説明

導電性フィルムおよびその製造方法

【課題】導電性能の面内均一性に優れ、近年大面積での使用が増大している、例えば液晶ディスプレイ(LCD)透明タッチパネル、有機エレクトロルミネッセンス素子、無機エレクトロルミネッセンスランプ等の透明電極や電磁波シールド材などの用途分野に好適に使用することができる導電性フィルムを提供すること。
【解決手段】基材フィルムの少なくとも片面に、下記一般式で表される繰返し単位からなるポリカチオン状のポリチオフェンとポリアニオンとからなる導電性高分子を0.5〜1.5重量%、フッ素系界面活性剤を100〜1000ppmおよび水と相溶性のある溶媒からなる濡れ剤を1〜10重量%含有する水系塗料を塗布して、平均表面抵抗値が1〜1×10Ω/□で、その変動誤差が3%以下である導電性フィルムを得る。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は導電性フィルムに関するものである。さらに詳しくは、導電性能の均一性に優れているため、液晶ディスプレイ(LCD)、透明タッチパネル、有機エレクトロルミネッセンス素子、無機エレクトロルミネッセンスランプ等の透明電極や電磁波シールド材として好適に使用することができる透明導電性フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶ディスプレイ、透明タッチパネル等の透明電極や電磁波シールド材として透明導電性フィルムが好適に用いられている。かかる透明導電性フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、トリアセチルセルロース(TAC)等の透明フィルム表面の少なくとも片面に、酸化インジウム(In)、酸化錫(SnO)、InとSnOの混合焼結体(ITO)等を、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等のドライプロセスによって設けたものがよく知られている。
【0003】
しかし、通常透明導電性フィルムは、ウェブ状での連続加工や打ち抜き加工があり、また、表面加工中も曲げられた状態で用いられたり、また保管されたりするため、上記ドライプロセスにより得られる透明導電性フィルムは、該加工工程や保管している間に、クラックが発生して表面抵抗が増大したりすることがあった。
【0004】
一方、透明基材フィルムの上に導電性高分子を塗布すること(ウエットプロセス)によって形成される透明導電塗膜層は、膜自体に柔軟性があり、クラックなどの問題は生じない。また、導電性高分子を塗布することによって透明導電性フィルムを得る方法は、ドライプロセスとは異なって製造コストが比較的安く、またコーティングスピードも一般的に速いので生産性に優れるという利点もある。このような導電性高分子の塗布によって得られる透明導電性フィルムは、これまで一般的に用いられてきたポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール等は、開発の初期段階では高い導電性が得られないために帯電防止用途などに使用が限定されていたり、導電塗膜層自体の色相が問題となったりしていた。しかし、最近では製法の改良などによりこれらの問題も改善されてきている。例えば、3,4−ジアルコキシチオフェンをポリアニオン存在下で酸化重合することによって得られるポリ(3,4−ジアルコキシチオフェン)とポリアニオンとからなる導電性高分子(特許文献1)は、近年の製法の改良(特許文献2および特許文献3)などにより、高い光線透過率を保ったまま非常に低い表面抵抗を発現している。
【0005】
しかしながら、これらの導電性高分子を透明導電塗膜層として用いた導電性フィルムを種々の用途に応用する場合、例えば特許文献4に提案されているアナログ方式タッチパネルに使用する場合、タッチパネルへの入力位置の検出を誤って行ってしまう問題が発生することがあり、さらなる改善が求められている。
【0006】
【特許文献1】特開平1−313521号公報
【特許文献2】特開2002−193972号公報
【特許文献3】特開2003−286336号公報
【特許文献4】特開2002−109998号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記背景技術を鑑みなされたもので、その目的は、導電性能の面内均一性に優れ、種々の用途分野に幅広く使用できる導電性フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を達成するため鋭意検討した結果、導電性高分子からなる透明導電塗膜層を形成する際、塗液として特定の界面活性剤および濡れ剤を特定量含有するものを用いれば塗膜の膜厚均一性が向上し、面内の表面抵抗のバラツキを実用的なレベルに抑制した導電性フィルムが得られることを見出し、本発明に到達した。
【0009】
かくして本発明によれば、「基材フィルムの少なくとも片面に、下記一般式
【化1】

(式中、RおよびRは相互に独立して水素または炭素数1〜4のアルキル基を表すか、あるいは一緒になって任意に置換されてもよい炭素数1〜12のアルキレン基を表す)
で表される繰返し単位からなるポリカチオン状のポリチオフェンとポリアニオンとからなる導電性高分子を含有する透明導電塗膜層が積層された導電性フィルムであって、該導電性フィルムの表面抵抗値が1〜1×10Ω/□で、その変動誤差が3%以下であることを特徴とする導電性フィルム。」、および、「基材フィルムの少なくとも片面に、上記一般式で表される繰返し単位からなるポリカチオン状のポリチオフェンとポリアニオンとからなる導電性高分子を0.5〜1.5重量%、フッ素系界面活性剤を100〜1000ppmおよび水と相溶性のある溶媒からなる濡れ剤を1〜10重量%含有する水系塗料を塗布することを特徴とする導電性フィルムの製造方法。」が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の導電性フィルムは、透明導電塗膜層の表面抵抗値の面内均一性に優れているので、大面積で使用した場合でも透明導電性フィルムとしての十分な実用性を保持できる。したがって、最近大面積での使用が増加している透明タッチパネル、液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンス素子、無機エレクトロルミネッセント素子、等の透明電極や透明電磁波シールド材として好適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の導電性フィルムを、まず図面を用いて説明する。図1は、本発明の導電性フィルムの好ましい態様である層構成の一例を示す断面図である。すなわち図1中、符号1は基材フィルム、符号3は透明導電塗膜層を示し、符号2、4は、それぞれ必要に応じて設けてもよいアンカーコート層およびハードコート層を示す。
【0012】
このように本発明の導電性フィルムは、基材フィルムの少なくとも片面に、透明導電塗膜層が積層されていることを要件とするが、さらにその表面抵抗値が1〜1×10Ω/□の範囲にあることが必要である。該表面抵抗値が上限を超えると、液晶ディスプレイ、透明タッチパネル等の透明電極や電磁波シールド材として用いたときに電極として十分に機能しなかったり、十分な電磁波シールド特性が得られなくなる。一方、下限未満にすることは製造工程が不安定になりやすいので好ましくない。好ましい表面抵抗値は10〜1×10Ω/□の範囲、特に10〜5×10Ω/□の範囲である。
【0013】
また、その変動誤差は3%以下、特に2%以下であることが必要である。ここで該変動誤差が3%を超える場合には、タッチパネルとして使用した時の入力安定性が不足したり、電磁波カット性能が不安定になったりするので好ましくない。なお、ここでいう変動誤差とは、対角35.56cm(14インチ)の長方形(17.43cm×30.99cm)で任意の50点をサンプリングし、その表面抵抗値の平均値からの差の最大値を、平均表面抵抗値で除した値である。すなわち、下記式で算出されるものである。
変動誤差(%)=表面抵抗値の平均値からの差(最大値)/平均表面抵抗値×100
【0014】
以下、本発明の導電性フィルムを形成する各層について、さらに詳述する。
本発明における透明導電塗膜層は、下記一般式
【化2】

で表される繰返し単位からなるポリカチオン状のポリチオフェン(以下、“ポリ(3,4−ジ置換チオフェン)”と称することがある)とポリアニオンとから構成される導電性高分子(a)、すなわち複合化合物を含有することが必要である。
【0015】
この導電性高分子(a)を構成するポリ(3,4−ジ置換チオフェン)のRおよびRは相互に独立して水素または炭素数が1〜4のアルキル基を表すか、あるいは一緒になって任意に置換されてもよい炭素数が1〜12のアルキレン基を表す。RおよびRが一緒になって形成される、置換基を有してもよい炭素数が1〜12のアルキレン基の代表例としては、1,2−アルキレン基(例えば、1,2−シクロヘキシレンおよび2,3−ブチレンなど)があげられる。また、RおよびRが一緒になって形成される炭素数が1〜12のアルキレン基の好適な例としては、メチレン、1,2−エチレンおよび1,3−プロピレン基があげられ、1,2−エチレン基が特に好適である。
【0016】
一方導電性高分子(a)を構成するポリアニオンとしては、高分子状カルボン酸類(例えばポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸など)、高分子状スルホン酸(例えばポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸など)などがあげられる。これらの高分子状カルボン酸およびスルホン酸類は、ビニルカルボン酸およびビニルスルホン酸類と他の重合可能な低分子化合物、例えばアクリレート類およびスチレンなどとの共重合体であってもよい。これらポリアニオンの中でもポリスチレンスルホン酸およびその全べてもしくは一部が金属塩であるものが好ましく用いられる。
【0017】
本発明における透明導電塗膜層を形成するためのコーティング組成物は、上述の導電性高分子を主成分として水に分散させた分散液を用いるが、必要に応じてポリエステル、ポリアクリル、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラールなどの適当な有機高分子材料をバインダーとして添加することができる。
【0018】
本発明においては、塗液の基材フィルムへの濡れ性を改善する目的で、濡れ剤として水と相溶性のある溶媒を特定量添加する必要がある。例えば、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなど)、アミド類(ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド)などが好ましく用いられる。なかでも、水との相溶性および沸点の観点からイソプロパノールが好ましい。
【0019】
かかる濡れ剤の含有量は塗液中1〜10重量%、好ましくは1.5〜9.5重量%、さらに好ましくは2〜8重量%の範囲とする必要がある。この含有量が1重量%未満の場合には濡れ剤の効果が不十分となり、得られる導電性能の均一性が不十分となるので好ましくない。一方、10重量%を超える場合には、塗液の沸点が大きく変わりすぎるため、乾燥条件等に悪影響を及ぼしてやはり均一な導電性能を得ることが難しくなる。
【0020】
本発明で用いられる上記塗液には、上記要件に加えてさらにフッ素系界面活性剤を100〜1000ppm、好ましくは150〜950ppm、さらに好ましくは200〜900ppm含有している必要がある。ここで該含有量が100ppm未満の場合には、塗布後の濡れ広がりをコントロールする効果が発現しなくなり、均一な導電性能を得ることが難しくなる。一方、1000ppmを超えると該濡れ広がり効果はそれ以上高くならないばかりか、塗液中に溶解しきれない界面活性剤が塗布後の塗膜に偏在することとなり、導電性能に悪影響を及ぼすことがあるので好ましくない。
【0021】
好ましく用いられるフッ素系界面活性剤としては、例えばフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルベンゼンスルホン酸塩、パーフルオロアルキル4級アンモニウム、パーフルオロアルキル/エーテル/アルコール共重合体、パーフルオロアルキルポリオキシエチレンエタノールなどがあげられる。
【0022】
また得られる透明導電塗膜層の塗膜強度を向上させる目的で、さらにアルコキシシランまたはアシロキシシランを添加してもよい。これらのシラン化合物は、加水分解され、その後の縮合反応された反応生成物の形態で透明導電塗膜層中に存在する。これらのシラン化合物としては、例えばメチルトリアセトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、トリメチルアセトキシシラン、テトラアセトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトライソブトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、フェニルトリエトキシシランなどがあげられる。なかでも、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトライソブトキシシランなどのテトラアルコキシシランおよびγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのアルコキシ基以外の反応性官能基を有するトリアルコキシシランが好ましく、特にグリシドキシ基を有するトリアルコキシシランが好ましい。かかるシラン化合物の前記導電性高分子に対する割合は、導電性高分子の重量を基準として1〜300重量%の範囲が適当である。
【0023】
このようなシラン化合物の加水分解/縮合を効率よく進行させるためには触媒を併用することが好ましい。触媒としては酸性触媒または塩基性触媒のいずれをも用いることができる。酸性触媒としては、酢酸、塩酸、硝酸等の無機酸、酢酸、クエン酸、プロピオン酸、しゅう酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸等が好適である。一方塩基性触媒としてはアンモニア、トリエチルアミン、トリプロピルアミン等の有機アミン化合物、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属化合物などが好適である。
【0024】
透明導電塗膜層を形成する際の塗布方法としては、それ自体公知の方法を採用できる。例えばリップダイレクト法、コンマコーター法、スリットリバース法、ダイコーター法、グラビアロールコーター法、ブレードコーター法、スプレーコーター法、エアーナイフコート法、ディップコート法、バーコーター法などが好ましく挙げられる。乾燥条件としては80〜160℃、特に100〜150℃の範囲とし、乾燥温度に応じて乾燥時間を通常は10〜120秒の間で適宜調整し、さらに必要に応じて熱処理を施すことが好ましい。熱硬化性樹脂をバインダーとして併用した場合には、透明導電塗膜層の塗設はそれぞれを形成する成分を含む塗液を基材フィルムに塗布し、加熱乾燥後に熱硬化させて塗膜を形成させる。UV硬化性樹脂またはEB硬化性樹脂をバインダーとして併用した場合には、一般的には予備乾燥を行った後、紫外線照射または電子線照射を行なう。
【0025】
また、かかる透明導電塗膜層を形成するための塗液を基材フィルム上に塗布する際には、必要に応じて、さらに密着性・塗工性を向上させるための予備処理として、フィルム表面にコロナ放電処理、プラズマ放電処理などの物理的表面処理を行うこともできる。また後述のように基材フィルム上にアンカーコート層を設けることもできる。
【0026】
透明導電塗膜層の厚みは0.01〜0.30μmの範囲、特に0.02〜0.25μmの範囲であることが好ましい。該塗膜の厚さが薄すぎると十分な導電性が得られないことがあり、逆に厚すぎると、光線透過率が不足したり、ブロッキングを起こしたりすることがある。
【0027】
本発明においては、上記透明導電塗膜層と基材フィルムとの密着性を向上させるため、これらの間にアンカーコート層を設けても構わない。かかるアンカーコート層は、透明導電塗膜層および基材フィルムへの密着性に優れ、かつ透明性を備えるものであれば特に制限はされないが、特にポリエステル樹脂およびオキサゾリン基とポリアルキレンオキシド鎖とを有するアクリル樹脂の両方を含むことが好ましい。
【0028】
ここで用いられるポリエステル樹脂は特に制限はなく、以下に示す多塩基酸とポリオールとからなるポリエステルを例示することができるが、特に水(多少の有機溶剤を含有していても良い)に可溶性または分散性のポリエステルが好ましい。
【0029】
ポリエステル樹脂の多塩基酸成分としては例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、無水フタル酸、2、6−ナフタレンジカルボン酸、1、4−シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ダイマー酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等を挙げることができる。なかでも、これら酸成分を2種類以上含有する共重合ポリエステルが好ましい。なお、若干量であればマレイン酸、イタコン酸等の不飽和多塩基酸成分や、p−ヒドロキシ安息香酸等の如きヒドロキシカルボン酸成分が含まれていてもよい。
【0030】
またポリオール成分としては例えば、エチレングリコール、1、4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1、6−ヘキサンジオール、1、4−シクロヘキサンジメタノール、キシリレングリコール、ジメチロールプロパン等や、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールを挙げることができるがこれらに限定されるものではない。
【0031】
一方、アンカーコート層に用いるオキサゾリン基とポリアルキレンオキシド鎖とを有するアクリル樹脂も、水(多少の有機溶剤を含有していてもよい)に可溶性または分散性のアクリル樹脂が好ましい。かかるオキサゾリン基とポリアルキレンオキシ鎖とを有するアクリル樹脂としては例えば、以下に示すモノマーを共重合成分として含むものをあげることができる。
【0032】
まずオキサゾリン基を有するモノマーとしては、例えば2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−メチル−2−オキサゾリン等を挙げることができ、これらの1種または2種以上の混合物を使用することができる。これらの中で2−イソプロペニル−2−オキサゾリンが工業的に入手しやすく好適である。かかるオキサゾリン基を有するアクリル樹脂を用いることによりアンカーコート層の凝集力が向上し、透明導電塗膜層との密着性がより強固になる。さらにフィルム製膜工程内や透明導電塗膜層加工工程における金属ロールに対する耐擦傷性を基材フィルム表面に付与できる。なお、オキサゾリン基を含有するモノマーの含有量は、該アクリル樹脂中の含有量として2〜40重量%、好ましくは3〜35重量%、さらに好ましくは5〜30重量%である。
【0033】
次にポリアルキレンオキシド鎖を有するモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸のエステル部にポリアルキレンオキシドを付加させたものを挙げることができる。ポリアルキレンオキシド鎖はポリメチレンオキシド、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリブチレンオキシド等を挙げることができる。ポリアルキレンオキシド鎖の繰り返し単位は3〜100であることが好ましい。かかるポリアルキレンオキシド鎖を有するアクリル樹脂を用いることにより、アンカーコート層中のポリエステル樹脂とアクリル樹脂の相溶性がポリアクリレンオキシド鎖を含有しないアクリル樹脂と比較してよくなり、アンカーコート層の透明性を向上させることができる。ここでポリアルキレンオキシド鎖の繰り返し単位が3より小さいとポリエステル樹脂とアクリル樹脂との相溶性が低下してアンカーコート層の透明性が悪くなりやすく、逆に100より大きいとアンカーコート層の耐湿熱性が下がり、高湿度、高温下での透明導電塗膜層との密着性が悪化しやすい。なお、ポリアルキレンオキシド鎖を有するモノマーの含有量は、該アクリル樹脂中の含有量として3〜40重量%、好ましくは4〜35重量%、さらに好ましくは5〜30重量%である。
【0034】
アクリル樹脂のその他の共重合成分としては、例えば以下のモノマーを挙げることができる。すなわちアルキルアクリレート、アルキルメタクリレート(アルキル基としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基等);2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のヒドロキシ基含有モノマー;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有モノマー;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、スチレンスルホン酸およびその塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、第三級アミン塩等)等のカルボキシ基またはその塩を有するモノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−アルキルアクリルアミド、N−アルキルメタクリルアミド、N,N−ジアルキルアクリルアミド、N,N−ジアルキルメタクリルアミド(アルキル基としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基等)、アクリロイルモルフォリン、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−フェニルメタクリルアミド等のアミド基を有するモノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物のモノマー;ビニルイソシアネート、アリルイソシアネート、スチレン、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルトリアルコキシシラン、アルキルマレイン酸モノエステル、アルキルフマル酸モノエステル、アルキルイタコン酸モノエステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、塩化ビニリデン、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、ブタジエン等であるが、これらのモノマーに限定されるものではない。
【0035】
アンカーコート層を形成するポリエステル樹脂のアンカーコート層中の含有割合は5〜95重量%であることが好ましく、特に50〜90重量%であることが好ましい。アンカーコート層を形成するオキサゾリン基およびポリアルキレンオキシド鎖を有するアクリル樹脂のアンカーコート層中の含有割合は5〜90重量%であることが好ましく、特に10〜50重量%であることが好ましい。ポリエステル樹脂が95重量%を超える、もしくはオキサゾリン基およびポリアルキレンオキシド鎖を有するアクリル樹脂が5重量%未満になるとアンカーコート層の凝集力が低下し、透明導電塗膜層の密着性が不十分になる場合がある。一方、ポリエステル樹脂が5重量%未満もしくはオキサゾリン基およびポリアルキレンオキシド鎖を有するアクリル樹脂が95重量%を超える場合には、基材フィルムとアンカーコート層の密着性が低下する場合がある。
【0036】
なお、上記アンカーコート層中には脂肪族ワックスを0.5〜30重量%含有させることが好ましく、特に1〜10重量%含有させることが好ましい。この割合が0.5重量%より少ないとフィルム表面の滑性向上効果が認められなくなることがある。一方30重量%を越えると基材フィルムへの密着や、透明導電塗膜層に対するアンカーコート性が不足する場合がある。
【0037】
好ましく用いられる脂肪族ワックスとしては、具体的にはカルナバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス、木ロウ、ホホバオイル、パームワックス、ロジン変性ワックス、オウリキュリーワックス、サトウキビワックス、エスパルトワックス、バークワックス等の植物系ワックス、ミツロウ、ラノリン、鯨ロウ、セラックワックス等の動物系ワックス、モンタンワックス、オゾケライト、セレシンワックス等の鉱物系ワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラクタム等の石油系ワックス、フィッシャートロプッシュワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等の合成炭化水素系ワックス等があげられる。なかでも透明導電塗膜層と滑性が良好なことから、カルナバワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスが好ましい。これらのワックス類は、特に環境問題および取扱い易さの観点から水分散されたものを用いることが好ましい。
【0038】
さらに、上記アンカーコート層中には平均粒子径が0.005〜0.5μmの範囲にあるフィラーを0.1〜20重量%含有させることが好ましい。アンカーコート層中のフィラーの含有量が0.1重量%未満であると、フィルムの滑性が低下してロール状に巻き取ることが困難になることがあり。逆に20重量%を超えるとアンカーコート層の透明性が低下して、ディスプレイ/タッチパネル等の用途によっては使用できなくなることがある。好ましく用いられるフィラーとしては、例えば炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ケイ素、ケイ酸ソーダ、水酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、酸化チタン、酸化錫、酸化アンチモン、カーボンブラック、二硫化モリブデン等の無機微粒子、アクリル系架橋重合体、スチレン系架橋重合体、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、フェノール樹脂、ナイロン樹脂、ポリエチレンワックス等の有機微粒子を挙げることができる。これらのうち、水不溶性の固体物質は水分散液中で沈降するのを防ぐため、比重が3を超えないものを用いるのが好ましい。
【0039】
次に、上記アンカーコート層(以下「塗膜」ということがある)を基材フィルム上に形成させるために、上記の成分を水溶液、水分散液または乳化液等の水性塗液の形態として使用することが好ましい。塗膜を形成するために、必要に応じて、前記成分以外の他の成分、例えば帯電防止剤、着色剤、界面活性剤、紫外線吸収剤等を添加することもできる。特に滑剤を添加することにより、耐ブロッキング性をさらに良好なものとすることができる。
【0040】
アンカーコート層の塗工に用いる水性塗液の固形分濃度は通常20重量%以下であるが特に1〜10重量%であることが好ましい。この割合が1重量%未満であると、基材フィルムへの濡れ性が不足することがあり、一方20重量%を超えると塗液の貯蔵安定性やアンカーコート層の外観が悪化することがある。
【0041】
次に本発明における基材フィルムは特に制限する必要はないが、(メタ)アクリル系樹脂、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレンやポリプロピレンのようなポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリイミド、ポリアミド、ポリスルホン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと称することがある。)、ポリエチレンナフタレート(以下、PENと称することがある。)などのポリエステル(少量、例えば全酸成分を基準として20モル%以下、好ましくは10モル%以下の第3成分を共重合したポリエステルであってもよい)や、アミノ基、エポキシ基、ヒドロキシル基、カルボニル基等の官能基で一部変性した樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)などからなるフィルムが好適である。これらの基材フィルムのうち、機械特性や透明性、生産コストの点からポリエステル(PET、PENおよびそれらの共重合体)フィルムが特に好ましい。基材フィルムの厚みも特に制限されないが、500μm以下が好ましい。500μmより厚い場合は剛性が強すぎて、得られたフィルムをディスプレイなどに貼付ける際の取扱い性が低下しやすい。
【0042】
基材フィルムとしてポリエステルフィルムを用いる場合には、アンカーコート層を設けるための上述の水性塗料の塗布は、任意の段階で実施することができるが、ポリエステルフィルムの製造過程で実施するのが好ましく、さらには配向結晶化が完了する前のポリエステルフィルムに塗布するのが好ましい。
【0043】
ここで配向結晶化が完了する前のポリエステルフィルムとは、未延伸フィルム、未延伸フィルムを縦方向または横方向の何れか一方に配向せしめた一軸配向フィルム、さらには縦方向および横方向の二方向に低倍率延伸配向せしめたもの(最終的に縦方向、また横方向に再延伸せしめて配向結晶化を完了せしめる前の二軸延伸フィルム)等を含むものである。
【0044】
なかでも未延伸フィルムまたは一方向に配向せしめた一軸延伸フィルムにアンカーコート層を形成するための水性塗液を塗布し、そのまま縦延伸および/または横延伸と熱固定とを施すのが好ましい。
【0045】
アンカーコート層を形成するための水性塗液を基材フィルムに塗布する際には、塗布性を向上させるための予備処理として、フィルム表面にコロナ処理、火炎処理、プラズマ処理等の物理処理を施すか、あるいは組成物と共にこれと化学的に不活性な界面活性剤を併用することが好ましい。
【0046】
かかる界面活性剤は、上記アンカーコート層を形成する水性塗液の基材フィルムへの濡れを促進するものであり、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン−脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪族エステル、グリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸金属石鹸、アルキル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩等のアニオン型、ノニオン型界面活性剤を挙げることができる。界面活性剤は塗膜を形成する組成物中に0.1〜10重量%含まれていることが好ましい。
【0047】
アンカーコート層形成のための水性塗液の塗布量は、塗膜の厚さが0.01〜0.30μm、好ましくは0.02〜0.25μmの範囲となるような量であることが好ましい。塗膜の厚さが薄すぎると密着力が低下し、逆に厚すぎるとブロッキングを起こしたり、ヘーズ値が高くなったりする可能性がある。
【0048】
アンカーコート層を形成する際の塗布方法としては、それ自体公知の方法を採用すればよい。例えばリップダイレクト法、コンマコーター法、スリットリバース法、ダイコーター法、グラビアロールコーター法、ブレードコーター法、スプレーコーター法、エアーナイフコート法、ディップコート法、バーコーター法などを例示することができ、これらの方法を単独または組み合わせて用いることができる。なお、塗膜は必要に応じてフィルムの片面のみに形成しても良いし、両面に形成してもよい。
【0049】
本発明の導電性フィルムは、上述のとおり基材フィルムの少なくとも片面に透明導電塗膜層が積層されていることが必要であるが、透明導電塗膜層が形成される側と反対の面には必要に応じてアンカーコート層、ハードコート層などの塗膜を設けることもできる。
【実施例】
【0050】
以下、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明する。なお、実施例中における各評価は下記の方法にしたがった。
【0051】
(1)膜厚
アンカーコート層および透明導電塗膜層の厚みは、反射分光膜厚計(大塚電子製、商品名「FE−3000」)を用いて波長300〜800nmの反射率を測定し、代表的な屈折率の波長分散の近似式としてn−k Cauchyの分散式を引用し、スペクトルの実測値とフィッティングさせることにより膜厚を求めた。
【0052】
(2)ガラス転移温度
サンプル約10mgを測定用のアルミニウム製パンに封入して示差熱量計(デュポン社製 V4.OB2000型DSC)に装着し、25℃から20℃/分の速度で300℃まで昇温させ、300℃で5分間保持した後取り出し、直ちに氷の上に移して急冷する。このパンを再度示差熱量計に装着し、25℃から20℃/分の速度で300℃まで昇温させてガラス転移温度(Tg:℃)を測定する。
【0053】
(3)固有粘度
固有粘度(〔η〕dl/g)は25℃のo−クロロフェノール溶液で測定する。
【0054】
(4)全光線透過率
JIS K7150にしたがい、スガ試験機(株)製のヘイズメーターHCM−2Bにて測定した。
【0055】
(5)表面抵抗値(平均値)および表面抵抗値の面内均一性
三菱化学社製Lorester MCP−T600を用いて、JIS K7194に準拠して測定した。測定は対角35.56cm(14インチ)の長方形(17.43cm×30.99cm)サイズの中で任意の50点をサンプリングして行い、その平均値を表面抵抗値とし、その平均値からの差を平均表面抵抗値で除した値を変動誤差とした。
変動誤差(%)=各点の表面抵抗値の平均値からの差/平均表面抵抗値×100
【0056】
(6)ペン入力櫂動耐久性
導電性フィルムに外力が加わった場合の導電性劣化度合いの目安として、モデル的なタッチパネルを作製し、ペン入力櫂動耐久試験を行った。ペン入力櫂動耐久試験においては、試料の導電性フィルムを100mm×100mmに切り出し、透明導電塗膜層形成面の両端に幅5mmの電極を銀ペーストを塗布して作成した。この電極間に定電圧電源により5Vを印加し、サンプル中心部50mm×50mmの範囲を縦横1mm間隔で(x1,y1)〜(x50,y50)の2500点について電圧Vi,j(i,j=1〜50)を測定した。各電圧測定点での理論電圧Ui,j=V1,1+(V50,50−V1,1)/50×(j−1)からのズレをΔi,j=(Vi,j−Ui,j)/Ui,jで定義し、このΔi,jの絶対値の最大値をリニアリティと定義した。
【0057】
ペン入力試験前のリニアリティを測定したフィルムを用いてタッチパネルを作製した。導電性フィルムで構成されたパネル板側から、ポリアセタール樹脂からなるペン先半径0.8mmのタッチペンを用いてリニアリティ測定を行った部位にプロッタにより、2cm角サイズのカタカナのア〜ンまでの文字の筆記を行い、ペン入力試験を行った。このときペン荷重250gf、文字筆記速度2000字/時間とした。筆記が終了したタッチパネルから導電フィルムを取り外して、ペン入力試験後の導電フィルムのリニアリティを前述と同様の手法で測定した。この評価を様々な筆記文字数に対して行い、リニアリティが3%を超えたときの文字数をペン入力耐久文字数とし、下記の基準で評価した。
◎:10万字<ペン入力耐久文字数 ・・・外力に対する耐性極めて良好
○: 5万字≦ペン入力耐久文字数≦10万字 ・・・外力に対する耐性良好
×: ペン入力耐久文字数<5万字 ・・・外力に対する耐性不良
【0058】
(7)電磁波シールド特性
社団法人関西電子工業振興センター(KEC)開発の電磁波シールド効果測定装置を用い、電界シールド性を測定した。
【0059】
[実施例1]
<基材フィルムおよびアンカーコート層の形成>
溶融ポリエチレンテレフタレート(〔η〕=0.62dl/g、Tg=78℃)をダイより押し出し、常法により冷却ドラムで冷却して未延伸フィルムとし、次いで縦方向に3.4倍延伸した後、その両面に下記のポリエステル60部、アクリル30部、添加剤5部、濡れ剤5部からなる塗液をイオン交換水で濃度8%に調整したアンカーコート層形成用塗液を、ロールコーターで均一に塗布した。次いで塗工後にこのフィルムを横方向に125℃で3.6倍延伸し、220℃で幅方向に3%収縮させ熱固定を行い、アンカーコート層が形成された、厚さ188μmの基材フィルムを得た。なお、アンカーコート層の厚さは0.10μmであった。
【0060】
<アンカーコート層形成用塗液の調整>
ポリエステル:酸成分が2,6−ナフタレンジカルボン酸65モル%/イソフタル酸30モル%/5−ナトリウムスルホイソフタル酸5モル%、グリコール成分がエチレングリコール90モル%/ジエチレングリコール10モル%で構成されている(Tg=80℃、平均分子量13000)。
【0061】
なお、このポリエステルは特開平6−116487号公報の実施例1に記載の方法に準じて下記のとおり製造した。すなわち2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル44部、イソフタル酸ジメチル4部、エチレングリコール34部、ジエチレングリコール2部を反応器に仕込み、これにテトラブトキシチタン0.05部を添加して窒素雰囲気下で温度を230℃にコントロールして加熱し、生成するメタノールを留去させてエステル交換反応を行った。次いで反応系の温度を徐々に255℃までに上昇させ系内を1mmHgの減圧にして重縮合反応を行い、ポリエステルを得た。
【0062】
アクリル:メチルメタクリレート30モル%/2−イソプロペニル−2−オキサゾリン30モル%/ポリエチレンオキシド(n=10)メタクリレート10モル%/アクリルアミド30モル%で構成されている(Tg=50℃)。
【0063】
なお、このアクリルは特開昭63−37167号公報の製造例1〜3に記載の方法に準じて下記のとおり製造した。すなわち、四つ口フラスコに界面活性剤としてラウリルスルホン酸ナトリウム3部、イオン交換水181部を仕込み、窒素気流中で60℃まで昇温させ、次いで重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.5部、亜硝酸水素ナトリウム0.2部を添加し、さらにモノマー類であるメタクリル酸メチル23.3部、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン22.6部、ポリエチレンオキシド(n=10)メタクリル酸40.7部、アクリルアミド13.3部の混合物を3時間にわたり、液温が60〜70℃になるように調整しながら滴下した。滴下終了後も同温度範囲に2時間保持しつつ攪拌下に反応を継続させ、次いで冷却して固形分が35%のアクリルの水分散体を得た。
【0064】
添加剤:シリカフィラー(平均粒系100nm)(日産化学株式会社製:商品名スノーテックスZL)
濡れ剤:ポリオキシエチレン(n=7)ラウリルエーテル(三洋化成株式会社製:商品名ナロアクティーN−70)
【0065】
<透明導電塗膜層の形成>
ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)0.5重量%とポリスチレンスルホン酸(分子量Mn=150,000)0.8重量%を含んでなる導電性高分子の水分散体(BaytronP:バイエルAG製)97部に対して、3部のジエチレングリコール、0.5部のγ−グリシドキシトリメトキシシラン、濡れ剤としてイソプロパノールを4部、界面活性剤としてフッ素化アルキル/エーテル/アルコール共重合系界面活性剤(大日本インキ化学製、商品名:F−445)を400ppm添加した塗液を、マイヤーバーを用いて上記のアンカーコート層を設けた基材フィルム上に塗工し、140℃で1分間の乾燥を行って導電性フィルムを得た。評価結果を表1に示す。また、得られた電磁波シールド特性につき図2に示す
【0066】
[実施例2]
透明導電塗膜層の厚みを変更した以外は、実施例1と同様な操作を繰り返した。得られた導電性フィルムの評価結果を表1に示す。また、得られた電磁波シールド特性につき図3に示す。
【0067】
[比較例1]
透明導電塗膜層の形成方法を以下のとおりに変更した以外は、実施例1と同様の操作を繰り返した。
ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)0.5重量%とポリスチレンスルホン酸(分子量Mn=150,000)0.8重量%を含んでなる導電性高分子の水分散体(BaytronP:バイエルAG製)94部に対して、濡れ剤としてイソプロパノールを6部、界面活性剤としてフッ素化アルキル/エーテル/アルコール共重合系界面活性剤(大日本インキ化学製、商品名:F−445)を50ppm添加した塗液を、マイヤーバーを用いて上記のアンカーコート層を設けた基材フィルム上に塗工し、140℃で1分間の乾燥を行って導電性フィルムを得た。評価結果を表1に示す。
【0068】
[比較例2]
透明導電塗膜層の形成方法を以下のとおりに変更した以外は、実施例1と同様の操作を繰り返した。
ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)0.5重量%とポリスチレンスルホン酸(分子量Mn=150,000)0.8重量%を含んでなる導電性高分子の水分散体(BaytronP:バイエルAG製)99.5部に対して、濡れ剤としてイソプロパノールを0.05部、界面活性剤としてフッ素化アルキルエーテル/アルコール共重合系界面活性剤(大日本インキ化学製、商品名:F−445)を50ppm添加した塗液を、マイヤーバーを用いて上記のアンカーコート層を設けた基材フィルム上に塗工し、140℃で1分間の乾燥を行って導電性フィルムを得た。評価結果を表1に示す。
【0069】
[比較例3]
透明導電塗膜層を形成する塗液中に濡れ剤を添加しなかった以外は実施例1と同様の操作を繰り返した。評価結果を表1に示す。
【0070】
[比較例4]
透明導電塗膜層を形成する塗液中に界面活性剤を添加しなかった以外は実施例1と同様の操作を繰り返した。評価結果を表1に示す。
【0071】
【表1】

【0072】
上記表から分かるように、本発明の導電性フィルムは、その表面抵抗値の面内均一性に優れている。
【産業上の利用可能性】
【0073】
以上に説明した本発明の導電性フィルムによれば、導電性能の面内均一性に優れているので、最近大面積での使用が増加している液晶ディスプレイ(LCD)、透明タッチパネル、有機エレクトロルミネッセンス素子、無機エレクトロルミネッセンスランプ等の透明電極や電磁波シールド材として好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の導電性フィルムの一例を示す断面図である。
【図2】実施例1で得た導電性フィルムの電磁波シールド特性を示す測定図である。
【図3】実施例2で得た導電性フィルムの電磁波シールド特性を示す測定図である。
【符号の説明】
【0075】
1 基材フィルム
2 アンカーコート層
3 透明導電塗膜層
4 ハードコート層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムの少なくとも片面に、下記一般式
【化1】

(式中、RおよびRは相互に独立して水素または炭素数1〜4のアルキル基を表すか、あるいは一緒になって任意に置換されてもよい炭素数1〜12のアルキレン基を表す)
で表される繰返し単位からなるポリカチオン状のポリチオフェンとポリアニオンとからなる導電性高分子を含有する透明導電塗膜層が積層された導電性フィルムであって、該導電性フィルムの表面抵抗値が1〜1×10Ω/□で、その変動誤差が3%以下であることを特徴とする導電性フィルム。
【請求項2】
導電性フィルムの全光線透過率が70%以上である請求項1に記載の導電性フィルム。
【請求項3】
該透明導電塗膜層が、テトラアルコキシシランおよびアルコキシ基以外の反応性の官能基を有するトリアルコキシシランからなる群より選ばれる少なくとも一種のシラン化合物に由来する反応生成物を含有する請求項1または2に記載の導電性フィルム。
【請求項4】
シラン化合物が、グリシドキシ基を有するトリアルコキシシランである請求項3に記載の導電性フィルム。
【請求項5】
基材フィルムと透明導電塗膜層との間に、ポリエステル樹脂およびオキサゾリン基とポリアルキレンオキシド鎖とを有するアクリル樹脂を構成成分として含有するアンカーコート層を設けた請求項1〜4のいずれかに記載の導電性フィルム。
【請求項6】
基材フィルムが、ポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレートで構成される請求項1〜5のいずれかに記載の導電性フィルム。
【請求項7】
基材フィルムの少なくとも片面に、下記一般式
【化2】

(式中、RおよびRは相互に独立して水素または炭素数1〜4のアルキル基を表すか、あるいは一緒になって任意に置換されてもよい炭素数1〜12のアルキレン基を表す)
で表される繰返し単位からなるポリカチオン状のポリチオフェンとポリアニオンとからなる導電性高分子を0.5〜1.5重量%、フッ素系界面活性剤を100〜1000ppmおよび水と相溶性のある溶媒からなる濡れ剤を1〜10重量%含有する水系塗料を塗布することを特徴とする導電性フィルムの製造方法。
【請求項8】
水系塗料が、さらにテトラアルコキシシランおよびアルコキシ基以外の反応性の官能基を有するトリアルコキシシランからなる群より選ばれる少なくとも一種のシラン化合物を含有する請求項7記載の導電性フィルムの製造方法。
【請求項9】
シラン化合物が、グリシドキシ基を有するトリアルコキシシランである請求項8に記載の導電性フィルムの製造方法。
【請求項10】
水系塗料を塗布するに先立って、該塗布面にポリエステル樹脂およびオキサゾリン基とポリアルキレンオキシド鎖とを有するアクリル樹脂を構成成分として含有するアンカーコート層を設ける請求項7〜9のいずれかに記載の導電性フィルムの製造方法。
【請求項11】
基材フィルムが、ポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレートで構成される請求項7〜10のいずれかに記載の導電性フィルムの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2008−66064(P2008−66064A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−241394(P2006−241394)
【出願日】平成18年9月6日(2006.9.6)
【出願人】(301020226)帝人デュポンフィルム株式会社 (517)
【Fターム(参考)】