説明

導光シート及びこれを用いた可動接点体

【課題】各種電子機器に使用される導光シート及びこれを用いた可動接点体に関し、安価で良好な照光が可能なものを提供することを目的とする。
【解決手段】フィルム状で光透過性のカバーシート11下方の所定箇所に、複数の光透過性の上導電層12と反射層14、下導電層15を重ねて形成すると共に、反射層14内に上下面が明色または暗色に反転する反転粒子13を分散することによって、上導電層12と下導電層15に印加される電圧極性に応じて、反射層14内の反転粒子13の上下面を明色または暗色に反転させ、カバーシート11端面から入射した発光素子22の光を、この反射層14で反射させて複数の表示部7Bの照光を行うことができるため、一つまたは二つ程度の少ない発光素子でムラがなく、安価で良好な照光が可能な導光シート17、及びこれを用いた可動接点体20を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に各種電子機器の操作に用いられる導光シート、及びこれを用いた可動接点体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、各種電子機器、特に携帯電話等の携帯端末機器においては、周囲が暗い場合でも、押釦や表示シート等の識別や操作が容易に行えるように、発光ダイオードやEL素子等を発光させて操作部の照光を行うものが増えており、これらの機器に用いられる導光シート、及び可動接点体やスイッチにも、安価で視認し易い照光を行えるものが求められている。
【0003】
このような従来の可動接点体やスイッチについて、図7を用いて説明する。
【0004】
なお、図面は構成を判り易くするために、部分的に寸法を拡大して表している。
【0005】
図7は従来のスイッチの断面図であり、同図において、1はフィルム状のベースシート、2は略ドーム状で導電金属薄板製の可動接点で、複数の可動接点2が接着剤(図示せず)によってベースシート1下面に貼付されて、可動接点体3が構成されている。
【0006】
また、4は上下面に複数の配線パターン(図示せず)が形成された配線基板で、上面には略円形状の中央固定接点5Aと、これを囲む略馬蹄状または略リング状の外側固定接点5Bから形成された、複数の固定接点5が設けられている。
【0007】
そして、この配線基板4上面に可動接点体3が、各々の可動接点2の外周が外側固定接点5B上に載置され、可動接点2の下面中央が中央固定接点5Aと所定の間隙を空けて、対向するように貼付されている。
【0008】
さらに、6は発光ダイオード等の発光素子で、複数の発光素子6が配線基板4上面に実装され、これらが発光面を上方に向けて、複数の可動接点2の間に配置されている。
【0009】
また、7は光透過性でフィルム状の表示シートで、下面に印刷等によって形成された遮光部7Aの所定箇所が、文字や記号等の形状にくり抜かれて複数の表示部7Bが形成され、この表示部7Bが可動接点2上方に配置されて、スイッチが構成されている。
【0010】
そして、このように構成されたスイッチが、電子機器の操作面に装着されると共に、中央固定接点5Aや外側固定接点5B、発光素子6が配線パターンやリード線(図示せず)等を介して、機器の電子回路(図示せず)に接続される。
【0011】
以上の構成において、表示シート7の所定の表示部7Bを下方へ押圧操作すると、表示シート7が撓んで、可動接点2の略ドーム状の中央部が押圧され、所定の押圧力が加わると、可動接点2がクリック感を伴って下方へ弾性反転し、可動接点2の下面中央が中央固定接点5Aに接触することによって、中央固定接点5Aと外側固定接点5Bが、可動接点2を介して電気的に接続された状態となり、これによってどの表示部7Bが押圧操作されたかを電子回路が検出する。
【0012】
また、表示シート7への押圧力を解除すると、弾性復帰力によって可動接点2が上方へ弾性反転し、可動接点2の下面中央が中央固定接点5Aから離れて、中央固定接点5Aと外側固定接点5Bが電気的に切断された状態となる。
【0013】
そして、この押圧操作に応じて、機器の様々な機能の切換えが行われると共に、機器の電子回路から発光素子6に電源が供給されると、複数の発光素子6が発光し、この光が表示シート7の複数の表示部7Bを下方から照光することによって、周囲が暗い場合でも、表示部7Bの文字や記号等の表示が識別でき、操作を容易に行うことが可能なようになっている。
【0014】
つまり、表示シート7を介して複数の可動接点2を押圧操作することによって、複数の固定接点5の電気的接離を行うと共に、複数の発光素子6を発光させることによって、表示シート7の複数の表示部7Bの照光を行うように構成されているものであった。
【0015】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開2007−87749号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、上記従来の可動接点体3やスイッチにおいては、複数の発光素子6を複数の可動接点2の間に配置し、この発光素子6を発光させることによって、表示シート7の複数の表示部7Bの照光を行っているため、多くの発光素子6が必要となり、製作にも時間を要し、高価なものになってしまうという課題があった。
【0017】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、安価で良好な照光が可能な導光シート及びこれを用いた可動接点体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために本発明は、以下の構成を有するものである。
【0019】
本発明の請求項1に記載の発明は、フィルム状で光透過性のカバーシート下方の所定箇所に、複数の光透過性の上導電層と反射層、下導電層を重ねて形成すると共に、反射層内に上下面が明色または暗色に反転する反転粒子を分散して導光シートを構成したものであり、上導電層と下導電層に印加される電圧極性に応じて、反射層内の反転粒子の上下面を明色または暗色に反転させ、カバーシート端面から入射した発光素子の光を、この反射層で反射させて複数の表示部の照光を行うことによって、一つまたは二つ程度の少ない発光素子でムラのない照光を行うことができるため、安価で良好な照光が可能な導光シートを得ることができるという作用を有する。
【0020】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の導光シートの反射層下方に、略ドーム状で導電金属薄板製の可動接点を装着して可動接点体を構成したものであり、安価で良好な照光が可能な可動接点体を実現することができるという作用を有する。
【発明の効果】
【0021】
以上のように本発明によれば、安価で良好な照光が可能な導光シート及びこれを用いた可動接点体を実現することができるという有利な効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図6を用いて説明する。
【0023】
なお、これらの図面は構成を判り易くするために、部分的に寸法を拡大して表している。
【0024】
また、背景技術の項で説明した構成と同一構成の部分には同一符号を付して、詳細な説明を簡略化する。
【0025】
(実施の形態)
図1は本発明の一実施の形態による可動接点体の断面図、図2は同導光シートの部分断面図であり、同図において、11はフィルム状でポリエチレンテレフタレートやポリカーボネート、ポリウレタン、シリコーン等の可撓性を有する光透過性のカバーシートで、カバーシート11下面の所定箇所には、酸化インジウム錫や酸化錫、酸化亜鉛等の導電性薄膜、あるいはポリアセチレンやポリアニリン、ポリピロール、ポリチェニレン、ポリチオフェン等の導電性ポリマー薄膜状の、複数の光透過性の上導電層12が、スパッタ法あるいは印刷等によって形成されている。
【0026】
そして、この上導電層12下面には、内部にキシレンやn−ドデカン、パラフィン、テルペン類等の溶液または気体と、白色の酸化チタン等のプラスに帯電した明色粉13Aや、黒色のカーボン等のマイナスに帯電した暗色粉13Bを封止したカプセル状の複数の反転粒子13を、ポリエステルやシリコーン、エポキシ等の光透過性の絶縁樹脂内に分散した反射層14が、印刷等によって形成されている。
【0027】
さらに、この反射層14下面に、銀やカーボン等を分散したポリエステルやエポキシ等の下導電層15が重ねて形成されると共に、これらをポリエチレンテレフタレートやポリカーボネート等のフィルム、あるいはポリエステルやエポキシ等の絶縁層16が覆って、導光シート17が構成されている。
【0028】
また、1はポリエチレンテレフタレートやポリカーボネート等のフィルム状で可撓性を有するベースシート、2は略ドーム状で銅合金や鋼等の導電金属薄板製の可動接点で、ベースシート1外周の所定箇所が、接着剤(図示せず)によって導光シート17下面に貼付されると共に、複数の可動接点2が反射層14下方のベースシート1下面に貼付されている。
【0029】
そして、18はポリエチレンテレフタレート等のフィルム状のセパレータで、このセパレータ18がベースシート1下面全面を覆うように貼付され、保管・搬送時に可動接点2下面に塵埃等が付着しないようにして、可動接点体20が構成されている。
【0030】
また、図3はこのような可動接点体20を用いたスイッチの断面図であり、同図において、4はポリエチレンテレフタレートやポリカーボネート等のフィルム状、または紙フェノールやガラス入りエポキシ等の板状の配線基板で、上下面に銅等によって複数の配線パターン(図示せず)が形成されると共に、上面には銅やカーボン等によって、略円形状の中央固定接点5Aと、これを囲む略馬蹄状または略リング状の外側固定接点5Bから形成された複数の固定接点5が設けられている。
【0031】
そして、この配線基板4上面にセパレータ18を剥離した可動接点体20が、各々の可動接点2の外周が外側固定接点5B上に載置され、可動接点2の下面中央が中央固定接点5Aと所定の間隙を空けて対向するように貼付されて、導光シート17の反射層14下方に複数のスイッチ接点が形成されている。
【0032】
また、22は発光ダイオード等の発光素子で、この発光素子22が導光シート17右方の配線基板4上面に実装されると共に、導光シート17の下方へ折曲されたカバーシート11右端側面に発光面を向けて配置されている。
【0033】
さらに、7は光透過性でフィルム状の表示シートで、下面に印刷等によって形成された遮光部7Aの所定箇所が、文字や記号等の形状にくり抜かれて複数の表示部7Bが形成され、この表示部7Bが導光シート17の反射層14や可動接点2上方に配置されて、スイッチが構成されている。
【0034】
そして、このように構成されたスイッチが、電子機器の操作面に装着されると共に、導光シート17の上導電層12や下導電層15、複数の固定接点5や発光素子22が配線パターンやリード線(図示せず)等を介して、機器の電子回路(図示せず)に接続される。
【0035】
以上の構成において、表示シート7の所定の表示部7Bを下方へ押圧操作すると、表示シート7や導光シート17が撓んで、可動接点2の略ドーム状の中央部が押圧され、所定の押圧力が加わると、可動接点2がクリック感を伴って下方へ弾性反転し、可動接点2の下面中央が中央固定接点5Aに接触することによって、中央固定接点5Aと外側固定接点5Bが、可動接点2を介して電気的に接続された状態となり、これによってどの表示部7Bが押圧操作されたかを電子回路が検出する。
【0036】
また、表示シート7への押圧力を解除すると、弾性復帰力によって可動接点2が上方へ弾性反転し、可動接点2の下面中央が中央固定接点5Aから離れて、中央固定接点5Aと外側固定接点5Bが電気的に切断された状態となる。
【0037】
そして、この押圧操作に応じて、機器の様々な機能の切換えが行われると共に、機器の電子回路から発光素子22に電源が供給されると、発光素子22が発光し、この光が右端側面から導光シート17内に入射して、カバーシート11内を反射しながら左方へ進む。
【0038】
また、同時に導光シート17の上導電層12と下導電層15にも、電子回路から電源が供給されるが、この時、上導電層12に印加される電圧極性がマイナス、下導電層15に印加される電圧極性がプラスであった場合には、図2に示すように、反射層14に分散されたカプセル状の複数の反転粒子13内の、プラスに帯電した明色粉13Aが上導電層12側に、マイナスに帯電した暗色粉13Bが下導電層15側に各々泳動する。
【0039】
つまり、反射層14内の複数の反転粒子13の上面側には、白色の酸化チタン等の明色粉13Aが移動して集結するため、反射層14上面は白色の明色となり、これに対し反転粒子13の下面側には黒色のカーボン等の暗色粉13Bが集結するため、反射層14下面は黒色の暗色となる。
【0040】
そして、カバーシート11内に入射した光が、この下方の明色の反射層14上面で拡散され反射して、これが表示シート7の複数の表示部7Bを下方から照光することによって、周囲が暗い場合でも、表示部7Bの文字や記号等の表示が識別でき、操作を容易に行うことが可能なようになっている。
【0041】
なお、上記とは逆に、電子回路から上導電層12にプラス、下導電層15にマイナスの極性で電圧を印加した場合には、図4の部分断面図に示すように、プラスに帯電した明色粉13Aが下導電層15側に、マイナスに帯電した暗色粉13Bが上導電層12側に各々泳動して、反射層14上面が黒色の暗色、下面が白色の明色となるため、カバーシート11内に入射した光は反射層14上面に吸収されて、この上方の表示部7Bの照光は行われない。
【0042】
つまり、表示シート7を介して複数の可動接点2を押圧操作することによって、複数の固定接点5の電気的接離を行うと共に、発光素子22の光を右端側面から導光シート17内に導入し、上導電層12と下導電層15に電圧を印加して、反射層14内の反転粒子13の上下面を明色または暗色に反転させ、反射層14上面で光を反射して、表示シート7の複数の表示部7Bを照光するように構成されている。
【0043】
すなわち、カバーシート11下面に光透過性の上導電層12と、上下面が明色または暗色に反転する反転粒子13が分散された反射層14、及び下導電層15を重ねて形成すると共に、導光シート17内に入射した発光素子22の光を、この反射層14上面で反射して複数の表示部7Bの照光を行うことによって、多くの発光素子22を用いる必要がなく、一つまたは二つ程度の少ない発光素子22でムラのない照光を行うこうとが可能なようになっている。
【0044】
さらに、上記のように、上導電層12と下導電層15に印加する電圧極性を変化させることで、反転粒子13内に封止された明色粉13Aと暗色粉13Bの泳動方向が反転し、反射層14上面を明色または暗色に変化させることができるため、例えば、複数の表示部7Bのうち所望の箇所のみを照光したり、所定箇所の表示部7Bを点滅して照光したりするといった、多様な照光も容易に行うことができる。
【0045】
なお、以上の説明では、溶液または気体と、プラスに帯電した明色粉13Aとマイナスに帯電した暗色粉13Bを封止した反転粒子13を、光透過性の絶縁樹脂内に分散して、反射層14を形成した構成について説明したが、図5の部分断面図に示すように、上半分に白色等の明色でプラスに帯電した明色部23A、下半分に黒色等の暗色でマイナスに帯電した暗色部23Bが形成された、略球状の反転粒子23を光透過性の絶縁樹脂内に分散すると共に、この複数の反転粒子23の外周に空隙または溶液が充填された空隙25を設けて、反射層24を形成した構成としても本発明の実施は可能である。
【0046】
また、図6の部分断面図に示すように、あらかじめ下電極15上に光透過性の絶縁樹脂によって略円孔状または略角孔状の複数のマイクロカップ35を形成し、このマイクロカップ35内にプラスに帯電した明色粉33Aとマイナスに帯電した暗色粉33Bを封入した後、上面をカバーシート11の上導電層12で封止して、反射層34を形成した構成としてもよい。
【0047】
さらに、以上の説明では、カバーシート11下面にスパッタ法や印刷等によって、上導電層12や反射層14、下導電層15を重ねて形成した構成について説明したが、カバーシート11下面には上導電層12のみを形成し、この下面に上述したような反射層14等が形成されたフィルム状のシートを貼付すると共に、この下面に下導電層15を形成した構成としても実施が可能である。
【0048】
このように本実施の形態によれば、フィルム状で光透過性のカバーシート11下方の所定箇所に、複数の光透過性の上導電層12と反射層14、下導電層15を重ねて形成すると共に、反射層14内に上下面が明色または暗色に反転する反転粒子13を分散することによって、上導電層12と下導電層15に印加される電圧極性に応じて、反射層14内の反転粒子13の上下面を明色または暗色に反転させ、カバーシート11端面から入射した発光素子22の光を、この反射層14で反射させて複数の表示部7Bの照光を行うことができるため、一つまたは二つ程度の少ない発光素子でムラがなく、安価で良好な照光が可能な導光シート17、及びこれを用いた可動接点体20を得ることができるものである。
【0049】
なお、以上の説明では、導光シート17と下面に複数の可動接点2を貼付したベースシート1を重ね、これらを貼付した構成の可動接点体20について説明したが、導光シート17下面に、複数の可動接点2を直接貼付した構成とすれば、さらに安価に可動接点体を形成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明による導光シート及びこれを用いた可動接点体は、安価で良好な照光が可能なものを得ることができるという有利な効果を有し、各種電子機器の操作用として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の一実施の形態による可動接点体の断面図
【図2】同導光シートの部分断面図
【図3】同スイッチの断面図
【図4】同導光シートの部分断面図
【図5】同他の実施の形態による部分断面図
【図6】同他の実施の形態による部分断面図
【図7】従来のスイッチの断面図
【符号の説明】
【0052】
1 ベースシート
2 可動接点
4 配線基板
5 固定接点
5A 中央固定接点
5B 外側固定接点
7 表示シート
7A 遮光部
7B 表示部
11 カバーシート
12 上導電層
13、23 反転粒子
13A、33A 明色粉
13B、33B 暗色粉
14、24、34 反射層
15 下導電層
16 絶縁層
17 導光シート
18 セパレータ
20 可動接点体
22 発光素子
23A 明色部
23B 暗色部
25 空隙
35 マイクロカップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム状で光透過性のカバーシート下方の所定箇所に、複数の光透過性の上導電層と反射層、下導電層を重ねて形成すると共に、上記反射層内に上下面が明色または暗色に反転する反転粒子を分散した導光シート。
【請求項2】
請求項1記載の導光シートの反射層下方に、略ドーム状で導電金属薄板製の可動接点を装着した可動接点体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−9956(P2010−9956A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−168353(P2008−168353)
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】