説明

射出成形機およびその成形方法

【課題】
第1の金型が取付け可能な第1の盤と第2の金型が取付け可能な第2の盤との間に、型開閉方向と直交する方向の軸を中心に回転され中間金型が取付け可能な回転盤が設けられた射出成形機およびその成形方法に関し、特には第1の盤または第2の盤の少なくとも一方に突出装置が設けられたものにおいて、一般的な成形品の成形することも可能とする。
【解決手段】 第1の金型21が取付け可能な第1の盤22と第2の金型23が取付け可能な第2の盤24との間に、型開閉方向と直交する方向の軸Aを中心に回転され中間金型20,20が取付け可能な回転盤18が設けられた射出成形機11において、前記第1の盤22または第2の盤24の少なくとも一方には突出装置30,31が設けられるとともに、前記回転盤18には突出装置30,31によって作動されるロッド51が挿通される孔52を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の金型が取付け可能な第1の盤と第2の金型が取付け可能な第2の盤との間に、型開閉方向と直交する方向の軸を中心に回転され中間金型が取付け可能な回転盤が設けられた射出成形機およびその成形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
第1の金型が取付け可能な第1の盤と第2の金型が取付け可能な第2の盤との間に、型開閉方向と直交する方向の軸を中心に回転され中間金型が取付け可能な回転盤が設けられた射出成形機としては、特許文献1ないし特許文献3に記載されたものが知られている。そのうち特許文献1と特許文献2は、固定盤と中間金型を回転可能に設けた回転盤と可動盤が順に並べられ、前記回転盤と可動盤がそれぞれ型開閉方向に移動可能に設けられたものであり、特許文献3は、中央に中間金型を回転可能に設けた固定盤が配置され、その両側に型開閉方向に移動可能な可動盤が配置されたものである。また前記特許文献2は、射出装置の配置が相違しており、1本の射出装置が型開閉方向と直交する方向に取付けられている。
【0003】
上記の特許文献1ないし特許文献3のような射出成形機では、複数の中間金型のうちの一方の中間金型が第1の金型と型合せされて形成されたキャビティに1次成形用の溶融樹脂の射出が行われる。そして次に1次成形品が張り付いた一方の中間金型を回転させ、今度は、一方の中間金型を第2の金型と型合せ2次成形用の溶融樹脂の射出が行われ複合成形品の成形がなされる。その際に一方の中間金型および他方の中間金型は、第1の金型および第2の金型と交互に型合せされ、1次成形と2次成形を繰り返す。従って一方の中間金型と他方の中間金型は、それぞれ同じキャビティ形状をしている。また1次成形品が一方の中間金型側に張り付いた状態で中間金型を回転させる必要があるので、1次成形に使用される一方の金型よりも中間金型側のほうが離型しにくい構造となっている。そのため特許文献1に示されるように回転盤および中間金型側に成形品を突き出すエジェクタ装置が設けられることが一般的である。しかしながら回転盤および中間金型側にエジェクタ装置を設ける場合、中間金型毎にエジェクタ装置を設ける必要があり、回転盤および中間金型を合わせた部分の厚みが大きくなり、その結果一定の型開量を確保しようとすると、回転盤および中間盤を挟んだ両側の盤の間の型開時の間隔も大きくする必要がある。そのため複合成形用の射出成形機の型締装置の全長が長くなるという問題があった。また回転盤にエジェクタ装置を組み込む場合は、中間金型への冷却媒体の配管とともにエジェクタ装置のアクチュエータへの配管や配線を設置する必要があり、回転盤に対してそのような配管を設置することは構造が複雑化するという問題があった。更には複合成形品において中間金型によって成形される面にエジェクタ跡が残るという問題があった。
【0004】
また特許文献2に示されるように射出装置のうちの少なくとも1本が型開閉方向と直角方向に設けられており、可動盤の背面側に射出装置等が配置されていない場合は、可動盤にエジェクタ装置を設けて可動金型側で2次成形された複合成形品を突出すことも行われている。しかし特許文献2の複合成形品用の射出成形機については、射出装置が直角方向に設けられるので、工場のレイアウトの点から不利な点が多いという問題や、取付けられる金型の厚みの変更に応じて2次成形側の射出装置を横移動させる必要があるので、移動機構が必要となる上に金型交換のたびにノズルタッチ位置の微調整が必要になるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平4−24213号公報(第2頁左欄、第1図)
【特許文献2】特公平3−38095号公報(第6頁右欄、Fig1)
【特許文献3】特開平6−254906号公報(請求項1、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところがこのような複合成形品用の射出成形機を設置しても、一時的に複合成形品の生産がない場合もある。そしてそのような場合には複合成形品用の射出成形機に一般的な成形金型を取付けて一般的な単色の成形品(または1回の型締時に成形が完了する成形品)の成形に使用したい場合が考えられる。ところが一般的な成形金型の場合は、可動金型側にエジェクタの突出しピンがあることが多い。そこで本発明は、第1の金型が取付け可能な第1の盤と第2の金型が取付け可能な第2の盤との間に、型開閉方向と直交する方向の軸を中心に回転され中間金型が取付け可能な回転盤が設けられた射出成形機およびその成形方法に関し、特には第1の盤または第2の盤の少なくとも一方に突出装置が設けられたものにおいて、一般的な成形品の成形することも可能とする射出成形機およびその成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に記載の射出成形機は、第1の金型が取付け可能な第1の盤と第2の金型が取付け可能な第2の盤との間に、型開閉方向と直交する方向の軸を中心に回転され中間金型が取付け可能な回転盤が設けられた射出成形機において、前記第1の盤または第2の盤の少なくとも一方には突出装置が設けられるとともに、前記回転盤には突出装置によって作動されるロッドが挿通される孔が設けられたことを特徴とする。

【0008】
本発明の請求項2に記載の射出成形機の成形方法は、第1の金型が取付け可能な第1の盤と第2の金型が取付け可能な第2の盤との間に、型開閉方向と直交する方向の軸を中心に回転され中間金型が取付け可能な回転盤が設けられた射出成形機において、前記第1の盤または第2の盤の少なくとも一方には突出装置が設けられるとともに、第1の盤の突出装置により前記回転盤と第2の盤の間の成形金型の突出しを行うか、または第2の盤の突出装置により前記回転盤と第1の盤の間の成形金型の突出しを行うことを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項3に記載の射出成形機の成形方法は、請求項2において、前記回転盤には突出装置によって作動されるロッドが挿通される孔が設けられ、第1の盤と回転盤、第2の盤と回転盤のいずれか一方の間には突出装置のロッドが挿通される孔が設けられた所定厚みのブロックが取付けられ、第1の盤の突出装置により前記ブロックの孔および回転盤の孔に挿通されたロッドを介して突出しを行うか、または第2の盤の突出装置により前記ブロックの孔および回転盤の孔に挿通されたロッドを介して突出しを行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の射出成形機は、第1の金型が取付け可能な第1の盤と第2の金型が取付け可能な第2の盤との間に、型開閉方向と直交する方向の軸を中心に回転され中間金型が取付け可能な回転盤が設けられた射出成形機において、前記第1の盤または第2の盤の少なくとも一方には突出装置が設けられるとともに、前記回転盤には突出装置によって作動されるロッドが挿通される孔が設けられているので、複合成形品の成形以外にも一般的な成形金型を用いて成形品の成形することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態の複合成形品用の射出成形機の型開時の一部断面図である。
【図2】本実施形態の複合成形品用の射出成形機を、図1の状態から回転盤および中間金型を回転させた状態を示す一部断面図である。
【図3】本実施形態の複合成形品用の射出成形機を、図2の状態から型閉させ、第1の射出装置および第2の射出装置から射出が行われた状態を示す一部断面図である。図である。
【図4】本実施形態の射出成形機において、回転盤と第1の盤との間に一般的な成形金型を取付け、単色の成形品の成形を行い、中間金型から前記成形品を突出した際の一部断面図である。
【図5】本実施形態の射出成形機において、回転盤と第1の盤との間に一般的な成形金型を取付け、型閉した際の一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態の射出成形機11について、図1ないし図3を参照して複合成形品を成形する場合について説明する。射出成形機11は、複数の樹脂材料から複合成形品を成形する機能を有する射出成形機であって、型締装置12とその両側に型開閉方向と同方向に設けられた第1の射出装置13と第2の射出装置14から基本的な部分が構成される。射出成形機11の型締装置12は、中央にベース15に対して固定的またはモーメントフリーな状態に固定盤16が配置されている。そして固定盤16には型開閉方向と直交する方向の軸Aを中心に回転軸17と回転盤18が回転自在に軸支され、サーボモータ19により回転自在に設けられている。そして回転盤18の両側の取付面には、同一のキャビティ形成面33を有する中間金型20が取付けられる。中間金型20と回転盤18内には温調水路が設けられるが、図1等の概略図では省略されている。本発明においては中間金型20には複合成形品Pの突出装置であるエジェクタは設けられていない。従って中間金型20の厚みを薄くすることができるとともに、エジェクタへの配管等が不必要となるので、回転盤18やその軸支機構の構造を簡素化でき、中間金型20によって成形される部分にエジェクタ跡が形成されない。
【0013】
回転盤18には後述する突出装置であるエジェクタ30またはエジェクタ31によって作動されるロッド51が挿通される孔52が設けられている。具体的には回転盤18の盤面に対して直交する方向であって、回転盤18が型締される際に型開閉方向となる方向に孔52が貫通形成されている。孔52が設けられる位置は、エジェクタ30または31のロッド43,44の軸方向の延長線上である。孔52については、複合成形品Pを成形する際には不必要であり、栓により孔52にフタをしておくようにしてもよい。
【0014】
そして前記固定盤16および回転盤18の両側には、第1の金型である第1の可動金型21が取付けられる第1の盤である第1の可動盤22と、第2の金型である第2の可動金型23が取付けられる第2の盤である第2の可動盤24がそれぞれべース15上に摺動自在に設けられている。そして中間の固定盤16と第1の可動盤22の間には、サーボモータとボールネジを備えた第1の型開閉機構25が取付けられ、中間の固定盤16と第2の可動盤24の間には、第2の型開閉機構26が取付けられている。従って第1の可動盤22に取付けられる第1の可動金型21と、第2の可動盤24に取付けられる第2の可動金型23は、その間に設けられる回転盤18に取付けられる中間金型20,20に対して、型開閉方向に移動可能となっている。そして図3に示されるように前記第1の可動金型21と中間金型20、第2の可動金型23と中間金型20とが型閉されてそれぞれ第1のキャビティC1と第2のキャビティC2が形成されるようになっている。
【0015】
第1の可動盤22の四隅近傍にはそれぞれ型締シリンダ27が設けられ、型締シリンダ27のラムがタイバ28を兼ねている。型締シリンダ27は双方向作動型のシリンダであり、第1の可動盤22内のタイバ28の側に大面積の型締用油室が設けられるとともに、反中間金型側(第1の射出装置側)には小面積の強力型開用油室が設けられている。また型締シリンダ27には毎サイクルの型締と強力型開によって変更されるタイバ28の位置を、補正するための図示しない調整手段が設けられている。なお各型締シリンダ27は、図示しないサーボバルブ等により個別に制御されるようにすることが望ましい。またタイバ28は中間の固定盤16の四隅近傍に摺動自在に挿通されるとともに、第2の可動盤24の四隅近傍にも挿通される。そして第2の可動盤24の反中間金型側の面のタイバ28が挿通される部分の周囲にはタイバ28に形成された溝状の係止部を係止するハーフナット29が配置されている。なお型締シリンダ等の配置は、さまざまなバリエーションが考えられる。
【0016】
本実施形態では、型締装置12の両側の第1の可動盤22と第2の可動盤24には、突出装置であるエジェクタ30,31がそれぞれ設けられている。一方の第1の可動盤22について先に説明すると、第1の可動盤22の反中間金型側の面の中央には前記の型開閉方向と同方向に配置される第1の射出装置13のノズルが挿入されるすり鉢状の凹部32が形成されている。そして凹部32の中央には金型取付面に向けて貫通孔が形成されている。また前記凹部32のうちの第1の射出装置13の挿入に邪魔にならない部分にエジェクタ30の駆動手段である油圧シリンダ34が取りつけられ、そのロッド43が、第1の可動金型21側から突出を行う際は、エジェクタプレートの背面に当接されるようになっている。なお各ロッド43は、同時に突出を行うために図示しない連結板により連結されていることが望ましい。またエジェクタ30は、第1の射出装置13から放出される熱が油圧シリンダ34等のアクチュエータに影響を与えない位置であって、ノズル先端から垂れた溶融樹脂がかからない位置に設けることが望ましい。そのためエジェクタ30は、第1の射出装置13が第1の可動金型21にノズルタッチした際の側方(水平方向側方)となる位置に一定の間隔を隔てて設けられる。
【0017】
また第2の盤である可動盤24についても同様に凹部38内に突出装置であるエジェクタ31が設けられる。そして本実施形態では、第2の可動盤24の側のエジェクタ31を作動させて複合成形品Pを取出す。従って油圧シリンダ39のロッド44が第2の可動金型23のエジェクタプレート40の背面に当接され、エジェクタピン41がキャビティ形成面42から出没されるようになっている。なお本実施形態では、エジェクタ30,31に駆動手段である油圧シリンダ34、39はそれぞれ2個づつ設けられているが、数は限定されず、電動モータとボールネジ機構を用いたものでもよい。またエジェクタは、金型内のみに配置されるものでもよい。
【0018】
また射出装置については、第1の可動盤22の外側には第1の射出装置13が取付けられている。本実施形態では第1の射出装置13は、複合成形品の第1の樹脂を射出するためのものであり、型開閉方向と同方向に長手方向を向けて配置されている。そして第1の射出装置13は、第1の可動盤22の型開閉移動とともに移動されるとともに、第1の可動盤22に対しても進退可能となっている。また第2の可動盤24の外側には第2の射出装置14が取付けられている。本実施形態では第2の射出装置14は、複合成形品の第2の樹脂を射出するためのものであり、型開閉方向と同方向に長手方向を向けて配置されている。そして第2の射出装置14は、第2の可動盤24の型開閉移動とともに移動されるとともに、第2の可動盤24に対しても進退可能となっている。
【0019】
そして第1の可動盤22の貫通孔を介して、第1の射出装置13のノズルが第1の可動金型21に当接され、図示しない樹脂通路(コールドランナまたはホットランナ)を介してキャビティC1内に溶融樹脂が射出されるようになっている。また第2の可動金型23および第2の可動盤24についても同様に樹脂通路を介してキャビティC2内に溶融樹脂が射出されるようになっている。なお一般的には第1の可動金型21には第1の射出装置13のノズルが、第2の可動金型23には第2の射出装置14のノズルが接続されるので、第1の可動金型21、第2の可動金型23のキャビティ形成面37,42の側にゲートが設けられることが多い。また図1等の概略図では、可動金型21,23に設けられる温調水路等については省略されている。
【0020】
次に射出成形機11による複合成形品Pの成形方法について図1ないし図3により説明する。図1に示される型締装置12は、第1の型開閉装置25、第2の型開閉装置26が作動されて、固定盤16と回転盤18および中間金型20,20に対して、第1の可動金型21が取付けられた第1の可動盤22と、第2の可動金型23が取付けられた第2の可動盤24がそれぞれ型開されて型開完了位置に移動された状態を示している。そして次にエジェクタ31の油圧シリンダ39が作動されて、第2の可動金型23のキャビティ形成面42からエジェクタピン41が突出されることにより、成形が完了した複合成形品Pが突出され、図示しない取出装置により取り出される。この複合成形品Pの突出しの際に、複合成形品Pの第2の可動金型23側の成形面P3にはエジェクタ跡が残る場合が多い。しかし複合成形品Pの成形面P3の側には、上記したようにゲート跡が形成されていることが多いので、ゲート跡とエジェクタ跡を同じ側の成形面に形成することが可能である。よって複合成形品Pの成形面P3を成形品の裏面とすることによりゲート跡とエジェクタ跡を裏面にまとめることができる。
【0021】
また型開の際に第1の可動金型21と中間金型20の間に形成された第1のキャビティC1内で成形された1次成形品P1は、中間金型20のキャビティ形成面33に張り付いた状態で取り出される。なお中間金型20に1次成形品が張り付いた状態で型開することがキャビティ形状等により制約を受ける場合は、エジェクタ30によりキャビティ形成面37からの離型の補助をしてもよい。即ち中間金型20に対して第1の可動金型21が型開する際またはその直前から、型開速度に近い速度でエジェクタ30を前進させる方向に力を働かせることにより、1次成形品P1を中間金型20に張り付かせて離型することが容易になる。
【0022】
そして複合成形品Pの取出しと1次成形品P1の離型が終わると、図2に示されるように、固定盤16の上部の回転盤回転用のサーボモータ19を駆動させ、回転盤18と1次成形品が残留した中間金型20と複合成形品Pが残留していない中間金型20とを型開閉方向に直交する軸Aを中心に180°回転(反転)させ、中間金型20と1次成形品P1が第2の可動金型23のキャビティ形成面42と対応する位置へ移動させる。そして回転が終了すると、図示しないピンにより固定盤16と回転盤18が一旦固定される。なお中間金型20,20の回転は、一方方向へのみに回転させるものでもよく、反転させるものでもよい。
【0023】
そして図3に示されるように、回転盤18と中間金型20が回転完了すると、第1の型開閉機構25と第2の型開閉機構26を作動させ、再び中間金型20と第1の可動金型21を対応させて型当接させるとともに、中間金型20と第2の可動金型23を対応させて型当接させる。この状態からハーフナット29をタイバ28の係止部に係止し、型締シリンダ27を作動させて型締を行う。そして型締完了確認後に、第1の射出装置13から第1の可動金型21と中間金型20の間に形成された1次キャビティC1に第1の射出装置13から射出を行い1次成形品P1の成形を行う。なお本実施形態では1次成形品P1は、射出圧縮成形により成形が行われる。
【0024】
次に第2の可動金型23と中間金型20の間に形成された2次キャビティC2(2次キャビティC2の壁の一部は1次成形品P1によって形成される)に1次成形とは別のタイミングで、第2の射出装置14から射出を行い2次成形部分P2の成形を行う。本実施形態では、1次成形品P1の周囲に2次成形部分P2の樹脂を貼り付ける2次成形は、一般的な射出成形によって行われる。そして冷却時間が終了すると、次に型開に移行し、再び図1の状態に戻る。
【0025】
本実施形態の射出成形機11の成形方法では、2次成形時に使用するノズルが挿入される凹部38を有する第2の可動盤24の突出装置(エジェクタ31)を用いて複合成形品Pの突出しが行われる。例えば第1の射出装置13と第2の射出装置14の射出量等のスペックが相違する場合であって、型交換して別の複合成形品Pを成形する場合、第2の射出装置14から射出が行われる第2の可動金型23と中間金型20の間の第2キャビティC2の側で1次成形を行い、第1の射出装置13から射出が行われる第1の可動金型21と中間金型20の間の第1キャビティC1の側で2次成形を行いたい場合もある。そのような場合でも、双方の可動盤22,24(または可動金型)にエジェクタ30,31があるので、成形の自由度を高めることができる。
【0026】
次に本発明の射出成形機11に一般的な成形金型53を取付けて一般的な単色の成形品(または1回の型締だけで成形が完了する成形品や1本の射出装置から溶融樹脂を射出して成形が完了する成形品)の成形を行う場合について説明する。一般的な成形金型53は、固定金型(キャビ型)54と可動金型(コア型)55とからなっており、固定金型54の側にスプルブッシュ(ホットランナの場合もある)が設けられている。また可動金型55の側に成形品P4が張り付いた状態で離型がされるようになっており、可動金型55にエジェクタの突出機構が配置されている。金型内の突出機構は、公知のエジェクタプレート56やエジェクタプレート56に固定されたエジェクタピン57やエジェクタプレート56等を後退させるためのバネ等からなっている。
【0027】
そして本実施形態では、第1の射出装置13がある側の第1の可動盤22に固定金型54を、回転盤18に可動金型55を取付ける。また回転盤18とエジェクタ31を使用する側の第2の可動盤24の間には、ダミー型58を取付ける。ダミー型58は、回転盤側の当接面58aと第2の可動盤側の当接面58bがそれぞれ平行な平面からなる方体の所定厚みのブロックである。またダミー型58は、盤に取付けられたときに前記回転盤18の孔52と同じ位置となるように、ロッド44が挿入される孔59が取付時に型開閉方向となるように貫通形成されている。ダミー型58には、通常は冷却機構の配管等は設けられていない。またダミー型は、中実なものに限定されず内部が一部中空なものやパイプ等から形成されたものでもよい。回転盤18と第2の可動盤24との間にダミー型58を取付けるのは、ガイド上を移動される第2の可動盤24が一定以上前進不可能だからであり、ハーフナットの係合位置も第2の可動盤24の停止位置に対応しているからである。しかし当初から一方の盤22等と回転盤18の間のみで一般的な成形金型53で成形を行うことを優先して設計すれば、回転盤18と第2の可動盤24を直接当接させるようにすることや、またはダミー型58を介さずに2枚の盤を並設させて固定させることも不可能ではないので、ダミー型58が必須というわけではない。
【0028】
そして第2の可動盤24のエジェクタ31の全てのロッド44には、別のロッド51が同軸上に接続されている。ロッド44とロッド51の接続は、一方のロッド44等のネジ孔に他方のロッド51等のネジ部をねじ込むなど公知の方式で行われる。ロッド51は、ダミー型58および回転盤18の厚み分に加え、可動金型55(この成形の場合は型開閉時に移動せず)のエジェクタプレート56の背面に当接されるまでの長さを有する円柱状の部材であり、ダミー型58や回転盤18の孔52に挿通可能な直径となっている。従って可動金型55の突出機構は、第2の可動盤24のエジェクタ31により作動されるようになっている。
【0029】
そして射出成形機11の第1の型開閉装置25を作動させて、第1の可動盤22と固定金型54(この成形の場合は固定金型54が移動)を型閉方向に移動させ、固定金型54と可動金型55を当接させた後に型締し、第1の射出装置13からキャビティC3に射出を行う。そして再び第1の可動盤22および固定金型54を型開きした後、エジェクタ31の油圧シリンダ39を作動させ、ロッド44、51を介して可動金型55のエジェクタの突出機構を作動させ、可動金型55に張り付いた成形品P4を突出す。なお可動金型55にはエジェクタプレート56等を設けずにロッド51が可動金型55のキャビティ面から直接出没されるようにしてもよい。
【0030】
なお本発明については、第1の盤である第1の可動盤22に設けられた突出装置により前記回転盤18の孔52に挿通されたロッド51を介して、回転盤18と第2の盤である第2の可動盤24の間に取付けられた一般的な成形金型53の可動金型55(型開閉時に移動せず)に張り付いた成形品P4の離型を行うようにしてもよい。その場合は、第1の盤である第1の可動金型22と回転盤18の間にダミー型58が取付けられる。
【0031】
また本発明は、別の実施形態の複合成形品用の射出成形機についても同様に採用可能であるから説明する。別の実施形態の複合成形用の射出成形機は、特許文献2に似たタイプであって、第1の金型である固定金型が取付けられる第1の盤である固定盤と、第2の金型である可動金型が取付けられる第2の盤である可動盤との間に、中間盤がタイバに挿通されて型開閉方向に移動自在に設けられている。そして中間盤には型開閉方向に直交する方向の軸を中心に回転される回転軸と回転盤が取付けられ、回転盤の両側の金型取付面には、それぞれ中間金型が前記第1の金型および第2の金型と対応するように取付けられている。そして前記回転盤には突出装置によって作動されるロッドが挿通される孔が設けられている。
【0032】
別の実施形態の複合成形用の射出成形機では、固定盤の外側には型開閉方向と同方向に第1の射出装置が設けられ、固定盤の反中間金型側の面の中央には前記射出装置のノズルが挿入される凹部が形成されている。また可動盤の外側にも型開閉方向と同方向に第2の射出装置が設けられ、固定盤の反中間金型側の面の中央には前記射出装置のノズルが挿入される凹部が形成されている。そして固定盤か可動盤のうちの少なくとも一方の盤の前記凹部内または凹部の近傍には突出装置であるエジェクタが配置されている。なおエジェクタは、固定盤と可動盤の双方に設けるほうがより望ましい。
【0033】
そして固定盤(固定金型を含む)に対して、中間盤(回転盤や中間金型を含む)と可動盤(可動金型を含む)と第2の射出装置がそれぞれ移動自在となっている。別の実施形態の場合、固定盤側の第1の射出装置は、型開閉に応じて大きく移動させる必要がないので、大きい射出装置を設けることができるが、第2の射出装置は、型開閉に応じて移動させるので小さい射出装置とする場合もある。その場合、固定盤と可動盤の両方にエジェクタがあると、固定盤側の大きい第1の射出装置から射出された溶融樹脂で成形される部分を1次成形品とすることも2次成形部分とすることもどちらも可能となり、成形の自由度が増す。
【0034】
別の実施形態の射出成形機の場合も、固定盤に一般的な成形金型の固定金型を取付け、可動盤に成形金型の可動金型を取付けることにより一般的な単色の成形品の成形を行うことができる。そして中間盤に取付けられる回転盤と第2の盤である可動盤の間に図4等と同じロッドが挿通される孔が貫通形成されたダミー型を取付ける。そして固定盤と回転盤の間の成形金型で第1の射出装置から溶融樹脂を射出して、回転盤および可動金型を型開方向へ移動させ、第2の盤である可動盤の突出装置を用いロッドを介して可動金型に張り付いた成形品を取り外す。
【0035】
なお上記の各実施形態の射出成形機の回転盤については、ベッド上に配設された回転テーブル上に取付けられ、上部のタイバに対してはフリーの状態となっているものでもよい。また中間金型の個数は2個に限定されず4個、6個等の偶数個数であってもよい。例えば中間金型の個数が4個の場合、従来の中間金型にエジェクタ等を設ける場合は、それぞれに必要であったが、本発明では、両側の盤の少なくとも一方にエジェクタ等を設ければすむ。
【0036】
上記では本発明の各実施形態の複合成形品用の射出成形機に設けられる突出装置は、エジェクタに使用する例について説明したが、他の部分を型開閉方向に移動させて突出動作を行うものであればエジェクタに限定されない。具体的には突出装置は、キャビティと樹脂通路の間のゲートを切断するゲートカッタを突出すための駆動装置であってもよい。また突出装置は、ホットランナを開閉するバルブゲートを突出すための駆動装置に使用したものでもよい。
【0037】
このようにして射出成形機は、複合成形品の成形だけでなく、一方の盤の間の成形金型または両方の盤の間の成形金型で単色の成形品の成形に用いることができる。また第1の成形金型と第2の成形金型で生産個数が相違する場合、途中から一方の成形金型を型開閉装置をロックすることや金型間のフック等により常時型閉された状態として、もう一方の成形金型の側のみで成形を継続することもできる。このようにすることによりこの射出成形機は、応用範囲を広くして種々の成形品の成形に用いることができる。
【符号の説明】
【0038】
11 射出成形機
12 型締装置
13 第1の射出装置
14 第2の射出装置
16 固定盤
18 回転盤
20 中間金型
21 第1可動金型
23 第2可動金型
22 第1可動盤
24 第2可動盤
27 型締シリンダ
30,31 エジェクタ
32,38 凹部
41,57 エジェクタピン
43,44,51 ロッド
52,59 孔
A 型開閉方向に直交する方向の軸
P 複合成形品
P4 成形品


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の金型が取付け可能な第1の盤と第2の金型が取付け可能な第2の盤との間に、型開閉方向と直交する方向の軸を中心に回転され中間金型が取付け可能な回転盤が設けられた射出成形機において、
前記第1の盤または第2の盤の少なくとも一方には突出装置が設けられるとともに、
前記回転盤には突出装置によって作動されるロッドが挿通される孔が設けられたことを特徴とする射出成形機。
【請求項2】
第1の金型が取付け可能な第1の盤と第2の金型が取付け可能な第2の盤との間に、型開閉方向と直交する方向の軸を中心に回転され中間金型が取付け可能な回転盤が設けられた射出成形機において、
前記第1の盤または第2の盤の少なくとも一方には突出装置が設けられるとともに、
第1の盤の突出装置により前記回転盤と第2の盤の間の成形金型の突出しを行うか、
または第2の盤の突出装置により前記回転盤と第1の盤の間の成形金型の突出しを行うことを特徴とする射出成形機の成形方法。
【請求項3】
前記回転盤には突出装置によって作動されるロッドが挿通される孔が設けられ、
第1の盤と回転盤、第2の盤と回転盤のいずれか一方の間には突出装置のロッドが挿通される孔が設けられた所定厚みのブロックが取付けられ、
第1の盤の突出装置により前記ブロックの孔および回転盤の孔に挿通されたロッドを介して突出しを行うか、
または第2の盤の突出装置により前記ブロックの孔および回転盤の孔に挿通されたロッドを介して突出しを行うことを特徴とする請求項2に記載の射出成形機の成形方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−245661(P2011−245661A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−118875(P2010−118875)
【出願日】平成22年5月25日(2010.5.25)
【出願人】(000155159)株式会社名機製作所 (255)
【Fターム(参考)】