説明

導光板構造及びその製造方法

【課題】局所照明を実現し、光漏れを防ぐ導光板構造及びその製造方法を提供する。
【解決手段】導光層と少なくとも1つの遮光線を含む導光板構造に関し、遮光線はインクを含み、導光層内に設けられて、導光層全体から透過される光を遮断する。遮光線は、導光層内の個別の領域にのみ光を透過させるため、または光漏れを防ぐために設けられている。前記の導光板構造の製造に関し、導光層に表面改質が行われ、インクを導光層に浸透させて、導光層に遮光線を形成するべく、導光層の改質された表面にインクが印刷される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導光板構造に関し、特に、キーパッドに関連する導光板構造に関する。
【背景技術】
【0002】
キーパッド構造における、光源及び導光板構造は、暗い領域に光を供給し、キーパッドを認識できるようにする役割を果たす。省エネ対策として、各領域に対して異なる色で照明する局所的照明が提案されている。局所的照明に対する従来の導光板は、多くの場合、積層構造を形成する、又は打ち抜き工程で形成された複数の穴を有する。しかしながら、局所的照明に対する従来の導光板の遮光性能は理想的ではなく、関連する処理工程も複雑である。そして、従来の導光板の歩留まりの低さ及びコストの高さの問題を解決する必要がある。導光板の従来の構造を以下に列挙する。
【0003】
特開2010−073317号公報には、導光板が開示されている。開示されている導光板は、基材上に設けられた複数の閉リング光吸収部を備え、局所照明を行う光源は、側方照明型の光源である。リング状の光吸収部が、接着剤によって基材上に配置されている。
【0004】
特開2010−153361号公報にも、導光板が開示されている。導光板には、帯状の窪溝部が形成されており、暗色の光吸収部が窪溝部に打ち抜きによって形成され、光が導光板を透過するのを防ぎ、異なる複数の領域で、様々な照明を実現している。導光板の厚みは、ある程度の厚み、又は導光板の下に配置されるドーム形状のシートのような基材の厚み、よりも大きい必要がある。これは、導光板に窪溝部を形成し、所定の光吸収部材を窪溝部に埋め込む必要があるからである。導光板における異なる複数の領域は、互いに分離されている。
【0005】
特開2010−212123号公報にも、導光板が開示されている。導光板を切断することにより、導光板の一面に傾斜部が形成され、インクを傾斜部及び切り欠きに刷り込むことによって、暗色の光吸収部材が形成される。導光板の異なる複数の領域は、互いに分離されている。導光板を切断した後に、ドーム形状のシートのような基材を導光板の下に配置し、その後に、光吸収部材を導光板に充填させる。
【0006】
特開2010−212173号公報には、導光板の端部において光が漏れるのを防ぐ方法が開示されている。光漏れを防ぐための暗色のテープが、導光板の外縁面に配置され、導光板からの更なる光漏れを防いでいる。
【0007】
しかしながら、局所照明に対する導光板の、簡易で安価な製造方法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願公開第2008/0211776号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2010/0282580号公報
【特許文献3】特開2010−153361号公報
【特許文献4】特開2010−212123号公報
【特許文献5】特開2010−212173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題の1つは、局所照明を実現し、光漏れを防ぐ導光板構造及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一側面において、本発明に係る導光板構造は、導光層と少なくとも1つの遮光線とを含む。遮光線は、インクを含み、導光層内に設けられて、導光層全体から透過される光を遮断する。また、遮光線は、導光層内の個別の領域にのみ光を透過させるべく、又は、光漏れを防ぐべく、設けられている。
【0011】
本発明の別の側面において、本発明に係る導光板構造の製造方法は、以下のような工程を含む。導光層が提供される。導光層に表面改質が行われる。インクを導光層に浸透させて、導光層に遮光線を形成するべく、導光層の改質された表面にインクを印刷する。
【0012】
本発明において、黒色の遮光インクを、導光層に印刷して、インクを導光層に透過又は浸食させて、遮光線を導光層内に形成する。遮光線を光を遮るのに使用し、導光する複数の領域を画定するのに使用してもよく、これにより、局所照明又は光漏れ防止を達成することができる。発光ダイオード(LED)光源のような光源の消費電力を下げるために、局所照明機能を有する導光板構造をバックライトモジュールに適用してもよい。これにより、電池の待機時間を改善することができ、製品の競争力と付加価値を向上させることができる。更に、本発明では、導光層が1層のみで構成されるので、製造工程が単純になり、製造コストを下げることができる。
【0013】
本発明のこれら及びその他の目的は、以下の好ましい実施形態の詳細な説明及び添付の図面を読むことにより、当業者に明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る導光板構造の上面を概略的に示した図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る導光板構造の概略的な拡大断面図である。
【図3】本発明の別の実施形態に係る導光板構造の概略的な断面図である。
【図4】本発明の別の実施形態に係る導光板構造の上面を概略的に示した図である。
【図5】本発明の別の実施形態に係る導光板構造の概略的な断面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る導光板構造を製造する方法を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係る導光板構造の上面を概略的に示した図である。導光板構造10は、導光層12及び遮光線14を備える。遮光線14は、導光層12内に設けられ、導光層12全体に透過されてくる光を遮る。また、遮光線14は、導光層12内の別々の領域に光を透過させるのを可能にするために設けられている場合もある。このようにして、局所照明機能を有する1層の導光板を得ることができる。図1に示すように、遮光線14を使用して、導光層12全体に光が透過するのを妨げ、導光板10は、遮光線14によって、領域A、領域B及び領域Cに分割される。例えば、光源16からの光は、遮光線14によって遮断されて領域Aにのみ透過される。同様に、光源18からの光は、遮光線14によって遮断されて領域Bにのみ透過される。同様に、光源20からの光は、遮光線14によって遮断されて領域Cにのみ透過される。各光源からの光が、それぞれの領域に集められることから、光源の消費電力を下げることができ、領域それぞれの輝度を向上させることができる、又は必要となる光源の数を少なくすることができる。導光層12周辺の遮光線14を、光が周囲に出射するのを防ぐ遮光構造として使用してもよく、また、遮光線14を、導光板における光漏れを防ぐための構造として用いてもよい。
【0016】
図1に示すように、導光層12内の光の経路を変更するための複数の微細構造22が、導光層12の表面に設けられている。
【0017】
図2は、本発明の一実施形態に係る導光板構造の概略的な拡大断面図である。光源20からの光は、導光層12に入り、光24となってもよい。光24は、光26及び光28を含んでもよい。光26の光路を、微細構造22によって変更してもよく、光26は、導光層12の上面から出射されてもよい。光28は、遮光線14へと伝播して、遮光線14によって遮られると考えられる。
【0018】
導光層の材料は、インクが浸透する又は浸食する材料を含んでもよい。例えば、導光層の材料は、シリコン、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、又はその他の柔軟性を有する導光材料であってもよい。導光層の厚みは、必要に応じて変更でき、この点に関して限定されない。例えば、導光層の厚みは、薄いキーパッド構造に適用する場合には、およそ0.125mmであってもよいが、これに特に限定されない。
【0019】
遮光線は、導光層全体から透過される光を遮断するべく、導光層内に配置されたインクを含む。好ましくは、遮光線の遮光率(透光率の反対の遮光率とも称される)は、80%より高い。インクは、光を吸収する性質、又は光を反射する性質を有する。インクは、黒色インク及び藍色インクのような暗色のインクを含むが、これに特に限定されない。導光層を含むインクが付着する様々な材料に応じて、異なるインクを選択してもよい。例えば、TPUで形成された導光層には、ポリウレタン(PU)の黒色インクを導入してもよい。インクの浸透状態を改善するために、浸透剤をインクに混合させてもよい。インクが導光層上に印刷されて、導光層に浸透又は導光層を浸食することから、導光層は1層構造であってもよい。遮光線を、導光層のいかなる面から形成してもよい。遮光線の幅の大きさについては、特に限定されず、遮光線の深さについても、導光層の厚みと必ずしも等しくなくてもよい。遮光率が80%以上の遮光線が、適切な深さに形成されるのが望ましい。図2に示すように、遮光線14が、導光層12の一面から形成され、微細構造22が、導光層12の別の面から形成されるが、本発明はこの点に関して限定されない。
【0020】
本発明の別の実施形態では、微細構造の形状は、凸形状又は凹形状を含んでもよく、例えば、球体、半球体、円錐、正方錐、又は90°の角度の錐体のような形状であってもよい。微細構造は、導光層の各面から形成されていてもよい。微細構造は、複数の微細構造領域を形成するべく、局所的に配置されていてもよい。微細構造領域のそれぞれは、キーパッドの所定の位置にそれぞれ対応して配置されている。光源からの光が導光層に入射した後、光の輝度は、導光層の異なる位置において異なっていてもよい。したがって、輝度が高い位置に対応する微細構造の密度は、好ましくは、輝度が低い位置に対応する微細構造の密度よりも低く設定されている。
【0021】
図3は、本発明の別の実施形態に係るキーパッド構造における導光板構造の概略的な断面図である。図3に示すように、導光層12は、少なくとも1つのプランジャ30を含む。ユーザーからの押圧力を、金属ドーム21へと伝えるために、プランジャ30を採用してもよい。そして、金属ドーム21は、プリント回路基板23上の回路25に接触して、金属ドーム21が、プリント回路基板23に電気的に接続されてもよい。金属ドーム21は、膜ドーム27を介して、プリント回路基板23に固定されてもよい。キーキャップ構造29は、導光層12の上方に配置され、且つ、キーキャップ構造29は、プランジャ30に対応して設けられる。
【0022】
図1−3は、本発明に係る側方照明型の光源に適用される導光板の状態を概略的に示している。本発明の導光板構造を、下面照明型の光源に対して適用してもよく、例えば、図4及び図5に示すような状態に適用できる。導光板構造40は、導光層12及び上述の遮光線14を備える。図4及び図5に示すように、遮光線14は、導光層12を囲み、導光層12を2つの導光領域に分割する。導光層12は、上述のような複数の微細構造22を含んでもよい。LED光源のような光源32からの光は、導光層12の開口部34から、導光層12へと入射する。開口部34は、光を遮断する遮光シート36によって覆われていてもよい。
【0023】
図6は、本発明の一実施形態に係る導光板構造を製造する方法を示したフローチャートである。図6及び図2を参照して説明する。まず、ステップ101において、導光層12が用意される。導光層12の詳細については、上記で説明した。ステップ102において、導光層12の表面改質処理が行われる。表面改質処理を採用することにより、次に導光層12に形成される遮光線14の材料が、導光層12に容易に浸透又は浸食させるのを可能にする。例えば、媒質を使用する場合に導光層の表面の付着性を向上させるために、表面改質を行ってもよく、また、導光層の表面を粗面とするのに、表面改質を行ってもよい。表面改質は、例えば、コロナ処理、UVプラズマ処理、又はプラズマ処理を含んでもよい。
【0024】
ステップ103において、導光層12の改質された表面に、インクを印刷する。導光層12の表面が、表面改質によって改質されていることから、インクが導光層12に浸透する又は導光層12を浸食して、より簡単に導光層12内に遮光線14を形成することができる。浸透率は、遮光率に正比例する。浸透率が増加すると、遮光率も増加する。インクを印刷する印刷工程は、スクリーン印刷工程又はその他の好適な印刷工程を含む。スクリーン印刷の利点は、導光層12にインクを浸透させるのに、導光層12に対する押圧力を利用できることである。次に、ステップ104において、インクを必要に応じて乾燥させる。ステップ105において、打ち抜き工程を使用して、1枚の導光板及び開口部を必要に応じて形成する。ステップ106において、導光板を製造するプロセスが終了し、導光板構造が得られる。
【0025】
導光層12にインクを印刷するステップ103の前後に、微細構造22を形成してもよい。微細構造22は、レーザー処理によって形成されてもよいし、成形により導光層12と同時に形成されてもよい。微細構造22は、導光層12の表面に印刷によって形成されてもよいし、あるいは、印刷することなく導光層12の別の面に微細構造22を形成してもよい。また、プランジャ30及び導光層12を、一体化して形成してもよい。
【0026】
本発明の教示するところを維持しつつ、装置及び方法に数多くの修正及び変更が可能であることは、当業者にとって明らかである。したがって、上記の開示は、本発明を限定するものとして解釈されるべきではなく、本発明は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導光層と、
インクを含み、前記導光層内に設けられて、前記導光層全体に透過される光を遮断する少なくとも1つの遮光線と
を備え、
前記遮光線は、前記導光層内の個別の領域にのみ前記光を透過させるべく、又は、光漏れを防ぐべく、設けられている、導光板構造。
【請求項2】
前記インクは、光を吸収する性質又は光を反射する性質を有する請求項1に記載の導光板構造。
【請求項3】
前記インクは、前記導光層に浸透する請求項1または2に記載の導光板構造。
【請求項4】
前記インクは、前記導光層を浸食する請求項1または2に記載の導光板構造。
【請求項5】
前記導光層は、前記導光層内の光の経路を変更する複数の微細構造を有する請求項1に記載の導光板構造。
【請求項6】
前記導光板構造は、キーキャップ構造に備わり、
前記キーキャップ構造は、ユーザーの押圧に応じてキーと対応する回路に接触する金属ドームを有し、
前記導光層は、ユーザーからの押圧力を、前記金属ドームへと伝える少なくとも1つのプランジャを有する請求項1から5の何れか1項に記載の導光板構造。
【請求項7】
導光層を提供する工程と、
前記導光層に表面改質を行う工程と、
インクを前記導光層に浸透させて前記導光層内に遮光線を形成するべく、前記導光層の改質された表面に前記インクを印刷する工程と
を備える導光板構造を製造する方法。
【請求項8】
導光層を提供する工程と、
前記導光層に表面改質を行う工程と、
インクによって前記導光層を浸食して前記導光層内に遮光線を形成するべく、前記導光層の改質された表面に前記インクを印刷する工程と
を備える導光板構造を製造する方法。
前記表面改質は、表面を粗面にすることを含む請求項7に記載の導光板構造を製造する方法。
【請求項9】
前記表面改質は、表面を粗面にすることを含む請求項7または8に記載の導光板構造を製造する方法。
【請求項10】
前記表面改質は、コロナ処理、UVプラズマ処理又はプラズマ処理を含む請求項7から9の何れか1項に記載の導光板構造を製造する方法。
【請求項11】
前記導光板構造を形成するべく前記導光層の打ち抜きを行う工程を更に備える請求項7から10の何れか1項に記載の導光板構造を製造する方法。
【請求項12】
前記導光層内に微細構造を形成する工程を更に備える請求項7から11の何れか1項に記載の導光板構造を製造する方法。
【請求項13】
前記インクが前記導光層へと浸透又は浸食した後に、前記導光層内に前記遮光線を形成するべく前記インクを乾燥させる工程を更に備える請求項7から12の何れか1項に記載の導光板構造を製造する方法。
【請求項14】
前記インクを印刷する工程は、スクリーン印刷工程を含む請求項7から12の何れか1項に記載の導光板構造を製造する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−238563(P2012−238563A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211973(P2011−211973)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(510222442)毅嘉科技股▲ふん▼有限公司 (16)
【Fターム(参考)】