カラー301a及び302aを、一般的な約0mm〜4mmの範囲内の設定のような球面収差調整設定まで移動させることができる。
【0025】
2つの対物レンズ、2つの駆動機構、及び2つの駆動機構コントローラのみが図示されているが、対物レンズ、駆動機構及び駆動機構コントローラの数は、顕微鏡の設計又はユーザにとって好ましい顕微鏡の構成に応じて増大又は低減することができる。対物レンズ301及び302は、異なる倍率を有することができる、自動顕微鏡システムにおいて使用される一般的な対物レンズである。たとえば、対物レンズ301は20Xの倍率を有することができ、対物レンズ302は60Xの倍率を有することができる。
【0026】
対物レンズ301及び302はそれぞれ、それぞれの球面収差カラー301a及び302aを有する。この球面収差調整システム300は、試料保持器121(図1)の厚さ、結果として求められた試料保持器121の厚さ及び媒体中の試料115の深さと、対物レンズ301及び302の球面収差設定との差によって引き起こされる球面収差を補正するのに利用される。本発明は、顕微鏡システム100のような自動顕微鏡システムにおける対物レンズ301及び302の球面収差設定を調整する、単純で効率的な方法をユーザに提供する。
【0027】
自動顕微鏡システムの対物レンズの球面収差補正は、0mm〜4.0mmの範囲内の被検査物支持体厚さ向けに調整することができる。また、対物レンズ301は0mm〜1.5mmの範囲内の設定を有し、対物レンズ302は0mm〜2.5mmの範囲内の設定を有する、というように、対物レンズ301及び302のそれぞれは、異なる球面収差調整範囲を有することができる。たとえば、Nikon、Canon CFL−PIX、製品番号95478に関して、球面収差補正範囲は0mm〜2mmである。球面収差カラー301a及び302aの設定は、それぞれの対物レンズ301及び302の球面調整補正のために、試料保持器121の厚さ、又は結果として求められた試料保持器121の厚さ及び試料115の媒体の深さと整合される。たとえば、試料保持器121の厚さが1mmである場合、対物レンズ301及び302のうちの少なくとも1つの球面収差カラー301a又は302aのうちの少なくとも1つは、1mmに設定する必要がある。
【0028】
それぞれの対物レンズ301及び302の球面収差カラー301a及び302aは、それぞれの駆動機構301c及び302cに対する機械的連結部301b及び302bを有する。駆動機構301c及び302cは、ステッパモータ、直流(DC)モータ若しくは圧電モータ又は当業者に既知の他のアクチュエータとすることができる回転アクチュエータとみなすこともできる。機械的連結部は、駆動機構の回転を球面収差カラーに伝達する。この機械的連結部は、一般的な機械ギア(全周ギア又は部分ギア)、ベルト若しくはチェーンシステム、ベルト及び滑車、摩擦式スピンドル又は当業者に既知の他の機構とすることができる。
【0029】
本発明の別の実施形態では、球面収差調整システム300は、その球面収差GUI上に表示される、制御システム309に対する、それぞれの球面収差カラー301a又は302aの位置、駆動機構304の位置、機械的連結部301b及び302bの位置に関する信号を送信する一般的な位置センサ301e及び302eを備えることができる。
【0030】
駆動機構コントローラ304a及び304bはそれぞれ、駆動機構301c及び302cに接続される。駆動機構コントローラ304a及び304bは、上述のコントローラ125と等価であるため、ここでは別途説明は提供しない。駆動機構コントローラ304a及び304bはそれぞれ、機械的連結部301b及び302bを移動させ、それによって、次いで球面収差カラー301a及び302aを、時計回りの方向又は反時計回りの方向に、0mm〜4mmの範囲内の特定の球面収差(調整)設定まで移動させるために、駆動機構301c及び302cに接続される。制御システム309又はコンピュータシステム309は、駆動機構コントローラ304a及び304b並びに位置センサ301e及び302eに接続される。制御システム309は、位置センサ301e及び302eから受信される信号を利用して球面収差カラー301a及び302aの現在位置、駆動機構304の位置、機械的連結部301b及び302bの位置を求め、次いで、制御システム309は、必要とされる位置に達すると、駆動機構コントローラ304a及び304bを利用して、球面収差カラー301a及び302aの動きを停止させる。制御システム309は上述のコンピュータ103と等価である。
【0031】
図1を参照すると、コンピュータ103は、ワイヤによって又は無線でコントローラ125に接続され、それによって、コンピュータ103は、図7において説明される、それぞれの対物レンズ301、302、401、402、501、502、601及び602の球面収差カラー301a、302a、401a、402a、501a、502a、601a及び602aを1mmのような特定の球面収差調整設定まで移動させるためのコマンドをコントローラ125に送信するソフトウェアプログラムを含む。本発明の別の実施形態では、コンピュータ103は顕微鏡システム100の内部に配置され、そのため、ユーザは、顕微鏡システム100を利用して対物レンズ301及び302における球面収差を補正することができる。
【0032】
図4は、対物レンズのための球面収差(SA)調整システムの別の実施形態の概略図を示す。SA調整システム400は、それぞれのSAカラー401a及び402aを有する対物レンズ401及び402であって、当該対物レンズ401又は402を結像位置に移動させる対物レンズ切換装置403上に載置される、対物レンズ401及び402とを備える。ここでは2つの対物レンズ401及び402のみを示すが、複数の対物レンズを本発明のこの実施形態に利用することができる。任意選択の位置センサ404aを有する駆動機構404が、対物レンズ切換装置403から分離されているプラットフォーム上にある。駆動機構404は、機械的連結部405によって球面収差カラー402aに接続される。位置センサ404aは、位置センサ301eと同様に、その球面収差GUI上に表示される、制御システム409に対する、それぞれの球面収差カラー401a又は402aの位置、駆動機構404の位置、機械的連結部405の位置に関する信号を送信するという同じ様式で動作する。制御システム409は制御システム309と等価である。駆動機構404は、それぞれの対物レンズ401及び402の球面収差カラー401a及び402aの球面収差設定を制御するためのGUIを提供するコンピュータ409に接続される駆動機構コントローラ404bによって駆動される。駆動機構コントローラ401bは上述のコントローラ125と等価である。
【0033】
駆動機構404は、顕微鏡システム100の結像位置に配置される対物レンズ401又は402のSAカラー401a又は402aに機械的に連結される。駆動機構404に結合される機械的連結部405は、駆動機構404の回転をSAカラー401a又は402aに伝達する。機械的連結部301b及び302bと等価である機械的連結部405は、一対のギア、摩擦式スピンドル、又は当業者に既知の、回転を伝達するための他の機構とすることができる。駆動機構404は、制御システム409から命令を受信する駆動機構コントローラ404bによって制御される。任意選択の位置センサ404aは、制御システム409に対する、駆動機構404の現在位置、駆動機構404の現在位置、及び機械的連結部405の現在位置に関する信号を送信する。
【0034】
この実施形態に関して、ユーザが対物レンズ切換装置404を回転させる一般的な手段を利用する場合、試料115(図1)を見るために、対物レンズ401又は対物レンズ402のいずれかが顕微鏡の結像位置に移動される。この結像位置において、球面収差カラー401a又は球面収差カラー402aは、機械的連結部405を通じてドライバ機構404と係合される。次に、ドライバ機構404は、機械的連結部405を移動させ、それによって、次いでそれぞれの球面収差カラー401a又は402aを、時計回りの方向又は反時計回りの方向に特定の球面収差調整設定まで移動させることが可能である。球面収差調整の精度は、コンピュータ103上の球面収差GUIにおいて位置センサ404aからの信号を監視することによって制御することができる。駆動機構404は、駆動機構コントローラ404b及び制御システム409によって制御されるか、又は駆動機構コントローラ404bによって単独に制御されて、結像位置に位置する対物レンズ401又は402の球面収差カラー401a又は402aを、0mm〜4mmの範囲内の任意の場所とすることができる特定の球面収差調整設定まで移動させる。
【0035】
この実施形態の、上述の実施形態との主要な相違点は以下の通りである。
【0036】
顕微鏡100内に設置されるすべての対物レンズに関するSA補正設定を調整するのに1つの駆動機構及び駆動機構コントローラのみが必要とされる、
SA調整は順次実施される、すなわち、一度に1つの対物レンズのみが調整される、
このシステムは、対物レンズごとに独立してSA補正設定を設定することを可能にする。
【0037】
図5は、対物レンズのためのSA調整システムの別の実施形態の概略図を示す。SA調整システム500は、SAカラー501a及び502aを有する対物レンズ501及び502であって、当該対物レンズ501又は502を結像位置に移動させる対物レンズ切換装置503上に載置される、対物レンズ501及び502とを備える。ここでは2つの対物レンズ501及び502のみを示すが、複数の対物レンズを本発明のこの実施形態に利用することができる。任意選択の位置センサ501c及び502cを有する駆動機構504が、対物レンズ切換装置503上に載置される。位置センサ501c及び502cは、位置センサ301eと同様に、その球面収差GUI上に表示される、制御システム509に対する、それぞれの球面収差カラー501a又は502aの位置、駆動機構504の位置、機械的連結部501a及び502bの位置に関する信号を送信するという同じ様式で動作する。制御システム509は上記で考察したコンピュータ103と等価である。駆動機構504は、対物レンズ501及び502の球面収差設定を制御するためのGUIを提供する制御システム509に接続される駆動機構コントローラ504bによって駆動される。
【0038】
駆動機構504は、対物レンズ501及び502のような、顕微鏡の、球面収差カラーを有するすべての対物レンズのSAカラー501a及び502aに機械的に連結される。機械的連結部501b及び502bは、一対のギア、ベルト、摩擦式スピンドル、又は当業者に既知の、回転を伝達するための他の機構とすることができる。対物レンズ501及び502のSA調整の角度範囲は異なる場合があるため、機械的連結部501b及び502bの角度伝達比は、駆動機構504の回転範囲を、当業者に既知のようなギア比の適切な選択を介して対物レンズ501及び502のSA調整範囲とマッチさせるべきである。たとえば、機械的連結部501bのギア比を1とすることができ、且つ機械的連結部502bのギア比を0.5とすることができる。この場合、機械的連結部501bは球面収差カラー501aを完全に1回転させ、同時に機械的連結部502bは、球面収差カラー502aを1/2回転させる。駆動機構は、制御システム509から命令を受信する駆動機構コントローラ504bによって制御される。
【0039】
この実施形態に関して、ユーザは、試料115(図1)を見るために、事前定義の像及びプロトコルにおいて駆動機構コントローラ504bの球面収差GUIを利用して、同時に球面収差カラー501a及び502aを特定の球面収差設定に設定する。機械的連結部501b及び502bはそれぞれドライバ機構504と係合され、それによって、ドライバ機構504が機械的連結部501b及び502bを同時に移動させ、それによって、次いでそれぞれの球面収差カラー501a及び502aを特定の球面調整設定又は位置まで同時に移動させることが可能である。駆動機構504の移動の精度は、制御システム509上の球面収差GUIにおいて位置センサ501c及び502cからの信号によって監視することができる。
【0040】
この実施形態の主要な特徴は以下の通りである:
顕微鏡のすべての対物レンズに関するSA補正設定を調整するのに1つの駆動機構及び駆動機構コントローラのみが必要とされる、
SA調整は駆動機構に接続されているすべての対物レンズに対して同時に実施される、
このシステムは、対物レンズのすべてに対してSA補正設定を同期させることを可能にする。
【0041】
図6は、対物レンズのためのSA調整システムの別の実施形態の概略図を示す。SA調整システム600は、それぞれのSAカラー601a及び602aを有する対物レンズ601及び602であって、当該対物レンズ601又は602を結像位置に移動させる対物レンズ切換装置603上に載置される、対物レンズ601及び602とを備える。ここでは2つの対物レンズ601及び602のみを示すが、複数の対物レンズを本発明のこの実施形態に利用することができる。対物レンズ切換装置603は、任意選択の位置センサ601d及び602d、及び駆動機構604も備える。位置センサ601d及び602dは、その球面収差GUI上に表示される、制御システムに対する、それぞれの球面収差カラー601a又は602aの位置、及び駆動機構604の位置に関する信号を送信するように、位置センサ301eと同じ様式で動作する。駆動機構604は駆動機構コントローラ604bによって駆動され、この場合、駆動機構コントローラ604bは、対物レンズ601及び602の球面収差設定を制御するためのGUIを提供する制御システム609に接続される。駆動機構コントローラ604bは、駆動機構コントローラ304aと等価であり、一方で制御システム609は制御システム409と類似している。
【0042】
駆動機構604は、それぞれの機械的連結部601b、601c及び602bによって顕微鏡100のすべての対物レンズ601及び602のSAカラー601a及び602aに機械的に連結される。機械的連結部601b、602b及び601cは、ギア、摩擦式スピンドル、又は当業者に既知の、回転を伝達するための他の機構とすることができる。機械的連結部601cは、部分ギアとすることができ、それによって、機械的連結部601cは一度にSAカラー601a又は602aのうちの1つのみと係合する。
【0043】
この実施形態に関して、ユーザは、試料115(図1)を見るために、駆動機構コントローラ604bの球面収差GUIを利用して、球面収差カラー601a及び602aを時計回りの方向又は反時計回りの方向に特定の球面収差設定まで調整するか又は移動させる。駆動機構コントローラ601bは、機械的連結部601cを部分ギアとして利用することができ、それによって、SAカラー601a又は602aのうちの1つが係合される。SAカラー601aを移動させるために機械的連結部601cが部分ギアとして使用される場合、機械的連結部601cは、SAカラー601aを移動させるために機械的連結部601bのみをドライバ機構604と係合させる。SAカラー602aを移動させるために機械的連結部601cが部分ギアとして使用される場合、機械的連結部601cは、機械的連結部602bをドライバ機構604と係合させてSAカラー602aを移動させる。駆動機構604の移動の精度は、制御システム609上の球面収差GUIにおいて位置センサ604aからの信号によって監視することができる。
【0044】
この実施形態の主要な特徴は以下の通りである、
顕微鏡のすべての対物レンズに対するSA補正設定を調整するのに1つの駆動機構及び駆動機構コントローラのみが必要とされる、
このシステムは、対物レンズのすべてに対してSA補正設定を同期させることを可能にする、且つ
このシステムは、対物レンズごとに、一度に1つのみのSAカラーを係合及び移動させることを可能にする。
【0045】
図7は、球面収差調整システムを利用する方法の流れ図を示す。この説明は単一の対物レンズの調整に関して提供されるが、同様の手順を多対物レンズシステムに利用することができる。
【0046】
ブロック701において、SA調整システムが初期化される。初期化手順は、対物レンズのSAカラーを、最小又は最大の球面収差(調整)設定のような明確な開始位置又は初期位置に移動させることを含むことができる。最小設定は、0mm〜1.0mmの範囲内の任意の場所とすることができ、最大設定は、1.1mm〜2.5mmの範囲内の任意の場所である。開始位置は、カラー又は駆動アクチュエータが開始位置にあるときに電気信号を提供するエンドスイッチを実装することによって定義することができる。SA調整システムが位置センサを有しない場合、SAカラーの開始位置に対するすべてのさらなる移動が実施される。SA調整システムが位置センサを有する場合、位置センサがカラー又は駆動アクチュエータの絶対位置に関する情報を提供するため、ホーミング手順は必要とされない場合がある。
【0047】
ブロック702において、SAカラーの必要とされる設定が定義される。本発明の一実施形態では、システムは手動モード又はユーザ制御モードにおいて動作する。すなわち、ユーザは、駆動機構コントローラ304a及び304b、並びに顕微鏡システム100を制御する制御システム309上のGUIを介して、対物レンズ301又は302のような1つ又は複数の対物レンズの球面収差設定を調整することが可能である。ユーザ制御モードでは、ユーザは、球面収差グラフィカルユーザインタフェースを、制御システム309の入力デバイス104を用いて利用して、対物レンズ301又は302の任意の1つ、2つの又はすべてのSA設定を、たとえば約0mm〜4mmの範囲内の特定の値に変更する。また、ユーザは、制御システム309を利用して、それぞれの対物レンズ301又は302の球面収差カラー301a又は302aの少なくとも2つ以上を特定の球面収差調整設定まで同時に移動させることができる。
【0048】
ユーザが球面収差調整設定を入力する前に、それぞれの対物レンズ301及び302に対する球面収差調整設定が、制御システム309上の球面収差グラフィカルユーザインタフェース上に表示される。また、ユーザが、入力デバイス104を用いて試料保持器121(図1)の厚さを入力することができ、試料保持器121の厚さは球面収差GUI上に表示される。たとえば、制御システム309は、位置センサ301cにおいて対物レンズ301の球面収差調整設定を0.5mmであると読み取り、ユーザによって入力される試料保持器121の厚さを1mmであると読み取る。したがって、ユーザは、対物レンズ301の球面収差設定を試料保持器121の表示される厚さとマッチングすることが可能である。球面収差カラー301a及び302aのこの移動は、対物レンズ301及び302の球面収差を補正するための、入力及び表示される試料保持器121の0.5mmの厚さ、又は結果として求められた試料保持器の厚さ及び試料115の媒体の深さに依拠する、上記で考察した式又はアルゴリズムに基づく。
【0049】
本発明の別の実施形態では、ユーザは、制御システム409のグラフィカルユーザインタフェースを利用して、駆動機構コントローラ404bに信号を送信して対物レンズ401又は402の球面収差カラー401a又は402a(図4)のうちのいずれか一方を、球面収差GUIに表示される試料保持器121の0.3mmの厚さに基づく0.3mmのような特定の球面収差調整設定まで移動させて、対物レンズ401又は402の球面収差を補正する。球面収差カラー401a及び402aのこの移動は、対物レンズ401及び402の球面収差を補正するための、入力及び表示される試料保持器121の0.3mmの厚さ又は結果として求められた試料保持器の厚さ及び試料115の媒体の深さに依拠する、上記で考察した式又はアルゴリズムに基づく。
【0050】
本発明のさらに別の実施形態では、ユーザは、対物レンズ501及び502の球面収差を補正するために、制御システム509のグラフィカルユーザインタフェースを利用して、それぞれの対物レンズ501及び502(図5)の球面収差カラー501a及び502aを、試料保持器121の0.2mmの表示される厚さに基づく0.2mmのような同じ球面収差調整設定まで同時に移動させる。球面収差カラー501a及び502aのこの移動は、対物レンズ501及び502の球面収差を補正するための、入力及び表示される試料保持器121の0.2mmの厚さ又は結果として求められた試料保持器の厚さ及び試料115の媒体の深さに依拠する、上記で考察した式又はアルゴリズムに基づく。
【0051】
本発明の別の実施形態では、ユーザは、制御システム609のグラフィカルユーザインタフェースを利用して、それぞれの対物レンズ601及び602(図6)の球面収差カラー601a及び602aを、0.2mmのような同じか又は異なる球面収差調整設定まで別個に移動させる。球面収差カラー601a及び602aのこの移動は、対物レンズ601及び602の球面収差を補正するための、入力及び表示される試料保持器121の0.2mmの厚さ又は結果として求められた試料保持器の厚さ及び試料115の媒体の深さに依拠する、上記で考察した式又はアルゴリズムに基づく。
【0052】
本発明のさらに別の実施形態、すなわちプロトコル駆動動作モードでは、自動顕微鏡システム100は、対物レンズ301及び302の球面収差設定を、結像プロトコルに基づいて自動的に調整する。当該結像プロトコルは、制御システム309又は顕微鏡システム100のソフトウェアプログラム上に記憶されているプロトコルにおいて使用されている試料保持器の厚さを含む。球面収差補正システムアルゴリズム、ソフトウェア、式又は結像プロトコルを、プロセッサ103a、メモリ103d又は当業者に既知の受像装置103の任意の他の部品内に記憶することができる。さらに別の実施形態では、球面収差補正システムソフトウェア、アルゴリズム又は式は、コンピュータ実行可能命令を含む任意の種類のコンピュータ可読媒体上に記憶される。コンピュータ可読媒体は、フロッピーディスク、光ディスク、デジタルビデオディスク;コンピュータディスク読出し専用メモリ(CD−ROM)等を含む。
【0053】
本発明の別の実施形態では、ユーザは、ジョイスティック、回転つまみ電位差計、又は、制御信号を駆動機構コントローラ125、304a、304b、404b、504b又は604bに提供して対物レンズ301、302、401、402、501、502、601及び602の球面収差を調整する、当業者に既知の任意の他のコントローラのような代替的な入力デバイス(パーソナルコンピュータベースでないデバイス)を利用して、ユーザ定義のSA補正設定を入力することが可能であってもよい。
【0054】
ブロック703において、SAカラーをブロック702において定義された特定の位置まで移動させるための命令は、駆動機構コントローラに送信され、駆動機構コントローラは、SAカラーを時計回りの方向又は反時計回りの方向に回転させる動きを駆動機構からSAカラーに伝達する駆動機構を移動させる。本発明の一実施形態では、駆動機構コントローラ304a又は304b(図3)のうちの少なくとも1つは、対物レンズ301及び302の任意の1つ、2つ、3つ又はすべての球面収差カラー301a又は302aを1mmの球面収差調整設定まで移動させるための信号をコンピュータ103から受信する。
【0055】
駆動機構コントローラ304a又は304b(図3)のうちの少なくとも1つは、その駆動機構ドライバによって、機械的連結部301b又は302bを利用して任意の1つ、2つの球面収差カラー301a又は302aを特定の球面収差調整設定まで移動させる任意の又は複数の駆動機構301c又は302cに命令を送信する。駆動機構301c又は302cは、球面収差カラー301a及び302aを同じか又は異なる球面収差調整設定まで同時に移動させることができ、それによって、対物レンズ301及び302のそれぞれは、同じか又は異なる球面収差調整設定を有することになる。たとえば、対物レンズの球面収差調整設定を0.4mmとすることができ、対物レンズ301及び302の球面収差調整設定を0.4mmとすることができる。駆動機構301c及び302cのうちの任意の1つ、2つが駆動機構コントローラ304a及び304bから信号を受信する場合、任意の1つ、2つの機械的連結部301b及び302bがそれぞれの球面収差カラー301a及び302aと係合するか又は接触するようになる。球面収差機械的連結部301b及び302bは、球面収差カラー301a及び302aを、たとえば0.5mm〜1mmの特定の球面収差調整設定又は位置まで操作するか又は移動させる。
【0056】
本発明の別の実施形態では、駆動機構コントローラ404bは、球面収差カラー401a又は402a(図4)のいずれかを0.3mmの球面収差調整設定又は位置まで移動させるための信号をコンピュータ103から受信する。この点において、制御システム409は、対物レンズ401又は402のいずれかを結像位置まで移動させ、それによって、球面収差機械的連結部405は球面収差カラー401a又は402aと係合されることになる。駆動機構コントローラ404bは、その駆動機構ドライバによって、球面収差カラー401a又は402aを特定の球面収差調整設定まで移動させる駆動機構404に命令を送信する。駆動機構404は、駆動機構コントローラ404bから信号を受信する機械的連結部405を利用し、その結果、対物レンズ401又は402のいずれかが結像位置に移動し、そこで機械的連結部405はそれぞれの球面収差カラー401a又は402aと係合又は接触するようになる。機械的連結部405と球面収差カラー401a又は402aとの間の係合は、対物レンズ401又は402のいずれが、球面収差カラー401a又は402aを、時計回りの方向又は反時計回りの方向に、たとえば0.1mm〜0.3mmの特定の球面収差調整設定まで操作するか又は移動させるための結像位置にあるかによって決まる。
【0057】
本発明のさらに別の実施形態では、駆動機構コントローラ504bは、それぞれの対物レンズ501及び502の球面収差カラー501a及び502a(図5)を0.2mmの均等な球面調整設定又は位置まで同時に移動させるための信号をコンピュータ509から受信する。駆動機構コントローラ504bは、球面収差カラー501a及び502aを特定の球面収差調整設定まで移動させるための命令を、その駆動機構ドライバを通じて駆動機構504に送信する。駆動機構504が駆動機構コントローラ504bから信号を受信すると、次いで駆動機構504は、機械的連結部501b及び502bを利用して、球面収差カラー501a及び502aを、たとえば0.1mm〜0.2mmの特定の球面収差設定まで同時に操作するか又は移動させるように、それぞれの球面収差カラー501a及び502aと同時に係合又は接触するようになる。
【0058】
本発明の別の実施形態では、駆動機構コントローラ604bは、それぞれの対物レンズ601及び602の球面収差カラー601a及び602a(図6)を0.2mmの均等な球面調整設定又は位置まで同時に移動させるための信号をコンピュータ609から受信する。駆動機構コントローラ604bは、球面収差カラー601a及び602aを特定の球面収差調整設定まで移動させるための命令を、その駆動機構ドライバを通じて駆動機構604に送信する。駆動機構604が駆動機構コントローラ604bから信号を受信すると、次いで駆動機構コントローラ604bは、各SAカラー601a及びSAカラー602aを同じか又は異なる球面調整設定又は位置まで移動させる。駆動機構コントローラ604bは、球面収差カラー601aを特定の球面収差調整設定まで移動させるための命令を、その駆動機構ドライバを通じて駆動機構604に送信する。駆動機構604が駆動機構コントローラ604bから信号を受信すると、次いで駆動機構604は、機械的連結部601b及び601cを利用して、球面収差カラー601aを、たとえば0.1mm〜0.2mmの特定の球面収差設定まで操作するか又は移動させるように、それぞれの球面収差カラー601aと係合又は接触するようになる。次に、駆動機構コントローラ604bは、球面収差カラー602aを特定の球面収差調整設定まで移動させるための命令を、その駆動機構ドライバを通じて駆動機構604に送信することができる。駆動機構604は、駆動機構コントローラ604bから信号を受信すると、機械的連結部602b及び601cを利用して、球面収差カラー602aを、たとえば0.1mm〜0.2mmの特定の球面収差設定まで操作するか又は移動させるように、それぞれの球面収差カラー602aと係合又は接触するようになる。
【0059】
任意選択のブロック704において、球面収差調整システムは、制御システム309をそれぞれの任意選択の位置センサ301e及び302eと組み合わせて利用して、それぞれの対物レンズ301及び302の現在の球面収差調整設定を求める。本発明の一実施形態では、球面収差カラー301a及び302aのうちの任意の1つ又は2つが1mmのような特定の球面収差調整設定まで移動すると、次いで任意選択の位置センサ301e及び302eは、調整される球面収差調整設定の制御システム309に位置信号を送信する。制御システム309は、対物レンズ301及び302のうちの任意の1つ、2つ、3つ又は4つの1mmの新たな球面収差調整設定を表示する。たとえば対物レンズ301は2mmの球面収差調整設定を有する。別の例では、対物レンズ301及び302が2mmの球面収差調整設定を有する。
【0060】
本発明の別の実施形態では、球面収差カラー401a又は402aのいずれか1つが2mmのような特定の球面収差調整設定まで移動されると、次いで位置センサ404aは、この位置を調整される設定の制御システム409に送信する。制御システム409は、対物レンズ401又は403のいずれかの2mmの新たな球面収差調整設定を表示する。
【0061】
本発明のさらに別の実施形態では、球面収差カラー501a及び502aの双方が0.2mmのような特定の球面収差調整設定まで同時に移動されると、次いで位置センサ501c及び502cは、制御システム509に変化した位置を通知する。制御システム509は、球面収差GUIにおける新たな球面収差調整設定を表示する。たとえば対物レンズ501に対する球面収差調整設定は、制御システム509上で0.2mmであるように示される。
【0062】
任意選択のブロック705において、像品質検証が実施される。本発明の一実施形態では、ユーザが制御システム309、409、509及び609上の球面収差GUI上で試料被検査物115の表示画像を見るときにSAカラー位置301a、302a、401a、402a、501a、502a、601a及び602aの、それぞれの対物レンズ301、302、401、402、501、502、601及び602に対する有効性を確認するために、像品質検証が実施される。
【0063】
ブロック706において、ユーザは、選択される対物レンズに対するSA設定を変更することができる。この変更は、
反復SA調整手順が実施される場合のSA設定の最適化、
z−stack取得中の次の像に対するSA設定の調整、
のために必要とされ得る。
【0064】
ブロック706においては、ユーザは最終像を得ていない。プロセスは依然として、SAカラー301a、302a、401a、402a、501a、502a、601a及び602aの設定のそれぞれの対物レンズ301、302、401、402、501、502、601及び602に対する有効性を確認している段階にある。ユーザ又はアルゴリズムがSAカラー設定に満足すると、次いでブロック707において最終像のみを得ることができる。
【0065】
SAカラー設定が変更される場合、プロセスはブロック702に進む。SAカラー設定が変更されない場合、ブロック707においてプロセスは継続し、最終像が得られて記憶され、この像は生物学的実験の目的で使用されることになり、そこでプロセスは終了する。
【0066】
本発明は、対物レンズの球面収差補正を特定の結像条件に関して最適化するために、ユーザが、顕微鏡システムにおける対物レンズの球面収差補正設定を調整することを可能にする自動システム及び方法を提供する。ユーザは、顕微鏡システムにおける対物レンズのそれぞれに対する球面収差調整設定を求め、次いで対物レンズのそれぞれに対する球面収差補正を調整して球面収差を補正することが可能である。したがって、本発明は、対物レンズにおける球面収差を補正する手段をユーザに提供し、そのため、ユーザは、試料被検査物の鮮明な像を見ることが可能になる。
【0067】
本発明の上記の詳細な説明は限定ではなく例示とみなされることが意図されており、また、すべての均等物を含む以下の特許請求の範囲が本発明の範囲を画定するように意図されていることが理解されることが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結像系における球面収差を制御する装置であって、
複数の対物レンズであって、該複数の対物レンズのうちの少なくとも1つは球面収差カラーを有する、複数の対物レンズと、
なお、前記複数の対物レンズは対物レンズ保持器上に載置され、該対物レンズ保持器は前記複数の対物レンズのうちの前記少なくとも1つを結像位置に配置するように構成され、
複数の駆動機構であって、該複数の駆動機構のうちの少なくとも1つは機械的連結部によって前記複数の対物レンズのうちの前記少なくとも1つに結合され、前記機械的連結部は該複数の駆動機構のうちの少なくとも1つから前記複数の対物レンズのうちの前記少なくとも1つの前記球面収差カラーに動きを伝達するように構成される、複数の駆動機構と、
複数の駆動機構コントローラであって、該複数の駆動機構コントローラのうちの少なくとも1つは、前記複数の駆動機構のうちの少なくとも1つを、前記結像位置における前記複数の対物レンズのうちの前記少なくとも1つの前記球面収差カラーを特定の球面収差調整設定まで移動させるように操作するように構成される、複数の駆動機構コントローラと、
を備える、結像系における球面収差を制御する装置。
【請求項2】
前記複数の駆動機構コントローラは、前記複数の駆動機構のうちの前記少なくとも1つを操作する駆動機構ドライバを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記駆動機構は回転アクチュエータである、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記回転アクチュエータは、ステッパモータ、DCモータ及びサーボモータから成る群から選択される、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記駆動機構は線形アクチュエータである、請求項2に記載の装置。
【請求項6】
前記線形アクチュエータは圧電アクチュエータである、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記機械的連結部は、機械ギア、チェーンシステム、ベルト及び滑車又は摩擦式スピンドルから成る群から選択される、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記機械的連結部は、前記複数の対物レンズのうちの前記少なくとも1つの前記球面収差カラーを移動させるために、該球面収差カラーと係合されるように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記複数の駆動機構コントローラのうちの前記少なくとも1つは、前記複数の駆動機構のうちの前記少なくとも1つを、前記複数の対物レンズのうちの前記少なくとも1つの前記球面収差カラーを試料保持器の厚さに基づいて移動させるように操作するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記複数の駆動機構コントローラのうちの前記少なくとも1つは、前記複数の駆動機構のうちの前記少なくとも1つを、前記複数の対物レンズのうちの前記少なくとも1つの前記球面収差カラーを試料保持器の厚さ及び試料の媒体の深さから成る結果として求められる厚さに基づいて移動させるように操作するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
制御システムは、前記複数の駆動機構のうちの前記少なくとも1つを、前記複数の対物レンズのうちの前記少なくとも1つの前記球面収差カラーを移動させるように操作するために、前記複数の駆動機構コントローラのうちの前記少なくとも1つの駆動機構コントローラに接続される、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記対物レンズ切換装置上に配置される複数の位置センサをさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記複数の位置センサは、前記複数の対物レンズ上の前記少なくとも1つの球面収差カラーの現在位置に関する信号を前記制御システムに送信するように構成される、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
結像系における球面収差を制御する装置であって、
複数の対物レンズであって、該複数の対物レンズのうちの少なくとも1つは球面収差カラーを有する、複数の対物レンズと、
なお、前記複数の対物レンズは対物レンズ保持器上に載置され、該対物レンズ保持器は前記複数の対物レンズのうちの少なくとも1つを結像位置に配置するように構成され、
機械的連結部によって前記複数の対物レンズのうちの前記少なくとも1つに結合される駆動機構であって、前記機械的連結部は該駆動機構から前記複数の対物レンズのうちの前記少なくとも1つの前記球面収差カラーに動きを伝達するように構成される、駆動機構と、
前記駆動機構を、前記結像位置における前記複数の対物レンズのうちの前記少なくとも1つの前記球面収差カラーを特定の球面収差調整設定まで移動させるように操作するように構成される駆動機構コントローラと、
を備える、結像系における球面収差を制御する装置。
【請求項15】
結像系における球面収差を制御する装置であって、
複数の対物レンズであって、該複数の対物レンズのうちの少なくとも1つは球面収差カラーを有する、複数の対物レンズと、
なお、前記複数の対物レンズは対物レンズ保持器上に載置され、該対物レンズ保持器は前記複数の対物レンズのうちの少なくとも1つを結像位置に配置するように構成され、
複数の機械的連結部によって前記複数の対物レンズに結合される駆動機構であって、前記複数の機械的連結部のそれぞれは、該駆動機構から前記複数の対物レンズの各前記球面収差カラーに動きを伝達するように構成される角度伝達比を有する、駆動機構と、
前記駆動機構を、前記複数の対物レンズの各前記球面収差カラーを特定の球面収差調整設定まで同時に移動させるように操作するように構成される駆動機構コントローラであって、前記球面対物レンズのうちの少なくとも1つは前記結像位置にある、駆動機構コントローラと、
を備える、結像系における球面収差を制御する装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−518448(P2010−518448A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−549166(P2009−549166)
【出願日】平成20年1月28日(2008.1.28)
【国際出願番号】PCT/US2008/052158
【国際公開番号】WO2008/100695
【国際公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.イーサネット
2.フロッピー
【出願人】(598041463)ジーイー・ヘルスケア・バイオサイエンス・コーポレイション (43)
【住所又は居所原語表記】800 Centennial Avenue, P.O.Box 1327,Piscataway,New Jersey 08855−1327,United States of America
【Fターム(参考)】