射出成形用金型及び該成形用型を用いた射出成形品の色替え方法
【課題】色替えに要する手間や時間を大幅に削減することが可能な射出成形用金型を提供する。
【解決手段】射出成形用金型を、射出ユニット60から成形材料M1,M2を導入するための導入口I1,I2が設けられたノズルタッチブロック10と、導入口I1,I2からそれぞれ導入された成形材料M1,M2をそれぞれ独立して案内するためのホットランナーR10,R20が設けられたマニホールド20と、ノズルタッチブロック10をマニホールド20に対して移動可能に支持するための支持手段30とを備えたものとして、ノズルタッチブロック10をマニホールド20に対して移動させてノズル61に接続される導入口を導入口I1と導入口I2とで切り替えることにより、使用するホットランナーをホットランナーR10とホットランナーR20とで切り替えることができるようにした。
【解決手段】射出成形用金型を、射出ユニット60から成形材料M1,M2を導入するための導入口I1,I2が設けられたノズルタッチブロック10と、導入口I1,I2からそれぞれ導入された成形材料M1,M2をそれぞれ独立して案内するためのホットランナーR10,R20が設けられたマニホールド20と、ノズルタッチブロック10をマニホールド20に対して移動可能に支持するための支持手段30とを備えたものとして、ノズルタッチブロック10をマニホールド20に対して移動させてノズル61に接続される導入口を導入口I1と導入口I2とで切り替えることにより、使用するホットランナーをホットランナーR10とホットランナーR20とで切り替えることができるようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形に用いられる射出成形用金型と、該射出成形用金型で射出成形される製品(射出成形品)の色替え方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、熱可塑性樹脂の射出成形においては、射出ユニットのノズルから導出された溶融状態にある熱可塑性樹脂を射出成形用金型におけるキャビティまで溶融状態に保つことができるように、射出成形用金型における前記ノズルに連結される部分(導入口)と前記キャビティに接続される部分(ゲート)とを結ぶ樹脂通路(ランナー)をヒーターで加熱することが行われている。この樹脂通路は、ホットランナーと呼ばれており、ホットランナーを備えた射出成形用金型は、自動車の内装材など、各種樹脂製品の成形に用いられている。
【0003】
ところで、昔の自動車は、内装材の色が1通りに決まっているものが多かったが、近年の自動車は、多様化する消費者のニーズに応えるため、同一車種であっても、内装材の色を複数の中から選べるようになっているものが多い。このため、自動車の内装材などを製造する企業では、例えば、ある射出成形用金型で黒色の熱可塑性樹脂を射出成形した後、同じ射出成形用金型でベージュ色の熱可塑性樹脂を射出成形するなど、同一の射出成形用金型で複数色の製品を射出成形するといった対応を行う必要に迫られている。
【0004】
しかし、従来の射出成形用金型において、射出成形を行う製品の色をある色(A色とする。)から他の色(B色とする。)へと切り替える際には、射出成形用金型でA色の製品の射出成形を終えた後に、
[1]射出ユニットと射出成形用金型とを切り離し、射出ユニットのスクリューシリンダーの内部に残留するA色の熱可塑性樹脂を射出ユニットのノズルから完全に出し切る、
[2]前記スクリューシリンダーにB色の熱可塑性樹脂を投入し、前記ノズルから導出される熱可塑性樹脂がB色に完全に切り替わるまで射出ユニットのスクリューを駆動する、
[3]前記スクリューを停止させて射出ユニットと射出成形用金型とを再び連結する、
[4]前記スクリューを再び駆動して射出ユニットの前記ノズルから射出成形用金型の導入口へとB色の熱可塑性樹脂を供給し、製品が完全にB色に切り替わるまで試し打ちを行う、
[5]B色の製品の射出成形を行う、
という手順を経ていたために、以下のような不具合が生じていた。
【0005】
すなわち、従来の射出成形用金型では、上記(4)の工程で、ホットランナーの内部のA色の熱可塑性樹脂をB色の熱可塑性樹脂で置換するのであるが、ホットランナーの曲がり角やゲート付近に滞留する熱可塑性樹脂が容易には抜けきらないため、製品が完全にB色に切り替わるまでには、多数回試し打ちを行う必要があった。このため、熱可塑性樹脂や時間を無駄に消費していた。例えば、自動車のドア用内装パネルを2個ずつ射出成形する場合には、色替えの際に、試し打ちを15回(製品数では30個、時間にすると約15分)程度行わなければならない。
【0006】
このような実状に鑑みてか、これまでには、複数のホットランナーを独立して設け、射出成形を行う製品の色に応じて使用するホットランナーを切り替えることができるようにした射出成形用金型(例えば、特許文献1と特許文献2を参照。以下において、この種の射出成形用金型を「ホットランナー切替型の射出成形用金型」と呼ぶことがある。)が提案されている。これにより、同一の射出成形用金型を使用する場合であっても、上記(4)の工程を経ることなく、射出成形品の色替えを行うことができるようになるので、色替えに伴う熱可塑性樹脂の消費を大幅に削減することも可能になる。
【0007】
ところが、特許文献1や特許文献2に記載されている従来のホットランナー切替型の射出成形用金型では、射出成形品の色替えを行う際に、射出ユニットの前記ノズルに対して射出成形用金型の全体を移動させる必要があったため、クレーンなどの大掛かりな装置を必要としていた。このため、従来のホットランナー切替型の射出成形用金型は、熱可塑性樹脂の無駄な消費を抑えることができるものの、手間や時間的損失を削減するという観点では、必ずしも有効なものとはなっていなかった。また、射出成形用金型の周囲にクレーンなどを設置するスペースを確保しなければならないなど、射出成形用金型の設置レイアウトが大きく制限される。
【0008】
【特許文献1】特開昭57−105330号公報
【特許文献2】特開2007−062085号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、射出成形品の色替えに伴う成形材料の無駄な消費を削減するだけでなく、色替えにクレーンなどの大掛かりな装置を必要とせず、色替えに要する手間や時間も大幅に削減することも可能な射出成形用金型を提供するものである。また、この射出成形用金型を用いて好適に行うことのできる射出成形品の色替え方法を提供することも本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題は、射出ユニットから成形材料を導入するための導入口が複数箇所に設けられたノズルタッチブロック(射出成形用金型における前記導入口及びその周辺を形成するブロック)と、それぞれの導入口から導入された成形材料をそれぞれ独立して案内するための複数のホットランナーが設けられたマニホールドと、ノズルタッチブロックをマニホールドに対して移動可能に支持するための支持手段とを備え、ノズルタッチブロックをマニホールドに対して移動させて前記ノズルに接続される導入口を切り替えることにより、使用するホットランナーが切り替えられるようにしたことを特徴とする射出成形用金型を提供することによって解決される。
【0011】
これにより、マニホールドのホットランナーの内部にある成形材料を他の色の成形材料に置き換えることなく、射出成形品の色替えを行うことが可能になるので、成形材料の無駄な消費を削減することが可能になる。また、射出成形用金型の全体を動かさなくても、そのノズルタッチブロックのみを移動させるだけで、射出成形に使用するホットランナーを切り替えることができるので、クレーンなどの大掛かりな装置を用いなくても、射出成形品の色替えを行うことも可能になる。したがって、色替えに要する手間や時間も削減することも可能になる。
【0012】
しかし、本発明の射出成形用金型のように、ノズルタッチブロックとマニホールドとを別体とした場合には、射出ユニットのノズルから導入口へと導入された成形材料が、ノズルタッチブロックとマニホールドとの隙間から漏れ出すおそれがある。このため、本発明の射出成形用金型に、ノズルタッチブロックをマニホールド側へ押さえつけるためのノズルタッチブロック押圧手段を設けると好ましい。これにより、ノズルタッチブロックとマニホールドとの隙間から成形材料が漏れにくくすることが可能になる。
【0013】
ノズルタッチブロック押圧手段としては、後述するように、ノズルタッチブロックをマニホールド側へ押さえつけるための面αを備えたものなどが例示される。ノズルタッチブロック押圧手段は、前記支持手段と一体的に設けてもよいし、別体としてもよい。ノズルタッチブロック押圧手段は、ボルトやナットなどの螺合部材を利用したものであってもよい。
【0014】
本発明の射出成形用金型において、ノズルタッチブロックや支持手段は、ノズルタッチブロックをマニホールドに対して移動させることにより、前記ノズルに接続される導入口を切り替えることのできる形態のものであれば特に限定されない。例えば、支持手段を、ノズルタッチブロックを回転可能に支持する軸体とし、複数の導入口を、前記軸体を中心に回転対称に配してもよい。しかし、設計や加工の容易さなどを考慮すると、複数の導入口を、ノズルタッチブロックの特定方向に沿って1列に設け、支持手段で、ノズルタッチブロックをマニホールドに対して前記特定方向に移動可能に支持させると好ましい。
【0015】
このように、ノズルタッチブロックを前記特定方向に移動可能なものとする場合には、ノズルタッチブロック押圧手段を、ノズルタッチブロックをマニホールド側へ押さえつけるための面αを有するものとし、ノズルタッチブロックに、それが前記特定方向における移動限界位置に近づくにつれてノズルタッチブロック押圧手段の面αとマニホールドにおけるノズルタッチブロックを案内する面βとの隙間に噛み込む一対の噛み込み部を設け、ノズルタッチブロックが前記特定方向のうち一方の移動限界位置にあるときは一の導入口が前記ノズルに接続され、ノズルタッチブロックが前記特定方向のうち他方の移動限界位置にあるときは他の導入口が前記ノズルに接続されるようにすると好ましい。
【0016】
これにより、ノズルタッチブロックを前記特定方向へ移動しやすくしながらも、ノズルタッチブロックを前記特定方向における移動限界位置まで移動させて導入口から導入された成形材料をホットランナーに流す際には、ノズルタッチブロックをマニホールドに強く押しつけることが可能になり、ノズルタッチブロックとマニホールドとの隙間から成形材料が漏れないようにすることができるようになる。
【0017】
この場合、ノズルタッチブロック押圧手段の面αとマニホールドの面βとがなす傾斜角度(以下において、「傾斜角度θ」と表記する。)は、0°よりも大きく、90°よりも小さいのであれば特に限定されない。しかし、傾斜角度θを小さくしすぎた場合には、ノズルタッチブロック押圧手段からノズルタッチブロックに加えられる押圧力の確保が困難になるばかりか、ノズルタッチブロックの前記特定方向での位置決め精度が低下するおそれもある。また、ノズルタッチブロックを前記特定方向に長くしなければならなくなり、ノズルタッチブロックの熱容量が増大するおそれがある。したがって、ノズルタッチブロックにヒーターを設けて、ノズルタッチブロックのホットランナーをホットホットランナーとした場合に、エネルギーが無駄に消費されやすくなる。このため、傾斜角度θは、通常、1°以上とされる。傾斜角度θは、2°以上であると好ましく、3°以上であるとより好ましい。
【0018】
一方、傾斜角度θを大きくしすぎた場合にも、やはり、ノズルタッチブロック押圧手段からノズルタッチブロックに加えられる押圧力の確保が困難になるおそれがある。また、ノズルタッチブロックの厚さを大きくしなければならなくなり、ノズルタッチブロックの熱容量が増大するおそれがある。このため、傾斜角度θは、通常、60°以下とされる。傾斜角度θは、45°以下であると好ましく、30°以下であるとより好ましい。
【0019】
また、本発明の射出成形用金型において、マニホールドに設ける複数のホットランナーの配置は、所望のゲートまで成形材料を案内できるのであれば特に限定されないが、複数のホットランナーをマニホールドの厚さ方向において段違いに配すると好ましい。これにより、マニホールドでホットランナーを複雑に曲げることなく、複数のホットランナーを互いにぶつからないように交叉させることが可能になる。したがって、マニホールドの加工が容易になる。
【0020】
ところで、上記課題は、射出ユニットから成形材料を導入するための導入口が複数箇所に設けられたノズルタッチブロックと、それぞれの導入口から導入された成形材料をそれぞれ独立して案内するための複数のホットランナーが設けられたマニホールドと、ノズルタッチブロックをマニホールドに対して移動可能に支持するための支持手段とを備えた射出成形用金型を用い、ノズルタッチブロックをマニホールドに対して移動させて前記ノズルに接続される導入口を切り替えることにより、成形材料の色に応じて使用するホットランナーを切り替えることを特徴とする射出成形品の色替え方法を提供することによっても解決される。その趣旨は、上記の射出成形用金型と同様である。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明によって、射出成形品の色替えに伴う成形材料の無駄な消費を削減するだけでなく、色替えにクレーンなどの大掛かりな装置を必要とせず、色替えに要する手間や時間も大幅に削減することも可能な射出成形用金型を提供することが可能になる。また、この射出成形用金型を用いて好適に行うことのできる射出成形品の色替え方法を提供することも可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の射出成形用金型の好適な実施態様について図面を用いてより具体的に説明する。図1は、本発明の射出成形用金型を用いて一の成形材料M1を射出成形しているときのノズルタッチブロック10とマニホールド20を示した斜視図である。図2は、図1におけるノズルタッチブロック10とマニホールド20をy軸方向負側から見た状態を示した図である。図3は、一の成形材料M1を射出成形しているときの本発明の射出成形用金型をx軸方向正側から見た状態を示した図である。図4は、図3における本発明の射出成形用金型をz軸方向正側から見た状態を示した図である。図5は、本発明の射出成形用金型を用いて他の成形材料M2を射出成形しているときのノズルタッチブロック10とマニホールド20を示した斜視図である。図6は、図5におけるノズルタッチブロック10とマニホールド20をy軸方向負側から見た状態を示した図である。図7は、他の成形材料M2を射出成形しているときの本発明の射出成形用金型をx軸方向正側から見た状態を示した図である。図8は、図7における本発明の射出成形用金型をz軸方向正側から見た状態を示した図である。ただし、図1〜8において、ホットランナーR10,R20や成形材料M1,M2は、ホットランナーR10,R20の位置関係や成形材料M1,M2が流れるルートを分かりやすくするために、ホットランナーR10,R20や成形材料M1,M2については見えない部分であっても破線を用いることなく実線で示している。
【0023】
本実施態様の射出成形用金型は、図4と図8に示すように、射出ユニット60のノズル61から導出される成形材料M1,M2を導入するための2つの導入口I1,I2が設けられたノズルタッチブロック10と、それぞれの導入口I1,I2から導入された成形材料M1,M2をそれぞれ独立して案内するための2本のホットランナーR10,R20が設けられたマニホールド20と、ノズルタッチブロック10をマニホールド20に対して移動可能に支持するための支持手段30と、マニホールド20に固定される第一金型40と、第一金型40と対になってキャビティCを形成する第二金型41とを備えたものとなっている。この射出成形用金型は、図3と図7に示すように、ノズルタッチブロック10をマニホールド20に対して移動させ、ノズル61に接続される導入口を導入口I1と導入口I2とで切り替えることにより、使用するホットランナーをホットランナーR10とホットランナーR20とで切り替えることができるようになっている。
【0024】
導入口I1,I2は、図1に示すように、いずれもノズルタッチブロック10の正面(y軸方向負側を向く面)に設けられており、上下方向(z軸方向)に沿って1列に配されている。また、ノズルタッチブロック10は、パイプレンチや油圧シリンダなどを利用した支持手段30によってz軸方向へ移動可能に支持されている。このため、図3に示すように、ノズルタッチブロック10を上側(z軸方向正側)へ移動させた際には、下側の導入口I1が射出ユニット60のノズル61と接続され、図7に示すように、ノズルタッチブロック10を下側(z軸方向負側)へ移動させた際には、上側の導入口I2が射出ユニット60のノズル61と接続されるようになっている。
【0025】
ノズルタッチブロック10の背面(y軸方向正側を向く面)には、図1と図5に示すように、導入口I1,I2からそれぞれ導入された成形材料M1,M2をノズルタッチブロック10の後方(y軸方向正側)へそれぞれ導出するための導出口O1,O2が設けられている。導出口O1と導出口O2は、互いにx軸方向及びz軸方向に位置がずらされて配されており、導入口I1と導出口O1とを結ぶ貫通孔と、導入口I2と導出口O2とを結ぶ貫通孔は、いずれもyz平面に対して傾斜している(図4と図8を参照)。このため、図3に示すように、ノズルタッチブロック10をz軸方向正側へ移動させた際には、ノズルタッチブロック10の導出口O1がマニホールド20の導入口I10を介してホットランナーR10と接続されるようになっている。これに対し、図7に示すように、ノズルタッチブロック10をz軸方向負側へ移動させた際には、ノズルタッチブロック10の導出口O2がマニホールド20の導入口I20を介してホットランナーR20と接続されるようになっている。
【0026】
したがって、本実施態様の射出成形用金型では、図3に示すように、導入口I1とホットランナーR10とが接続された状態で射出ユニット60のノズル61から導入口I1へ成形材料M1を注入すると、成形材料M1がホットランナーR10を案内されてマニホールド20の背面側(y軸方向正側を向く面)に設けられた導出口O10〜O13を通り、第一金型40の背面側に設けられたゲートからキャビティCへと射出されるようになっている。一方、図7に示すように、導入口I2とホットランナーR20とが接続された状態で射出ユニット60のノズル61から導入口I2へ成形材料M2を注入すると、成形材料M2がホットランナーR20を案内されてマニホールド20の背面側に設けられた導出口O20〜O23を通り、第一金型40の背面側に設けられたゲートからキャビティCへと射出されるようになっている。キャビティCへ射出された成形材料M1,M2は製品Pとなる。
【0027】
成形材料M1,M2をキャビティCへ射出するゲートは、導出口O10〜O13,O20〜O23に重なる位置(それぞれ導出口O10〜O13,O20〜O23を通るy軸に平行な複数本の直線と第一金型40の背面との交点となる複数箇所)に設けられている。ゲートの数や配置は、キャビティCの形状や寸法などに応じて適宜決定される。ただし、成形材料M1で射出成形を行った際に製品Pに形成されるウエルドラインの位置と、成形材料M2で射出成形を行った際に製品Pに形成されるウエルドラインの位置とが大きくずれてしまうと、製品Pの強度特性などが不均一になるおそれがある。このため、対応する一群のゲート(本実施態様の射出成形用金型においては、導出口O10に重なるゲートと導出口O20に重なるゲート、導出口O11に重なるゲートと導出口O21に重なるゲート、導出口O12に重なるゲートと導出口O22に重なるゲート、導出口O13に重なるゲートと導出口O23に重なるゲート)は、通常、できるだけ近くに配される。キャビティCの形状が複雑である場合には、シミュレーションなどでウェルドラインの位置を評価しながらゲートの数や配置を決定するとよい。
【0028】
ホットランナーR10,R20の形状は、特に限定されないが、マニホールド20の製作の容易さや、成形材料M1,M2の流れやすさなどを考慮すると、できるだけ曲がり角の少ない単純な形状とすると好ましい。本実施態様の射出成形用金型において、ホットランナーR10は、図1に示すように、導入口I10からy軸方向正側へ所定距離a(図3を参照)だけ進んだ箇所でz軸方向へ分岐させ、それぞれの分岐の先でさらにx軸方向へ分岐させている。また、ホットランナーR20も、導入口I20からy軸方向正側へ所定距離b(図3を参照)だけ進んだ箇所でz軸方向へ分岐させ、それぞれの分岐の先でさらにx軸方向へ分岐させている。
【0029】
ここで、ホットランナーR10の基幹路(ホットランナーR10における導入口I10と最初の分岐箇所とを結ぶ区間)の長さ(図3における距離a)と、ホットランナーR20の基幹路(ホットランナーR20における導入口I20と最初の分岐箇所とを結ぶ区間)の長さ(図3における距離b)は、同じに設定してもよいが、これらに差を設けることにより、ホットランナーR10の分岐路(ホットランナーR10における最初の分岐箇所と導出口O10〜O13とを結ぶ区間)と、ホットランナーR20の分岐路(ホットランナーR20における最初の分岐箇所と導出口O20〜O23とを結ぶ区間)とをマニホールド20の厚さ方向(y軸方向)において段違い(図3と図7を参照)に配すると好ましい。これにより、本実施態様の射出成形用金型のように、ホットランナーR10,R20のそれぞれに複数のゲートを接続し、ホットランナーR10,R20における前記分岐路を多岐に行きわたらせるような場合であっても、ホットランナーR10,R20が重なる箇所(例えば、図2における箇所S1,S2)などでホットランナーR10,R20を局所的に迂回させることなく立体的に交叉させることが可能になる。したがって、ホットランナーR10,R20の曲がり角の数を少なくすることができる。
【0030】
ところで、ここまでは、ノズルタッチブロック10を支持するものが支持手段30だけである場合について説明したが、この場合には、ノズルタッチブロック10がマニホールド20から浮き上がり、射出ユニット60のノズル61から導入口I1,I2へと導入された成形材料M1,M2が、ノズルタッチブロック10とマニホールド20との隙間から漏れ出すおそれがある。このため、図9に示すように、ノズルタッチブロック10をマニホールド20の側へ押さえつけるためのノズルタッチブロック押圧手段50を設けると好ましい。図9は、図1〜8とは異なる他の実施態様(ノズルタッチブロック10をノズルタッチブロック押圧手段50でマニホールド20側へ押さえつけた態様)の射出成形用金型におけるノズルタッチブロック10の周辺を拡大した状態を示した斜視図である。
【0031】
ノズルタッチブロック押圧手段50について、図面を用いてより具体的に説明する。図10は、図9におけるノズルタッチブロック押圧手段50を拡大した状態を示した斜視図である。図11は、図9におけるノズルタッチブロック10を拡大した状態を示した斜視図である。図12は、図9に示すノズルタッチブロック10がz軸方向の中間位置にあるときのノズルタッチブロック10の周辺をX1−X1面に相当する面で切断した状態を示した断面図である。図13は、図9に示すノズルタッチブロック10がz軸方向正側の移動限界位置にあるときのノズルタッチブロック10の周辺をX1−X1面に相当する面で切断した状態を示した断面図である。図14は、図9に示すノズルタッチブロック10がz軸方向負側の移動限界位置にあるときのノズルタッチブロック10の周辺をX1−X1面に相当する面で切断した状態を示した断面図である。
【0032】
ノズルタッチブロック押圧手段50は、図10に示すように、左右一対となっており、それぞれが、ノズルタッチブロック10を押さえつけるための押圧部51と、押圧部51をマニホールド20に固定するための固定部52とで構成されている。押圧部51におけるマニホールド20に対向する側(y軸方向正側)の面(図10における面A1A2A3A4及び面A3A4A5A6)は、ノズルタッチブロック10をマニホールド20側へ押さえつけるための面αとなっている。このうち、上側の面α(面A1A2A3A4)は、図12に示すように、z軸方向正側になるにつれてマニホールド20の面β(マニホールド20におけるノズルタッチブロックを案内する面)から離れるように、面βに対して傾斜して形成されている。一方、下側の面α(面A3A4A5A6)は、z軸方向負側になるにつれてマニホールド20の面βから離れるように、面βに対して傾斜して形成されている。本実施態様の射出成形用金型において、ノズルタッチブロック押圧手段50の面αとマニホールドの面βとがなす傾斜角度θ(図12)は、上側の面αと下側の面αのいずれにおいても5°としている。
【0033】
一方、ノズルタッチブロック10の両側面(x軸方向正側を向く面とx軸方向負側を向く面)には、図11に示すように、一対の噛み込み部11が左右に突出して設けられている。それぞれの噛み込み部11における手前側の面(y軸方向負側を向く面)には、図13に示すように、ノズルタッチブロック10がz軸方向正側の移動限界位置に達した際に、ノズルタッチブロック押圧手段50の下側の面αに接触する面B5B6B7B8(図11を参照)と、図14に示すように、ノズルタッチブロック10がz軸方向負側の移動限界位置に達した際に、ノズルタッチブロック押圧手段50の上側の面αに接触する面B1B2B3B4(図11を参照)とからなる面γが設けられている。ノズルタッチブロック10がz軸方向正側の移動限界位置に達した際(図13)には、導出口O1と導入口I10とが接続され、ノズルタッチブロック10がz軸方向負側の移動限界位置に達した際(図14)には、導出口O2と導入口I20とが接続される。
【0034】
噛み込み部11における面γのうち、上側の面B1B2B3B4(図11を参照)は、図12に示すように、上側の面αと平行になるように傾斜して形成されている。一方、下側の面B5B6B7B8(図11を参照)は、下側の面αと平行になるように傾斜して形成されている。したがって、ノズルタッチブロック10がz軸方向における中間位置(図12)からz軸方向正側の移動限界位置(図13)に近づくにつれて、噛み込み部11の下部は、下側の面αと面βとの隙間に噛み込むようになっている。一方、ノズルタッチブロック10がz軸方向における中間位置(図12)からz軸方向負側の移動限界位置(図14)に近づくにつれて、噛み込み部11の上部は、上側の面αと面βとの隙間に噛み込むようになっている。噛み込み部11における上側の面γと下側の面γとの間には、面βに平行な部分(図11における面B3B4B5B6)が設けられており、ノズルタッチブロック10がz軸方向の中間位置付近にあるときは、ノズルタッチブロック10をz軸方向へ抵抗なく滑らかに移動させることができるようになっている。
【0035】
このように、ノズルタッチブロック10に噛み込み部11を設け、ノズルタッチブロック押圧手段50をマニホールド20に固定することにより、ノズルタッチブロック10がz軸方向の中間位置付近にある際には、ノズルタッチブロック10をz軸方向に移動しやすくしながらも、ノズルタッチブロック10をz軸方向正側の移動限界位置やz軸方向負側の移動限界位置に近づけるにつれて、ノズルタッチブロック10がマニホールド20の側へ強く押し付けられるようになる。すなわち、図13に示すように、支持手段30によりノズルタッチブロック10をz軸方向正側へ移動させ、ノズルタッチブロック10をz軸方向正側の移動限界位置まで到達させて下側の面αと下側の面γとを接触させた際には、ノズルタッチブロック10は、支持手段30から加えられるz軸方向正側を向く力とは反対向きの(z軸方向負側を向く)力Fを受ける(図13における点D1)。このとき、面γはxz平面に対して傾斜しているので、ノズルタッチブロック10の噛み込み部11には、力Fの面γに垂直な成分が垂直抗力F1として作用する。したがって、ノズルタッチブロック10は、垂直効力F1における面βに垂直な成分F1によって、マニホールド20の側へ押し付けられることになる。一方、図14に示すように、支持手段30によりノズルタッチブロック10をz軸方向負側へ移動させ、ノズルタッチブロック10をz軸方向負側の移動限界位置まで到達させて上側の面αと上側の面γとを接触させた際にも、図13と同様の現象が起こる(図14の力f,f1,f2を参照。)。これにより、導入口I1,I2から成形材料M1,M2を注入する際(ノズルタッチブロック10がz軸方向正側の移動限界位置又はz軸方向負側の移動限界位置にあるとき)には、ノズルタッチブロック10とマニホールド20との隙間から成形材料M1,M2が漏れないようにすることができるようになる。
【0036】
ところで、ここまでは、説明の便宜上、x軸方向を左右方向、y軸方向を前後方向、z軸方向を上下方向としていたが、本発明の射出成形用金型を設置する向きはこれに限定されない。射出成形用金型を設置する向きは、射出成形用金型の規模や射出成形される製品Pの種類などに応じて適宜決定される。また、図1〜14に示す射出成形用金型は、ノズルタッチブロック10の導入口やマニホールド20のホットランナーは、2組ずつ設けられており、2種類の成形材料M1,M2を独立して射出成形することができるものとなっているが、ノズルタッチブロック10の導入口の数やマニホールド20のホットランナーの本数は、これに限定されない。例えば、ノズルタッチブロック10に導入口を3組以上設けるとともに、マニホールド20にもホットランナーを3組以上設けることで、3種類以上の成形材料を独立して射出成形できるようにすることもできる。
【0037】
続いて、図1〜8に示す射出成形用金型を用いた製品P(射出成形品)の色替え方法について説明する。図1〜8に示す射出成形用金型は、以下の手順[1]〜[12]を繰り返すことにより、製品Pの色替えを行うことができる。
[1]まず、図1〜4に示すように、ノズルタッチブロック10をz軸方向正側に移動させて、ノズルタッチブロック10の導出口O1をマニホールド20の導入口O10と接続し、射出ユニット60のノズル61をノズルタッチブロック10の導入口I1に接続する。
[2]この状態で、射出ユニット60からある特定の色を有する成形材料M1を射出し、マニホールド20のホットランナーR10を経てキャビティCに成形材料M1を射出する。
[3]キャビティCの成形材料M1が硬化して製品Pとなると、第二金型41をy軸方向正側へ後退させ、製品Pを第一金型40又は第二金型41の内部から取り出す。
[4]この後、再び成形材料M1で射出成形を行う場合には、第二金型41をy軸方向負側に前進させて第一金型40と第二金型42とを型締めし、[2]〜[4]の手順を繰り返す。
[5]成形材料M1での射出成形を終え、成形材料M1とは異なる色の成形材料M2で射出成形を行う場合には、[3]の手順の後、射出ユニット60をy軸方向負側へ後退させ、そのノズル61をノズルタッチブロック10から切り離す。
[6]この状態で、射出ユニット60に成形材料M2を投入し、そのノズル61から射出される成形材料が成形材料M1から成形材料M2に完全に切り替わるまで、射出ユニット60で射出を行う。
[7]この間に、支持手段30を操作し、ノズルタッチブロック10をz軸方向負側に移動させて、ノズルタッチブロック10の導出口O2をマニホールド20の導入口O20と接続しておく。
[8]ノズル61から射出される成形材料が成形材料M2に切り替わったのを確認すると、射出ユニット60をy軸方向正側へ前進させ、そのノズル61をノズルタッチブロック10の導入口I20に接続する。
[9]この状態で、射出ユニット60から成形材料M2を射出し、マニホールド20のホットランナーR20を経てキャビティCに成形材料M2を射出する(図5〜8を参照)。
[10]キャビティCの成形材料M2が硬化して製品Pとなると、第二金型41をy軸方向正側へ後退させ、製品Pを第一金型40又は第二金型41の内部から取り出す。
[11]この後、再び成形材料M2で射出成形を行う場合には、第二金型41をy軸方向負側に前進させて第一金型40と第二金型42とを型締めし、[9]〜[11]の手順を繰り返す。
[12]成形材料M2での射出成形を終え、再び成形材料M1で射出成形を行う場合には、[10]の手順の後、射出ユニット60をy軸方向負側へ後退させ、そのノズル61をノズルタッチブロック10から切り離し、射出ユニット60に成形材料M1を投入し、そのノズル61から射出される成形材料が成形材料M2から成形材料M1に完全に切り替わるまで射出ユニット60で射出を行い、射出ユニット60をy軸方向正側へ前進させてそのノズル61をノズルタッチブロック10の導入口I1と接続し、[2]以降の手順を行う。
【0038】
以上のように、本発明の射出成形用金型は、試し打ちを行うことなく製品Pの色替えを行うことができるので、成形材料の無駄を省くことが可能になる。本発明の射出成形用金型を用いて射出成形を行う成形材料M1,M2の種類は、特に限定されないが、通常、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン−1などのポリオレフィン;ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)、MBS(メタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン)、ポリスチレンなどのスチレン系樹脂;ポリメタクリル酸メチルなどのアクリル樹脂;ポリカーボネート;ポリ塩化ビニル;ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル;ポリアミドなどの熱可塑性樹脂である。本発明の射出成形用金型は、自動車の内装材など、各種の製品を射出成形するのに好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の射出成形用金型を用いて一の成形材料を射出成形しているときのノズルタッチブロックとマニホールドを示した斜視図である。
【図2】図1におけるノズルタッチブロックとマニホールドをy軸方向負側から見た状態を示した図である。
【図3】一の成形材料を射出成形しているときの本発明の射出成形用金型をx軸方向正側から見た状態を示した図である。
【図4】図3における本発明の射出成形用金型をz軸方向正側から見た状態を示した図である。
【図5】本発明の射出成形用金型を用いて他の成形材料を射出成形しているときのノズルタッチブロックとマニホールドを示した斜視図である。
【図6】図5におけるノズルタッチブロックとマニホールドをy軸方向負側から見た状態を示した図である。
【図7】他の成形材料を射出成形しているときの本発明の射出成形用金型をx軸方向正側から見た状態を示した図である。
【図8】図7における本発明の射出成形用金型をz軸方向正側から見た状態を示した図である。
【図9】他の実施態様の射出成形用金型におけるノズルタッチブロックの周辺を拡大した状態を示した斜視図である。
【図10】図9におけるノズルタッチブロック押圧手段を拡大した状態を示した斜視図である。
【図11】図9におけるノズルタッチブロックを拡大した状態を示した斜視図である。
【図12】図9に示すノズルタッチブロックがz軸方向の中間位置にあるときのノズルタッチブロック周辺をX1−X1面に相当する面で切断した状態を示した断面図である。
【図13】図9に示すノズルタッチブロックがz軸方向正側の移動限界位置にあるときのノズルタッチブロック周辺をX1−X1面に相当する面で切断した状態を示した断面図である。
【図14】図9に示すノズルタッチブロックがz軸方向負側の移動限界位置にあるときのノズルタッチブロック周辺をX1−X1面に相当する面で切断した状態を示した断面図である。
【符号の説明】
【0040】
10 ノズルタッチブロック
11 噛み込み部
20 マニホールド
30 支持手段
40 第一金型
41 第二金型
50 ノズルタッチブロック押圧手段
51 押圧部
52 固定部
60 射出ユニット
61 ノズル
C キャビティ
I1 導入口(成形材料M1用のノズルタッチブロック側の導入口)
I10 導入口(成形材料M1用のマニホールド側の導入口)
I2 導入口(成形材料M2用のノズルタッチブロック側の導入口)
I20 導入口(成形材料M2用のマニホールド側の導入口)
M1 成形材料
M2 成形材料
O1 導出口(成形材料M1用のノズルタッチブロック側の導出口)
O2 導出口(成形材料M2用のノズルタッチブロック側の導出口)
O10〜G13 導出口(成形材料M1用のマニホールド側の導出口)
O20〜G23 導出口(成形材料M2用のマニホールド側の導出口)
R10 ホットランナー(成形材料M1用)
R20 ホットランナー(成形材料M2用)
P 製品
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形に用いられる射出成形用金型と、該射出成形用金型で射出成形される製品(射出成形品)の色替え方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、熱可塑性樹脂の射出成形においては、射出ユニットのノズルから導出された溶融状態にある熱可塑性樹脂を射出成形用金型におけるキャビティまで溶融状態に保つことができるように、射出成形用金型における前記ノズルに連結される部分(導入口)と前記キャビティに接続される部分(ゲート)とを結ぶ樹脂通路(ランナー)をヒーターで加熱することが行われている。この樹脂通路は、ホットランナーと呼ばれており、ホットランナーを備えた射出成形用金型は、自動車の内装材など、各種樹脂製品の成形に用いられている。
【0003】
ところで、昔の自動車は、内装材の色が1通りに決まっているものが多かったが、近年の自動車は、多様化する消費者のニーズに応えるため、同一車種であっても、内装材の色を複数の中から選べるようになっているものが多い。このため、自動車の内装材などを製造する企業では、例えば、ある射出成形用金型で黒色の熱可塑性樹脂を射出成形した後、同じ射出成形用金型でベージュ色の熱可塑性樹脂を射出成形するなど、同一の射出成形用金型で複数色の製品を射出成形するといった対応を行う必要に迫られている。
【0004】
しかし、従来の射出成形用金型において、射出成形を行う製品の色をある色(A色とする。)から他の色(B色とする。)へと切り替える際には、射出成形用金型でA色の製品の射出成形を終えた後に、
[1]射出ユニットと射出成形用金型とを切り離し、射出ユニットのスクリューシリンダーの内部に残留するA色の熱可塑性樹脂を射出ユニットのノズルから完全に出し切る、
[2]前記スクリューシリンダーにB色の熱可塑性樹脂を投入し、前記ノズルから導出される熱可塑性樹脂がB色に完全に切り替わるまで射出ユニットのスクリューを駆動する、
[3]前記スクリューを停止させて射出ユニットと射出成形用金型とを再び連結する、
[4]前記スクリューを再び駆動して射出ユニットの前記ノズルから射出成形用金型の導入口へとB色の熱可塑性樹脂を供給し、製品が完全にB色に切り替わるまで試し打ちを行う、
[5]B色の製品の射出成形を行う、
という手順を経ていたために、以下のような不具合が生じていた。
【0005】
すなわち、従来の射出成形用金型では、上記(4)の工程で、ホットランナーの内部のA色の熱可塑性樹脂をB色の熱可塑性樹脂で置換するのであるが、ホットランナーの曲がり角やゲート付近に滞留する熱可塑性樹脂が容易には抜けきらないため、製品が完全にB色に切り替わるまでには、多数回試し打ちを行う必要があった。このため、熱可塑性樹脂や時間を無駄に消費していた。例えば、自動車のドア用内装パネルを2個ずつ射出成形する場合には、色替えの際に、試し打ちを15回(製品数では30個、時間にすると約15分)程度行わなければならない。
【0006】
このような実状に鑑みてか、これまでには、複数のホットランナーを独立して設け、射出成形を行う製品の色に応じて使用するホットランナーを切り替えることができるようにした射出成形用金型(例えば、特許文献1と特許文献2を参照。以下において、この種の射出成形用金型を「ホットランナー切替型の射出成形用金型」と呼ぶことがある。)が提案されている。これにより、同一の射出成形用金型を使用する場合であっても、上記(4)の工程を経ることなく、射出成形品の色替えを行うことができるようになるので、色替えに伴う熱可塑性樹脂の消費を大幅に削減することも可能になる。
【0007】
ところが、特許文献1や特許文献2に記載されている従来のホットランナー切替型の射出成形用金型では、射出成形品の色替えを行う際に、射出ユニットの前記ノズルに対して射出成形用金型の全体を移動させる必要があったため、クレーンなどの大掛かりな装置を必要としていた。このため、従来のホットランナー切替型の射出成形用金型は、熱可塑性樹脂の無駄な消費を抑えることができるものの、手間や時間的損失を削減するという観点では、必ずしも有効なものとはなっていなかった。また、射出成形用金型の周囲にクレーンなどを設置するスペースを確保しなければならないなど、射出成形用金型の設置レイアウトが大きく制限される。
【0008】
【特許文献1】特開昭57−105330号公報
【特許文献2】特開2007−062085号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、射出成形品の色替えに伴う成形材料の無駄な消費を削減するだけでなく、色替えにクレーンなどの大掛かりな装置を必要とせず、色替えに要する手間や時間も大幅に削減することも可能な射出成形用金型を提供するものである。また、この射出成形用金型を用いて好適に行うことのできる射出成形品の色替え方法を提供することも本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題は、射出ユニットから成形材料を導入するための導入口が複数箇所に設けられたノズルタッチブロック(射出成形用金型における前記導入口及びその周辺を形成するブロック)と、それぞれの導入口から導入された成形材料をそれぞれ独立して案内するための複数のホットランナーが設けられたマニホールドと、ノズルタッチブロックをマニホールドに対して移動可能に支持するための支持手段とを備え、ノズルタッチブロックをマニホールドに対して移動させて前記ノズルに接続される導入口を切り替えることにより、使用するホットランナーが切り替えられるようにしたことを特徴とする射出成形用金型を提供することによって解決される。
【0011】
これにより、マニホールドのホットランナーの内部にある成形材料を他の色の成形材料に置き換えることなく、射出成形品の色替えを行うことが可能になるので、成形材料の無駄な消費を削減することが可能になる。また、射出成形用金型の全体を動かさなくても、そのノズルタッチブロックのみを移動させるだけで、射出成形に使用するホットランナーを切り替えることができるので、クレーンなどの大掛かりな装置を用いなくても、射出成形品の色替えを行うことも可能になる。したがって、色替えに要する手間や時間も削減することも可能になる。
【0012】
しかし、本発明の射出成形用金型のように、ノズルタッチブロックとマニホールドとを別体とした場合には、射出ユニットのノズルから導入口へと導入された成形材料が、ノズルタッチブロックとマニホールドとの隙間から漏れ出すおそれがある。このため、本発明の射出成形用金型に、ノズルタッチブロックをマニホールド側へ押さえつけるためのノズルタッチブロック押圧手段を設けると好ましい。これにより、ノズルタッチブロックとマニホールドとの隙間から成形材料が漏れにくくすることが可能になる。
【0013】
ノズルタッチブロック押圧手段としては、後述するように、ノズルタッチブロックをマニホールド側へ押さえつけるための面αを備えたものなどが例示される。ノズルタッチブロック押圧手段は、前記支持手段と一体的に設けてもよいし、別体としてもよい。ノズルタッチブロック押圧手段は、ボルトやナットなどの螺合部材を利用したものであってもよい。
【0014】
本発明の射出成形用金型において、ノズルタッチブロックや支持手段は、ノズルタッチブロックをマニホールドに対して移動させることにより、前記ノズルに接続される導入口を切り替えることのできる形態のものであれば特に限定されない。例えば、支持手段を、ノズルタッチブロックを回転可能に支持する軸体とし、複数の導入口を、前記軸体を中心に回転対称に配してもよい。しかし、設計や加工の容易さなどを考慮すると、複数の導入口を、ノズルタッチブロックの特定方向に沿って1列に設け、支持手段で、ノズルタッチブロックをマニホールドに対して前記特定方向に移動可能に支持させると好ましい。
【0015】
このように、ノズルタッチブロックを前記特定方向に移動可能なものとする場合には、ノズルタッチブロック押圧手段を、ノズルタッチブロックをマニホールド側へ押さえつけるための面αを有するものとし、ノズルタッチブロックに、それが前記特定方向における移動限界位置に近づくにつれてノズルタッチブロック押圧手段の面αとマニホールドにおけるノズルタッチブロックを案内する面βとの隙間に噛み込む一対の噛み込み部を設け、ノズルタッチブロックが前記特定方向のうち一方の移動限界位置にあるときは一の導入口が前記ノズルに接続され、ノズルタッチブロックが前記特定方向のうち他方の移動限界位置にあるときは他の導入口が前記ノズルに接続されるようにすると好ましい。
【0016】
これにより、ノズルタッチブロックを前記特定方向へ移動しやすくしながらも、ノズルタッチブロックを前記特定方向における移動限界位置まで移動させて導入口から導入された成形材料をホットランナーに流す際には、ノズルタッチブロックをマニホールドに強く押しつけることが可能になり、ノズルタッチブロックとマニホールドとの隙間から成形材料が漏れないようにすることができるようになる。
【0017】
この場合、ノズルタッチブロック押圧手段の面αとマニホールドの面βとがなす傾斜角度(以下において、「傾斜角度θ」と表記する。)は、0°よりも大きく、90°よりも小さいのであれば特に限定されない。しかし、傾斜角度θを小さくしすぎた場合には、ノズルタッチブロック押圧手段からノズルタッチブロックに加えられる押圧力の確保が困難になるばかりか、ノズルタッチブロックの前記特定方向での位置決め精度が低下するおそれもある。また、ノズルタッチブロックを前記特定方向に長くしなければならなくなり、ノズルタッチブロックの熱容量が増大するおそれがある。したがって、ノズルタッチブロックにヒーターを設けて、ノズルタッチブロックのホットランナーをホットホットランナーとした場合に、エネルギーが無駄に消費されやすくなる。このため、傾斜角度θは、通常、1°以上とされる。傾斜角度θは、2°以上であると好ましく、3°以上であるとより好ましい。
【0018】
一方、傾斜角度θを大きくしすぎた場合にも、やはり、ノズルタッチブロック押圧手段からノズルタッチブロックに加えられる押圧力の確保が困難になるおそれがある。また、ノズルタッチブロックの厚さを大きくしなければならなくなり、ノズルタッチブロックの熱容量が増大するおそれがある。このため、傾斜角度θは、通常、60°以下とされる。傾斜角度θは、45°以下であると好ましく、30°以下であるとより好ましい。
【0019】
また、本発明の射出成形用金型において、マニホールドに設ける複数のホットランナーの配置は、所望のゲートまで成形材料を案内できるのであれば特に限定されないが、複数のホットランナーをマニホールドの厚さ方向において段違いに配すると好ましい。これにより、マニホールドでホットランナーを複雑に曲げることなく、複数のホットランナーを互いにぶつからないように交叉させることが可能になる。したがって、マニホールドの加工が容易になる。
【0020】
ところで、上記課題は、射出ユニットから成形材料を導入するための導入口が複数箇所に設けられたノズルタッチブロックと、それぞれの導入口から導入された成形材料をそれぞれ独立して案内するための複数のホットランナーが設けられたマニホールドと、ノズルタッチブロックをマニホールドに対して移動可能に支持するための支持手段とを備えた射出成形用金型を用い、ノズルタッチブロックをマニホールドに対して移動させて前記ノズルに接続される導入口を切り替えることにより、成形材料の色に応じて使用するホットランナーを切り替えることを特徴とする射出成形品の色替え方法を提供することによっても解決される。その趣旨は、上記の射出成形用金型と同様である。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明によって、射出成形品の色替えに伴う成形材料の無駄な消費を削減するだけでなく、色替えにクレーンなどの大掛かりな装置を必要とせず、色替えに要する手間や時間も大幅に削減することも可能な射出成形用金型を提供することが可能になる。また、この射出成形用金型を用いて好適に行うことのできる射出成形品の色替え方法を提供することも可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の射出成形用金型の好適な実施態様について図面を用いてより具体的に説明する。図1は、本発明の射出成形用金型を用いて一の成形材料M1を射出成形しているときのノズルタッチブロック10とマニホールド20を示した斜視図である。図2は、図1におけるノズルタッチブロック10とマニホールド20をy軸方向負側から見た状態を示した図である。図3は、一の成形材料M1を射出成形しているときの本発明の射出成形用金型をx軸方向正側から見た状態を示した図である。図4は、図3における本発明の射出成形用金型をz軸方向正側から見た状態を示した図である。図5は、本発明の射出成形用金型を用いて他の成形材料M2を射出成形しているときのノズルタッチブロック10とマニホールド20を示した斜視図である。図6は、図5におけるノズルタッチブロック10とマニホールド20をy軸方向負側から見た状態を示した図である。図7は、他の成形材料M2を射出成形しているときの本発明の射出成形用金型をx軸方向正側から見た状態を示した図である。図8は、図7における本発明の射出成形用金型をz軸方向正側から見た状態を示した図である。ただし、図1〜8において、ホットランナーR10,R20や成形材料M1,M2は、ホットランナーR10,R20の位置関係や成形材料M1,M2が流れるルートを分かりやすくするために、ホットランナーR10,R20や成形材料M1,M2については見えない部分であっても破線を用いることなく実線で示している。
【0023】
本実施態様の射出成形用金型は、図4と図8に示すように、射出ユニット60のノズル61から導出される成形材料M1,M2を導入するための2つの導入口I1,I2が設けられたノズルタッチブロック10と、それぞれの導入口I1,I2から導入された成形材料M1,M2をそれぞれ独立して案内するための2本のホットランナーR10,R20が設けられたマニホールド20と、ノズルタッチブロック10をマニホールド20に対して移動可能に支持するための支持手段30と、マニホールド20に固定される第一金型40と、第一金型40と対になってキャビティCを形成する第二金型41とを備えたものとなっている。この射出成形用金型は、図3と図7に示すように、ノズルタッチブロック10をマニホールド20に対して移動させ、ノズル61に接続される導入口を導入口I1と導入口I2とで切り替えることにより、使用するホットランナーをホットランナーR10とホットランナーR20とで切り替えることができるようになっている。
【0024】
導入口I1,I2は、図1に示すように、いずれもノズルタッチブロック10の正面(y軸方向負側を向く面)に設けられており、上下方向(z軸方向)に沿って1列に配されている。また、ノズルタッチブロック10は、パイプレンチや油圧シリンダなどを利用した支持手段30によってz軸方向へ移動可能に支持されている。このため、図3に示すように、ノズルタッチブロック10を上側(z軸方向正側)へ移動させた際には、下側の導入口I1が射出ユニット60のノズル61と接続され、図7に示すように、ノズルタッチブロック10を下側(z軸方向負側)へ移動させた際には、上側の導入口I2が射出ユニット60のノズル61と接続されるようになっている。
【0025】
ノズルタッチブロック10の背面(y軸方向正側を向く面)には、図1と図5に示すように、導入口I1,I2からそれぞれ導入された成形材料M1,M2をノズルタッチブロック10の後方(y軸方向正側)へそれぞれ導出するための導出口O1,O2が設けられている。導出口O1と導出口O2は、互いにx軸方向及びz軸方向に位置がずらされて配されており、導入口I1と導出口O1とを結ぶ貫通孔と、導入口I2と導出口O2とを結ぶ貫通孔は、いずれもyz平面に対して傾斜している(図4と図8を参照)。このため、図3に示すように、ノズルタッチブロック10をz軸方向正側へ移動させた際には、ノズルタッチブロック10の導出口O1がマニホールド20の導入口I10を介してホットランナーR10と接続されるようになっている。これに対し、図7に示すように、ノズルタッチブロック10をz軸方向負側へ移動させた際には、ノズルタッチブロック10の導出口O2がマニホールド20の導入口I20を介してホットランナーR20と接続されるようになっている。
【0026】
したがって、本実施態様の射出成形用金型では、図3に示すように、導入口I1とホットランナーR10とが接続された状態で射出ユニット60のノズル61から導入口I1へ成形材料M1を注入すると、成形材料M1がホットランナーR10を案内されてマニホールド20の背面側(y軸方向正側を向く面)に設けられた導出口O10〜O13を通り、第一金型40の背面側に設けられたゲートからキャビティCへと射出されるようになっている。一方、図7に示すように、導入口I2とホットランナーR20とが接続された状態で射出ユニット60のノズル61から導入口I2へ成形材料M2を注入すると、成形材料M2がホットランナーR20を案内されてマニホールド20の背面側に設けられた導出口O20〜O23を通り、第一金型40の背面側に設けられたゲートからキャビティCへと射出されるようになっている。キャビティCへ射出された成形材料M1,M2は製品Pとなる。
【0027】
成形材料M1,M2をキャビティCへ射出するゲートは、導出口O10〜O13,O20〜O23に重なる位置(それぞれ導出口O10〜O13,O20〜O23を通るy軸に平行な複数本の直線と第一金型40の背面との交点となる複数箇所)に設けられている。ゲートの数や配置は、キャビティCの形状や寸法などに応じて適宜決定される。ただし、成形材料M1で射出成形を行った際に製品Pに形成されるウエルドラインの位置と、成形材料M2で射出成形を行った際に製品Pに形成されるウエルドラインの位置とが大きくずれてしまうと、製品Pの強度特性などが不均一になるおそれがある。このため、対応する一群のゲート(本実施態様の射出成形用金型においては、導出口O10に重なるゲートと導出口O20に重なるゲート、導出口O11に重なるゲートと導出口O21に重なるゲート、導出口O12に重なるゲートと導出口O22に重なるゲート、導出口O13に重なるゲートと導出口O23に重なるゲート)は、通常、できるだけ近くに配される。キャビティCの形状が複雑である場合には、シミュレーションなどでウェルドラインの位置を評価しながらゲートの数や配置を決定するとよい。
【0028】
ホットランナーR10,R20の形状は、特に限定されないが、マニホールド20の製作の容易さや、成形材料M1,M2の流れやすさなどを考慮すると、できるだけ曲がり角の少ない単純な形状とすると好ましい。本実施態様の射出成形用金型において、ホットランナーR10は、図1に示すように、導入口I10からy軸方向正側へ所定距離a(図3を参照)だけ進んだ箇所でz軸方向へ分岐させ、それぞれの分岐の先でさらにx軸方向へ分岐させている。また、ホットランナーR20も、導入口I20からy軸方向正側へ所定距離b(図3を参照)だけ進んだ箇所でz軸方向へ分岐させ、それぞれの分岐の先でさらにx軸方向へ分岐させている。
【0029】
ここで、ホットランナーR10の基幹路(ホットランナーR10における導入口I10と最初の分岐箇所とを結ぶ区間)の長さ(図3における距離a)と、ホットランナーR20の基幹路(ホットランナーR20における導入口I20と最初の分岐箇所とを結ぶ区間)の長さ(図3における距離b)は、同じに設定してもよいが、これらに差を設けることにより、ホットランナーR10の分岐路(ホットランナーR10における最初の分岐箇所と導出口O10〜O13とを結ぶ区間)と、ホットランナーR20の分岐路(ホットランナーR20における最初の分岐箇所と導出口O20〜O23とを結ぶ区間)とをマニホールド20の厚さ方向(y軸方向)において段違い(図3と図7を参照)に配すると好ましい。これにより、本実施態様の射出成形用金型のように、ホットランナーR10,R20のそれぞれに複数のゲートを接続し、ホットランナーR10,R20における前記分岐路を多岐に行きわたらせるような場合であっても、ホットランナーR10,R20が重なる箇所(例えば、図2における箇所S1,S2)などでホットランナーR10,R20を局所的に迂回させることなく立体的に交叉させることが可能になる。したがって、ホットランナーR10,R20の曲がり角の数を少なくすることができる。
【0030】
ところで、ここまでは、ノズルタッチブロック10を支持するものが支持手段30だけである場合について説明したが、この場合には、ノズルタッチブロック10がマニホールド20から浮き上がり、射出ユニット60のノズル61から導入口I1,I2へと導入された成形材料M1,M2が、ノズルタッチブロック10とマニホールド20との隙間から漏れ出すおそれがある。このため、図9に示すように、ノズルタッチブロック10をマニホールド20の側へ押さえつけるためのノズルタッチブロック押圧手段50を設けると好ましい。図9は、図1〜8とは異なる他の実施態様(ノズルタッチブロック10をノズルタッチブロック押圧手段50でマニホールド20側へ押さえつけた態様)の射出成形用金型におけるノズルタッチブロック10の周辺を拡大した状態を示した斜視図である。
【0031】
ノズルタッチブロック押圧手段50について、図面を用いてより具体的に説明する。図10は、図9におけるノズルタッチブロック押圧手段50を拡大した状態を示した斜視図である。図11は、図9におけるノズルタッチブロック10を拡大した状態を示した斜視図である。図12は、図9に示すノズルタッチブロック10がz軸方向の中間位置にあるときのノズルタッチブロック10の周辺をX1−X1面に相当する面で切断した状態を示した断面図である。図13は、図9に示すノズルタッチブロック10がz軸方向正側の移動限界位置にあるときのノズルタッチブロック10の周辺をX1−X1面に相当する面で切断した状態を示した断面図である。図14は、図9に示すノズルタッチブロック10がz軸方向負側の移動限界位置にあるときのノズルタッチブロック10の周辺をX1−X1面に相当する面で切断した状態を示した断面図である。
【0032】
ノズルタッチブロック押圧手段50は、図10に示すように、左右一対となっており、それぞれが、ノズルタッチブロック10を押さえつけるための押圧部51と、押圧部51をマニホールド20に固定するための固定部52とで構成されている。押圧部51におけるマニホールド20に対向する側(y軸方向正側)の面(図10における面A1A2A3A4及び面A3A4A5A6)は、ノズルタッチブロック10をマニホールド20側へ押さえつけるための面αとなっている。このうち、上側の面α(面A1A2A3A4)は、図12に示すように、z軸方向正側になるにつれてマニホールド20の面β(マニホールド20におけるノズルタッチブロックを案内する面)から離れるように、面βに対して傾斜して形成されている。一方、下側の面α(面A3A4A5A6)は、z軸方向負側になるにつれてマニホールド20の面βから離れるように、面βに対して傾斜して形成されている。本実施態様の射出成形用金型において、ノズルタッチブロック押圧手段50の面αとマニホールドの面βとがなす傾斜角度θ(図12)は、上側の面αと下側の面αのいずれにおいても5°としている。
【0033】
一方、ノズルタッチブロック10の両側面(x軸方向正側を向く面とx軸方向負側を向く面)には、図11に示すように、一対の噛み込み部11が左右に突出して設けられている。それぞれの噛み込み部11における手前側の面(y軸方向負側を向く面)には、図13に示すように、ノズルタッチブロック10がz軸方向正側の移動限界位置に達した際に、ノズルタッチブロック押圧手段50の下側の面αに接触する面B5B6B7B8(図11を参照)と、図14に示すように、ノズルタッチブロック10がz軸方向負側の移動限界位置に達した際に、ノズルタッチブロック押圧手段50の上側の面αに接触する面B1B2B3B4(図11を参照)とからなる面γが設けられている。ノズルタッチブロック10がz軸方向正側の移動限界位置に達した際(図13)には、導出口O1と導入口I10とが接続され、ノズルタッチブロック10がz軸方向負側の移動限界位置に達した際(図14)には、導出口O2と導入口I20とが接続される。
【0034】
噛み込み部11における面γのうち、上側の面B1B2B3B4(図11を参照)は、図12に示すように、上側の面αと平行になるように傾斜して形成されている。一方、下側の面B5B6B7B8(図11を参照)は、下側の面αと平行になるように傾斜して形成されている。したがって、ノズルタッチブロック10がz軸方向における中間位置(図12)からz軸方向正側の移動限界位置(図13)に近づくにつれて、噛み込み部11の下部は、下側の面αと面βとの隙間に噛み込むようになっている。一方、ノズルタッチブロック10がz軸方向における中間位置(図12)からz軸方向負側の移動限界位置(図14)に近づくにつれて、噛み込み部11の上部は、上側の面αと面βとの隙間に噛み込むようになっている。噛み込み部11における上側の面γと下側の面γとの間には、面βに平行な部分(図11における面B3B4B5B6)が設けられており、ノズルタッチブロック10がz軸方向の中間位置付近にあるときは、ノズルタッチブロック10をz軸方向へ抵抗なく滑らかに移動させることができるようになっている。
【0035】
このように、ノズルタッチブロック10に噛み込み部11を設け、ノズルタッチブロック押圧手段50をマニホールド20に固定することにより、ノズルタッチブロック10がz軸方向の中間位置付近にある際には、ノズルタッチブロック10をz軸方向に移動しやすくしながらも、ノズルタッチブロック10をz軸方向正側の移動限界位置やz軸方向負側の移動限界位置に近づけるにつれて、ノズルタッチブロック10がマニホールド20の側へ強く押し付けられるようになる。すなわち、図13に示すように、支持手段30によりノズルタッチブロック10をz軸方向正側へ移動させ、ノズルタッチブロック10をz軸方向正側の移動限界位置まで到達させて下側の面αと下側の面γとを接触させた際には、ノズルタッチブロック10は、支持手段30から加えられるz軸方向正側を向く力とは反対向きの(z軸方向負側を向く)力Fを受ける(図13における点D1)。このとき、面γはxz平面に対して傾斜しているので、ノズルタッチブロック10の噛み込み部11には、力Fの面γに垂直な成分が垂直抗力F1として作用する。したがって、ノズルタッチブロック10は、垂直効力F1における面βに垂直な成分F1によって、マニホールド20の側へ押し付けられることになる。一方、図14に示すように、支持手段30によりノズルタッチブロック10をz軸方向負側へ移動させ、ノズルタッチブロック10をz軸方向負側の移動限界位置まで到達させて上側の面αと上側の面γとを接触させた際にも、図13と同様の現象が起こる(図14の力f,f1,f2を参照。)。これにより、導入口I1,I2から成形材料M1,M2を注入する際(ノズルタッチブロック10がz軸方向正側の移動限界位置又はz軸方向負側の移動限界位置にあるとき)には、ノズルタッチブロック10とマニホールド20との隙間から成形材料M1,M2が漏れないようにすることができるようになる。
【0036】
ところで、ここまでは、説明の便宜上、x軸方向を左右方向、y軸方向を前後方向、z軸方向を上下方向としていたが、本発明の射出成形用金型を設置する向きはこれに限定されない。射出成形用金型を設置する向きは、射出成形用金型の規模や射出成形される製品Pの種類などに応じて適宜決定される。また、図1〜14に示す射出成形用金型は、ノズルタッチブロック10の導入口やマニホールド20のホットランナーは、2組ずつ設けられており、2種類の成形材料M1,M2を独立して射出成形することができるものとなっているが、ノズルタッチブロック10の導入口の数やマニホールド20のホットランナーの本数は、これに限定されない。例えば、ノズルタッチブロック10に導入口を3組以上設けるとともに、マニホールド20にもホットランナーを3組以上設けることで、3種類以上の成形材料を独立して射出成形できるようにすることもできる。
【0037】
続いて、図1〜8に示す射出成形用金型を用いた製品P(射出成形品)の色替え方法について説明する。図1〜8に示す射出成形用金型は、以下の手順[1]〜[12]を繰り返すことにより、製品Pの色替えを行うことができる。
[1]まず、図1〜4に示すように、ノズルタッチブロック10をz軸方向正側に移動させて、ノズルタッチブロック10の導出口O1をマニホールド20の導入口O10と接続し、射出ユニット60のノズル61をノズルタッチブロック10の導入口I1に接続する。
[2]この状態で、射出ユニット60からある特定の色を有する成形材料M1を射出し、マニホールド20のホットランナーR10を経てキャビティCに成形材料M1を射出する。
[3]キャビティCの成形材料M1が硬化して製品Pとなると、第二金型41をy軸方向正側へ後退させ、製品Pを第一金型40又は第二金型41の内部から取り出す。
[4]この後、再び成形材料M1で射出成形を行う場合には、第二金型41をy軸方向負側に前進させて第一金型40と第二金型42とを型締めし、[2]〜[4]の手順を繰り返す。
[5]成形材料M1での射出成形を終え、成形材料M1とは異なる色の成形材料M2で射出成形を行う場合には、[3]の手順の後、射出ユニット60をy軸方向負側へ後退させ、そのノズル61をノズルタッチブロック10から切り離す。
[6]この状態で、射出ユニット60に成形材料M2を投入し、そのノズル61から射出される成形材料が成形材料M1から成形材料M2に完全に切り替わるまで、射出ユニット60で射出を行う。
[7]この間に、支持手段30を操作し、ノズルタッチブロック10をz軸方向負側に移動させて、ノズルタッチブロック10の導出口O2をマニホールド20の導入口O20と接続しておく。
[8]ノズル61から射出される成形材料が成形材料M2に切り替わったのを確認すると、射出ユニット60をy軸方向正側へ前進させ、そのノズル61をノズルタッチブロック10の導入口I20に接続する。
[9]この状態で、射出ユニット60から成形材料M2を射出し、マニホールド20のホットランナーR20を経てキャビティCに成形材料M2を射出する(図5〜8を参照)。
[10]キャビティCの成形材料M2が硬化して製品Pとなると、第二金型41をy軸方向正側へ後退させ、製品Pを第一金型40又は第二金型41の内部から取り出す。
[11]この後、再び成形材料M2で射出成形を行う場合には、第二金型41をy軸方向負側に前進させて第一金型40と第二金型42とを型締めし、[9]〜[11]の手順を繰り返す。
[12]成形材料M2での射出成形を終え、再び成形材料M1で射出成形を行う場合には、[10]の手順の後、射出ユニット60をy軸方向負側へ後退させ、そのノズル61をノズルタッチブロック10から切り離し、射出ユニット60に成形材料M1を投入し、そのノズル61から射出される成形材料が成形材料M2から成形材料M1に完全に切り替わるまで射出ユニット60で射出を行い、射出ユニット60をy軸方向正側へ前進させてそのノズル61をノズルタッチブロック10の導入口I1と接続し、[2]以降の手順を行う。
【0038】
以上のように、本発明の射出成形用金型は、試し打ちを行うことなく製品Pの色替えを行うことができるので、成形材料の無駄を省くことが可能になる。本発明の射出成形用金型を用いて射出成形を行う成形材料M1,M2の種類は、特に限定されないが、通常、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン−1などのポリオレフィン;ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)、MBS(メタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン)、ポリスチレンなどのスチレン系樹脂;ポリメタクリル酸メチルなどのアクリル樹脂;ポリカーボネート;ポリ塩化ビニル;ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル;ポリアミドなどの熱可塑性樹脂である。本発明の射出成形用金型は、自動車の内装材など、各種の製品を射出成形するのに好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の射出成形用金型を用いて一の成形材料を射出成形しているときのノズルタッチブロックとマニホールドを示した斜視図である。
【図2】図1におけるノズルタッチブロックとマニホールドをy軸方向負側から見た状態を示した図である。
【図3】一の成形材料を射出成形しているときの本発明の射出成形用金型をx軸方向正側から見た状態を示した図である。
【図4】図3における本発明の射出成形用金型をz軸方向正側から見た状態を示した図である。
【図5】本発明の射出成形用金型を用いて他の成形材料を射出成形しているときのノズルタッチブロックとマニホールドを示した斜視図である。
【図6】図5におけるノズルタッチブロックとマニホールドをy軸方向負側から見た状態を示した図である。
【図7】他の成形材料を射出成形しているときの本発明の射出成形用金型をx軸方向正側から見た状態を示した図である。
【図8】図7における本発明の射出成形用金型をz軸方向正側から見た状態を示した図である。
【図9】他の実施態様の射出成形用金型におけるノズルタッチブロックの周辺を拡大した状態を示した斜視図である。
【図10】図9におけるノズルタッチブロック押圧手段を拡大した状態を示した斜視図である。
【図11】図9におけるノズルタッチブロックを拡大した状態を示した斜視図である。
【図12】図9に示すノズルタッチブロックがz軸方向の中間位置にあるときのノズルタッチブロック周辺をX1−X1面に相当する面で切断した状態を示した断面図である。
【図13】図9に示すノズルタッチブロックがz軸方向正側の移動限界位置にあるときのノズルタッチブロック周辺をX1−X1面に相当する面で切断した状態を示した断面図である。
【図14】図9に示すノズルタッチブロックがz軸方向負側の移動限界位置にあるときのノズルタッチブロック周辺をX1−X1面に相当する面で切断した状態を示した断面図である。
【符号の説明】
【0040】
10 ノズルタッチブロック
11 噛み込み部
20 マニホールド
30 支持手段
40 第一金型
41 第二金型
50 ノズルタッチブロック押圧手段
51 押圧部
52 固定部
60 射出ユニット
61 ノズル
C キャビティ
I1 導入口(成形材料M1用のノズルタッチブロック側の導入口)
I10 導入口(成形材料M1用のマニホールド側の導入口)
I2 導入口(成形材料M2用のノズルタッチブロック側の導入口)
I20 導入口(成形材料M2用のマニホールド側の導入口)
M1 成形材料
M2 成形材料
O1 導出口(成形材料M1用のノズルタッチブロック側の導出口)
O2 導出口(成形材料M2用のノズルタッチブロック側の導出口)
O10〜G13 導出口(成形材料M1用のマニホールド側の導出口)
O20〜G23 導出口(成形材料M2用のマニホールド側の導出口)
R10 ホットランナー(成形材料M1用)
R20 ホットランナー(成形材料M2用)
P 製品
【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出ユニットから成形材料を導入するための導入口が複数箇所に設けられたノズルタッチブロックと、それぞれの導入口から導入された成形材料をそれぞれ独立して案内するための複数のホットランナーが設けられたマニホールドと、ノズルタッチブロックをマニホールドに対して移動可能に支持するための支持手段とを備え、ノズルタッチブロックをマニホールドに対して移動させて前記ノズルに接続される導入口を切り替えることにより、使用するホットランナーが切り替えられるようにしたことを特徴とする射出成形用金型。
【請求項2】
ノズルタッチブロックをマニホールド側へ押さえつけるためのノズルタッチブロック押圧手段を備えた請求項1記載の射出成形用金型。
【請求項3】
複数の導入口が、ノズルタッチブロックの特定方向に沿って1列に設けられ、支持手段が、ノズルタッチブロックをマニホールドに対して前記特定方向に移動可能に支持する請求項1又は2いずれか記載の射出成形用金型。
【請求項4】
ノズルタッチブロックをマニホールド側へ押さえつけるための面αを有するノズルタッチブロック押圧手段を備え、ノズルタッチブロックに、それが前記特定方向における移動限界位置に近づくにつれてノズルタッチブロック押圧手段における面αとマニホールドにおけるノズルタッチブロックを案内する面βとの隙間に噛み込む一対の噛み込み部が設けられ、ノズルタッチブロックが前記特定方向のうち一方の移動限界位置にあるときは一の導入口が前記ノズルに接続され、ノズルタッチブロックが前記特定方向のうち他方の移動限界位置にあるときは他の導入口が前記ノズルに接続される請求項3記載の射出成形用金型。
【請求項5】
ノズルタッチブロック押圧手段の面αとマニホールドの面βとがなす傾斜角度が1〜60°である請求項4記載の射出成形用金型。
【請求項6】
マニホールドに設けられた複数のホットランナーがマニホールドの厚さ方向において段違いに配された請求項1〜5いずれか記載の射出成形用金型。
【請求項7】
射出ユニットから成形材料を導入するための導入口が複数箇所に設けられたノズルタッチブロックと、それぞれの導入口から導入された成形材料をそれぞれ独立して案内するための複数のホットランナーが設けられたマニホールドと、ノズルタッチブロックをマニホールドに対して移動可能に支持するための支持手段とを備えた射出成形用金型を用い、ノズルタッチブロックをマニホールドに対して移動させて前記ノズルに接続される導入口を切り替えることにより、成形材料の色に応じて使用するホットランナーを切り替えることを特徴とする射出成形品の色替え方法。
【請求項1】
射出ユニットから成形材料を導入するための導入口が複数箇所に設けられたノズルタッチブロックと、それぞれの導入口から導入された成形材料をそれぞれ独立して案内するための複数のホットランナーが設けられたマニホールドと、ノズルタッチブロックをマニホールドに対して移動可能に支持するための支持手段とを備え、ノズルタッチブロックをマニホールドに対して移動させて前記ノズルに接続される導入口を切り替えることにより、使用するホットランナーが切り替えられるようにしたことを特徴とする射出成形用金型。
【請求項2】
ノズルタッチブロックをマニホールド側へ押さえつけるためのノズルタッチブロック押圧手段を備えた請求項1記載の射出成形用金型。
【請求項3】
複数の導入口が、ノズルタッチブロックの特定方向に沿って1列に設けられ、支持手段が、ノズルタッチブロックをマニホールドに対して前記特定方向に移動可能に支持する請求項1又は2いずれか記載の射出成形用金型。
【請求項4】
ノズルタッチブロックをマニホールド側へ押さえつけるための面αを有するノズルタッチブロック押圧手段を備え、ノズルタッチブロックに、それが前記特定方向における移動限界位置に近づくにつれてノズルタッチブロック押圧手段における面αとマニホールドにおけるノズルタッチブロックを案内する面βとの隙間に噛み込む一対の噛み込み部が設けられ、ノズルタッチブロックが前記特定方向のうち一方の移動限界位置にあるときは一の導入口が前記ノズルに接続され、ノズルタッチブロックが前記特定方向のうち他方の移動限界位置にあるときは他の導入口が前記ノズルに接続される請求項3記載の射出成形用金型。
【請求項5】
ノズルタッチブロック押圧手段の面αとマニホールドの面βとがなす傾斜角度が1〜60°である請求項4記載の射出成形用金型。
【請求項6】
マニホールドに設けられた複数のホットランナーがマニホールドの厚さ方向において段違いに配された請求項1〜5いずれか記載の射出成形用金型。
【請求項7】
射出ユニットから成形材料を導入するための導入口が複数箇所に設けられたノズルタッチブロックと、それぞれの導入口から導入された成形材料をそれぞれ独立して案内するための複数のホットランナーが設けられたマニホールドと、ノズルタッチブロックをマニホールドに対して移動可能に支持するための支持手段とを備えた射出成形用金型を用い、ノズルタッチブロックをマニホールドに対して移動させて前記ノズルに接続される導入口を切り替えることにより、成形材料の色に応じて使用するホットランナーを切り替えることを特徴とする射出成形品の色替え方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−137521(P2010−137521A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−318836(P2008−318836)
【出願日】平成20年12月15日(2008.12.15)
【出願人】(591085927)水菱プラスチック株式会社 (5)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月15日(2008.12.15)
【出願人】(591085927)水菱プラスチック株式会社 (5)
【Fターム(参考)】
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