説明

射出成形機及び射出成形機の制御方法

【課題】金型へ射出される射出材料の射出量の均一化を図ること。
【解決手段】本発明の射出成形機は、射出シリンダと、前記射出シリンダ内に配設された押圧部を備え、前記押圧部を移動することで前記射出シリンダ内の射出材料を前記射出シリンダから射出させる駆動手段と、前記駆動手段を制御して、射出時の圧力よりも低い圧力で前記押圧部により前記射出シリンダ内の射出材料を押圧させるプリプレッシャ制御を行う駆動制御手段と、前記押圧部の位置を検出する検出手段と、前記検出手段により検出された、前記プリプレッシャ制御により移動した前記押圧部の位置に基づき、射出量が規定量となるように成形条件を設定する設定手段と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は射出成形機及び射出成形機の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形機では、樹脂材料に代表される射出材料を射出シリンダ内で溶融し、射出シリンダ内から押し出すことで金型内へ射出する。射出機構としては、スクリュ式を採用したもの以外に、プランジャ式のものが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−234526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
量産される成形品のばらつきを抑制するためには、金型へ射出される射出材料の射出量をできるだけ均一にする必要がある。しかし、射出シリンダへ供給される射出材料の供給量には誤差が存在する。また、射出シリンダ内においては、一般に、ノズル側から反対側へ射出材料の溶融層、半溶融層、固層が形成され、これらの層分布は一様ではない。よって、金型へ射出される射出材料の射出量にばらつきが生じ得る。
【0005】
本発明の目的は、金型へ射出される射出材料の射出量の均一化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、射出シリンダと、前記射出シリンダ内に配設された押圧部を備え、前記押圧部を移動することで前記射出シリンダ内の射出材料を前記射出シリンダから射出させる駆動手段と、前記駆動手段を制御して、射出時の圧力よりも低い圧力で前記押圧部により前記射出シリンダ内の射出材料を押圧させるプリプレッシャ制御を行う駆動制御手段と、前記押圧部の位置を検出する検出手段と、前記検出手段により検出された、前記プリプレッシャ制御により移動した前記押圧部の位置に基づき、射出量が規定量となるように成形条件を設定する設定手段と、を備えたことを特徴とする射出成形機が提供される。
【0007】
また、本発明によれば、射出シリンダと、前記射出シリンダ内に配設された押圧部を備え、前記押圧部を移動することで前記射出シリンダ内の射出材料を前記射出シリンダから射出させる駆動手段と、前記押圧部の位置を検出する検出手段と、を備えた射出成形機の制御方法であって、前記駆動手段を制御して、射出時の圧力よりも低い圧力で前記押圧部により前記射出シリンダ内の射出材料を押圧させるプリプレッシャ制御工程と、前記検出手段により検出された、前記プリプレッシャ制御工程により移動した前記押圧部の位置に基づき、射出量が規定量となるように成形条件を設定する設定工程と、を備えたことを特徴とする射出成形機の制御方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、金型へ射出される射出材料の射出量の均一化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態に係る射出成形機の説明図。
【図2】制御部のブロック図。
【図3】押圧部の位置を検出するセンサの例の説明図。
【図4】(A)乃至(D)はプリプレッシャ制御の説明図。
【図5】処理部が実行する処理の例を示すフローチャート。
【図6】処理部が実行する処理の他の例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<射出成形機>
図1は、本発明の一実施形態に係る射出成形機Aの説明図である。射出成形機Aは、射出材料である溶融樹脂を金型4及び5に射出する射出装置1と、金型4及び5を保持してその型締め、型開きを行う型締装置2と、成形品と共に生じたランナを排出するランナ排出装置3と、を備える。本実施形態では竪型の射出成形機としたが横型でもよい。
【0011】
<射出装置>
射出装置1は、射出シリンダ10と、材料供給装置16と、ホッパ17とを備える。射出シリンダ10は、内部に射出材料(ここでは粒状の樹脂材料)の通路11aを有した円筒状の加熱筒11を備える。通路11aは加熱筒11と同心で形成され、加熱筒11の上端から下端までを貫通している。加熱筒11の下部の周囲には加熱筒11を加熱するバンドヒータ13が設けられており、その熱により通路11aを通過する射出材料は溶融樹脂となる。
【0012】
加熱筒11の下端にはノズル(射出部)12が設けられており、ノズル12の周囲にもバンドヒータを設けることができる。加熱筒11には駆動ユニット14が設けられている。駆動ユニット14は、通路11a内に配設された押圧部14aを備え、押圧部14aを上下に移動する駆動機構を加熱筒11の上端部に備えている。押圧部14aを下方に移動することで、通路11a内の射出材料がノズル12から射出されることになる。
【0013】
駆動機構は、駆動源と駆動源の出力を押圧部14aに伝達する動力伝達機構と、を備える。駆動源は本実施形態の場合、モータを想定している。動力伝達機構は例えばボールネジ機構である。
【0014】
なお、本実施形態の場合、押圧部14aの先端面は平坦面であるが、円錐形状等のように尖っていてもよい。また、射出機構は押圧部14aをプランジャとしたプランジャ式であるが、スクリュー式等、他の方式であってもよい。
【0015】
加熱筒11の上側部には支持部15が一体に形成されている。本実施形態では加熱筒11と支持部15とを一体に形成したが、別体として両者を固定する構成でもよい。支持部15は全体として直方体形状をなしており、材料供給装置16の円筒部16aの先端部が挿入されて接続される取付孔を有している。この取付孔は通路11aとを連通し、材料供給装置16により送出される射出材料が通路11aに導かれることになる。
【0016】
材料供給装置16は、ホッパ17に貯留された射出材料を射出シリンダ10に供給する装置である。材料供給装置16は、内部に射出材料の供給通路が形成された円筒部31と、円筒部31内に設けられたスクリュー16bと、スクリュー16bを回転させるモータ16cと、を備える。ホッパ14内の射出材料は自重により円筒部31内の供給通路に落下して該供給通路に導入される。そして、スクリュー16bを回転することで、射出材料を加熱筒11に送出することができる。また、スクリュー16bの回転量により供給量を制御することができる。
【0017】
なお、本実施形態ではこのようにスクリューコンベア形式の構成としたが、プランジャを進退させて粒状材料を送出する機構等、他の形式の送出機構を採用してもよい。
【0018】
<型締装置>
型締装置2は、固定側プラテン21と、この固定側プラテン21と金型4を保持する固定側型板ホルダー22と、金型5を保持する可動側プラテンとしての可動側型板ホルダー23と、金型を開閉するように型締め力を作用させるための型締め油圧シリンダー24と、可動側型板ホルダー23と型締め油圧シリンダー24を連結する型締めシリンダー連結部24aと、を有している。25はタイバー、26はアングルである。
【0019】
成形品を形成するキャビティ部5aを有する金型5には、受け板27a、エジェクターピン27d、リターンピン27b、戻しバネ27c及びカセット型エジェクタープレート27eが取り付けられて、図1で左側から固定側型板ホルダー22に着脱可能なカセット式の金型を構成している。図1において28cはエジェクター用連結バー、28bは戻しバネである。金型4にはキャビティ部5aと連通したスプール4aと、ランナロック部材34が装着される凹部4bとが形成されている。
【0020】
<ランナ排出装置>
ランナ排出装置3は、ランナロック部材34と、駆動ユニット30と、分離部35と、を備える。ランナロック部材34は、スプール4aと連通して溶融樹脂が通過するランナを形成すると共に成形後に形成されたランナ部分を保持するランナ保持部をその先端部に有している。
【0021】
駆動ユニット30は、モータを収容した駆動部31と、ボールネジ軸32と、ボールネジ軸に噛合したボールナット33と、を有している。ボールナット33はランナロック部材34に接続されている。駆動部31に収容されたモータはボールネジ軸32を回転し、これによりランナロック部材34を図1で左右方向に直線的に往復移動することができる。このような構成により、駆動ユニット30は、ランナロック部材34が金型4に装着された装着位置(図1)と、非装着位置との間でランナロック部材34を移動する。本実施形態では、駆動ユニット30としてボールネジ機構を採用したが、他の機構を採用してもよい。また、モータを駆動源としたが、エアシリンダ等、他の種類の駆動源を採用してもよい。
【0022】
分離部35は、ランナロック部材34のランナ保持部に保持されたランナ部分をランナ保持部から分離するための構成である。本実施形態の場合、分離部34は、駆動ユニット30によるランナロック部材34の移動に伴う、ランナ保持部に保持されたランナ部分の移動経路の途中に設けられており、ランナロック部材34の移動によりランナ部分と衝突することで分離を行う衝突部材である。
【0023】
ランナ排出装置3によるランナの分離動作について説明すると、成形が完了すると型開きが行われて金型4が固定側プラテン21と分離した状態になる。この状態ではランナロック部材34は装着位置に位置したままとなり、そのランナ保持部にはランナ部分が保持されている。本実施形態ではランナ部分が型開きにより成形品と分離される場合を想定しているが、金型の構成次第でランナ部分には成形品が連なったままの場合もあり得る。
【0024】
次に、駆動ユニット30を駆動して非装着位置にランナロック部材34を移動する。その途中でランナ部分が分離部350と衝突してランナ保持部から分離されることになる。
【0025】
<制御部>
次に、図2を参照して制御系の構成について説明する。制御部100は、CPU101、記憶部102及びI/F(インタフェース)103を備える。CPU101は、センサ108の検出結果を取得し、記憶部102に記憶されたプログラムにしたがって、アクチュエータ106やヒータ107等の制御を行う。
【0026】
記憶部102には、例えば、ROM、RAM、ハードディスク等が含まれる。I/F103はCPU101と、外部のデバイスとのインタフェースである。入力部104は、例えば、キーボード、マウス等である。作業者は入力部104を介して制御部100に動作指令や成形条件に関わる各種のパラメータ等の入力を行うことができる。表示部120は、例えば、LCD等のディスプレイであり、射出成形機Aの情報を表示する。
【0027】
アクチュエータ106には、駆動ユニット14や駆動部31が備える各モータ、材料供給装置16のモータ16c、油圧シリンダー24用の制御弁が含まれる。ヒータ107にはバンドヒータ13が含まれる。
【0028】
センサ108には、押圧部14aの位置を検出する位置センサ108aが含まれる。図3(A)及び(B)は位置センサ108aの例を示す説明図である。同図の例では、押圧部14aに被検知部50が接続されている。被検知部50は押圧部14aの移動方向にその幅(厚さ)が連続的に変化した光透過性を有する部材である。位置センサ108aは、発光素子40と受光素子41とを備えた光センサであり、発光素子40が発光した光を受光素子41が受光する。
【0029】
被検知部50が押圧部14aの移動方向にその幅が連続的に変化しているので、押圧部14aの位置によって、受光素子41が受光する光の強度が変化する。例えば、押圧部14aが図3(B)の位置にある場合には、図3(A)の位置にある場合よりも、発光素子40が発光した光が被検知部50を透過する距離が長いので、受光素子41が受光する光の強度が弱くなる。こうして、受光素子41が受光した光の強弱により、押圧部14aの位置を検出できる。
【0030】
なお、位置センサ108aとしては、押圧部14aの位置を検出可能であればどのようなものであってもよい。例えば、駆動ユニット14のモータの回転量を検出するエンコーダを設け、エンコーダにより押圧部14aの位置を検出するようにしてもよい。
【0031】
<プリプレッシャ制御>
本実施形態では、射出材料の射出前に、射出シリンダ10内の射出材料を加圧するプリプレッシャ制御を行う。図4(A)乃至(D)を参照してその内容を説明する。
【0032】
射出シリンダ10から射出される射出材料の射出量にばらつきがあると成形品にばらつきが生じる。射出量のばらつきの主要因は、例えば、金型の経時劣化等に伴う成形部分の微小な変動や成形時の外部環境条件等の変動の他、射出シリンダ10内における射出材料の状態にある。図4(A)は、射出シリンダ10内(通路11a内)の射出材料の状態を模式的に示した図である。
【0033】
同図に示すように、射出シリンダ10内は、ノズル12側から反対側へ射出材料の溶融層、半溶融層、固層が形成される。これらの層分布は毎回の射出で同じはなく、射出量のばらつきが生じる。例えば、溶融層の割合が相対的に多いと射出量は多くなる。逆に、固層の割合が相対的に多いと射出量は少なくなる。このような層分布のほか、かさ密度等も影響する。
【0034】
そこで、本実施形態では、射出シリンダ10内の射出材料を押圧部14aによって一定の圧力で加圧するプリプレッシャ制御を行う。加圧の圧力は、駆動ユニット14のモータのトルクを制御することで制御できる。そして、プリプレッシャ制御により移動した押圧部14aの位置を位置センサ108aで検出する。プリプレッシャ制御においては、加圧の圧力以外にも、押圧部14aの移動速度、射出シリンダ10内の温度も一定にすることが好ましい。
【0035】
図4(B)はプリプレッシャ制御を行った場合を模式的に示した図である。押圧部14aの位置は、その先端位置を押圧部14aの移動方向である座標(同図のY座標。ノズル12側で小、駆動ユニット14側で大)で管理する。位置Y0は、押圧部14aが材料供給装置16からの通路11a内への導入を妨げない位置である。位置Ypは、押圧部14aがプリプレッシャ制御により移動した位置であり、図4(B)の位置は一例である。
【0036】
押圧部14aの位置Ypの検出結果は、射出シリンダ10内の射出材料の状態を知る指標となる。例えば、射出シリンダ10内に射出材料が相対的に少ない場合や、溶融層の割合が相対的に多い場合は、押圧部14aが同じ圧力で射出材料を加圧しても、その位置はより深い位置(ノズル12側)まで移動することになる。
【0037】
そして、押圧部14aの位置Ypの検出結果に基づき成形条件を適宜所定のタイミングで設定(補正)することで、射出量を規定量となるように調整して均一化できる。設定する成形条件としては、例えば、材料供給装置16による通路11a内への射出材料の供給量が挙げられる。また、射出材料の供給量以外にも、射出材料の溶融状態に影響する点でバンドヒータ13の温度、射出後の冷却工程の時間等、射出シリンダ10の温度制御に関わる条件も挙げられる。また、これらの組み合わせでもよい。なお、バンドヒータ13の温度を高くすれば、射出材料の溶融が促進されるので射出量を多くすることができ、逆に低くすれば射出量を少なくすることができる。冷却工程の時間を長くとれば、射出材料の加熱時間が長くなるので射出材料の溶融が促進されて射出量を多くすることができ、逆に短くすれば射出量を少なくすることができる。
【0038】
プリプレッシャ制御において、射出シリンダ10内の射出材料を押圧部14aが加圧する圧力は、射出時の圧力よりも低い圧力とする。本実施形態の場合、ノズル12としてオープンノズルの場合を想定している。したがって、プリプレッシャ制御における押圧部14aの圧力は、射出材料がノズル12から出ない程度の圧力であることが好ましい。また、ノズル12をシャットオフノズルとした場合は、残留圧力が残らない程度の圧力とすることが好ましい。
【0039】
また、射出材料の種類(形状、組成)によって加圧時の変形量が異なるため、プリプレッシャ制御における押圧部14aの好適な圧力は、射出材料の種類(形状、組成)に応じて設定できることが好ましい。例えば、入力部104を介してユーザの指定圧力の入力を受け付け、その圧力にてプリプレッシャ制御を行ってもよい。或いは、射出材料の種類に応じた好適な圧力の情報を記憶部102に記憶しておき、入力部104を介してユーザの射出材料の種類の入力を受け付け、対応する情報を記憶部102から読み出して圧力を設定するようにしてもよい。
【0040】
射出材料の種類によっては、1回の加圧では射出シリンダ10内の射出材料が密に圧縮されない場合がある。そこで、押圧部14aを複数回往復移動させて射出材料を複数回加圧してもよい。図4(C)は押圧部14aを複数回(2回)往復移動させた例を示す。同図の例では、1回目の加圧で押圧部14aがY1の位置に、2回目の加圧で押圧部14aがY2の位置に、移動したことを示している。各回の圧力は同じにしてもよいし、異ならせてもよい。
【0041】
次に、位置センサ108aにより、プリプレッシャ制御における押圧部14aの位置Ypに加えて射出完了時における押圧部14aの位置も検出することで、実際に射出された射出材料の射出量を演算することができる。図4(D)はその説明図である。同図の例では、射出完了時における押圧部14aの位置が位置Ysであった場合を例示している。この場合、射出量は、係数×(Yp−Ys)で演算できる。実際に射出された射出材料の射出量を演算し、次回の射出の成形条件を設定することで、射出量を規定量となるように均一化できる。
【0042】
なお、プリプレッシャ制御から射出に移行するにあたっては、押圧部14aの位置が位置Ypの状態で射出に移行してもよいし、押圧部14aを一旦上昇させた後に射出に移行してもよい。後者の場合、射出スピードが要求される薄肉の成形品や、衝撃荷重をかけて一気に流し込みたい成形品等に有益である。
【0043】
プリプレッシャ制御を行うタイミングとしては、成形サイクルタイムに影響の受けない冷却工程時や、成形品取り出しの時間を利用する事が好ましい。
【0044】
<処理例1>
図5は、処理部101が実行する成形処理の例を示すフローチャートである。ここでは、プリプレッシャ制御の結果を利用した成形条件の設定として、射出材料の供給量の補正を行う例を説明する。本実施形態の場合、1回の射出のための、材料供給装置16から射出シリンダ10への材料供給量は固定量とし、プリプレッシャ制御の結果により増量補正等を行う。
【0045】
S1では入力部104を介してユーザの入力を受け付ける。受け付ける内容は、例えば、成形条件の設定に関する各種のパラメータであり、後述するS4、S12の閾値等、以下に説明する処理の中で必要とされるパラメータを含めることができる。S2では準備処理を行う。ここでは、材料供給、温度管理、テストショット等、実際の射出成形に必要な準備を行う。その後、実際の射出成形の処理を開始する。
【0046】
S3ではプリプレッシャ制御を行う。ここでは、上記の通り、駆動ユニット14のモータを制御して、射出時の圧力よりも低い圧力で押圧部14aにより射出シリンダ10内の射出材料を押圧させる。また、位置センサ108aの検出結果を取得して、押圧部14aの位置Ypを特定する。
【0047】
S4では、位置Ypと予め定めた閾値とを比較する。位置Ypが閾値以上の場合(駆動ユニット14側であった場合)はS6へ進み、位置Ypが閾値未満の場合(ノズル12側であった場合)は、射出量が少ないと予想されることからS5へ進む。
【0048】
S5では成形条件の設定を行う。本実施形態の場合、材料供給装置16から射出シリンダ10へ増量する射出材料の供給量を設定する。供給量は、例えば、係数×|Yp−閾値|で算出される。この閾値はS4で用いた閾値である。続いて、設定した供給量の射出材料が材料供給装置16から射出シリンダ10へ供給されるように材料供給装置16を制御する。このとき、押圧部14aの位置はY0に戻すことはいうまでもない。射出材料の供給が完了すると、S3へ戻って再度プリプレッシャ制御を行う。
【0049】
S6では型締めを行う。S7では射出を行う。また、射出完了時の押圧部14aの位置Ysを位置センサ108aで検出し記憶部102に保存する。S8では冷却工程を開始する。この冷却工程の時間を利用して、本実施形態では次回の射出に備えたプリプレッシャ制御と射出材料の供給を行う。具体的には、まず、S9で1回の射出のための射出材料を材料供給装置16から射出シリンダ10へ供給する。
【0050】
S10からS12の処理はS3からS5の処理と同じである。つまり、S10ではプリプレッシャ制御を行う。S12では、S11のプリプレッシャ制御において位置センサ108aが検出した押圧部14aの位置Ypと閾値とを比較する。位置Ypが閾値以上の場合はS13へ進み、位置Ypが閾値未満の場合は、射出量が少ないと予想されることからS12へ進む。S12ではS5と同じ成形条件の設定、射出材料の供給を行い、S11へ戻る。
【0051】
冷却工程の終了により、S13では型開きを行う。S14では成形品の排出、ランナの分離を行う。その後、S6へ戻り、同様の処理を繰り返して順次成形品が生成されていく。
【0052】
なお、S7で保存した射出完了時の押圧部14aの位置Ysからは、各回の射出の射出量、今回と前回の射出量の差、今回と前回の射出完了時の押圧部14aの位置の差、を演算することができ、成形品の品質データや、今後の各種成形条件設定のための履歴データとして活用できる。
【0053】
<処理例2>
図6は、処理部101が実行する成形処理の別の例を示すフローチャートである。ここでもプリプレッシャ制御の結果を利用した成形条件の設定として、射出材料の供給量の補正を行う例を説明する。本実施形態の場合、1回の射出のための、材料供給装置16から射出シリンダ10への材料供給量は固定量とせず、前回の射出量等に応じて調整する。
【0054】
S21では入力部104を介してユーザの入力を受け付ける処理を、S22では準備処理を行う。図5のS1、S2と同様の処理である。
【0055】
S23ではプリプレッシャ制御を行う。その内容は上記の通りである。また、位置センサ108aの検出結果を取得して、押圧部14aの位置Ypを特定する。S24では型締めを行う。S25では射出を行う。また、射出完了時の押圧部14aの位置Ysを位置センサ108aで検出し記憶部102に保存する。S26では冷却工程を開始する。この冷却工程の時間を利用して、本実施形態では次回の射出に備えたプリプレッシャ制御と射出材料の供給を行う。
【0056】
まず、S27では、後述するS28の供給量設定及びS32の成形条件設定で用いる演算式を選択する。演算式はS25で保存した位置Ysと閾値との比較により以下の通り選択する。
○閾値>Ysの場合
S28の演算式:供給量=基準量+補正量α
S32の演算式:供給量=基準量+補正量α+補正量β
○閾値≦Ysの場合
S28の演算式:供給量=基準量−補正量α
S32の演算式:供給量=基準量−補正量α−補正量β
なお、補正量α=係数×|閾値−Ys|、補正量β=係数×ΔYpであり、ΔYpはS23で特定した位置Ypと後述するS30で特定した位置Ypとの差分(絶対値)である。閾値>Ysの場合の場合は、押圧部14aのノズル12側への移動量が相対的に大きかった場合であり、射出シリンダ10内の射出材料の残量が相対的に少ない状態にあるので、供給量を増大方向で調整する。逆に、閾値≦Ysの場合の場合は、押圧部14aのノズル12側への移動量が相対的に少なかった場合であり、射出シリンダ10内の射出材料の残量が相対的に多い状態にあるので、供給量を減少方向で調整する。
【0057】
演算式を選択すると、S28で選択した式に基づき、射出シリンダ10へ供給する射出材料の供給量を演算して設定する。S29ではS28で設定した量の射出材料を材料供給装置16から射出シリンダ10へ供給する。
【0058】
射出材料の供給が完了すると、S30でプリプレッシャ制御を行う。また、位置センサ108aの検出結果を取得して、押圧部14aの位置Ypを特定する。S31では、ΔYp(上記の通り、S23、S30で特定した各Ypの差分(絶対値))が、閾値(S27の閾値と同じ)とS25で保存した位置Ysとの差分(絶対値)以上か否かを判定し、該当する場合はS33へ進み、該当しない場合はS32へ進む。
【0059】
S32では成形条件の設定を行う。本実施形態の場合、材料供給装置16から射出シリンダ10へ増量する射出材料の供給量を設定する。供給量はS27で選択した演算式にしたがう。その後、S29へ戻り、射出材料の供給が行われ、S30で再びプリプレッシャ制御が行われることになる。
【0060】
冷却工程の終了により、S33では型開きを行う。S34では成形品の排出、ランナの分離を行う。その後、S23へ戻り、同様の処理を繰り返して順次成形品が生成される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出シリンダと、
前記射出シリンダ内に配設された押圧部を備え、前記押圧部を移動することで前記射出シリンダ内の射出材料を前記射出シリンダから射出させる駆動手段と、
前記駆動手段を制御して、射出時の圧力よりも低い圧力で前記押圧部により前記射出シリンダ内の射出材料を押圧させるプリプレッシャ制御を行う駆動制御手段と、
前記押圧部の位置を検出する検出手段と、
前記検出手段により検出された、前記プリプレッシャ制御により移動した前記押圧部の位置に基づき、射出量が規定量となるように成形条件を設定する設定手段と、
を備えたことを特徴とする射出成形機。
【請求項2】
前記設定手段は、
前記検出手段により検出された、前記プリプレッシャ制御により移動した前記押圧部の位置及び射出完了時における前記押圧部の位置に基づき、射出量が規定量となるように成形条件を設定することを特徴とする請求項1に記載の射出成形機。
【請求項3】
前記射出シリンダに射出材料を供給する供給手段を備え、
前記設定手段は、前記成形条件の設定として、前記供給手段による射出材料の供給量の補正を行うことを特徴とする請求項1に記載の射出成形機。
【請求項4】
前記設定手段が前記成形条件を設定するためのパラメータの、ユーザによる入力を受け付ける手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の射出成形機。
【請求項5】
前記プリプレッシャ制御では、前記押圧部を複数回往復移動させることを特徴とする請求項1に記載の射出成形機。
【請求項6】
射出シリンダと、
前記射出シリンダ内に配設された押圧部を備え、前記押圧部を移動することで前記射出シリンダ内の射出材料を前記射出シリンダから射出させる駆動手段と、
前記押圧部の位置を検出する検出手段と、
を備えた射出成形機の制御方法であって、
前記駆動手段を制御して、射出時の圧力よりも低い圧力で前記押圧部により前記射出シリンダ内の射出材料を押圧させるプリプレッシャ制御工程と、
前記検出手段により検出された、前記プリプレッシャ制御工程により移動した前記押圧部の位置に基づき、射出量が規定量となるように成形条件を設定する設定工程と、
を備えたことを特徴とする射出成形機の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−152960(P2012−152960A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−12309(P2011−12309)
【出願日】平成23年1月24日(2011.1.24)
【出願人】(000104652)キヤノン電子株式会社 (876)
【Fターム(参考)】