導電体
【課題】表面抵抗率の経時的変化が極めて少なく、初期の表面抵抗率を維持し得る導電体を提供する。
【解決手段】基材1の少なくとも片面に導電膜2が形成され、該導電膜の上面及び周囲が水分を含む外気から封止材3にて封止された構成の導電体Aとするか、基材と導電膜と上面材とがこの順で形成され、導電膜の周囲が封止材にて封止された構成の導電体とするか、基材と導電膜と上面材とがこの順で形成され、導電膜の周囲において基材と上面材とが接合されて封止された構成の導電体とするか、導電膜の上下両面及び周囲が封止材にて封止された構成の導電体とする。導電膜2が外気から封止されて外気中の水分との接触が絶たれるため、導電膜2の表面抵抗率の変化が極めて小さくなり、初期とほぼ同じ表面抵抗率に維持される。
【解決手段】基材1の少なくとも片面に導電膜2が形成され、該導電膜の上面及び周囲が水分を含む外気から封止材3にて封止された構成の導電体Aとするか、基材と導電膜と上面材とがこの順で形成され、導電膜の周囲が封止材にて封止された構成の導電体とするか、基材と導電膜と上面材とがこの順で形成され、導電膜の周囲において基材と上面材とが接合されて封止された構成の導電体とするか、導電膜の上下両面及び周囲が封止材にて封止された構成の導電体とする。導電膜2が外気から封止されて外気中の水分との接触が絶たれるため、導電膜2の表面抵抗率の変化が極めて小さくなり、初期とほぼ同じ表面抵抗率に維持される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波吸収体や電磁波シールド体や画像表示体やタッチパネルなどに使用される導電体に関する。
【背景技術】
【0002】
電波吸収体に使用される抵抗膜(導電体)としては、片面に酸化インジウム−酸化錫(ITO)などの金属酸化物を蒸着して抵抗膜を形成したポリエチレンテレフタレートフィルムなどが使用され、誘電体や電波反射体と共に用いられて電波を吸収している(特許文献1)。
また、電磁波シールド体に使用されるシールド用導電体としては、基材の表面にITOなどの金属酸化物を蒸着したものや、アクリル樹脂基材の表面にカーボンナノチューブ塗膜を形成したものなど使用され、電気機器類のケーシングや覗き窓などから漏れる電磁波をシールドしている(特許文献2)。
また、画像表示装置などの静電気を除去する帯電防止導電体としては、ポリエチレンテレフタレートフィルムに金属粒子やウィスカーやアンチモンドープ酸化錫などの導電材を含む導電層(制電層)を設けたものが使用され、表示画面などに静電気が発生して塵媒が付着しないようになされている(特許文献3)。
さらに、タッチパネルに使用される電極(導電体)としては、ポリエチレンテレフタレートフィルムにITOなどの金属酸化物を蒸着したものが使用され、切符自動販売機などに用いられている(特許文献4)。
【特許文献1】特開平5−335832号公報
【特許文献2】特開2000−26760号公報
【特許文献3】特開2001−316504号公報
【特許文献4】特開平2−194943号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような抵抗膜、シールド用導電体、帯電防止導電体、電極などとして種々の製品に使用されている導電体は、該導電体を形成しているITOやカーボンナノチューブ塗膜や導電材含有塗膜などが外気環境に影響されて表面抵抗率が変化し、初期に設定した表面抵抗率を維持できない、という問題が内在していた。この変化は、初期表面抵抗率が小さな場合ほど変化割合が大きくなり、性能を発揮できなくなる恐れもあった。出願人はこの原因を追求した結果、空気中の湿気(水分)が大きな要因であろうと推測した。
本発明は、上記推測に基づき、表面抵抗率の変化を極めて少なくするためになされたものであって、初期の表面抵抗率を維持し得る導電体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明に係る第一の導電体は、基材の少なくとも片面に導電膜が形成されていると共に、該導電膜の上面及び周囲が水分を含む外気から封止材にて封止されていることを特徴とするものである。
また、本発明に係る第二の導電体は、基材と導電膜と上面材とがこの順で形成されていると共に、導電膜の周囲が水分を含む外気から封止材にて封止されていることを特徴とするものである。
更に、本発明に係る第三の導電体は、基材と導電膜と上面材とがこの順で形成されていると共に、導電膜の周囲において基材と上面材とが接合されて水分を含む外気から封止されていることを特徴とするものである。
更に、本発明に係る第四の導電体は、導電膜の上下両面及び周囲が水分を含む外気から封止材にて封止されていることを特徴とするものである。
【0005】
本発明において、上面材が導電膜と空間を隔てて形成されていることが好ましく、また、導電膜が基材の上面に一体に形成されていることが好ましい。また、導電膜、基材、上面材のいずれもが透光性を有していることも好ましい。更に、導電膜の表面抵抗率が104Ω/□以下であることも好ましい。また、導電体に電極が設けられていて、該電極の一端が導電膜に接触していると共に他端が封止材の外側まで延出していることも好ましい。
【発明の効果】
【0006】
本発明の第一の導電体は、基材の片面に導電膜が形成されていて、該導電膜の上面及び周囲が水分を含む外気から封止材にて封止されているので、導電膜の下面は基材で、導電膜の上面と周囲の側面とは封止材でそれぞれ水分を含む外気から封止され、導電膜は外気との接触が絶たれ水分と接することがない。そのため、導電膜の表面抵抗率の変化が極めて小さくなり、初期に設定した表面抵抗率とほぼ同じ表面抵抗率に維持することができる。そして、導電体の下面は基材で確実に封止されて導電膜全体の封止が容易に且つ確実に行なえる。このような導電体を、例えば電波吸収体の抵抗膜として使用すると、電波吸収性能が低下することがなくて、長期に亘り電波を吸収することができる。
【0007】
さらに、本発明の第二の導電体は、基材と導電膜と上面材とがこの順で形成されていて、導電膜の周囲が水分を含む外気から封止材にて封止されているので、上記効果に加えて、導電膜の下面が基材で、上面が上面材でそれぞれ覆われて封止が確実に行なえるし、周囲の側面は封止材で封止されていて、上下両面及び周囲側面と外気とを遮断する封止が確実に行なえ、表面抵抗率の変化を極めて小さくすることが容易である。
【0008】
また、本発明に係る第三の導電体は、基材と導電膜と上面材とがこの順で形成されていて、導電膜の周囲において基材と上面材とが接合されているので、導電膜の上下両面は基材と上面材とでそれぞれ覆われて封止され、周囲の側面はこれらを接合することのみで封止されて、導電膜を外気から封止することが容易に且つ確実に行なえて、表面抵抗率の変化を極めて小さくすることが容易である。
【0009】
更に、本発明の第四の導電体は、導電膜の上下両面及び周囲が水分を含む外気から封止材にて封止されているので、上下両面と周囲側面とを同じ封止材で封止することができるので、封止が容易に行なえるし、確実に行なえる。
【0010】
本発明の導電体において、上面材が導電膜と空間を隔てて形成されていると、該空間に別部材を配置することもできるので、例えばタッチパネルの電極として使用するときには別部材として電極を配置しても、電極としての導電体と別部材としての電極との接触をなくすことができるし、電波吸収体の抵抗膜として使用するときは該空間が誘電体として働く。また、導電膜が基材の上面に一体に形成されていると、導電膜の形成が容易で、導電膜下面の封止は該基材で行なうことができる。また、導電膜、基材、上面材のいずれもが透光性を有していると、透光性の導電体にすることができ、透光性を必要とする製品の導電体に使用することが可能となる。更に、導電膜の表面抵抗率が104Ω/□以下であると、表面抵抗率の変化が小さい低抵抗率の導電体となるので、電波吸収体や電磁波シールド体やタッチパネルなどの低い表面抵抗率を経時的に維持することが要求される導電体にも使用することができる。また、導電体に電極が設けられていて、該電極の一端が導電膜に接触していると共に他端が封止材の外側まで延出されていると、導電膜に電極を通して導通させることができるし、電極も封止されるので電極の周囲を通して導電膜にまで湿気などの外気環境の影響が及ぶことがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の具体的な実施形態を図面に基づいて詳述するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0012】
図1は本発明の一実施形態の導電体の断面図、図2は同導電体の平面図、図9(a)(b)(c)は同導電体に用いられる導電膜に含まれるカーボンナノチューブの分散状態を示す模式断面図、図10はカーボンナノチューブの分散状態を示す模式平面図である。
【0013】
図1及び図2に示す本発明の導電体A(A1)は、基材1の片面に導電膜2が一体的に積層して形成され、該導電膜2の上面及び周囲の側面が封止材3にて封止されていて、導電膜2が基材1と封止材3とで水分を含む外気との接触を遮断されるようにしてある。そして、この導電体A1においては、電極4が設けられており、電極4の一側部41が導電膜2の相対する二側面に沿って接触して設けられ、電極4の他側部42が封止材3の外方にまで延出されて外部装置に接続できるようになされている。なお、本発明の導電体Aにおいて、電極4は必ずしも必要ではない。
【0014】
上記の基材1は、メチルメタクリレートなどのアクリル樹脂、ポリエチレンやポリプロピレンやシクロポリオレフィンなどのオレフィン樹脂、ポリカーボネートやポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂などの合成樹脂、或はガラスからなり、10μmから15mm程度の厚さに形成されている。この基材1の全光線透過率を60%以上とすることにより、透光性の導電体A1を作製することができる。特に、ヘーズが10%以下のものであると透視性、特に透明の透光性導電体A1を作製でき、光拡散剤などを添加したり或は表面に微細な凹凸を付与してヘーズを50%以上にすると光拡散性の透光性導電体A1を作製することができる。また、着色剤などの添加で不透明にすれば不透明の導電材A1とすることができる。このように、導電体A1に使用する基材1は、使用する用途に合わせて適宜選択される。
【0015】
そして、屋外で使用する透光性導電体A1である場合は、紫外線吸収剤を添加して耐候性を向上させたアクリルやポリカーボネートなどが好ましく用いられる。さらに、厚みの薄い導電体A1の場合は、厚さが10〜500μmのポリエチレンテレフタレートフィルム、トリアセチルセルロース、環状ポリオレフィンなどが好ましく用いられる。また、後述する導電膜がITOなどの蒸着膜である場合は、蒸着時の温度に耐えられるポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルサルフォンなどの耐熱性フィルムが好ましく用いられる。
【0016】
上記の導電膜2は、1012Ω/□以下の導電性を有する導電性能乃至制電性能を有しており、ITOなどの金属酸化物の蒸着膜や、極細導電繊維や金属粒子や金属酸化物粒子などの導電材料を含む塗膜、或はポリピロール、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリエチレンジオキシチオフェンなどの導電性高分子などからなるものである。導電膜2の導電性は、導電体A1を使用する製品により異ならせる必要があり、導電体A1が電波吸収体用抵抗膜に使用される場合は表面抵抗率を377±30Ω/□に、電磁波シールド用導電体に使用される場合は100〜104Ω/□、好ましくは100〜103Ω/□に、画像表示装置用帯電防止導電体に使用される場合は106〜1012Ω/□、好ましくは106〜1010Ω/□に、タッチパネル用電極に使用される場合は100〜105Ω/□、好ましくは101〜104Ω/□となるように、蒸着膜や塗膜などの厚み、或は種類を選択して使用する。
【0017】
この導電膜2の表面抵抗率は、これが低抵抗率であれば変化率が僅かであっても大きく変化し、必要とする表面抵抗率を維持できなくなる恐れがある。例えば、表面抵抗率が377±30Ω/□必要な電波吸収体用の抵抗膜であれば、2倍に変化すると744Ω/□となり、電波吸収に必要な表面抵抗率の範囲を離脱してしまい、電波吸収ができなくなる。そして、3倍変化すれば一桁異なる大きな抵抗率となる。一方、表面抵抗率が106〜1012Ω/□と大きな抵抗率の範囲であればよい帯電防止用導電体であれば、例え3倍に変化しても1×107Ω/□が3×107Ω/□に変化するだけであり、同じ桁の範囲内に収まるので、ある程度の表面抵抗率の変化は許容できる。そのため、本発明は低い表面抵抗率の導電膜2に適用することが好ましく、特に104Ω/□以下の表面抵抗率を有する導電膜2であると効果が一層顕著になる。
【0018】
上記の蒸着膜からなる導電膜2は、ポリエチレンテレフタレートなどの耐熱性フィルムに酸化インジウム−酸化錫(ITO)や酸化錫や酸化亜鉛などを蒸着することで形成した薄膜であり、周知のITOが最も好ましく使用される。このITOは蒸着厚みを変えることで表面抵抗率、光学特性を変えることができ、通常103Ω/□以下の表面抵抗率を有し、全光線透過率が80%以上でヘーズが5%以下の透明導電膜2として使用される。
【0019】
また、上記の極細導電繊維や金属粒子や金属酸化物粒子などの導電材料を含む塗膜は、これらの導電材料と樹脂と溶剤とからなる導電性樹脂塗液を基材1の片面に塗布・固化して得た塗膜であり、導電材料の種類、含有量、塗膜の厚み、分散状態などを調整して、必要な導電性を得ることができる。
【0020】
上記金属粒子としては銅、金、銀、ニッケル、白金などが用いられ、金属酸化物粒子としては酸化錫、アンチモン、アンチモンドープ酸化錫、酸化亜鉛などが用いられる。また、極細導電繊維としては、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンナノワイヤー、カーボンナノファイバー、グラファイトフィブリルなどの極細長炭素繊維、白金、金、銀、ニッケル、シリコンなどの金属ナノチューブ、金属ナノワイヤーなどの極細長金属繊維、酸化亜鉛などの金属酸化物ナノチューブ、金属酸化物ナノワイヤーなどの金属酸化物などの極細長金属酸化物繊維などの、直径が0.3〜100nmで、長さが0.1〜20μm、好ましくは長さが0.1〜10μmの各繊維が用いられる。これらの導電材料は均一に分散されていることが好ましく、特に極細導電繊維は、凝集することなく分散して互いに接触して導電膜2のなかに含まれていることが好ましい。
【0021】
この極細導電繊維の中でも、カーボンナノチューブは繊維直径が0.3〜80nmと細いので、凝集することなく分散して互いに接触させることにより必要な導電性と透明性とを得ることができるので、好ましく用いられる。このカーボンナノチューブには、中心軸の周りに複数のカーボン壁を同心状に或は渦巻き状に有する多層カーボンナノチューブと、単数のカーボン壁を有する単層カーボンナノチューブとがある。前者の多層カーボンナノチューブは凝集することなく一本ずつ分離した状態で互いに接触させた状態で導電膜2に含まれるが、後者の単層カーボンナノチューブは一本ずつ分離した状態での分散は現時点では困難で、二本以上が集まって束になって、これらの束が凝集することなく一束ずつ分離して分散し互いに接触させた状態で抵抗膜2に含まれる。なお、二層ないし三層のカーボンナノチューブは一本ずつ分散している場合と束になって分散している場合とがある。さらに、単層カーボンナノチューブが一本ずつ分散している場合も本発明に含まれる。
ここで、「凝集することなく」とは、導電膜を顕微鏡で観察したときに0.5μm以上の凝集塊がないことを意味し、また、「接触」とは、極細導電繊維が現実に接触している場合と、極細導電繊維が導通可能な小間隙をあけて接近している場合の双方を意味する。
【0022】
このカーボンナノチューブの導電膜2内における分散状態を模式的に図9、図10に示す。図に示すように、カーボンナノチューブ21は一本ずつ、或は、一束ずつ分離した状態で分散してお互いに接触している。そして、導電膜2がバインダーを含むと、図9(a)に示すように、バインダーの内部に上記の分散状態で分散して互いに接触しているか、或は、図9(b)に示すように、カーボンナノチューブ21の一部がバインダーの表面から突出乃至露出し、他の部分乃至他のカーボンナノチューブ21がバインダー内に入り込み上記分散状態で分散して互いに接触しているか、或は、一部のカーボンナノチューブ21は図9(a)のようにバインダーの内部に、他の一部は図9(b)に示すようにバインダーの表面から突出乃至露出して上記分散状態で分散して互いに接触している。また、導電膜2がバインダーを含まないと、図9(c)に示すように、カーボンナノチューブが上記分散状態で分散して互いに接触して、カーボンナノチューブの3次元構造の層となっている。
【0023】
そして、これらのカーボンナノチューブ21の分散状態を平面から見た状態を模式的に図10に示してある。この図10から理解できるように、カーボンナノチューブ21は多少湾曲した状態で、一本ずつ或は一束ずつ分散して分離し、互いに複雑に絡み合うことなく、即ち凝集することなく、単純に交差した状態で、導電膜2の内部乃至表面に分散し、互いに交差して導通している。このように、カーボンナノチューブ21が湾曲して接触しているので、このカーボンナノチューブ21を含む導電膜2は、曲げなどの二次加工を行なっても、曲がったカーボンナノチューブ21が伸びたり、或は接触しながらずれたりするので、曲率半径が1mm以下の極端に小さな曲率半径に曲げたり、成形倍率が10倍以上の極端な成形倍率にしなければ、その表面抵抗率は低下することがほとんどない。
【0024】
カーボンナノチューブなどの導電材料を含む導電膜2に用いるバインダーとしては、透明な熱可塑性樹脂である塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、ニトロセルロース、塩素化ポリエチレン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、フッ化ビニリデンなどが、また、熱や紫外線や電子線や放射線で硬化する硬化性樹脂であるメラミンアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、アクリル変性シリケートなどのシリコーン樹脂などが使用される。
【0025】
この導電膜2に含ませるカーボンナノチューブの含有量などを変えることにより、表面抵抗率や光学特性を変えることができる。例えば、透明の電波吸収体用抵抗膜に必要な表面抵抗率377±30Ω/□、全光線透過率70%以上、ヘーズ10%以下の導電膜2を得るためには、その目付け量を30〜450mg/m2となるように含有量や厚さを調整する。同様に、透明の電磁波シールド用電極に必要な表面抵抗率104Ω/□以下、全光線透過率40%以上、ヘーズ10%以下の導電膜2を得るためには目付け量を1〜450mg/m2となるように、透明の帯電防止用導電体に必要な表面抵抗率106〜1012Ω/□、全光線透過率70%以上、ヘーズ10%以下の導電膜2を得るためには目付け量を0.03〜450mg/m2となるように、透明のタッチパネル用電極に必要な表面抵抗率100〜105Ω/□、全光線透過率70%以上、ヘーズ10%以下の導電膜2を得るためには目付け量を3〜450mg/m2となるように、導電膜2に含まれるカーボンナノチューブの含有量や厚さを調整する。
なお、上記目付け量は、導電膜2を電子顕微鏡で観察し、その平面面積に占めるカーボンナノチューブの面積割合を測定し、これに電子顕微鏡で観察した厚みとカーボンナノチューブの比重(グラフィトの文献値2.1〜2.3の平均値2.2を採用)を掛けることで計算した値である。
【0026】
上記導電膜2の上面と周囲側面とを封止している封止材3は、導電膜2と水分を含む外気との接触を遮断して水分の進入を防止し、導電膜2の表面抵抗率の経時的な変化を抑制している。図1に示す導電膜2は、その下面が基材1で覆われているので該基材1が封止材を兼備して、下面からの水分の進入は防止されるので、別の封止材で封止する必要はない。しかし、導電膜2の上面と周囲側面は封止材3で封止して上面及び周囲側面からの水分の侵入を防止する必要がある。そのため、基材1及び封止材3にはガスバリヤー性に優れたものが好ましく用いられる。
【0027】
このような封止材3としては、例えば、ポリウレタン系、エチレン−酢酸ビニル共重合体系、エチレン−モノカルボン酸ビニルエステル共重合体系、エチレン−アクリル酸ビニルエステル共重合体系などのホットメルトシートや、シリコーン系、エポキシ系、アクリル系、オルガノポリシロキサン系、カルバミン酸エステル系、ビニル系、加水分解性シリル系、シリル化ウレタン系、ポリオキシアルキレン重合体などの硬化性シーリング剤や、合成樹脂と溶剤などからなる樹脂塗液などが使用形成されてなるものである。これらよりなる封止材3の厚さは、限定されるものではないが、水分の浸透を防止できる0.1μm以上、好ましくは0.1μm〜5mm、更に好ましくは5μm〜2mm程度とされる。
【0028】
上記の封止材3のうち、比較的穏やかな加熱条件で軟化溶融して粘着性ないし接着性を発現して封止性能に優れるポリウレタン系ホットメルトシート、或は室温から100℃未満の温度領域で粘着性ないし接着性を発現して硬化し優れた封止性能を発揮するシリコーン系シーリング剤、或は基材1と同じか相溶性を有する熱可塑性樹脂を含む樹脂塗液が好ましく使用される。そして、封止導電体A1に透明性乃至透光性を要求される場合は、導電膜表面の封止材3に無色透明乃至透光性のものが用いられるが、封止導電体A1が不透明であってもよい場合は透明でも半透明でも不透明でもよい。このような透明な封止材3は上記のポリウレタン系ホットメルトシートやシリコーン系シーリング剤や透明性熱可塑性樹脂塗液が好ましく用いられる。さらに、導電膜2の周囲側面の封止材3は、導電体A1が透明でも透光性でも不透明であっても、不透明なものを使用できるが、導電体A1が透明性乃至透光性であれば上記の無色透明なものを用いることが好ましい。
【0029】
更に、電極4は銅やアルミニウムや金、銀、ステンレスなどの金属薄板、金属箔が使用される。電極4の一側部41は、例えば図2に示すように、導電膜2の相対する二側端(上下の側部)に重ね合せて接触接合させられている。そして、電極4の他側部42は封止材3から外方に延出されていて、外部装置に接続できるようになされている。この電極4の周囲も封止材3にて封止されていて、電極4と封止材3との界面からの水分の浸透を防止するようにしてある。この電極4は、外部装置と接続する必要のない場合は設ける必要はない。
【0030】
このようにして得られた導電体A1、特にカーボンナノチューブを含む塗膜からなる導電膜2が用いられた導電体A1は、その全光線透過率を30%以上とすることができるので、例えば、透光性を必要とする透光性電波吸収体用の抵抗膜として、また透光性電磁波シールド用の電極として、また透光性帯電防止用の導電体として、更には透明タッチパネル用の電極として用いることができる。
【0031】
以上のような導電体A1は、例えば、以下の方法で製造することができる。まず、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどの基材1の片面の四方周囲端部を除く中央箇所に、酸化インジウム−酸化錫を蒸着してITOの薄膜を形成するか、或は、カーボンナノチューブなどの導電材料を含む塗液を塗布して塗膜を形成して、必要とする表面抵抗率を有する導電膜2を作製する。そして、この導電膜2の相対する側端部の上面に銅箔などの電極4の一側部41を導電性接着剤で接着する。さらに、導電膜2の上面と当該導電膜2が形成されなかった基材1の四方周囲端部(周囲側面)を覆うようにホットメルトシートを重ね合せると共に、電極4と基材1との間にもホットメルトシートを重ね合せた後、加熱加圧することでホットメルトシートを軟化溶融させて、導電膜2の上面と周囲側面とをホットメルトシートの封止材3にて封止することで製造することができる。
【0032】
他の方法は、上記のようにして得られた導電膜2の上面と周囲側面、及び電極とポリエチレンテレフタレートとの隙間にシーリング剤や樹脂塗液などを塗布或は注入して固化させ、導電膜2の上面と周囲側面とをシーリング剤や樹脂塗液などで形成された塗膜の封止材3にて封止することでも製造することができる。
【0033】
このようにして得られた電極体A1は、導電膜2の下面はポリエチレンテレフタレートなどの基材1にて覆われて封止されると共に、上面と周囲側面はホットメルトシート、シーリング剤或は樹脂塗液などの塗膜からなる封止材3にて封止されているので、導電膜2の上下両面と周囲側面との全面・全周が封止されて、導電膜2が外気から封止されて外気中の水分の浸透などによる影響をなくし、表面抵抗率が経時的に変化することを抑制することができる。この経時的な表面抵抗率の変化は、帯電防止用導電体などのように106〜1012Ω/□であるときは100倍変化しても使用可能であるが、初期の表面抵抗率をできるだけ保持することが好ましく、10倍以下にすべきである。しかし、表面抵抗率が低くなればなるほど変化が大きく影響するので、できるだけ小さいことが必要である。例えば、104Ω/□以下の低抵抗の表面抵抗率が必要なときは、初期の表面抵抗率の±30%の範囲に抑制することが好ましく、更に好ましくは±10%、最も好ましくは±8%の範囲にすることが望ましい。また、カーボンナノチューブを含む導電膜2であると、これを曲げなどの二次加工しても表面抵抗率の低下が少ないので、基材1として屈曲可能な熱可塑性樹脂を用いることで、二次加工可能な導電体A1とすることができる。
この実施形態では、電極4を導電膜2の上面に接触接続したが、導電膜2の下面に接触接続してもよい。
【0034】
図3は本発明の他の実施形態に係る導電体の断面図を示す。
この導電体A(A2)は、基材1と導電膜2と上面材5が一体に積層されて形成され、導電膜2の周囲の側面が水分を含む外気から封止材3にて封止されている。この図3においては、導電膜2の四周周囲に張り出している基材1と上面材5との隙間に封止材3が配置されて封止している。
【0035】
上面材5としては、前記導電体A1の基材1と同じ可塑性樹脂や硬化性樹脂が用いられるが、特に透明樹脂が好ましく用いられる。そして、その厚さも基材1と同じとされている。しかし、基材1と異なる樹脂を用いたり、基材1と異なる厚さとしても勿論よい。そして、この上面材5は、基材1と同様に導電膜2よりも大きな大きさとされていて、導電膜2の四周から周囲にはみ出るようになされている。そのため、導電膜2から四周周囲にはみ出た基材1と上面材5との隙間に、封止材3が介在若しくは注入されて隙間を充填していて、導電膜2の四周側面を封止していると同時に、基材1と上面材5とを密着させている。
その他の構成である、基材1、導電膜2、封止材3、電極4は前記導電体A1と同じであるので、同一符号を付して説明を省略する。
【0036】
この導電体A2は、例えば、次のようにして製造される。
まず、基材1の片面の四周周囲端部を除く中央箇所に、前記と同様にして導電膜2を形成して、基材1が導電膜2の四周からはみ出るようにする。そして、電極4も同様に配置した後に当該電極4の下面にホットメルトシートを配置し、更に基材1の四方周囲の表面即ち当該導電膜2が形成されなかった基材1の四方周囲端部(周囲側面)の上面に幅狭のホットメルトシートを配置し、更に基材1と同じ大きさの上面材5で導電膜2を覆うと同時に該導電膜2からはみ出た基材1の四方周囲に重ね合わせた後、加熱加圧することでホットメルトシートを軟化溶融させて、導電膜2の周囲側面外方で、基材1と上面材5との間隙をホットメルトシートの封止材3にて封止することで製造することができる。
【0037】
また、ホットメルトシートに代えて、導電膜2を中央箇所に形成した基材1の上面に、上記と同様に表面材5を配置し、導電膜2の四周側面外方の隙間(基材1と上面材5との隙間)に、シーリング剤や樹脂塗液を注入して固化させ、導電膜2の周囲の側面外方で、基材1と上面材5との間隙をシーリング剤乃至樹脂塗液で形成された塗膜の封止材3にて封止すると同時に、基材1と上面材5とを密着することでも製造することができる。
【0038】
このようにして得られた電極材A2は、導電膜2の下面が基材1で覆われて封止され、また上面が上面材5で覆われて封止され、導電膜2の周囲側面がホットメルトシートやシーリング剤或は樹脂塗液などの塗膜の封止材3にて封止されているので、導電膜2が水分を含む外気から封止されていて水分の浸透などによる影響がなくなり、表面抵抗率が経時的に変化することを抑制することができる。また、カーボンナノチューブを含む導電膜2であると、これを曲げなどの二次加工しても表面抵抗率の低下が少ない導電体A2とすることができる。
【0039】
この実施形態において、導電膜2は基材1に塗布して形成されているが、上面材5の下面に形成し、この面に基材1を重ね合せて導電膜2の周囲を封止した導電体A2としてもよい。また、電極4を導電膜2の下面に接触接続してもよい。
【0040】
図4は本発明の更に他の実施形態に係る導電体の断面図を示す。
この導電体A3は、基材1と導電膜2と上面材5とがこの順序で一体に積層されて形成され、導電膜2の周囲で基材1と上面材5とが接合されており、該接合部分15で導電膜2の周囲側面が封止されているものである。従って、この接合部分15が周囲側面の封止作用をなしている。
【0041】
基材1と上面材5とは、前記導電体A2に用いられたそれぞれの樹脂と同様の樹脂が用いられる。これらが共に熱可塑性樹脂であれば、加熱して溶着したり、熱溶接したり、接着剤で接着したりして、該溶着部分或は接着部分で接合することができる。また、両者が熱可塑性樹脂であっても相溶性が悪かったり、一方若しくは両方が硬化性樹脂或はガラスであれば、接着剤や粘着剤を用いたりして接合する。
その他の構成である導電膜2、電極4は、前記導電体A1に使用したものと同じものが使用されるので、同一符号を付して説明を省略する。
【0042】
この導電体A3は、例えば、次のようにして製造される。
まず、アクリル系フィルムなどの基材1の片面の四周周囲端部を除く中央箇所に、前記と同様にしてITO薄膜や導電材料塗膜の導電膜2を形成する。そして、該導電膜2の上面に、この導電膜2の四周からはみ出る大きさのアクリル系フィルムを配置し、上下のアクリル系フィルムの基材1と上面材5とを、導電膜2の四周周囲からはみ出た周囲同士を加熱や溶接や接着や粘着などして溶着接合或は粘接着接合したりすることで製造することができる。
【0043】
このようにして得られた導電体A3は、導電膜2の下面が基材1により封止され、上面が上面材5により封止され、周囲側面が基材1と上面材5との接合部分15により封止されているので、導電膜2が水分を含む外気から封止されていて水分の浸透などによる影響がなくなり表面抵抗率が変化することが抑制される。また、カーボンナノチューブを含む導電膜2であると、これを曲げなどの二次加工しても表面抵抗率の低下がない。
この実施形態において、導電膜2は基材1に塗布して形成されているが、上面材5の下面に導電膜2を形成し、この導電膜下面に基材1を重ね合せて導電膜2の周囲を封止した導電体A3としてもよい。また、電極4を導電膜2の下面に接触接続してもよい。
【0044】
図5は本発明の更に他の実施形態に係る導電体の断面図を示す。
この導電体A4は、基材1や上面材5を使用することなく、導電膜2の上下両面及び周囲側面が全て封止材3にて封止されているものである。該封止材3は前記のホットメルトシートや、シーリング剤又は樹脂塗液などによる塗膜などからなるもので、ホットメルトシートで上下両面及び周囲を封止したり、シーリング剤や樹脂塗液を導電膜2の上下と周囲に塗布・固化して塗膜を形成したりしたものである。
この導電膜2と封止材3は、前記導電体A1に使用したものと同じものが使用されるので、同一符号を付して説明を省略する。また電極4も同じであるので説明を省略する。
【0045】
この導電体A4は、例えば、次のようにして製造される。まず、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどの剥離性フィルムの片面に導電材料含有塗膜を形成し、この塗膜を剥離することで導電膜2を作製する。そして、該導電膜2の上下両面に、この導電膜2の四周からはみ出る大きさのホットメルトシートをそれぞれ配置した後、加熱加圧してホットメルトシートを軟化溶融させて、導電膜2の上面及び下面をホットメルトシートの封止材3で封止すると共に、導電膜2の四周からはみ出た上下のホットメルトシート同士を溶着して導電膜2の周囲を溶着部分で封止することで製造することができる。
【0046】
また、上記のようにして得られた導電膜2の片面に液状シーリング剤や樹脂塗液などを塗布し固化させて塗膜を形成した後、この塗膜付き導電膜を上下にひっくり返し、塗膜が形成されていない導電膜2の上面に液状シーリング剤や樹脂塗液などを塗布すると共に導電膜2よりもはみ出るように塗布し、固化させて塗膜を形成させることで、導電膜2の上下両面及び周囲側面に塗膜を形成し、この塗膜の封止材3にて封止しても製造することができる。
【0047】
このようにして得られた導電体A4は、導電膜2の上下両面及び周囲側面がホットメルトシートや塗膜の封止材3で封止されているので、導電膜2が水分を含む外気から封止されていて水分の浸透などによる影響がなくなり表面抵抗率が変化することがない。また、カーボンナノチューブを含む導電膜2であると、これを曲げなどの二次加工しても表面抵抗率の低下がない。
【0048】
図6は本発明の更に他の実施形態に係る導電体の断面図を示す。
この導電体A5は、基材1と導電膜2とが同じ大きさで一体に積層されて形成され、この基材1と導電膜2の上下両面及び周囲側面が、ホットメルトシートや熱可塑性樹脂シートや塗膜などの封止材3にて封止されているものである。
【0049】
基材1と導電膜2は、前記封止導電体A1に使用した基材1と導電膜2とが使用されるので説明を省略する。また、封止材3は、前記実施形態の導電体に使用されたホットメルトシートや熱可塑性樹脂シートやシーリング剤塗膜や樹脂塗液塗膜が使用されて、導電膜2と基材1の上下両面と周囲側面とがこれらのシートや塗膜で覆われて封止されている。なお、基材1と導電膜2とは必ずしも同じ大きさにする必要はなく、基材1が導電膜2より大きくても封止材3でこれらを覆って封止すればよい。
【0050】
この導電体A5は、例えば次のようにして製造される。
即ち、基材1の上面にITOを蒸着したり、導電材料含有塗液を塗布して、基材1と導電膜2とが同じ大きさの導電積層体を形成する。この導電積層体の上下両面に、これより大きくて四周側面からはみ出る大きさのホットメルトシートをそれぞれ重ね合わせ、これを加熱加圧して、導電積層体の上下をホットメルトシートでそれぞれ覆って封止すると共に導電積層体の周囲で且つはみ出た上下のホットメルトシート同士を溶着し該溶着部分で封止することにより、上下両面及び周囲側面が封止された導電体A5を製造することができる。
【0051】
また、上記ホットメルトシートに代えて、熱可塑性合成樹脂シートを用いて、導電膜2の周囲側面からはみ出た上下の熱可塑性合成樹脂シート同士を溶着乃至接着し該溶接着部分で封止することによっても製造することができる。
更に、上記ホットメルトシートに代えて、シーリング剤や樹脂塗液を塗布・固化して、導電膜2の上下両面及び周囲側面を封止することで製造してもよい。
【0052】
このようにして得られた導電体A5においても、前記導電体A1、A2、A3、A4と同様に、水分の浸透などによる影響がなくなり表面抵抗率が変化することがないし、カーボンナノチューブを含む導電膜2であると、これを曲げなどの二次加工しても表面抵抗率の低下がない、という効果を有する。
【0053】
図7は本発明の更に他の実施形態に係る導電体の断面図を示す。
この導電体A6は、基材1と導電膜2と上面材5とがこの順序で重ね合せ若しくは一体に積層され、この四周側端面に封止材3が形成されていて、導電膜2の上下両面が上面材5と基材1とで封止されると共に周囲側面が封止材3にて封止されているものである。
【0054】
この導電体A6において、基材1と導電膜2と上面材5とは同じ大きさに形成されていて、これらの四周側端面は略同じ面に位置している。そして、この同じ位置にある四周側端面に、ホットメルトシートやシーリング剤や樹脂塗液などを用いて封止材3を形成してあるので、封止材3は四周側端面に密着して形成され、導電膜2を水分を含む外気から封止することができる。なお、基材1と導電膜2と上面材5とは大きさが異なってもよいが、この場合は側端面に形成する封止材3を厚くするか、端面に沿って封止材3を形成すればよい。
その他の構成である、基材1、導電膜2、上面材5、電極4は前記導電体A2と同じであるので、同一符号を付して説明を省略する。
【0055】
この導電体A6は、例えば、次のようにして製造できる。
まず導電体A2の場合と同様にして製造する際に、基材1と導電膜2と上面材5とを同じ大きさとなるように作製する。そして、基材1と導電膜2と上面材5の略同じ面となっている各四周側端面にホットメルトシートを配置して加熱加圧して、導電体A6の周囲に封止材3を形成することで製造できる。また、ホットメルトシートに代えてシーリング剤や樹脂塗液を塗布、硬化して封止材3を形成することによっても製造できる。
【0056】
このようにして得られた電極材A6は、導電膜2の上下両面が上面材5、基材1で覆われ、導電膜2の周囲側端面は封止材3にて封止されているので、水分を含む外気から封止されていて水分の浸透などの影響が作用せず、表面抵抗率が変化することが抑制される。また、カーボンナノチューブを含む導電膜2であると、これを曲げなどの二次加工しても表面抵抗率の低下がない。さらに、封止材3は導電体A6の四周側端面の全体を封止しているので、封止材3が側端面に形成されても剥離することがない。
なお、この実施形態では導電膜2を基材1に形成したが、上面材5の下面に形成してもよい。
【0057】
図8は本発明の更に他の実施形態に係る導電体の断面図を示す。
この導電体A7は、基材1と導電膜2と上面材5とからなり、基材1と上面材5とが、導電膜2の周囲で封止材3にて封止されて接合されている点は前記導電体A2と同じであるが、導電膜2と上面材5とが空間6を隔てて形成されている点で異なっている。
【0058】
空間6には、当該空間部分に他部材を挿入/介在させることができ、例えば上面材5の下面に導電膜が形成されると、導電膜同士が対極するこことなるので、これらが接触しないように空間6を設けておくことが必要となる。また、該空間6自体を誘電体として利用することもできるので、電波吸収体用導電体と用いると他の誘電体の厚さを薄くすることができる。この空間6を設けるには、周囲の封止材3の厚みを厚くする必要があり、厚みの厚いホットメルトシートを使用したり、シーリング剤や樹脂塗液による塗膜を厚く塗布・形成したり、或は、スペーサを用いて接合或は接着したりして、導電膜2と上面材5とが間を隔てて形成されるようにする。そして、このような空間6があっても、当該空間6内の水分は導電膜2に浸透するかもしれないが、当該空間6は狭いので水分の量が少なくて、例え表面抵抗率が変化しても実質的な変化はない。そして、空間6は水分を含む外気から封止してあり、外気の水分が空間6へ、延いては導電膜2へ浸透することはない。そのため表面抵抗率の変化を抑制することができる。なお、空間6内に乾燥剤を内在させて湿気を取り除くこともできる。
その他の構成である基材1、導電膜2、上面材5、電極4は前記各導電体と同じであるので、同じ符号を付して説明を省略する。
【0059】
この導電体A7は、例えば、次のようにして製造される。
即ち、基材1の片面の四方周囲端部を除く中央箇所に、前記と同様にしてITO薄膜や導電材料塗膜の導電膜2を形成する。そして、該導電膜2の周囲で且つ当該導電膜2が形成されなかった基材1の四方周囲端部に導電膜2より厚さの厚いスペーサを配置し、更に基材1と同じ大きさの上面材5を導電膜2とスペーサを覆うように覆い、スペーサの上面を上面材5に、また下面を基材1に接着させて、空間6を有するように導電膜2の周囲を封止することで製造できる。この場合、スペーサが封止材3となる。
また、スペーサに代えて、厚みの厚いホットメルトシートを用いて加熱溶着させてもよいし、シーリング剤或は樹脂塗液を厚く塗布して厚い塗膜を形成して、基材1と上面材5との間に空間6を有するように接合して封止してもよい。
このようにして得られた導電体A7においても、水分の浸透などによる影響がなくなり表面抵抗率が変化することがないし、カーボンナノチューブを含む導電膜2であると、これを曲げなどの二次加工しても表面抵抗率の低下がない、という効果を有する。
【0060】
図11は、本発明の導電体Aを用いた電波吸収体の断面図を示す。
この電波吸収体Bは、本発明の導電体Aの表面側に表面保護体B1を、裏面側に誘電体B2と電波反射体B3と裏面保護体B4とを積層一体化したものである。上記表面保護体B1、B4は合成樹脂で作製されて表面及び裏面を衝撃や紫外線から保護し、誘電体B2はガラスや合成樹脂で作製されてλ/4電波吸収体理論(λ:誘電体B2内の電波の波長)に基づく厚さを有し、電波反射体B3は導電メッシュ材、金属メッシュ材、導電膜で作製され電波を反射させるものである。
【0061】
このような構成の電波吸収体Bにおいて、導電体Aは377±30Ω/□の表面抵抗率を有する必要があり、この範囲の表面抵抗率を有しないと電波吸収しなくなる。そのため、設置後においても上記範囲の表面抵抗率を有する必要があるが、上記の如く本発明の導電体Aは上下両面及び周囲側面が封止材で封止されているので、水分を含む外気の影響を排除して表面抵抗率の変化をなくして377±30Ω/□に保ち、長期に亘り電波吸収性能が維持される。
【0062】
図12は、本発明の上記導電体Aを用いたタッチパネルの断面図を示す。
このタッチパネルCは、本発明の導電体A7を用いてあり、導電体A7の空間6となっている上面材5の下面に導電膜(電極)2を形成してなるものである。このようにすることにより、基材1とその上面の導電膜2とで下電極体C1を、表面材5とその下面の導電膜2とで上電極体C2とをそれぞれ構成し、これらをドッドスペーサC3で対極させ、下電極体C1の基材1と上電極体C2の表面材5との隙間周囲(導電膜2の周囲側端面)を封止材3にて封止してなるものである。
このような構成のタッチパネルであっても、抵抗膜2の表面抵抗率を100〜105Ω/□に保っておく必要があるが、この抵抗膜2は基材1と上面材5と封止材3にて封止されているので表面抵抗率が変化することがなくて、上記表面抵抗率を維持できて、タッチパネルとしての機能を有することができる。
【0063】
図13は、本発明の上記導電体Aを用いた画像表示装置の断面図を示す。
この画像表示装置Dは、液晶パネルD1と光源D2と筐体D3とからなり、本発明の導電体Aを液晶パネルD1の表面に配置すると共に、液晶パネルD1と光源D2との間にも配置しているものである。この画像表示装置Dの表面に配置した導電体Aが106〜1012Ω/□の表面抵抗率を有しておれば帯電防止機能を発揮して画像表示装置Dの画像表面に塵楳が付着せず、また100〜104Ω/□の表面抵抗率を有しておれば電磁波シールド機能を発揮して画像表示装置Dからの電磁波の放出を防止する。さらに、この導電体Aはその四周を内側に折り曲げて金属筐体D3に接触してアースなどを取り易くしている。このように四周を折り曲げても、導電膜2がカーボンナノチューブで作製されていると表面抵抗率の変化(増加)がなくて帯電防止性能を維持できる。
一方、液晶パネルD1と光源D2との間に配置した導電体Aも100〜104Ω/□の表面抵抗率を有しておれば電磁波シールド機能を発揮し、106〜1012Ω/□の表面抵抗率を有しておれば帯電防止機能を発揮する。更に、基材1若しくは上面材5が光拡散性を有すれば光拡散性帯電防止体或は光拡散性電磁波防止体となる。
【0064】
以上に詳述したように、本発明の導電体は上下両面と周囲が封止されているので、導電膜と水分を含む外気とが遮断されて水分の悪影響が作用せず、導電膜の表面抵抗率の変化(増加)を防止でき、初期に有した表面抵抗率を維持することができる。そのため、電波吸収体、タッチパネル、電磁波シールド体、帯電防止体などの抵抗膜、電極シールド用導電体、帯電防止導電体に使用でき、特に104Ω/□以下の表面抵抗率を必要とする導電膜として有用である。
【0065】
以下実施例に基づいて具体的に説明する。
(実施例1)
溶媒としてのメチルアルコール/水混合物(混合比3:1)中に、極細導電繊維である単層カーボンナノチューブ(文献Chmical Physics Letters、323(2000)P580−585に基づき合成したもの、直径1.3〜1.8μm)と分散剤としてのポリアルキレンエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体を加えて均一に混合、分散させ、単層カーボンナノチューブを0.003質量%、分散剤を0.05質量%含む塗液を調整した。
【0066】
この塗液を、市販の厚さ100μmのポリメチルメタクリレートフィルム1の表面に、単層カーボンナノチューブの目付け量が約94mg/m2となるように塗布、乾燥して表面抵抗率が385Ω/□の透明な導電膜2をポリメチルメタクリレートフィルムの片面に備えた透明な導電膜形成フィルム12(図14(a)(b)参照)を作製した。そして、この導電膜形成フィルム12を100×110mmの大きさに切断し、その相対向する2辺に一対の帯状の銅箔の電極4(幅5mm,長さ150mm)を100mmの辺に沿って導電接着剤で接着して、導電膜の大きさが100×100mmの電極付き導電膜形成フィルムを作製した。
【0067】
図14(a)(b)に示すように、この電極付き導電膜形成フィルムの上下両面に、ポリウレタンよりなる120mm角のホットメルトシート3、3(厚さ1mm)を重ね、更にその上下に133mm角のポリカーボネート板10、50(厚さ2mm)を重ねて、これを200mm角の艶板で上下から挟み、125℃で加熱することにより、ホットメルトシートを軟化溶融させて電極付き導電膜形成フィルムの周囲及び上下両面をホットメルトシート3、3の封止材で封止すると共に、ポリカーボネート板10、50で被覆・封止した実施例1の導電体を作製した。
この導電体について、導電膜の表面抵抗率の経時的変化を室温23℃、湿度50%の恒温恒室の室内にて調べた。その結果を図15に示す。
【0068】
(実施例2)
実施例1で調製した塗液を、単層カーボンナノチューブの目付け量が約94mg/m2となるように、100×110mmの大きさのポリメチルメタクリレートフィルム(厚さ0.1mm)の片面に塗布、乾燥して、表面抵抗率が375Ω/□の透明な導電膜を形成し、この導電膜の上面に実施例1で使用した銅箔の電極を接着して電極付き導電膜形成フィルムを作製した。
【0069】
この電極付き導電膜形成フィルムを、133mm角のポリカーボネートシート板(厚さ2mm)の上に市販のセロファンテープで固定した後、電極付き導電膜形成フィルムの周りに、高さが10mm、一辺の長さが120mmの方形枠をセロファンテープで作り、この方形枠で囲まれた電極付き導電膜形成フィルムの導電膜の上に、シリコーン系のポッティング用液状シーリング剤(GE東芝シリコーン(株)製のTSE3033)を滴下し、80℃で3時間硬化させて、電極付き導電膜形成フィルムの周囲と導電膜の上面を厚さ0.2mmの粘着性のあるゴム状のシリコーン系シーリング剤で封止した実施例2の導電体を得た。
この導電体について、実験1と同様に、導電膜の表面抵抗率の経時的変化を調べた。その結果を図15に示す。
【0070】
(比較例1)
比較のために、実施例2で作製した電極付き導電膜形成フィルム(表面抵抗率375Ω/□)について、実施例1と同様に、その導電膜の表面抵抗率の経時的変化を調べた。その結果を図15に示す。
【0071】
図15のグラフからわかるように、封止していない比較例1の導電膜形成フィルムは、表面抵抗率が日数の経過にしたがって漸増し、5日経過で30Ω/□増加し、11日経過で50Ω/□増加し、20日経過で90Ω/□増加し、26日経過では110Ω/□も増加していていることがわかった。これが電波吸収体用の抵抗膜であれば、11日経過後には425Ω/□となり、これ以降には電波が吸収されないこととなる。これに対して、導電膜形成フィルムの表面と周囲をホットメルトシートにて封止した実施例1、導電膜形成フィルムの表面と周囲をシーリング剤にて封止した実施例2の各導電体は、日数が経過しても表面抵抗率が10Ω/□以下の範囲で増減していて、略一定していて変化することが極めて少なく、封止により表面抵抗率の変化(増加)が確実に防止できていることがわかった。従って、表面抵抗率が変化しても361〜385Ω/□の範囲であり電波吸収体用導電体として使用しても機能が発揮することがわかった。
【0072】
(実施例3)
実施例1で調製した塗液を、単層カーボンナノチューブの目付け量が約94mg/m2となるように、80×70mmの大きさのポリカーボネートシート(厚さ2mm)の片面に塗布・乾燥して、表面抵抗率が372Ω/□の透明な導電膜を形成し、この導電膜の上面に長さ90mm、幅5mmの銅箔の電極を70mmの辺に沿って導電接着剤で接着して、導電膜の大きさが70×70mmの電極付き導電膜形成シートを作製した。
【0073】
この電極付き導電膜形成シートの上に、前記と同じ大きさのポリカーボネートシート(厚さ2mm)を重ね合せ、この重ね合せ体の四周側端面に東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製シリコーン系シーリング剤(SE960)を塗布、硬化して、導電膜の上下両面がポリカーボネートシートで封止されると共に周囲側面がシリコーン系シーリング剤の封止材で封止、接合された実施例3の導電体を得た。
【0074】
この実施例3の導電体を、温度60℃、湿度90%と一定に保たれた恒温恒湿器(タバイエスペック社製EY−101)の中に放置して、表面抵抗率の変化を調べた。その結果、表面抵抗率は略一定し、500時間経過後においても375Ω/□と、3Ω/□の増加しかみられなかった。
【0075】
(比較例2)
比較のために、実施例3で作製した電極付き導電膜形成シート(表面抵抗率372Ω/□)について、実施例3と同様に、恒温恒湿器中で表面抵抗率の経時的変化を調べた。その結果、表面抵抗率は時間経過と共に増加し、500時間経過後には1320Ω/□となり、948Ω/□も増加していた。
【0076】
このように、温度60℃、湿度90%と過酷な条件下においても、上下面と周囲を封止した実施例3の導電体は表面抵抗率が略一定していたが、封止していない比較例2の導電体は表面抵抗率が増加することがわかった。また、この実施例3から、その周囲側面を封止することによっても、表面抵抗率の変化を抑制できることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の一実施形態に係る導電体の断面図である。
【図2】上記実施形態の平面図である。
【図3】本発明の他の実施形態を示す導電体の断面図である。
【図4】本発明の更に他の実施形態を示す導電体の断面図である。
【図5】本発明の更に他の実施形態を示す導電体の断面図である。
【図6】本発明の更に他の実施形態を示す導電体の断面図である。
【図7】本発明の更に他の実施形態を示す導電体の断面図である。
【図8】本発明の更に他の実施形態を示す導電体の断面図である。
【図9】(a)(b)(c)は導電膜内のカーボンナノチューブの分散状態を示す模式断面図である。
【図10】導電膜のカーボンナノチューブの分散を平面から見た模式平面図である。
【図11】本発明の導電体を使用した電波吸収体の断面図である。
【図12】本発明の導電体を使用したタッチパネルの断面図である。
【図13】本発明の導電体を使用した画像表示装置の断面図である。
【図14】(a)は実施例の電極付き導電膜形成フィルムの分解側面図であり、(b)は同電極付き導電膜形成フィルムの平面図である。
【図15】導電膜の表面抵抗率の経時変化を示すグラフである。
【符号の説明】
【0078】
1 基材
2 導電膜
3 封止材
4 電極
5 上面材
6 空間
A 導電体
B 電波吸収体
C タッチパネル
D 画像表示装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波吸収体や電磁波シールド体や画像表示体やタッチパネルなどに使用される導電体に関する。
【背景技術】
【0002】
電波吸収体に使用される抵抗膜(導電体)としては、片面に酸化インジウム−酸化錫(ITO)などの金属酸化物を蒸着して抵抗膜を形成したポリエチレンテレフタレートフィルムなどが使用され、誘電体や電波反射体と共に用いられて電波を吸収している(特許文献1)。
また、電磁波シールド体に使用されるシールド用導電体としては、基材の表面にITOなどの金属酸化物を蒸着したものや、アクリル樹脂基材の表面にカーボンナノチューブ塗膜を形成したものなど使用され、電気機器類のケーシングや覗き窓などから漏れる電磁波をシールドしている(特許文献2)。
また、画像表示装置などの静電気を除去する帯電防止導電体としては、ポリエチレンテレフタレートフィルムに金属粒子やウィスカーやアンチモンドープ酸化錫などの導電材を含む導電層(制電層)を設けたものが使用され、表示画面などに静電気が発生して塵媒が付着しないようになされている(特許文献3)。
さらに、タッチパネルに使用される電極(導電体)としては、ポリエチレンテレフタレートフィルムにITOなどの金属酸化物を蒸着したものが使用され、切符自動販売機などに用いられている(特許文献4)。
【特許文献1】特開平5−335832号公報
【特許文献2】特開2000−26760号公報
【特許文献3】特開2001−316504号公報
【特許文献4】特開平2−194943号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような抵抗膜、シールド用導電体、帯電防止導電体、電極などとして種々の製品に使用されている導電体は、該導電体を形成しているITOやカーボンナノチューブ塗膜や導電材含有塗膜などが外気環境に影響されて表面抵抗率が変化し、初期に設定した表面抵抗率を維持できない、という問題が内在していた。この変化は、初期表面抵抗率が小さな場合ほど変化割合が大きくなり、性能を発揮できなくなる恐れもあった。出願人はこの原因を追求した結果、空気中の湿気(水分)が大きな要因であろうと推測した。
本発明は、上記推測に基づき、表面抵抗率の変化を極めて少なくするためになされたものであって、初期の表面抵抗率を維持し得る導電体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明に係る第一の導電体は、基材の少なくとも片面に導電膜が形成されていると共に、該導電膜の上面及び周囲が水分を含む外気から封止材にて封止されていることを特徴とするものである。
また、本発明に係る第二の導電体は、基材と導電膜と上面材とがこの順で形成されていると共に、導電膜の周囲が水分を含む外気から封止材にて封止されていることを特徴とするものである。
更に、本発明に係る第三の導電体は、基材と導電膜と上面材とがこの順で形成されていると共に、導電膜の周囲において基材と上面材とが接合されて水分を含む外気から封止されていることを特徴とするものである。
更に、本発明に係る第四の導電体は、導電膜の上下両面及び周囲が水分を含む外気から封止材にて封止されていることを特徴とするものである。
【0005】
本発明において、上面材が導電膜と空間を隔てて形成されていることが好ましく、また、導電膜が基材の上面に一体に形成されていることが好ましい。また、導電膜、基材、上面材のいずれもが透光性を有していることも好ましい。更に、導電膜の表面抵抗率が104Ω/□以下であることも好ましい。また、導電体に電極が設けられていて、該電極の一端が導電膜に接触していると共に他端が封止材の外側まで延出していることも好ましい。
【発明の効果】
【0006】
本発明の第一の導電体は、基材の片面に導電膜が形成されていて、該導電膜の上面及び周囲が水分を含む外気から封止材にて封止されているので、導電膜の下面は基材で、導電膜の上面と周囲の側面とは封止材でそれぞれ水分を含む外気から封止され、導電膜は外気との接触が絶たれ水分と接することがない。そのため、導電膜の表面抵抗率の変化が極めて小さくなり、初期に設定した表面抵抗率とほぼ同じ表面抵抗率に維持することができる。そして、導電体の下面は基材で確実に封止されて導電膜全体の封止が容易に且つ確実に行なえる。このような導電体を、例えば電波吸収体の抵抗膜として使用すると、電波吸収性能が低下することがなくて、長期に亘り電波を吸収することができる。
【0007】
さらに、本発明の第二の導電体は、基材と導電膜と上面材とがこの順で形成されていて、導電膜の周囲が水分を含む外気から封止材にて封止されているので、上記効果に加えて、導電膜の下面が基材で、上面が上面材でそれぞれ覆われて封止が確実に行なえるし、周囲の側面は封止材で封止されていて、上下両面及び周囲側面と外気とを遮断する封止が確実に行なえ、表面抵抗率の変化を極めて小さくすることが容易である。
【0008】
また、本発明に係る第三の導電体は、基材と導電膜と上面材とがこの順で形成されていて、導電膜の周囲において基材と上面材とが接合されているので、導電膜の上下両面は基材と上面材とでそれぞれ覆われて封止され、周囲の側面はこれらを接合することのみで封止されて、導電膜を外気から封止することが容易に且つ確実に行なえて、表面抵抗率の変化を極めて小さくすることが容易である。
【0009】
更に、本発明の第四の導電体は、導電膜の上下両面及び周囲が水分を含む外気から封止材にて封止されているので、上下両面と周囲側面とを同じ封止材で封止することができるので、封止が容易に行なえるし、確実に行なえる。
【0010】
本発明の導電体において、上面材が導電膜と空間を隔てて形成されていると、該空間に別部材を配置することもできるので、例えばタッチパネルの電極として使用するときには別部材として電極を配置しても、電極としての導電体と別部材としての電極との接触をなくすことができるし、電波吸収体の抵抗膜として使用するときは該空間が誘電体として働く。また、導電膜が基材の上面に一体に形成されていると、導電膜の形成が容易で、導電膜下面の封止は該基材で行なうことができる。また、導電膜、基材、上面材のいずれもが透光性を有していると、透光性の導電体にすることができ、透光性を必要とする製品の導電体に使用することが可能となる。更に、導電膜の表面抵抗率が104Ω/□以下であると、表面抵抗率の変化が小さい低抵抗率の導電体となるので、電波吸収体や電磁波シールド体やタッチパネルなどの低い表面抵抗率を経時的に維持することが要求される導電体にも使用することができる。また、導電体に電極が設けられていて、該電極の一端が導電膜に接触していると共に他端が封止材の外側まで延出されていると、導電膜に電極を通して導通させることができるし、電極も封止されるので電極の周囲を通して導電膜にまで湿気などの外気環境の影響が及ぶことがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の具体的な実施形態を図面に基づいて詳述するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0012】
図1は本発明の一実施形態の導電体の断面図、図2は同導電体の平面図、図9(a)(b)(c)は同導電体に用いられる導電膜に含まれるカーボンナノチューブの分散状態を示す模式断面図、図10はカーボンナノチューブの分散状態を示す模式平面図である。
【0013】
図1及び図2に示す本発明の導電体A(A1)は、基材1の片面に導電膜2が一体的に積層して形成され、該導電膜2の上面及び周囲の側面が封止材3にて封止されていて、導電膜2が基材1と封止材3とで水分を含む外気との接触を遮断されるようにしてある。そして、この導電体A1においては、電極4が設けられており、電極4の一側部41が導電膜2の相対する二側面に沿って接触して設けられ、電極4の他側部42が封止材3の外方にまで延出されて外部装置に接続できるようになされている。なお、本発明の導電体Aにおいて、電極4は必ずしも必要ではない。
【0014】
上記の基材1は、メチルメタクリレートなどのアクリル樹脂、ポリエチレンやポリプロピレンやシクロポリオレフィンなどのオレフィン樹脂、ポリカーボネートやポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂などの合成樹脂、或はガラスからなり、10μmから15mm程度の厚さに形成されている。この基材1の全光線透過率を60%以上とすることにより、透光性の導電体A1を作製することができる。特に、ヘーズが10%以下のものであると透視性、特に透明の透光性導電体A1を作製でき、光拡散剤などを添加したり或は表面に微細な凹凸を付与してヘーズを50%以上にすると光拡散性の透光性導電体A1を作製することができる。また、着色剤などの添加で不透明にすれば不透明の導電材A1とすることができる。このように、導電体A1に使用する基材1は、使用する用途に合わせて適宜選択される。
【0015】
そして、屋外で使用する透光性導電体A1である場合は、紫外線吸収剤を添加して耐候性を向上させたアクリルやポリカーボネートなどが好ましく用いられる。さらに、厚みの薄い導電体A1の場合は、厚さが10〜500μmのポリエチレンテレフタレートフィルム、トリアセチルセルロース、環状ポリオレフィンなどが好ましく用いられる。また、後述する導電膜がITOなどの蒸着膜である場合は、蒸着時の温度に耐えられるポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルサルフォンなどの耐熱性フィルムが好ましく用いられる。
【0016】
上記の導電膜2は、1012Ω/□以下の導電性を有する導電性能乃至制電性能を有しており、ITOなどの金属酸化物の蒸着膜や、極細導電繊維や金属粒子や金属酸化物粒子などの導電材料を含む塗膜、或はポリピロール、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリエチレンジオキシチオフェンなどの導電性高分子などからなるものである。導電膜2の導電性は、導電体A1を使用する製品により異ならせる必要があり、導電体A1が電波吸収体用抵抗膜に使用される場合は表面抵抗率を377±30Ω/□に、電磁波シールド用導電体に使用される場合は100〜104Ω/□、好ましくは100〜103Ω/□に、画像表示装置用帯電防止導電体に使用される場合は106〜1012Ω/□、好ましくは106〜1010Ω/□に、タッチパネル用電極に使用される場合は100〜105Ω/□、好ましくは101〜104Ω/□となるように、蒸着膜や塗膜などの厚み、或は種類を選択して使用する。
【0017】
この導電膜2の表面抵抗率は、これが低抵抗率であれば変化率が僅かであっても大きく変化し、必要とする表面抵抗率を維持できなくなる恐れがある。例えば、表面抵抗率が377±30Ω/□必要な電波吸収体用の抵抗膜であれば、2倍に変化すると744Ω/□となり、電波吸収に必要な表面抵抗率の範囲を離脱してしまい、電波吸収ができなくなる。そして、3倍変化すれば一桁異なる大きな抵抗率となる。一方、表面抵抗率が106〜1012Ω/□と大きな抵抗率の範囲であればよい帯電防止用導電体であれば、例え3倍に変化しても1×107Ω/□が3×107Ω/□に変化するだけであり、同じ桁の範囲内に収まるので、ある程度の表面抵抗率の変化は許容できる。そのため、本発明は低い表面抵抗率の導電膜2に適用することが好ましく、特に104Ω/□以下の表面抵抗率を有する導電膜2であると効果が一層顕著になる。
【0018】
上記の蒸着膜からなる導電膜2は、ポリエチレンテレフタレートなどの耐熱性フィルムに酸化インジウム−酸化錫(ITO)や酸化錫や酸化亜鉛などを蒸着することで形成した薄膜であり、周知のITOが最も好ましく使用される。このITOは蒸着厚みを変えることで表面抵抗率、光学特性を変えることができ、通常103Ω/□以下の表面抵抗率を有し、全光線透過率が80%以上でヘーズが5%以下の透明導電膜2として使用される。
【0019】
また、上記の極細導電繊維や金属粒子や金属酸化物粒子などの導電材料を含む塗膜は、これらの導電材料と樹脂と溶剤とからなる導電性樹脂塗液を基材1の片面に塗布・固化して得た塗膜であり、導電材料の種類、含有量、塗膜の厚み、分散状態などを調整して、必要な導電性を得ることができる。
【0020】
上記金属粒子としては銅、金、銀、ニッケル、白金などが用いられ、金属酸化物粒子としては酸化錫、アンチモン、アンチモンドープ酸化錫、酸化亜鉛などが用いられる。また、極細導電繊維としては、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンナノワイヤー、カーボンナノファイバー、グラファイトフィブリルなどの極細長炭素繊維、白金、金、銀、ニッケル、シリコンなどの金属ナノチューブ、金属ナノワイヤーなどの極細長金属繊維、酸化亜鉛などの金属酸化物ナノチューブ、金属酸化物ナノワイヤーなどの金属酸化物などの極細長金属酸化物繊維などの、直径が0.3〜100nmで、長さが0.1〜20μm、好ましくは長さが0.1〜10μmの各繊維が用いられる。これらの導電材料は均一に分散されていることが好ましく、特に極細導電繊維は、凝集することなく分散して互いに接触して導電膜2のなかに含まれていることが好ましい。
【0021】
この極細導電繊維の中でも、カーボンナノチューブは繊維直径が0.3〜80nmと細いので、凝集することなく分散して互いに接触させることにより必要な導電性と透明性とを得ることができるので、好ましく用いられる。このカーボンナノチューブには、中心軸の周りに複数のカーボン壁を同心状に或は渦巻き状に有する多層カーボンナノチューブと、単数のカーボン壁を有する単層カーボンナノチューブとがある。前者の多層カーボンナノチューブは凝集することなく一本ずつ分離した状態で互いに接触させた状態で導電膜2に含まれるが、後者の単層カーボンナノチューブは一本ずつ分離した状態での分散は現時点では困難で、二本以上が集まって束になって、これらの束が凝集することなく一束ずつ分離して分散し互いに接触させた状態で抵抗膜2に含まれる。なお、二層ないし三層のカーボンナノチューブは一本ずつ分散している場合と束になって分散している場合とがある。さらに、単層カーボンナノチューブが一本ずつ分散している場合も本発明に含まれる。
ここで、「凝集することなく」とは、導電膜を顕微鏡で観察したときに0.5μm以上の凝集塊がないことを意味し、また、「接触」とは、極細導電繊維が現実に接触している場合と、極細導電繊維が導通可能な小間隙をあけて接近している場合の双方を意味する。
【0022】
このカーボンナノチューブの導電膜2内における分散状態を模式的に図9、図10に示す。図に示すように、カーボンナノチューブ21は一本ずつ、或は、一束ずつ分離した状態で分散してお互いに接触している。そして、導電膜2がバインダーを含むと、図9(a)に示すように、バインダーの内部に上記の分散状態で分散して互いに接触しているか、或は、図9(b)に示すように、カーボンナノチューブ21の一部がバインダーの表面から突出乃至露出し、他の部分乃至他のカーボンナノチューブ21がバインダー内に入り込み上記分散状態で分散して互いに接触しているか、或は、一部のカーボンナノチューブ21は図9(a)のようにバインダーの内部に、他の一部は図9(b)に示すようにバインダーの表面から突出乃至露出して上記分散状態で分散して互いに接触している。また、導電膜2がバインダーを含まないと、図9(c)に示すように、カーボンナノチューブが上記分散状態で分散して互いに接触して、カーボンナノチューブの3次元構造の層となっている。
【0023】
そして、これらのカーボンナノチューブ21の分散状態を平面から見た状態を模式的に図10に示してある。この図10から理解できるように、カーボンナノチューブ21は多少湾曲した状態で、一本ずつ或は一束ずつ分散して分離し、互いに複雑に絡み合うことなく、即ち凝集することなく、単純に交差した状態で、導電膜2の内部乃至表面に分散し、互いに交差して導通している。このように、カーボンナノチューブ21が湾曲して接触しているので、このカーボンナノチューブ21を含む導電膜2は、曲げなどの二次加工を行なっても、曲がったカーボンナノチューブ21が伸びたり、或は接触しながらずれたりするので、曲率半径が1mm以下の極端に小さな曲率半径に曲げたり、成形倍率が10倍以上の極端な成形倍率にしなければ、その表面抵抗率は低下することがほとんどない。
【0024】
カーボンナノチューブなどの導電材料を含む導電膜2に用いるバインダーとしては、透明な熱可塑性樹脂である塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、ニトロセルロース、塩素化ポリエチレン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、フッ化ビニリデンなどが、また、熱や紫外線や電子線や放射線で硬化する硬化性樹脂であるメラミンアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、アクリル変性シリケートなどのシリコーン樹脂などが使用される。
【0025】
この導電膜2に含ませるカーボンナノチューブの含有量などを変えることにより、表面抵抗率や光学特性を変えることができる。例えば、透明の電波吸収体用抵抗膜に必要な表面抵抗率377±30Ω/□、全光線透過率70%以上、ヘーズ10%以下の導電膜2を得るためには、その目付け量を30〜450mg/m2となるように含有量や厚さを調整する。同様に、透明の電磁波シールド用電極に必要な表面抵抗率104Ω/□以下、全光線透過率40%以上、ヘーズ10%以下の導電膜2を得るためには目付け量を1〜450mg/m2となるように、透明の帯電防止用導電体に必要な表面抵抗率106〜1012Ω/□、全光線透過率70%以上、ヘーズ10%以下の導電膜2を得るためには目付け量を0.03〜450mg/m2となるように、透明のタッチパネル用電極に必要な表面抵抗率100〜105Ω/□、全光線透過率70%以上、ヘーズ10%以下の導電膜2を得るためには目付け量を3〜450mg/m2となるように、導電膜2に含まれるカーボンナノチューブの含有量や厚さを調整する。
なお、上記目付け量は、導電膜2を電子顕微鏡で観察し、その平面面積に占めるカーボンナノチューブの面積割合を測定し、これに電子顕微鏡で観察した厚みとカーボンナノチューブの比重(グラフィトの文献値2.1〜2.3の平均値2.2を採用)を掛けることで計算した値である。
【0026】
上記導電膜2の上面と周囲側面とを封止している封止材3は、導電膜2と水分を含む外気との接触を遮断して水分の進入を防止し、導電膜2の表面抵抗率の経時的な変化を抑制している。図1に示す導電膜2は、その下面が基材1で覆われているので該基材1が封止材を兼備して、下面からの水分の進入は防止されるので、別の封止材で封止する必要はない。しかし、導電膜2の上面と周囲側面は封止材3で封止して上面及び周囲側面からの水分の侵入を防止する必要がある。そのため、基材1及び封止材3にはガスバリヤー性に優れたものが好ましく用いられる。
【0027】
このような封止材3としては、例えば、ポリウレタン系、エチレン−酢酸ビニル共重合体系、エチレン−モノカルボン酸ビニルエステル共重合体系、エチレン−アクリル酸ビニルエステル共重合体系などのホットメルトシートや、シリコーン系、エポキシ系、アクリル系、オルガノポリシロキサン系、カルバミン酸エステル系、ビニル系、加水分解性シリル系、シリル化ウレタン系、ポリオキシアルキレン重合体などの硬化性シーリング剤や、合成樹脂と溶剤などからなる樹脂塗液などが使用形成されてなるものである。これらよりなる封止材3の厚さは、限定されるものではないが、水分の浸透を防止できる0.1μm以上、好ましくは0.1μm〜5mm、更に好ましくは5μm〜2mm程度とされる。
【0028】
上記の封止材3のうち、比較的穏やかな加熱条件で軟化溶融して粘着性ないし接着性を発現して封止性能に優れるポリウレタン系ホットメルトシート、或は室温から100℃未満の温度領域で粘着性ないし接着性を発現して硬化し優れた封止性能を発揮するシリコーン系シーリング剤、或は基材1と同じか相溶性を有する熱可塑性樹脂を含む樹脂塗液が好ましく使用される。そして、封止導電体A1に透明性乃至透光性を要求される場合は、導電膜表面の封止材3に無色透明乃至透光性のものが用いられるが、封止導電体A1が不透明であってもよい場合は透明でも半透明でも不透明でもよい。このような透明な封止材3は上記のポリウレタン系ホットメルトシートやシリコーン系シーリング剤や透明性熱可塑性樹脂塗液が好ましく用いられる。さらに、導電膜2の周囲側面の封止材3は、導電体A1が透明でも透光性でも不透明であっても、不透明なものを使用できるが、導電体A1が透明性乃至透光性であれば上記の無色透明なものを用いることが好ましい。
【0029】
更に、電極4は銅やアルミニウムや金、銀、ステンレスなどの金属薄板、金属箔が使用される。電極4の一側部41は、例えば図2に示すように、導電膜2の相対する二側端(上下の側部)に重ね合せて接触接合させられている。そして、電極4の他側部42は封止材3から外方に延出されていて、外部装置に接続できるようになされている。この電極4の周囲も封止材3にて封止されていて、電極4と封止材3との界面からの水分の浸透を防止するようにしてある。この電極4は、外部装置と接続する必要のない場合は設ける必要はない。
【0030】
このようにして得られた導電体A1、特にカーボンナノチューブを含む塗膜からなる導電膜2が用いられた導電体A1は、その全光線透過率を30%以上とすることができるので、例えば、透光性を必要とする透光性電波吸収体用の抵抗膜として、また透光性電磁波シールド用の電極として、また透光性帯電防止用の導電体として、更には透明タッチパネル用の電極として用いることができる。
【0031】
以上のような導電体A1は、例えば、以下の方法で製造することができる。まず、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどの基材1の片面の四方周囲端部を除く中央箇所に、酸化インジウム−酸化錫を蒸着してITOの薄膜を形成するか、或は、カーボンナノチューブなどの導電材料を含む塗液を塗布して塗膜を形成して、必要とする表面抵抗率を有する導電膜2を作製する。そして、この導電膜2の相対する側端部の上面に銅箔などの電極4の一側部41を導電性接着剤で接着する。さらに、導電膜2の上面と当該導電膜2が形成されなかった基材1の四方周囲端部(周囲側面)を覆うようにホットメルトシートを重ね合せると共に、電極4と基材1との間にもホットメルトシートを重ね合せた後、加熱加圧することでホットメルトシートを軟化溶融させて、導電膜2の上面と周囲側面とをホットメルトシートの封止材3にて封止することで製造することができる。
【0032】
他の方法は、上記のようにして得られた導電膜2の上面と周囲側面、及び電極とポリエチレンテレフタレートとの隙間にシーリング剤や樹脂塗液などを塗布或は注入して固化させ、導電膜2の上面と周囲側面とをシーリング剤や樹脂塗液などで形成された塗膜の封止材3にて封止することでも製造することができる。
【0033】
このようにして得られた電極体A1は、導電膜2の下面はポリエチレンテレフタレートなどの基材1にて覆われて封止されると共に、上面と周囲側面はホットメルトシート、シーリング剤或は樹脂塗液などの塗膜からなる封止材3にて封止されているので、導電膜2の上下両面と周囲側面との全面・全周が封止されて、導電膜2が外気から封止されて外気中の水分の浸透などによる影響をなくし、表面抵抗率が経時的に変化することを抑制することができる。この経時的な表面抵抗率の変化は、帯電防止用導電体などのように106〜1012Ω/□であるときは100倍変化しても使用可能であるが、初期の表面抵抗率をできるだけ保持することが好ましく、10倍以下にすべきである。しかし、表面抵抗率が低くなればなるほど変化が大きく影響するので、できるだけ小さいことが必要である。例えば、104Ω/□以下の低抵抗の表面抵抗率が必要なときは、初期の表面抵抗率の±30%の範囲に抑制することが好ましく、更に好ましくは±10%、最も好ましくは±8%の範囲にすることが望ましい。また、カーボンナノチューブを含む導電膜2であると、これを曲げなどの二次加工しても表面抵抗率の低下が少ないので、基材1として屈曲可能な熱可塑性樹脂を用いることで、二次加工可能な導電体A1とすることができる。
この実施形態では、電極4を導電膜2の上面に接触接続したが、導電膜2の下面に接触接続してもよい。
【0034】
図3は本発明の他の実施形態に係る導電体の断面図を示す。
この導電体A(A2)は、基材1と導電膜2と上面材5が一体に積層されて形成され、導電膜2の周囲の側面が水分を含む外気から封止材3にて封止されている。この図3においては、導電膜2の四周周囲に張り出している基材1と上面材5との隙間に封止材3が配置されて封止している。
【0035】
上面材5としては、前記導電体A1の基材1と同じ可塑性樹脂や硬化性樹脂が用いられるが、特に透明樹脂が好ましく用いられる。そして、その厚さも基材1と同じとされている。しかし、基材1と異なる樹脂を用いたり、基材1と異なる厚さとしても勿論よい。そして、この上面材5は、基材1と同様に導電膜2よりも大きな大きさとされていて、導電膜2の四周から周囲にはみ出るようになされている。そのため、導電膜2から四周周囲にはみ出た基材1と上面材5との隙間に、封止材3が介在若しくは注入されて隙間を充填していて、導電膜2の四周側面を封止していると同時に、基材1と上面材5とを密着させている。
その他の構成である、基材1、導電膜2、封止材3、電極4は前記導電体A1と同じであるので、同一符号を付して説明を省略する。
【0036】
この導電体A2は、例えば、次のようにして製造される。
まず、基材1の片面の四周周囲端部を除く中央箇所に、前記と同様にして導電膜2を形成して、基材1が導電膜2の四周からはみ出るようにする。そして、電極4も同様に配置した後に当該電極4の下面にホットメルトシートを配置し、更に基材1の四方周囲の表面即ち当該導電膜2が形成されなかった基材1の四方周囲端部(周囲側面)の上面に幅狭のホットメルトシートを配置し、更に基材1と同じ大きさの上面材5で導電膜2を覆うと同時に該導電膜2からはみ出た基材1の四方周囲に重ね合わせた後、加熱加圧することでホットメルトシートを軟化溶融させて、導電膜2の周囲側面外方で、基材1と上面材5との間隙をホットメルトシートの封止材3にて封止することで製造することができる。
【0037】
また、ホットメルトシートに代えて、導電膜2を中央箇所に形成した基材1の上面に、上記と同様に表面材5を配置し、導電膜2の四周側面外方の隙間(基材1と上面材5との隙間)に、シーリング剤や樹脂塗液を注入して固化させ、導電膜2の周囲の側面外方で、基材1と上面材5との間隙をシーリング剤乃至樹脂塗液で形成された塗膜の封止材3にて封止すると同時に、基材1と上面材5とを密着することでも製造することができる。
【0038】
このようにして得られた電極材A2は、導電膜2の下面が基材1で覆われて封止され、また上面が上面材5で覆われて封止され、導電膜2の周囲側面がホットメルトシートやシーリング剤或は樹脂塗液などの塗膜の封止材3にて封止されているので、導電膜2が水分を含む外気から封止されていて水分の浸透などによる影響がなくなり、表面抵抗率が経時的に変化することを抑制することができる。また、カーボンナノチューブを含む導電膜2であると、これを曲げなどの二次加工しても表面抵抗率の低下が少ない導電体A2とすることができる。
【0039】
この実施形態において、導電膜2は基材1に塗布して形成されているが、上面材5の下面に形成し、この面に基材1を重ね合せて導電膜2の周囲を封止した導電体A2としてもよい。また、電極4を導電膜2の下面に接触接続してもよい。
【0040】
図4は本発明の更に他の実施形態に係る導電体の断面図を示す。
この導電体A3は、基材1と導電膜2と上面材5とがこの順序で一体に積層されて形成され、導電膜2の周囲で基材1と上面材5とが接合されており、該接合部分15で導電膜2の周囲側面が封止されているものである。従って、この接合部分15が周囲側面の封止作用をなしている。
【0041】
基材1と上面材5とは、前記導電体A2に用いられたそれぞれの樹脂と同様の樹脂が用いられる。これらが共に熱可塑性樹脂であれば、加熱して溶着したり、熱溶接したり、接着剤で接着したりして、該溶着部分或は接着部分で接合することができる。また、両者が熱可塑性樹脂であっても相溶性が悪かったり、一方若しくは両方が硬化性樹脂或はガラスであれば、接着剤や粘着剤を用いたりして接合する。
その他の構成である導電膜2、電極4は、前記導電体A1に使用したものと同じものが使用されるので、同一符号を付して説明を省略する。
【0042】
この導電体A3は、例えば、次のようにして製造される。
まず、アクリル系フィルムなどの基材1の片面の四周周囲端部を除く中央箇所に、前記と同様にしてITO薄膜や導電材料塗膜の導電膜2を形成する。そして、該導電膜2の上面に、この導電膜2の四周からはみ出る大きさのアクリル系フィルムを配置し、上下のアクリル系フィルムの基材1と上面材5とを、導電膜2の四周周囲からはみ出た周囲同士を加熱や溶接や接着や粘着などして溶着接合或は粘接着接合したりすることで製造することができる。
【0043】
このようにして得られた導電体A3は、導電膜2の下面が基材1により封止され、上面が上面材5により封止され、周囲側面が基材1と上面材5との接合部分15により封止されているので、導電膜2が水分を含む外気から封止されていて水分の浸透などによる影響がなくなり表面抵抗率が変化することが抑制される。また、カーボンナノチューブを含む導電膜2であると、これを曲げなどの二次加工しても表面抵抗率の低下がない。
この実施形態において、導電膜2は基材1に塗布して形成されているが、上面材5の下面に導電膜2を形成し、この導電膜下面に基材1を重ね合せて導電膜2の周囲を封止した導電体A3としてもよい。また、電極4を導電膜2の下面に接触接続してもよい。
【0044】
図5は本発明の更に他の実施形態に係る導電体の断面図を示す。
この導電体A4は、基材1や上面材5を使用することなく、導電膜2の上下両面及び周囲側面が全て封止材3にて封止されているものである。該封止材3は前記のホットメルトシートや、シーリング剤又は樹脂塗液などによる塗膜などからなるもので、ホットメルトシートで上下両面及び周囲を封止したり、シーリング剤や樹脂塗液を導電膜2の上下と周囲に塗布・固化して塗膜を形成したりしたものである。
この導電膜2と封止材3は、前記導電体A1に使用したものと同じものが使用されるので、同一符号を付して説明を省略する。また電極4も同じであるので説明を省略する。
【0045】
この導電体A4は、例えば、次のようにして製造される。まず、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどの剥離性フィルムの片面に導電材料含有塗膜を形成し、この塗膜を剥離することで導電膜2を作製する。そして、該導電膜2の上下両面に、この導電膜2の四周からはみ出る大きさのホットメルトシートをそれぞれ配置した後、加熱加圧してホットメルトシートを軟化溶融させて、導電膜2の上面及び下面をホットメルトシートの封止材3で封止すると共に、導電膜2の四周からはみ出た上下のホットメルトシート同士を溶着して導電膜2の周囲を溶着部分で封止することで製造することができる。
【0046】
また、上記のようにして得られた導電膜2の片面に液状シーリング剤や樹脂塗液などを塗布し固化させて塗膜を形成した後、この塗膜付き導電膜を上下にひっくり返し、塗膜が形成されていない導電膜2の上面に液状シーリング剤や樹脂塗液などを塗布すると共に導電膜2よりもはみ出るように塗布し、固化させて塗膜を形成させることで、導電膜2の上下両面及び周囲側面に塗膜を形成し、この塗膜の封止材3にて封止しても製造することができる。
【0047】
このようにして得られた導電体A4は、導電膜2の上下両面及び周囲側面がホットメルトシートや塗膜の封止材3で封止されているので、導電膜2が水分を含む外気から封止されていて水分の浸透などによる影響がなくなり表面抵抗率が変化することがない。また、カーボンナノチューブを含む導電膜2であると、これを曲げなどの二次加工しても表面抵抗率の低下がない。
【0048】
図6は本発明の更に他の実施形態に係る導電体の断面図を示す。
この導電体A5は、基材1と導電膜2とが同じ大きさで一体に積層されて形成され、この基材1と導電膜2の上下両面及び周囲側面が、ホットメルトシートや熱可塑性樹脂シートや塗膜などの封止材3にて封止されているものである。
【0049】
基材1と導電膜2は、前記封止導電体A1に使用した基材1と導電膜2とが使用されるので説明を省略する。また、封止材3は、前記実施形態の導電体に使用されたホットメルトシートや熱可塑性樹脂シートやシーリング剤塗膜や樹脂塗液塗膜が使用されて、導電膜2と基材1の上下両面と周囲側面とがこれらのシートや塗膜で覆われて封止されている。なお、基材1と導電膜2とは必ずしも同じ大きさにする必要はなく、基材1が導電膜2より大きくても封止材3でこれらを覆って封止すればよい。
【0050】
この導電体A5は、例えば次のようにして製造される。
即ち、基材1の上面にITOを蒸着したり、導電材料含有塗液を塗布して、基材1と導電膜2とが同じ大きさの導電積層体を形成する。この導電積層体の上下両面に、これより大きくて四周側面からはみ出る大きさのホットメルトシートをそれぞれ重ね合わせ、これを加熱加圧して、導電積層体の上下をホットメルトシートでそれぞれ覆って封止すると共に導電積層体の周囲で且つはみ出た上下のホットメルトシート同士を溶着し該溶着部分で封止することにより、上下両面及び周囲側面が封止された導電体A5を製造することができる。
【0051】
また、上記ホットメルトシートに代えて、熱可塑性合成樹脂シートを用いて、導電膜2の周囲側面からはみ出た上下の熱可塑性合成樹脂シート同士を溶着乃至接着し該溶接着部分で封止することによっても製造することができる。
更に、上記ホットメルトシートに代えて、シーリング剤や樹脂塗液を塗布・固化して、導電膜2の上下両面及び周囲側面を封止することで製造してもよい。
【0052】
このようにして得られた導電体A5においても、前記導電体A1、A2、A3、A4と同様に、水分の浸透などによる影響がなくなり表面抵抗率が変化することがないし、カーボンナノチューブを含む導電膜2であると、これを曲げなどの二次加工しても表面抵抗率の低下がない、という効果を有する。
【0053】
図7は本発明の更に他の実施形態に係る導電体の断面図を示す。
この導電体A6は、基材1と導電膜2と上面材5とがこの順序で重ね合せ若しくは一体に積層され、この四周側端面に封止材3が形成されていて、導電膜2の上下両面が上面材5と基材1とで封止されると共に周囲側面が封止材3にて封止されているものである。
【0054】
この導電体A6において、基材1と導電膜2と上面材5とは同じ大きさに形成されていて、これらの四周側端面は略同じ面に位置している。そして、この同じ位置にある四周側端面に、ホットメルトシートやシーリング剤や樹脂塗液などを用いて封止材3を形成してあるので、封止材3は四周側端面に密着して形成され、導電膜2を水分を含む外気から封止することができる。なお、基材1と導電膜2と上面材5とは大きさが異なってもよいが、この場合は側端面に形成する封止材3を厚くするか、端面に沿って封止材3を形成すればよい。
その他の構成である、基材1、導電膜2、上面材5、電極4は前記導電体A2と同じであるので、同一符号を付して説明を省略する。
【0055】
この導電体A6は、例えば、次のようにして製造できる。
まず導電体A2の場合と同様にして製造する際に、基材1と導電膜2と上面材5とを同じ大きさとなるように作製する。そして、基材1と導電膜2と上面材5の略同じ面となっている各四周側端面にホットメルトシートを配置して加熱加圧して、導電体A6の周囲に封止材3を形成することで製造できる。また、ホットメルトシートに代えてシーリング剤や樹脂塗液を塗布、硬化して封止材3を形成することによっても製造できる。
【0056】
このようにして得られた電極材A6は、導電膜2の上下両面が上面材5、基材1で覆われ、導電膜2の周囲側端面は封止材3にて封止されているので、水分を含む外気から封止されていて水分の浸透などの影響が作用せず、表面抵抗率が変化することが抑制される。また、カーボンナノチューブを含む導電膜2であると、これを曲げなどの二次加工しても表面抵抗率の低下がない。さらに、封止材3は導電体A6の四周側端面の全体を封止しているので、封止材3が側端面に形成されても剥離することがない。
なお、この実施形態では導電膜2を基材1に形成したが、上面材5の下面に形成してもよい。
【0057】
図8は本発明の更に他の実施形態に係る導電体の断面図を示す。
この導電体A7は、基材1と導電膜2と上面材5とからなり、基材1と上面材5とが、導電膜2の周囲で封止材3にて封止されて接合されている点は前記導電体A2と同じであるが、導電膜2と上面材5とが空間6を隔てて形成されている点で異なっている。
【0058】
空間6には、当該空間部分に他部材を挿入/介在させることができ、例えば上面材5の下面に導電膜が形成されると、導電膜同士が対極するこことなるので、これらが接触しないように空間6を設けておくことが必要となる。また、該空間6自体を誘電体として利用することもできるので、電波吸収体用導電体と用いると他の誘電体の厚さを薄くすることができる。この空間6を設けるには、周囲の封止材3の厚みを厚くする必要があり、厚みの厚いホットメルトシートを使用したり、シーリング剤や樹脂塗液による塗膜を厚く塗布・形成したり、或は、スペーサを用いて接合或は接着したりして、導電膜2と上面材5とが間を隔てて形成されるようにする。そして、このような空間6があっても、当該空間6内の水分は導電膜2に浸透するかもしれないが、当該空間6は狭いので水分の量が少なくて、例え表面抵抗率が変化しても実質的な変化はない。そして、空間6は水分を含む外気から封止してあり、外気の水分が空間6へ、延いては導電膜2へ浸透することはない。そのため表面抵抗率の変化を抑制することができる。なお、空間6内に乾燥剤を内在させて湿気を取り除くこともできる。
その他の構成である基材1、導電膜2、上面材5、電極4は前記各導電体と同じであるので、同じ符号を付して説明を省略する。
【0059】
この導電体A7は、例えば、次のようにして製造される。
即ち、基材1の片面の四方周囲端部を除く中央箇所に、前記と同様にしてITO薄膜や導電材料塗膜の導電膜2を形成する。そして、該導電膜2の周囲で且つ当該導電膜2が形成されなかった基材1の四方周囲端部に導電膜2より厚さの厚いスペーサを配置し、更に基材1と同じ大きさの上面材5を導電膜2とスペーサを覆うように覆い、スペーサの上面を上面材5に、また下面を基材1に接着させて、空間6を有するように導電膜2の周囲を封止することで製造できる。この場合、スペーサが封止材3となる。
また、スペーサに代えて、厚みの厚いホットメルトシートを用いて加熱溶着させてもよいし、シーリング剤或は樹脂塗液を厚く塗布して厚い塗膜を形成して、基材1と上面材5との間に空間6を有するように接合して封止してもよい。
このようにして得られた導電体A7においても、水分の浸透などによる影響がなくなり表面抵抗率が変化することがないし、カーボンナノチューブを含む導電膜2であると、これを曲げなどの二次加工しても表面抵抗率の低下がない、という効果を有する。
【0060】
図11は、本発明の導電体Aを用いた電波吸収体の断面図を示す。
この電波吸収体Bは、本発明の導電体Aの表面側に表面保護体B1を、裏面側に誘電体B2と電波反射体B3と裏面保護体B4とを積層一体化したものである。上記表面保護体B1、B4は合成樹脂で作製されて表面及び裏面を衝撃や紫外線から保護し、誘電体B2はガラスや合成樹脂で作製されてλ/4電波吸収体理論(λ:誘電体B2内の電波の波長)に基づく厚さを有し、電波反射体B3は導電メッシュ材、金属メッシュ材、導電膜で作製され電波を反射させるものである。
【0061】
このような構成の電波吸収体Bにおいて、導電体Aは377±30Ω/□の表面抵抗率を有する必要があり、この範囲の表面抵抗率を有しないと電波吸収しなくなる。そのため、設置後においても上記範囲の表面抵抗率を有する必要があるが、上記の如く本発明の導電体Aは上下両面及び周囲側面が封止材で封止されているので、水分を含む外気の影響を排除して表面抵抗率の変化をなくして377±30Ω/□に保ち、長期に亘り電波吸収性能が維持される。
【0062】
図12は、本発明の上記導電体Aを用いたタッチパネルの断面図を示す。
このタッチパネルCは、本発明の導電体A7を用いてあり、導電体A7の空間6となっている上面材5の下面に導電膜(電極)2を形成してなるものである。このようにすることにより、基材1とその上面の導電膜2とで下電極体C1を、表面材5とその下面の導電膜2とで上電極体C2とをそれぞれ構成し、これらをドッドスペーサC3で対極させ、下電極体C1の基材1と上電極体C2の表面材5との隙間周囲(導電膜2の周囲側端面)を封止材3にて封止してなるものである。
このような構成のタッチパネルであっても、抵抗膜2の表面抵抗率を100〜105Ω/□に保っておく必要があるが、この抵抗膜2は基材1と上面材5と封止材3にて封止されているので表面抵抗率が変化することがなくて、上記表面抵抗率を維持できて、タッチパネルとしての機能を有することができる。
【0063】
図13は、本発明の上記導電体Aを用いた画像表示装置の断面図を示す。
この画像表示装置Dは、液晶パネルD1と光源D2と筐体D3とからなり、本発明の導電体Aを液晶パネルD1の表面に配置すると共に、液晶パネルD1と光源D2との間にも配置しているものである。この画像表示装置Dの表面に配置した導電体Aが106〜1012Ω/□の表面抵抗率を有しておれば帯電防止機能を発揮して画像表示装置Dの画像表面に塵楳が付着せず、また100〜104Ω/□の表面抵抗率を有しておれば電磁波シールド機能を発揮して画像表示装置Dからの電磁波の放出を防止する。さらに、この導電体Aはその四周を内側に折り曲げて金属筐体D3に接触してアースなどを取り易くしている。このように四周を折り曲げても、導電膜2がカーボンナノチューブで作製されていると表面抵抗率の変化(増加)がなくて帯電防止性能を維持できる。
一方、液晶パネルD1と光源D2との間に配置した導電体Aも100〜104Ω/□の表面抵抗率を有しておれば電磁波シールド機能を発揮し、106〜1012Ω/□の表面抵抗率を有しておれば帯電防止機能を発揮する。更に、基材1若しくは上面材5が光拡散性を有すれば光拡散性帯電防止体或は光拡散性電磁波防止体となる。
【0064】
以上に詳述したように、本発明の導電体は上下両面と周囲が封止されているので、導電膜と水分を含む外気とが遮断されて水分の悪影響が作用せず、導電膜の表面抵抗率の変化(増加)を防止でき、初期に有した表面抵抗率を維持することができる。そのため、電波吸収体、タッチパネル、電磁波シールド体、帯電防止体などの抵抗膜、電極シールド用導電体、帯電防止導電体に使用でき、特に104Ω/□以下の表面抵抗率を必要とする導電膜として有用である。
【0065】
以下実施例に基づいて具体的に説明する。
(実施例1)
溶媒としてのメチルアルコール/水混合物(混合比3:1)中に、極細導電繊維である単層カーボンナノチューブ(文献Chmical Physics Letters、323(2000)P580−585に基づき合成したもの、直径1.3〜1.8μm)と分散剤としてのポリアルキレンエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体を加えて均一に混合、分散させ、単層カーボンナノチューブを0.003質量%、分散剤を0.05質量%含む塗液を調整した。
【0066】
この塗液を、市販の厚さ100μmのポリメチルメタクリレートフィルム1の表面に、単層カーボンナノチューブの目付け量が約94mg/m2となるように塗布、乾燥して表面抵抗率が385Ω/□の透明な導電膜2をポリメチルメタクリレートフィルムの片面に備えた透明な導電膜形成フィルム12(図14(a)(b)参照)を作製した。そして、この導電膜形成フィルム12を100×110mmの大きさに切断し、その相対向する2辺に一対の帯状の銅箔の電極4(幅5mm,長さ150mm)を100mmの辺に沿って導電接着剤で接着して、導電膜の大きさが100×100mmの電極付き導電膜形成フィルムを作製した。
【0067】
図14(a)(b)に示すように、この電極付き導電膜形成フィルムの上下両面に、ポリウレタンよりなる120mm角のホットメルトシート3、3(厚さ1mm)を重ね、更にその上下に133mm角のポリカーボネート板10、50(厚さ2mm)を重ねて、これを200mm角の艶板で上下から挟み、125℃で加熱することにより、ホットメルトシートを軟化溶融させて電極付き導電膜形成フィルムの周囲及び上下両面をホットメルトシート3、3の封止材で封止すると共に、ポリカーボネート板10、50で被覆・封止した実施例1の導電体を作製した。
この導電体について、導電膜の表面抵抗率の経時的変化を室温23℃、湿度50%の恒温恒室の室内にて調べた。その結果を図15に示す。
【0068】
(実施例2)
実施例1で調製した塗液を、単層カーボンナノチューブの目付け量が約94mg/m2となるように、100×110mmの大きさのポリメチルメタクリレートフィルム(厚さ0.1mm)の片面に塗布、乾燥して、表面抵抗率が375Ω/□の透明な導電膜を形成し、この導電膜の上面に実施例1で使用した銅箔の電極を接着して電極付き導電膜形成フィルムを作製した。
【0069】
この電極付き導電膜形成フィルムを、133mm角のポリカーボネートシート板(厚さ2mm)の上に市販のセロファンテープで固定した後、電極付き導電膜形成フィルムの周りに、高さが10mm、一辺の長さが120mmの方形枠をセロファンテープで作り、この方形枠で囲まれた電極付き導電膜形成フィルムの導電膜の上に、シリコーン系のポッティング用液状シーリング剤(GE東芝シリコーン(株)製のTSE3033)を滴下し、80℃で3時間硬化させて、電極付き導電膜形成フィルムの周囲と導電膜の上面を厚さ0.2mmの粘着性のあるゴム状のシリコーン系シーリング剤で封止した実施例2の導電体を得た。
この導電体について、実験1と同様に、導電膜の表面抵抗率の経時的変化を調べた。その結果を図15に示す。
【0070】
(比較例1)
比較のために、実施例2で作製した電極付き導電膜形成フィルム(表面抵抗率375Ω/□)について、実施例1と同様に、その導電膜の表面抵抗率の経時的変化を調べた。その結果を図15に示す。
【0071】
図15のグラフからわかるように、封止していない比較例1の導電膜形成フィルムは、表面抵抗率が日数の経過にしたがって漸増し、5日経過で30Ω/□増加し、11日経過で50Ω/□増加し、20日経過で90Ω/□増加し、26日経過では110Ω/□も増加していていることがわかった。これが電波吸収体用の抵抗膜であれば、11日経過後には425Ω/□となり、これ以降には電波が吸収されないこととなる。これに対して、導電膜形成フィルムの表面と周囲をホットメルトシートにて封止した実施例1、導電膜形成フィルムの表面と周囲をシーリング剤にて封止した実施例2の各導電体は、日数が経過しても表面抵抗率が10Ω/□以下の範囲で増減していて、略一定していて変化することが極めて少なく、封止により表面抵抗率の変化(増加)が確実に防止できていることがわかった。従って、表面抵抗率が変化しても361〜385Ω/□の範囲であり電波吸収体用導電体として使用しても機能が発揮することがわかった。
【0072】
(実施例3)
実施例1で調製した塗液を、単層カーボンナノチューブの目付け量が約94mg/m2となるように、80×70mmの大きさのポリカーボネートシート(厚さ2mm)の片面に塗布・乾燥して、表面抵抗率が372Ω/□の透明な導電膜を形成し、この導電膜の上面に長さ90mm、幅5mmの銅箔の電極を70mmの辺に沿って導電接着剤で接着して、導電膜の大きさが70×70mmの電極付き導電膜形成シートを作製した。
【0073】
この電極付き導電膜形成シートの上に、前記と同じ大きさのポリカーボネートシート(厚さ2mm)を重ね合せ、この重ね合せ体の四周側端面に東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製シリコーン系シーリング剤(SE960)を塗布、硬化して、導電膜の上下両面がポリカーボネートシートで封止されると共に周囲側面がシリコーン系シーリング剤の封止材で封止、接合された実施例3の導電体を得た。
【0074】
この実施例3の導電体を、温度60℃、湿度90%と一定に保たれた恒温恒湿器(タバイエスペック社製EY−101)の中に放置して、表面抵抗率の変化を調べた。その結果、表面抵抗率は略一定し、500時間経過後においても375Ω/□と、3Ω/□の増加しかみられなかった。
【0075】
(比較例2)
比較のために、実施例3で作製した電極付き導電膜形成シート(表面抵抗率372Ω/□)について、実施例3と同様に、恒温恒湿器中で表面抵抗率の経時的変化を調べた。その結果、表面抵抗率は時間経過と共に増加し、500時間経過後には1320Ω/□となり、948Ω/□も増加していた。
【0076】
このように、温度60℃、湿度90%と過酷な条件下においても、上下面と周囲を封止した実施例3の導電体は表面抵抗率が略一定していたが、封止していない比較例2の導電体は表面抵抗率が増加することがわかった。また、この実施例3から、その周囲側面を封止することによっても、表面抵抗率の変化を抑制できることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の一実施形態に係る導電体の断面図である。
【図2】上記実施形態の平面図である。
【図3】本発明の他の実施形態を示す導電体の断面図である。
【図4】本発明の更に他の実施形態を示す導電体の断面図である。
【図5】本発明の更に他の実施形態を示す導電体の断面図である。
【図6】本発明の更に他の実施形態を示す導電体の断面図である。
【図7】本発明の更に他の実施形態を示す導電体の断面図である。
【図8】本発明の更に他の実施形態を示す導電体の断面図である。
【図9】(a)(b)(c)は導電膜内のカーボンナノチューブの分散状態を示す模式断面図である。
【図10】導電膜のカーボンナノチューブの分散を平面から見た模式平面図である。
【図11】本発明の導電体を使用した電波吸収体の断面図である。
【図12】本発明の導電体を使用したタッチパネルの断面図である。
【図13】本発明の導電体を使用した画像表示装置の断面図である。
【図14】(a)は実施例の電極付き導電膜形成フィルムの分解側面図であり、(b)は同電極付き導電膜形成フィルムの平面図である。
【図15】導電膜の表面抵抗率の経時変化を示すグラフである。
【符号の説明】
【0078】
1 基材
2 導電膜
3 封止材
4 電極
5 上面材
6 空間
A 導電体
B 電波吸収体
C タッチパネル
D 画像表示装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の少なくとも片面に導電膜が形成されていると共に、該導電膜の上面及び周囲が水分を含む外気から封止材にて封止されていることを特徴とする導電体。
【請求項2】
基材と導電膜と上面材とがこの順で形成されていると共に、導電膜の周囲が水分を含む外気から封止材にて封止されていることを特徴とする導電体。
【請求項3】
基材と導電膜と上面材とがこの順で形成されていると共に、導電膜の周囲において基材と上面材とが接合されて、水分を含む外気から封止されていることを特徴とする導電体。
【請求項4】
導電膜の上下両面及び周囲が水分を含む外気から封止材にて封止されていることを特徴とする導電体。
【請求項5】
上面材が導電膜と空間を隔てて形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の導電体。
【請求項6】
導電膜が基材の上面に一体に形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の導電体。
【請求項7】
導電膜、基材、上面材のいずれもが透光性を有していることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の導電体。
【請求項8】
導電膜の表面抵抗率が104Ω/□以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の導電体。
【請求項9】
導電体に電極が設けられていて、該電極の一端が導電膜に接触していると共に他端が封止材の外側まで延出していることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の導電体。
【請求項1】
基材の少なくとも片面に導電膜が形成されていると共に、該導電膜の上面及び周囲が水分を含む外気から封止材にて封止されていることを特徴とする導電体。
【請求項2】
基材と導電膜と上面材とがこの順で形成されていると共に、導電膜の周囲が水分を含む外気から封止材にて封止されていることを特徴とする導電体。
【請求項3】
基材と導電膜と上面材とがこの順で形成されていると共に、導電膜の周囲において基材と上面材とが接合されて、水分を含む外気から封止されていることを特徴とする導電体。
【請求項4】
導電膜の上下両面及び周囲が水分を含む外気から封止材にて封止されていることを特徴とする導電体。
【請求項5】
上面材が導電膜と空間を隔てて形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の導電体。
【請求項6】
導電膜が基材の上面に一体に形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の導電体。
【請求項7】
導電膜、基材、上面材のいずれもが透光性を有していることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の導電体。
【請求項8】
導電膜の表面抵抗率が104Ω/□以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の導電体。
【請求項9】
導電体に電極が設けられていて、該電極の一端が導電膜に接触していると共に他端が封止材の外側まで延出していることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の導電体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2006−272876(P2006−272876A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−98994(P2005−98994)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000108719)タキロン株式会社 (421)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000108719)タキロン株式会社 (421)
【Fターム(参考)】
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