説明

導光板と導光板を用いたスイッチ

【課題】構成の簡略化とコストの低減を図ると共に、操作時に発生する音を十分に低減させることが可能な導光板と導光板を用いたスイッチを提供する。
【解決手段】光源17からの光を取り入れる導光板11を透明な吸音材にて構成し、かつ固定接点3,5を備えた基板1と、上記基板1上に設置された可動接点7と、上記可動接点7上に設置された上記導光板11と、上記基板1と上記可動接点7と上記導光板11を固定する粘着部9とを具備した構造のスイッチとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、携帯電話のキーパッド等に用いられる導光板とこの導光板を用いたスイッチに係り、特に、キー操作時に発生する音を低減することができ、且つ、製造コストを抑えることができるように工夫したものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の導光板及び導光板を用いたスイッチとしては、図5に示すようなものが知られている。以下、この構成について説明する。
【0003】
まず、基板101があり、この基板101には固定接点103、105が設けられている。
【0004】
上記基板101の図5中上面側であって上記固定接点103、105に対応する位置にはドーム状の可動接点(ドームコンタクト)107が設けられている。上記可動接点107は、接着剤109によって、上記可動接点107の図5中上面側に位置するシート111に接着・固定されている。
【0005】
上記シート111の図5中上面側には、導光板113が設けられている。上記導光板113の図5中下面側にはドット印刷による表示部115が設けられている。
尚、この種の導光板と導光板を用いたスイッチの構成を開示するものとして、例えば、特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−181862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来の構成によると次のような問題があった。
まず、シート111の上に導光板113を設置する二層構造であったため、導光板用113とシート111用に2種類の高分子材料が必要となり、製造コストが高くなってしまうという問題があった。
又、上記シート111に用いる高分子材料は、PET(ポリエチレンテレフタレート)等の吸音・制振効果の低い材料であったため、操作時にスイッチから発生する音を十分に低減させることができないという問題があった。
【0008】
本発明はこのような点に基づいてなされたものでその目的とするところは、構成の簡略化とコストの低減を図ると共に、操作時に発生する音を十分に低減させることが可能な導光板と導光板を用いたスイッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するべく本願発明の請求項1による導光板は、光源からの光を取り入れる導光板において、透明な吸音材から構成したことを特徴とするものである。
又、請求項2による導光板は、請求項1記載の導光板において、上記透明な吸音材はポリウレタンであることを特徴とするものである。
又、請求項3によるスイッチは、固定接点を備えた基板と、上記基板上に設置された可動接点と、上記可動接点上に設置された請求項1又は請求項2記載の導光板と、上記可動接点と上記導光板との間に設置され上記基板と上記可動接点と上記導光板を固定する粘着部とを具備したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
以上述べたように本願発明の請求項1による導光板は、透明な吸音材から構成したことを特徴とするものであるため、スイッチに用いれば操作時に発生する音を抑えることができる。
また、請求項2による導光板は、ポリウレタンからなるものであるため、音の吸収・制振性に優れている。
また、請求項3によるスイッチは、上記導光板を用いているため、操作時に発生する音を低減させることができる。又、従来はシートの上にさらに導光板を設けた二層構造であったが、本願発明によるスイッチは導光板がシートの役割も兼ねているため、部品点数が少なくて済み製造コストを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本願発明の一実施の形態を占めす図で、スイッチの構成を示す縦断面図である。
【図2】本願発明の一実施の形態を説明するための図で、効果を示すための比較実験の結果を示すグラフであり、可動接点のみのスイッチを打鍵した際に生じる音の振幅の時間変化を示したものである。
【図3】本願発明の一実施の形態を説明するための図で、効果を示すための比較実験の結果を示すグラフであり、従来のスイッチを打鍵した際に生じる音の振幅の時間変化を示したものである。
【図4】本願発明の一実施の形態を示す図で、効果を示すための実験結果の結果を示すグラフであり、本実施の形態によるスイッチを打鍵した際に生じる音の振幅の時間変化を示したものである。
【図5】従来例を占めす図で、スイッチの構成を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図1乃至図4を参照して本発明の一実施の形態を説明する。この実施の形態は、本願発明による導光板及びスイッチを携帯電話のキー操作部に適用したものである。
【0013】
まず、図1に示すように基板1がある。上記基板1には固定接点3、5が設けられている。上記固定接点3、5の図1中上面側には、ドーム状の可動接点(ドームコンタクト)7が設けられている。上記可動接点7は、粘着部9を介して導光板11に固定されている。上記導光板11は、吸音・制振性に優れた透明なポリウレタン材からなるものである。
因みに、従来は上記粘着部9と上記導光板11との間にシートが設けられていた。
【0014】
又、上記導光板11の裏側(図1中下面側)にはドット印刷による表示部13が設けられている。上記導光板11の表側(図1中上面側)には、キーパッド15が設けられている。上記導光板11の側面(図1中左側)にはLED(発光ダイオード)からなる光源17が設けられている。
【0015】
上記導光板11は光源17からの光を拡散させて、上記キーパッド15の上からの上記表示部13の視認性を向上させるとともに、上記可動接点7を保持する機能も有している。従来においては、光源からの光を拡散させる導光板と可動接点を保持する接点保持シートは別々の部材であったが、本実施の形態は両者を一体としたものである。
【0016】
さらに、上記導光板11は吸音・制振性に優れた透明なポリウレタン材からなるため、スイッチ操作の際、上記キーパッド15及び上記導光板11を介して上記可動接点7が押圧され変形する際や変形した上記可動接点7が元の形状に戻る際に発生する音が、上記導光板11に吸音されることとなる。
【0017】
上記吸音に関してさらに詳しく説明する。図2に示すグラフは、本実施の形態による効果を示すための比較実験の結果を示すグラフであり、可動接点7のみのスイッチを打鍵した際に生じる音の振幅の時間変化を示したものである。又、図3に示すグラフは、本実施の形態による効果を示すための比較実験の結果を示すグラフであり、従来のPETからなるシートを用いたスイッチを打鍵した際に生じる音の振幅の時間変化を示したものである。そして、図4に示すグラフは、本実施の形態による効果を示すための実験結果を示すグラフであり、本実施の形態によるスイッチを打鍵した際に生じる音の振幅の時間変化を示したものである。
【0018】
又、図2乃至図4のグラフの縦軸は、音の振幅を示しており、可動接点7のみのスイッチを打鍵した場合(図2のグラフ)に生じる音の振幅の最大値を1としたものである。又、図2乃至図4のグラフの横軸は時間をミリ秒で示している。そして、これらのグラフは音の振幅の時間経過による変化を表わしたものである。
【0019】
図2のグラフ、すなわち可動接点7のみからなるスイッチによると、測定開始後0.5ミリ秒付近で打鍵され直後に音の振幅の絶対値は1となっている。その後音の振幅は減衰していき、測定開始後0.8ミリ秒付近では音の振幅の絶対値は約0.7、測定開始後1.8ミリ秒付近では約0.3になっている。
【0020】
又、図3のグラフ、すなわち従来のPETからなるシートを用いたスイッチによると、測定開始後0.5ミリ秒付近で打鍵され直後に音の振幅の絶対値は約0.8となっている。その後音の振幅は減衰していき、測定開始後0.8ミリ秒付近では音の振幅の絶対値は約0.4、測定開始後1.8ミリ秒付近では約0.1になっている。
【0021】
一方、図4のグラフ、すなわち本実施の形態のスイッチによると、測定開始後0.5ミリ秒付近で打鍵され直後に音の振幅の絶対値は約0.6となっている。その後音の振幅は減衰していき、測定開始後0.8ミリ秒付近では音の振幅の絶対値は約0.2、測定開始後1.8ミリ秒付近では殆ど0になっている。
【0022】
以上の実験結果より、本実施の形態によるスイッチの場合は、打鍵時の音の振幅が可動接点7のみのスイッチを用いた場合に比べ約半分と大きく抑えられているばかりか、その後に音の振幅が急激に減衰している。
又、本実施の形態によるスイッチの場合は、従来のPETからなるシートを用いたスイッチの場合と比べて、打鍵時の音の振幅が約3分の2と大きく抑えられているばかりか、その後の音の振幅の減衰も大きい。よって、本実施の形態によるスイッチは著しい吸音効果があるといえる。
【0023】
以上本実施の形態によると、次のような効果を奏することができる。
まず、導光板11は光源17からの光を拡散させ表示部13の視認性を向上させると共に、可動接点7を保持する機能も有するため、従来のように光源からの光を拡散させる導光板と可動接点を保持する接点保持シートの2つの部材を用いた二層構造とする必要がなく、それによって、構成の簡略化と製造コストの低減を図ることができる。
【0024】
又、上記導光板11は、吸音・制振性に優れた透明なポリウレタン材からなるため、スイッチから発生する音を効果的に吸音して低減させることができる。
【0025】
尚、本願発明は前記一実施の形態に限定されるものではない。
例えば、導光板の材料はポリウレタンに限られず、透明であって吸音・制振性に優れた材料であればよい。
又、スイッチの構成としては、図示したものに限定されず、様々な構成が想定される。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、例えば、携帯電話のキーパッド等に用いられる導光板と導光板を用いたスイッチに係り、特に、キー操作時に発生する音を低減することができ、製造コストも抑えることができるように工夫したものに関し、例えば、携帯電話のキー操作部におけるスイッチに好適である。
【符号の説明】
【0027】
1 基板
3 固定接点
5 固定接点
7 可動接点
9 粘着部
11 導光板
17 光源


【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの光を取り入れる導光板において、
透明な吸音材から構成したことを特徴とする導光板。
【請求項2】
請求項1記載の導光板において、
上記透明な吸音材はポリウレタンであることを特徴とする導光板。
【請求項3】
固定接点を備えた基板と、
上記基板上に設置された可動接点と、
上記可動接点上に設置された請求項1又は請求項2記載の導光板と、
上記可動接点と上記導光板との間に設置され上記基板と上記可動接点と上記導光板を固定する粘着部とを具備したことを特徴とするスイッチ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−198819(P2010−198819A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−40480(P2009−40480)
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【出願人】(391011696)不二電子工業株式会社 (23)
【Fターム(参考)】