説明

導体パターンの形成方法

【課題】導体のトップ部の幅を保持し、かつ導体のミドル部のえぐれを抑制できる導体パターンの形成方法を提供する。
【解決手段】銅層のエッチングレジストで被覆されていない部分に、フラットスプレーノズルによりエッチング液を噴霧して、前記被覆されていない部分をエッチングする導体パターン(2)の形成方法において、前記エッチング液は、第二銅イオン源、酸及びアゾール類を含む水溶液であり、前記銅層表面の単位面積当たりの前記エッチング液の噴霧量が、35〜450L/(min・m2)であることを特徴とする導体パターン(2)の形成方法とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプレーノズルによりエッチング液を噴霧して銅層をエッチングする導体パターンの形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板の製造において、フォトエッチング法で銅からなる導体パターン(配線パターンや端子パターン等)を形成する場合、エッチング液として塩化鉄系エッチング液、塩化銅系エッチング液、アルカリ性エッチング液などが用いられている。しかし、これらのエッチング液には、アンダーカットとよばれるエッチングレジスト下の銅が側面から溶解するという問題がある。即ち、エッチングレジストで被覆されることによって本来エッチングで除去されないことが望まれる部分(配線部分や端子部分等)が、サイドエッチングにより除去されて、導体のボトム部からトップ部になるに従い幅が細くなる現象(アンダーカット)が生じていた。特に導体パターンが微細な場合、このようなアンダーカットはできる限り少なくしなければならない。
【0003】
従来から、前記アンダーカットを抑制できるエッチング液が検討されている。例えば下記特許文献1には、第二銅イオン源、酸及びアゾール類を含有するエッチング液が提案されている。このエッチング液によれば、アンダーカットが抑制されるため、配線のトップ部の幅を保持することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−330572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のエッチング液によって、配線間の間隔が相違する複数のパターン領域を同時に形成すると、配線間の間隔が狭いパターン領域では、配線間の間隔が広いパターン領域に比べてエッチング時間が長くなる。そのため、間隔が狭いパターン領域のエッチングが完了する時点では、間隔が広いパターン領域の銅層が過剰にエッチングされた状態となり、配線のボトム部とトップ部の間(ミドル部)のえぐれが大きくなるという問題があった。配線のミドル部のえぐれは、自動外観検査(AOI検査)などによって配線の上方から検査する際に配線のトップ部に隠れるため、本来なら不良となる程度のえぐれであっても、不良と判断されなくなるおそれがある。また、配線のミドル部のえぐれが大きくなると、後工程のめっき工程において配線が侵食されることによって、配線が欠けてしまうなどの問題が発生するおそれがある。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、導体のトップ部の幅を保持し、かつ導体のミドル部のえぐれを抑制できる導体パターンの形成方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の導体パターンの形成方法は、銅層のエッチングレジストで被覆されていない部分に、フラットスプレーノズルによりエッチング液を噴霧して、前記被覆されていない部分をエッチングする導体パターンの形成方法において、
前記エッチング液は、第二銅イオン源、酸及びアゾール類を含む水溶液であり、
前記銅層表面の単位面積当たりの前記エッチング液の噴霧量が、35〜450L/(min・m2)であることを特徴とする。
【0008】
本発明の第2の導体パターンの形成方法は、銅層のエッチングレジストで被覆されていない部分に、フルコーンスプレーノズルによりエッチング液を噴霧して、前記被覆されていない部分をエッチングする導体パターンの形成方法において、
前記エッチング液は、第二銅イオン源、酸及びアゾール類を含む水溶液であり、
前記銅層表面の単位面積当たりの前記エッチング液の噴霧量が、30〜200L/(min・m2)であることを特徴とする。
【0009】
なお、上記本発明における「銅」は、銅からなるものであってもよく、銅合金からなるものであってもよい。また、本明細書において「銅」は、銅又は銅合金をさす。
【発明の効果】
【0010】
本発明ではアゾール類を含むエッチング液を使用するため、導体のトップ部の幅を保持することができる。また、銅層表面の単位面積当たりのエッチング液の噴霧量を制御することにより、導体のミドル部のえぐれを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例及び比較例の評価方法を説明するための配線の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、銅層のエッチングレジストで被覆されていない部分に、フラットスプレーノズル又はフルコーンスプレーノズルによりエッチング液を噴霧して、前記被覆されていない部分をエッチングする導体パターンの形成方法に関する。
【0013】
本発明で使用されるエッチング液は、第二銅イオン源、酸及びアゾール類を含む水溶液である。上記エッチング液はアゾール類を含むため、アンダーカットが抑制され、導体のトップ部の幅を保持することができる。アゾール類がアンダーカットを抑制するしくみは、明らかではないが、導体パターンのトップ部から側面近傍の液中の第一銅イオンと結合して、導体パターンのトップ部から側面に保護皮膜を形成することで、アンダーカットを抑制しているものと考えられる。以下、上記エッチング液に含まれる成分について説明する。
【0014】
(第二銅イオン源)
第二銅イオン源は、金属銅を酸化する酸化剤として添加される成分である。第二銅イオン源の種類としては、例えば、塩化第二銅、硫酸第二銅、臭化第二銅、有機酸の第二銅塩、水酸化第二銅などが挙げられる。この中でも、溶解性が高く、エッチング速度が速いため、特に塩化第二銅が好ましい。
【0015】
エッチング液中の第二銅イオン源の濃度としては、銅イオン濃度で14〜155g/Lの範囲が好ましく、特に好ましくは33〜122g/Lの範囲である。この範囲内であれば、エッチング速度の低下を防ぐことができ、かつ第二銅イオンの溶解性が良好となるためエッチング速度を安定して維持できる。なお、好ましい第二銅イオン源である塩化第二銅を用いる場合には、塩化第二銅の濃度で好ましくは30〜330g/L、より好ましくは70〜260g/Lの範囲である。
【0016】
(酸)
酸は、第二銅イオンによって酸化された金属銅を溶解するために添加される成分である。用いられる酸の種類としては無機酸及び有機酸から選ばれる少なくとも一種が挙げられる。
【0017】
上記無機酸としては、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸等が挙げられる。上記有機酸としては、ギ酸、酢酸、シュウ酸、マレイン酸、安息香酸、グリコール酸等が挙げられる。このうち特に好ましい酸としては、エッチング速度の安定性及び銅の溶解安定性(第一銅イオンおよび第二銅イオンをエッチング液中に保持しておく能力が高いこと)の観点から、塩酸が好ましい。
【0018】
エッチング液中の酸の濃度としては、7〜200g/Lが好ましく、より好ましくは18〜110g/L、更に好ましくは18〜80g/Lである。酸の濃度が7g/L以上であれば、安定したエッチング速度が得られ、かつ銅の溶解安定性の低下を防ぐことができる。一方、酸の濃度が200g/L以下であれば、エッチングレジストと銅の間にエッチング液が侵食することを防ぐことができ、かつ銅表面の再酸化を防ぐことができる。
【0019】
(アゾール類)
アゾール類としては、単環式化合物であってもよく、環が縮合した化合物あってもよい。好ましいアゾール類としては、環内にある異原子として窒素原子のみを有するアゾールが挙げられる。なかでも、アンダーカットを効果的に抑制する観点から、イミダゾール系化合物、トリアゾール系化合物及びテトラゾール系化合物が好ましく、これらのアゾール類の2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0020】
上記イミダゾール系化合物の例としては、例えば、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾールなどのイミダゾール類、ベンズイミダゾール、2−メチルベンズイミダゾール、2−ウンデシルベンズイミダゾール、2−フェニルベンズイミダゾール、2−メルカプトベンズイミダゾールなどのベンズイミダゾール類などが挙げられる。
【0021】
上記トリアゾール系化合物の例としては、例えば、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、5−フェニル−1,2,4−トリアゾール、5−アミノ−1,2,4−トリアゾール、ベンズトリアゾール、1−メチル−ベンズトリアゾール、トリルトリアゾールなどが挙げられる。
【0022】
上記テトラゾール系化合物の例としては、例えば、1H−テトラゾール、5−アミノ−1H−テトラゾール、5−メチル−1H−テトラゾール、5−フェニル−1H−テトラゾール、5−メルカプト−1H−テトラゾール、1−フェニル−5−メルカプト−1H−テトラゾール、1−シクロヘキシル−5−メルカプト−1H−テトラゾール、5,5'−ビ−1H−テトラゾール、及びこれらのアンモニウム塩またはNa塩、Zn塩、Ca塩、K塩などの金属塩などが挙げられる。
【0023】
上記例示したアゾール類のなかでは、特にテトラゾール系化合物が好ましい。アンダーカット抑制性能が高くなる上、パターンをシャープに形成できるからである。
【0024】
さらにテトラゾール系化合物の中でも、1H−テトラゾール、5−フェニル−1H−テトラゾール、5−アミノ−1H−テトラゾール、5,5'−ビ−1H−テトラゾール、及びこれらのアンモニウム塩または金属塩などが好ましく、1H−テトラゾール、5−アミノ−1H−テトラゾール、及びこれらのアンモニウム塩または金属塩が特に好ましい。これらのテトラゾール系化合物は、導体パターンのトップ部から側面に薄く均一に保護皮膜を形成できると推定される。
【0025】
エッチング液中のアゾール類の濃度としては0.1〜50g/Lが好ましく、より好ましくは0.1〜15g/L、さらに好ましくは0.2〜10g/Lである。アゾール類の濃度が0.1g/L以上であれば、アンダーカットを確実に抑制できる。一方、アゾール類の濃度が50g/L以下の場合は、エッチング速度の低下を防ぐことができ、かつエッチングされるべき部分を確実にエッチングできるため、ショート(絶縁不良)の発生を防ぐことができる。
【0026】
(その他の添加剤)
本発明で使用されるエッチング液には、液の安定性を高め、ムラのないエッチングを行い、エッチング後の表面形状を均一にするために、カチオン界面活性剤、グリコール及びグリコールエーテルから選ばれる少なくとも一つ、アルコール類、アミド類、アニオン界面活性剤、溶剤、ノニオン界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン性ポリマーなど、必要に応じて種々の添加剤を配合してもよい。これらの添加剤の具体例を以下に示す。
【0027】
カチオン界面活性剤:塩化ベンザルコニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウムなどのアルキル型第4級アンモニウム塩など
グリコール:エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリアルキレングリコール(アルキレン基の炭素数が4〜500程度)など
グリコールエーテル:プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテルなど
アルコール類:メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール、2−フェノキシエタノールなど
アミド類:N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルイミダゾリジノン、N−メチルピロリドンなど
アニオン界面活性剤:脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩など
溶剤:ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類など
ノニオン界面活性剤:ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンとのブロックポリマーなど
両性界面活性剤:ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルヒドロキシスルホベタインなどのベタイン、ラウリルジメチルアミンオキサイド、アミノカルボン酸など
【0028】
また、カチオン性ポリマーとしては、水に溶けてカチオン性の挙動を示し、かつ分子量が千以上のものが好ましく、より好ましくは分子量が数千から数百万の高分子化合物である。具体的には、ポリエチレンイミン、ポリアルキレンポリアミン、第4級アンモニウム塩型スチレンの重合体、第4級アンモニウム塩型アミノアルキル(メタ)アクリレートの重合体、第4級アンモニウム塩型ジアリルアミンの重合体、第4級アンモニウム塩型ジアリルアミンとアクリルアミドとの共重合体、アミノアルキルアクリルアミドの塩の重合体、カチオン性セルロース誘導体等が挙げられ、前記塩としては、例えば塩酸塩が挙げられる。前記カチオン性ポリマーのなかでもポリエチレンイミン、ポリアルキレンポリアミンが好ましい。なお、前記カチオン性ポリマーは、2種以上を併用してもよい。また、前記カチオン性ポリマーとしては、樹脂や繊維の帯電防止剤、廃水処理用の高分子凝集剤、毛髪用リンスのコンディショニング成分等として市販されているものを用いてもよい。
【0029】
また、本発明で使用されるエッチング液には、塩化ナトリウム等のハロゲン化物イオン源を配合してもよい。
【0030】
上記エッチング液は、上述した各成分を水に溶解させることにより、容易に調製することができる。上記水としては、イオン交換水、純水、超純水などのイオン性物質や不純物を除去した水が好ましい。エッチングの際の上記エッチング液の温度は、安定したエッチング速度を得る観点から、20〜55℃が好ましい。
【0031】
次に、本発明で使用されるスプレーノズルについて説明する。本発明では、フラットスプレーノズル又はフルコーンスプレーノズルにより、上記エッチング液を噴霧する。特に、フラットスプレーノズルを使用すると、導体のトップ部の幅を容易に保持することができるため好ましい。フラットスプレーノズルとしては、例えば、VP9002、VP9003、VP9005、VP9007、VP9010、VP9015、VP9020、VP11505、VP11515(いずれもいけうち社製)や、KH00880、KH0180、KH01580、KH0280(いずれもエバーロイ社製)や、QPVVL8002、QPVVL8003、QPVVL8004、QPVVL8005(いずれもスプレーイングシステムスジャパン社製)等が使用できる。またフルコーンスプレーノズルについては、例えば、JJRP005、JJRP007、JJXP010、JJXP015、JJXP020、 JJXP025、JJXP030(いずれもいけうち社製)や、KF00890、KF0190、KF01590、KF0290(いずれもエバーロイ社製)や、QPH1、QPH1.5、QPH2、QPH3(いずれもスプレーイングシステムスジャパン社製)等が使用できる。
【0032】
(フラットスプレーノズルを使用する場合)
本発明においてフラットスプレーノズルを使用する場合、エッチング対象物である銅層表面の単位面積当たりのエッチング液の噴霧量は、35〜450L/(min・m2)である。これにより、銅層表面上におけるエッチング液の流れ(液流れ)が適度な速さに維持されるため、上述した保護皮膜が適度な厚みで形成され、かつ導体側面から剥離され難くなると考えられる。その結果、導体のミドル部のえぐれが抑制され、良好な形状の導体(配線や端子等)が得られると考えられる。同様の観点から、上記エッチング液の噴霧量は、39〜392L/(min・m2)であることが好ましく、58〜295L/(min・m2)であることがより好ましい。更に、同様の観点から、上記フラットスプレーノズル1個当たりのエッチング液の噴霧量は、0.14〜1.62L/minであることが好ましく、0.21〜1.06L/minであることがより好ましい。なお、保護皮膜の厚みは、最大厚みとして0.4〜5.0μm程度である。
【0033】
単位面積当たりのフラットスプレーノズルの数に関しては、銅層表面上における液溜まりに起因する保護皮膜の異常析出を抑制する観点から、69個/m2以上であることが好ましく、90個/m2以上であることがより好ましい。また、保護皮膜を適度な厚みで形成し、導体のミドル部のえぐれを効果的に抑制する観点から、625個/m2以下であることが好ましく、500個/m2以下であることがより好ましい。
【0034】
(フルコーンスプレーノズルを使用する場合)
本発明においてフルコーンスプレーノズルを使用する場合、エッチング対象物である銅層表面の単位面積当たりのエッチング液の噴霧量は、30〜200L/(min・m2)である。これにより、銅層表面上におけるエッチング液の流れ(液流れ)が適度な速さに維持されるため、上述した保護皮膜が適度な厚みで形成され、かつ導体側面から剥離され難くなると考えられる。その結果、導体のミドル部のえぐれが抑制され、良好な形状の導体(配線や端子等)が得られると考えられる。同様の観点から、上記エッチング液の噴霧量は、30〜181L/(min・m2)であることが好ましく、42〜152L/(min・m2)であることがより好ましい。更に、同様の観点から、上記フルコーンスプレーノズル1個当たりのエッチング液の噴霧量は、0.44〜2.63L/minであることが好ましく、0.61〜2.20L/minであることがより好ましい。
【0035】
単位面積当たりのフルコーンスプレーノズルの数に関しては、銅層表面上における液溜まりに起因する保護皮膜の異常析出を抑制する観点から、51個/m2以上であることが好ましく、90個/m2以上であることがより好ましい。また、保護皮膜を適度な厚みで形成し、導体のミドル部のえぐれを効果的に抑制する観点から、280個/m2以下であることが好ましく、230個/m2以下であることがより好ましい。
【0036】
フラットスプレーノズル及びフルコーンスプレーノズルのいずれを用いる場合も、エッチング液の噴霧圧力は、0.04〜0.30MPaであることが好ましく、0.05〜0.30MPaであることがより好ましい。噴霧圧力が0.04MPa以上の場合は、ショートの発生を容易に防ぐことができる。一方、噴霧圧力が0.30MPa以下の場合は、エッチングレジストの剥れに起因する導体の欠けを防止できる上、ポンプ圧の上昇を抑制できるため、経済性においても有利である。なお、上記「噴霧圧力」とは、スプレーノズルからの噴霧直後の噴霧圧力を指す。
【0037】
また、フラットスプレーノズル及びフルコーンスプレーノズルのいずれを用いる場合も、スプレーノズル末端からエッチング対象物である銅層表面までの距離(ノズルパスライン距離)は、3〜14cmであることが好ましく、4〜12cmであることがより好ましい。ノズルパスライン距離が3cm以上の場合は、エッチングレジストの剥れに起因する導体の欠けを防止できる。一方、ノズルパスライン距離が14cm以下の場合は、ショートの発生を容易に防ぐことができる。
【実施例】
【0038】
次に、本発明の実施例について比較例と併せて説明する。なお、本発明は下記の実施例に限定して解釈されるものではない。
【0039】
(フラットスプレーノズルを使用した例)
表1に示す組成の各エッチング液を調製し、フラットスプレーノズルを使用して以下に示す条件でエッチングを行った。なお、表1に示す塩酸の濃度は塩化水素としての濃度である。
【0040】
(使用した基板)
厚み18μmの銅箔が積層されたガラスエポキシ基板(パナソニック電工社製R1661)を用意し、この銅層上に液状レジストを用いてフォトリソグラフィー法によってエッチングレジストパターンを形成した。この際、エッチングレジストパターンは、厚み4μm、ライン(L)/スペース(S)=30μm/30μmのパターン領域と、厚み4μm、L/S=70μm/70μmのパターン領域とが混在したレジストパターンとした。
【0041】
(使用したフラットスプレーノズル)
フラットスプレーノズルは、比較例1,3,5,7,9については該当する噴霧量が得られるように自社で作製したノズルを使用した。実施例1,7,13,19及び比較例10についてはいけうち社製VP9002、実施例2,8,14,20及び比較例11についてはいけうち社製VP9003、実施例3,9,15,21及び比較例12についてはいけうち社製VP9007、実施例4,10,16,22及び比較例13についてはいけうち社製VP9015、実施例5,11,17,23及び比較例14についてはいけうち社製VP9020を使用した。実施例6,12,18,24及び比較例15については該当する噴霧量が得られるように自社で作製したノズルを使用した。比較例2,4,6,8,16についてはいけうち社製VP9030を使用した。
【0042】
(その他の条件)
エッチング液の噴霧量:それぞれ表1に示す噴霧量
エッチング時間:それぞれ表1に示すエッチング時間
フラットスプレーノズルの数:いずれも278個/m2
ノズルパスライン距離:いずれも6cm
エッチング液の噴霧圧力:いずれも0.15MPa
エッチング液の温度:いずれも40℃
なお、エッチング時間については、比較例1,3,5,7以外は、L/S=30μm/30μmのパターン領域における配線のボトム幅が24〜36μmになる時間とした。比較例1,3,5,7については、200秒間エッチングしてもパターン形成ができず、ショートが発生した。
【0043】
上記の条件でエッチングした後、水洗、乾燥を行って、得られたサンプル基板の一部を切断し、これを冷感埋め込み樹脂に埋め込み、配線の断面を観察できるように研磨加工を行った。そして、走査型電子顕微鏡(SEM)の画像計測により、図1に示す配線2のトップ幅W、ミドル幅W及びボトム幅Wを計測した。ここで、ミドル幅Wは、配線2における高さ方向の中間部(ミドル部)の幅、即ち、ガラスエポキシ基材1から9μmの高さの配線幅である。得られた測定値から、以下に示す基準により評価及び判定した。結果を表2に示す。
【0044】
(評価基準1)
得られた測定値のうちL/S=70μm/70μmのパターン領域における配線2のトップ幅Wについて、64.0μmより大きい場合をA、60.0μmを超えて64.0μm以下の場合をB、60.0μm以下の場合をCとした。
【0045】
(評価基準2)
得られた測定値のうちL/S=70μm/70μmのパターン領域における配線2のトップ幅W及びミドル幅Wから、以下の式によりえぐれ率(%)を算出した。そして、えぐれ率の絶対値が、4.0%未満の場合をA、4.0%以上で8.0%未満の場合をB、8.0%以上の場合をCとした。
えぐれ率(%)=(トップ幅W−ミドル幅W)/トップ幅W×100
【0046】
(判定基準)
○:評価基準1及び2のいずれもAの場合
×:評価基準1及び2のいずれかがCの場合、ショートが発生した場合、又はL/S=30μm/30μmのパターン領域における配線2のトップ幅Wが20.0μm以下の場合
△:上記○及び×以外の場合
【0047】
【表1】

【0048】
【表2】

【0049】
表2から、実施例はいずれも比較例に比べて配線のトップ部の幅を保持できる上、配線のミドル部のえぐれを抑制できることが分かる。
【0050】
(フルコーンスプレーノズルを使用した例)
表3に示す組成の各エッチング液を調製し、以下に示すフルコーンスプレーノズルを使用し、ノズルの数をいずれも69個/m2とし、エッチング液の噴霧量及びエッチング時間をそれぞれ表3に示すとおりに設定したこと以外は、上記フラットスプレーノズルを使用した場合と同様の条件でエッチングを行い、上記と同様に評価及び判定した。結果を表4に示す。
【0051】
(使用したフルコーンスプレーノズル)
フルコーンスプレーノズルは、比較例17,19,21,23,25についてはいけうち社製J030NW、実施例25,30,35,40及び比較例26についてはいけうち社製JJRP005、実施例26,31,36,41及び比較例27についてはいけうち社製JJRP007、実施例27,32,37,42及び比較例28についてはいけうち社製JJXP015、実施例28,33,38,43及び比較例29についてはいけうち社製JJXP025、実施例29,34,39,44及び比較例30についてはいけうち社製JJXP030、比較例18,20,22,24,31についてはいけうち社製JJXP040を使用した。
【0052】
【表3】

【0053】
【表4】

【0054】
表4から、実施例はいずれも比較例に比べて配線のトップ部の幅を保持できる上、配線のミドル部のえぐれを抑制できることが分かる。
【符号の説明】
【0055】
1 ガラスエポキシ基材
2 配線
トップ幅
ミドル幅
ボトム幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅層のエッチングレジストで被覆されていない部分に、フラットスプレーノズルによりエッチング液を噴霧して、前記被覆されていない部分をエッチングする導体パターンの形成方法において、
前記エッチング液は、第二銅イオン源、酸及びアゾール類を含む水溶液であり、
前記銅層表面の単位面積当たりの前記エッチング液の噴霧量が、35〜450L/(min・m2)であることを特徴とする導体パターンの形成方法。
【請求項2】
前記エッチング液の噴霧量が、前記フラットスプレーノズル1個当たり0.14〜1.62L/minである請求項1に記載の導体パターンの形成方法。
【請求項3】
前記フラットスプレーノズルの数が、69〜625個/m2である請求項1又は2に記載の導体パターンの形成方法。
【請求項4】
銅層のエッチングレジストで被覆されていない部分に、フルコーンスプレーノズルによりエッチング液を噴霧して、前記被覆されていない部分をエッチングする導体パターンの形成方法において、
前記エッチング液は、第二銅イオン源、酸及びアゾール類を含む水溶液であり、
前記銅層表面の単位面積当たりの前記エッチング液の噴霧量が、30〜200L/(min・m2)であることを特徴とする導体パターンの形成方法。
【請求項5】
前記エッチング液の噴霧量が、前記フルコーンスプレーノズル1個当たり0.44〜2.63L/minである請求項4に記載の導体パターンの形成方法。
【請求項6】
前記フルコーンスプレーノズルの数が、51〜280個/m2である請求項4又は5に記載の導体パターンの形成方法。
【請求項7】
前記アゾール類は、テトラゾール系化合物である請求項1〜6のいずれか1項に記載の導体パターンの形成方法。
【請求項8】
前記エッチング液の噴霧圧力が、0.04〜0.30MPaである請求項1〜7のいずれか1項に記載の導体パターンの形成方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−84781(P2011−84781A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−238580(P2009−238580)
【出願日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(000114488)メック株式会社 (49)
【Fターム(参考)】