説明

射出成形機の点検システム

【課題】点検作業員の熟練度に関わらず、点検作業を効率良く行うことができると共に、射出成形機の作動状態をより正確に把握することが可能な射出成形機の点検システムを提供することを課題とする。
【解決手段】作動状態を検出可能な各種センサを備えた射出成形機100と、点検作業によって得られた情報を入力可能に構成された点検用携帯端末220と、ネットワーク250を介して射出成形機100および点検用携帯端末220に通信可能に接続され、各種センサにより検出された検出結果を射出成形機100の作動情報として取得すると共に点検用携帯端末220への入力情報を点検情報として取得する情報管理装置230と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機の点検を行う際に用いられる射出成形機の点検システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、建設機械を点検するための機械の保守点検システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。この保守点検システムは、建設機械と、ネットワークを介して建設機械に接続されたメンテナンス端末コンピュータと、ネットワークを介してメンテナンス端末コンピュータに接続されたユーザ端末コンピュータと、ネットワークを介してメンテナンス端末コンピュータに接続されたサーバと、を備えている。そして、この保守点検システムでは、建設機械に設けられた各種センサにより検出した建設機械の稼動情報等の機械情報が、ネットワークを経由してサーバに出力される。従って、ユーザが建設機械の異常を認識すると、ユーザはユーザ端末コンピュータを操作して、異常が発生した建設機械の機種情報を入力する。そして、入力された機種情報はサーバに送信され、サーバは、受信した機種情報に基づいて、異常が生じている建設機械に対応した保守点検用のプログラムを、ユーザ端末コンピュータに送信する。この後、ユーザは、ユーザ端末コンピュータに送信された保守点検用のプログラムに沿って、保守点検を行うことにより、効率良く建設機械を点検することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−178148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記の建設機械と同様に、樹脂成形を行うための射出成形機には、その作動状態を監視するための各種センサが取り付けられている。ここで、射出成形機では、対象物として樹脂を用いているため、樹脂の溶融、射出、型締といった射出成形機特有の処理を行っている。これらの処理は、得られる成形品の品質に直結するため、射出成形機において、溶融、射出、型締の各処理は、あらかじめ定めた条件下で確実に行う必要がある。
加えて、これらの処理を担う部分の点検等も確実に行う必要がある。しかし、射出成形機の点検作業は、点検作業員の習熟度により、内容に差が生じることがある。各種センサから得られた射出成形機の作動状態を示す作動情報において、何らかの異常、例えば射出圧に異常があることが判明したとしても、射出成形機のどの部分をどのように点検すればよいのかは、点検作業員のノウハウに頼ることになる。したがって、品質を維持するには、実質的に、熟練した点検作業員による目視点検を行う必要がある。これにより、射出成形機の点検作業を行う場合、射出成形機の各種センサから得られた作動情報だけでなく、熟練の点検作業員による目視点検も必要となるため、均質にかつ確実に点検作業を行うことが難しい。
【0005】
そこで、本発明は、点検作業員の熟練度に関わらず、点検作業を確実に行うことができると共に、射出成形機の作動状態をより正確に把握することが可能な射出成形機の点検システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的のもとになされた本発明の射出成形機の点検システムは、作動状態を検出可能な作動検出手段を備えた射出成形機と、射出成形機の点検作業手順が表示されるとともに、点検作業によって得られた情報を入力可能に構成された点検用携帯端末と、ネットワークを介して射出成形機および点検用携帯端末に通信可能に接続され、作動検出手段により検出された検出結果を射出成形機の作動情報として取得すると共に点検用携帯端末への入力情報を点検情報として取得する情報管理装置と、を備え、作動検出手段は、少なくとも、射出成形機における樹脂の射出圧と、型締圧と、射出圧および型締圧を発生させるポンプの元圧と、を検出することを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、情報管理装置は、射出成形機の作動検出手段によって得られた作動情報と、点検作業によって得られた点検情報と、を取得することができる。これにより、得られる情報量を増大させることができるため、情報管理装置は、例えば、不具合判定等の各種分析の精度を向上させることができる。また、点検作業員は、点検用携帯端末を保持して点検作業を行うことができる。このため、点検用携帯端末に表示される点検作業手順に従って点検作業を行うことにより、点検作業員の熟練度に関わらず、適切且つ効率良く点検を行うことができる。
【0008】
情報管理装置は、取得した作動情報および点検情報と、予め設定された不具合判定値とを比較して、射出成形機に不具合が生じているか否かを判定する不具合判定手段を、備えることが好ましい。
この構成によれば、情報管理装置は、不具合判定手段により、取得した作動情報および点検情報から、射出成形機に不具合が生じているか否かを判定することができる。これにより、熟練の点検作業者が射出成形機を点検せずとも、情報管理装置で取得した作動情報および点検情報から、射出成形機の不具合を判定することができる。
【0009】
射出成形機を構成する各部品には、各部品に関する部品情報を画像化した情報コードが設けられ、点検用携帯端末は、情報コードを読み取って部品情報を取得するコード読取手段を、さらに備え、情報管理装置は、コード読取手段により読み取った各部品の部品情報に基づいて、見積書を作成する見積書作成手段をさらに備えることが、好ましい。
この構成によれば、射出成形機の各部品に設けられた情報コードを、点検用携帯端末のコード読取手段により読み取って部品情報を取得し、取得した部品情報を点検用携帯端末から情報管理装置へ送信することで、情報管理装置は、部品情報を取得することができる。これにより、情報管理装置は、例えば、交換が必要な射出成形機の部品の部品情報に基づいて、見積書を簡単に作成することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の射出成形機の点検システムによれば、作動情報および点検情報を取得することにより、情報量を増大させることができるため、情報管理装置による不具合判定等の各種分析の精度を向上させることができ、また、点検用携帯端末の指示に従って点検作業を行うことにより、点検作業員の熟練度に関わらず、好適に点検作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施の形態における射出成形機の点検システムの概略構成図である。
【図2】射出成形機の構成を示す図である。
【図3】射出成形機の点検システムを表したブロック図である。
【図4】射出成形機の点検システムにおける一連の点検動作を表したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
図1は、本実施の形態における射出成形機10の点検システム200の全体構成を説明するための図である。
射出成形機100の点検システム200は、射出成形機100から得られる作動情報と、点検作業員による点検作業によって得られる点検情報とに基づいて、射出成形機100に不具合が生じているか否かを判定している。
【0013】
先ず、図1を参照して、本実施例に係る射出成形機100の点検システム200について説明する。射出成形機100の点検システム200は、上記の射出成形機100と、射出成形機100に接続されると共に射出成形機100から送信される作動情報を取得可能な作動情報収集装置210と、点検作業員に携帯される点検用携帯端末220と、作動情報収集装置210から作動情報を取得可能に構成されると共に点検用携帯端末220からの点検情報を取得可能に構成された情報管理装置230と、を備えている。
【0014】
ここで、作動情報収集装置210は、射出成形機100が配設された工場内に配設される一方、情報管理装置230は、工場外に配設され、ネットワーク250を介して作動情報収集装置210に接続されている。具体的に、情報管理装置230は、射出成形機100を製造する製造元に設置されており、作動情報収集装置210は、射出成形機100を購入した購入元に設置されている。なお、点検用携帯端末220は、購入元に配属された点検作業員、および製造元に配属された点検作業員が共に使用可能となっている。
【0015】
図2は、本実施の形態における射出成形機100の概略構成を説明するための図である。
図2に示すように、射出成形機100は、基盤1上に固定金型4を取付けた固定ダイプレート2が固設されている。また、同じ基盤1の上には固定ダイプレート2に対向して可動金型5を取付けた可動ダイプレート3が移動可能に載置される。
【0016】
基盤1上には、リニアベアリングガイド22が敷設されている。このリニアベアリングガイド22にガイドされるリニアベアリング21が、可動ダイプレート3に取付けられ、これを支えている。
固定ダイプレート2にはストロークが短く大径の油圧式の型締シリンダ50が複数(本例では4基)設けられ、この型締シリンダ50の中を大径のピストン7bが摺動する。ピストン7bにタイバー7が一体に直結されている。タイバー7は、対向する可動ダイプレート3が型閉のため近づいてきたとき、可動ダイプレート3の挿通孔3bに挿通する。タイバー7の先端部には、それぞれ等ピッチの複数のリング状溝7aが形成されている。
【0017】
可動ダイプレート3の金型取付面と反対側側面には、タイバー7のリング状溝7aと噛合する対になったハーフナット11が、挿通孔3bの軸心をその両側から挟むように、軸心に対して直角方向に油圧シリンダ等で作動するように設けられている。ハーフナット11が閉じた状態のとき、(型開等のため)タイバー7のピストン7bのヘッド側に油圧が働き、タイバー7が図2の左方向に押されたとき、ハーフナット11が可動ダイプレート3から離れないように支える支持部材12が設けられている。
図2の2点鎖線は、金型閉の時の可動ダイプレート3の位置を示したものである。
【0018】
固定金型4には、溶融樹脂の流路となるキャビティ流路が形成され、このキャビティ通路は、固定ダイプレート2の貫通孔を介して射出シリンダ8の射出口に接続されている。
射出シリンダ8のシリンダ本体8aには、筒状のシリンダ本体8aの軸線方向に間隔を隔てて、複数のリング状ヒータ9が設けられている。これらのリング状ヒータ9でシリンダ本体8a内の樹脂を溶融し、スクリュー8bを回転させることにより、溶融樹脂をシリンダ本体8aの先端部の射出口から固定金型4と可動金型5との間に形成されるキャビティ内に射出する。
【0019】
基盤1の上には、ボールねじ軸13が、支え台17と支え台18により回転自由に軸方向を拘束して支持されている。ボールねじ軸13にはボールねじナット14が螺合している。ボールねじナット14は可動ダイプレート3の側面に突出したブラケット3aに取付けられている。ボールねじ軸13は、サーボモータ15により動力伝達機構16を介して駆動され、コントローラ37により回転数、回転速度が制御される。
ボールねじ軸13が可動ダイプレート3の側面に対称に一対設けられた場合は、動力伝達機構16に設けられたタイミングベルト、或いはチェーン等により、1台のサーボモータ15の出力軸の回転を一対のボールねじ軸13に同時に伝達することにより、一対のボールねじ軸13を同期回転させるようにする。
【0020】
固定金型4と可動金型5とからなる金型の開閉動作は、コントローラ37により制御される。
図2の金型が開いた状態、即ち、可動ダイプレート3が、実線で示すような、十分に固定ダイプレート2から離れた状態から、2点鎖線で示したように固定金型4と可動金型5が閉となるまで、可動ダイプレート3は、サーボモータ15で駆動されるボールねじ軸13の回転によって移動する。コントローラ37は、可動ダイプレート3をゆっくり加速させ、一定速度で移動した後、減速して可動金型5が固定金型4に接触する寸前に停止させる。
この、可動ダイプレート3の停止位置においては、ハーフナット11の内側リング溝がタイバー7のリング状溝7aに係合してタイバー7と結合される。
【0021】
次に、型締シリンダ50に作動油が送り込まれ、金型の型締が行われる。
そして、固定ダイプレート2を貫通して固定金型4に形成されたキャビティ流路に接続された射出シリンダ8から、溶融樹脂が金型のキャビティ内に射出される。
金型キャビティ内の溶融樹脂は冷却固化して成形品となり、冷却固化後、型締シリンダ50のピストン7bのヘッド側に圧油が送り込まれ、ピストン7bが押し出されて金型が離型する。この段階でハーフナット11が逆作動してタイバー7との結合が解除され、ボールねじ軸13が型閉のときと逆回転して可動金型5と可動ダイプレート3を移動し、元の位置に停止する。成形品が取り出された後、次の型閉が始まる。
【0022】
上記型締シリンダ50の油圧制御回路は、作動油タンク39、コントローラ37、比例積分補償して算出された型締油圧を設定した油圧設定器41、型締開始時、離型時、タイバー位置決め時の油圧ポンプ31の供給油量を設定する流量設定器42、金型厚に対応してタイバー7のリング状溝7aとハーフナット11のリング状内溝の噛み合い位置を算定するタイバー位置演算器43、サーボモータ等のモータ32、モータ32の出力回転速度を検出する回転速度センサ33、モータ32を回転制御駆動するインバータ38、油圧ポンプ31、ブロックポートを有する4方向切換弁34、油圧ポンプ31より押し出された作動油を4方向切換弁34まで供給する供給配管44、4方向切換弁34から型締シリンダ50のポート2aまで配設された型締側配管45、4方向切換弁34から型締シリンダ50のポート2bまで配設された離型側配管46、型締側配管45と離型側配管46とを結んだ配管上に設置された2方向切換弁35、型締側配管45に設置された油圧センサ36とで構成されている。
【0023】
4方向切換弁34のソレノイドaを励磁して圧油が送られているとき、4方向切換弁34の他の弁ポートが油圧排出方向に通じているので、型締シリンダ50内のピストン7bの右側の油圧が僅かな背圧(1kgf/cm)だけとなり、作動油はピストン7bの左側に作用してピストン7bに型締力を生じる。
型締工程中、金型キャビティへの溶融樹脂の射出、保持冷却が行われる。
【0024】
4方向切換弁34のソレノイドaを励磁して、2方向切換弁35を開させ作動油を通す方向に作動していれば、型締シリンダ50のピストン7bの両側に同じ油圧が作用し、油圧作動面積の差により(ピストン7bの左側の油圧作動面積はタイバー7の面積だけ小さくなる)、ピストン7bの油圧作動力が大きくなり、ピストン7bに離型力を生じる。
【0025】
ここで、図2に示すように、上記のように構成された射出成形機100には、その作動状態を検出する各種検出センサが設けられている。
射出シリンダ8には、スクリュー8bを作動させるための射出圧検出センサ(作動検出手段)301、各リング状ヒータ9の温度の温度センサ(作動検出手段)302が設けられている。
また、型締シリンダ50における型締圧を検出するための型締圧検出センサ(作動検出手段)303が、型締シリンダ50への油圧経路に設けられている。
そして、型締シリンダ50における型締圧、および射出シリンダ8における射出圧を発生させるための油圧ポンプ31のポンプ元圧を検出するためのポンプ元圧センサ(作動検出手段)304が設けられている。
【0026】
また、図3に示すように、射出成形機100には、各リング状ヒータ9の設定温度や、射出シリンダ8における射出圧をはじめとして、射出成形機100の各部を設定するための設定パラメータ等を入力する操作パネル等の入出力部40が設けられている。つまり、射出成形機100に設けられた各種検出センサおよび入出力部40は、射出成形機100の作動状態を検出する作動検出手段として機能している。
【0027】
これら各種検出センサは、周期的に検出信号をサンプリングすると共に、作動情報収集装置210に接続されている。このため、各種検出センサによって周期的にサンプリングされた検出信号は、作動情報収集装置210へ向けて送信される。
【0028】
なお、詳細は後述するが、射出成形機100を構成する各部品には、QRコードやバーコード等の情報コードを印刷した貼着シールが貼り付けられており、後述する点検用携帯端末220により、読取可能となっている。
【0029】
作動情報収集装置210は、いわゆるコンピュータであり、キーボードやモニターで構成された入出力部50と、各種プログラムを格納する記憶部51と、各種プログラムを実行する処理部52と、射出成形機100および情報管理装置230との間で情報通信を行う情報通信部53と、サーバ54と、を備え、これらは互いに接続され、互いに信号の受け渡しが可能になっている。そして、作動情報収集装置210は、HDD等の不揮発性メモリ、RAM等の揮発性メモリおよびCPU等のプロセッサを有し、内部バスを介して、これらを協働させることにより各部を作動させている。
具体的に、記憶部51は、各種プログラム等を実行するための作業領域となるRAM等の揮発性のメモリ、ROMやハードディスクドライブ等の不揮発性のメモリ、あるいはこれらの組み合わせにより構成できる。
【0030】
処理部52は、各種プログラムを実行するための演算を行うCPU等で構成されており、点検レポートデータを作成する点検レポート作成部60を有している。点検レポート作成部60は、点検作業員による点検作業後に点検レポートデータを生成し、生成した点検レポートデータを印刷することで、点検レポートを作成する。なお、点検作業員による点検作業は、定期的に行われるだけでなく、不具合解消後や、不良部品の交換後にも行われる。
【0031】
サーバ54は、射出成形機100の入出力部40から入力された入力情報および射出成形機100の各種センサから入力された検出信号を、作動情報として格納する情報格納手段として機能している。
【0032】
情報通信部53は、取得した作動情報を、ネットワーク250を介して情報管理装置230へ送信する。
【0033】
点検用携帯端末220は、例えば、PDA(Personal Digital Assistant)等の携帯情報端末であり、ネットワーク250を介して情報管理装置230に接続されている。この点検用携帯端末220は、射出成形機100の点検作業を行う点検作業員に携帯されており、点検作業員は、点検用携帯端末220に格納された点検プログラムに沿って点検作業を行う。
【0034】
点検用携帯端末220は、操作パネル等で構成された入出力部70と、各種プログラムを格納する記憶部71と、各種プログラムを実行する処理部72と、情報管理装置230との間で情報通信を行う情報通信部73と、が設けられており、これらは互いに接続され、互いに信号の受け渡しが可能になっている。また、点検用携帯端末220は、情報コードを読み取るコード読取部74と、を備えている。そして、点検用携帯端末220は、HDD等の不揮発性メモリ、RAM等の揮発性メモリおよびCPU等のプロセッサを有し、内部バスを介して、これらを協働させることにより各部を作動させている。
【0035】
具体的に、記憶部71は、各種プログラム等を実行するための作業領域となるRAM等の揮発性のメモリ、ROMやハードディスクドライブ等の不揮発性のメモリ、あるいはこれらの組み合わせにより構成できる。そして、記憶部71には、点検作業員による点検作業の作業手順がプログラミングされた点検用プログラムが格納されている。
コード読取部74は、例えば、QRコードやバーコード等の情報コードを読取可能(撮影可能)に構成されている。
【0036】
処理部72は、各種プログラムを実行するための演算を行うCPU等で構成されており、記憶部71に格納された点検プログラムを読み出して展開すると共に、展開した点検プログラムに基づいて、入出力部70の操作パネルに点検作業手順に関する画像を表示する。そして、点検作業員は、表示された点検プログラムの点検手順に沿って点検を行い、点検用携帯端末220に各種情報を入力する。具体的に、点検作業員は、点検プログラムに沿った点検作業を行い、入出力部70を操作して点検結果を入力することで、点検用携帯端末220は、入力された情報を入力情報として取得する。また、点検作業員は、コード読取部74により射出成形機100の各部品に貼り付けられた情報コードを読み取ることで、点検用携帯端末220は、読み取った情報を部品情報として取得する。そして、点検用携帯端末220は、取得した入力情報、部品情報を点検情報として、情報通信部73からネットワーク250を介して情報管理装置230へ送信する。
【0037】
情報管理装置230は、いわゆるコンピュータであり、キーボードやモニターで構成された入出力部80と、各種プログラムを格納する記憶部81と、各種プログラムを実行する処理部82と、射出成形機100および情報管理装置230との間で情報通信を行う情報通信部83と、を備え、これらは互いに接続され、互いに信号の受け渡しが可能になっている。そして、情報管理装置230は、HDD等の不揮発性メモリ、RAM等の揮発性メモリおよびCPU等のプロセッサを有し、内部バスを介して、これらを協働させることにより各部を作動させている。なお、上記したように情報管理装置230は、工場外に配置され、射出成形機100の製造元によって管理されている。
【0038】
具体的に、記憶部81は、各種プログラム等を実行するための作業領域となるRAM等の揮発性のメモリ、ROMやハードディスクドライブ等の不揮発性のメモリ、あるいはこれらの組み合わせにより構成できる。そして、記憶部81には、取得した作動情報と点検情報とを格納する情報データベース105と、異なる複数種の点検プログラムを格納する点検プログラムデータベース102と、射出成形機100を構成する各部品の補修費用に関する情報を格納する補修費用データベース103と、が設けられている。
【0039】
処理部82は、各種プログラムを実行するための演算を行うCPU等で構成されており、不具合判定部(不具合判定手段)90と、見積書作成部(見積書作成手段)96と、を備えている。
【0040】
不具合判定部90は、予め設定された不具合判定値をしきい値とし、情報通信部83を介して取得した作動情報および点検情報を、不具合判定値と大小比較することで、射出成形機100のどの部分に不具合が生じているか否かを判定し、不具合要因を特定する。
【0041】
見積書作成部96は、不具合判定部90により特定された不良部品の補修費用に関する見積書を作成する。具体的に、点検作業時において、点検用携帯端末220は、コード読取部74により情報コードを読み取ることで、各部品の部品情報を取得する。そして、見積書作成部96は、取得した複数の部品情報のうち、不具合判定部90により特定された不良部品に対応する部品情報を選定し、選定した部品情報に基づいて、補修費用データベース103から不良部品に対応する補修費用を読み出す。この後、見積書作成部96は、不良部品に関する補修費用を見積書データとして書式化し、書式化した見積書データを印刷することで、見積書を作成可能となっている。なお、書式化した見積書データを、ネットワーク250を介して部品業者に送付することで、部品発注を簡単に行うことができ、不良部品の特定から部品発注に至る工程を効率的に行うことができる。
【0042】
情報通信部83は、作動情報収集装置210から送信された作動情報および点検用携帯端末220から送信された点検情報を取得している。そして、情報通信部83は、取得した作動情報および点検情報を記憶部81の情報データベース105へ格納する。
【0043】
次に、図4を参照して、上記した射出成形機100の点検システムを用いて、点検作業を行う一連の点検フローについて、説明する。この点検フローでは、情報管理装置230、作動情報収集装置210および点検用携帯端末220が用いられ、相互に情報通信可能となっている。先ず、情報管理装置230は、作動情報収集装置210において収集する作動情報の種類を予め設定し(ステップS11)、作動情報収集装置210に設定した種類の作動情報の収集を行うように指令する。すると、作動情報収集装置210は、射出成形機100の作動情報の収集を開始し(ステップS1)、収集した作動情報を情報管理装置230へ送信する(ステップS2)。
ここで、射出成形機100で収集する作動情報としては、
1)射出シリンダ8の射出圧検出センサ301における射出圧、
2)各リング状ヒータ9の温度センサ302におけるヒータ温度、
3)型締シリンダ50の型締圧検出センサ303における型締圧、
4)油圧ポンプ31のポンプ元圧センサ304におけるポンプ元圧、
等がある。
【0044】
一方、点検用携帯端末220を保持した点検作業員は、定期的に射出成形機100の点検作業を行う(ステップS31)。
このとき、点検作業員は、点検用携帯端末220に格納された点検プログラムに従って、点検作業を行うと共に、点検結果を点検用携帯端末220に入力する。これにより、点検用携帯端末220は、入力された点検結果を点検情報として取得する(ステップS32)。点検作業の終了後、点検作業員は点検用携帯端末220を操作して、点検情報を点検用携帯端末220から情報管理装置230へ向けて送信する(ステップS33)。
ここでは、例えば、射出成形機100の水平度、リニアベアリングガイド22とリニアベアリング21の隙間、可動ダイプレート3の挿通孔3bに設けられたブッシュの内径等を計測し、それらの計測値を点検情報として取得し、情報管理装置230へ送信する。
【0045】
作動情報収集装置210から作動情報が送信されると共に、点検用携帯端末220から点検情報が送信されると、情報管理装置230は、作動情報および点検情報を取得する(ステップS12)。そして、情報管理装置230は、不具合判定部90により射出成形機100の不具合判定を行うべく、取得した作動情報および点検情報と、射出成形機100の不具合発生との相関関係の分析を行う(ステップS13)。
ここで、前記の射出成形機100の作動情報の1)〜4)のそれぞれが、予め定めた基準範囲内に入っているか否かを判定する。また、4)のポンプ元圧に対し、1)の射出圧および3)の型締圧が規定の範囲内に入るか否かを判定する。
また、射出成形機100の点検情報として、射出成形機100の水平度、リニアベアリングガイド22とリニアベアリング21の隙間、可動ダイプレート3の挿通孔3bに設けられたブッシュの内径等を計測値が、予め定めた基準範囲内に入っているか否かを判定する。
なお、ステップS12において取得した作動情報および点検情報や、ステップS13において分析して得られたデータは、情報データベース105に記憶保存される(ステップS14)。
【0046】
この後、情報管理装置230は、不具合判定部90により射出成形機100の不具合判定を行い(ステップS15)、射出成形機100に不具合が生じていないと判定すると、作動情報収集装置210は、点検レポート作成部60により点検レポートデータを生成し(ステップS3)、作成した点検レポートデータを印刷する(ステップS4)。
【0047】
一方で、情報管理装置230は、射出成形機100に不具合が生じていると判定すると、不具合を引き起こす要因となる不具合要因を解消すべく、不具合判定部90によって特定された不良部位の調整や不良部品の交換を指示したりする(ステップS17)。
ここで、射出成形機100の水平度が基準範囲外である場合には、水平度の再調整を指示する。また、リニアベアリングガイド22とリニアベアリング21の隙間、可動ダイプレート3の挿通孔3bに設けられたブッシュの内径が基準範囲外である場合には、リニアベアリングガイド22とリニアベアリング21の隙間調整や、シュー交換、ブッシュの交換を指示する。
1)の射出圧検出センサ301における射出圧が基準範囲外である場合には、射出シリンダ8の点検を指示し、その点検結果に応じて射出シリンダ8の調整または交換を指示する。
2)の各温度センサ302におけるヒータ温度が基準範囲外である場合には、リング状ヒータ9の点検を指示し、その点検結果に応じて調整または交換を指示する。
3)型締シリンダ50における型締圧が基準範囲外である場合には、型締シリンダ50の点検を指示し、その点検結果に応じて型締シリンダ50の調整または交換を指示する。
4)油圧ポンプ31におけるポンプ元圧が基準範囲外である場合には、油圧ポンプ31の点検を指示し、その点検結果に応じて油圧ポンプ31の調整または交換を指示する。
また、4)のポンプ元圧に対し、1)の射出圧および3)の型締圧が規定の範囲内に入っていない場合には、油圧ポンプ31と射出シリンダ8、油圧ポンプ31と型締シリンダ50との間に設けられたバルブ(4方向切換弁34,2方向切換弁35等)の点検を指示し、その点検結果に応じて該当部品の調整または交換を指示する。
【0048】
そして、情報管理装置230は、特定した射出成形機100の調節部位を調整する調整指令を点検用携帯端末220へ送信し、また、特定した不良部品を交換する交換指令を点検用携帯端末220へ送信する。
【0049】
続いて、点検作業員は、点検用携帯端末220で受信した調整指令や交換指令に従って、射出成形機100の不良部品を交換したり、射出成形機100の調節部位を調整したりすることで、射出成形機100の不具合を解消する(ステップS34)。この後、点検作業員は、射出成形機100の不具合を解消した修復作業に関する修復情報を、点検用携帯端末220に入力する(ステップS35)。そして、点検作業員は点検用携帯端末220を操作して、修復情報を点検用携帯端末220から情報管理装置230へ向けて送信すると共に、修復情報を点検用携帯端末220から作動情報収集装置210へ向けて送信する(ステップS36)。
【0050】
修復情報を受信した作動情報収集装置210は、点検レポート作成部60により、受信した修復情報に基づいて、点検レポートデータを生成する(ステップS5)と共に、作成した点検レポートデータに基づいて印刷を行うことで、点検レポートを作成する(ステップS6)。一方、修復情報を受信した情報管理装置230は、受信した修復情報を記憶部81の情報データベース105に保存する(ステップS18,19)。
【0051】
以上の構成によれば、情報管理装置230は、射出成形機100の入出力部40や各種センサによって得られた作動情報と、点検用携帯端末220によって得られた点検情報と、を取得することができる。これにより、情報管理装置230は、得られる情報量を増大させることができるため、不具合判定部90による不具合判定を好適に行うことができる。また、点検作業員は、点検用携帯端末220を保持して点検作業を行うことができるため、点検用携帯端末220の点検プログラムに従って、点検作業を行うことにより、点検作業員の熟練度に関わらず、適切且つ効率良く点検を行うことができる。
【0052】
また、情報管理装置230は、射出成形機100の各部品に付された情報コードを、点検用携帯端末220のコード読取部74により読み取って部品情報を取得し、取得した部品情報に基づいて、見積書を簡単に作成することができる。
【0053】
なお、上記実施の形態では、射出成形機100のポンプ元圧、射出圧、型締圧、射出ヒータ温度について点検を行う構成としたが、そのすべてを対象とする必要はなく、また、もちろんこれ以外のパラメータを含めることも可能である。
また、射出成形機100の構成についても、上記した以外の適宜の構成とすることが可能である。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0054】
2…固定ダイプレート、3…可動ダイプレート、4…固定金型、5…可動金型、7…タイバー、8…射出シリンダ、9…リング状ヒータ、10…射出成形機、31…油圧ポンプ、34…4方向切換弁、35…2方向切換弁、36…油圧センサ、37…コントローラ、40…入出力部、41…油圧設定器、42…流量設定器、50…型締シリンダ、90…不具合判定部(不具合判定手段)、96…見積書作成部(見積書作成手段)、100…射出成形機、200…点検システム、210…作動情報収集装置、220…点検用携帯端末、230…情報管理装置、250…ネットワーク、301…射出圧検出センサ(作動検出手段)、302…温度センサ(作動検出手段)、303…型締圧検出センサ(作動検出手段)、304…ポンプ元圧センサ(作動検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動状態を検出可能な作動検出手段を備えた射出成形機と、
前記射出成形機の点検作業手順を表示するとともに、点検作業によって得られた情報を入力可能に構成された点検用携帯端末と、
ネットワークを介して前記射出成形機および前記点検用携帯端末に通信可能に接続され、前記作動検出手段により検出された検出結果を前記射出成形機の作動情報として取得すると共に前記点検用携帯端末への入力情報を点検情報として取得する情報管理装置と、を備え、
前記作動検出手段は、少なくとも、前記射出成形機における樹脂の射出圧と、型締圧と、および前記射出圧および前記型締圧を発生させるポンプの元圧と、を検出することを特徴とする射出成形機の点検システム。
【請求項2】
前記情報管理装置は、
取得した前記作動情報および前記点検情報と、予め設定された不具合判定値とを比較して、前記射出成形機に不具合が生じているか否かを判定する不具合判定手段を、備えたことを特徴とする請求項1に記載の射出成形機の点検システム。
【請求項3】
前記射出成形機を構成する各部品には、前記各部品に関する部品情報を画像化した情報コードが設けられ、
前記点検用携帯端末は、前記情報コードを読み取って前記部品情報を取得するコード読取手段を、さらに備え、
前記情報管理装置は、前記コード読取手段により読み取った前記各部品の前記部品情報に基づいて、見積書を作成する見積書作成手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の射出成形機の点検システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−35553(P2012−35553A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−179135(P2010−179135)
【出願日】平成22年8月10日(2010.8.10)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】