説明

対物レンズアクチュエータ及びそれを備えた光ピックアップ

【課題】装置サイズを大型化することなく、不要共振を低減できる対物レンズアクチュエータを提供する。
【解決手段】対物レンズアクチュエータ30は、レンズホルダ32を挟むように存在する第1の側と第2の側との各々に3本ずつ配置されて一方の端部をレンズホルダ32に固定されるワイヤ37と、ベース31に対して不動であって切り欠き部を有するリジッドプリント基板35と、リジッドプリント基板31に固定されるフレキシブルプリント基板(FPC)36と、を備える。前記3本のワイヤ37のうち、2本がリジッドプリント基板35に、残り1本がFPC36に、他方の端部を固定される。前記2本のワイヤ37がリジッドプリント基板35に固定される部分には、FPC36が配置されず、FPC36の前記1本のワイヤ37が固定される部分は、前記切り欠き部上に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ピックアップに用いられる対物レンズアクチュエータに関し、特に、対物レンズを保持するレンズホルダを棒状弾性支持部材で支持し、レンズホルダと共に対物レンズを揺動する方式の対物レンズアクチュエータの構造に関する。また、本発明は、そのような対物レンズアクチュエータを備える光ピックアップに関する。
【背景技術】
【0002】
コンパクトディスク(以下、CDという。)やデジタル多用途ディスク(以下、DVDという。)といった光ディスクが普及している。更に、最近ではブルーレイディスク(以下、BDという。)やHD−DVDといった大容量の情報を記録できる光ディスクも実用化されている。このような光ディスクに記録される情報の読み取りや光ディスクへの情報の書き込みには光ピックアップが用いられる。
【0003】
光ピックアップにおいては、情報の読み取りや書き込み時に、光ディスクの面振れ等によらず光源から出射される光の焦点が常に光ディスクの記録面に合うように制御(フォーカシング制御)する必要がある。また、光源から出射されて光ディスクの記録面に形成される光スポットが、光ディスクに形成されるトラックに追従するように制御(トラッキング制御)する必要がある。
【0004】
従来、このようなフォーカシング制御やトラッキング制御を行えるように、光ピックアップには対物レンズアクチュエータが備えられる。従来提案される対物レンズアクチュエータには、対物レンズを保持するレンズホルダを棒状弾性支持部材で支持してレンズホルダと共に対物レンズを揺動可能な構成とし、フォーカシング制御やトラッキング制御を行うものがある(例えば、特許文献1や2を参照)。
【0005】
このタイプの対物レンズアクチュエータにおいては、比較的高い周波数帯域(例えば、1kHz〜5kHzの間)でピッチング共振やヨーイング共振といった共振が起こることが知られている。そして、このような共振は、対物レンズアクチュエータの伝達特性に悪影響を及ぼし、フォーカス制御やトラッキング制御といったサーボ制御を困難にすることがある。
【0006】
このため、従来、例えば特許文献1や2に示されるように、棒状弾性支持部材の一方の端部が固定されるリジッドプリント基板にスリット(切欠溝)を設けてピッチング共振やヨーイング共振といった不要共振を低減することが行われている。
【特許文献1】特開平4−319537号公報
【特許文献2】特開平5−266507号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、リジッドプリント基板にスリットを設けて不要共振を低減する構成には、次のような問題が発生する場合がある。図9は、リジッドプリント基板にスリットを設ける構成で発生する問題点を説明するための説明図で、図9(a)は、リジッドプリント基板にスリットを設けていない場合の図、図9(b)はリジッドプリント基板にスリットを設けた場合の図である。なお、図9のリジッドプリント基板101は、光ピックアップ全体を制御する制御部からの信号を受信できるように、フレキシブルプリント基板102によって制御部と電気的に接続されているために、図9ではフレキシブルプリント基板102も一緒に示している。
【0008】
図9に示すように、リジッドプリント基板101にスリット103を設ける構成の場合、スリット103を形成するためにリジッドプリント基板101に余分なスペースが必要となる。このため、上段の棒状弾性支持部材104aと下段の棒状弾性支持部材104aとの間隔が広がり、対物レンズアクチュエータの高さが高くなる(図9ではΔLだけ高くなった状態を示している)。対物レンズアクチュエータの小型化の要望を考慮するとこれは問題である。なお、スリットの幅を狭くして、小型化の要望を満たすことも考えられるが、この場合にはリジッドプリント基板101の製造が難しくなり、コストアップ等の問題が発生する。
【0009】
以上の点を鑑みて、本発明の目的は、装置サイズを大型化することなく、不要共振を低減できる対物レンズアクチュエータを提供することである。また、本発明の他の目的は、そのような対物レンズアクチュエータを備えることにより、情報の読み取りや書き込みを安定して行え、装置サイズを小型とできる光ピックアップを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明は、ベースと、対物レンズを保持するレンズホルダと、前記レンズホルダを挟むように存在する第1の側と第2の側との各々に複数且つ同数配置され、前記レンズホルダに一方の端部を固定されて前記レンズホルダを前記ベースに対して揺動可能に支持する棒状弾性支持部材と、を備える対物レンズアクチュエータにおいて、前記ベースに対して不動であって、切り欠き部を有するリジッドプリント基板と、前記リジッドプリント基板に固定されるフレキシブルプリント基板と、を更に備え、前記第1の側と前記第2の側との各々においては、複数の前記棒状弾性支持部材のうち、一部が前記リジッドプリント基板に他方の端部を固定され、前記一部を除く残りが前記フレキシブルプリント基板に他方の端部を固定され、前記棒状弾性支持部材の前記他方の端部が前記リジッドプリント基板に固定される部分には、前記フレキシブルプリント基板が配置されず、前記フレキシブルプリント基板の前記棒状弾性支持部材の前記他方の端部が固定される部分は、前記切り欠き部上に配置されることを特徴としている。
【0011】
この構成によれば、複数の棒状弾性支持部材について、一方の端部が固定される位置を、リジッドプリント基板とするものと、リジッドプリント基板に固定されるフレキシブルプリント基板とするものと、が混在する構成となっている。そして、リジッドプリント基板の棒状弾性支持部材が固定される部分には、フレキシブルプリント基板が配置されず、フレキシブルプリント基板の棒状弾性支持部材が固定される部分は、リジッドプリント基板の切り欠き部上に配置される構成となっている。このために、従来の構成であるリジッドプリント基板にスリットを設けた構成と同様に不要共振の低減を図れる。更に、スリットを設けた場合における装置の大型化の問題を解消できる。
【0012】
また、本発明は、上記構成の対物レンズアクチュエータにおいて、前記フレキシブルプリント基板には、その一部に補強板が取り付けられることとしても良い。この構成によれば、フレキシブルプリント基板の一部について強度を高められるために、半田付け作業がし易い。また、棒状弾性支持部材の固定を強固とすることも可能である。
【0013】
また、本発明は、上記構成の対物レンズアクチュエータにおいて、前記レンズホルダ側から見て、前記リジッドプリント基板の方が前記フレキシブルプリント基板よりも手前側に配置されるのが好ましい。リジッドプリント基板はフレキシブルプリント基板より厚みが厚い。このために、リジッドプリント基板をフレキシブルプリント基板よりも外面側(レンズホルダ側から見て奥側)に配置すると、半田付け等の作業が行い難くなる。この点、フレキシブルプリント基板をリジッドプリント基板より外面側とする構成では、フレキシブルプリント基板の方がリジッドプリント基板よりも厚みが薄いために半田付け等の作業が行い易い。
【0014】
また、本発明は、上記構成の対物レンズアクチュエータにおいて、前記第1の側と前記第2の側との各々においては、3本の前記棒状弾性支持部材が配置され、外側の2本の前記棒状弾性支持部材は前記リジッドプリント基板に前記他方の端部を固定され、真ん中の1本の前記棒状弾性支持部材は前記フレキシブルプリント基板に前記他方の端部を固定されることとしても良い。
【0015】
また、上記目的を達成するために本発明の光ピックアップは、上記構成の対物レンズアクチュエータを備えることを特徴としている。これによれば、対物レンズアクチュエータが、それ自身の装置サイズをほとんど大きくすることなく不要共振の低減を図れるので、情報の読み取りや書き込みを安定して行え、装置サイズを小型とできる光ピックアップを提供できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、装置サイズを大型化することなく不要共振を低減できる対物レンズアクチュエータを提供することができる。また、本発明によれば、そのような対物レンズアクチュエータを備えることにより、情報の読み取りや書き込みを安定して行え、装置サイズを小型とできる光ピックアップを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
(光ピックアップの概略構成)
まず、本実施形態の光ピックアップの概略構成について図1を参照しながら説明する。図1は、本実施形態の光ピックアップが備える光学系の構成を示す概略図である。本実施形態の光ピックアップ1は、BD、DVD、及びCDに対して情報の読み取りと情報の書き込みを可能に設けられている。
【0019】
図1に示すように、光ピックアップ1は2種類の光学系を備える。このうちの一方はBD用の光学系で、他方はDVD及びCD(DVD/CD)用の光学系である。この2種類の光学系は、光ピックアップ1によって情報の読み取りや書き込みが行われる光ディスク50の種類(ここでは、BD、DVD、及びCDのうちのいずれか)によって切り換えて使用される。以下、BD用の光学系、DVD/CD用の光学系について、別々に説明する。
【0020】
BD用の光学系は、第1レーザダイオード11と、回折素子12と、偏光ビームスプリッタ13と、第1コリメートレンズ14と、1/4波長板15と、第1立ち上げミラー16と、第1対物レンズ17と、第1シリンドリカルレンズ18と、第1フォトディテクタ19と、を備える。
【0021】
第1レーザダイオード11は、波長405nm帯のレーザ光を出射する光源である。第1レーザダイオード11から出射されたレーザ光は、回折素子12によって主ビームと2つの副ビームとに分けられる。回折素子12から出射したレーザ光は、偏光ビームスプリッタ13で反射され、第1コリメートレンズ14に送られる。
【0022】
第1コリメートレンズ14は、図示しない駆動手段によって光軸方向(図1に示す矢印の方向)に移動可能となっており、その位置によって、第1対物レンズ17に入射するレーザ光の収束発散状態を変化させる。このような構成とするのは、球面収差の補正を行えるようにするためである。
【0023】
第1コリメートレンズ14を出射したレーザ光は、偏光ビームスプリッタ13と協働して光アイソレータとして機能する1/4波長板15を通過し、第1立ち上げミラー16によって反射されて第1対物レンズ17に入射する。第1対物レンズ17は、入射したレーザ光を光ディスク50の記録面50aに集光する。
【0024】
光ディスク50で反射されたレーザ光は、第1対物レンズ17を透過後、第1立ち上げミラー16で反射され、1/4波長板15、第1コリメートレンズ14の順に透過後、更に偏光ビームスプリッタ13も透過する。偏光ビームスプリッタ13を透過したレーザ光は、非点収差を付与する機能を有する第1シリンドリカルレンズ18を透過して、第1フォトディテクタ19の受光面に集光する。第1フォトディテクタ19は、入射した光信号を電気信号に変換して出力する。ここで出力された電気信号は図示しない信号処理部で処理されて、再生信号や、フォーカスエラー信号や、トラッキングエラー信号等となる。
【0025】
次に、DVD/CD用の光学系について説明する。DVD/CD用の光学系は、第2レーザダイオード21と、ハーフミラー22と、第2コリメートレンズ23と、第2立ち上げミラー24と、第2対物レンズ25と、第2シリンドリカルレンズ26と、第2フォトディテクタ27と、を備える。
【0026】
第2レーザダイオード21は、波長650nm帯のレーザ光と、波長780nm帯のレーザ光と、を切り換えて出射できる2波長レーザである。第2レーザダイオード21から出射されたレーザ光は、ハーフミラー22で反射されて第2コリメートレンズ23に送られ、平行光に変換される。
【0027】
第2コリメートレンズ23から出射されたレーザ光(平行光)は、第2立ち上げミラー24で反射され、第2対物レンズ25に入射し、光ディスク50の記録面50aに集光する。
【0028】
光ディスク50で反射されたレーザ光は、第2対物レンズ25を透過後、第2立ち上げミラー24で反射され、第2コリメートレンズ23、ハーフミラー22の順に透過し、非点収差を付与する機能を有する第2シリンドリカルレンズ26を透過して、第2フォトディテクタ27の受光面に集光する。第2フォトディテクタ27は、入射した光信号を電気信号に変換して出力する。ここで出力された電気信号は図示しない信号処理部によって処理されて、再生信号や、フォーカスエラー信号や、トラッキングエラー信号等となる。
【0029】
なお、ここで示した光ピックアップ1の光学系の構成は、一例であって本発明の目的を逸脱しない範囲で、当然、種々の変更が可能である。本実施形態の光ピックアップ1においては、BD用の光学系とDVD/CD用の光学系とを完全に独立した構成としている。しかし、これとは異なり、例えば、一部の光学部材を、BD、DVD、およびCDの情報の再生等を行う場合に共通して使用するような構成等としても構わない。また、波面収差を補正する収差補正素子等、必要に応じて各種光学部材を追加しても勿論構わない。
【0030】
第1対物レンズ17と第2対物レンズ25とは、その詳細は後述する対物レンズアクチュエータ30によって、フォーカス方向とトラッキング方向とに移動可能となっている。これにより、光ピックアップ1におけるフォーカシング制御やトラッキング制御が可能となっている。
【0031】
なお、フォーカス方向とは、対物レンズ17、25が光ディスク50に対して接離する方向(図1では上下方向)であり、トラッキング方向とは、光ディスク50の半径方向(ラジアル方向)と平行な方向(図1では紙面と垂直な方向)である。
【0032】
(対物レンズアクチュエータの構成)
次に、本実施形態の光ピックアップ1に備えられる対物レンズアクチュエータ30の構成の詳細について、図2、図3及び図4を参照しながら説明する。ここで、図2は、本実施形態の対物レンズアクチュエータの構成を示す概略斜視図である。図3は、本実施形態の対物レンズアクチュエータが備えるリジッドプリント基板とフレキシブルプリント基板とから成る部分の構成を示す概略平面図である。図4は、図3に示す構成を分解して各部について示した概略平面図で、図4(a)はリジッドプリント基板の概略平面図、図4(b)はフレキシブルプリント基板の概略平面図である。
【0033】
図2を参照して、本実施形態の対物レンズアクチュエータ30は、ベース31と、レンズホルダ32と、一対の永久磁石33と、ゲルホルダ34と、リジッドプリント基板35と、フレキシブルプリント基板36と、6本のワイヤ(棒状弾性支持部材)37と、を備える。
【0034】
ベース31は強磁性を有する金属からなる。ベース31には、そのほぼ中央にレーザ光を通過させる貫通孔(図示せず)が形成されている。そして、この貫通孔の上にレンズホルダ32が配置される構成となっている。また、ベース31上には、一対の永久磁石33と、ゲルホルダ34と、が固定配置される。
【0035】
レンズホルダ32は、液晶ポリマ(LCP)等によって形成され、対物レンズ17、25を保持する。本実施形態においては、光ピックアップ1が2つの対物レンズ17、25を有する構成となっているために、レンズホルダ32には2つの対物レンズ17、25を保持できるように2つの保持部(図示せず)が設けられる。2つの保持部はそれぞれレーザ光を通過させる光路孔(図示せず)と繋がっており、これにより第1レーザダイオード11からのレーザ光が第1対物レンズ17を、第2レーザダイオード21からのレーザ光が第2対物レンズ25を通過するようになっている。
【0036】
レンズホルダ32の内側には、その内壁に沿って、略矩形状に巻回されたフォーカスコイル(図示せず)が接着剤等で貼り付けられている。また、レンズホルダ32の側壁のうち、永久磁石33と対向する2つの側壁のそれぞれにおいては、トラッキングコイル38が、それぞれ左右に一対ずつ並ぶように、接着剤等で貼り付けられている。対向する2つの側壁に各々形成されるトラッキングコイル38同士は、対称配置されている。なお、4つのトラッキングコイル38は全体として1本の線で繋がっている。
【0037】
ベース31上に立設される一対の永久磁石33は例えば希土類磁石から成り、レンズホルダ32を挟むように所定間隔をあけて対向配置される。一対の永久磁石33は、同一の極(N極又はS極)が向かい合うように配置される。また、一対の永久磁石33のそれぞれは、外面がベース31から折曲形成されたヨーク31aに磁着された状態とされる。
【0038】
ポリカーボネート等の樹脂成型品から成るゲルホルダ34は、一対の永久磁石33のうちの一方に磁着されるヨーク31aの外面側(永久磁石33がある側の反対側)に配置される。ゲルホルダ34には、一対の挿通孔34aが左右対称に形成される。一対の挿通孔34aのそれぞれには、シリコンを主成分とするゲル材が充填される。ゲル材は、低粘度のゲル材(ゾル)がゲルホルダ34の各挿通孔34aに注入された後、所定時間の紫外線照射によってゲル状に硬化したものである。
【0039】
リジッドプリント基板35とフレキシブルプリント基板36は、光ピックアップ1全体を制御する制御部からの信号を受信して、対物レンズアクチュエータ30に伝達するための回路基板である。リジッドプリント基板35は、ゲルホルダ34の外面側に固定配置される。また、フレキシブルプリント基板36は、リジッドプリント基板35の外面側には固定配置される。
【0040】
なお、ゲルホルダ34に対するリジッドプリント基板35の固定や、リジッドプリント基板36に対するフレキシブルプリント基板36の固定は、例えば熱硬化性の接着剤等を用いて行われる。ただし、接着剤の代わりにビス止め等を用いても構わない。また、リジッドプリント基板35とフレキシブルプリント基板36とは、後述のように、それぞれに形成される端子部(ランド)間を半田付けするために、半田による固定だけとしても構わない。
【0041】
図4(a)を参照して、リジッドプリント基板35は、略矩形状に形成され、左右の端部側のそれぞれにおいて、中央部に略矩形状の切り欠き部351が形成されている。また、左右の端部側の上部側及び下部側のそれぞれにおいては、貫通孔352と第1のランド353とが形成されている。各第1のランド353からは配線354が延出し、第2のランド355と接続されている。
【0042】
図4(b)を参照して、フレキシブルプリント基板36は、略矩形状の第1の部分361と、第1の部分361の中央部近傍から左右に腕状に延び出す第2の部分362と、第1の部分361から下部側に延び出し、最終的に光ピックアップ1全体を制御する制御部へと繋がる第3の部分363と、から成る。第2の部分362の端部側には、それぞれ、貫通孔364と第3のランド365とが形成されている。また、第1の部分361の四隅には、それぞれ、第4のランド366が形成されている。なお、図4(b)においては、フレキシブルプリント基板36に形成される配線は省略している(他の図でも同様)。
【0043】
図3を参照して、リジッドプリント基板35に固定されるフレキシブルプリント基板36は、第2の部分362の一部(貫通孔364が設けられる部分を含む部分)がリジッドプリント基板35の切り欠き部351上に配置される。切り欠き部351の幅(図3の上下方向の長さ)は、第2の部分362の幅(図3の上下方向の長さ)より僅かに大きく形成されている。これより、フレキシブルプリント基板36の第2の部分362の一部は、リジッドプリント基板35と接触することなく図3の紙面方向に撓むことが可能である。
【0044】
また、フレキシブルプリント基板36は、第4のランド366がリジッドプリント基板35に形成される第2のランド355と隣り合うように配置される。そして、第2のランド355と第4のランド366とが半田付けされて、リジッドプリント基板35とフレキシブルプリント基板36が電気的に接続される。なお、フレキブルプリント基板36は、リジッドプリント基板35の貫通孔352が設けられる近傍においては、リジッドプリント基板35上に配置されない。
【0045】
図2に戻って、ワイヤ37は導電性を有する部材からなる。ワイヤ37は、レンズホルダ32を挟むように存在する第1の側(レンズホルダ32の側面32aがある側)と第2の側(レンズホルダ32の側面32bがある側)とに、各3本ずつ、計6本設けられる。各ワイヤ37の一方の端部はレンズホルダ32に設けられる中継基板39(図2では1つのみ示しているが、レンズホルダ32の対向する位置に、もう1つ設けられる)に半田付けにて固定される。
【0046】
なお、中継基板39には、配線パターンが形成されており、上段の2本のワイヤ37は、中継基板39を介してフォーカスコイル(図示せず)と電気的に接続された状態となっている。また、下段の2本のワイヤ37は、中継基板39を介してトラッキングコイル38と電気的に接続された状態となっている。
【0047】
ワイヤ37うち、上段及び下段の計4本のワイヤ37は、その他方の端部がリジッドプリント基板35に形成される貫通孔352を挿通するように設けられ、半田付けにて固定される。一方、中段の2本のワイヤ37は、その他方の端部がフレキシブルプリント基板36に形成される貫通孔364を挿通するように設けられ、半田付けにて固定される。
【0048】
なお、本実施形態においては、リジッドプリント基板35に形成される貫通孔352に比べ、フレキシブルプリント基板36に形成される貫通孔364の大きさを大きくしている。これは、ワイヤ37をリジッドプリント基板35とフレキシブルプリント基板36との2つの部品に分けて取り付ける構成としたために、両部品の間で組み立て時に位置ずれが発生し、組み立てが困難となる場合があることを考慮したものである。すなわち、本実施形態の構成によって、前述の位置ずれが発生しても組み立てが困難となる可能性を低減できる。
【0049】
ワイヤ37を以上のように構成することにより、レンズホルダ32はワイヤ37によってベース31に対して揺動可能に支持されることになる。なお、各ワイヤ37は、ゲルホルダ34に形成される挿通孔34aを挿通した状態となっている。そして、これにより、レンズホルダ32の駆動に応じて各ワイヤ37に生じた振動(主に低次の共振)を減衰することが可能となる。
【0050】
(対物レンズアクチュエータの作用)
次に、以上のように構成される対物レンズアクチュエータ30の作用について説明する。
【0051】
フレキシブルプリント基板36、リジッドプリント基板35、及び上段のワイヤ37を経由して、制御部からの信号に従った電流がフォーカスコイルに供給される。この場合、フォーカスコイルを流れる電流と、一対の永久磁石33によって形成される磁界と、の電磁気的な作用により、レンズホルダ32はフォーカス方向に変位する。このため、フォーカスコイルに供給する電流の大きさ及び向きを調整することでフォーカシング制御が可能となる。
【0052】
フレキシブルプリント基板36、リジッドプリント基板35、及び下段のワイヤ37を経由して、制御部からの信号に従った電流がトラッキングコイル38に供給される。この場合、トラッキングコイル38を流れる電流と、一対の永久磁石33によって形成される磁界と、の電磁気的な作用により、レンズホルダ32はトラッキング方向に変位する。このため、トラッキングコイル38に供給する電流の大きさ及び向きを調整することでトラキング制御が可能となる。
【0053】
本実施形態の対物レンズアクチュエータ30は、ワイヤ37によってレンズホルダ32が揺動可能に支持される構成となっている。このような構成の場合、高周波数帯域(例えば、1kHz〜5kHz等)での使用によってピッチング共振やヨーイング共振といった不要共振を発生する場合がある。そして、このような不要共振は、ゲルホルダ34のゲル材では充分に抑制できない。
【0054】
なお、ピッチング共振とは、トラッキング方向と平行な軸周り方向に発生する共振モードである。また、ヨーイング共振とは、フォーカス方向と平行な軸周り方向に発生する共振モードである。
【0055】
このため、本実施形態の対物レンズアクチュエータ30においては、上述のように、上段及び下段のワイヤ37を、左右の端部側の中央部に切り欠き部351を有するリジッドプリント基板35に固定している。そして、中段のワイヤ37を、その一部が切り欠き部351上に重なるように配置されるフレキシブルプリント基板36の第2の部分362に固定する構成としている。
【0056】
この場合、スリットを設けた場合(従来例の図9(b)を参照)と同様に、ワイヤ37が固定される部分において、リジッドプリント基板35及びフレキシブルプリント基板36は微小振動できる。このために、図5に示すように不要共振の低減を図れる。図5は、本実施形態の対物レンズアクチュエータ30によって不要共振の低減が図れることを示すグラフである。2つの対物レンズアクチュエータを準備して、その効果を確かめたために、図5(a)と図5(b)の2つの結果を示している。
【0057】
効果の確認は、それぞれの対物レンズアクチュエータにおいて、リジッドプリント基板とフレキシブルプリント基板との構成についてのみ変更することによって確認した。図5において本実施形態として示す結果は、リジッドプリント基板とフレキシブルプリント基板との構成が図3の場合である。一方、図5において比較例として示す結果は、リジッドプリント基板とフレキシブルプリント基板との構成が図9(a)の構成の場合である。
【0058】
図5において、横軸は対物レンズアクチュエータを駆動する際に使用される交流の周波数である。また、縦軸は、対物レンズアクチュエータにおける入力(駆動の入力)に対する反応の遅れを表す指標で、位相である。図5は、周波数を変化させた時の位相の変化を測定したものである。不要共振が発生すると、周波数変化に対する位相の変化にも乱れが発生する。このために、この位相乱れ量を見積もることで、不要共振の低減が図れたか否かを評価できる。そして、図5の結果を見ると、本実施形態の構成の場合には、比較例の場合に比べて明確に不要共振が低減できていることがわかる。
【0059】
そして、本実施形態の場合には、図9(b)に示したようなスリット103を設けるためのスペースが要らない。したがって、本実施形態の対物レンズアクチュエータ30によれば、装置サイズを大型化することなく不要共振を低減できる。そして、この対物レンズアクチュエータ30を備える光ピックアップは、情報の読み取りや書き込みを安定して行え、装置サイズを小型とできる。
【0060】
(その他)
本発明は、以上に示した実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0061】
例えば、本実施形態においては、フレキシブルプリント基板36をリジッドプリント基板35に直接固定する構成としている。しかし、この場合には、リジッドプリント基板35の第2のランド355とフレキシブルプリント基板36の第4のランド366との半田付け作業が行い難い等の問題がある。このために、フレキブルプリント基板36の強度を増す目的で、図6に示すようにフレキシブルプリント基板36に対して補強板(例えば、ガラエポ系の材質から成る)40を貼り付ける構成としても構わない。なお、図6は、フレキシブルプリント基板36を図2のリジッドプリント基板35側から見た場合の概略平面図である。
【0062】
図6(a)は、フレキシブルプリント基板36の第1の部分361と第2の部分362(いずれも図4(b)参照)の全体に補強板40を設けた構成を示す。図6(b)は、図6(a)の構成に対して、フレキシブルプリント基板36の第4のランド366が設けられる部分近傍には、補強板40を設けないようにした構成を示す。図6(c)は、フレキシブルプリント基板36の第2の部分362間を繋ぐように補強板40を設けた構成を示す。図6(d)は、フレキシブルプリント基板36の第2の部分362にのみ補強板40を設けた構成である。
【0063】
補強板40の形状は、図6(a)〜(d)のいずれでも、更には他の形状でも構わない。状況によって、その形状を適宜決定すればよい。例えば、図6(a)の構成の場合、補強の効果は大きいが、補強板40の厚みのために半田付けが行い難くなる。このために、図6(b)のように半田付けを行う部分について補強板40を設けない構成とすることも可能である。ただし、図6(b)の構成の場合、その構造が複雑となるために、図6(c)や図6(d)に示すような構成とすることも可能である。ただし、これらの構成では、補強の効果が十分に得られない場合がある。
【0064】
また、例えばリジッドプリント基板35とフレキシブルプリント基板36の構成も本実施形態の構成に限らず種々の変更が可能である。すなわち、例えば図7に示すように、リジッドプリント基板35の四隅を切り欠き(切り欠き部351が形成されている)、中段のワイヤ37のみをリジッドプリント基板35に固定し、上段と下段のワイヤ37をフレキシブルプリント基板36に固定する構成等としても構わない。なお、図7は、リジッドプリント基板とフレキシブルプリント基板とから成る部分の変形例である。
【0065】
また、本実施形態では、レンズホルダ32を、第1の側に3本、第2の側に3本、の計計6本のワイヤ37で支持する構成の場合について示したが、ワイヤの数は本実施形態の数に限定される趣旨ではない。すなわち、片側2本ずつの計4本のワイヤでレンズホルダを支持する構成や、片側4本以上のワイヤでレンズホルダを支持する構成に対しても本発明は適用可能である。
【0066】
図8は、本発明が適用できる他の構成を説明するための図で、図8(a)はワイヤの数が片側2本ずつの計4本のワイヤでレンズホルダを支持する場合の構成例を示す図で、図8(b)はワイヤの数が片側5本ずつの計10本でレンズホルダを支持する場合の構成例を示す図である。いずれの構成においても、リジッドプリント基板35に切り欠き部351を設け、フレキシブルプリント基板36のワイヤ37の端部と固定される部分が、切り欠き部351上に配置されるように形成している。このように構成することで、対物レンズアクチュエータの装置サイズを大きくすることなく、不要共振を低減できる。
【0067】
また、本実施形態においては、リジッドプリント基板35の外面側にフレキシブルプリント基板36が配置される構成とした。しかし、これに限定される趣旨ではない。すなわち、フレキシブルプリント基板36をゲルホルダ34と貼り付け、フレキシブルプリント基板36の外面側にリジッドプリント基板35を配置する構成としても構わない。ただし、この構成の場合、リジッドプリント基板35の厚みのために半田付け作業が行い難くなるために、本実施形態の構成が好ましい。
【0068】
また、本実施形態では、対物レンズアクチュエータ30に2つの対物レンズ17、25が搭載される構成としたが、これに限らず、対物レンズの数が1つ、或いは3つ以上の場合にも当然本発明は適用できる。また、本実施形態の対物レンズアクチュエータ30においては、上段及び下段のワイヤ37のみをレンズホルダ32に設けられるコイル(フォーカスコイル、トラッキングコイル)と電気的に接続する構成としたが、中段のワイヤ37もレンズホルダ32に設けられるコイルと電気的に接続する構成としても構わない。このような場合として、例えば、レンズホルダ32にチルトコイルが設けられる場合が挙げられる。なお、ここでいうチルトコイルは、レンズホルダ32をフォーカス方向とトラッキング方向との両方に直交する軸の軸周り方向に回転する作用を発生するためのコイルである。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の対物レンズアクチュエータは、装置サイズを大型化することなく、ピッチング共振やヨーイング共振といった不要共振を低減できる。このために、本発明の対物レンズアクチュエータは光ピックアップに好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】は、本実施形態の光ピックアップが備える光学系の構成を示す概略図である。
【図2】は、本実施形態の対物レンズアクチュエータの構成を示す概略斜視図である。
【図3】は、本実施形態の対物レンズアクチュエータが備えるリジッドプリント基板とフレキシブルプリント基板とから成る部分の構成を示す概略平面図である。
【図4】は、図3に示す構成を分解して各部について示した概略平面図である。
【図5】は、本実施形態の対物レンズアクチュエータによって不要共振の低減が図れることを示すグラフである。
【図6】は、本実施形態の対物レンズアクチュエータの変形例を説明するための図である。
【図7】は、本実施形態の対物レンズアクチュエータの変形例で、具体的にはリジッドプリント基板とフレキシブルプリント基板とから成る部分の変形例である。
【図8】は、本発明が適用できる他の構成を説明するための図である。
【図9】は、リジッドプリント基板にスリットを設ける構成で発生する問題点を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0071】
1 光ピックアップ
17 第1対物レンズ
25 第2対物レンズ
30 対物レンズアクチュエータ
31 ベース
32 レンズホルダ
35 リジッドプリント基板
36 フレキシブルプリント基板
37 ワイヤ(棒状弾性支持部材)
40 補強板
351 切り欠き部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと、
対物レンズを保持するレンズホルダと、
前記レンズホルダを挟むように存在する第1の側と第2の側との各々に複数且つ同数配置され、前記レンズホルダに一方の端部を固定されて前記レンズホルダを前記ベースに対して揺動可能に支持する棒状弾性支持部材と、
を備える対物レンズアクチュエータにおいて、
前記ベースに対して不動であって、切り欠き部を有するリジッドプリント基板と、
前記リジッドプリント基板に固定されるフレキシブルプリント基板と、を更に備え、
前記第1の側と前記第2の側との各々においては、複数の前記棒状弾性支持部材のうち、一部が前記リジッドプリント基板に他方の端部を固定され、前記一部を除く残りが前記フレキシブルプリント基板に他方の端部を固定され、
前記棒状弾性支持部材の前記他方の端部が前記リジッドプリント基板に固定される部分には、前記フレキシブルプリント基板が配置されず、
前記フレキシブルプリント基板の前記棒状弾性支持部材の前記他方の端部が固定される部分は、前記切り欠き部上に配置されることを特徴とする対物レンズアクチュエータ。
【請求項2】
前記フレキシブルプリント基板には、その一部に補強板が取り付けられることを特徴とする請求項1に記載の対物レンズアクチュエータ。
【請求項3】
前記レンズホルダ側から見て、前記リジッドプリント基板の方が前記フレキシブルプリント基板よりも手前側に配置されること特徴とする請求項1又は2に記載の対物レンズアクチュエータ。
【請求項4】
前記第1の側と前記第2の側との各々においては、3本の前記棒状弾性支持部材が配置され、外側の2本の前記棒状弾性支持部材は前記リジッドプリント基板に前記他方の端部を固定され、真ん中の1本の前記棒状弾性支持部材は前記フレキシブルプリント基板に前記他方の端部を固定されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の対物レンズアクチュエータ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の対物レンズアクチュエータを備えることを特徴とする光ピックアップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−211771(P2009−211771A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−54398(P2008−54398)
【出願日】平成20年3月5日(2008.3.5)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】