説明

射出成形方法と射出成形装置

【課題】射出成形の各サイクルで溶融樹脂の熱履歴を安定させて粘度や質を制御し、成形品の品質を一定に維持できる。
【解決手段】予め計量した溶融樹脂を金型内に射出する射出工程と、金型内に充填された樹脂を冷却固化すると共に次回のサイクルにおける溶融樹脂を計量する冷却工程と、金型を開いて成形品を取り出す休止工程と、金型を閉じる型締め工程とによって1サイクルとする。1サイクルの時間を射出工程の時間と冷却工程の時間と休止工程の時間とに加えて、型締め時間に若干の余裕時間を加算してなる一定時間に設定する。射出成形の各サイクルにおいて作動時間に若干の変動があっても1サイクルを一定時間に設定して、繰り返し射出成形しても溶融樹脂の熱履歴が安定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂を溶融して金型に射出充填して冷却することで成形品を製造するようにした射出成形方法と射出成形装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、射出成形機では、ペレット状の樹脂材料をホッパから加熱筒内へ投入して熱溶融する。溶融樹脂は後退する射出スクリュによって計量された後に、加熱筒から射出スクリュによって型締めされた金型内に射出充填する。その後、冷却固化された金型内の樹脂に対し金型を強制的に型開きさせ、エジェクタピンで成形品を金型から突き出すことで成形品を製造できる。
上述した一般的な射出成形機の制御方法を図5に示す射出成形サイクル管理のフローチャートで説明すると、まず、サイクルスタートにより可動型と固定型を型締めさせる(S100)。型締め完了後(S101)に射出タイマ(射出時間)のカウントを開始し(S102)、前回のサイクルで計量した溶融樹脂の射出動作を行い(S103)、金型への溶融樹脂の射出後に射出タイマのカウントアップを検知する(S104)。
次に冷却タイマ(冷却時間)のカウントを開始し(S105)、次回に射出すべき樹脂の溶融と計量動作を行いながら金型内に充填した溶融樹脂を冷却固化させる(S106)。そして、冷却固化及び溶融樹脂の計量完了後に冷却タイマカウントアップを検知する(S107)。次に休止タイマ(休止時間)のカウントを開始し(S108)、金型の型開き動作を行う(S109)と共に、型開き完了後にエジェクタで成形品を可動型から突き出し(S110)、休止タイマのカウントアップを検知する(S111)。このようにして1サイクルが終了することになる。
そして、次の1サイクルのスタート時に金型の型締め動作を行う(S100)。
【0003】
また、下記特許文献1では、上述のような射出成形のサイクルにおいて、射出成形時に射出スクリュの速度(射出速度)が一定になるように速度制御し、ノズル内圧がしきい値以上となった場合に射出スクリュの速度が加速度一定で降下するように制御することで、金型内の圧力が所要型内圧力に到達するまでの時間が一定になりサイクルタイムが安定するとしている。
【特許文献1】特開平8−90619号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前者のようなサイクルタイムを有する射出成形機において、休止タイム満了後の次のサイクルにおける型締め動作は予め設定された速度等に応じて動作するが型締めタイム(型締め時間)は管理されていないため、型締め時間はその時の動作時間によって決定され、予め管理された設定時間ではない。そして、その後の射出工程と冷却工程と休止工程の各設定時間をそれぞれタイマによって計測するようにしている。そのためサイクルタイムは時間を管理されていない型締め時間に特に影響を受けることになる。
従って、この場合、休止工程の時間満了から次のサイクルにおける射出タイマカウント開始時までの時間が変動する等して管理できないことになる。
すると、射出成形機によって同一種類の成形品を繰り返して製造する場合、加熱筒に充填されている溶融樹脂の熱履歴が不安定になり、溶融樹脂の粘度や質が変化する欠点が生じるため、できあがった成形品の品質も微妙に変動するという不具合が生じる。
また後者の特許文献1の場合でも、ノズル内圧に基づいて射出スクリュの速度を制御することでサイクルタイムが安定するとしても上述したサイクルタイムの時間を制御しているものではないから、サイクルタイムが一定時間になるとはいえない。そのため、この場合も上述の場合と同様な欠点が生じる。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、溶融樹脂の熱履歴を安定させて金型に充填される溶融樹脂の量や特性を一定に制御できるようにした射出成形方法及び射出成形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による射出成形方法は、可動金型と固定金型からなる金型内に溶融樹脂を射出充填して成形品を製造するようにした射出成形方法において、溶融樹脂を金型内に射出する射出工程と、金型内に充填された樹脂を冷却固化すると共に次回に射出する溶融樹脂を計量する冷却工程と、金型を開いて成形品を取り出す休止工程と、金型を閉じる型締め工程とによって1サイクルとし、1サイクルのサイクルタイムを一定時間に設定し、1サイクルタイム毎に成形品を製造するようにしたことを特徴とする。
本発明による射出成形方法によれば、設定された1サイクルの時間によって射出工程と冷却工程と休止工程と型締め工程とを順次処理することで、各工程時間の合計が設定された1サイクルの時間より短い場合でも1サイクル時間が経過した時点で次のサイクルの射出工程が開始されることになるため、前回のサイクルで計量された溶融樹脂が一定時間経過した次のサイクルの射出工程において射出されることになり、1サイクルの時間を厳密に管理でき、加熱筒に供給される樹脂を加熱する時間も一定に維持できるから、各サイクルで溶融樹脂の粘度や質等も一定に維持できて成形品の品質を一定に維持できる。
【0007】
また、1サイクルタイムには射出工程の時間を設定する射出タイマ設定手段と、冷却工程の時間を設定する冷却タイマ設定手段とを含んでいる。
1サイクルの最初に溶融樹脂を金型に射出充填する射出工程が行われ、次に金型内に充填された溶融樹脂を冷却固化すると同時に次の樹脂を計量する冷却工程が行われるため、射出成形に重要な役割を果たす2つの工程を予め設定された1サイクルの最初に行うことで一層正確に溶融樹脂の加熱時間の管理ができる。
【0008】
また、本発明による射出成形装置は、可動金型と固定金型からなる金型内に溶融樹脂を射出充填して成形品を製造するようにした射出成形装置において、溶融樹脂を金型内に射出する射出工程と、金型内に充填された樹脂を冷却固化すると共に次回に射出する溶融樹脂を計量する冷却工程と、金型を開いて成形品を取り出す休止工程と、金型を閉じる型締め工程とによって1サイクルとし、1サイクルのサイクルタイムを射出工程と冷却工程と休止工程と型締め工程とで要する各工程時間の合計より長い一定時間に設定するサイクルタイム設定手段を設けたことを特徴とする。
本発明による射出成形装置によれば、1サイクルの時間を厳密に管理でき、冷却工程で加熱筒に供給される溶融樹脂を加熱する時間も一定に維持できる。しかも、各工程時間の合計が設定された1サイクルの時間より短い場合でも1サイクル時間が経過した時点で初めて次のサイクルの射出工程が開始されることになるため、前回のサイクル内で計量された溶融樹脂が一定時間経過した次のサイクルの射出工程で射出され、溶融樹脂の加熱時間が一定で溶融樹脂の粘度や質等も一定に維持できて成形品の品質が安定する。
【発明の効果】
【0009】
本発明による射出成形方法及び射出成形装置によれば、射出成形のサイクルタイムを一定時間に設定できるので、金型に充填する溶融樹脂の熱履歴を安定させることができ、溶融樹脂の粘度や質等を一定に維持できるため、各サイクルタイム毎に製造される成形品の品質を安定させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態による射出成形機について添付図面を参照して説明する。
図1は実施形態による射出成形機の概略構成図、図2は図1に示す射出成形機の制御機構を示す機能ブロック図、図3は1サイクルにおける各工程時間を示す模式図、図4は実施形態による射出成形機のサイクルタイム管理に関するフローチャートである。
図1に示す本実施形態による射出成形機1は例えば電動式射出成形機の一例である。この射出成形機1は、射出軸、スクリュ軸、型締め軸、エジェクタ軸の4つの駆動軸を有する4軸制御の電動式射出成形機である。射出成形機1は射出装置2と型締め装置10と制御機構25とで概略構成されている。
【0011】
射出成形機1の射出装置2において、ホッパ3から樹脂ペレットを加熱筒4内に供給して加熱筒4の周囲に配設された外部ヒータ(図示せず)と射出スクリュ6の回転によって溶融する。加熱筒4内にはスクリュ軸によって回転駆動され樹脂の撹拌と押し出しを行う射出スクリュ6が回転可能に挿入されている。射出スクリュ6はスクリュ回転用サーボモータM1とスクリュ軸用サーボアンプ7によって回転駆動させられる。また、射出スクリュ6は射出軸用サーボモータM2と射出軸用サーボアンプ8によって前進・後退駆動させられる。
射出スクリュ6は射出軸用サーボモータM2によって前進することで加熱筒4内の溶融樹脂を射出充填し、後退回転することで加熱筒4内の樹脂を溶融して混練しながら計量する。
また、型締め装置10においては、固定金型11を固定する固定盤12に対し、可動金型13を固定する可動盤14が進退可能に配設されている。固定金型11と可動金型13とで開閉可能な金型9を構成している。可動盤14と可動金型13は型開閉用サーボモータM3と型締軸用サーボアンプ15によって一体として駆動され、固定盤12に設けた固定金型11に対して可動金型13の型締め(型閉め)動作と型開き動作を行うことになる。
【0012】
また、可動盤14及び可動金型13には型開き後にエジェクタ軸によって可動金型13から成形品を突き出すエジェクタ16が配設されている。エジェクタ16はエジェクタ用サーボモータM4とエジェクタ軸用サーボアンプ18によってエジェクタ16の進退移動を行う。
各サーボアンプ7,8,15,18はそれぞれ4つのサーボモータM1〜M4を制御するためのサーボアンプである。また、各サーボモータM1,M2,M3,M4にはスクリュ回転位置検出用のエンコーダ20,射出スクリュ位置検出用のエンコーダ21,型締め位置検出用のエンコーダ22、エジェクタ位置検出用のエンコーダ23がそれぞれ接続されている。
【0013】
次に射出装置2と型締め装置10に接続した制御機構25について説明する。図1において、制御機構25は、各種操作スイッチ26aを有していて各種の指示項目の入力や設定等を行う操作パネル26と、各エンコーダ20〜23や射出スクリュ6後端側に設けたロードセル(図示せず)等の測定値を入力する各種の入力データと射出装置2で計測した各種の作動データに基づいて各種タイマの検知測定や制御を行うコントローラ27と、処理結果等を表示する表示器28とで概略構成されている。
図2に示すように、表示器28は、射出制御のためのサイクルタイム(サイクル時間)設定手段32と、サイクルタイム内における射出タイム(射出時間)設定手段29と、冷却タイム(冷却時間)設定手段30と休止タイム(休止時間)設定手段31とを備えている。これら射出制御のサイクルタイムと各工程におけるタイム(時間)とは製造すべき成形品の大きさや金型の形状、原料をなす樹脂の質と要求される溶融樹脂粘度等によってその都度適宜に設定される。
【0014】
ここで、射出タイム設定手段29では前回のサイクルタイム内において加熱筒4内で計量された溶融樹脂を金型9内に射出充填する時間である。冷却タイム設定手段30はホッパ3から加熱筒4内に投入された樹脂ペレットを外部ヒータ(図示せず)と射出スクリュ6の回転によって溶融させて射出スクリュ6を回転させながら後退させることで樹脂を溶融混練し、加熱筒4内の樹脂量が所要の溶融樹脂量となるよう計量する時間に少なくとも設定されている。しかも、冷却時間内で金型9内の溶融樹脂が冷却固化されることになる。
休止タイム設定手段31は、金型9が型締め状態から型開き動作によって型開きを完了すると共にエジェクタ16によって可動型13から成形品の突き出しを行って突き出しが完了するまでの時間に少なくとも設定されている。
【0015】
そして、サイクルタイム設定手段32は、図3に示すように、射出タイムと冷却タイムと休止タイムに加えて次回の射出成形のための型締め(型閉め)動作の開始から完了までの型締め時間を含む合計時間を1サイクルタイムとして設定する。
なお、型締め工程では型締め時間を設定しておらず、型締め動作が完了する位置へ可動金型13が到達するまでの動作時間を考慮してサイクルタイムを設定する。
すなわち、射出タイムでは溶融樹脂を完全に金型9内に射出充填して保圧する必要があり、その後の冷却タイムは金型9内での溶融樹脂の冷却固化を確実に行う必要がある。そのため、射出タイムと冷却タイムは良好な成形品を製造するために必要な長さの時間であり、これを個々に精度良く測定するために射出タイムと冷却タイムを正確に設定する必要がある。
これに対し、型締めタイムは管理しておらず、型締めのために動いた実働時間tによって支配される。そのため、型締め実働時間tは各回毎の動作によって若干の時間ズレを生じることがあり、この型締め実働時間tの誤差を考慮して可動金型13が必ず型締め位置に到達するように若干の余裕時間αを加味し、型締め作動する実働時間tより若干長い一定時間となるよう、1サイクルタイムを管理可能な最適且つ最短の一定時間に設定する。
【0016】
図1及び図2において、コントローラ27では制御部33とメモリ34が設けられている。制御部33では、1サイクルタイマ(サイクル時間)のカウント開始からカウントアップまでを計測するサイクルタイマカウント手段35と、射出タイマ(射出時間)のカウント開始からカウントアップまでを計測する射出タイマカウント手段36と、冷却タイマ(冷却時間)のカウント開始から金型9内に充填された溶融樹脂の冷却工程と並行して行われる次のサイクルにおける溶融樹脂の計量工程の動作を終了させてカウントアップまでを計測する冷却タイマカウント手段37と、休止タイマのカウント開始からカウントアップまでを計測する休止タイマカウント手段38とが設けられている。
【0017】
これら各カウント手段35〜38は演算制御手段を含む制御手段40に接続されている。制御手段40では、射出装置2及び型締め装置10のための各サーボモータM1〜M4に設けたエンコーダ20〜23やロードセル等からの射出スクリュ6の位置信号及び回転位置信号、型締め装置10の可動型13の型締め及び型開き位置信号、エジェクタ16の突き出し位置及び復帰位置信号等を入力して各工程における動作の開始と終了を制御し、これを検知することで1サイクルの動作を制御するようにしている。
メモリ34には、成形動作を実行するシーケンスプログラムが記憶されると共に表示器28で設定された上述のサイクルタイム設定手段32、射出タイム設定手段29、冷却タイム設定手段30、休止タイム設定手段31でそれぞれ設定された1サイクル時間、射出時間、冷却時間等が記憶されている。
【0018】
また、表示器28はタッチパネル付き表示器からなり、上述の各設定手段29〜32に加えて、射出スクリュ6の前後進の移動速度を設定する移動速度設定器28a、射出スクリュ6に作用する射出圧、背圧を設定する圧力設定器28b、射出スクリュ6の移動速度の変速位置や溶融樹脂の計量完了設定位置等を設定するスクリュ位置設定器28c、機械諸元設定器28dおよびその他を設定する設定器と、射出スクリュ6の計量開始位置、計量完了位置、その他の位置を表示する位置表示部28e、射出量表示部28fおよびその他の表示部とを備えている。
これらの移動速度設定器28a、圧力設定器28b、スクリュ位置設定器28c、機械諸元設定器28d及びその他の設定器の設定内容も同様にメモリ34に記憶される。
【0019】
本実施形態による射出成形機1は上述の構成を備えており、次にその射出成形方法を図4に示すサイクルタイム管理のためのフローチャートに沿って説明する。
先ず、射出成形に先立って、図1に示す表示器28で設定表示する移動速度設定器28a〜位置表示部28eによる表示事項とは別に、表示器28において、製造すべき成形品の寸法や形状や樹脂材質や溶融樹脂の粘度等に基づいて、サイクルタイム設定手段32で1サイクルの時間を設定する。更に射出タイム設定手段29、冷却タイム設定手段30、休止タイム設定手段31で1サイクルタイム内の射出工程、冷却工程、休止工程における各処理時間を設定する。
次に図4において、射出成形を開始して1サイクルをスタートさせる(S10)。先ず作動初期段階で、最初に型閉・型締め動作を開始させ(S11)、型締め完了まで型締め動作を行う(S12)。そして、最初の型締め動作終了時をサーボモータM3のエンコーダ22で検知する。これによって、サイクルタイマカウント手段35で1サイクル時間のカウントを開始する(S13)。
次いで射出タイマカウント手段36で射出タイマカウントを開始し(S14)、射出動作を開始する。射出動作は射出用サーボモータM2の回転により、加熱筒4内の溶融樹脂を射出ノズルから型締め状態の固定金型11及び可動金型13からなる金型9内に射出する(S15)。
【0020】
そして、射出タイマカウント手段36の射出タイマカウントが終了した時点で射出工程を終了させる(S16)。
次に、冷却タイマカウント手段37で冷却タイマのカウントを開始し(S17)、次回のサイクルにおける溶融樹脂の計量を開始する。ホッパ3内の樹脂ペレットを加熱筒4内に供給すると共にスクリュ回転用サーボモータM1と射出用サーボモータM2により射出スクリュ6を後退回転させながら加熱筒4の外周に設けたヒータと共に樹脂を溶融させて混練しながら計量する(S18)。
そして、スクリュ位置設定器28cによって射出スクリュ6の後退位置で計量完了を確認し(S19)、計量動作を終了する。計量動作と同時に金型9内における溶融樹脂の冷却固化を進める。そして、冷却タイマカウント手段37による冷却タイマカウント時間が終了する(S20)。
次に、休止タイマカウント手段38で休止タイマのカウントを開始する(S21)。そして型締め型開き用サーボモータM3を駆動して、可動金型13の型開き動作を開始し(S22)、所定位置まで可動金型13が開放された時点で型開きを完了する(S23)。
【0021】
型開き完了後、エジェクタ用サーボモータM4を駆動し、エジェクタ16を作動させることで成形品を可動金型13から突き出す(S24)。突き出しが完了した後(S25)、休止タイマカウント手段38による休止タイマカウント時間の終了を確認する(S26)。その後、型締め型開き用サーボモータM3を駆動させて可動金型13の型締め動作を開始し(S27)、型締めが終了した後(S28)でサイクルタイマカウント手段35によって1サイクルのカウント時間が終了した時点で1サイクルの時間を完了する(S29)。
このとき、型締め動作の時間をカウントしていなくても、射出成形の1サイクルの総時間を計測しており、しかも型締め実働時間tに対して若干の余裕時間αを持たせて1サイクルの時間を設定したから、型開き動作終了後若干の余裕時間αを経由して1サイクルの時間が完了する。そのため、1サイクルを確実に一定時間に制御できる。これによって、1サイクル毎の溶融樹脂の熱履歴即ち外部ヒータで熱を加えている時間が一定になり、溶融樹脂の粘度や質等がサイクル毎に変動しないように管理できる。
なお、上述の1サイクル時間において、射出時間と冷却時間は射出動作終了と冷却動作終了にほぼ同期してカウントアップするように設定されている。
【0022】
上述のように本実施形態による射出成形機1と射出成形方法によれば、射出成形の1サイクルの時間を予め設定しておくことで、型締め動作の実働時間tが変動したり、トラブル等で各動作が微少時間停止したりしても1サイクルの時間を管理できるから、各サイクル毎の溶融樹脂の熱履歴を一定に制御でき、溶融樹脂の粘度や質を一定に制御できるため溶融樹脂の充填量をほぼ一定に制御できて安定した成形品を製造できる。
しかも、次のサイクルの射出成形のための型締め工程を1サイクルの最後の工程に設定したから、射出成形による均一な成形品の製造に最も重要な射出工程と冷却工程をそれぞれ一定時間に設定し且つ1サイクルの最初の段階に設定することができるため、1サイクルの時間における溶融樹脂の射出時間と、金型に充填された溶融樹脂の冷却及び次回の溶融樹脂の計量時間とを各サイクルの同一時期及び同一時間に設定でき、溶融樹脂の粘度と質を一定に設定できて均一な成形品を製造できる。
【0023】
なお、本発明による射出成形装置及び方法は上述の実施の形態に限定されることなく本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
上述の実施の形態では、1サイクルタイムとこれに含まれる射出タイムと冷却タイムと休止タイムについて個々に特定した構成に設定したが、次のような変形例を設定してもよい。
例えば、射出タイムと冷却タイムについては金型9に対する溶融樹脂の射出充填に要する時間であり、金型9に溶融樹脂を充填した後の冷却固化に要する時間であるから正確に設定する必要があり、少なくともこれらの時間と1サイクルタイムのみを設定するようにしてもよい。
この場合でも、射出タイムと冷却タイムと休止タイムについては実際の動作時間と同一時間を設定し、型締めタイムについては実際の動作時間に若干の余裕時間αを加算した時間を設定するとよい。
【0024】
なお、上述の実施の形態による射出成形機においては、電動式射出成形機について説明したが、本発明はこれに限らず油圧式射出成形機にも適用することができる。油圧式射出成形機の場合には特に型締め・型開き動作の時間が変動し易いために1サイクルタイムを設定することで確実に溶融樹脂の熱履歴を一定に制御できる。
また、サイクルタイム設定手段32によってサイクルタイムを設定する際、直前の1サイクルのサイクルタイムに基づいて同一時間に自動的に設定するようにしてもよい。この場合には、射出成形作業において、射出時間と冷却時間と休止時間と型締め時間を含む1サイクル全体の時間を計測し、これを次回のサイクルタイムとして自動設定する。
【0025】
また、サイクルタイム設定手段32によって作業者が適宜サイクル時間を設定する際、1サイクル動作可能な最短時間を下回る場合には警報を発するようにしてもよい。1サイクル動作可能な最短時間とは、例えば各動作に要する個々の工程の時間として実際に計測した上述の射出時間、冷却時間(計量時間)、休止時間、型締め時間を合計した時間をいうものとする。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態による射出成形機の概略構成を示す図である。
【図2】図1に示す射出成形機におけるサイクルタイムの設定と計測を行うためのブロック図である。
【図3】1サイクルタイムにおける射出タイムと冷却タイムと休止タイムと型締めタイムの関係を示す概略説明図である。
【図4】1サイクルタイムの管理に関するフローチャートを示す図である。
【図5】従来の1サイクルタイムの管理に関するフローチャートを示す図である。
【符号の説明】
【0027】
1 射出成形機
2 射出装置
6 射出スクリュ
9 金型
11 固定金型
13 可動金型
26 操作パネル
27 コントローラ
28 表示器
29 射出タイム設定手段
30 冷却タイム設定手段
31 休止タイム設定手段
32 サイクルタイム設定手段
35 サイクルタイマカウント手段
36 射出タイマカウント手段
37 冷却タイマカウント手段
38 休止タイマカウント手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動金型と固定金型からなる金型内に溶融樹脂を射出充填して成形品を製造するようにした射出成形方法において、
溶融樹脂を前記金型内に射出する射出工程と、前記金型内に充填された樹脂を冷却固化すると共に次回に射出する溶融樹脂を計量する冷却工程と、前記金型を開いて成形品を取り出す休止工程と、前記金型を閉じる型締め工程とによって1サイクルとし、
該1サイクルのサイクルタイムを一定時間に設定し、
1サイクルタイム毎に成形品を製造するようにしたことを特徴とする射出成形方法。
【請求項2】
前記1サイクルタイムには前記射出工程の時間を設定する射出タイマ設定手段と、前記冷却工程の時間を設定する冷却タイマ設定手段とを含んでいる請求項1に記載の射出成形方法。
【請求項3】
可動金型と固定金型からなる金型内に溶融樹脂を射出充填して成形品を製造するようにした射出成形装置において、
溶融樹脂を前記金型内に射出する射出工程と、前記金型内に充填された樹脂を冷却固化すると共に次回に射出する溶融樹脂を計量する冷却工程と、前記金型を開いて成形品を取り出す休止工程と、前記金型を閉じる型締め工程とによって1サイクルとし、
該1サイクルのサイクルタイムを前記射出工程と冷却工程と休止工程と型締め工程とで要する各工程時間の合計より長い一定時間に設定するサイクルタイム設定手段を設けたことを特徴とする射出成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−18485(P2009−18485A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−182460(P2007−182460)
【出願日】平成19年7月11日(2007.7.11)
【出願人】(303024138)株式会社ニイガタマシンテクノ (78)
【Fターム(参考)】