説明

射出成形機

【課題】射出ノズルの前進の際に、速度を減速させ、射出ノズル先端の変形・破損を防止することが可能な射出成形機を提供する。
【解決手段】射出成形機1は、エンコーダ14と、制御部21に減速位置記憶手段24を有し、エンコーダ14は減速位置記憶手段24に記憶した射出ノズル減速位置に射出ノズル11が到達したことを検知した場合、制御部21によって射出ノズル11の前進速度を減速させる。これにより、射出ノズル11が固定金型30aにタッチする際の負荷を低減させ、射出ノズル11の先端部の変形・破損を防止することができる

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型にノズルを当接させる際に、ノズル先端に過剰な負荷が係ることを防止するためにノズル移動速度を減速することができる射出成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から射出成形機において、金型を移動ダイプレート及び固定ダイプレートによって挟持し、溶融樹脂の射出ノズルを金型に当接させて金型に溶融樹脂を射出している。この一連の動作を自動化して行っているが、射出ノズルが自動的に前進し金型に当接する際、ノズルの先端が金型に押し当てられる際の速度が速すぎて、ノズル先端を変形・破損してしまう虞があった。
【0003】
例えば、特許文献1では、金型にノズルが当接(以降ノズルタッチと称呼)する際に、型締めユニットの固定盤(固定ダイプレート)に不必要に大きなタッチ力が及ばないように、ノズルタッチ直前にノズルの前進速度を減速させる射出成形機が開示されている。この構成によれば、固定ダイプレートに掛かるタッチ力が不必要に大きくなることがないため、固定ダイプレートが傾いたり、金型の平行度に狂いが生じることが少ないとされている。
【0004】
【特許文献1】特開平6−226787号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の方法では、事前にノズルタッチ位置を把握し、当該位置を射出成形機の制御装置に記憶させなければならず、その設定動作が非常に煩わしく、作業性に欠くものであった。
【0006】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、射出ノズルのタッチ位置が不明な場合においても、射出ノズルの先端部に余剰となる負荷が掛かけない射出成形機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る射出成形機は、
溶融樹脂を射出する射出ノズルを有する射出ユニットと、
金型を挟持するための移動可能なダイプレート(以下、移動ダイプレート)と、
同じく金型を挟持するための位置が固定されたダイプレート(以下、固定ダイプレート)と、を備える射出成形機であって、
前記射出成形機の動作を制御する制御部と
ノズル減速位置記憶手段と、を備え
前記射出ノズルが前進する際、前記制御部は前記ノズル減速位置記憶手段に記憶されたノズル減速位置を読み出し、当該位置にて前記射出ノズルの前進速度を減速させることを特徴とする。
【0008】
請求項1の構成によれば、射出ノズルの前進速度を減速させる位置であるノズル減速位置を記憶するノズル減速位置記憶手段から、制御部がノズル減速位置を読み出し、射出ノズルが前進し、当該ノズル減速位置に到達した際、制御部はこれを検知し、射出ノズルの前進速度を減速させることができる。
【0009】
請求項2に係る射出成形機は、請求項1記載の射出成形機において、前記ノズル減速位置は、ユーザの所望の位置にて設定することが可能なことを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る射出成形機は、請求項1又は2記載の射出成形機において、前記制御部によって、射出ノズルの減速を行うか行わないかの是非をユーザが設定することが可能なことを特徴とする。
【0011】
請求項2及び3の構成によれば、ユーザが射出ノズルの減速を所望する場合に減速動作を行うことができ、所望の位置から減速動作を開始させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る射出成形機によれば、溶融樹脂を射出する射出ノズルを有する射出ユニットと、金型を挟持するための移動可能なダイプレート(以下、移動ダイプレート)と、同じく金型を挟持するための位置が固定されたダイプレート(以下、固定ダイプレート)と、を備える射出成形機であって、前記射出成形機の動作を制御する制御部とノズル減速位置記憶手段と、を備え前記射出ノズルが前進する際、前記制御部は前記ノズル減速位置記憶手段に記憶されたノズル減速位置を読み出し、当該位置にて前記射出ノズルの前進速度を減速させるので、金型の取り付け後等、タッチ位置が不明な場合においても、ノズルの前進位置において最深の位置を基準として、ノズル減速位置記憶手段に記憶された所定の距離を離間した位置からノズル前進速度を減速することができ、ノズル先端の破損を防止することができる。
【0013】
また、ノズル減速位置は、ユーザの所望の位置にて設定することが可能なので、金型の大きさに合わせてノズル減速位置を調節することができ、更に、制御部によって、射出ノズルの減速を行うか行わないかの是非をユーザが設定することが可能なので、減速動作のオン/オフの切換えを行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態としての実施例を図1から図4を参照して説明する。もちろん、本発明は、その発明の趣旨に反さない範囲で、実施例において説明した以外のものに対しても容易に適用可能なことは説明を要するまでもない。
【0015】
図1〜図5は、本発明の一実施例を示し、図1は、本実施例における射出成形機の構成の概要を示すブロック図である。図2は、射出成形機のノズル減速動作の手順を示すフローチャートである。図3は本実施例における射出成形機の射出ノズルの前進速度の減速動作を示す説明図である。図4は、ノズルタッチ位置記憶動作を行う際の指示画面の一例を示す説明図である。図5は、ノズル減速位置をユーザが指示するための設定画面の一例を示す説明図である。
【0016】
本実施例の射出成形機の構成について、図1に基づいて説明する。図1は射出成形機を示すブロック図である。1は射出成形機である。11は溶融樹脂を後述の金型によって形成された図示しないキャビティに射出するための射出ノズルである。12は固定ダイプレートであり、射出成形機1に対して移動しないように固定されている。13は移動ダイプレートであり、射出成形機1に設けられたタイバーにガイドされるように前後に移動可能であり、後述の金型を固定ダイプレート12とで型締を行う。14はノズルタッチ/バック用モータであり、射出ノズル11の前進及び後退の駆動源となるものである。15は射出ノズル先端位置検出手段たるエンコーダであり、ノズルタッチ/バック用モータ14のパルス信号を検出し、射出ノズル11の先端位置や前進及び後退速度を割り出すものである。20はコントローラであり、射出成形機1の動作の制御を行う制御部21、ユーザによる操作や外部機器等の指示入力を担う入力部22、種々の情報や操作・設定画面の表示を行う表示部23、射出ノズル11の前進速度を減速させる位置を記憶する減速位置記憶手段24を有する。
【0017】
続いて、射出ノズル11の前進速度が減速位置にて減速する動作を、図2のフローチャート及び図3の動作概略の説明図に基づいて説明する。図3中の最前進位置とは、射出ノズル11が前進可能な最大範囲を示し、ここを基準(0mm)とする。また、減速位置は、後述の設定画面によりユーザが設定する射出ノズル11の前進速度が減速される地点を示す。最初に金型30の自動増締を開始する(S201)。自動増締動作を終えたら、図3(a)に示すように通常速度にて射出ノズル11を前進させる(S202)。図3(b)のように、射出ノズル11の先端が所定の減速位置に到達したことを検知した場合(S203)、射出ノズル11の前進速度を減速させ、低速にて射出ノズル11を前進させる(S204)。その後、図3(c)のように、固定金型30aに射出ノズル11がタッチしたことを検出した場合(S205)、射出ノズル11を停止させ、ノズルタッチ位置を記憶する(S206)。ノズルタッチ位置を記憶したら、射出ノズル11を後退させ(S207)、型開を行う(S208)。図3(a)〜(c)の各々の状態における射出ノズル11の前進速度をグラフにすると、図3(d)のようになる。
【0018】
図4は、メンテナンス画面の一例である。41の「増締時ノズルタッチ記憶有り」のチェックをオンにすることで、ノズルタッチ位置の記憶動作を行うか否かの設定を行うことができる。また、42の「ノズルタッチ記憶時減速位置」にユーザが所望の数値を入れることで、射出ノズル11の前進速度の減速を行う位置を安全値の範囲内にて設定することができる。安全値とは、予め制御部に記憶される射出ノズル11の減速位置の設定可能範囲として設定されており、その範囲は、最大値がノズル後退限位置、最小値は横型射出成形機の場合固定ダイプレートの金型取付面位置であり、竪型射出成形機の場合は固定金型を取り付けるロータリテーブルの外周位置となる。減速位置の初期値又は未設定時の際の代替値を用いる。例えば安全位置の最小値から20mm離間した箇所を初期値若しくは代替値として採用する。
【0019】
以上のような制御を行うことで、射出ノズル11が金型20にタッチする際の負荷を通常の速度で前進する場合と比較して著しく低下させることができ、射出ノズル11の先端部と金型30双方の変形・破損を防止することができる。また、ノズルタッチ位置を記憶するので、実際の成形品の製造動作の際は上記動作を簡略化し、ノズルタッチ位置直前まで通常速度で射出ノズル11を前進させることができる。
【0020】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。前記実施例では、射出成形機1を横型締のものとしたが、これに限定せずに竪型締の射出成形機に適用したとしても何ら問題ない。また同様に、射出成形機1を横型射出成形機として説明したが、これに限定せずに竪型射出成形機としても何ら問題ない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施例における、射出成形機の構成を示すブロック図である。
【図2】同上、射出成形機の動作を示すフローチャートである。
【図3】同上、射出ノズルの動作の概略を示す説明図である。
【図4】同上、射出成形機のメンテナンス画面の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0022】
1 射出成形機
11 射出ノズル
12 固定ダイプレート
12a 孔部
14 ノズルタッチ/バック用モータ
15 エンコーダ(射出ノズル先端位置検出手段)
20 コントローラ
21 制御部
24 減速位置記憶手段
30 金型
30a 固定金型
30b 移動金型


【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融樹脂を射出する射出ノズルを有する射出ユニットと、
金型を挟持するための移動可能なダイプレート(以下、移動ダイプレート)と、
同じく金型を挟持するための位置が固定されたダイプレート(以下、固定ダイプレート)と、を備える射出成形機であって、
前記射出成形機の動作を制御する制御部と
ノズル減速位置記憶手段と、を備え
前記射出ノズルが前進する際、前記制御部は前記ノズル減速位置記憶手段に記憶されたノズル減速位置を読み出し、当該位置にて前記射出ノズルの前進速度を減速させることを特徴とする射出成形機。
【請求項2】
前記ノズル減速位置は、ユーザの所望の位置にて設定することが可能なことを特徴とする請求項1記載の射出成形機。
【請求項3】
前記制御部によって、射出ノズルの減速を行うか行わないかの是非をユーザが設定することが可能なことを特徴とする請求項1又は2記載の射出成形機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−143045(P2010−143045A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−322001(P2008−322001)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(000222587)東洋機械金属株式会社 (299)
【Fターム(参考)】