説明

導電性ゴムローラ及び転写ローラ

【課題】抵抗値の調整が容易で且つ、被帯電部材への汚染が少なく、電気的変動やセット性(圧縮永久歪)に優れ、低コストな導電性ゴムローラ及び転写ローラを提供することである。
【解決手段】電子写真プロセスに使用される導電性ゴムローラにおいて、
該導電性ゴムローラのゴム成分が、少なくとも
アクリロニトリル含有量15質量%以上25質量%以下、且つ、重量平均分子量(Mw)が50万以上100万以下のアクリロニトリルブタジエンゴムと、
エチレンオキサイド含有量70モル%以上90モル%未満のエピクロルヒドリン系ゴムとを有し、
該アクリロニトリルブタジエンゴムが該ゴム成分100質量部中に5質量部以上80質量部以下含有されている
ことを特徴とする導電性ゴムローラ、及び該導電性ゴムローラを使用した転写ローラ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真複写装置、プリンター及び静電記録装置等の画像形成装置において使用される導電性ゴムローラに関する。詳しくは、電子写真感光体等の像担持体に電子写真プロセスや静電記録プロセス等の作像手段で形成担持させたトナー像による可転写画像を紙等の記録媒体や転写材に転写させる転写装置の転写ローラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
静電式複写機、レーザープリンター、ファクシミリ等の種々の電子写真装置には、導電性ローラを始めとする各種導電性ゴム部品が使用されている。導電性ゴム部材は、適度の弾性と体積固有抵抗値が10Ω・cm以上1010Ω・cm以下である中抵抗領域で、抵抗値のばらつきや印加電圧による抵抗値の変動が小さく、安定した抵抗値が得られる材料が用いられる。中でもエピクロロヒドリンゴム・アクリロニトリルブタジエンゴムが広く使用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
近年ではカラー化、高画質化・高速化に対応するために、より低抵抗で低硬度・耐久性に優れる導電性ゴムローラが求められている。そして、低硬度を得るために低粘度の材料を使用したり、体積固有抵抗値を低くするために、エチレンオキサイド含有量の多いエピクロルヒドリン系ゴムを用いたり、イオン導電剤を添加するという提案がなされている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、一般的にこのようなゴム弾性体を用いた導電性ゴムローラの場合、
・温度や湿度の環境変動により抵抗値が変化するため、使用環境により画像品質が変化する、
・抵抗値を低くするためにイオン導電剤を添加すると、部材表面にブリードし、感光体汚染を起こす、
等の課題があった。
【0004】
このように従来の導電性ゴムローラは、アクリロニトリルブタジエンゴムに、体積固有抵抗値の低いエピクロロヒドリン系ゴム或はイオン導電剤をブレンドし体積固有抵抗値の調整を行っていた。しかし、アクリロニトリルとエピクロロヒドリン系ゴムのブレンド比で導電性ゴムローラの特性が決まってしまい、より低抵抗化するためには、アクリロニトリル含有量の高いアクリロニトリルゴムを用いたりしていた。しかしながら、環境変動が悪化したり、硬度が上がってしまう課題があった。またエピクロロヒドリン系ゴムを多く含有させる方法もあるが、材料コストが上がってしまう課題があった。
【特許文献1】特開2002−287456号公報
【特許文献2】特開2006−235519号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上述の課題を解決することであり、抵抗値の調整が容易で且つ、被帯電部材への汚染が少なく、電気的変動性やセット性(圧縮永久歪)に優れ、低コストな導電性ゴムローラ及び転写ローラを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に従って、電子写真プロセスに使用される導電性ゴムローラにおいて、
該導電性ゴムローラのゴム成分が、少なくとも
アクリロニトリル含有量15質量%以上25質量%以下、且つ、重量平均分子量(Mw)が50万以上100万以下のアクリロニトリルブタジエンゴムと、
エチレンオキサイド含有量70モル%以上90モル%未満のエピクロルヒドリン系ゴムとを有し、
該アクリロニトリルブタジエンゴムが該ゴム成分100質量部中に5質量部以上80質量部以下含有されている
ことを特徴とする導電性ゴムローラが提供される。
【0007】
また、本発明に従って、電子写真プロセスの転写装置に使用する転写ローラが、上記に記載の導電性ゴムローラを使用したものであることを特徴とする転写ローラが提供される。
【発明の効果】
【0008】
以上説明したように本発明によって、抵抗値の調整が容易で且つ、被帯電部材への張付きが無く、電気的変動性やセット性(圧縮永久歪)に優れ、低コストな導電性ゴムローラ及び転写ローラを提供することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0010】
本発明の導電性ゴムローラは、ゴム成分が少なくとも
アクリロニトリル含有量15質量%以上25質量%以下、且つ、重量平均分子量(Mw)が50万以上100万以下のアクリロニトリルブタジエンゴムと、
エチレンオキサイド含有量70モル%以上90モル%未満のエピクロルヒドリン系ゴムとを有し、
該アクリロニトリルブタジエンゴムが該ゴム成分100質量部中に5質量部以上80質量部以下含有している。
【0011】
アクリロニトリルブタジエンゴムのアクリロニトリル含有量が15質量%未満であると、体積固有抵抗値が高く、25質量%を超えると環境による抵抗値変化が大きくなる。また重量平均分子量(Mw)が50万未満であると、分子間の絡み合いが少なく体積固有抵抗値が高くなるが、重量平均分子量(Mw)が50万以上になると、体積固有抵抗値が低下する。本発明においては、アクリロニトリルブタジエンゴムの重量平均分子量が電気特性に大きく影響を与えることを見出している。アクリロニトリルブタジエンゴムの重量平均分子量が大きいほど、分子間の絡み合いが多くなりヒドロニウムイオンの配位・伝達効率が向上しイオン導電性を向上させ、体積固有抵抗値が低下する。また、エピクロロヒドリン系ゴムとの共架橋度も向上し、イオン導電性を向上させる。しかし、重量平均分子量が100万を超えると、硬くなり過ぎて加工性が低下する。また、分子運動性が低下し体積固有抵抗値が増加してしまう。このように、アクリロニトリルブタジエンゴムの重量平均分子量は50万以上100万以下であり、70万以上100万以下が好ましい。
【0012】
本発明において、アクリロニトリルブタジエンゴムの重量平均分子量は、常法に従い、以下のようにしてGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定されたものである。
【0013】
すなわち、測定対象樹脂をテトラヒドロフラン中に入れ、数時間放置した後、振盪しながら測定対象樹脂とテトラヒドロフランと良く混合し(測定対象樹脂の合一体が無くなるまで混合し)、更に12時間以上静置した。
【0014】
その後、東ソー(株)製のサンプル処理フィルターマイショリディスクH−25−5を通過させたものをGPC用試料とした。
【0015】
次に、40℃のヒートチャンバー中でカラムを安定化させ、この温度におけるカラムに、溶媒としてテトラヒドロフランを毎分0.5mlの流速で流し、GPC用試料を100μl注入して、測定対象樹脂の重量平均分子量を測定した。カラムには、Shodex KF−805Lを二本つないだものを用いた。
【0016】
測定対象樹脂の重量平均分子量の測定にあたっては、測定対象樹脂が有する分子量分布を、数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の対数値とカウント数との関係から算出した。検量線作成用の標準ポリスチレン試料には、POLYMER LABORATORIES社製の単分散ポリスチレンを用いた。単分散ポリスチレンとしては分子量が、580、2,930、9,920、28,500、59,500、148,000、320,000、841,700、2,560,000、7,500,000のものを10点用いた。検出器にはRI(屈折率)検出器を用いた。
【0017】
また、エピクロルヒドリン系ゴムのエチレンオキサイド含有量が70モル%未満であると、体積固有抵抗値が高くなってしまう。そのため、所定の抵抗値を得るためには材料単価が高価であるエピクロロヒドリン系ゴムを多く含有させなければいけなくなり、材料コストが上がってしまう。90モル%を超えると電気伝導を阻害する結晶性が増大し、体積固有抵抗値も増加する。
【0018】
また、重量平均分子量(Mw)が50万以上100万以下のアクリロニトリルブタジエンゴムをゴム成分100質量部中に5質量部未満の含有では、分子間の絡み合いの効果がなく、体積固有抵抗値は低下しない。また80質量部を超えて含有させても分子量の効果は薄れてしまう。よって、5質量部以上80質量部以下であり、好ましくは10質量部以上60質量部以下である。
【0019】
上記エピクロロヒドリン系ゴムとしては、エピクロロヒドリン単独重合体、エピクロロヒドリン/エチレンオキサイド二元共重合体、エピクロロヒドリン/エチレンオキサイド/アリルグリシジルエーテル三元共重合体等が挙げられる。中でも、エピクロロヒドリン/エチレンオキサイド/アリルグリシジルエーテル三元共重合体が導電性やブリード抑制の点から好ましい。アリルグリシジルエーテルによりエピクロロヒドリン/エチレンオキサイドの共重合体と共架橋するので、3次元構造が適正に形成され、ブリードを抑制できる。エチレンオキサイドを共重合することで体積固有抵抗値を低下させる。
【0020】
アクリロニトリルブタジエンゴムは、エピクロロヒドリン系ゴム・エピクロロヒドリン/エチレンオキサイド/アリルグリシジルエーテル三元共重合体より環境による抵抗値変化が少なく、材料単価が安価であるため抵抗値変動の向上と材料コストを抑えることが出来る。
【0021】
本発明の導電性ゴムローラは、マイクロ波発生装置(UHF)で、加硫・発泡してなり、23℃/55%RHの環境下におけるローラ抵抗値をR[Ω]としたとき、logRが5.8以上8.3以下であることが好ましい。ローラ抵抗値のlogRが5.8未満だと、環境による抵抗変化が大きくなり過ぎ、転写性を制御することが困難になる。またlogRが8.3を超えると、トナーを均一に転写することができず、画像不良を起こし易い。
【0022】
本発明の導電性ゴムローラに使用されるゴム成分以外の充填材は、一般のゴムに使用されるその他の成分を必要に応じて含有してもよい。例えば、
硫黄や有機含硫黄化合物等の加硫剤、
各種加硫促進剤、
発泡剤、
各種滑剤やサブ等の加工助剤、
各種老化防止剤、
酸化亜鉛やステアリン酸等の加硫助剤、
炭酸カルシウム、タルク、シリカ、クレー、カーボンブラック等の各種充填剤、
が必要に応じて配合可能である。
【0023】
上記導電性ゴムローラに用いられるゴム組成物は、オープンロールあるいは、密閉式混練機等を用い混練りしたものを、押出機を使用して成型している。
【0024】
図1を用いて導電性ゴムローラの製造方法を説明する。本発明の導電性ゴムローラ6のゴム組成物を押出し機によりチューブ状に押出し、マイクロ波加硫装置(UHF)で加熱し導電性のゴム(弾性体)チューブを作製した後、導電性軸体61を挿入して、所定の外径になるまで研磨することにより得られる。また、本発明の導電性ゴムローラ6には、必要に応じて加硫発泡ゴム層62の外周上にゴム・樹脂等の層を設けることで二層構造以上の導電性ゴムローラにすることもできる。
【0025】
次に、本発明に係る転写ローラを画像形成装置に利用した一例を図面を用いて説明する。
【0026】
(画像形成装置)
図2に示す画像形成装置は、電子写真方式のプロセスカートリッジを使用したレーザープリンターであり、同図はその概略構成を示す縦断面図である。また、同図に示す画像形成装置には、転写ローラを有する転写手段が装着されている。
【0027】
同図に示す画像形成装置は、像担持体として、ドラム型の電子写真感光体(以下「感光ドラム」という)1を備えている。感光ドラム1は、接地された円筒アルミニウム基体の外周面に、有機光導電体(OPC)からなる感光層を設けたものである。この感光ドラム1は、駆動手段(不図示)により、矢印R1方向に所定のプロセススピード(周速度)、例えば50mm/secで回転駆動される。
【0028】
感光ドラム1表面は、接触帯電部材としての帯電ローラ2によって均一に帯電される。帯電ローラ2は、感光ドラム1表面に接触配置されており、感光ドラム1の矢印R1方向の回転に伴って矢印R2方向に従動回転する。帯電ローラ2には、帯電バイアス印加電源(高圧電源)により振動電圧(交流電圧VAC+直流電圧VDC)が印加され、これにより感光ドラム1表面は、−600V(暗部電位Vd)に一様に帯電処理される。帯電後の感光ドラム1表面は、レーザースキャナから出力されてミラーによって反射されたレーザー光3、すなわち、目的の画像情報の時系列電気デジタル画像信号に対応して変調されたレーザー光により走査露光を受ける。これにより、感光ドラム1表面には、目的の画像情報に対応した静電潜像(明電部位Vl=−150V)が形成される。
【0029】
その静電潜像は、現像装置4の現像スリーブに印加された現像バイアスによって、負に帯電されたトナーが付着され、トナー像として反転現像される。
【0030】
一方、給紙部(不図示)から給搬送された紙等の転写材7が、転写ガイドにガイドされて、感光ドラム1と転写ローラ6との間の転写部(転写ニップ部)Tに、感光ドラム1上のトナー像とタイミングを合わせるようにして供給される。転写部Tに供給された転写材7は、転写バイアスの印加電源により転写ローラ6に印加された転写バイアスによって、表面に感光ドラム1上のトナー像が転写される。このとき、転写材7に転写されないで感光ドラム1表面に残ったトナー(残留トナー)は、クリーニング装置9のクリーニングブレード8によって除去される。
【0031】
転写部Tを通った転写材7は、感光ドラム1から分離されて定着装置10へ導入され、ここでトナー像の定着処理を受け、画像形成物(プリント)として画像形成装置本体(不図示)外部に排出される。
【0032】
次に、本発明の導電性ゴムローラは、以下のようにして作製した。
【0033】
(製造方法)
図3は導電性ゴムローラのマイクロ波を用いた連続加硫による製造装置を示す。本発明で使用した押出し加硫装置は全長13mからなり、11は押出機、12はマイクロ波加硫装置(UHF)、13は熱風加硫装置(以下、HAVとする)、14は引取機、15は定尺切断機で構成される。
【0034】
本発明の導電性ゴムローラにかかるゴム組成物を、バンバリーミキサー又はニーダー等の密閉式混練機を用い混練した後、加硫剤、発泡剤をオープンロールで含有させ、リボン成形分出し機によりリボン状に成形し、上記押出機11に投入している。上記UHF12は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)樹脂でコーティングされたメッシュのベルト、又はPTFE樹脂を被覆したコロで上記押出機11より押出されたゴムチューブを搬送している。HAV13はPTFE樹脂を被覆したコロで搬送を行っている。UHF12とHAV13の間は、PTFE樹脂を被覆したコロで連結されている。
【0035】
上記装置12、13、14の長さは図示の通りで、本実施形態では、順に、4m、6m、1mとなっている。UHF12とHAV13の間、及びHAV13と引取機14の間は0.1乃至1.0mとなるように設定されている。
【0036】
上記マイクロ波を用いた連続加硫による製造装置において、押出機11よりチューブ状に成形され押出されたゴムチューブは、該押出機11より押し出された直後に炉内雰囲気温度220℃に設定したUHF12内に搬送される。その後、該ゴムチューブにマイクロ波を照射させて、該ゴムチューブを加熱させて加硫発泡し、つづいて、HAV13に搬送し、加硫を完了させている。
【0037】
上記加硫発泡工程において、UHF12のマイクロ波加硫炉で照射するマイクロ波は2450±50MHzが好ましく、この範囲内あることにより該ゴムチューブに対し、照射ムラが少なく、かつ効率良く照射が可能である。UHF炉内での熱風の温度は150℃以上250℃以下が好ましく、特には180℃以上230℃以下が好ましい。
【0038】
加硫、発泡後に巻引取機14より排出された直後に、定尺切断機15により所望の寸法に切断し、チューブ状の導電性ゴム成形物を作製した。次いで、φ4mm以上10mm以下の導電性軸体を前記チューブ状の導電性ゴム成形物の内径部に圧入し、ローラ状の成形体が得られる。
【実施例】
【0039】
以下に実施例及び比較例を用いて、本発明を詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0040】
各実施例及び比較例で使用したゴム材料は、以下の通りである。なお、配合量の単位は質量部である。
・アクリロニトリルブタジエンゴム
[(1)結合アクリロニトリル量18質量%、重量平均分子量47万、商品名:NipolDN401LL、日本ゼオン(株)社製]]
[(2)結合アクリロニトリル量18質量%、重量平均分子量70万、商品名:NipolDN401L、日本ゼオン(株)社製]
[(3)結合アクリロニトリル量18質量%、重量平均分子量78万、商品名:NipolDN401、日本ゼオン(株)社製]
[結合アクリロニトリル量35質量%、商品名:N230SV、JSR(株)社製]
・エピクロルヒドリン/エチレンオキサイド/アリルグリシジルエーテル三元共重合体(GECO)
[エチレンオキサイド含量73モル%、商品名:EPION301、ダイソー(株)社製]
[エチレンオキサイド含量56モル%、商品名:HydrinT3106S、日本ゼオン(株)社製]
・加硫剤
[硫黄(S)、商品名:サルファックスPMC、鶴見化学工業(株)社製]
・加硫促進剤
[ジベンゾチアジルジスルフィド(DM)、商品名:ノクセラーDM、大内新興化学工業(株)社製]
[テトラエチルチウラムジスルフィド(TET);商品名:ノクセラーTET、大内新興化学工業(株)社製]
・加硫促進助剤
[酸化亜鉛、商品名:亜鉛華2種、ハクスイテック(株)社製]
・助剤
[ステアリン酸、商品名:ルナックS20、花王株式会社製]
・充填剤
[カーボンブラック、商品名:旭#35、旭カーボン株式会社製]
・発泡剤
[p.p’−オキシビススルホニルヒドラジド(OBSH)、商品名:ネオセルボンN1000#S、永和化成(株)社製]
【0041】
なお、実施例及び比較例の導電性ゴム部材は、表1に記載の配合で上述の製造装置を用いて2450MHzのマイクロ波を照射させるマイクロ波加硫炉(UHF)と連続熱風炉にて加硫・発泡を行った。得られたチューブ状のゴム加硫物の硬度が20°以上50°以下になるような条件で作製し、次いでφ6mmの導電性軸体を前記チューブ状のゴム加硫物の内径部に挿入しローラ状の成形体を得た。この成形体を外径がφ16mmになるように研磨し作製した。
【0042】
(被帯電部材張付き試験)
ローラを転写ローラとしてヒューレットパッカード製のレーザープリンターレーザージェット4000Nに使用されるカートリッジの電子写真感光体に接触させ、軸体に片側4.9Nの荷重を両方に加え、40℃/95%RHの環境下に一週間放置した。放置後、荷重を外し、電子写真感光体への張付きを確認した。張付かなかったものを○、少しでも張付きがあったものを×とした。
【0043】
(ローラの電気抵抗及び環境変動量の測定方法)
ローラ抵抗は、常温常湿環境(23℃/55%RH)において導電性ローラの軸体に片側4.9Nの荷重が両方に掛かるようにし、外径30mmのアルミニウム製のドラムに圧着し、回転させた状態(周速度50mm/sec)で測定した。この時、軸体とアルミドラムとの間に2kVの電圧を印加した。ローラ抵抗の環境変動幅は、低温低湿環境(15℃/10%RH)におけるローラ抵抗(T1)及び高温高湿環境(32.5℃/80%RH)におけるローラ抵抗(T2)の対数の差とし、式:log10(T1)−log10(T2)で算出した。
【0044】
(セット性 圧縮永久歪試験)
JIS K−6262に準拠し、70℃で24時間圧縮し、歪量を測定した。
【0045】
(評価)
抵抗値による環境変動性・セット性(圧縮永久歪性)のバランスが良く、被帯電部材への張付きが無いものを○、それ以外を×とした。
【0046】
【表1】

【0047】
比較例1及び2は、アクリロニトリル含有量15質量%以上25質量%以下、且つ、重量平均分子量(Mw)が50万以上100万以下のアクリロニトリルブタジエンゴムを含有していない場合の事例である。実施例1と比較すると、同量のアクリロニトリルブタジエンゴムとエピクロロヒドリン系ゴムを含有させても分子間の絡み合いが少ないため、抵抗値は高く、張付き性もあり、環境変動性やセット性(圧縮永久歪)が悪くなっている。
【0048】
比較例3はエチレンオキサイド含有量70モル%以上90モル%未満から外れたエピクロルヒドリン系ゴムを使用した場合の事例である。実施例1と比較すると、同一の抵抗値をえるためには、エピクロロヒドリン系ゴムを多く含有させる必要があり、環境変動性が悪化しセット性(圧縮永久歪)も悪化する。またエピクロロヒドリン系ゴムを多く含有させるため、材料コストも増加してしまう。
【0049】
比較例4及び5は、アクリロニトリル含有量15質量%以上25質量%以下、且つ、重量平均分子量(Mw)が50万以上100万以下のアクリロニトリルブタジエンゴムが、ゴム成分100質量部中に5質量部以上80質量部以下の範囲外の事例である。比較例4と実施例4を比較すると、抵抗値は高く、張付き性もあり、環境変動性やセット性(圧縮永久歪)が悪くなっている。また比較例2と比較しても、同等の特性しかえられていない。比較例5は、加工性が悪化してローラ状の成形体を形成することができなかった。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の導電性ゴムローラの概略構成図である。
【図2】本発明に係る画像形成装置の全体断面図である。
【図3】本発明の導電性ゴムローラのマイクロ波を用いた連続加硫による製造装置である。
【符号の説明】
【0051】
1 感光ドラム
2 帯電装置
3 露光手段
4 現像装置
5 トナー
6 導電性ゴム部材(転写ローラ)
7 記録媒体
8 クリーニングブレード
9 廃トナー容器
10 定着装置
11 押出機
12 マイクロ波加硫装置(UHF)
13 熱風加硫装置(HAV)
14 引取機
15 定尺切断
61 導電性軸体
62 加硫発泡ゴム層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子写真プロセスに使用される導電性ゴムローラにおいて、
該導電性ゴムローラのゴム成分が、少なくとも
アクリロニトリル含有量15質量%以上25質量%以下、且つ、重量平均分子量(Mw)が50万以上100万以下のアクリロニトリルブタジエンゴムと、
エチレンオキサイド含有量70モル%以上90モル%未満のエピクロルヒドリン系ゴムとを有し、
該アクリロニトリルブタジエンゴムが該ゴム成分100質量部中に5質量部以上80質量部以下含有されている
ことを特徴とする導電性ゴムローラ。
【請求項2】
前記エピクロロヒドリン系ゴムが、エピクロロヒドリン/エチレンオキサイド/アリルグリシジルエーテルの三元共重合体である請求項1に記載の導電性ゴムローラ。
【請求項3】
前記導電性ゴムローラが、マイクロ波発生装置(UHF)で、加硫・発泡してなり、23℃/55%RHの環境下におけるローラ抵抗値をR[Ω]としたとき、logRが5.8以上8.3以下である請求項1又は2に記載の導電性ゴムローラ。
【請求項4】
電子写真プロセスの転写装置に使用する転写ローラが、請求項1乃至3のいずれかに記載の導電性ゴムローラを使用したものであることを特徴とする転写ローラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−151168(P2009−151168A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−330089(P2007−330089)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】