説明

対象物位置検出装置及び対象物位置検出方法

【課題】対象物から煙幕状に広がるフレアが射出された場合でも、その対象物の位置を的確に捕捉する。
【解決手段】対象物位置検出装置において、赤外線等の電磁波による画像データを取得し(100)、画像データの輝度情報に対して輝度閾値を超える領域を高輝度領域として抽出し(101)、抽出された高輝度領域の輪郭付近に注視曲線を設定し(102)、設定された注視曲線において対象物の有無を評価し対象物の位置を推定する(103)。これにより、煙幕状に広がるフレアが射出され対象物が隠された状態に陥っても、対象物を逃すことなく再捕捉し検出することができるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば赤外線誘導装置に用いられ、赤外線画像から対象となる物体の位置を検出するための対象物位置検出装置とその検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の赤外線誘導装置では、中波長による赤外線センサで対象の飛翔体を撮像し、その赤外線画像の信号強度を解析することによって対象の飛翔体の位置を検出し誘導している。しかし、同方法では対象の飛翔体から赤外線フレアが発出された場合に、そのフレアに向けて誤った誘導を行ってしまう。
【0003】
これに対処するため、近赤外線および中赤外線の2波長帯の画像を利用し対象物を検出するなどの手法が提案されている。ただし、これらの方法を採用したとしても、煙幕状に広がるフレアが発出された場合には、飛翔体の排気部の像とフレアの像が重なってしまうため、誤った誘導を行ってしまうおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3431206号公報(特開平06−323788号公報)
【特許文献2】特開平6−174828号公報
【特許文献3】特開2010−133770号公報
【特許文献4】特開2010−210212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、従来の赤外線誘導装置等に用いられる対象物位置検出装置では、煙幕状に広がるフレアが発出された場合は、対象物の排気部の像とフレアの像が重なってしまい、結果的に誤った誘導を行ってしまうという課題があった。
【0006】
本実施形態は上記のような課題に鑑みなされたもので、対象物から煙幕状に広がるフレアが射出された場合でも、その対象物の位置を的確に捕捉することのできる対象物位置検出装置とその検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本実施形態によれば、対象物を電磁波により撮像した画像データを取得する画像データ取得手段と、前記画像データの輝度情報に対して輝度閾値を超える領域を高輝度領域として抽出する領域抽出手段と、前記高輝度領域の輪郭付近に注視曲線を設定する注視曲線設定手段と、前記注視曲線において前記対象物の有無を評価し対象物の位置を推定する位置推定手段とを具備する態様とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施形態1に係る対象物位置検出装置の構成を示すブロック図。
【図2】図1に示す装置の動作の流れを示すフローチャート。
【図3】図1に示す装置の画像データ取得部で得られる画像を示す図。
【図4】図1に示す装置の高輝度領域抽出部で得られる画像を示す図。
【図5】図1に示す装置の注視曲線設定部の動作を説明するための概念図。
【図6】図1に示す装置の位置推定部の動作を説明するための図。
【図7】図1に示す装置の注視曲線設定部の他の動作を説明するための概念図。
【図8】実施形態2に係る対象物位置検出装置の構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本実施形態に係る対象物位置検出装置を説明する。
【0010】
(実施形態1)
図1は、本実施形態1における対象物位置検出装置の構成を示すブロック図である。この装置は、赤外線等の電磁波による画像データを取得する画像データ取得部100と、画像データの輝度情報に対して輝度閾値を超える領域を高輝度領域として抽出する高輝度領域抽出部101と、高輝度領域抽出部101により抽出された高輝度領域の輪郭付近に注視曲線を設定する注視曲線設定部102と、設定された注視曲線において対象物の有無を評価し対象物の位置を推定する位置推定部103とを備える。
【0011】
以下に、本実施形態1の対象物位置検出装置の動作について、図2に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0012】
まず、画像データ取得部100により、電磁波画像データが取得される(ステップS1)。図3(a),(b)に、それぞれ画像データ取得部100により画像データとして得られた赤外線画像データの表示例を示す。通常は、図3(a)に示すように、画面300の輝度値の高い部分に対象物の像301が表示されるが、対象物より煙幕状に広がるフレアが射出された場合、図3(b)に示すように画面300における広範囲に輝度値の高い領域がフレアの像302となって現れる。その結果、対象物の像301はフレアの像302に隠れてしまう。
【0013】
このようなフレアが発生する状況において、画像データ取得部100により取得された赤外線画像データは高輝度領域抽出部101に入力され、図4に示すように高輝度領域303が抽出される(ステップS2)。尚、図4では高輝度領域303の形状を簡略化して示している。
【0014】
ここで、高輝度領域303の抽出の方法として、ユーザーが任意の輝度閾値を設定することより、その輝度閾値よりも高い輝度値を有する画素部分を高輝度領域として抽出する方法がある。上記高輝度領域303の情報は、ユーザーが任意に与えた面積閾値に対して、閾値よりも大きい領域のみを抽出し、小さい領域は除外する機能を持たせることもできる。これによりランダムノイズ等の影響によって抽出された高輝度領域を除去することができる。
【0015】
高輝度領域抽出部101において抽出された高輝度領域303の情報は、注視曲線設定部102へ入力され、高輝度領域303の輪郭付近に注視曲線304が設定される(ステップS3)。この注視曲線304は、高輝度領域303の周辺付近を沿う閉曲線として設定される。注視曲線304の設定方法としては、単純に高輝度領域303の輪郭線として設定することも可能であるが、以下に示す輝度勾配情報を利用する方法も考えられる。
【0016】
まず、画像データ300(もしくは高輝度領域303内)の各画素に対して輝度勾配ベクトルを算出する。ここで、輝度勾配ベクトルg(i,j)の算出は式(1)による。
【数1】

【0017】
ここで、I(i,j)は座標(i,j)における輝度を示している。この輝度勾配情報の局所的なピーク値(極大値)を示す画素を注視曲線304として設定することも可能である。
【0018】
さらに、上記注視曲線設定部102において設定された注視曲線304の情報は位置推定部103へ入力される。この位置推定部103では、対象物が存在する位置について確率による評価値が算出され、その評価値の高い位置が推定される(ステップS4)。
【0019】
以上が基本的な処理動作であるが、画像データの状態によっては連続的に(滑らかに)注視曲線を設定できない場合がある。その場合は、式(1)で示した輝度勾配ベクトルg(i,j)に直交する式(2)によるベクトル(以下、回転ベクトルとしr(i,j)で表す)
【数2】

【0020】
を考えると、図5(a)に示す画像データ400上において、図5(b)に示すような回転ベクトル401が得られる場合に、その大きさが大きい部分には図5(c)に示すエッジ402が存在し、回転ベクトル401の方向はエッジに沿う。この回転ベクトル401の情報を用いて、その大きさが局所的に極大となるものを選び、その方向を辿ることで、注視曲線304を連続的に設定することができる。
【0021】
対象飛翔体が注視曲線304付近に存在する場合、対象飛翔体の排気部の温度影響により、近傍の輝度勾配が上昇すると考えられる。このため、この注視曲線304に沿って、輝度勾配値(輝度勾配ベクトルの大きさ)の大小を比較することで、対象物の位置を推定することができる。
【0022】
また、予め通常時(フレアが発出されていない状態)の対象飛翔体の輝度パターン(赤外線画像パターン)305を保持しておき、図6に示すように、注視曲線304に沿ってパターンマッチングを実施して、その結果から対象物の位置を推定することも可能である。
【0023】
また、対象飛翔体が単純に対象物位置検出装置において画像平面上の並進移動として捕らえられる場合、図7に示すように、注視曲線304が偏平して凸の鋭角部306が形成される。この場合、対象飛翔体は注視曲線304の凸な鋭角部306に存在する確率が高い。したがって、注視曲線304の形状を評価することで対象物の位置を検出することも可能である。
【0024】
上記実施形態によれば、従来のような信号強度の比較評価や領域ごとの比較評価の手法に比べ、煙幕状に広がるフレアが射出され対象物が隠された状態に陥っても、対象物を逃すことなく再捕捉し検出することができ、正確な誘導を継続することができる。また、評価に輝度勾配値を利用することにより、領域の抽出が絶対値の評価から相対値の評価で実施されるため、輝度の強弱の変動に対してロバストに位置推定が行うことができ、誘導性能を向上させることができる。また、注視曲線を設けることで、画像全体を評価することを避けることができ、処理コストを低減することができる。
【0025】
(実施形態2)
次に、図8を用いて実施形態2を説明する。
【0026】
図8は、本実施形態2における対象物位置検出装置の構成を示すブロック図である。尚、図8において、図1と同一部分には同一符号を付して示し、ここでは異なる部分を説明する。
【0027】
本実施形態2では、実施形態1における対象物位置検出装置の構成において、推定位置記憶部104が加えられる。まず、実施形態1と同様に、位置推定部103において対象物の位置が推定されるが、その推定された位置情報は順次、推定位置記憶部104へ入力され、記録される。
【0028】
ここでの記録量はユーザーが任意に設定することができ、例えば、Mフレーム分の記録を設定しておけば、直前のMフレーム分の対象物の推定位置の履歴を蓄積することができる。そして、位置推定部103では、推定位置記憶部104に記録されているMフレーム分の推定結果の時間変化を総合して、対象物の位置が推定される。
【0029】
この実施形態2によれば、推定結果を一定時間観察することにより、時間変化を一つの特徴量として評価することができ、白色ランダムノイズ等の影響による誤推定を低減することができる。実際に、対象飛翔体からフレアが射出される場合、検出結果は不安定になることがあり、時間的、統計的に位置を推定することによって推定値が安定する。
【0030】
また、上記実施形態はそのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせでもよい。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0031】
100…画像データ取得部、101…高輝度領域抽出部、102…注視曲線設定部、103…位置推定部、104…位置推定部、105…推定位置記憶部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を電磁波により撮像した画像データを取得する画像データ取得手段と、
前記画像データの輝度情報に対して輝度閾値を超える領域を高輝度領域として抽出する領域抽出手段と、
前記高輝度領域の輪郭付近に注視曲線を設定する注視曲線設定手段と、
前記注視曲線において前記対象物の有無を評価し対象物の位置を推定する位置推定手段と
を具備することを特徴とする対象物位置検出装置。
【請求項2】
前記領域抽出手段は、複数抽出された前記高輝度領域のうち面積が閾値よりも大きい領域のみを抽出し、小さい領域を除外する機能を有することを特徴とする対象物位置検出装置。
【請求項3】
前記注視曲線設定手段は、前記高輝度領域において前記輝度勾配値の局地的なピーク値を示す画素を前記注視曲線として設定する機能を有することを特徴とする請求項1または2記載の対象物位置検出装置。
【請求項4】
前記位置推定手段は、前記輝度勾配値の相対差異から前記対象物の有無を評価し、その位置を推定する機能を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載の対象物位置検出装置。
【請求項5】
さらに、前記位置推定手段は、前記対象物の輝度値パターンを記憶する記憶手段を有し、前記輝度値パターンと比較評価して前記対象物の位置を推定する機能を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載の対象物位置検出装置。
【請求項6】
前記位置推定手段は、前記注視曲線の形状から前記対象物の位置を推定する機能を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載の対象物位置検出装置。
【請求項7】
前記位置推定手段は、予め設定した時間内の推定値の変化量から前記対象物の位置を推定する機能を有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか記載の対象物位置検出装置。
【請求項8】
対象物を電磁波により撮像した画像データを取得し、
前記画像データの輝度情報に対して輝度閾値を超える領域を高輝度領域として抽出し、
前記高輝度領域の輪郭付近に注視曲線を設定し、
前記注視曲線において前記対象物の有無を評価し対象物の位置を推定することを特徴とする対象物位置検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−53952(P2013−53952A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192935(P2011−192935)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】