説明

導電ガラス

【課題】 いわゆる電化ガラスの視認性を妨げず、外観を損なうことなく、また、サッシの加工を必要とせずに電極を取り出すことのできる導電ガラスを提供する。
【解決手段】 導電性物質が形成されたガラス板2と、前記ガラス板2の外周縁を嵌め込むサッシ3とからなる導電ガラス1であって、前記ガラス板2の周縁部に取付けられ
る薄層電極7の端部が前記サッシ3からはみ出る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性物質が形成され、この導電性物質の電気的変化をセンサ等で測定し
て例えば割れ等を検出する導電ガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、防犯センサ内蔵ガラス、太陽電池(PV)一体化ガラス、液晶窓ガラス等、いわゆる電化ガラスの開発が進められている。このような電化ガラスは一般的に導電性物
質をガラスに形成し、ここから電極を取り出し、センサ等と接続して使用するものであ
る。電極の取り出しは、例えば防犯ガラスでは、導電ガラスをサッシに取り付けた後、ガラス表面に電極取り出し部材を取り付けてコード等でセンサと接続するものを用いていた。このような導電ガラスをサッシに取り付けた後に電極の取り出し部材を取付ける後付け方式では、電極取り出し部材がガラス表面に設けられるためにガラスの視認性が悪いものであり、外観を損なうものであった。
【0003】
このため、電極の取り出しは導電ガラスの目立たない位置、例えば、導電ガラスのサ
ッシ内の周縁部から取り出すことが好ましい。しかし、導電ガラス表面とサッシ内壁間
の隙間は非常に狭く、ガラス周縁部から電極を例えばリード線で取り出したとしても、サッシとガラス間の隙間にリード線が収まらず、サッシを切欠いたり孔を設ける等の作
業が必要となり手間がかかり面倒である。
【0004】
特許文献1に防犯ガラス構造が記載されている。この防犯ガラス構造は、枠体で囲ま
れる合わせガラスのガラス破壊をすばやく検出し非常伝達を可能にする防犯ガラス構造
であって、枠体の近傍に配置される導電部と、枠体内に配置され導電部の非導通時に有
線又は無線の検出信号を発するセンサと、このセンサからの検出信号が伝達される非常
検出部とを設けるものである。しかし、特許文献1の防犯ガラス構造は、導電膜の導通
状態を検出するセンサと電極を取り出すリード線が枠体(サッシ)内に配置されているため、枠体にこれらを配置するスペースを設ける必要がある。また、この検出結果を外
部から認識するための装置に有線で接続する際には枠体を切欠いたり孔を設ける等、2
次加工を施す必要があり、手間がかかり面倒である。
【0005】
【特許文献1】特開2003−128443号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術を考慮したものであり、いわゆる電化ガラスの視認性を妨げ
ず、外観を損なうことなく、また、サッシの加工を必要とせずに電極を取り出すことの
できる導電ガラスの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、請求項1の発明では、導電性物質が形成されたガラス板と
、前記ガラス板の外周縁を嵌め込むサッシとからなる導電ガラスであって、前記ガラス
板の周縁部に取付けられる薄層電極の端部が前記サッシからはみ出ることを特徴とする
導電ガラスを提供する。
【0008】
請求項2の発明では、前記ガラス板は、導電性物質が形成された強化ガラスと他のガ
ラス板を中間膜を介して貼り合わされた合わせガラスであることを特徴としている。
【0009】
請求項3の発明では、前記導電性物質は膜状の導電膜であることを特徴としている。
【0010】
請求項4の発明では、前記導電膜が前記強化ガラスの前記中間膜側に形成され、前記
強化ガラスと前記中間膜間に前記薄層電極が介装され、該薄層電極が前記強化ガラスと
貼り合わされる他のガラス板側に折り曲げられることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、導電性物質の電気的変化を取り出す電極に薄層電極を用いるため、サッシ内の導電ガラス周縁部と接続した薄層電極はサッシとガラス間の隙間を
通ってサッシからはみ出て、ここからセンサ等の測定装置に接続させることができる。
したがって、サッシの加工を必要とせずに導電ガラスの目立たない位置で外観を損なう
ことなく電極の取り出しを行うことができる。
【0012】
請求項2の発明によれば、導電ガラスとして合わせガラスを用いた場合においても、
サッシの加工を必要とせずに導電ガラスの目立たない位置で外観を損なうことなく電極
の取り出しを行うことができる。
【0013】
請求項3の発明によれば、導電性物質が膜状の導電膜なので、ガラス板に導電膜を塗
布した導電ガラスの薄型化を図ることができるので、サッシに収めやすい。
【0014】
請求項4の発明によれば、薄層電極をガラス板に沿って折り曲げてサッシから露出さ
せるため、導電ガラスとサッシ間の隙間が狭くても導電ガラスの電極を取り出すことが
できる。また、導電膜が合わせガラスの外部に露出しないので、導電膜が十分に保護さ
れる。さらに、薄層電極が強化ガラスと中間膜間に介装されるので、強化ガラスと中間
膜との間に非接着部分を形成でき、強化ガラスの割れに伴う導電膜の電気的変化を確実
に検知することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は本発明に係る導電ガラスを示し、(A)は正面図であり、(B)は(A)のA−A部の断面図である。
【0016】
図示したように、本発明に係る導電ガラス1は、合わせガラス2とこの外周縁を嵌め
込むサッシ3で構成される。合わせガラス2は、隅部近傍に導電膜8(図3参照)が形
成された強化ガラス4と強化処理を施していないガラス板5を中間膜6を介して貼り合
わされて形成される。強化ガラス4と中間膜6の間に薄層電極7が介装され、端部がサッシ3の縁からはみ出るようにガラス板5側に折り曲げられて取付けられる。この薄層
電極7のサッシ3からはみ出た部分からリード線等(不図示)により電極を取り出し、これをセンサ等(不図示)と接続して、強化ガラス4に形成された導電膜8の抵抗変化を検出する。例えば、一定電圧を印加して電流変化を検出したり、一定電流を印加して電圧変化を検出して抵抗変化を検出する。
【0017】
導電膜8(図3参照)は、強化ガラス4の内面側、すなわち合わせガラス2を構成する強化ガラス4とガラス板5との間の中間膜6側に位置するように形成することが好ましい。これにより、導電膜8が外部に露出せず、導電ガラス1を洗浄したりガラス表面に傷がついたりしても導電膜8には影響がないため、長期にわたって導電膜8の劣化が抑制され、抵抗変化検出の信頼性が維持される。
【0018】
検出は以下のように行われる。例えば、導電ガラス1に衝撃が加えられると、強化ガラス4の表面にクラック(ひび)が入る。このクラックは強化ガラス4の隅部近傍の導電膜8(図3参照)まで達するため、クラックにより導電膜8が分断されたり、一部に欠けや脱落が生じて表面積が減少して、導電膜8の抵抗値に変化が起きる。この抵抗値変化を、導電膜8と接着する薄層電極7(図3参照)に接続されたセンサ等(不図示)で検出して、導電ガラス1が割れたことを知ることができる。
【0019】
図2は本発明で用いる薄層電極の概略図であり、図3(A)〜(D)はこれを本発明に係る導電ガラスに取付ける工程を順番に示す概略図である。
【0020】
図2の(A)は表面図、(B)は裏面図である。図示したように、薄層電極7は表面がポリイミド等の可撓性材料からなる絶縁材(ベース材)10で形成され、裏面は表面と同材料、同形状からなる絶縁材(カバーレイ)13で形成される。表裏面の絶縁材10,13間に、パターン形成された銅箔11が挟まれる。裏面の絶縁材13は一部切欠かれ、銅箔11がむき出しとなる部分を有する。絶縁材10,13はポリイミドベースの材料なので、耐熱性が強く、高温の製造プロセスを有する合わせガラスに適している。このような薄層電極7として、例えばFPC(フレキシブルプリント配線板)等がある。
【0021】
この薄層電極7を導電ガラス1の合わせガラス2に介装する場合、まず、図3(A)に示すように、強化ガラス4表面の隅部近傍に導電膜8を成膜する(図では隅部を含むL字形状)。この導電膜8の成膜方法としては、例えばCVD法等の半導体デバイス製造工程で用いる薄膜形成プロセスを用いて化学反応を起こさせて導電物質を強化ガラス4の表面(端面を除く主面)全体に成膜(コーティング)し、これにレーザーあるいは湿式エッチング等を用いて隅部以外の導電膜と分離するようにパターニングしたり、又は隅部以外の強化ガラス4表面の導電膜8を除去して所望の導電膜パターンを成形する。導電膜8としてはCVD法で容易に成膜できるSnO2膜(FドープSnO2膜)や、ITO(SnドープのIn203膜)等を用いることが可能である。その他、Agペーストの湿式コーティングを強化ガラス4に施した後に、焼き付けて、導電膜8を形成してもよい。
【0022】
次に、(B)に示すように、この導電膜8を覆うように薄層電極7を載置する。このとき、導電膜8側が絶縁材13となるようにして、図2(B)のむき出しの銅箔11と導電膜8を導電性接着剤(不図示)により接着して電気的に導通させる。次に、(C)に示すように、絶縁材10に両面テープ12を貼り、(D)に示すように、強化ガラス4とガラス板5を中間膜6を介して貼り合わせた後に、薄層電極7をガラス板5側に折り曲げ、両面テープ12によりガラス板5表面に貼り付ける。なお、絶縁材10とガラス板5との接着は両面テープ12に限らず、接着剤等を用いて行ってもよい。
【0023】
このように、中間膜6と強化ガラス4との間に薄層電極7を介装することにより、強化ガラス4と中間膜6に非接触部分を形成することができ、この部分において強化ガラス4にクラックが生じた場合に、微細な小片(破砕片)が中間膜6の接着作用によって固定されたままとならず、導電膜8が分断されない状態となるのを防止でき、強化ガラス4に生じたクラックは確実に導電膜8を分断するため、導電膜8の抵抗値の変化を確実に検出できる。このとき、薄層電極7の厚さを0.4mm以下とすれば、中間膜6と強化ガラス4間に介装したときに空気が入りにくくなる。したがって、強化ガラス4とガラス板5を熱圧着して合わせガラス2を形成する際に中間膜6の発泡を抑えることができる。
【0024】
このようにして形成された合わせガラス2にサッシ3を嵌め込むと、ガラス板5の表面に表れた薄層電極7の銅箔11はサッシ3の縁からはみ出るので、これに銅線等からなるリード線等(不図示)を接合し、このリード線を介して割れ検出用のセンサ等(不図示)と接続する。
【0025】
以上より、導電膜8の電気的変化を取り出す電極として薄層電極7を用いるため、サッシ3と合わせガラス2間のわずかな隙間に収めることができる。したがって、サッシ3の加工を必要とせずに導電ガラス1の目立たない位置で外観を損なうことなく電極の取り出しを行うことができる。また、膜状の導電膜8を強化ガラス4に形成すれば、合わせガラス2の薄型化を図ることができるので、さらにサッシ3に収めやすくなる。
【0026】
図4は別の薄層電極の概略図である。
上述したサッシ3としては住宅用やビル用等、その大きさは多種多様である。したがって薄層電極7の端部をサッシ3の縁からはみ出させるためにはそれぞれのサッシ3に合わせた長さの薄層電極7を用いることが必要であるが、これでは薄層電極7の製造が面倒となり効率が悪い。又は、最大のサッシ3に合わせた薄層電極7を用いれば全てのサイズのサッシ3において使用可能であるが、通常用いられる最大のサッシと最小のサッシの嵌め込むガラス板の掛かり代及び小口長さの差は24mmあるため、したがってこれを最小のサッシに用いた場合にはサッシ3の縁から薄層電極7が24mmはみ出ることになり、導電ガラス1の外観を損ねるため好ましくない。
【0027】
そこで、図示したように、帯状の薄層電極7を螺旋状に巻回することにより、薄層電極7の両端部間の長さ(縦方向の長さ)Dは自由に調整可能となる。したがって、上述したサッシ3の大きさの違いに対応して薄層電極7の両端部間の長さDを調整できるので、サッシ3のサイズ(ガラス板の掛かり代及び小口長さ)に関係なく適用可能である
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る導電ガラスを示し、(A)は正面図であり、(B)は(A)のA−A部の断面図。
【図2】本発明で用いる薄層電極の概略図。
【図3】図2の薄層電極を本発明に係る導電ガラスに取付ける工程を順番に示す概略図。
【図4】別の薄層電極の概略図
【符号の説明】
【0029】
1:導電ガラス、2:合わせガラス、3:サッシ、4:強化ガラス、5:ガラス板、6:中間膜、7:薄層電極、8:導電膜、10:絶縁材、11,11-a,11-b:銅箔、12:両面テープ、13:絶縁材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性物質が形成されたガラス板と、
前記ガラス板の外周縁を嵌め込むサッシとからなる導電ガラスであって、
前記ガラス板の周縁部に取付けられる薄層電極の端部が前記サッシからはみ出ることを特徴とする導電ガラス。
【請求項2】
前記ガラス板は、導電性物質が形成された強化ガラスと他のガラス板を中間膜を介して貼り合わされた合わせガラスであることを特徴とする請求項1に記載の導電ガラス。
【請求項3】
前記導電性物質は膜状の導電膜であることを特徴とする請求項1又は2に記載の導電ガラス。
【請求項4】
前記導電膜が前記強化ガラスの前記中間膜側に形成され、前記強化ガラスと前記中間膜間に前記薄層電極が介装され、該薄層電極が前記強化ガラスと貼り合わされる他のガラス板側に折り曲げられることを特徴とする請求項3に記載の導電ガラス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−104038(P2006−104038A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−296241(P2004−296241)
【出願日】平成16年10月8日(2004.10.8)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】