説明

射出成形によって得られたフック面を有する成形品

少なくとも1つの注入点での射出成形によって得られる一体成形品であって、外側包絡面を形成する面内の空間によって画成される体積を有する本体(20)と、該成形品の本体と同じ成形時に得られる少なくとも1つのフック(21)、好ましくはフック叢を備え、前記フックまたは各フックが、長手方向軸を有する支柱、および支柱から側方に突出する捕捉部分を有し、フックの体積が、本体の体積より実質的に小さく、すなわち、本体の体積より少なくとも100分の1ほどに小さく、好ましくは1000分の1ほどに小さく、たとえば100,000〜100,000,000分の1ほどに小さく、長手方向軸に対して横断方向に測定した支柱の幅、または横断方向最小寸法が、支柱の長手方向軸に沿って測定した本体の厚さより小さいことを特徴とする成形品を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの注入点からの射出成形によって得られ、外面内側の空間によって画成される体積を備えた本体を有する一体品の成形品に関し、該成形品の例としては自動車の内側ドア・パネルが挙げられる。
【0002】
本発明はまた、上記タイプの成形品を射出成形によって形成するように設計された射出成形型を形成する装置、ならびに前述のタイプの成形型に挿入するように設計された成形型インサートを形成するブロックに関する。
【背景技術】
【0003】
上記タイプの成形品は、従来技術において既知である。
【0004】
その目的は、成形品の外面に少なくとも1つのフック、好ましくはフック叢を付加することであり、
1)その少なくとも1つのフック、好ましくはフック叢は、本体と同じ成形ステップによって得られ、本体と一体であり、
2)その少なくとも1つのフック、好ましくはフック叢は、フックの体積が本体の体積より実質的に小さく、すなわち、本体の体積より少なくとも百分の1ほどに小さく、好ましくは千分の1ほどに小さく、たとえば100,000〜100,000,000分の1ほどに小さく、
3)その少なくとも1つのフック、好ましくはフック叢のフックは細く、すなわち、その基部のレベルでの最小の横断方向寸法が、面に垂直な直線に沿って測定された該基部のレベルでの成形品の厚さより小さい。
【0005】
前記フックまたは各フックは、該成形品を別の品物に固定するために、具体的には、たとえばこの別の品物のループまたはフックと協働するように、フックとループ、またはフック中のフックによる自己把持機構の雄部分を形成するように設計されている。
【0006】
本出願では、フックとは、支柱と、支柱から側方に突出した捕捉部分とを備える要素を意味し、具体的には銛状、2重フック状、マッシュルーム状などである。
【0007】
今まで、従来技術では、具体的には欧州特許第0,577,697号公報に記載されているように、単一の成形型で部品を成形することによって、薄い板と、太いフック、具体的には板の厚さより大きな幅を有するフックとを備える、フック付きの板を形成することは既に可能であった。しかし、それに記載の方法では、その支柱の幅の寸法が極めて小さいフックを得ることは不可能である。
【0008】
欧州特許第0,577,697号公報では、ループと協働するように設計されたフック叢を同じ成形型で成形品(整形外科用膝当て)の外面に成形するために、射出成形が使用されている。従来、成形型の内面の一部分に、製造されるべきフックにほぼ相補的な形状の空洞叢が設けられていた。この空洞叢は、最終的成形品のフックを形成すべき正確な位置にフックを形成するのに適切な位置に配置される。次いで、具体的には熱可塑性物質であり、成形型の内部空間およびさらにフックの成形空洞も充填する成形材料が成形型に注入され、それによって、成形品の外面の一部と一体に形成されたフック叢を備える成形品が得られる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、この成形型およびこの方法では、体積および/または幅の小さいフックを有する成形品の製造はできない。
【0010】
実際、フックを形成するための空洞の寸法が最終成形品の体積に比較して小さいため、熱可塑性材料の注入圧力が、該空洞内に効果的に熱可塑性材料を進入させるに十分でないという欠点がある。
【0011】
空洞叢の空洞を熱可塑性材料によって充填することについての品質を向上させ、フックのレベルでの成形品の厚さより小さな高さおよび幅を有するフックを得ることを可能にするオーバー・モールディングに基づくシステムが、従来技術、具体的には米国特許第6,224,364号明細書において既に知られている。しかし、この先行文書に提案された技術はいくつかの欠点を有する。第1に、得られる最終品は一体品ではなく、互いにオーバーモールドされた2部片の状態であり、成形品の材料自体内の界面によって分けられており、その界面はフックを成形品の残りの大部分から分けている。他方では、この界面は、成形品に脆弱性を内包させ、その脆弱性はその成形品の耐用寿命にとって有害である。実際に、この界面は、フックの引張に対する耐性が低下した領域を最終的に形成し、成形品の急速な劣化を生じさせ、具体的にはフック叢の領域を成形品から剥離させることがあり、それにより、成形品を固定すべきループまたはフックを有する別の品物と協働させて該成形品を使用できなくする。さらに、成形型を形成する装置は構造が複雑であり、それにより、材料を注入するための複数の開口、特に、フックを形成する空洞叢に対向する注入用開口を設け、また、成形型のその他の部分に対して移動可能な部分を有することを必須とし、その可動部分は、特にシールおよび長期信頼性に関して設計上および使用上両方の難点の原因となる。さらに、一旦成形型が構成されると、この空洞叢の位置を成形型内のいずれの場所にせよ変更することに困難を伴い、成形型を完全に作り直さなければならなくなる。以上に既述した方法はまた、2段階であるという欠点を有し、それにより、最終成形品の製造時間が長くなる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、一体品であり、少なくとも1つの注入点での射出成形によって得られる成形品であって、外側包絡面を形成する面内の空間によって画成される体積を有する本体と、成形品の本体と同じ成形時に得られる少なくとも1つのフック、好ましくはフック叢とを備え、前記フックまたは各フックが、長手方向軸を有する支柱、および支柱から側方に突出する捕捉部分を有するものにおいて、
フックの体積が、本体の体積より実質的に小さく、すなわち、本体の体積より少なくとも百分の1ほどに小さく、好ましくは千分の1ほどに小さく、たとえば100,000〜100,000,000分の1ほどに小さく、
長手方向軸に対して横断方向に測定した支柱の幅、または横断方向最小寸法が、支柱の長手方向軸に沿って測定した本体の厚さより小さい
ことを特徴とする成形品を得ることが初めて可能になった。
【0013】
好ましくは、長手方向に沿って測定された前記フックまたは各フックの最大高さ寸法は、支柱の長手方向軸に沿って測定された本体の厚さより小さい。
【0014】
好ましくは、フック叢が、外面の小さな部分しか蔽わず、その部分は、具体的に、厳密にはこの外面の1/2未満、好ましくは30%未満である。
【0015】
好ましくは、支柱の基部の幅は、0.29mm未満であり、具体的には、0.05〜0.15mmである。
【0016】
このタイプの成形品を得るために、本発明の別の態様によれば、成形品を、成形材料、具体的には熱可塑性材料を注入することによって成形するために成形型を形成する装置であって、主成形チャンバを画成する閉じた内面と、注入によって成形材料を成形チャンバに導き込むことができるようにするために、成形される成形材料を導入する少なくとも1つの開口と、内面の一部分に開口する、少なくとも1つのフックに相補的な形状の少なくとも1つの空洞、好ましくは空洞叢とを備え、内面の前記一部分が、空洞を備えていない縁部面によって囲繞されているものにおいて、縁部面の少なくとも一部分と内面の対向部分とを互いに向けて押圧する手段が配置され、押圧手段による押圧が、互いに向けて押圧される2つの面が互いに完全に接触することがなく、具体的には2つの面の間に常に間隙が存在するべく制限されるように前記配置がなされることを特徴とする装置を使用することが可能である。
【0017】
本発明は、簡単な構造を有する成形型を形成し、具体的には、熱可塑性材料を注入するのに単一の開口を必要とするだけでもよく、成形品と一体のフックを備える最終成形品を得ることを可能にし、フック叢を成形品の外面の実質的にいずれの位置にでも配置することができ、真に一体である成形品とフック叢とを得ることを可能にし、具体的には、成形品の主要部分とフック叢との間に界面を含むことなく、そのフックが成形品の本体に対して小さな寸法を有する装置を提案することによって従来技術による装置の欠点を克服する。
【0018】
米国特許6,224,364号明細書に記載のタイプの公知のシステムでは、フックを形成するように意図された熱可塑性材料が、従来のシステムよりもより効果的な方式では空洞への侵入を補助されておらず、そこでは、フックを形成する空洞が、成形空洞の充填の最後にフックが形成されるように配置されているに過ぎない。具体的には、本発明の発明者らは、躊躇として分類することができる現象が起きることに気付いた。その現象は、材料が、フックを形成するために空洞に侵入することを「躊躇する」ことからなり、次いで、空洞の開口を遮蔽し材料が空洞に侵入するのを妨害する一種の膜が形成され、その結果、成形品が成形型から引き抜かれたとき、成形品がフックを有さないか、または空洞の数よりもフックが叢から欠落する。他方、本発明によれば、フックを成形する空洞へ熱可塑性材料を導入する加圧を確実に、極めて大きく、極めて迅速で、具体的には従来公知のシステムより急速にすることによって、熱可塑性材料およびフックの空洞の形状が同じであっても、空洞への材料の進入が改善される。圧力のこの急速な増加が、空洞の開口の前面に材料が到着する速度を増加させる効果を有し、それが、従来技術で生じたような膜の形成を防止する結果につながり、その結果、相対的に体積の小さなフックを得ることが可能になる。
【0019】
好ましい実施形態によれば、主成形チャンバは、成形される成形品に実質的に相補的である形状を有する。
【0020】
好ましくは、間隙は寸法が極めて小さく、具体的には0.01〜0.1mmである。
【0021】
本発明によれば、この間隙は、前記1つの面部分とその対向面とが最も遠く離れた1つまたは複数の地点において対面するこれら2つの表面の垂直方向に測定される。
【0022】
具体的には、この間隙または遊びは、フックに相補的な形状を有する空洞の深さよりはるかに小さく、具体的には少なくとも10分の1ほどに小さく、好ましくは、少なくとも百分の1ほどに小さい。
【0023】
このように、本発明によれば、成形品の大部分が形成された後にフックを有する部分を形成するために、前記対向面に開口する開口を設ける必要はなくなる。具体的には、単一の開口を経由して熱可塑性成形材料を導入することが可能であり、この熱可塑性材料が、フックを有する面とその対向面との間の間隙を除いて、主チャンバの全体を充填し、間隙の寸法は、実際に非常に小さく選択されているので、チャンバの実質的に全体が成形材料によって充填されたときに蔓延する圧力に相当する圧力が熱可塑性材料に加わらない限り、熱可塑性材料は間隙に進入することはできず、チャンバの大部分(すなわち間隙以外)が充填され、熱可塑性材料の圧力が増加したときにのみ、押圧手段によって生成される力に対抗しながら、熱可塑性材料は間隙に浸入することができる。材料が間隙に浸入し始めるとすぐに、材料によって加えられる力は押圧力よりはるかに大きくなる。次いで、空洞上の空間が突然開放され、次いで、材料が、その空間、ならびにフックを形成する空洞を、極めて急速に、極めて高圧下で、爆発的に充填する。
【0024】
成形が、熱可塑性材料を成形型に導入または注入する単一のステップで実施されるので、従来技術の場合のように、フックを形成するために、熱可塑性材料の大部分が冷却されるのを待って事後的にフックを成形する必要がなく、したがって、フック叢と成形品のその他の部分との間の母材に界面が形成されることなく、成形品とフックとは一体品として均一に形成される。得られる製品の独特の特徴の1つは、材料が、押圧されている領域外周全体を経由して進入し、フック叢の形状によって、点、直線、または星形でもよいパターンに従って中央領域に集まることである。工程の速度故に、材料の先頭が冷却される時間がないので、接合領域には、フックと成形品のその他の部分との間に真の界面が形成されず(具体的には、裸眼で視認できる界面は存在しない)、したがって、それによって、部品に脆弱性の大きな領域は形成されない。具体的には、分子配向を解析することによってのみ、この領域を明らかにすることができる。
【0025】
好ましくは、具体的には熱可塑性材料を成形型に注入するための少なくとも1つの開口、具体的には(1つまたは複数の)導入開口が、前記対向面以外の内面の一部分で成形チャンバ内に開口する。
【0026】
好ましい実施形態によれば、縁部領域全体が、対向面部分から離隔して保持される。
【0027】
好ましい実施形態によれば、縁部領域と内面とは、互いに連続しており、対向面から離隔して保持される。
【0028】
別の可能な実施形態によれば、縁部領域は内面部分の肩部によって構成され、縁部部分のみが対向面から離隔して保持される。
【0029】
別の可能な実施形態によれば、縁部部分は、対向面にその上端で接触する湾曲部を備え、縁部領域のその他の部分は対向面から離隔して保持される。
【0030】
好ましい実施形態によれば、縁部領域の一部分のみが、対向面から離隔して保たれる。
【0031】
特に好ましい実施形態によれば、フックに相補的な形状を有する空洞または空洞叢が形成された上面を備えるインサート・ブロックが提供され、そのインサート・ブロックが、成形空洞内、具体的には完成品のフックが形成されるべき位置に取外し可能に配置され、押圧手段がインサート・ブロックに一体にされ、インサート・ブロックの上面が、成形型の前記内面部分を構成する。
【0032】
したがって、フック叢を成形品の任意の位置に形成するために、インサート・ブロックは、成形型の既存の設計によって拘束されることなく、成形空洞内のフックを形成すべき位置に配置される。
【0033】
本発明の好ましい実施形態によれば、押圧手段は、少なくとも1つのばねを備える。押圧手段を油圧または空気ジャッキによって構成することも可能である。
【0034】
本発明はまた、本発明による成形装置に使用されるインサート・ブロックに関する。
【0035】
本発明はまた、その外面の一部分と一体に得られるフックまたはフック叢を備える成形品を成形によって製造する方法であって、成形型を形成する本発明の装置を用意するステップと、単一の導入ステップで、具体的には注入ステップで開口を経由して熱可塑性材料を注入するステップとを含む方法に関する。
【0036】
たとえば自動車のドア・パネルの場合には、上記比率は10を超え得る。
【0037】
好ましくは、フックは、0.9mm未満、具体的には0.2mm〜0.7mmの大きさまたは高さを有する。
【0038】
具体的には、成形品は、その外面に、射出成形によって成形品を製造する際に材料を注入する箇所に対応する窪みまたは点の形態の少なくとも1つの領域を備える。
【0039】
次に、例示のために、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照して記述する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1は、本発明による、成形型を形成する装置の横断面図である。
【図2】図2は、図1の成形型を形成する装置のインサート・ブロックの斜視図である。
【図3】図3は、図2の部分切欠図である。
【図4】図4a、4b、および4cは、夫々図1〜3の成形型を形成する装置が使用されるとき、成形工程の進行を説明する概略図である。
【図5】図5は、本発明による成形型インサートの別の可能な実施形態の、図3の図と実質的に同等な図である。
【図6】図6は、本発明による成形方法を実行中の、熱可塑性材料の注入圧力を時間の関数として示す曲線を表す線図である。
【図7】図7a、7b、7c、7d、7e、および7fは、縁部領域、空洞内の面、および対向面の、本発明による可能な複数の配置を記載する概略図である。
【図8】図8aおよび8bは、本発明による装置の別の実施形態を示す図であり、他の図の実施形態と同じ機能を有する部品は、同じ参照番号を有する図である。
【図9】図9は、図4aの成形ステップの最後に得られる成形品の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1は、主として2つの部品1および2によって構成される成形型を表し、それらの部品は、成形する成形品の形状を有する成形チャンバ3を画成するために互いに閉じ合う。熱可塑性成形材料を注入することによって導入するための開口4が、上側部品1に形成されている。インサート・ブロック5が、成形チャンバ3内に配置される。インサート・ブロック5は、空洞内の実質的にどこにでも配置することができる。ただし、インサート・ブロック5は、決して開口4に対向して配置してはならない。
【0042】
インサート・ブロック5は、図2および3により良く表されているところを見ることができるが、実質的に直角平行6面体によって構成され、その上面6には、成形品の外面に形成すべきフックに相補的な形状を有する空洞12の叢が形成されている。インサート・ブロックは、平行6面体基礎ブロック7と、可動ブロック8とを備える。ブロック7は、チャンバ3の内面9に対して固定(好ましくは取外し可能なように)されるように設計され、他方、ブロック8は、ブロック7に対して可動式であり、したがって成形型に対しても可動式である。ばね10が、ブロック5に組み込まれ、可動ブロック8をチャンバの内面の一部に向かって押圧し、具体的には、可動ブロック8の、フックに相補的な形状を有する空洞12を備える上面6に実質的に対向する、チャンバの内面の一部分11に向かって押圧する。可動ブロックの上面6は、2つの部分に小分割することができる。すなわち、最外部のフック空洞によって画定される中央部分6’と、中央部分6’を取り囲む縁部6’’とである。
【0043】
ばねは、無負荷のときに、すなわち、具体的には、空洞に注入される熱可塑性材料の圧力がないときに、上面6が、面11から近距離にあるように、具体的には、約0.01〜0.1mmなどの間隙または遊びが形成されるように調整される。この遊びは、2つの面6と11とが互いに完全には接触しないようになっており、しかし、間隙および空洞12以外のチャンバ全体が完全に充填されるまでは熱可塑性材料が遊びに浸入できないようになっている。具体的には、上面6の、空洞のない縁部部分または領域6’’は、対向する表面部分11から間隔を保っている。
【0044】
この遊びは、成形型の、相補的形状を有する空洞の深さの(またはフックの高さの)1/10〜1/100に相当する。
【0045】
インサート5の上面6は内面9に対して寸法が小さく、その結果、インサートはチャンバ3の残りの空間によって全体的に囲まれていることに留意されたい。
【0046】
成形型を形成する装置の使用法は以下の通りである。チャンバ3に相補的な形状を有する成形品を形成するために、液体状熱可塑性材料が開口4を経由して注入される。最初に、熱可塑性材料は、その進行に対して抵抗が最小である空間に導入され、すなわち、熱可塑性材料は、面11と面6との間隙を除いてチャンバ3の全部に充填される。その間隙は小さすぎて、熱可塑性材料は、加圧なしに、またはチャンバ3全体を充填するときに存在する圧力より低い圧力で、それ自体でその間隙に入り込むことができない。チャンバ3の実質的に全部が充填されると、熱可塑性材料の導入が続けられることによって、チャンバ3内に占めた空間内の熱可塑性材料の圧力が上昇し、次いで、熱可塑性材料は、この圧力の作用の下に、対向する2つのフック面(6と11)の間隙に進入し、圧力は、急激に、材料がこの間隙に急速に導入され、ばね10の力に対抗してインサート・ブロック、具体的にはその可搬部分8を押圧するようになる。このばねが存在し、間隙が小さいことは、熱可塑性材料が導入され始めるために必要な圧力が高くなることを意味する。その結果、熱可塑性材料の間隙への進入は急激に、大きな力および大きな運動エネルギーを伴ってほぼ爆発と同じように起こり、その結果、熱可塑性材料は、フックに相補的な形状を有する空洞12に効果的に導入され、フックが良好に「形成」される。
【0047】
フックが形成された後は、熱可塑性材料の導入を停止し、熱可塑性材料を冷却させ、最終的成形品をチャンバ3から抜き取るために半割り成形型1を半割り成形型2に対して開く。その最終的成形品は、その上面に、インサート・ブロック5の上面6にある成形型の空洞12に相補的な形状を有するフック叢を備える。このフック叢は、成形品のその他の部分と一体であり、具体的には、成形品の母材中に分け目を形成する界面は存在しない。
【0048】
図4Cのステップの最後に得られる成形品が、図9に示されている。その成形品は、板の形状の本体20(フックを除く)と、その板から突出し、その板と一体品の状態で一体化されており、具体的には同じ成形型から得られるフック21とを備える。フックがそこから突出する板の下面に垂直な方向に、各フックの高さhは板の厚さeより小さい。この2つの値は、この事例では本体20の外面にやはり垂直である、それぞれのフックの支柱の軸に沿って測定される。支柱の基部の幅は、支柱の軸に垂直な平面上で測定して、板の厚さeより小さい。さらに、フック叢は、板の下面の一部分しか蔽わず、それが蔽うのは、板の外面全体の50%未満である。この事例では、図9がフックのレベルでの断面図であることを考えれば、フック叢は板の30%未満を蔽い、実際には10%未満にさえなる。フック叢は、図9に垂直な方向に、板に対する相対寸法でしか延在せず、その相対寸法は、図に示された方向にフック叢が延在する相対寸法と同等であり、この相対寸法は、図2、3、または5のインサート5の形態から容易に導き出せる。
【0049】
図5に示された実施形態によれば、上面の縁部領域6’’は湾曲している。この湾曲部は、対向する表面部分11と協働して、外縁部に沿って一種の楔を確実に形成し、その楔は、熱可塑性材料が2つの面6と11との間に進入しようとするとき、それら2つの面が中央領域6’のレベルでは互いに接触していようとも、熱可塑性材料の進入を容易にすることを可能にする。とは言っても、外縁部領域のレベルでは2つの面は接触していないので、2つの面の接触は完全ではない。
【0050】
図示されていないが本発明に包含される別の実施形態によれば、内面9、具体的には面の一部分11に空洞を形成し、上面6は完全なブロックから形成(すなわち空洞無しに)することもまた可能である。このタイプの実施形態では、最終的成形品の必要な場所のどこにでもフック叢を配置することができるという利点は、明らかに得られないが、本発明の重要な効果の1つが得られ、すなわち事実上瞬間的な注入によってフックが形成される。
【0051】
図7aに概略的に示されている実施形態では、縁部領域6’’は、中央領域6’に対する肩部として構成され、押圧手段が、面6’を押圧して対向面11に接触させるが、肩部が縁部領域6’’を対向面からの間隔を保たせる。
【0052】
図7bに概略的に示されている実施形態では、縁部領域6’’は、中央領域6’に対して突出した湾曲部を備え、押圧手段が、領域6’’の湾曲部の上端を押圧して対向面11に接触させる。しかし、中央領域6’の外側の湾曲部の傾斜部分が、対向面から間隔を保っており、それにより、圧力が押圧手段の力に十分に対抗するようになったとき、熱可塑性材料が進入し、入って行くことができる楔を生成する。
【0053】
図7cに概略的に示されている実施形態では、2つの突起30が中央領域6’の面から突出しており、押圧手段がこれら突起を押して対向面11に接触させるが、面6の残りの部分、具体的には縁部領域6’’は対向面から間隔を保つ。
【0054】
図7dに概略的に示されている実施形態では、縁部領域6’’のみが押圧手段によって押圧され、中央フック領域6’は、対向面に対して固定され、それとは間隔が置かれている。押圧手段は、領域6’’(中央領域6’を囲繞している)を対向面に向かって押すが、領域6’’をこの対向面から間隔を置いて保つ。成形材料の圧力が、押圧手段の力に十分に対抗するようになったとき、領域6’’が対向面から離れて行き、材料が中央領域6’に浸入することができる。
【0055】
図7eまたは7fに概略的に示されている実施形態では、縁部領域6’’が、偏心した部分を有する。押圧手段が、上面6(中央領域6’および偏心縁部領域6’’によって構成される)を対向面に向かって押す。ただし、押圧力は、偏心部分が対向面から小さな間隙によって離隔されたままになるように制限され、面6のその他の部分は対向面に接触する。
【0056】
図6は、熱可塑性材料の注入圧力を与える曲線が取る形を、成形品を製造している間の時間の関数として、概略的に示す。最初の時間間隔Iでは、圧力は、間隙およびフック空洞を除くチャンバの容積を充填することに対応して、通常の増加の仕方で上昇する。間隔Iが過ぎた後、圧力Pmaxに達するまで、間隔IIの間、圧力はより急速に増加する。極めて短い間隔IIIの間、間隙および空洞の充填が行われ、注入圧力は僅かに減少した後、もう一度増加する。本発明によれば、注入は、連続的に、単一のステップで行われる。
【0057】
図8aおよび8bは、本発明による成形装置の別の実施形態を示す。
【0058】
図8aに見ることができるように、インサート・ブロック5は、2つのサブ・ブロック51および52を備える。上側ブロック51は、その内部に、その上面6の反対側で、下側で開口しサブ・ブロック52を受け入れる受容部53を画成する。サブ・ブロック52には、2つの横向きの陥凹部54が形成され、その陥凹部54はサブ・ブロック52の側面に開口し、その陥凹部54には2つのばね55がそれぞれ受け入れられ、それぞれのばねがその自由端に突起物56を備える。サブ・ブロック51の内側側壁には、突起物56に実質的に相補的な形状を有する2つの窪み57が形成されている。
【0059】
図8aに示されている位置では、上面6は、成形型の面11から離隔している。ばね55によって押圧されている突起物56は、陥凹部54から突出し、少なくとも部分的に窪み57に嵌まり込み、それにより、2つのサブ・ブロックが互いに一体になる。図8aに示されるこの位置から開始されて、熱可塑性材料が成形型に導入される。材料の圧力が十分になると、サブ・ブロック51が押し下げられ、同時に突起物が陥凹部54に押し込まれ、その結果、サブ・ブロック51と52とは互いに解放され、図8bに示される位置に移行し、それにより、面11と6との間に大きな間隙が開けられることによって、空洞12を充填できるようになる。部品が冷却されれば、エゼクタ58が部品を成形型の外に押し出し、成形されたフックの牽引力により、2つのサブ・ブロックが図8aの位置に十分に戻される。
【0060】
本発明において、インサート・ブロックの上面(図面では参照番号6を有する)とは、インサート・ブロックを垂直方向に上から見たときに見える、ブロックの外面上のすべての箇所を意味する。また、中央部分(図面では参照番号6’を有する)とは、フックを形成するように設計された空洞のすべてがその中に開口する、上面の中央部分を意味し、該中央部分は、すべての空洞の最も外側にある空洞の開口の最も外側の縁の最も外側の点により、かつ、これらの点を互いに連結する直線によって確定され、その結果、そのようにして得られた閉曲線はその内部にすべての空洞を含む。最後に、縁部部分(図面では参照番号6’’を有する)とは、中央部分を画定する前記曲線の外側の上面部分である。縁部部分は、中央部分を囲繞する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一体品であり、少なくとも1つの注入点での射出成形によって得られる成形品であって、外側包絡面を形成する面内の空間によって画成される体積を有する本体(20)と、前記成形品の前記本体と同じ成形時に得られる少なくとも1つのフック(21)、好ましくはフック叢とを備え、前記フックまたは各フックが、長手方向軸を有する支柱、および前記支柱から側方に突出する鉤状部分を有するものにおいて、
前記フックの体積が、前記本体の体積より実質的に小さく、すなわち、前記本体の体積より少なくとも百分の1ほどに小さく、好ましくは千分の1ほどに小さく、たとえば100,000〜100,000,000分の1ほどに小さく、
前記長手方向軸に対して横断方向に測定した前記支柱の幅、または横断方向最小寸法が、前記支柱の長手方向軸に沿って測定した本体の厚さより小さい
ことを特徴とする成形品。
【請求項2】
前記フック叢が、前記外面の小さな部分、すなわち厳密にはこの外面の1/2未満、好ましくは30%未満しか蔽わないことを特徴とする、請求項1に記載の成形品。
【請求項3】
前記長手方向軸に沿って測定された前記フックまたは各フックの最大高さ寸法が、前記支柱の長手方向軸に沿って測定された前記本体の厚さより小さいことを特徴とする、請求項1または2に記載の成形品。
【請求項4】
前記支柱の基部の幅、すなわち前記長手方向軸に対して横断方向の前記支柱の基部の最小寸法が、0.29mm未満、具体的には、0.05〜0.15mmであることを特徴とする、請求項1、2、または3に記載の成形品。
【請求項5】
前記フックが、0.9mm未満、具体的には0.2mm〜0.7mmの大きさまたは高さを有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の成形品。
【請求項6】
前記成形品が、その外面に、射出成形によって成形品を製造する際に材料を注入する箇所に対応する窪みまたは点の形態の少なくとも1つの領域を備えることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の成形品。
【請求項7】
前記請求項1乃至6のいずれか一項による成形品を、具体的には熱可塑性材料である成形材料を注入することによって成形するために成形型を形成する装置であって、主成形チャンバを画成する閉じた内面と、具体的には注入によって、前記成形材料を前記成形チャンバに導き込むことができるようにするために、成形される前記成形材料を導入する少なくとも1つの開口と、前記内面の一部分(6’)に開口する、少なくとも1つのフックに相補的な形状の少なくとも1つの空洞、好ましくは空洞叢とを備え、前記内面の前記一部分(6’)が、空洞を備えていない縁部面(6’’)によって囲繞されているものにおいて、前記縁部面(6’’)の少なくとも一部分と前記内面の対向部分(11)とを互いに向けて押圧する手段が配置され、前記押圧手段による前記押圧が、互いに向けて押圧される前記2つの面(6’’)と(11)とが互いに完全に接触することがないように制限されるように前記配置がなされることを特徴とする装置。
【請求項8】
前記2つの面の間に常に間隙が存在することを特徴とする、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記間隙が、極めて小さい寸法を有し、具体的には0.01〜0.1mmであり、この間隙は、前記1つの面部分とその対向面とが最も遠く離れた1つまたは複数の地点において対面するこれら2つの表面の垂直方向に測定されることを特徴とする、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
この間隙または遊びが、前記フックに相補的な形状を有する前記空洞の深さよりはるかに小さく、具体的には少なくとも10分の1ほどに小さく、好ましくは、少なくとも百分の1ほどに小さいことを特徴とする、請求項7〜9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
少なくとも一つの開口、具体的には前記導入開口、具体的には熱可塑性材料を前記成形型に注入するための開口、前記対向面以外の前記内面の一部分で前記成形チャンバ内に開口することを特徴とする、請求項7〜10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
フックに相補的な形状を有する空洞または空洞叢が形成された上面を備えるインサート・ブロックを用意し、前記インサート・ブロックを、前記成形空洞内、具体的には完成品の前記フックが形成されるべき位置に取外し可能に配置し、前記押圧手段を前記インサート・ブロックに組み込み、前記インサート・ブロックの前記上面が、前記成形型の前記内面部分を構成するようにしたことを特徴とする、請求項7〜11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記押圧手段が、少なくとも1つのばねを備えることを特徴とする、請求項7〜12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記押圧手段が、油圧または空気ジャッキを備えることを特徴とする、請求項7〜13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
フックに相補的な形状を有する空洞または空洞叢が形成された上面を備え、前記成形空洞内、具体的には完成品の前記フックが形成されるべき位置に取外し可能に配置されるインサート・ブロックであって、前記押圧手段が組み込まれ、前記上面が前記成形型の前記内面部分を構成する、インサート・ブロック。
【請求項16】
自身の外面の一部分と一体になされたフックまたはフック叢を備える成形品を成形によって製造する方法であって、請求項7〜14のいずれか一項による、成形型を形成する装置を用意するステップと、単一の導入ステップ、具体的には注入ステップで開口を経由して熱可塑性材料を注入するステップとを含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2011−526550(P2011−526550A)
【公表日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−515525(P2011−515525)
【出願日】平成21年6月24日(2009.6.24)
【国際出願番号】PCT/FR2009/000769
【国際公開番号】WO2010/004117
【国際公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(596170996)
【氏名又は名称原語表記】APLIX
【Fターム(参考)】