説明

射出成形機における密閉型冷却ブッシュ

【課題】ゲートに近い箇所で、ゲート周辺をリング状に配設して密閉構造とし、局部的かつ有効な冷却を可能とする単独スポット構成の射出成形機における密閉型冷却ブッシュの提供。
【解決手段】溶融原料樹脂を一定量宛射出して、プローブ本体2のランナー孔4を介して、ゲート5よりキャビティ8内に原料樹脂を給出させるようにした射出成形機において、溶融樹脂の流通するプローブ本体2に独立して固着できる円筒状のブッシュ本体9に、ゲート周辺に沿った環状孔10を設け、ブッシュ本体9の側面に設けた2本の案内通路11を前記環状孔10と連通し、かつ前記2本の案内通路11,11に冷却媒体供給口12および冷却媒体給出口13を設けて成ることを特徴とする射出成形機における密閉型冷却ブッシュ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形操作時に強制冷却してプローブ回り、特にゲート近傍を効率良く冷却できる射出成形機における密閉型冷却ブッシュに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の射出成形機は、溶融樹脂を原料としている関係上、射出成形操作に関連して金型内に設けられる冷却孔に冷却媒体を流通させてプローブ周囲とかゲート近傍を有効に冷却して射出成形作用を有効に行わせている(例えば、特許文献1ならびに特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−262870号公報
【特許文献2】特開2003−103592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1にあっては、金型キャビティ側、即ちコア側に冷却孔を設けてあり、特許文献2にあっては、金型の固定側の入れ子に冷却水の冷却孔を設けて、射出成形時の高温樹脂原料に対する必要な温度冷却操作を行わせている。
【0005】
しかし乍ら、之等の冷却孔構成は、金型に組込まれて各構成部材との接続により構成され、独立した単一の密閉構造を備えていない。
【0006】
本発明は叙上の点に着目して成されたもので、ゲートに近い箇所で、ゲート周辺をリング状(環状)に配設して密閉構造とし、局部的かつ有効な冷却を可能とする単独スポット構成の射出成形機における密閉型冷却ブッシュを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は下記の構成を備えることにより上記課題を解決できるものである。
【0008】
(1)溶融原料樹脂を一定量宛射出して、プローブ本体のランナー孔を介して、ゲートよりキャビティ内に原料樹脂を給出させるようにした射出成形機において、溶融樹脂の流通するプローブ本体に独立して固着できる円筒状のブッシュ本体に、ゲート周辺に沿った環状孔を設け、ブッシュ本体の側面に設けた2本の案内通路を前記環状孔と連通し、かつ前記2本の案内通路に冷却媒体供給口および冷却媒体給出口を設けて成ることを特徴とする射出成形機における密閉型冷却ブッシュ。
【0009】
(2)ブッシュ本体は、先端をプローブ本体の円錐状頭部と当接する円錐凹部として成ることを特徴とする前記(1)記載の射出成形機における密閉型冷却ブッシュ。
【0010】
(3)2本の案内通路は、隣接して冷却媒体供給口と冷却媒体給出口を開口して成ることを特徴とする前記(1)記載の射出成形機における密閉型冷却ブッシュ。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、プローブ本体と独立してプローブ本体に配設固着できると共に、プローブ本体の先端に形成されるゲートの周辺に沿って環状孔が設けられ、冷却媒体は冷却媒体供給口より一方の案内通路を経て環状孔内に流入し、この環状孔の他方に設けられる他方の案内通路を通して冷却媒体給出口より熱交換された冷却媒体が排出される。そして冷却媒体は、直接ブッシュ本体の冷却媒体供給口に供給されて、ゲート周辺に配置される環状孔に流入されるので、所謂、スポット冷却ができ、きわめて冷却効果が高く、高精度の射出成形操作を可能とする。
【0012】
しかも、プローブ本体と別個の部材として金型に組込みできるので、冷却媒体が流通する環状孔への冷却媒体の供給,給出は、金型冷却用の冷却構成とは完全に分離して独立して構成でき、迅速な応答性を必要とするゲート部の冷却操作を従来に比して格段と向上できる。
【0013】
さらに、ブッシュ本体は円筒状で構成されているので、プローブ本体への装着も簡単に行えると共に、2本の案内通路を隣り合う並列構成にすることにより、冷却媒体供給口および冷却媒体給出口も併設でき、同一方向に取付作業も能率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る密閉型冷却ブッシュを施した射出成形機の一実施例を示す断面説明図
【図2】図1の密閉型冷却ブッシュの構成を示す拡大した説明断面図
【図3】図2のIII−III線断面図
【図4】密閉型冷却ブッシュの冷却ルートの2例を示す平面説明図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下本発明を実施するための最良の形態を、実施例により詳しく説明する。
【実施例】
【0016】
1は射出成形機の取り付け板Aのマニホールド、2はマニホールド1に設けたプローブ本体を示し、前記マニホールド1の溶融樹脂の流通孔3と通ずるランナー孔4が縦通されてゲート5と連通させてある。6はピストンを有するバルブピンを示し、射出成形機の取り付け板Aの金型に設けられたシリンダ7内に前記ピストンを配設し、射出成形操作の都度、ピストンをシリンダ7内で往復動させ、前記バルブピン6をマニホールド1の通孔およびプローブ本体2内で往復動させ、バルブピン6の先端をゲート5と接離させてキャビティ8内に溶融樹脂を供給して製品Xを成形することができる。なお、通常のプローブ本体2内にはランナー孔4内の溶融樹脂を保温するためのヒータなどの加熱部を備える(図示せず)。
【0017】
9は前記プローブ本体2の先端に嵌合固定できる円筒状のブッシュ本体、10は前記ブッシュ本体9の先端近く、かつ前記ゲート5に近くに設けた環状孔、11は前記環状孔と通ずる2本の案内通路、12,13はブッシュ本体9の外周に開口した前記2本の案内通路に接続される冷却媒体の冷却媒体供給口および冷却媒体給出口を示す。また、前記円筒状のブッシュ本体9は、先端をプローブ本体2の先端の形状と等しい円錐凹部9aとして嵌合しやすい構成としてある。
【0018】
なお、前記2本の案内通路11,11は、図4に示すように互いに相対向位置に配設し、かつ冷却媒体供給口12,冷却媒体給出口13を同様に相対向位置に開口したり(図4(a)参照)、或いは同一方向に並列した状態に形成できる(図4(b)参照)。
【0019】
叙上の構成において、冷却媒体はブッシュ本体9の冷却媒体供給口12より案内通路11を経て環状孔10内に流入し、ゲート5に対して必要な冷却作用を行わせて、ゲート5の溶融樹脂の急冷が行われると共に、環状孔10内の熱交換された冷却媒体は他方の案内通路11を通って冷却媒体給出口13よりブッシュ本体9の外部へ向けて帰流される。
【0020】
射出成形時のゲート5の近傍は、射出成形操作の都度、急冷操作が必要であるので、ゲート5の近くに設けた環状孔10内を流通する冷却媒体が有効に冷却作用を呈する。特に、環状孔10はブッシュ本体9内に密閉状態で流通しているので、常に必要な冷却温度状態を確保できると共に、ゲート5の近傍に包囲する状態で冷却しているので、所謂スポット的な冷却が可能である。
【0021】
さらに、金型内において、ブッシュ本体9は単独の独立した構成を備えているので、冷却媒体の供給配管作業を能率良く、簡単に作業できる。
【符号の説明】
【0022】
A 取り付け板
X 製品
1 マニホールド
2 プローブ本体
3 流通孔
4 ランナー孔
5 ゲート
6 バルブピン
7 シリンダ
8 キャビティ
9 ブッシュ本体
9a 円錐凹部
10 環状孔
11 案内通路
12 冷却媒体供給口
13 冷却媒体給出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融原料樹脂を一定量宛射出して、プローブ本体のランナー孔を介して、ゲートよりキャビティ内に原料樹脂を給出させるようにした射出成形機において、溶融樹脂の流通するプローブ本体に独立して固着できる円筒状のブッシュ本体に、ゲート周辺に沿った環状孔を設け、ブッシュ本体の側面に設けた2本の案内通路を前記環状孔と連通し、かつ前記2本の案内通路に冷却媒体供給口および冷却媒体給出口を設けて成ることを特徴とする射出成形機における密閉型冷却ブッシュ。
【請求項2】
ブッシュ本体は、先端をプローブ本体の円錐状頭部と当接する円錐凹部として成ることを特徴とする請求項1記載の射出成形機における密閉型冷却ブッシュ。
【請求項3】
2本の案内通路は、隣接して冷却媒体供給口と冷却媒体給出口を開口して成ることを特徴とする請求項1記載の射出成形機における密閉型冷却ブッシュ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−20337(P2011−20337A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−166821(P2009−166821)
【出願日】平成21年7月15日(2009.7.15)
【出願人】(390029218)世紀株式会社 (11)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】