説明

射出成形機のステーショナリプラテン

【課題】プラスチック製品を成形する射出成形機において、型締時のステーショナリプラテンの変形を小さくし、成形品にバリが発生することを防止する。
【解決手段】ステーショナリプラテン12は、円筒部材の射出装置側に、内側にロングノズル41のみを挿通することができる大きさのノズル挿通穴12dを持つ強度リブを設ける。ロングノズルは先端が金型と接触した状態で、ステーショナリプラテンとバレルヘッド42に取り付いている部品が接触しない長さとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
プラスチック製品を成形する射出成形機において、固定金型を保持するステーショナリプラテンと金型内に溶融樹脂を充填するノズルの形状に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形機は、図4において部分的に示されているように、金型を開閉し型締力を負荷する型締装置100と、ペレット状(米粒状の固体)の樹脂に熱を加えて溶融し金型内に高圧で射出充填する射出装置101から構成されている。
【0003】
型締装置100には、固定金型31が取付けボルト33によって装着されているステーショナリプラテン110と、可動型32が装着されているムービングプラテン20が備え付けられている。ステーショナリプラテン110の四隅には、タイバー22が挿通されており、タイバーナット23によって固定されている。タイバー22は、図面左側方向に延びており、ムービングプラテン20の四隅を貫通して、図示せぬ型締ハウジングにタイバーナットを介し連結される。型締ハウジングには、大きな型締シリンダが装着されており、その可動部分である型締ラム21が動作して、それと連結するムービングプラテン20および可動金型32を動作させる。この動作によって、金型の開閉や型締が行なわれる。
また、図には示していないが、別の型締め機構としてトグル式の型締装置もある。この機構の場合、ムービングプラテンと型締ハウジングの間にリンク機構が備え付けられており、その動作によってムービングプラテンの開閉および型締力の負荷が行なえる。
【0004】
射出装置101は、バレル43、バレルヘッド142、ノズル141などから構成される。バレルヘッド142は、取付けボルト44によってバレル43に固着されている。また、バレルヘッド142とノズル141は、一体品として取り付けられていても、また別部品のねじ結合により取り付けられていても、どちらでも良い。バレル43の内側には、スクリュー47が回転と前後進自在に組み込まれており、図示せぬ駆動装置によって動作させられる。スクリュー47の前端部には、スクリューヘッド46が取り付けられている。バレル43、バレルヘッド142、ノズル141の周辺には、図示されていないが、ヒータが巻かれており、樹脂に熱を加えて溶融することができる。
バレル43内に入ったペレットは、スクリュー47の回転動作によって溶融しながら前方(図の左側)に移送され、スクリューヘッド46の前方へ貯留される。そして、スクリュー47およびスクリューヘッド46が前進すると、溶融樹脂は、ノズル141内の流路を通って金型内に射出充填される。
【0005】
金型には、固定金型31と可動金型32の間の合わせ面(パーティング面)に、製品形状の空間であるキャビティ36が形成されている。型締力を負荷した状態で、ランナー37を介してキャビティ36内に溶融樹脂を射出充填し、冷却固化後に金型を開いて取り出すことにより、プラスチック製品を成形することができる。
【0006】
図5において、ステーショナリプラテン110の形状の詳細を示す。図5の右側の図は、ステーショナリプラテン110を射出側から見た正面図を表わし、左側の図は、2点鎖線で示すA断面を、矢印の方向から見たときの断面図を表わす。
正面図において、ステーショナリプラテン110の四隅にはタイバー穴110bが設けられている。中央部にはノズル挿通穴110eが開いており、その射出側の周囲に円筒部材110fが存在する。円筒部材110fの周辺からは、縦リブ、横リブ、斜めリブが外側に延びており、周囲を取り巻く部材と連結し、一体となっている。縦リブ、横リブ、斜めリブの間には、空間部である鋳抜き部110cが設けられている。
【0007】
断面図において、左側に板状部材110gが存在し、その左側の面は金型取付け面110aである。中央部のノズル挿通口110eには、ロケートリング15が取り付けられている。ロケートリング15の内径部と金型の凸部を勘合することにより、位置合わせを行なうことが可能となる。そのことにより、ノズル141の先端にある溶融樹脂の出口と、金型のランナー37の入り口が一致し、溶融樹脂の流路を一直線上に確保できる。
円筒部材110fの内側には、バレル用開口部110dが設けられており、バレルヘッド141が入ることができる空間が確保されている。これは、ノズル141を長くすると、中にある細い樹脂流路も長くなり、溶融樹脂を金型内に射出充填する際の抵抗が大きくなるためである。このように、一般的には、ステーショナリプラテン110にバレル用開口部110dを設けてバレルヘッド142を中に入れ、ノズル141をできるだけ短くする。
【0008】
以上のような射出成形機において、金型に型締力が負荷されると、図4で示されているように、ステーショナリプラテン110は変形し、α0の撓み量が発生する。これは、タイバー22を金型の外側に配置せざるを得ないことにより、金型とタイバーナット23から力を受けると、ステーショナリプラテンに大きな曲げ力が発生するためである。
さらに、この状態で、射出装置101により金型のキャビティ36内に溶融樹脂が高圧で射出充填されると、溶融樹脂の圧力に押し負けてパーティング面が開き、バリ36aが発生することになる。これは、ステーショナリプラテン110が変形しているためで、金型の外側に多くの型締力が作用し、中央部にはパーティング面を合わせる力があまり伝わらないことによる。
【0009】
特に、ステーショナリプラテン110の中央部に設けられているバレル用開口部110dは、型締力が負荷されると曲げ力によって開いてしまい、ステーショナリプラテン110の曲げ力に抗する剛性が小さくなり、撓み量α0を大きくする原因となっている。
バリ36aが発生すると成形品は不良品となり、生産効率を大きく落とすことになる。
【0010】
このような問題を解決するため、特許文献1において、モールド壁(金型側の板状部材)と端壁(射出側の板状部材)の間にV形状やアーチ形状の支持壁を設けた形状のステーショナリプラテンが開示されている。
また、特許文献2においては、ステーショナリプラテンと金型の間に金型取付けプレートを装備するとともに、ステーショナリプラテンに凸部を設けて金型真後ろから型締力を負荷する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平09−38984号公報
【特許文献2】特開2002−192567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1のステーショナリプラテンでは、内部形状が非常に複雑になってしまう。通常、ステーショナリプラテンは鉄鋼材料の鋳造品であるが、この様な複雑な形状の大きな部品を鋳造するのは、困難で、不良品となる確率が高くなるという課題が存在する。
さらに、特許文献2では、金型取付けプレートを設けることにより、型締装置の部品点数が多くなり、構造を複雑化するという課題も存在する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
以上の課題を解決するために、本発明の第一の発明では、
固定金型を取付けたステーショナリプラテンと可動金型を取付けたムービングプラテンに4本のタイバーを介して型締力を負荷する型締装置と、バレルヘッドに取付けられたノズルの先端を固定金型に接触させ溶融状態の樹脂を金型内に射出充填する射出装置を備えた射出成形機において、ステーショナリプラテンは、円筒部材の射出装置側に、内側にロングノズルのみを挿通することができる大きさのノズル挿通穴を持つ強度リブが設けられており、ロングノズルは先端が金型と接触した状態において、ステーショナリプラテンとバレルヘッドに取り付いている部品が接触しない長さとする。
また、第二の発明では、ステーショナリプラテンは、ロングノズルのみが挿通することができる内径が略一定の大きさのノズル挿通穴を備えることとする。
【発明の効果】
【0014】
ステーショナリプラテンの変形(撓み)が小さくなるので、金型のパーティング面が開きにくくなり、バリの発生を少なくすることができる。よって、成形品の良品率の向上、生産性の向上を達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例に係る、金型、型締装置の一部、射出装置の一部を表わす図である。
【図2】本発明の第一の実施例に係る、ステーショナリプラテンの形状を表わす図である。
【図3】本発明の第二の実施例に係る、ステーショナリプラテンの形状を表わす図である。
【図4】従来の、金型、型締装置の一部、射出装置の一部を表わす図である。
【図5】従来の、ステーショナリプラテンの形状を表わす図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る実施例を説明する。
図1において、本発明の第一の実施例に係る、金型と型締装置の一部、および射出装置の一部を示す。図4に示す従来例との相違点は、ステーショナリプラテン10の内部の形状とロングノズル41の長さであり、ここではその相違点のみについて記載する。
【実施例1】
【0017】
ステーショナリプラテン10の形状の詳細を、図2に示す。図2の右側の図は、ステーショナリプラテン10を射出側から見た正面図を表わし、左側の図は、2点鎖線で示す断面を矢印の方向から見た断面図を表わす。
大部分において図5の従来例と同一であるが、円筒部10hの内側における射出装置側に強度リブ10gが一体的に取付けられており、従来例にあるバレル用開口部110dを塞ぐ形状になっている。強度リブ10gの内径部であるノズル挿通穴10fの内径の大きさは、ノズルに巻いたヒータの熱が放熱でき、かつ内径部に熱的影響を及ぼさない程度にできるだけ小さいことが望ましい。
また、ロングノズル41の長さは、先端が金型にタッチした状態で、バレルヘッド42の取付けボルト44の頭が、ステーショナリプラテン10に干渉しない程度とする。この時、ロングノズル41とバレルヘッド42は一体品であっても、別ピースのねじ締め品のどちらでも良い
【0018】
このように、強度リブ10gが円筒部材10hの内側に付加されることによって、ステーショナリプラテン10全体の曲げ力に抗する剛性が大きく増す。よって、型締力が負荷された状態においても、ステーショナリプラテンの撓み量α1を小さく抑えることができる。そして、型締力を金型の全体に、中央部にも均一に加えられるので、金型内に溶融樹脂が高圧で充填された状態でもパーティング面は開くことなく、バリの発生を防止できる。
【実施例2】
【0019】
図3において、本発明に係る別の形状のステーショナリプラテン12を示す。
中央部のノズル挿通穴12dは内径が略一定の円筒状であり、その大きさは、ノズルに巻いたヒータの熱が放熱でき、かつ内径部に熱的影響を及ぼさない程度にできるだけ小さいことが望ましい。
このように、従来例に存在するバレル用開口部は無くなり、ステーショナリプラテン12全体の曲げ力に抗する剛性が増し、バリの発生を防止できる。
また、内径部の大きさは、剛性があまり影響を及ぼさない範囲で変化しても良く、例えば、円錐状や断付き形状であっても良い。
【0020】
実施例1および実施例2のステーショナリプラテンを採用した場合の撓み量α1は、従来例の場合のα0に対して十分小さく、大きな効果を奏しえる。
また、実施例1および実施例2におけるステーショナリプラテンの形状は、従来例に比して大きく変わっていないので、ステーショナリプラテンを鋳造する上においても、問題が発生することはない。
【0021】
上記の実施の形態は本発明の一例であり、本発明は、該実施の形態により制限されるものではなく、請求項に記載される事項によってのみ規定されており、上記以外の実施の形態も実施可能である。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は、通常の射出成形機に対して、ステーショナリプラテンの内部の形状とノズルの長さを変えるのみで簡単に適応でき、生産機において十分活用可能である。
【符号の説明】
【0023】
10 ステーショナリプラテン
10a 金型取付け面
10b タイバー穴
10c 鋳抜き部
10d ノズル用鋳抜き穴
10e 金型側ノズル挿通穴
10f ノズル挿通穴
10g 強度リブ
10h 円筒部材
12 ステーショナリプラテン
12a 金型取付け面
12b タイバー穴
12c 鋳抜き穴
12d ノズル挿通穴
12e 円筒部材
15 ロケートリング
20 ムービングプラテン
21 型締ラム
22 タイバー
23 タイバーナット
31 固定金型
32 可動金型
33 金型取付けねじ
36 キャビティ
36a バリ
37 ランナー
41 ロングノズル
42 バレルヘッド
43 バレル
44 取付けボルト
46 スクリューヘッド
47 スクリュー
100 型締装置
101 射出装置
110 ステーショナリプラテン
110a 金型取付け面
110b タイバー穴
110c 鋳抜き部
110d バレル用開口部
110e ノズル挿通穴
110f 円筒部材
110g 板状部材
141 ノズル
142 バレルヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定金型を取付けたステーショナリプラテンと可動金型を取付けたムービングプラテンに4本のタイバーを介して型締力を負荷する型締装置と、バレルヘッドに取付けられたノズルの先端を固定金型に接触させ溶融状態の樹脂を金型内に射出充填する射出装置を備えた射出成形機において、
前記ステーショナリプラテンは、円筒部材の射出装置側に、内側にロングノズルのみを挿通することができる大きさのノズル挿通穴を持つ強度リブが設けられており、
前記ロングノズルは先端が金型と接触した状態で、ステーショナリプラテンとバレルヘッドに取り付いている部品が接触しない長さである、ことを特徴とする射出成形機。
【請求項2】
前記ステーショナリプラテンは、ロングノズルのみが挿通することができる内径が略一定の大きさのノズル挿通穴を備える、ことを特徴とする請求項1に記載の射出成形機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−179623(P2010−179623A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−27109(P2009−27109)
【出願日】平成21年2月9日(2009.2.9)
【出願人】(300041192)宇部興産機械株式会社 (268)
【Fターム(参考)】