説明

封止構造体

【課題】挿入部材を被挿入部材に容易に組み付けることができるとともに、挿入部材及び被挿入部材の損傷を防止する封止構造体を提供する。
【解決手段】挿入部材2は、第1径大円柱部21と、第1径大円柱部21よりも外径が小さい第1径小円柱部22と、第1径大円柱部21と第1径小円柱部22との段差により形成される第1段差部23と、を有し、被挿入部材3は、内径が第1径大円柱部21の外径に対応する第2径大円筒部31と、内径が第1径小円柱部22の外径に対応する第2径小円筒部32と、第2径大円筒部31と第2径小円筒部32との段差により形成される第2段差部33と、を有し、第1径小円柱部22の外周面と、第1段差部23の外面と、第2径大円筒部31の内周面と、第2段差部33の内面と、によりOリング4を収容する収容領域が形成されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Oリングを用いて流体の漏れを防止する封止構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料電池車などに搭載され、内部に高圧の水素が充填される水素タンク(充填室体)から水素が漏れることを防止したり、油圧機器の往復運動部分から油が漏れることを防止したりするために、種々の封止構造体が開発されてきた。
例えば、水素タンクは外形が円柱状であり、当該水素タンクの一端には円筒状の口金部(被挿入部材)が形成され、当該口金部にバルブボディ(挿入部材)が挿入される。なお、口金部の内周面には雌ネジ部が形成され、バルブボディの外周面には雄ネジ部が形成されており、口金部とバルブボディとが螺合により組み付けられる。そして、口金部とバルブボディとの間には環状の収容領域が設けられ、当該収容領域に、水素の漏洩を防止するためのOリングが装着される。また、口金部とバルブボディとの隙間にOリングが食い込んで損傷することを防ぐために、前記収容領域内にバックアップリングが設けられること場合もある。
【0003】
特許文献1には、軸(挿入部材)又は軸孔(被挿入部材)のいずれか一方に環状の取付溝を設け、高圧側から圧力が作用した際に前記取付溝の低圧側の内壁面とバックアップリングの低圧側の端部との間に隙間を有するように形成された密封装置について記載されている。特許文献1に記載の密封装置によれば、シールリング(Oリング)の損傷を防止することができ、密封性能を良好に維持することができる。
【0004】
また、特許文献2には、互いに同心的に組み付けられた軸(挿入部材)とハウジング(被挿入部材)のうちの一方の部材に設けられた環状の取付溝内にシールリング(Oリング)と該シールリングを挟む2つのバックアップリングとを備えた密封装置について記載されている。そして、前記2つのバックアップリングの周面は、前記取付溝の両端部に設けられた溝テーパ部に対応するテーパ面で形成され、前記溝テーパ部に当接するように装着される。特許文献2に記載の密封装置によれば、バックアップリングにかかる軸方向押圧力を、径方向外向きに作用する力、及び、径方向内向きに作用する力に変換するにより、バックアップリングが軸とハウジングとの隙間を埋め、シールリングのはみ出しや損傷を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3543617号公報
【特許文献2】特開2002−161983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載の技術では、前記したように、挿入部材と被挿入部材のいずれか一方のみに環状の取付溝を設ける構成となっている。したがって、挿入部材を被挿入部材に挿入する際に、各部材同士が接触して損傷してしまう可能性があるという問題がある。
例えば、特許文献2に記載の密封装置(封止構造体)では、図7(a)に示すように、軸(挿入部材)8に環状の取付溝13が設けられ、当該取付溝13にOリング10と2つのバックアップリング11,12が装着され、ハウジング(被挿入部材)9に挿入されることにより組み付けられる構成となっている。
【0007】
一般的に、軸8とハウジング9との組み付けや製造時の誤差を考慮して、軸断面において、軸8の外径はハウジング9の内径よりもわずかに小さくなっている。しかしながら、軸8を挿入する際に、軸8の中心軸とハウジング9の中心軸とを完全に一致させ、ハウジング9に軸8が全く接触しないようにすることは容易ではない。
つまり、図7(b)に示すように、前記密封装置の軸8をハウジング9に取り付ける際、軸8の外周面とハウジング9の内周面とが接触する可能性が高くなる。図7(b)に示すように、軸8をハウジング9に挿入する際には、ハウジング9の内周面Sの部分と、軸8の外周面とが接触することにより、軸8の外周面及びハウジング9の内周面Sが損傷してしまう可能性が高い。そうすると、Oリング10が装着される収容領域F1のうちハウジング9の内周面に相当する部分も損傷されることになる。したがって、Oリング10による封止が十分に行われないため、流体の漏れが生じてしまうという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、挿入部材を被挿入部材に容易に組み付けることができるとともに、挿入部材及び被挿入部材の損傷を防止する封止構造体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための手段として、本発明は、外形が円柱状の挿入部材と、内部に流体が充填される充填室体と一体に形成され、前記挿入部材が挿入される円筒状の被挿入部材と、前記挿入部材と前記被挿入部材との間に設けられ、流体をシールするOリングと、を備え、前記挿入部材は、第1径大円柱部と、前記第1径大円柱部と一体に形成され、前記第1径大円柱部よりも外径が小さい第1径小円柱部と、前記第1径大円柱部と前記第1径小円柱部との段差により形成される第1段差部と、を有し、前記被挿入部材は、内径が前記1径大円柱部の外径に対応する第2径大円筒部と、前記第2径大円筒部と一体に形成され、内径が前記第1径小円柱部の外径に対応する第2径小円筒部と、前記第2径大円筒部と前記第2径小円筒部との段差により形成される第2段差部と、を有し、前記挿入部材の前記第1径小円柱部の端部と、前記被挿入部材の前記第2径大円筒部の端部とを対向させた状態から、前記挿入部材を前記被挿入部材に挿入して同心的に組み付けた状態において、前記第1径小円柱部の外周面と、前記第1段差部の外面と、前記第2径大円筒部の内周面と、前記第2段差部の内面と、により前記Oリングを収容する収容領域が形成されることを特徴とする封止構造体である。
【0010】
このような構成によれば、挿入部材を被挿入部材に挿入する際に、まず、挿入部材の第1径小円柱部が、被挿入部材の第2径大円筒部の内周面で囲まれた領域に入る。ここで、第1径小円柱部の外径(後記で説明する外径L22)よりも第2径大円筒部の内径(後記で説明する内径L31)のほうが大きいため、挿入部材の第1径小円柱部を被挿入部材の第2径大円筒部の内周面に接触させることなく挿入することができる。つまり、第1径小円柱部の外周面と、第2径大円筒部の内周面とが損傷しにくくなる。
【0011】
そして、前記の状態から挿入部材を被挿入部材にさらに挿入すると、Oリングが、挿入部材の第1径小円柱部の外周面と、被挿入部材の第2径大円筒部の内周面との間の幅に規制されて弾性変形する。このとき、第1径小円柱部の外周面が径方向外向きにOリングを押圧する力の大きさは、Oリングと第1径小円柱部との環状の接触面において均一となる。同様に、第2径大円筒部の内周面が径方向内向きにOリングを押圧する力の大きさは、Oリングと第2径大円筒部との環状の接触面において均一となる。したがって、Oリングが挿入部材を被挿入部材に挿入する際のガイドの役割を果たすため、挿入部材を被挿入部材に容易に組み付けることができるとともに、挿入部材の外周面及び被挿入部材の内周面の損傷を防止することができる。
【0012】
さらに、挿入部材が被挿入部材に組み付けられた状態で、第1径小円柱部の外周面と、第1段差部の外面と、第2径大円筒部の内周面と、第2段差部の内面と、により収容領域が形成され、当該収容領域にはOリングが装着された状態となる。ここで、前記したように、挿入部材の外周面及び被挿入部材の内周面の損傷が防止されるため、収容領域において、Oリングが挿入部材の外周面を径方向内向きに好適に押圧するとともに、被挿入部材の内周面を径方向外向きに好適に押圧することとなる。したがって、Oリングにより挿入部材と前記被挿入部材との間がシールされ、充填室からの圧力変動に対して流体の漏れを封止することができる。
【0013】
また、前記封止構造体において、前記収容領域内で前記挿入部材側に配置され、軸方向における前記Oリングの移動を規制する第1バックアプリングと、前記収容領域内で前記被挿入部材側に配置され、軸方向における前記Oリングの移動を規制する第2バックアップリングと、を備え、前記第1段差部の外面に対する前記第1バックアップリングの対向面は、前記第1段差部の外面に対応するように形成され、前記第2段差部の内面に対する前記第2バックアップリングの対向面は、前記第2段差部の内面に対応するように形成されていることが好ましい。
【0014】
このような構成によれば、第1段差部の外面に対する第1バックアップリングの対向面は第1段差部の外面に対応するように形成されるので、被挿入部材側が高圧になった場合に、第1バックアプリングが第1段差部に密着する。また、第2段差部の内面に対する第2バックアップリングの対向面は第2段差部の内面に対応するように形成されるので、挿入部材側が高圧になった場合に、第2バックアプリングが第2段差部に密着する。したがって、交番圧力が加わった場合にも、各バックアップリングが前記交番圧力に対応して変形することにより、挿入部材と被挿入部材との隙間へのOリングの食い込みを防止することができる。つまり、Oリングの損傷が防止されるため、流体の漏れをより好適に封止することができる。
【0015】
また、前記封止構造体において、前記第1段差部の外面は、前記被挿入部材への組み付け方向に向けて次第に径小となるように傾斜した第1テーパ面を有し、前記第2段差部の内面は、前記組み付け方向に向けて次第に径小となるように傾斜した第2テーパ面を有することが好ましい。
【0016】
このような構成によれば、被挿入部材側が高圧となった場合に、第1バックアップリングが第1テーパ面に沿って変形し、さらに、第1テーパ面を径方向内向きに押圧するとともに、第2径大円筒部の内周面を径方向外向きに押圧する。したがって、第1バックアップリングが、当該第1バックアップリングと挿入部材の外周面との隙間、及び、第1バックアップリングと被挿入部材の内周面との隙間を封止することとなる。これによって、Oリングが前記隙間に食い込んで損傷することを防止することができるため、流体の漏れをより好適に封止することができる。また、挿入部材側が高圧となった場合における、第2バックアップリングの作用についても前記と同様のことがいえる。
【0017】
また、前記封止構造体において、前記第1段差部は、前記第1テーパ面から径方向外向きに延在する第1外壁面を有し、前記第2段差部は、前記第2テーパ面から径方向内向きに延在する第2内壁面を有し、前記挿入部材を前記被挿入部材に挿入して同心的に組み付けた状態において、前記第1バックアップリングと前記第1外壁面との間、及び、前記第2バックアップリングと前記第2内壁面との間に隙間が設けられることが好ましい。
【0018】
このような構成によれば、第1バックアップリングと第1外壁面との間に隙間が形成さるため、被挿入部材側が高圧となった場合に、第1バックアップリングは挿入部材側に、前記圧力に応じた所定量だけ移動することとなる。そして、第1バックアップリングの前記移動は、第1テーパ面の形状(被挿入部材への組み付け方向に向けて次第に径小となるように傾斜した形状)により規制される。そして、第1バックアップリングが第2径大円筒部の内周面及び第1テーパ面と密着することにより、Oリングの損傷を防止し、封止性能をさらに高めることができる。また、第2バックアップリングについても前記と同様のことがいえる。
【0019】
また、前記封止構造体において、軸を含む平面で切断した場合の前記Oリングの断面積、前記第1バックアップリングの断面積、及び前記第2バックアップリングの断面積と、前記第1径小円柱部の外径と、前記第2径大円筒部の内径と、前記収容領域の軸方向の長さとを、前記Oリングの充填率が所定値以上となるように設定されていることが好ましい。
【0020】
このような構成によれば、ガス透過係数が比較的高いOリングを使用した場合でも、Oリングの充填率が所定値以上となるように設定されているため、Oリングと第1バックアップリングとの間、又は、Oリング第2バックアップリングとの間に透過ガスが滞留することを防止することができる。したがって、前記透過ガスの圧力によりOリングが低圧側に移動してはみ出し、損傷してしまうことを防止することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、挿入部材を被挿入部材に容易に組み付けることができるとともに、挿入部材及び被挿入部材の損傷を防止する封止構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施形態に係る封止構造体の分解斜視図である。
【図2】本実施形態に係る封止構造体を分解した状態で、中心軸を含む平面により切断した場合の断面図である。
【図3】本実施形態に係る封止構造体について、中心軸を通る平面により切断した場合の端面図であり、挿入部材の径小円柱部が、被挿入部材の径大円筒部の内周面により囲まれる空間に入るときの状態を示している。
【図4】本実施形態に係る封止構造体について、中心軸を通る平面により切断した場合の端面図であり、(a)は、挿入部材に装着されたOリングが被挿入部材の径大円筒部の端部に接触している状態を示し、(b)は、挿入部材が被挿入部材に組み付けられた状態を示している。
【図5】(a)は、図4(b)に示す領域Tの部分拡大図であり、(b)は、挿入部材側から圧力が加わった場合の状態を示す、領域Tの部分拡大図である。
【図6】本発明の変形例を示す、領域Tに相当する箇所の部分拡大図であり、(a)は、バックアップリングの断面を台形とし、挿入部材又は被挿入部材に密着する構成とした場合であり、(b)は、バックアップリングの断面を三角形とした場合を示し、(c)は、バックアップリングの断面を長方形とした場合を示し、(d)は、バックアップリングを装着せずにOリングのみで封止する場合を示している。
【図7】従来の封止構造体を示す端面図であり、(a)は、挿入部材と被挿入部材とが組み付けられた状態を示し、(b)は、挿入部材が被挿入部材に組み付けられる際の状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態について、図1〜図6を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。また、図1〜図3では、各部材について詳細に説明するため、挿入部材2及び被挿入部材3に対するOリング4、バックアップリング5,6の寸法が、実際に使用されるものよりも大きめに記載している。
【0024】
≪封止構造体の構成≫
図1は、本実施形態に係る封止構造体の分解斜視図であり、図2は、中心軸を含む平面により切断した場合の断面図である。図1に示すように、封止構造体1は、挿入部材2と、被挿入部材3と、Oリング4と、第1バックアップリング5と、第2バックアップリング6と、を備えている。
封止構造体1は、例えば、水素と酸素とを電極反応させることにより発電する燃料電池(図示せず)に対して、水素を供給する水素タンク(タンク室体3a:図1参照))の口金部(被挿入部材3)、及び、当該口金部に螺合されるバルブボディ(挿入部材2)として、これらを組み合わせた際の隙間を封止するために設けられるが、これに限らない。
なお、以下の記載では、挿入部材2が被挿入部材3に同心的に組み付けられた状態における中心軸を、「中心軸X」と称する。
【0025】
<挿入部材>
図1に示すように、挿入部材2は、径大円柱部21と、径小円柱部22と、段差部23と、を有している。
径大円柱部21(第1径大円柱部)は外形が円柱形状を呈し、外径L21(図2参照)となっている。そして、径大円柱部21の端部(組み付けの際に、被挿入部材2と対向する端部とは逆側の端部)には、挿入部材2を被挿入部材3と螺合させるための雄ネジ部24が設けられている。
また、径小円柱部22(第1径小円柱部)は外形が円柱形状を呈し、径大円柱部21と一体に形成され、外径L22(図2参照)となっている。ここで、径大円柱部21の外径L21は、径小円柱部22の外径L22よりも大きくなるように設計されている。
【0026】
段差部23(第1段差部)は、径大円柱部21と径小円柱部22との間で、これらの段差により形成されている。段差部23の外面は、テーパ面23aと、外壁面23bと、を有している。
テーパ面23a(第1テーパ面)は、被挿入部材3への組み付け方向に向けて(図1では左向きである挿入方向に)次第に径小となるように傾斜している。また、外壁面23b(第1外壁面)は、テーパ面23から径方向外向きに延在した円環状の面となっている。
【0027】
ちなみに図1、図2では、簡単のため、挿入部材2は、外部と連通する孔などを有しないものとして記載しているが、これに限らない。
例えば、挿入部材2が、燃料電池(図示せず)に水素を供給する水素タンク(タンク室体3a)の口金部(被挿入部材3)を塞ぐバルブボディとして機能する場合には、次のような構成が追加されることとなる。すなわちこのような場合、挿入部材2には、ソレノイドを用いた電磁弁(図示せず)や、外部から水素タンクに水素を充填する、又は、水素タンクから燃料電池に水素を供給するための水素流路(図示せず)が設けられる。
【0028】
<被挿入部材>
図1に示すように、被挿入部材3は内部に流体が充填されるタンク室体3a(充填室体)と一体に形成されており、径大円筒部31と、径小円筒部32と、段差部33と、を有している。ちなみに、タンク室体3a内の圧力は、流体の充填時には高圧となり、流体の放出時には低圧となる。したがって、挿入部材2と被挿入部材3とを組み付けた際に形成される収容領域Fにおいては、流体の充填時にはタンク室体3aと一体に形成されている被挿入部材3側が相対的に高圧となり、流体の放出時には挿入部材2側が相対的に高圧となるため、いわゆる交番圧力がかかることとなる。なお、収容領域Fについては後記する。
【0029】
径大円筒部31(第1径大円筒部)は円筒形状を呈し、内径L31(図2参照)となっている。ここで、内径L31は、挿入部材2の径大円柱部21の外径L21に対応する(L31≒L21)ように設計されている。ちなみに、挿入部材2と被挿入部材3とを組み付ける際の容易さや製造時の誤差などを考慮して、径大円筒部31の内径L31は径大円柱部21の外径L21よりも僅かに大きくなっている。そして、径大円筒部31の端部(組み付けの際に、挿入部材2と対向する側の端部)には、被挿入部材3を挿入部材2と螺合させるための雌ネジ部34が設けられている。
【0030】
また、径小円筒部32(第1径小円筒部)は円筒形状を呈し、径大円筒部31と一体に形成され、内径L32(図2参照)となっている。ここで、内径L32は、挿入部材2の径小円柱部22の外径L22に対応する(L32≒L22)ように設計されている。ちなみに、挿入部材2と被挿入部材3とを組み付ける際の容易さや製造時の誤差などを考慮して、径小円筒部32の内径L32は径小円柱部22の外径L22よりも僅かに大きくなっている。
したがって、径大円柱部21の外周面と径大円筒部31の内周面との間、及び、径小円柱部22の外周面と径小円筒部32の内周面との間には、わずかな環状の隙間(図5(a)の隙間Y1,Y2参照)が生じることとなる。
【0031】
段差部33(第2段差部)は、径大円筒部31と径小円筒部32との間でこれらの段差により形成されている。段差部33の内面は、テーパ面33aと、内壁面33bと、を有している。
テーパ面33a(第2テーパ面)は、挿入部材2が組み付けられる方向に向けて(図1では左向きに)次第に径小となるように傾斜している。また、内壁面33b(第2内壁面)は、テーパ面33aから径方向内向きに延在した円環状の面となっている。
【0032】
<Oリング>
図1に示すように、Oリング4は、外部から押圧されていない状態においては中心軸Xを含む平面で切断した場合の断面が円形のリング状であり、ゴム状の弾性材料からなる。
Oリング4の外径L42(図2参照)は、挿入部材2の径大円柱部21の外径L21よりもわずかに大きくなるように設計されている(図2参照)。また、Oリング4の内径L41は、挿入部材2の径小円柱部22の外径L22よりもわずかに小さくなるように設計されている(図2参照)。
すなわち、径大円柱部21の外径L21と、径小円柱部22の外径L22との差(L21−L22)は、Oリング4の断面円の直径(L42−L41)よりも小さくなっている。これにより、Oリング4は、挿入部材2と被挿入部材3とが組み付けられた状態において、径小円柱部22の外周面を径方向内向きに押圧するとともに、径大円筒部33の内周面を径方向外向きに押圧するので、挿入部材2と被挿入部材3との隙間を良好にシールすることができる。
【0033】
<第1バックアップリング>
図2に示すように、第1バックアップリング5は無端リングであり、側断面(中心軸Xを含む平面で切断した場合の断面)が台形となっている。また、第1バックアップリング5は、その内側(中心軸Xに向かう側)に斜面51を有している。
【0034】
第1バックアップリング5は、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂、硬質ゴム、軽金属などの材料で形成される。このように、第1バックアップリング5は、比較的硬質の材料で形成される。なお、バックアップリングを硬質バックアップリングと軟質バックアップリングの二重構造とする必要はない。なぜなら後記するように、組み付け時において、バックアップリング5の孔に挿入部材2を貫通させることによりバックアップリング5を変形させることなく挿入部材2に装着することができるからである。
【0035】
仮に、バックアップリングが硬質の有端バックアップリングであった場合には、当該有端バックアップリングの切れ目にOリング4が食い込んで損傷してしまうことを防止するために、Oリング4側に軟質のバックアップリングを装着する必要が生じる。本実施形態では、前記のようにバックアップリング6として無端バックアップリングを使用することができるので、構造が簡単であるとともに、コストを削減することが可能となる。
なお、バックアップリング6についても前記と同様のことがいえる。
【0036】
第1バックアプリング5の外径L52は、挿入部材2の径大円柱部21の外径L21と略同一であって、被挿入部材3の径大円筒部31の内径L31と略同一である(図2参照)。また、第1バックアップリング5の環状の斜面51のうち、中心軸Xに最も近い部分である円の直径L51は、挿入部材2の径小円柱部22の外径L22と略同一である。
【0037】
また、第1バックアップリング5の、挿入側(図2では右側)から見た場合の面(環状の平面)の径方向の長さL53(図2参照)は、挿入部材1の外壁面23bの径方向の長さL23よりも大きくなるように設計されている。
これによって、挿入部材2が被挿入部材3に組み付けられた場合に、第1バックアップリング5の挿入部材2側の端部が、挿入部材2の外壁面23bに当接する前にテーパ面23aに当接することとなるため、挿入部材2の外壁面23bとの間に隙間が形成されることとなる(図5(a)の距離L72参照)。
【0038】
また、挿入部材2の段差部23の外面に対する第1バックアップリング5の対向面は、段差部23の前記外面に対応するように形成されている。
すなわち、第1バックアップリング5を挿入側(図2では右側)から見た場合の面(環状の平面)と、斜面51(図2参照)とがなす角度θ5(図5(a)参照)と、挿入部材2の径小円柱部22からテーパ面23aが開いている角度θ2との和が90°となるように設計されている(θ2+θ5=90°)。
これにより、挿入部材2と被挿入部材3とが組み付けられた状態において、充填室体3aが高圧となった場合に、バックアップリング5がOリング4を軸方向に押圧され、Oリング4が挿入部材2の外周面側、又は、被挿入部材3の内周面側に偏って変形することを防止することができる。
なお、被挿入部材3の段差部33の外面と、第2バックアップリング6との対向面との関係についても前記と同様のことがいえる。
【0039】
<第2バックアップリング>
図2に示すように、第2バックアップリング6は無端リングであり、側断面が台形のとなっている。また、第2バックアップリング6は、その外側(中心軸Xから遠い側)に斜面61を有している。なお、第2バックアップリング6は、前記した第1バックアップリング5の場合と同様に、比較的硬質のポリアミド樹脂などで形成される。
【0040】
第2バックアップリング6の環状の斜面61(図2参照)のうち、中心軸Xから最も遠い部分である円の直径L62は、被挿入部材3の径大円筒部31の内径L31と略同一である。また、第2バックアップリング6の内径L61は、被挿入部材3の径小円筒部32の内径L32と略同一あって、挿入部材2の径小円柱部21の外径L21と略同一であるである。
【0041】
また、第2バックアップリング6の、被挿入側(図2では左側)から見た場合の面(環状の平面)の径方向の長さL63(図2参照)は、被挿入部材3の内壁面33bの径方向の長さL33よりも大きくなるように設計されている。
これによって、被挿入部材3が挿入部材2に組み付けられた場合に、第2バックアップリング6の被挿入部材3側の端部が、被挿入部材2の外壁面33bに当接する前にテーパ面33aに当接することとなるため、第2バックアップリング6の被挿入部材3側の端部と、被挿入部材3の外壁面33bとの間に隙間が形成されることとなる(図5(a)の距離L71参照)。
【0042】
また、被挿入部材3の段差部33の内面に対する第2バックアップリング6の対向面は、段差部33の前記内面に対応するように形成されている。
すなわち、第2バックアップリング6を被挿入側(図2では左側)から見た面(環状の平面)と、斜面61(図2参照)とがなす角度θ6(図5(a)参照)と、被挿入部材2の径大円筒部31からテーパ面33aが狭くなっている角度θ3との和が90°となるように設計されている(θ3+θ6=90°)。
【0043】
ちなみに、前記の条件が満たされる限り、図5(a)に示す角度θ5と角度θ6の大きさは同じであってもよいし、互いに異なる値をとってもよい。例えば、角度θ5=45°(この場合、θ2=90°−θ5=45°)とし、角度θ6=60°(この場合、θ3=90°−θ6=30°)としてもよい。
【0044】
≪挿入部材と被挿入部材との組付け手順≫
(1.Oリング及び各バックアップリングの装着)
挿入部材2を被挿入部材3に挿入する前に、まず、図3に示すように、第1バックアップリング5の孔に挿入部材2を貫通させて挿入する。そして、第1バックアップリング5の斜面51(図2参照)を挿入部材2のテーパ面23a(図2参照)に当接させる。このとき、前記したように、第1バックアップリング5の挿入部材2側の端部と、挿入部材2の壁面23bとは隙間を有している(図5(a)の距離L72参照)。
【0045】
また、前記したように、図5(a)に示す角度θ2と角度θ5との和は90°となっている。したがって、第1バックアップリング5の斜面51を、挿入部材2のテーパ面23aに当接させた状態において、挿入部材2側から見たバックアップリング5の上面、底面、及び挿入部材2の外壁面23bは平行となる。
【0046】
次に、Oリング4の孔に挿入部材3を貫通させて挿入する。前記したように、Oリング4の内径L41は、挿入部材2の径小円柱部22の内径L22よりもわずかに小さくなっている(図2参照)。したがって、Oリング4に挿入部材2が挿入されると(図3参照)、Oリング4が径小円柱部22の外周面を径方向内向きに押圧することによりOリング4自身を挿入部材2に装着することができるとともに、第1バックアップリング5が挿入部材2から外れることを防止することができる。
【0047】
ちなみに、前記では、第1バックアップリング5の斜面51を挿入部材2のテーパ面23aに当接させることとしたが、これに限らない。なぜなら、第1バックアップリング5の斜面51と挿入部材2のテーパ面23aとが離れた状態であっても、挿入部材2を被挿入部材3に挿入する過程で第1バックアップリング5がOリング4に押されて、斜面51とテーパ面23aとが当接することになるからである。
【0048】
一方、被挿入部材3には、図3に示すように、第2バックアップリング6を被挿入部材3に取り付ける。すなわち、第2バックアップリングの斜面61(図2参照)が被挿入部材3のテーパ面33a(図2参照)に当接するように、第2バックアップリング6を移動させる。このとき、前記したように、第2バックアップリング6の被挿入部材3側の端部と、被挿入部材3の壁面33bとは隙間を有している(図5(a)の距離L71参照)。
【0049】
また、前記したように、図5(a)に示す角度θ3と角度θ6との和は90°となっている。したがって、第2バックアップリング6の斜面61を、被挿入部材4のテーパ面33aに当接させた状態において、被挿入部材2側から見た第2バックアップリング6の上面、底面、及び被挿入部材3の内壁面33bは平行となっている。
【0050】
(2.挿入部材と被挿入部材との組み付け)
前記したように、挿入部材2の径小円柱部22(図2参照)の外径L22は、被挿入部材3の径大円筒部31(図2参照)の内径L31よりも小さくなるように設計されている。したがって、図3に示すように、挿入部材2の径小円柱部22が、被挿入部材3の径大円筒部31の内周面によって囲まれる空間に入るときには、挿入部材2と被挿入部材3との間には、径方向において距離(L31−L22)の余裕ができる。
つまり、図3の状態で、挿入部材2と被挿入部材3の位置関係が多少ずれて、各部剤の中心軸が一致しなくとも、挿入部材2と被挿入部材3とが接触する虞は極めて小さい。つまり、挿入部材2の径小円柱部22の外周面と、被挿入部材3の径大円筒部31の内周面とが損傷しにくくなる。
【0051】
そして、図3の状態からさらに挿入部材2を被挿入部材3に対して挿入していくと、図4(a)に示す状態となる。前記したように、Oリング4の外径L42は、被挿入部材3の径大円筒部31の内径L31よりもわずかに大きくなるように設計されている(図2参照)。したがって、図4(a)に示すように、挿入部材2に装着されたOリング4と、被挿入部材3の径大円筒部31の端部とが接触することとなる。
【0052】
また、前記したように、径大円柱部21の外径L21と、径小円柱部22の外径L22との差(L21−L22)は、Oリング4の断面円の直径(L42−L41)よりも小さくなっている(図2参照)。
したがって、図4(a)の状態から、挿入部材2を被挿入部材3に挿入していくと、Oリング4は、挿入部材2の径小円柱部22の外周面と、被挿入部材3の径大円筒部31の内周面との間隔に規制されて押圧され、弾性変形する。このとき、挿入部材2の径小円柱部22の外周面が、径方向外向きにOリング4を押圧する力の大きさは、Oリング4と径小円柱部22との接触面(環状の接触面)において均一となる。同様に、被挿入部材3の径大円筒部31が径方向内向きにOリング4を押圧する力の大きさは、Oリング4と径大円筒部31との接触面(環状の接触面)において均一となる。
したがって、図4(a)に示す状態から、挿入部材2をさらに被挿入部材3に挿入していく際に、挿入部材2の中心軸と被挿入部材3の中心軸とがずれにくくなるとともに、Oリング4がガイドの役割を果たすこととなる。
【0053】
ちなみに、図3に示すように、径小円柱部21の軸方向の長さL24と、段差部23の軸方向の長さL25との和(L24+L25)は、径大円筒部31の軸方向の長さL34と、段差部33の軸方向の長さL35との和(L34+L35)よりも小さいほうが好ましい。
この場合、挿入部材2の径小円柱部22の端部が、被挿入部材3の径小円筒部32の挿入側の端部に到達する前に、径大円柱部21(図2参照)の被挿入部材3側の端部が、径大円筒部31の内周面によって囲まれる空間内に入る。
【0054】
ここで、前記したように、挿入部材2の径大円柱部21の外径L21と、被挿入部材3の径大円筒部の内径L31とは略同一である。そうすると、挿入部材2の径小円柱部22と、被挿入部材3の径大円筒部31との間をOリング4がガイドしつつ、挿入部材2が被挿入部材3に組み付けられていく。そして、前記のように、径大円柱部21(図2参照)の被挿入部材3側の端部が、径大円筒部31の内周面によって囲まれる空間内に入った時点で、挿入部材2の中心軸と被挿入部材3の中心軸とが略一致することとなる。
このように、中心軸が略一致されてセンタリングされつつ、さらに、挿入部材2を被挿入部材3に挿入していくと、挿入部材2の径小円柱部22の端部が、被挿入部材3の径小円筒部32に囲まれる空間に入る。このとき、前記のように挿入部材2と被挿入部材3とがセンタリングされているため、径小円柱部22の外周面が、径小円筒部32の内周面を損傷することなくスムーズに組み付けを行うことができる。
【0055】
そして、挿入部材2の径大円柱部21に設けられた雄ネジ部24と、被挿入部材3の径大円筒部31に設けられた雌ネジ部34とを螺合することにより組み付けると、図4(b)に示す状態となる。
図4(b)に示すように、挿入部材2が被挿入部材3に組み付けられた状態において、径小円柱部22の外周面と、段差部23の外面と、径大円筒部31の内周面と、段差部33の内面と、によりOリング4を収容する収容領域Fが形成される。そして、当該収容領域F内において、第1バックアップリング5と第2バックアップリング6との間にOリング4が装着されることとなる。
【0056】
≪Oリングの充填率≫
図5(a)は、図4(b)に示す領域Tの部分拡大図である。
Oリング4の充填率α[%]は、以下の式(1)で求められる。なお、式(1)において、S1(図5(a)参照)は、挿入部材2と被挿入部材3とを組み付けた状態で、中心軸Xを含む平面で切断した場合の収容領域Fの面積である。また、S5は第1バックアップリング5の断面である台形の面積であり、S6は第2バックアップリング6の断面である台形の面積である。また、Rは外部から押圧されていない状態において、Oリング4を中心軸Xで切断した場合の断面円の半径である。
α=(πR/(S1−S5−S6))×100 ・・・式(1)
【0057】
本実施形態に係る封止構造体1では、Oリング4の充填率αが所定値(例えば、60%)以上となるように、中心軸Xを含む平面で切断した場合のOリング4の断面積(πR)、第1バックアップリング5の断面積S5、及び第2バックアップリング6の断面積S6と、第1径小円柱部22の外径L22と、第2径大円筒部31の内径L31と、収容領域Fの軸方向の長さL73(図5(a)参照)とを設定する。
【0058】
≪Oリング及び各バックアップリングの機能≫
図5(a)に示すように、径大円柱部21の外周面と径大円筒部31の内周面との間、及び、径小円柱部22の外周面と径小円筒部32の内周面との間には、わずかな環状の隙間Y1,Y2が存在する。
また、図5(a)に示すように、第1バックアップリング5の挿入部材2側の端部と、挿入部材2の外壁面23bとは所定距離L72を有し、第2バックアップリング6の被挿入部材3側の端部と、被挿入部材3の内壁面33bとは所定距離L71を有する。
また、前記したように、図5(a)に示すθ2とθ5との和、及び、θ3とθ6との和は、それぞれ90°となっている。
【0059】
例えば、図5(b)に示すように、充填室体3a内の圧力が相対的に低圧となって挿入部材2側から圧力Pが加わった場合には、Oリング4は高圧である挿入部材2側から、低圧である被挿入部材3側に移動し、第2バックアップリング6のOリング4側の端面に当接する。さらに、第2バックアップリング6がOリング4から押圧されると、第2バックアップリング6は被挿入部材3の方(低圧側)に、その圧力に応じて所定量だけ移動することとなる。第2バックアップリングの前記移動は、テーパ面33aの形状(挿入部材2が組み付けられる方向に向けて次第に径小となるように傾斜した形状)により規制される。
【0060】
つまり、第2バックアップリング6の斜面61(図2参照)がテーパ面33aから径方向内向きに押圧されるとともに、第2バックアップリング6の内面が径小円柱部22の外周面から径方向外向きに押圧されることとなる。したがって、第2バックアップリング6が、径小円柱部22の外周面、及び、テーパ面33aに密着することとなる。
なお、前記では、挿入部材2側から圧力Pが加わった場合について説明したが、充填室体3a内の圧力が相対的に高圧となって被挿入部材3側から圧力が加わった場合には、第2バックアップリング5が挿入部材2の方(低圧側)に、その圧力に応じて移動する。この場合の説明は前記と同様であるから省略する。
【0061】
≪効果≫
このような本実施形態に係る封止構造体1によれば、次の効果が得られる。
すなわち、挿入部材2の径小円柱部22の外径よりも被挿入部材3の径大円筒部31の内径のほうが大きいため、挿入部材2を被挿入部材3に挿入する際に、挿入部材2の径小円柱部22を被挿入部材3の径大円柱部31に接触(損傷)させることなく、容易に挿入することができる。
また、前記の状態から、挿入部材2を被挿入部材3にさらに挿入すると、被挿入部材3の径大円柱部31の端部が、挿入部材2に装着されているOリング4に接触する。ここで、Oリング4は弾性部材で形成されているため、Oリング4が被挿入部材3の径大円筒部31の端部及び内周面に接触しても、それらを損傷することがない。
【0062】
そして、前記の状態から、さらに挿入部材2を被挿入部材3に挿入すると、Oリング4が径小円柱部22の外周面と径大円筒部31の内周面との間の幅に規制されて弾性変形しつつ、挿入部材2の中心軸と被挿入部材3の中心軸とを一致させるとともに、挿入する際のガイドの役割を果たす。したがって、挿入部材2を被挿入部材3に容易に組み付けることができるとともに、挿入部材2及び被挿入部材3の損傷を防止することができる。
【0063】
さらに、最終的に挿入部材が被挿入部材3に組み付けられた状態において、収容領域Fが形成される。当該収容領域Fには各バックアップリング5,6がOリング4を挟んで位置するため、収容領域Fに交番圧力が加わった場合でも、Oリング4を好適に保護するとともに、封止性能を高めることができる。
【0064】
段差部23の外面に対する第1バックアップリング5の対向面は、段差部23の外面に対応するように形成される。したがって、被挿入部材6側が高圧になった場合に、第1バックアプリング5が段差部23に密着する。同様に、段差部33の内面に対する第2バックアップリング6の対向面は段差部33の内面に対応するように形成されるので、挿入部材5側が高圧になった場合に、第2バックアプリング6が段差部33に密着する。したがって、交番圧力が加わった場合にも、挿入部材2と被挿入部材6との隙間Y1,Y2へのOリング4の食い込みを防止することができる。つまり、Oリング4の損傷が防止されるため、流体の漏れをより好適に封止することができる。
【0065】
また、例えば、被挿入部材3側が高圧となった場合に、第1バックアップリング5がテーパ面23aに沿って変形し、さらに、テーパ面23aを径方向内向きに押圧するとともに、径大円筒部31の内周面を径方向外向きに押圧する。したがって、第1バックアップリング5が、当該第1バックアップリング5と挿入部材2の外周面との隙間、及び、第1バックアップリング5と被挿入部材3の内周面との隙間を封止することとなる。これによって、Oリング4が前記隙間に食い込んで損傷することを防止することができるため、流体の漏れをより好適に封止することができる。
なお、挿入部材2側が高圧となった場合における、第2バックアップリングの作用についても前記と同様のことがいえる
【0066】
また、第1バックアップリング5の挿入部材2側の端面と、内壁面23bとが所定距離を有するように形成されているため、被挿入部材3側(高圧側)から圧力がかかった場合に、第1バックアップリング5は挿入部材2側(低圧側)に、その圧力に応じて移動することとなる。そして、第1バックアップリング5の前記移動はテーパ面23aの形状により規制され、第1バックアップリング5がテーパ面23a及び径大円筒部31の内周面と密着することにより、封止性能をさらに高めることができる。なお、第2バックアップリング6についても同様のことがいえる。
【0067】
また、挿入部材2を第1バックアップリング5の孔に貫通させて装着する際には、挿入部材2の径小円柱部22の外周面に沿って移動させ、テーパ面23aに向けて第1バックアップリング5をそのまま差し込んで装着できる。これは、Oリング4の装着についても同様である。また、第2バックアップリング6を挿入部材3に装着する際には、被挿入部材3の径大円筒部31の内周面に沿って移動させ、テーパ面33aに向けて第2バックップリング6をそのまま差し込んで装着できる。
【0068】
したがって、本実施形態に係る封止構造体1によれば、Oリング4及びバックアップリング5,6を容易に装着することができる。また、組み付けのために、バックアップリング5,6として有端のバックアップリングを使用する必要はなく、無端のバックアップリングを使用することができる。
仮に、有端のバックアップリングを用いて高圧ガスの封止を行う場合には、その切断部からのガス漏れを防ぐとともに、Oリング4の損傷を防ぐため、硬質材の有端バックアップリングと軟質材の有端バックアップリングとを使用した二重のバックアップリングとする必要が生じる。この場合には、封止構造体が複雑化するとともにコストがかかってしまう。
一方、本実施形態に係る封止構造体1によれば、前記のように無端のバックアップリング5,6を使用できるため、二重のバックアップリングとする必要がない。したがって、簡単な構成で高い封止性能を発揮することができるとともに、封止構造体の製造コストを削減することができる。
【0069】
また、本実施形態に係る封止構造体1では、Oリング4の充填率αが所定値(例えば、60%)以上となるように構成されている。したがって、ガス透過係数が比較的高いOリングを使用した場合でも、Oリング4と第1バックアップリング5との間、又は、Oリング4と第2バックアップリング6との間に透過ガスが滞留することを防止することができる。つまり、前記透過ガスの圧力によりOリング4が低圧側に移動されてはみ出し、損傷してしまうことを防止することができる。
また、圧力変化に伴うOリング4の変形量を緩和させ、封止に必要となるOリング4の弾性力を十分に保つことができるとともに、Oリング4の寿命を長くすることができる。
さらに、Oリング4の充填率αを所定値以上とすることにより、Oリング4の材質の適用範囲を広げることができる。
【0070】
また、前記したようにOリング4の充填率αが所定値以上であるから、挿入部材2が被挿入部材3に組み付けられた状態において、Oリング4は元の形(図1参照)に戻ろうとする力を十分に有している。したがって、バックアップリング5,6として、クッションの役割をする軟質のバックアップリングを用いる必要がなく、比較的に硬質のバックアップリングを用いることができる。
そして、当該硬質のバックアップリング5,6は、収容領域Fにかかる圧力に伴ってそれぞれテーパ面23a,33aを摺動しつつ密着するため(図5(b)参照)、流体が隙間Y1,Y2(図5(a)参照)から漏れることを確実に防止することができる。
【0071】
≪変形例≫
以上、本発明に係る封止構造体について、前記実施形態により説明したが、本発明の趣旨はこれらの記載に限定されるものではなく、種々の変更などを行うことができる。
例えば、図6(a)に示すように、第1バックアップリング5Aの挿入部材2A側の端面と外壁面23b(図2参照)との間、及び、第2バックアップリング6Aの被挿入部材3A側の端面と内壁面33b(図2参照)との間に隙間を設けない構成としてもよい。
また、図6(b)に示すように、第1バックアップリング5B及び第2バックアップリング6Bの断面を直角三角形とし、各直角三角形の斜辺が挿入部材2に形成されたテーパ面と、被挿入部材3に形成されたテーパ面に、それぞれ当接する構成としてもよい。
【0072】
また、図6(c)に示すように、挿入部材2及び被挿入部材3にそれぞれテーパ面を設けず、段差側面23C,33Cを、それぞれ中心軸Xと垂直な平面に平行となるように構成し、第1バックアップリング5C及び第2バックアップリング6Cの断面を長方形として、それぞれ段差側面23C,33Cに当接する構成としてもよい。
図6(a)〜(c)の場合でも、挿入部材を被挿入部材に容易に組み付けることができるとともに、挿入部材及び被挿入部材の損傷を防止することができる。また、Oリングを挟んで2つのバックアプリングが存在するため、交番圧力がかかっても適切に封止するとともに、Oリングの損傷を防止することが可能である。
【0073】
また、図6(d)に示すように、挿入部材2及び被挿入部材3にそれぞれテーパ面を設けず、段差側面23D,33Dを、それぞれ中心軸Xと垂直な平面に平行となるように構成し、Oリング4Dのみを装着する構成としてもよい。図6(d)の場合でも、挿入部材2を被挿入部材3に容易に組み付けることができるとともに、挿入部材2及び被挿入部材3の損傷を防止することができる。
なお、図5(a)、図6(a)〜(d)のうち、封止構造体としてどの構成を採用するかは、収容領域Fにかかる圧力の大きさなどを考慮して適宜選択すればよい。
【0074】
また、前記した各封止構造体は、挿入部材と被挿入部材との間の環状の隙間を封止し、流体(液体又は気体)が漏れることを防ぐことを目的として、様々な機器に適用することが可能である。また、前記した各封止構造体は、挿入部材側からの圧力と被挿入部材側からの圧力との大小関係が時間的に変化する(つまり、交番圧力)が加わる場合に適用可能であるほか、挿入部材側と被挿入部材側のいずれか一方が常に高圧となる場合にも適用可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0075】
1 封止構造体
2,2A,2B,2C,2D 挿入部材
21 径大円柱部(第1径大円柱部)
22 径小円柱部(第1径小円柱部)
23 段差部(第1段差部)
23a テーパ面(第1テーパ面)
23b 壁面(第1壁面)
3,3A,3B,3C,3D 被挿入部材
3a タンク室体(充填室体)
31 径大円筒部(第2径大円筒部)
32 径小円筒部(第2径小円筒部)
33 段差部(第2段差部)
33a テーパ面(第2テーパ面)
33b 壁面(第2壁面)
4,4A,4B,4C,4D Oリング
5,5A,5B,5C,5D 第1バックアップリング
6,6A,6B,6C,6D 第2バックアップリング
X 中心軸
F 収容領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外形が円柱状の挿入部材と、
内部に流体が充填される充填室体と一体に形成され、前記挿入部材が挿入される円筒状の被挿入部材と、
前記挿入部材と前記被挿入部材との間に設けられ、流体をシールするOリングと、を備え、
前記挿入部材は、第1径大円柱部と、前記第1径大円柱部と一体に形成され、前記第1径大円柱部よりも外径が小さい第1径小円柱部と、前記第1径大円柱部と前記第1径小円柱部との段差により形成される第1段差部と、を有し、
前記被挿入部材は、内径が前記1径大円柱部の外径に対応する第2径大円筒部と、前記第2径大円筒部と一体に形成され、内径が前記第1径小円柱部の外径に対応する第2径小円筒部と、前記第2径大円筒部と前記第2径小円筒部との段差により形成される第2段差部と、を有し、
前記挿入部材の前記第1径小円柱部の端部と、前記被挿入部材の前記第2径大円筒部の端部とを対向させた状態から、前記挿入部材を前記被挿入部材に挿入して同心的に組み付けた状態において、
前記第1径小円柱部の外周面と、前記第1段差部の外面と、前記第2径大円筒部の内周面と、前記第2段差部の内面と、により前記Oリングを収容する収容領域が形成されること
を特徴とする封止構造体。
【請求項2】
前記収容領域内で前記挿入部材側に配置され、軸方向における前記Oリングの移動を規制する第1バックアプリングと、
前記収容領域内で前記被挿入部材側に配置され、軸方向における前記Oリングの移動を規制する第2バックアップリングと、を備え、
前記第1段差部の外面に対する前記第1バックアップリングの対向面は、前記第1段差部の外面に対応するように形成され、
前記第2段差部の内面に対する前記第2バックアップリングの対向面は、前記第2段差部の内面に対応するように形成されていること
を特徴とする請求項1に記載の封止構造体。
【請求項3】
前記第1段差部の外面は、前記被挿入部材への組み付け方向に向けて次第に径小となるように傾斜した第1テーパ面を有し、
前記第2段差部の内面は、前記組み付け方向に向けて次第に径小となるように傾斜した第2テーパ面を有すること
を特徴とする請求項2に記載の封止構造体。
【請求項4】
前記第1段差部は、前記第1テーパ面から径方向外向きに延在する第1外壁面を有し、
前記第2段差部は、前記第2テーパ面から径方向内向きに延在する第2内壁面を有し、
前記挿入部材を前記被挿入部材に挿入して同心的に組み付けた状態において、前記第1バックアップリングと前記第1外壁面との間、及び、前記第2バックアップリングと前記第2内壁面との間に隙間が設けられること
を特徴とする請求項3に記載の封止構造体。
【請求項5】
軸を含む平面で切断した場合の前記Oリングの断面積、前記第1バックアップリングの断面積、及び前記第2バックアップリングの断面積と、前記第1径小円柱部の外径と、前記第2径大円筒部の内径と、前記収容領域の軸方向の長さとを、前記Oリングの充填率が所定値以上となるように設定されていること
を特徴とする請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の封止構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−64471(P2013−64471A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−204467(P2011−204467)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】