説明

射出成形機の同期運転開始方法

【課題】2台の射出成形機を、安定かつ容易に同期運転開始させる方法を提供する。
【解決手段】同時期に成形したディスク成形品4,9を貼り合わせるDVD17成形に用いられる2台の射出成形機1,6の同期運転開始方法において、2台の射出成形機1,6を時間間隔をおいて自動運転開始させ、自動運転中の2台の射出成形機1,6に同期指令20を発信し、同期指令20を受信した射出成形機1,6のいずれか一方の射出成形機はその成形サイクルの連続する二の工程の間に成形サイクル時間より短い所定時間Cが加えられて成形サイクル時間が延長され、この一方の射出成形機が前記所定時間Cの経過運転中に、一方の射出成形機の前記所定時間Cに続く工程に相当する他方の射出成形機における工程が開始したとき、一方及び他方の射出成形機1,6は同一の工程により同期運転を開始する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同時期に成形したディスク成形品を貼り合わせるDVD成形に用いられる2台の射出成形機の同期運転開始方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
同時期に成形したディスク成形品を貼り合わせるDVD成形に用いられる2台の射出成形機の同期運転は特許文献1に開示された方法で開始されている。特許文献1は、複数の射出成形機の所定作動の起動が最も遅い射出成形機の起動時を基準として各射出成形機の所定作動を同時に起動させるようにし、具体的には複数の射出成形機それぞれの制御装置に起動可能信号を送受信する入出力ポートをそれぞれ設け、各射出成形機の制御装置は自己の起動可能信号の他すべての射出成形機からの起動可能信号を受信したとき起動信号を生成して各射出成形機のアクチュエータを起動するようにしたものである。
【0003】
ところで、最近のDVD成形は高速化され1成形サイクル時間が3秒より短くなっている。このような成形運転の開始時に特許文献1の同期運転方法を適用した場合には、所定作動の起動が最も遅い射出成形機の起動時を基準として他の射出成形機の所定作動の起動を一致させるため、他の射出成形機は所定作動の前の状態で待機することになる。この待機時間は、最も条件が悪い場合には、略1成形サイクル時間に及ぶこともある。そのため、成形サイクル時間の短縮に備えて比較的低い温度に設定されているノズルは、金型に当接して冷却されていることもあって、過冷却され溶融樹脂の粘性低下によりディスク成形品の表面にシルバーストリーク等の成形不良を発生させたり溶融樹脂の固化により閉塞されたりする。
【0004】
【特許文献1】特開2001−113581号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記した問題を解決すべくなされたものであって、2台の射出成形機を、安定かつ容易に同期運転開始させる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、同時期に成形したディスク成形品を貼り合わせるDVD成形に用いられる2台の射出成形機の同期運転開始方法において、2台の射出成形機を時間間隔をおいて自動運転開始させ、自動運転中の2台の射出成形機に同期指令を発信し、同期指令を受信した射出成形機のいずれか一方の射出成形機はその成形サイクルの連続する二の工程の間に成形サイクル時間より短い所定時間が加えられて成形サイクル時間が延長され、この一方の射出成形機が前記所定時間の経過運転中に、一方の射出成形機の前記所定時間に続く工程に相当する他方の射出成形機における工程が開始したとき、一方及び他方の射出成形機は同一の工程により同期運転を開始する射出成形機の同期運転開始方法に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、2台の射出成形機を、安定かつ容易に同期運転開始させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図面に基づいて、本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は、2台の射出成形機によりディスク成形品を成形してDVDを生産する工程を示すブロック図である。図2は、本発明の同期運転開始方法を示すタイムチャートである。
【0009】
射出成形機1,6は、制御装置2,7を備えており、図示しない型締装置や射出装置を所定のシーケンスに従って制御する。型締装置は一対の金型3,5及び8,10を開閉・圧締し、射出装置と協働してディスク成形品4,9を成形する。成形のための自動運転の作動シーケンスは、中間時間、型閉、型締、射出、冷却及び型開の各工程からなる。一対の金型3,5及び8,10により形成されたキャビティで成形したディスク成形品4,9は、中間時間中にそれぞれ取出装置13によりキャビティから取出され、反射膜蒸着装置14、保護膜塗布装置15を経て貼合わせ装置16で両ディスク基板の保護膜塗布面を貼り合わせてDVD17として完成させる。
【0010】
中間時間は、型開完了から型閉開始までの時間であり、制御装置2,7に設けたタイマにより設定・制御するが、ディスク成形の如き成形時間の短縮が要求されるような場合には、中間時間のタイマの計時完了を待たず取出装置13がディスク成形品4,9を金型から取出すやいなや型閉開始させるようにすることもある。
【0011】
各射出成形機1,6の制御装置2,7は、同一のラダーシーケンスを格納したシーケンサを有し、前記中間時間の他、射出成形機の型締装置や射出装置のアクチュエータから制御装置2,7に入力ポート19を介して入力される位置信号と制御装置2,7自身に備えたタイマに基づいて射出成形機1,6を型閉、型締、射出、冷却、型開の工程に従って自動運転する。ここで、各制御装置2,7のラダーシーケンスには、型閉開始させる型閉信号と、射出開始させる射出信号と、型開開始させる型開信号とからなる起動信号11が設けられている。起動信号11は、出力ポート18と入力ポート19を介して各制御装置2,7に相互に入出力されている。すなわち、一方の射出成形機1の制御装置2と他方の射出成形機6の制御装置7とは、起動信号11で相互に接続されており、いずれかの射出成形機で起動信号11が生成されると他の射出成形機へそれが伝送されるようになっている。また、両制御装置2,7の入力ポート19には、押釦スイッチ12が接続されている。押釦スイッチ12は両射出成形機1,6にそれぞれ設けられ、何れの押釦スイッチ12を押しても両制御装置2,7へ同期指令20の信号が伝送されるようになっている。
【0012】
次に、射出成形機の同期運転の開始方法について説明する。例えば、一方の射出成形機1に先立って他方の射出成形機6が先に自動運転を開始し、制御装置7から1成形サイクルを開始させる型閉信号である起動信号11が発信されたとき、他方の射出成形機6の制御装置7は、一方の射出成形機1から起動信号11を受信しないので、他方の射出成形機6が先に自動運転したと認識してそれを記憶する。また、このとき一方の射出成形機1の制御装置2は、自己の制御装置2に起動信号11が生成されず、他方の射出成形機6から起動信号11を受信するので、一方の射出成形機1が自動運転を開始したときには一方の射出成形機1が後で自動運転開始したと認識してそれを記憶する。なお、射出成形機1と6とはいずれが先に自動運転開始してもよく、いずれの場合も上記のような演算が行われる。
【0013】
そして、図2に示すように、例えば他方の射出成形機6がA2の成形サイクルで自動運転中に、また一方の射出成形機1がB1の成形サイクルで自動運転開始したとき、それぞれの射出成形機は、略同じ成形サイクル時間で自動運転するが自動運転を開始したときの時期が相違するので、同期運転は行われない。この状態のとき、作業者が押釦スイッチ12を任意の成形サイクルA2,B1中に押すと、同期指令20が両制御装置2,7に入力される。同期指令20を受信したいずれか所定の側の射出成形機の制御装置は成形サイクル延長の演算を行う。成形サイクル延長の演算を行う制御装置は、例えば、上記した自動運転開始の後先の認識・記憶を後に自動運転開始する射出成形機に選択・設定されている場合であれば、制御装置2となる。このとき、制御装置2は、同期指令20を受信したとき以降の成形サイクルに所定時間Cを加えて、成形サイクル時間を延長させる。所定時間Cが加えられる時点は、一方の射出成形機1の連続する二の工程の間であって、好ましくは、型閉工程、射出工程又は型開工程の前であり、より好ましくは型閉工程の前である(図2にはこの状態を示す)。所定時間Cの長さは、成形サイクル時間より短く、好ましくは成形サイクル時間の30%程度である。所定時間Cが長過ぎれば本発明の課題が十分解決されず、所定時間Cが短過ぎれば同期運転に移行できるまでの時間が長くなる。なお、同期指令20は押釦スイッチ12で発信させるように説明したが、成形サイクル延長の演算を後に自動運転開始する射出成形機(一方の射出成形機)で行う場合であれば、その射出成形機の自動運転開始時に自動的に発信するようにしてもよい。
【0014】
一方の射出成形機1が成形サイクル延長の自動運転をし、他方の射出成形機6が自動運転中である状況で、一方の射出成形機1が所定時間Cの経過運転中に、一方の射出成形機1の所定時間Cに続く工程(型閉工程)に相当する他方の射出成形機6における工程が開始したとき、他方の射出成形機6が生成・発信し一方の射出成形機1が受信する起動信号11に基づいて一方の射出成形機1と他方の射出成形機6は同一の工程(型閉工程)により同期運転を開始する。このとき、当然ながら、一方の射出成形機1に加えられた所定時間Cは消去され一方の射出成形機1の成形サイクル延長は解除されている。
【0015】
このように、後で自動運転開始する射出成形機1を成形サイクル延長させる場合について説明したが、先に自動運転開始する射出成形機6を成形サイクル延長させても上記と同様に同期運転を開始させることができる。ただし、連続して同期運転中に一方の射出成形機が停止したとき、その射出成形機を再起動して同期運転を開始させる場合には、停止しなかった射出成形機を成形サイクル延長させることは成形作業上で問題がある。したがって、成形サイクルを延長させる射出成形機は、後に自動運転開始した射出成形機に選択することが好ましい。
【0016】
この発明は以上説明した実施例に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を付加して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】2台の射出成形機によりディスク成形品を成形してDVDを生産する工程を示すブロック図である。
【図2】本発明の同期運転開始方法を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
【0018】
1,6 射出成形機
2,7 制御装置
3,5,8,10 金型
4,9 ディスク成形品
11 起動信号
12 押釦スイッチ
13 取出装置
14 反射膜蒸着装置
15 保護膜塗布装置
16 貼合わせ装置
17 DVD
18 出力ポート
19 入力ポート
20 同期指令
A1〜A5,B1〜B3 成形サイクル
C 所定時間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同時期に成形したディスク成形品を貼り合わせるDVD成形に用いられる2台の射出成形機の同期運転開始方法において、
2台の射出成形機を時間間隔をおいて自動運転開始させ、自動運転中の2台の射出成形機に同期指令を発信し、同期指令を受信した射出成形機のいずれか一方の射出成形機はその成形サイクルの連続する二の工程の間に成形サイクル時間より短い所定時間が加えられて成形サイクル時間が延長され、該一方の射出成形機が前記所定時間の経過運転中に、一方の射出成形機の前記所定時間に続く工程に相当する他方の射出成形機における工程が開始したとき、一方及び他方の射出成形機は同一の工程により同期運転を開始することを特徴とする射出成形機の同期運転開始方法。
【請求項2】
前記一方の射出成形機は、2台の射出成形機のうち後に自動運転開始した射出成形機である請求項1に記載の射出成形機の同期運転開始方法。
【請求項3】
前記同期指令は、射出成形機の制御装置に接続した押釦スイッチを作業者が押すことにより発信される請求項1又は2に記載の射出成形機の同期運転開始方法。
【請求項4】
前記所定時間は、成形サイクルの工程のうち、型閉工程、射出工程又は型開工程のいずれかの工程の前に加えられる請求項1又は2に記載の射出成形機の同期運転開始方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−137089(P2006−137089A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−328932(P2004−328932)
【出願日】平成16年11月12日(2004.11.12)
【出願人】(000155159)株式会社名機製作所 (255)
【Fターム(参考)】