説明

対象物を選別するための結合方法および装置

本発明は、所望の対象物および非所望の対象物を有するサンプルを供給すること、サンプルホルダーの表面を抗体でコーティングすること、溶出したサンプルを該サンプルホルダー上に配置すること、前記所望の対象物中の抗原を該サンプルホルダー表面上の抗体に結合させて、対象物を所望の対象物と非所望の対象物に選別すること、該所望の対象物を分離すること、および該所望の対象物についてPCRに基づくSTR分析を行うことを含む、対象物を選別する方法および装置に関する。ある実施形態では、ホログラフィック光トラッピングを用いて所望の対象物が選別される。別の実施形態では、所望の対象物は精子であり、抗体はヒト精子特異的抗体であり、PCRは単一細胞PCRに基づくSTR分析である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2007年9月11日に出願した米国仮出願第60/960,004号、および2007年9月13日に出願した第60/960,059号の優先権を主張するものである。両仮出願の内容全体を参照により本明細書に援用する。
【0002】
本発明は、DNA分析において対象物を選別するための方法および装置に関する。より詳細には、本発明は、抗体またはその他の精子を認識する生体分子を用いた結合法における精子の選別、およびその装置に関する。ある実施形態では、法医学的DNA分析において性的暴行事件の犯人/加害者を同定するため、または医学的診断におけるその他の応用のために、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法、または、ある場合には単一細胞PCR法が対象物の選別後に行われる。
【背景技術】
【0003】
従来の法医学的DNA分析においては、検体は一般に、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による照会DNAの増幅を必要とするショートタンデムリピート(STR)分析に一般的に基づいているヒト同定システムを用いて、現代の法執行において申し立てられた犯罪容疑者と照合される。PCRは、微量のDNA断片を有意義な方法で分析できる量まで複製/増幅することができる、強力な手段である。この技術は、DNA配列決定、DNAフィンガープリンティングなどに適応され、サンプル中の特異的なDNA断片を検出することができる。
【0004】
したがって、法医学的DNA分析は、ヒトゲノム中のSTRマーカーの高性能な識別能および迅速な分析速度により達成され、現在、法医学的DNA分析において最も一般的に選択される方法となった。
【0005】
STR分析は一般的に用いられているが、この分析には幾つかの欠陥がある。このうち最も重要なものは、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)に基づくSTR分析をされる前のDNAサンプルの汚染、および所与のサンプルについてSTR分析全体を行うのに要する時間に起因する。
【0006】
例えば、STRについて分析される、性的暴行の証拠物由来のDNAは、加害者の精子由来であることが理想的である。しかし、精子サンプルには一般に、(1)膣の内側の上皮細胞が混入しており、しばしば(2)口(頬細胞)由来の上皮細胞、ならびに(3)皮膚由来の細胞、および尿サンプル中の細胞が混入している。性的暴行犯行現場のサンプルにおいては、赤血球、好中球、泡沫細胞(特徴のない上皮細胞)なども見られることが予想される。
【0007】
したがって、PCRを行う前に混入細胞のいずれかまたは全てから精子細胞を分離できれば、より良くより正確なSTR分析を実現することができることは明らかである。
【0008】
一般的に使用される分別抽出(differential extraction)のような法では、法医学のサンプルにおける雄性(加害者)精子および雌性(被害者)上皮細胞のDNAを完全に分離することはできない。例えば、還元剤を含まない溶液を用いた最初の溶解により、上皮細胞(性的暴行における法医学的サンプル中でも最も一般的な混入物)が溶解され、DNA画分を効果的に分離するために精子細胞がそのままに残される。しかしながら、分別溶解(differential lysis)により精子細胞の溶解が不完全となり、不必要なDNAが照会DNA(精子単独から由来)と共に増幅される。これにより、分析が困難であり、特定の個人を同定することができない、混合されたSTRプロファイルが作成される。STR分析におけるこのような問題は、STR分析に基づくヒトの同定の50%が失敗する原因となる。
【0009】
加えて、法医学的事件を解決する上での別の制限は、分析用細胞の入手可能性が限られていることに起因している。これは、標準的なPCRに基づいて事件を解決するためには、証拠サンプルの存在が限られていること、一般に時間の経過とともにDNAおよび細胞サンプルが分解すること、および/または性的暴行犯罪のサンプル中に精子細胞がほとんど無いことによる可能性がある。
【0010】
したがって、上記の問題を阻止または軽減し得る方法が望まれる。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、DNA分析において、抗体またはその他の精子を認識する生体分子を用いた結合法を用いた対象物を選別するための方法および装置に関し、具体的には、非精子混入物からの精子の分離に関する。
【0012】
ある実施形態では、精子を認識する抗体を基材表面にコーティングして、その他の混入物から精子を選別および分離する。一般に、単独モードまたはホログラフィック光トラッピングと組み合わせて作動して精子を混入細胞から分離することができる方法では、例えばヒト精子上の表面抗原を選択的に認識する抗体がコーティングされた基材が使用される。
【0013】
あるいは、抗体の別の選択は、雄性決定精子に通常存在するH−Y抗原を標的とするものであってもよい。
【0014】
別の実施形態では、基材上の抗体は、精子特異的な表面抗原を標的とするモノクローナル抗体を順に認識する抗免疫グロブリン抗体であってもよい。これは、最初に法医学的サンプル中の精子を認識し結合する精子特異的抗体を使用し、続いて抗体により標識された精子を抗免疫グロブリンにより認識させて捕獲することを含む。
【0015】
その他の混入細胞を含む法医学的サンプル中に精子がほとんど無い場合には、複数の精子特異的抗体をタンデムに使用して、下流の分析のために精子を選択および選別することもできる。
【0016】
標準的な生体結合化学反応を、ガラスまたはプラスチックなどのその他の材料であってもよい基材上に抗体を付着させるために利用可能である。本発明はまた、平らな基材(単一ウェルフォーマットまたは複数のウェルフォーマット)、または例えばエッペンドルフチューブの表面などの曲面など、さまざまな形状の基材上でも利用できる。基材上への抗体の結合は、一般的な共有結合または非共有結合の利用により、あるいは吸着により行うことができる。
【0017】
また、一種の抗体/複数種の抗体で基材をコーティングする代わりに、この技術を、ビーズを使用した精子の選別に拡張することも考えられ、例えばシリカビーズ、ポリスチレンビーズ、または磁性ビーズなどの、抗体でコーティングされたビーズを利用して精子を認識および結合することができる。
【0018】
精子抗原を標的とするために利用される抗体は、精子表面のエピトープを認識する完全長ペプチドまたは切断型ペプチド、あるいは短いペプチドであってもよい。精子の結合を利用するが抗体に基づく精子の認識は関与しない別の実施形態では、精子表面受容体の結合パートナーを使用して、混合細胞のサンプルから精子が捕獲される。
【0019】
本発明は、性的暴行に関連する法医学的サンプルの約40%に起こると示唆されている(Korf BR, “Current Protocols in Human Genetics”, Wiley: New York 1999を参照)、精子細胞画分における雌性DNAの共増幅という長年の問題を解決するであろう。最近の報告は、全ての性的暴行事件の25%のみしか加害者が同定されていないことを示唆している。これは、このようなサンプルにおけるDNAの共増幅の問題により、ほとんどのSTRに基づくヒトの同定が曖昧になることによる。
【0020】
サンプル中に精子がほとんど無く、主要な細胞型が膣由来の上皮細胞である補助的な実施形態では、抗体アプローチを(単独で、またはホログラフィック光トラッピング(HOT)と共に)使用して、上皮細胞特異的抗体をコーティングした基材へ上皮細胞を接着させることにより、最初に上皮細胞を精子から分離することができる。このような状況では、精子は上清中に残ることとなり、細胞溶解および抽出のいずれにも直接使用することができる。もしさらなる純度が必要であれば、抗体アプローチと並行してHOTを使用することによりこれらを分離することができる。このアプローチには、様々な上皮細胞特異的マーカー、特にヒト膣由来のものを使用することができる。膣細胞を含む様々な細胞型を標的にする/同定するために常に発見され続ける新しく新規なマーカーを使用することができる。この実施形態では、抗体を組み合わせて使用して、上皮細胞を精子から分離することもできる。同様に、一般的なリガンド受容体結合を用いた、抗体を含まない結合アプローチもまた使用することができる。
【0021】
本発明は、混入細胞からの精子の分離の改善によって、分析される法医学的サンプルの純度を改善し、下流のPCRに基づくSTRの読み出しの効率を向上させるであろう。加えて、提案する方法は、現在の方法論では不可能である自動化に適している。
【0022】
したがって、本発明は、所望の対象物および非所望の対象物を有するサンプルを供給すること;サンプルホルダーの表面を抗体でコーティングすること;サンプルを溶出し、溶出したサンプルを該サンプルホルダー上に配置すること;前記所望の対象物中の抗原を該サンプルホルダー表面の抗体に結合させて、対象物を所望の対象物と非所望の対象物とに選別すること;前記所望の対象物を分離すること;前記非所望の対象物を除去すること;および、所望の対象物についてPCRに基づくSTR分析を行うこと、を含む対象物の選別方法および装置に関する。ある実施形態では、ホログラフィック光トラッピングが用いて、所望の対象物が非所望の対象物から選別される。ある実施形態では、前記所望の対象物は精子であり、前記抗体はヒト精子特異的抗体である。別の実施形態では、前記STRの読み出しには、単一細胞PCRに基づく増幅が用いられる。別の実施形態では、前記結合は、直接的な結合、または一次抗体を単独使用するのではなく二次抗体を使用するような間接的な結合である。別の実施形態では、リガンドを用いて、対象物に特異的な高分子(例えば、細胞表面受容体)が結合される。
【0023】
このように、以下の本発明の詳細な説明がより理解され、当該技術分野への本貢献がより評価され得るように、本発明のいくつかの特徴の概要を概説してきた。当然の事ながら、以下に記載され、添付の請求項の主題を形成するような本発明の特徴が、他にも存在する。
【0024】
この点において、本発明の少なくとも1の実施形態の詳細を説明するにあたって、本発明の適用においては、以下の記載で説明され、または図面で説明される、構成の詳細および構成要素の配置に制限されるものではないことが理解されよう。本発明の方法および装置は、その他の実施形態であってもよく、様々な方法で実施し、実行することができる。また、本明細書で用いられる用語および専門用語、ならびに以下の要約は、記述を目的とするものであり、限定するものとみなされるべきではないことを理解されたい。
【0025】
そのようなものとして、当業者は本開示が基づく概念が、本発明の異なる目的を実行するための、他の構造、方法およびシステムを設計するための基礎として容易に利用され得ることを理解するであろう。したがって、本発明の方法および装置の趣旨ならびに範囲から逸脱しない限り、本請求項がこのような均等の構造を含むものとみなされることが重要である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明のある実施形態による、対象物を選別する方法におけるステップのフローチャートである。
【図2】図1の対象物を選別する装置および方法を示す図である。
【図3A】本発明の別の実施形態による、対象物を選別する装置および方法を示す図である。
【図3B】本発明の別の実施形態による、対象物を選別する装置および方法を示す図である。
【図4】本発明の別の実施形態における、ホログラフィック光トラッピングを用いた、対象物を選別する方法および装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、結合法、および/またはホログラフィック光トラッピング(HOT)を用いた、DNA分析において対象物を選別する方法および装置に関する。
【0028】
抗体法
ある実施形態では、抗体をコーティングした基材を用いて、精子細胞などの対象物が選別される。一般に、本実施形態では、単独モードまたはホログラフィック光トラッピング(HOT)と組み合わせて作動して、精子を混入細胞から分離することができ、ヒト精子上の表面抗原を選択的に認識する抗体がコーティングされた基材が使用される。
【0029】
あるいは、抗体の別の選択は、雄性決定精子に通常存在するH−Y抗原を標的とするものであってもよい。
【0030】
具体的には、本発明のある実施形態によれば、抗体による方法ならびに装置を用いる図1および図2に示すような以下のステップにより、精子を混入物から選別し、法医学事件における人物のDNAを決定することができる。
【0031】
ステップ100では、例えば、性的暴行の被害者からの法医学的検体のスワブ201を採取することによりサンプル200が準備される。該サンプル200は、ステップ101において緩衝溶液212(図1を参照)を用いて溶出される。
【0032】
例えば、溶出されたサンプル200は、通常は、加害者由来の精子細胞202、被害者由来の上皮細胞、およびその他の混入物203を含む。
【0033】
ステップ102では、精子分離用の、試験管204、エッペンドルフ容器205、スライドガラス206、マイクロ流体チップ207、またはその他の容器(プラットフォーム)の表面を、精子上の対応する結合パートナーに結合するヒト精子特異的抗体、または、例えば、リガンド、ペプチド、タンパク質などの他の生体分子でコーティング208する。精子特異的抗体コーティング208は、試験管204、エッペンドルフ容器205、ガラスカバースリップ/ガラスカバースライド206、チップ207などのいずれの表面またはサンプルチャンバーにも施すことができる。抗体およびペプチド、タンパク質、リガンド、または他の生体分子をガラス基材の表面に付着させるための、様々なよく確立された技術が存在している。表面コーティングは、例えば、容器(すなわち、試験管204、エッペンドルフ205)の内壁/内面全体にわたって、あるいはガラスカバースリップ206もしくはチップ207の特異的な範囲またはパッチのみに施されていてもよい。
【0034】
ステップ103では、例えば、分析対象の溶出した法医学的サンプル200が、ピペッティングもしくはポンプなどの他の能動機構、または重力流などの受動機構を介して、抗体がコーティングされたサンプルチャンバー/容器204〜206内へ配置される。
【0035】
ステップ104では、(精子202上の)抗原300(図3A(i)を参照)と、(容器204〜206の表面上に存在していてもよい)精子特異的抗体208を結合させる。したがって、抗体208は精子202の細胞表面上の抗原300を直接認識して該表面抗原300に選択的に結合するが、上皮細胞および他の混入細胞203は未結合のままである。精子抗原300を標的とするために利用される抗体208は、精子202表面上のエピトープを認識する、完全長または切断型、あるいは短いペプチドであってもよい。加えて、精子202表面受容体の結合パートナーを用いて、混合細胞サンプル200から精子202を捕獲することができる。
【0036】
ステップ105では、望ましいpHおよび塩濃度を有する適切な緩衝溶液、または精子溶出緩衝液209を用いて、サンプルチャンバー204〜206の表面から、精子以外(すなわち、非接着細胞または混入物203)を穏やかに洗い流し(数回の洗浄が必要とされる場合がある)、所望であればステップ106で回収し、下流の分析のための抗体が結合した精子細胞202のみを後に残す(図3A(i)も参照)。基材204〜206の表面に捕獲された精子202の分析に必要とされる数に応じて、洗浄ステップを繰り返してもよい。
【0037】
ステップ107では、選別された内容物(すなわち、抗体が結合した精子202)を検査し、スキャンし、品質(純度)が可視化される。これは、明視野顕微鏡(形態に基づく同定)、または蛍光標識のいずれかを用いて、処理過程において形態が変化した恐れがある精子細胞202を同定することができる(しかし、これらに限定されない)。蛍光はまた、(蛍光は明視野画像よりもコントラストが優れるので)精子202の同定の画像処理を容易にし、迅速にするであろう。
【0038】
その後、ステップ108では、精子細胞202を溶解し、精子を含むサンプルチャンバー204〜206をステップ109においてステーション210へ移動し、ここでin situ PCRおよびSTR法医学的分析を行なってもよい。
【0039】
あるいは、ステップ108において、例えば、切断剤を用いて、または緩衝溶液を交替/交換する(例えば、緩衝液のpHを変えて抗原−抗体結合に影響を与える)ことにより、あるいは塩濃度を変化させて有効電荷の遮蔽に影響を与えて、サンプルチャンバー204〜206の抗体コーティング表面から、結合している精子細胞202を遊離してもよい。選別された精子202を重力により選別容器204〜206内で沈殿させてもよく、必要であれば、選別された精子202を含むチャンバー204〜206をステップ109においてSTR分析を行うPCRプラットフォーム210へ移動させる前に、遠心分離によりさらにペレット状に沈殿させてもよい。
【0040】
解放容器または密閉容器204〜206内で選別が実行できることにより、プラットフォームの設計が柔軟になり、既にある機器を使用することができるようになることに注目すべきである。密閉チャンバー内で実行できることにより、PCRの前処理過程における混入が回避されるというさらなる利点がもたらされる。
【0041】
ステップ110では、精子数、試験されたサンプル200の純度のレベル、およびその他の関連する性能パラメーターについて結果レポートが作成されてもよい。ステップ111における実際のPCRに基づくSTR分析に先立つこれらのレポートにより、法医学的分析における優れた品質管理が可能となるだろう。HOT(以下に詳しく述べる)などの可視化法により、最終結果を導く中間ステップを記録しておくという利点がもたらされる。
【0042】
PCRに基づくSTR分析が行なわれ(ステップ111)、そのDNAが精子202のDNAに一致する人物が同定される。PCRに基づくSTR分析は、刑事告訴の妥当性を照合するために、被害者の上皮細胞などの混入物または非所望の対象物についても行なってもよい。PCRに基づくSTR分析自体は当該技術分野において周知であり、広く商品化されているため、本明細書では詳細については議論しない。
【0043】
複数のPCR反応を、1つの装置210で任意の所与の時間実行することができる。しかし、チップからチューブへの移動中のDNAの損失を避けるため、フラットベッド型のサーモサイクラーを用いて、オン−チップ207でPCRを行ってもよい。
【0044】
その後、ステップ112において、分析された精子202に対する最終的なSTRレポートが作成され、STRプロファイルについての統計が作成される。
【0045】
ステップ113では、例えば、法医学的な使用の場合、得られたデータはヒト同定用のCODISデータベースと照合される。
【0046】
本発明の別の実施形態では、ステップ100〜103は同じままである。しかし、ステップ104において、基材204〜207上の抗体208は、精子特異的抗原300に結合した抗体208を認識する抗IgGである(図3A(ii)(a)を参照)。したがって、基材204〜207の表面上の抗体208は、精子特異的表面抗原300を標的とするモノクローナル抗体を順に認識する抗免疫グロブリン抗体208であってもよい。他の混入細胞203を含む法医学的サンプル200中に精子202がほとんど存在しない場合には、複数の精子特異的抗体208をタンデムに使用して、下流の分析のための精子202を選択および選別することもできるが、抗免疫グロブリン表面抗体は同じままであってもよい。
【0047】
本実施形態の2ステップ結合過程では、ステップ1において、精子特異的抗原300が、特異的抗体208により認識される。精子202の表面に結合している抗体208は、抗IgGなどの二次(2°)抗体により認識されることになる(図3A(ii)(b)を参照)。
【0048】
ステップ1(図3A(ii)(a)を参照)は、エッペンドルフ容器内の緩衝溶液中で、過剰の抗体208の存在下で精子202をインキュベートすることにより行なうことができる。その後、過剰の抗体208は、単純な遠心回転により洗い流すことができる。その後、抗体208で標識された精子202は、例えば、固体支持体(基材)206上で行なわれてもよいステップ2(図3A(ii)(b)を参照)のために回収される。
【0049】
ステップ2では、一次抗体(1°)208は、支持体206上の二次抗体(2°)301で受け取られる。二次抗体301を使用して精子202を捕獲するこの第2の状況において、二次抗体301は(利用可能な結合部位に依存して)複数の精子細胞202を捕獲することができる。二次抗体301の表面密度は、立体障害に留意することにより最適化することができる。二次抗体301は、例えば、IgGであってもIgMであってもよく、IgMは多くの(10個の)結合部位を有する五量体であり、IgGは1分子あたり2つの結合部位を有する。
【0050】
その後、ステップ105〜113などのステップは、実質的に同じままであり、精子所有者のDNAを決定するための最終STR分析のために精子202が検査および準備される。
【0051】
本発明の別の実施形態では、ステップ100〜103は同じままであるが、ステップ104において、基材206上に抗体208を固定する代わりに、例えば、精子202を直接的または間接的に捕獲するために、前記実施形態に記載のように、例えば商業的に既知の様々な方法を用いて、リガンド302が精子202表面上の細胞表面受容体303)により認識され(図3A(iii)を参照)、それにより精子202が混入物203から効果的に選別されるよう、基材206上にリガンド302(通常は、小分子)を固定することができる。
【0052】
その後、ステップ105〜113などのステップは、実質的に同じままであり、PCRに基づくSTR分析のために精子202が検査および準備される。
【0053】
本発明のさらに別の実施形態では、ステップ100〜103は同じままであるが、ステップ104において、図3A(ii)(b)に示すような間接的アプローチを用いて精子202捕獲のための2ステッププロセスが実行される。第1のステップには、リガンド302を使用して、精子特異的タンパク質、ペプチド、細胞表面分子(糖ペプチドなど)304を結合することが含まれる。その後、第2のステップが用いられて、抗体301を使用してリガンド302が結合した精子202が捕獲される。
【0054】
その後、ステップ105〜113は実質的に同じであり、PCR−STR分析のために精子202が検査および準備される。
【0055】
ガラスまたはプラスチックなどのその他の材料であってもよい基材205〜207上に、抗体208を付着させるためには、標準的な生体結合化学反応が利用可能なことに留意されたい。基材上の抗体結合は、通常の共有結合性または非共有結合性の利用を介して、あるいは吸着を介して行うことができる。
【0056】
したがって、本明細書で議論される全てのアプローチは、ガラスまたはプラスチック206などの固体支持体上に固定するフォーマット以外の、他のフォーマットにおいても想定され得るものである。これには、平らな基材(単一ウェルフォーマットまたは複数ウェルフォーマット)、またはエッペンドルフチューブの表面のような曲面など、様々な形状の基材が含まれることになる。
【0057】
図3B(v)に示すような別の実施形態では、代替装置は、精子の捕獲のため使用される精子202に直接的または間接的に結合する抗体でコーティングされたビーズ(すなわち、シリカビーズ、磁性ビーズ、ポリスチレンビーズ)305を含んでいてもよい。
【0058】
さらに、図3B(vi)に示すような本発明のさらに別の実施形態では、プロテインA306およびプロテインG307の、抗体208との結合に対する強力なアフィニティーを利用して、本発明の別の形態を提供することができる。したがって、間接的な結合法に関する前述の実施形態において、二次抗体301を使用して精子202に結合した一次抗体208を認識する代わりに、ビーズ305および/またはプロテインA306もしくはプロテインG307により、一次抗体208の結合した精子202を認識および捕獲することができる。
【0059】
その後、ステップ105〜113は実質的に同じであり、PCRに基づくSTR分析のために精子202が検査および準備される。
【0060】
ホログラフィック光トラッピング
本発明のさらに別の実施形態では、前述の抗原−抗体結合に基づく選別またはタンパク質−リガンド結合に基づく選別を超えた、(例えば精子の選別において)さらなるレベルの純度が要求される法医学的サンプルのために、上記ステップ101〜103の実行後にHOT400が利用されてもよい(図4を参照)。
【0061】
HOT装置は当該技術分野において周知であり、例えば、その全体が参照により本明細書に援用される、Grierらの米国特許第6,055,106号に詳細が記載されている。
【0062】
したがって、前述の抗体アプローチと平行してHOTを使用することができ、使用および選別するための、様々な細胞特異的マーカー、特にヒト精子を認識し結合するマーカーが存在している。上皮細胞を含む様々な細胞型を標的にする/同定するために常に発見され続ける新しく新規なマーカーを使用することができる。本実施形態では、抗体の組み合わせを使用して上皮細胞を対象物/精子から分離することもできる。本発明は、所望のDNAと非所望のDNAの共増幅を導くような、上皮細胞DNAからの精子DNAの不完全な分離における既存の課題を解決するであろう。これにより、同様に、独特なSTRプロファイルではなく、混合したSTRプロファイルが作成される。
【0063】
具体的には、HOTの使用は、サンプル中に対象物/精子がほとんど無く、かつ主要な細胞型が膣由来の上皮細胞(混入物)である場合に好都合である。この場合、上記の抗体アプローチを(単独で、またはHOTと共に)使用して、上皮細胞特異的抗体をコーティングした基材(すなわち、スライドガラス、またはマイクロ流体チップ)へ上皮細胞を接着させることにより、最初に上皮細胞を精子から分離することができる。このような状況では、精子は上清中に残ることとなり、細胞溶解および抽出のいずれにも直接使用することができる。
【0064】
したがって、基材上の抗体で標識された精子細胞が結合した後、光トラッピングを用いて(緩衝液による洗浄によっては完全に除去されない場合がある)付着していない混入物をさらに選別し、基材上に精子細胞のみを残すことになる。このように、本実施形態では、抗体法に加え、またはその替わりに、HOT400を使用して、対象物(すなわち精子)をサンプル中の混入細胞から選別する。
【0065】
その後のステップ105〜113は、図1に示したものと同じままである。
【0066】
マイクロ流体チップおよび単一細胞PCR−STR分析
前記の実施形態においては、マイクロ流体チップ207を用いてもよいことに留意されたい。対象物の選別におけるマイクロ流体チップの使用は、その内容の全体が参照により本明細書に援用される、2008年9月11日に出願した「DNA分析における対象物の選別方法および装置」と題する同時係属中の出願に詳細に記載されている。
【0067】
本明細書に記載のように、HOT400は本明細書に記載される抗体法と共に、精子などの対象物を選別に用いられる(図2および図4を参照)。入力チャンバー401および個別出力チャンバー402を含むマイクロ流体チップ207を使用して、HOTを用いて精子202を個別チャンバー402へ選別することができる。本実施形態では、HOTを使用して、例えば、光学的に捕えられた精子202をマイクロ流体チップ207のある領域から同じチップ207上の個別チャンバー402へ移動させることによって、可視的(顕微鏡またはモニター)検査により、他の混入細胞203から法医学的サンプル200中の精子細胞202が分離される。
【0068】
その後、前述のステップ105〜113と同様に、PCR210ステーションにおいてPCRに基づくSTR分析を行い、DNAの特徴が前記精子のDNAの特徴と一致する人物が同定される。
【0069】
従来は、信頼できるSTR読み出しシグナルを得るためには著しい数の細胞が必要とされていた。しかし、HOTに基づく精子の分離という穏やかな方法を使用することおよび感度が改善されたことにより、混入している精子以外の細胞から精子をより確実に分離することができ、PCRに基づくSTR分析に必要とされる精子細胞の数において、約200個(従来の方法で必要とされる数として)から数個の細胞、または単一細胞PCRのレベルにまでサンプル採取を減量することができ、その効率を大きく向上させることができる(チップ上のチャンバーを参照)。これにより、同様に、複数の性的暴行事件において、または標準的なバルクPCR分析のための精子がほとんど入手できない事件において加害者を同定する確率が高くなることなど、法医学分析における単一細胞PCRに様々な利点がもたらされる。
【0070】
したがって、標準的なPCR法を用いて、チャンバー内の個々の精子について単一細胞PCRを行うことができる(マルチチャンバーチップ内の個別チャンバー内で個々の精子を溶解してDNAを抽出し、同時に全てのチャンバー内で単一細胞由来のDNAを増幅する)。
【0071】
具体的には、フラットベッド型のサーモサイクラーにチップを配置し、ここで法医学的事件用の市販のSTRプライマーを用いたPCRにより、抽出されたDNAを増幅する。あるいは、法医学的事件には関連していない場合は、注文設計の適切なプライマーを使用することができる。PCRサイクルの終わりに個々の細胞由来のDNAが十分に残されるように、熱サイクルの回数を増やす。
【0072】
DNA抽出は、(細胞溶解後に)遠心分離により、または磁性ビーズへの付着により行なわれてもよく、(DNA上の電荷を変化させる、すなわちDNAのビーズへの結合に影響する)pHを変化させることによってDNAがビーズ(磁性ビーズまたはその他のビーズ)から溶出される。
【0073】
PCRが完了した時点で、標準的なSTR分析を行なうことができる。これは、STR読み出し用の増幅されたDNAをゲル流動することを含み、各PCR反応が単一精子由来の増幅されたDNAに相当する。市販の装置をこの目的のために用いてもよい。
【0074】
したがって、チューブ内またはプレート上での標準的なPCR/STR分析に加え、ある実施形態では、単一チップ上で分析を行ってもよい(オンチップPCR)。この実施形態では、サンプル中の精子はin situで溶解するか、または各ウェルもしくはチャンバー内で精子を溶解して、フィルターを通してDNAと細胞細片を分離し、DNAのみを次のチャンバーへ移すことができ、ここで(数種の精子由来のDNAについて)(バルク)PCRが実行される。前記チャンバーは、STR読み出しが可能なオンチップPCR装置に接続されている。
【0075】
前述のように、分析された個々の精子に対する最終的なSTRレポートが作成され、STRプロファイルについての統計が作成される。例えば、法医学的な使用の場合、得られたデータはヒト同定用のCODISデータベースと照合される。
【0076】
個々の精子(単一細胞)のSTR読み出しの長所は:
(1)STR読み出しの(標準化により、確立している)統計的有意性に基づいて、複数の加害者の検出可能性が増大すること(性的暴行事件に関連する場合);および
(2)例えば、サンプル精子細胞の入手可能性が限られるために200個の精子細胞を得ることが難しく、それ故に性的暴行事件において有罪者を除外する機会が増大するような犯罪事件を分析することが可能になることである。
【0077】
したがって、STRに基づく法医学的科学捜査の性質および範囲を根本的に変え、以前には十分なサンプル収集に問題があった多くの事件の解決法がもたらされることが予測されるであろう。1個または数個の細胞の分析により、サンプル採取の時間も同様に短縮されるであろう。
【0078】
対立遺伝子の脱落が問題となり、(標準的なバルクPCR分析に基づく)STRプロファイルがCODISデータベースと適合しない(優性な対立遺伝子がもう一方をマスクする)稀な場合において、単一細胞PCRにより得られたSTRの特徴を関連する統計的算出によるデータベースと照合して、必要とされる確率に達することができる可能性が高い。
【0079】
個々の精子細胞についてのSTRを分析し、所与のサンプル由来の多数の精子細胞の一つずつについて分析を反復することにより、輪姦犯罪のような複数の加害者が関与する性的犯罪事件を確実に解決することができる。したがって、細胞混合物のセット由来の個人についてのSTRプロファイルの分析にはデコンボリューションは必要とされない。
【0080】
さらに、単一細胞PCRに基づく法医学的科学捜査により、反復測定を行うことが可能となり、犯罪事件の解決においてさらに統計学的に信頼できるデータが得られる。さらに、前記プロセス108に記載されるように、一次抗体および/または二次抗体は蛍光標識されていてもよい。通常、優れたコントラストにより蛍光サンプルのイメージ認識作業が迅速になるので、自動化されたHOTによる精子分離の処理能力が向上するであろう。
【0081】
本明細書で提案する方法は、複数の法医学的サンプルの分析を行うことにより処理能力が向上されるような自動化および多重化に適合しており;さらに複数の犯罪サンプルを同時に溶出、分離、および試験することにより処理能力が向上されるようなロボット工学と統合してもよい。ロボット工学との組み合わせには、プラットフォーム非依存性であること、すなわち、スライドガラス(ガラスカバースリップ)上、または試験管内もしくはエッペンドルフ内、あるいは96ウェルフォーマットでも実行できることから、さらなる利点がある(現在、PCRを96ウェルフォーマット、またはさらに多数のウェルフォーマットで実行できるフラットベッド型のサーモサイクラーなどの機器が存在することを考えれば、このような分離を利用したin situ PCRが可能である)。
【0082】
この方法論は、法医学的サンプルについてのin situ PCRに適合している。したがって、in situ PCRの様々な利点には:
(i)in situ PCRは、含まれるステップがより少なく、ある容器から他の容器へのサンプル移動が回避されるので、混入の機会が減少すること;および
(ii)より多くのステップおよびサンプル移動が関与すると思われる供給コストを制限することにより、このような法医学的分析のコストを削減すること、
などに有効であろう。
【0083】
本明細書に記載される本発明は、雄性画分と雌性画分の混合、およびしばしば起こる細胞の溶解が不完全であるなどの様々な欠点がある、一般に使用される分別抽出法よりも優れている。加えて、上皮細胞DNAから精子を分離するために広く実践されている方法である分別抽出は、多大な労力を要し、手間がかかり、自動化の余地が無い。本発明はこれらの問題を回避し、STR分析に先立つ分離過程における優れた品質および信頼性をもたらす。
【0084】
明確に規定された固定フィルターポアサイズを有する二重メンブレンフィルターを用いるような代替技術(Ladd Carl et al., “Development of a high throughput method to isolate sperm DNA in sexual assault cases”, August 2006 を参照)が、精子を捕獲するが消化された上皮細胞由来のDNAは通過させるように設計されたが、この方法は非常に厳しく、精子の不完全な溶解の原因となると議論された。抗原−抗体結合またはタンパク質−リガンド結合に基づく精子選別により機械的分別の厳しさが防止される。
【0085】
その他の代替法では、固定ポアサイズを有するものの代わりに、ナイロンメッシュを用いる同様のアプローチが使用いられる。このようなメンブレンに基づく分離は部分的に自動化することができ、または当該システムへ真空ポンプを結合することにより手動操作の分離よりもスピードを速くすることができる。しかしながら、ポンプを追加することにより分離における分解能が減少する。すなわち、混合細胞サンプル由来の不必要な成分が、メンブレンで分離された部分に詰まることがある。
【0086】
さらに本発明は、直接的な顕微鏡による可視化によって操作でき、サンプル品質(純度)の管理に優れるという利点を有する。
【0087】
法医学的サンプル分析の分野における細胞型分離のための別の方法は、レーザーキャプチャーマイクロダイセクション(laser capture micro-dissection)と呼ばれる。この方法は、上皮細胞からの精子の分離において分別抽出よりも有効であるが、高価であり、細胞を固定するためのさらなる中間ステップを必要とし、細胞が集団である場合よりも別々に分離されて単層であるときに最もよく機能するものである。したがって、既存のいずれの技術/方法も、上皮細胞を精子細胞から分離するための基準を満足していない。本明細書に記述される本発明は、単独モードまたはHOTとの組み合わせのいずれにおいても、既存の技術の欠陥および困難を克服可能であり、完全な自動化に適している。
【0088】
本本発明は、特に性的暴行法医学的事件(法医学事件の約2/3を構成する(James Butler による参考文献 “Forensics DNA Typing”, 2nd edition を参照))の解決と関連して記述されているが、法医学分野における本発明の適用は、細胞型の分離を必要とするいずれの分野へも及ぶ。
【0089】
別の実施形態では、ほとんどの細胞は細胞型特異的表面マーカーを有することから、抗体に基づく分離を基礎研究または癌診断などの法医学以外の領域へ拡張することが可能である。
【0090】
法医学の分野における本発明の拡張の1つは、この抗体に基づく細胞分離法をDNAに基づく親子鑑定に利用することである。このような鑑定は、性的暴行後にしばしば起こる異常妊娠、または中絶した妊娠の場合における胚もしくは胎児の生物学的父親の同定に必要である。残った胎児または中絶した材料が胎児DNA源として用いられる。しかしながら認識できる胎児部分が親子鑑定で確信的に同定できない場合、死後のサンプルまたは遺伝的羊水穿刺からの固定組織の顕微鏡試験が、回収された産物を構成する母性(脱落膜)成分と父性(絨毛膜絨毛)成分を区別するための唯一の方法である。しかしながら、この場合も、通常、細胞分離は決して完全とはいえない。しかし本発明によれば、HOTとの組み合わせた抗体に基づく分離は、抽出DNAをPCR増幅する前に母性成分と絨毛膜絨毛成分とを分離することができる。このアプローチは必要であれば、サンプルの直接的な可視化を可能にする。
【0091】
前述の本発明の実施形態は、本発明の原理を明確に理解するために説明される、実施可能な例にすぎないことが強調されるべきである。前述の本発明の実施形態は、本発明の趣旨および原理から逸脱しない限り、変形、および変更されることがある。このような変更および変形の全ては本明細書において、本発明の範囲内に含まれ、以下の請求項により保護されることが企図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を選別する方法であって、
所望の対象物および非所望の対象物を有するサンプルを供給すること;
サンプルホルダーの表面を抗体でコーティングすること;
前記サンプルを溶出し、該溶出サンプルを前記サンプルホルダー上に配置すること;
前記サンプル中の所望の対象物中の抗原を前記サンプルホルダー表面上の前記抗体に結合させて、前記対象物を所望の対象物と非所望の対象物とに選別すること;
前記所望の対象物を分離すること;
前記非所望の対象物を除去すること;および
前記所望の対象物についてPCRに基づくSTR分析を行うことを含む方法。
【請求項2】
ホログラフィック光トラッピングを行って前記非所望の対象物から前記所望の対象物を選別する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記サンプルホルダーが、エッペンドルフ、試験管、スライドガラス、ガラスカバースリップ、またはマイクロ流体チップのうちの1つを含む光学的に透明な材料である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記所望の対象物が精子であり、前記抗体がヒト精子特異的抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記PCRが、同一種類の複数の選別された対象物についてのバルクPCR、または単一細胞PCRに基づくSTR分析のうちの1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記表面から対象物を遊離させること;および
明視野顕微鏡または蛍光顕微鏡のうちの1つを用いて、前記所望の対象物の品質および純度を検査することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記選別および前記PCRに基づくSTR分析を、同一のチップまたは異なるチップのうちの1つに対して行なうことをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記抗原を一次抗体に結合させること;および
前記一次抗体を二次抗体に結合させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記サンプルホルダー上にリガンドを固定化すること;および
前記所望の対象物の表面上の細胞表面受容体を前記リガンドに結合させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
リガンドを対象物に特異的な有機分子に結合させること;および
抗体を用いて前記リガンドが結合した対象物を捕獲することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記サンプルホルダーが、前記所望の対象物と直接的または間接的に結合する前記抗体でコーティングされたビーズを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記抗原を一次抗体に結合させること;および
前記一次抗体を二次抗体に結合させることをさらに含み、
前記ビーズがプロテインAまたはプロテインGのうちの1つでコーティングされ、かつ前記ビーズが、前記一次抗体に結合した前記所望の対象物を認識および捕獲する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
プロテインAまたはプロテインGのうちの1つを前記サンプルホルダーの表面にコーティングすること;
前記抗原を一次抗体に結合させること;および
前記一次抗体を二次抗体に結合させることをさらに含み、
前記プロテインAまたはプロテインGが抗体で標識された前記所望の対象物を認識および捕獲する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記PCRを行なうステップが自動化および多重化に適合している、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
ホログラフィック光トラッピングと組み合わせた抗体に基づく選別を用いた前記選別ステップが、父性試験のDNA同定のために、PCRに基づくSTR分析が行なわれる前に母性成分と絨毛膜絨毛成分とを分離するステップである、請求項2に記載の方法。
【請求項16】
前記非所望の対象物についてPCRに基づくSTR分析を行なうことをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
対象物を選別するための装置であって:
抗体でコーティングされたサンプルホルダーであって、該サンプルホルダーが所望の対象物サンプルおよび非所望の対象物サンプルを含み、該所望の対象物が抗原を含むサンプルホルダーを含み;
前記サンプルホルダーにコーティングされた前記抗体が前記所望の対象物上の前記抗原に結合し;
前記所望の対象物が選別されるチップ;および
前記所望の対象物についてPCRに基づくSTR分析を行なうための装置を含む装置。
【請求項18】
前記サンプル中の前記非所望の対象物から前記所望の対象物を光学的に捕捉および選別するホログラフィック光トラッピング装置をさらに含む、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記所望の対象物が細胞であり、前記非所望の対象物が混入物である、請求項17に記載の装置。
【請求項20】
前記PCR装置が、同一種類の複数の選別された対象物についてのバルクPCR、または単一細胞PCRに基づくSTR分析のうちの1つを行う、請求項17に記載の装置。
【請求項21】
前記チップがマイクロ流体チップである、請求項17に記載の装置。
【請求項22】
前記サンプルホルダー、および前記装置が前記PCRに基づくSTR分析を行う基材が単一チップである、請求項17に記載の装置。
【請求項23】
PCRを行うための前記装置が自動化および多重化されている、請求項18に記載の装置。
【請求項24】
前記サンプルホルダー上に配置される複数のリガンドをさらに含み;
前記所望の対象物の表面上の細胞表面受容体が前記リガンドに結合する、請求項18に記載の装置。
【請求項25】
前記サンプルホルダーに配置される複数のリガンドをさらに含み;
前記リガンドが対象物に特異的な有機分子に結合し;かつ
前記リガンドが結合した対象物が、前記リガンドに対する前記抗体を使用する、請求項18に記載の装置。
【請求項26】
前記サンプルホルダーが、前記所望の対象物と直接的または間接的に結合する前記抗体でコーティングされたビーズである、請求項18に記載の装置。
【請求項27】
前記サンプルホルダーが、プロテインAまたはプロテインGのうちの1つでコーティングされている、請求項18に記載の装置。
【請求項28】
前記抗体が一次抗体および二次抗体をさらに含み;
前記一次抗体が前記抗原に結合し;かつ
前記一次抗体が二次抗体に結合し;
前記ビーズがプロテインAまたはプロテインGのうちの1つでコーティングされ、
前記ビーズが、前記一次抗体に結合した前記所望の対象物を認識および捕獲する、請求項26に記載の装置。
【請求項29】
PCRに基づくSTR分析が、前記非所望の対象物について行われる、請求項17に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−538645(P2010−538645A)
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−524859(P2010−524859)
【出願日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際出願番号】PCT/US2008/010601
【国際公開番号】WO2009/035623
【国際公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(508117628)アリックス インク (3)
【Fターム(参考)】