説明

導管用保持クリップ

【課題】導管を開放可能に保持するクリップが提供される。
【解決手段】クリップは、第1のベース部、第2のベース部、及び第1のベース部を第2のベース部に連結するヒンジを備える。略弓形の第1のコネクタ部は、第1のベース部から延びる第1の連結端部と第1の自由端部とを有する。第1の自由端部は、第1のタブ延長部と該第1のタブ延長部に隣接した第1のロッキング部とを有する。略弓形の第2のコネクタ部は、第2のベース部から延びる第2の連結端部と第2の自由端部とを有する。第2の自由端部は、第2のタブ延長部と該第2のタブ延長部に隣接した第2のロッキング部とを有する。第1のコネクタ部と第2のコネクタ部とは、ヒンジを挟んで互いに並べられる。第1のタブ延長部は、第2のロッキング部と開放可能に係合することができ、第2のタブ延長部は、第1のロッキング部と開放可能に係合することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテルなどの導管を定位置に保持するために使用するクリップに関する。
【背景技術】
【0002】
カテーテルは、流動体を投与するために又は患者の体から流動体を取り除くためによく使用される。カテーテルは、数時間や数日などの短期間又は数週間や数ヶ月などの長期間の間、患者の体の中へ挿入され得る。カテーテルのいくつかの例としては、導尿カテーテル、血液透析カテーテル及び末梢から中心静脈まで挿入したカテーテル(PICC)がある。カテーテルの遠位部は患者の中へ挿入されるが、カテーテルの近位部は患者の外部に延びている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、カテーテルの近位部は患者への挿入位置からぶら下がる傾向があり、からまったり挿入位置から偶然抜けたりしやすい。医療スタッフは、一般に外科用若しくはその他の粘着テープを使用して、患者に対しカテーテルの移動を少なくするために患者の皮膚にカテーテルの近位部を固定し、偶然にカテーテルが取り除かれる危険性を少なくする。しかし、カテーテルの挿入位置近くの領域やカテーテルの下の領域をきれいにし消毒するためなどテープの頻繁な使用及び除去は患者にとって非常に不快であり得る。
【0004】
上記のようなテープの使用の必要性をなくすために、カテーテルの近位部の一部を患者の外側の皮膚に固定するカテーテル固定装置が開発されている。このような装置の例が、米国特許第5637098号、第6213979号及び第6447485号に示されている。しかし、これらの装置は使い捨て使用であるか、カテーテルを装置に固定するためにいくつかの工程と相当多くの時間とを必要とする相当複雑な装置であるかのどちらかである。多数回使用することができ、更に、医療スタッフが時間を取らずにカテーテルを適切に且つ安全に患者に保持するように十分に使いやすいカテーテル固定装置を提供することは有益である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
簡潔に言えば、本発明は導管用保持クリップ(retaining clip)を提供する。上記クリップは、第1のベース部、第2のベース部、及び上記第1のベース部を上記第2のベース部に連結するヒンジを備える。略弓形の第1のコネクタ部(connector portion)が、上記第1のベース部から延びる第1の連結端部と第1の自由端部とを有する。上記第1の自由端部は、第1のタブ延長部(tabbed extension)と該第1のタブ延長部に隣接した第1のロッキング部(locking portion)とを有する。略弓形の第2のコネクタ部が、上記第2のベース部から延びる第2の連結端部と第2の自由端部とを有する。上記第2の自由端部は、第2のタブ延長部と該第2のタブ延長部に隣接した第2のロッキング部とを有する。上記第1のコネクタ部と上記第2のコネクタ部とは、上記ヒンジを挟んで互いに並べられる。上記第1のタブ延長部が、上記第2のロッキング部と開放可能に係合することができ、上記第2のタブ延長部が、上記第1のロッキング部と開放可能に係合することができる。
【0006】
更に、本発明は、1つの平面の第1の側に略沿って延びる第1の本体部と、上記平面の第2の側に略沿って延びる第2の本体部と、上記第1の本体部と上記第2の本体部とを連結するヒンジ部材とを備える保持クリップ(retainer clip)を提供する。上記ヒンジ部材は上記平面に沿って延びる。上記クリップはまた、上記第1の本体部と上記第2の本体部とを開放可能に連結する手段と、上記保持クリップをある表面に解放可能に連結する手段とを備える。
【0007】
本明細書に組み込まれ本明細書の一部を構成する添付図は、本発明の現在ある好ましい実施形態を表しており、上記の概要及び下記の詳細な説明とともに本発明の特徴を説明するものとして用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の好ましい実施形態に係る導管保持クリップの斜視図である。
【図2】図1の上記導管保持クリップの部分的に切り欠かれた側面図である。
【図3】開位置にある図1の上記導管保持クリップの側面図であり、その中に挿入される導管を備えている。
【図4】図3の上記導管保持クリップの側面図であり、その中に挿入された上記導管を備えている。
【図5】図3の上記導管保持クリップの平面図であり、その中に挿入された上記導管を備えている。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面では、全体を通じ同じ数字が同じ要素を表す。本明細書において使用されるある術語は便宜のためだけであり、本発明に限定するものとしてとられるべきものではない。その術語は、具体的に上述したワード、その派生語及び同様の意味を有するワードを含む。以下に、本発明の好ましい実施形態を説明する。しかし、本発明が本明細書に記述される好ましい実施形態によって限定されるものではないことをこの開示に基づいて理解すべきである。
【0010】
図面を詳しく参照すると、本発明の好ましい実施形態に係る導管保持クリップ100の斜視図が図1に示されている。クリップ100は、患者の外表皮膚などの固定位置に対して、カテーテル又は他の流動体輸送装置などの導管を保持するために使用され得る。上記導管が単一のカテーテルであっても、マルチルーメンカテーテルアセンブリなどにおける複数のカテーテルであってもよい。代替的に、当業者はクリップ100が電気ケーブル又は配線などの他の略管状の装置を保持するために使用され得ることを認識するであろう。
【0011】
図2を参照すると、クリップ100は、第1のベース部102と第2のベース部104とを備える。第1及び第2のベース部102、104はそれぞれ、上面102a、104a及び底面102b、104bをそれぞれ備える。各底面102b、104bは、各それぞれの上面102a、104aから離れて配置される。上記第1のベース部及び上記第2のベース部の全長は、好ましくはおよそ5cmから7cmの間であるが、その長さはクリップ100の内部に配置されるべき導管の大きさに従って変更し得る。
【0012】
各第1及び第2のベース部102、104の底面102b、104bはそれぞれ、患者の外側の皮膚表面などの表面にクリップ100を貼るために、好ましくは接着剤を備える。クリップ100を保持するために使用される接着剤105は、好ましくは患者の皮膚にクリップ100を保持するほど強いが、クリップ100が皮膚を剥ぐ又は剥ぎ取ることなく患者の皮膚から取り除かれるほど弱い。
【0013】
第1及び第2のベース部102、104は、ヒンジ106によって互いに連結されている。付与されるヒンジ106の形式は、クリップ100の働きにとって重要なものではない。示されるヒンジ106は、好ましい現行のヒンジ106であるが、当業者は、他の形式のヒンジを使用して第1のベース部102と第2のベース部104とを連結し得ることを認識するであろう。ヒンジ106は、図3に示すように、第1及び第2の底面102b、104bが互いの方へ配置され得るように配置されている。
【0014】
また図1及び2を参照すると、略弓形の第1のコネクタ部110は、第1のベース部102の上面102aに固定して連結されるとともに上面102aから延びる第1の連結端部112を備えている。第1のコネクタ部110はまた、第1のタブ延長部116と該第1のタブ延長部116に隣接した第1のロッキング部118とを有する第1の自由端部114を有している。第1のタブ延長部116は、第1のベース部102からおよそ220度の円弧で延びている。第1のロッキング部118は、第1のベース部102からおよそ140度の円弧で延びている。
【0015】
略弓形の第2のコネクタ部120は、第2のベース部104の上面104aに固定して連結されるとともに上面104aから延びる第2の連結端部122を備えている。第2のコネクタ部120はまた、第2のタブ延長部126と該第2のタブ延長部126に隣接した第2のロッキング部128とを有する第2の自由端部124を有している。第2のタブ延長部126は、第2のベース部104からおよそ220度の円弧で延びている。第2のロッキング部128は、第2のベース部102からおよそ140度の円弧で延びている。
【0016】
第1のコネクタ部110と第2のコネクタ部120とは、好ましくは互いに実質的に同一であるが、ヒンジ106を挟んで互いに並べられ、それにより第1のタブ延長部116が第2のロッキング部128と開放可能に係合することができ、第2のタブ延長部126が第1のロッキング部118と開放可能に係合することができる。
【0017】
平面“P”は、クリップ100が閉位置にある場合に第1のタブ延長部116が第1のコネクタ部110の残部から平面Pに関して反対側にあるように、ヒンジ106を通じクリップ100を二等分する。第2のタブ延長部126は、第1のコネクタ部110の残部と平面Pに関して同じ側にあり、第2のコネクタ部120の残部は、第1のタブ延長部116と平面Pに関して同じ側にある。
【0018】
クリップ100が閉位置にある場合に略円形の通路130がクリップ100を通じ規定される。通路130は、図3に示すように、導管140がその中に縦方向に挿入され得る大きさである。また図2を参照すると、糸(thread)132などのフレキシブル部材(flexible member)が通路130の中に延びている。このようなフレキシブル部材は、米国特許第5509902号のカテーテル安定装置に開示されている。糸132の第1の端部132aが第1のタブ延長部116に固定して連結され、糸132の第2の端部132bが第2のタブ延長部126に固定して連結される。糸本体132cは、第1の端部132aと第2の端部132bとの間に延びている。糸132は、図3に示すように、好ましくは略U字形の形態で、また、コネクタ部110、120が閉じられ、互いにロックされる場合には、図1及び図2に示すように重なり合った形態で、通路130内に掛かっている。糸132は、外科縫合糸、生糸、ナイロン又は他の好適な材料であり得る。糸132の目的は、クリップ100が閉位置にある場合に通路130内部に導管140を保持するために導管140の周囲に螺旋状に輪を作ることである。その輪は、上記クリップが閉じられた状態にある場合に導管124のまわりに360度を超える外周を形成し、そのとき、通路130に沿う導管140の縦方向の平行移動を制限するほどきつくではあるが、導管140の中を通る流体の流れを制限するほどきつくはない。導管140が縦方向に平行移動される場合には、糸132は導管140をより一層きつくしっかり捕まえそのような平行移動を制限する。
【0019】
クリップ100は、好ましくはポリマーから構成され、より好ましくはポリプロピレンから構成されるが、当業者は他の好適な材料が使用可能であることを認識するであろう。クリップ100は、該クリップ100が製造された後に第1及び第2のタブ延長部116、126に固定される糸132を備えた単一構造であってもよく、あるいはクリップ100は、第1及び第2のベース部102、104にそれぞれ別々に結合される別々の第1及び第2のコネクタ部110、120などのいくつかの部品で構成されてもよい。第1及び第2のコネクタ部110、120は、接着結合、超音波結合又は当業者に知られているあらゆる他の好適な結合方法により第1及び第2のベース部102、104に結合されてもよい。
【0020】
クリップ100の好ましい態様における使用を説明する。クリップ100を固定する位置が患者の皮膚上に決められる。この位置は、クリップ100により保持されるべき導管140を挿入する又は連結する前後に決められ得る。好ましくは、クリップ100が最終的に患者から取り除かれるときに毛を剥ぎ取る又は患者に苦痛を引き起こすことがないように、皮膚の表面は皮膚から外側にある毛を取り除くように剃られる又は別の方法で準備される。第1及び第2のベース部102、104の各底面102b、104b上にある接着剤105を覆って貼られ得る裏当材(不図示)がそれぞれ取り除かれ、接着剤105が露出する。クリップ100は、図3に示す位置までヒンジ106のまわりに第1及び第2のコネクタ部110、120を蝶番式に旋回することにより開かれる。第1のタブ延長部116は第1のベース部102と平面Pに関して同じ側にあり、第2のタブ延長部126は第2のベース部104と平面Pに関して同じ側にある。
【0021】
導管140が次に、図3の矢印“A”に沿って開いた通路130の中へ、第1及び第2のタブ延長部116、126の間にそれぞれ配置される。導管140が第1及び第2のタブ延長部116、126を通過した後に、クリップ100は、矢印“B”及び“C”の方向にそれぞれヒンジ106のまわりに第1及び第2のコネクタ部110、120を蝶番式に旋回することにより閉じられ、それにより第1のタブ延長部116が第2のロッキング部128と開放可能に係合し、第2のタブ延長部126が第1のロッキング部118と開放可能に係合する。
【0022】
第1及び第2のコネクタ部110、120がヒンジ106のまわりに蝶番式に旋回されると、第1のタブ延長部116が第2のベース部104と平面Pに関して同じ側に移動され、第2のタブ延長部126が第1のベース部102と平面Pに関して同じ側に移動される。第1のタブ延長部116は、第2のロッキング部128にカチッと閉まり、第1のタブ延長部116を第2のロッキング部128に開放可能にロックする。第2のタブ延長部126は、第1のロッキング部118にカチッと閉まり、第2のタブ延長部126を第1のロッキング部118に開放可能にロックする。
【0023】
糸132の第1及び第2の端部132a、132bは実質的に螺旋状の形態で導管140の周囲に輪を作り、それにより糸132は、図4に示すように360度以上の円弧にわたって導管140と係合する。ここで導管140は、摩擦によって糸132によりクリップ100の内部に保持される。導管140が、縦方向に(すなわち、図4のページから外へ又は図5のページの上から下へ)平行移動される場合、糸132が導管140の周囲を締め付け、導管140の移動を抑制する。
【0024】
クリップ100を開きクリップ100から導管140をはずすために、第1の自由端部114と第2の自由端部124とがともに、第2及び第1のベース部104、102からそれぞれ離れて平面Pの方へ付勢される。第1のタブ延長部116が第2のロッキング部128から解除され、第2のタブ延長部126が第1のロッキング118から解除され、ヒンジ106は第1及び第2のコネクタ部110、120がそれぞれ平面Pから離れて蝶番式に旋回することを可能にする。糸132の第1及び第2の端部132a、132bは、導管140から離れて分かれ、糸132から導管140を解放する。第1及び第2のコネクタ部110、120の間の平面Pに沿って導管140を持ち上げることにより、導管140をクリップ100から取り除くことができる。
【0025】
カテーテルなどの導管140を患者の皮膚などのある表面に保持するクリップ100の好ましい使用が説明されているが、当業者は、クリップ100が説明される使用に限定されるものではなく、クリップ100を適応させるあらゆる形式の表面上に、あらゆる形式の、クリップ100に対して実質的に縦方向に実質的に細長い本体を保持するために使用可能であることを認識するであろう。
【0026】
その広範な発明概念から逸脱することなく上記実施形態に対する変更が行われ得ることが当業者により認識されるであろう。従って、本発明は開示される特定の実施形態に限定されるものではないが、本発明は添付される特許請求の範囲によって規定されるように本発明の精神及び範囲内での変更に及ぶことを意図することを理解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの平面の第1の側に略沿って延びる第1の本体部と、
前記平面の第2の側に略沿って延びる第2の本体部と、
前記第1の本体部と前記第2の本体部とを連結するヒンジ部材であり前記平面に沿って延びる前記ヒンジ部材と、
前記第1及び第2の本体部が導管のまわりの閉位置へ前記ヒンジ部材のまわりに回転される場合に導管用通路を規定するために前記第1の本体部と前記第2の本体部とを開放可能に連結するロッキング部分と、
前記第1及び第2の本体部のそれぞれの自由端部にあり、前記導管の通路を開いて前記導管を開放するための開位置へ前記第1及び第2の本体部がこじ開けられることを可能にし、手が係合するために外方に突き出る第1及び第2の手の係合可能なタブと、
前記第1の本体部に連結される第1の端部と、前記第2の本体部に連結される第2の端部とを有するフレキシブル部材であって、前記導管が前記通路の中へ配置される場合に前記導管と係合し、前記導管をきつく囲み、前記導管を捕らえるように前記通路内に配置されるフレキシブル部材と、
を備えていることを特徴とする導管用保持クリップ。
【請求項2】
前記通路が、その中に配置される導管を保持する大きさであることを特徴とする請求項1に記載の保持クリップ。
【請求項3】
前記導管が前記通路内に配置される場合に、前記フレキシブル部材が前記導管の周囲を螺旋状に包み込み、前記導管を締め付けることを特徴とする請求項2に記載の保持クリップ。
【請求項4】
前記フレキシブル部材が、前記ヒンジ部材の縦方向に平行な方向に前記導管の移動を制限することを特徴とする請求項3に記載の保持クリップ。
【請求項5】
接着剤が、前記第1及び第2の本体部の底面に配置されることを特徴とする請求項1に記載の保持クリップ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−172763(P2010−172763A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−114110(P2010−114110)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【分割の表示】特願2006−523428(P2006−523428)の分割
【原出願日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【出願人】(506049725)
【氏名又は名称原語表記】J. Daniel RAULERSON
【出願人】(507336215)
【氏名又は名称原語表記】Kenneth W. Aldridge
【出願人】(500053263)メデイカル コンポーネンツ,インコーポレーテツド (36)
【Fターム(参考)】