説明

封入食品加熱用インモールド容器

【課題】 高温で加熱してもインモールド成形したフィルムが変形、変質、剥離等の不具合を生じない封入食品加熱用インモールド容器を提供する。
【解決手段】 樹脂製容器の周壁の外周面に、内側にヒートシール性樹脂層、外側部に印刷を施したポリエステル樹脂層を有する積層フィルムを前記周壁と一体成形した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、未調理の食品を内部に入れて加熱調理するのに適したインモールド容器(本明細書において「封入食品加熱用インモールド容器」という)に関する。
【0002】
特に、加熱時の高温により容器と一体成形しているフィルムが剥離あるいは変形しないようにしたインモールド容器に関する。
【背景技術】
【0003】
食品を容器の内部に入れて加熱調理し、そのまま製品として出荷することが行われている。たとえば、焼きプリンは樹脂製の容器に砂糖、牛乳、卵等を入れ、加熱して出荷されている。
【0004】
インモールド容器は、射出成形時に印刷を施したフィルムを金型の間に挟み込み、樹脂の射出時の熱圧により容器の周壁にフィルムを一体成形させ、成形と装飾とを同時に達成するようにしたものである。
【0005】
インモールド容器はフィルムに印刷した写真等の再現性が高いことにより、外観が美しく、上記封入食品加熱用の容器として使用したいという要求があった。
【0006】
ところで、従来の封入食品加熱用インモールド容器は、ポリプロピレン樹脂層に印刷を施したフィルムをその周壁に一体成形させるものであった。
【0007】
しかし、このような封入食品加熱用インモールド容器は、たとえば焼きプリンの場合などのように160度前後の比較的高い温度で加熱すると、前記フィルムが変形あるいは剥離することがあった。
【0008】
これに対する対策として、特開平5−49429号公報に記載された発明のように調理法自体を工夫して比較的低い温度で食品を加熱する方法が提案されている。
【0009】
あるいは、比較的高温で加熱する場合は、インモールド容器の使用を避け、容器の周壁に直接印刷を施すことが行われていた。
【特許文献1】特開平5−49429号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、上記調理法自体を工夫して低温で加熱する方法は、適用できる食品が限られるという制約がある。
【0011】
一方、上記容器の周壁に直接印刷を施す方法は、印刷技術の限界からインモールド容器に比して外観の質が低くならざるを得ないという問題があった。
【0012】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、高温で加熱してもインモールド成形したフィルムが変形、変質、剥離等の不具合を生じない封入食品加熱用インモールド容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明による封入食品加熱用インモールド容器は、ポリエステル樹脂層を基材とし、印刷を施したポリオレフィン樹脂層を積層し、あるいは印刷を施したポリエステル樹脂層を含む積層フィルムをインモールド成形したものである。
【0014】
本発明による封入食品加熱用インモールド容器は、樹脂製容器の周壁の外周面に、内側にヒートシール性樹脂層、外側部に印刷を施したポリエステル樹脂層を有する積層フィルムを前記周壁と一体成形したことを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明による封入食品加熱用インモールド容器は、樹脂製容器の周壁の外周面に、内側にヒートシール性樹脂層、外側部に印刷を施したポリオレフィン樹脂層と少なくとも一層のポリエステル樹脂層を有する積層フィルムを前記周壁と一体成形したことを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明による封入食品加熱用インモールド容器は、樹脂製容器の周壁の外周面に、ポリエステル樹脂層の両側にポリオレフィン樹脂層を配した積層構造部を有する積層フィルムを前記周壁と一体成形したことを特徴とするものである。
【0017】
また、本発明による封入食品加熱用インモールド容器は、樹脂製容器の周壁の外周面に、内側にヒートシール性樹脂層、外側部に印刷面で接合した2層のポリエステル樹脂層を有する積層フィルムを前記周壁と一体成形したことを特徴とするものである。
【0018】
前記ポリオレフィン樹脂層は、ポリプロピレン(PP)系樹脂からなるようにすることができる。
【0019】
前記ヒートシール性樹脂層は、ポリプロピレン(PP)系樹脂からなるようにすることができる。
【0020】
前記ポリエステル樹脂層は、ポリエチレンテレフタレート(PET)系樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)系樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)系樹脂のいずれか一つからなるようにすることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明のインモールド容器によれば、雰囲気温度(湿潤状態)約150度から約160度まで約1時間かけて昇温し、温度を維持するようにしてもフィルムの変形や剥離等を生じることがないことが試験によって確かめられた。
【0022】
これにより、焼プリンに限らず比較的高温で食品を加熱調理する容器としてインモールド容器を使用することができるようになり、外観が美しい封入食品加熱用インモールド容器を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1は、本発明の一実施形態による封入食品加熱用インモールド容器の断面の一部を示している。
【0024】
図1(a)は上方開口に向かって拡開する円筒状の周壁を有するインモールド容器1、図1(b)は、全体としては上方開口に向かって拡開する円筒状の周壁を有するが、途中に段差を有し、外径が不連続に大きくなる部分を有する周壁を有するインモールド容器2の縦断面の一部を示している。
【0025】
符号3,4はそれぞれインモールド容器1,2の周壁に一体成形された本発明による積層フィルムを示している。
【0026】
図1(a)に示すように、積層フィルム3は、主にインモールド容器1のいわゆる周壁部分の外周面に一体成形されているが、上端部はインモールド容器1のフランジ部1aにかかり、下端部はインモールド容器1の脚部1bにかかっている。
【0027】
また、図1(b)に示すように、積層フィルム4は、インモールド容器2のいわゆる周壁部分の外周面に一体成形されているが、上端部は周壁部分の段差部2aにかかり、下端部はインモールド容器の脚部2bにかかっている。
【0028】
すなわち、本発明の特許請求の範囲にいう「周壁」は、いわゆる容器本体の側胴部分の他に、側胴部分に続くフランジ部、脚部、側胴部分の段差部等を含むものとする。
【0029】
本発明の積層フィルムは積層の態様が種々ありえる。
【0030】
図2は本発明の一態様による積層フィルムの横断面を示している。
【0031】
図2の積層フィルム5はインモールド容器の周壁6の外周面に一体成形され、積層フィルム5は内側にヒートシール性樹脂層7、その外側にポリエステル樹脂層8、最外周にポリオレフィン樹脂層9を積層したものである。
【0032】
ポリオレフィン樹脂層9は、内側表面に印刷10を施されている。
【0033】
この積層フィルム5は、インモールド成形の時に、ヒートシール性樹脂層7が熱圧によりインモールド容器の周壁6に密着し、積層フィルム5がインモールド容器の周壁6と一体に成形される。
【0034】
ポリオレフィン樹脂層9の内側表面に印刷10が施されていることにより、印刷10のインキはポリオレフィン樹脂層9とポリエステル樹脂層8の間に挟み込まれて外部の摩擦等から保護され、印刷10が品質の高いことにより美しい外観のインモールド容器を得られる。
【0035】
本実施形態によるインモールド容器によれば、食品を内部に入れて加熱調理する時に、ポリエステル樹脂層8の耐熱温度が高く、支持基材としての役割を果たすことにより、加熱によって積層フィルム5が変形や剥離することを防止することができる。
【0036】
図2の積層フィルムにおいて、最外層のポリオレフィン樹脂層を省略し、ポリエステル樹脂層に直接印刷を施すことができる。
【0037】
図3は、上述態様による積層フィルムの横断面を示している。
【0038】
図3の積層フィルム11はインモールド容器の周壁12の外周面に一体成形されている。積層フィルム11は内側にヒートシール性樹脂層13、その外側にポリエステル樹脂層14を積層したものである。
【0039】
ポリエステル樹脂層14は、内側表面に印刷15を施されている。
【0040】
このインモールド容器によれば、ポリエステル樹脂層14の内側に印刷15が施されていることにより、印刷15は外部の摩擦等から保護され、印刷10の品質が高いことにより美しい外観のインモールド容器を得られる。
【0041】
また、食品を内部に入れて加熱調理する時は、ポリエステル樹脂層14自体が印刷インキの支持基材として耐熱温度が高く、加熱による積層フィルム11の変形や剥離を防止することができる。
【0042】
図2の積層フィルム5において、ポリオレフィン樹脂層あるいはポリエステル樹脂層を任意に追加することができる。
【0043】
図4は、図2の積層フィルム5にポリエステル樹脂層を追加した実施形態の積層フィルムの横断面を示している。
【0044】
図4の積層フィルム16は、図2の積層フィルム5にポリエステル樹脂層17を追加したこと以外は図2の積層フィルム5と同一の構成を有している。
【0045】
本実施形態によれば、ポリエステル樹脂層17が追加されていることにより、耐熱性が高く丈夫なインモールド容器を得ることができる。
【0046】
図5は、さらに他の実施形態による積層フィルムの横断面を示している。
【0047】
図5の実施形態は、印刷面を挟み込んだ2層のポリエステル樹脂層を有する積層フィルムを有するものである。
【0048】
図5において、積層フィルム18はインモールド容器の周壁19の外周面に一体成形されている。この積層フィルム18は、内側にヒートシール性樹脂層20、その外側にポリエステル樹脂層21、さらにその外側にポリエステル樹脂層22、最外周にポリオレフィン樹脂層23を積層したものである。
【0049】
この実施形態によれば、印刷24は、2層のポリエステル樹脂層21,22の間に挟み込まれ、耐熱性が高く同一の材質のポリエステル樹脂層によって挟み込まれていることにより、高い温度によっても剥離、変形等を防止することができる。
【0050】
上記ポリエステル樹脂層としてポリエチレンテレフタレート(PET)系樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)系樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)系樹脂のいずれかを使用することができる。
【0051】
好ましくは、上記ポリエチレンテレフタレート(PET)系樹脂は、SiO−PET(酸化珪素蒸着層を有する二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム)、AL−PET(金属酸化物蒸着層を有する二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム)を使用することができる。
【0052】
また、上記ポリオレフィン樹脂層として、ポリプロピレン(PP)系樹脂を使用することができる。
【0053】
好ましくは、上記ポリプロピレン(PP)系樹脂は、HS−OPP(ヒートシール性を有する二軸延伸ポリプロピレンフィルム)、マットOPP(マット調二軸延伸ポリプロピレンフィルム)、帯電防止タイプOPP、非帯電防止タイプOPPを使用することができる。
【0054】
上記ヒートシール性樹脂層7,13,20は、上記ポリオレフィン樹脂層と同一材質とすることができる。
【0055】
この場合、図2に示した積層フィルム5は、ポリエステル樹脂層の両側にポリオレフィン樹脂層を配した積層構造部を有する積層フィルムと捉えることができ、印刷がどの樹脂層にされているかに拘わらず、上述したような食品加熱時の積層フィルムの変形や剥離を防止することができるという効果を奏することができる。
【0056】
なお、積層フィルムの接着は、ウレタン系接着剤を使用したドライラミネーションによる積層が好適である。
【実施例】
【0057】
ポリオレフィン樹脂層:
静電防止処理OPP 東レ(株)のトレファンBO 2548 30ミクロン
HS−OPP 東洋紡績(株) のパイレンフィルム-OT P3162 30ミクロン
マットOPP 東洋紡績(株) のパイレンフィルム-OT P4166 25ミクロン
ポリエステル樹脂層:
PET 東洋紡績(株)のエステルフィルム E5202 12ミクロン 25 ミクロン
SiO−PET 三菱樹脂(株)のテックバリアTZ 12ミクロン、テックバリアT 12ミクロン
Al−PET 東洋メタライジング(株)のVM-PET1031HG-C 12ミクロン
接着剤:
三井武田ケミカル(株)のタケラック A-616/タケネートA-65 厚さ3.6g/m2
インキ:
東洋インキ製造(株)のNEW LPスーパー、NEWファイン 版深25-28ミクロン
成形樹脂:
三井化学(株)の三井ポリプロ J105MC,J105MD
射出成形条件:
加熱筒温度250度以上
射出速度120mm/s 以上
以上の諸条件によりインモールド容器を製造し、以下の方法により加熱試験を行った
試験装置:
三洋電機(株)のプログラムオーブン MOV-112P
試験条件:
容器首下で容器を支えられるような穴を加工したバケットを準備し、容器中に適量の砂(100gあるいは150g)を入れ、オーブン中に水を入れたバットをセットし、バット上に容器が水に約10mm浸るようにセットし、図6に示すような時間と温度の関係の加熱を行った。
【0058】
評価方法:
容器(積層フィルム)の外観(変形、めくれ、浮き、縮み、光沢)を目視により観察する。
【0059】
試験結果:
オーブン内平均雰囲気温度160度(湿潤状態、最高温度163度)までは容器の外観に異常が生じなかった。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】インモールド容器の一部断面図。
【図2】本発明の一実施形態による積層フィルムの断面図。
【図3】本発明の一実施形態による積層フィルムの断面図。
【図4】本発明の一実施形態による積層フィルムの断面図。
【図5】本発明の一実施形態による積層フィルムの断面図。
【図6】本発明の加熱試験の時間と温度の関係を示したグラフ。
【符号の説明】
【0061】
1 インモールド容器
2 インモールド容器
3 積層フィルム
4 積層フィルム
5 積層フィルム
6 インモールド容器の周壁
7 ヒートシール性樹脂層
8 ポリエステル樹脂層
9 ポリオレフィン樹脂層
10 印刷
11 積層フィルム
12 インモールド容器の周壁
13 ヒートシール性樹脂層
14 ポリエステル樹脂層
15 印刷
16 積層フィルム
17 ポリエステル樹脂層
18 積層フィルム
19 インモールド容器の周壁
20 ヒートシール性樹脂層
21 ポリエステル樹脂層
22 ポリエステル樹脂層
23 ポリオレフィン樹脂層
24 印刷

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製容器の周壁の外周面に、内側にヒートシール性樹脂層、外側部に印刷を施したポリエステル樹脂層を有する積層フィルムを前記周壁と一体成形したことを特徴とする封入食品加熱用インモールド容器。
【請求項2】
樹脂製容器の周壁の外周面に、内側にヒートシール性樹脂層、外側部に印刷を施したポリオレフィン樹脂層と少なくとも一層のポリエステル樹脂層を有する積層フィルムを前記周壁と一体成形したことを特徴とする封入食品加熱用インモールド容器。
【請求項3】
樹脂製容器の周壁の外周面に、ポリエステル樹脂層の両側にポリオレフィン樹脂層を配した積層構造部を有する積層フィルムを前記周壁と一体成形したことを特徴とする封入食品加熱用インモールド容器。
【請求項4】
樹脂製容器の周壁の外周面に、内側にヒートシール性樹脂層、外側部に印刷面で接合した2層のポリエステル樹脂層を有する積層フィルムを前記周壁と一体成形したことを特徴とする封入食品加熱用インモールド容器。
【請求項5】
前記ポリオレフィン樹脂層は、ポリプロピレン(PP)系樹脂からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の封入食品加熱用インモールド容器。
【請求項6】
前記ヒートシール性樹脂層は、ポリプロピレン(PP)系樹脂からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の封入食品加熱用インモールド容器。
【請求項7】
前記ポリエステル樹脂層は、ポリエチレンテレフタレート(PET)系樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)系樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)系樹脂のいずれか一つからなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の封入食品加熱用インモールド容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−111276(P2006−111276A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−297859(P2004−297859)
【出願日】平成16年10月12日(2004.10.12)
【出願人】(000157887)岸本産業株式会社 (30)
【Fターム(参考)】