説明

導電性フィルムまたは導電性シートおよび抵抗膜式タッチパネル構造体

【課題】
タッチパネル構造体において、押圧時に反射光によるニュートンリングの発生しない構造体およびそのための導電性フィルムまたは導電性シートを提供すること。
【解決手段】
透明フィルムまたは透明シートの片面の表面に導電性層が形成された導電性フィルムまたは導電性シートであって、該導電性層は導電性高分子よりなる層より形成されかつ該導電性層とフィルム(またはシート)との間にはマイクロシリカ粒子を含有する接着層が介在するか、最外面の表面は、微細凹凸形状を有することを特徴とする導電性フィルムまたは導電性シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性フィルムまたは導電性シート、およびそれらを使用した抵抗膜式タッチパネル構造体に関する。さらに詳しくは、非押圧時および指やペンによる押圧時に反射光によるニュートンリングの発生が抑制された抵抗膜式タッチパネル構造体、その構造体の上部基板層または下部基板層として好適に使用することができる導電性フィルムまたは導電性シートに関する。
【背景技術】
【0002】
最近、指入力またはペン入力によるモバイル情報端末として抵抗膜式タッチパネルの用途が拡大しつつある。抵抗膜式タッチパネルは特殊なペンを使用しないで、指または通常のペンで容易に入力でき、しかも低コスト化が比較的簡単であるという利点を有している。
一方抵抗膜式タッチパネルは、上部基板層と下部基板層との間にスペーサーによる空気層を有し、上部基板層と下部基板層の表面に形成された透明導電性膜を物理的に接触(タッチ)させることによって接触位置を感知する構造となっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このタッチパネルの上部基板層および下部基板層の基板材料として、ガラス、高分子フィルム、プラスチックシートなどが使用され、それぞれの基板材料組合せに基づいて種々の利点および欠点を有している。
殊に、上部基板(タッチ面)の材料として高分子フィルム(例えばPETフィルムの如きポリエステルフィルム)は割れない、軽量である、薄い、屈曲性に優れているなどの多くの利点のために広く利用されてきた。しかし、上部基板として高分子フィルムを使用した場合その優れた屈曲性のために局所的なタッチ圧が容易に感知される。
一方上部基板の表面に形成される透明導電性膜としてITO膜(Indium
Tin Oxide膜)が広く利用されている。このITO膜は、透明高分子フィルム表面に蒸着法或いはスパッタリング法によって形成される。
【0004】
これに対してITO(Indium Tin Oxide)の微粒子を透明高分子フィルムの表面に導電性層として形成させ、透明導電性基板層として利用する方法が提案された(特許文献1,2および3参照)。このITO微粉末を導電性層として利用した透明導電性基板層は、蒸着法或いはスパッタリング法による基板層に比べて、種々の高分子フィルムに採用することが可能であること、幅広いフィルム基板を容易に得ることができること、比較的低コストにより基板層を得ることができるなどの多くの利点を有している。
ITO微粒子をバインダーと共に導電性層としての使用は上部基板層のみならず、下部基板層にも同様に適用でき、いずれも抵抗膜式タッチパネルに有利に利用できる。
一方上部基板として、フィルム基板を使用することは前述したように種々の利点を有しているが、実際のタッチパネル構造体の実装に当たってはさらに改良すべき問題点を有している。その問題点の1つは、上部基板(フィルム基板)の表面上に形成される導電性酸化金属膜(ITO膜、ZnO膜)は、その剛性のために、基板の屈曲によって部分的に破壊され易いことである。
他の問題点は、ITO(Indium Tin Oxide)の原料であるインジウム如き希少金属はその使用量の拡大に従って、価格が高騰していることであり、またその資源の枯渇が社会問題化していることである。
【0005】
そこで、導電性材料として、ITO膜やITOの微粉末を使用しないで、フィルム基板と複合化が可能でありその上屈曲にも充分に抵抗性を有する材料があれば、前記した問題点を克服したタッチパネル構造体を提供できる可能性を有している。
本発明者は、新しい導電性材料として導電性高分子に着眼し、その導電性高分子をフィルム基板の表面に層状に複合したものは、透明性を有していること、しかもその導電性はタッチパネル構造体として充分な特性を有していること、さらにフィルム基板の屈曲に対して充分な抵抗性を有し、指やペンの押圧に対して、優れた耐久性を有していることを見出しすでに提案した。
【0006】
一方透明高分子フィルム上に導電性層を形成させた上部基板層を使用したタッチパネルは、指またはペンの押圧によるフィルムの撓みにより、上部基板層と下部基板層が導電性層を介して接触し、その接触個所を感知する構造となっている。しかし、温度や湿度変化により非入力時に部分的にあるいは入力時の入力部周辺に、このフィルムの撓みが生じると、上部基板層と下部基板層とのギャップ変化が起りニュートンリングの発生が認められるようになる。このニュートンリングの発生は、表示面の美的外観や鮮度を損なうことになる。
【特許文献1】特開平9-86967号公報
【特許文献2】特開2004-22224号公報
【特許文献3】特開2005-166350号公報
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで本発明者は、前記上部基板層の撓みによるニュートンリングの発生を抑制する方法について研究を進めた。その結果、透明フィルムまたは透明シート上に導電性層として導電性高分子よりなる層を形成させた基板において、(1)透明フィルムまたは透明シートと導電性高分子よりなる層との間にマイクロシリカ粒子を含有した接着層を介在させるか或いは(2)導電性高分子よりなる層中にマイクロシリカ粒子を含有させるか或いは(3)導電性高分子よりなる層の最外層の表面に微細凹凸形状を形成させることによって、指やペンの押圧によって上部基板層の撓みが起こっても、あるいは非入力時の温湿度変化により上部基板層の部分的撓みが生じても反射光が適当に分散しニュートンリングの発生が防止乃至抑制されることを見出し本発明に到達した。
【0008】
本発明は、かかる知見に基づいて到達されたものであり、本発明によれば下記導電性フィルムまたは導電性シート、およびそれらを使用した抵抗膜式タッチパネル構造体が提供される。
(1)(A)透明フィルムまたは透明シートの片面の表面に(B−1)マイクロシリカ粒子および接着剤よりなる接着層およびその接着層の表面に(C)導電性高分子よりなる層が形成されていることを特徴とする導電性フィルムまたは導電性シート。
(2)(A)透明フィルムまたは透明シートの片面の表面に(B−2)接着剤よりなる接着層およびその接着層の表面に(C−2)マイクロシリカ粒子を含有する導電性高分子よりなる層が形成されていることを特徴とする導電性フィルムまたは導電性シート。
(3)(A)透明フィルムまたは透明シートの片面の表面に(B−1)マイクロシリカ粒子および接着剤よりなる接着層およびその接着層の表面に(C)導電性高分子よりなる層が形成されかつその導電性高分子よりなる層の最外面の表面は微細凹凸形状を有することを特徴とする導電性フィルムまたは導電性シート。
(4)(A)透明フィルムまたは透明シートの片面の表面に(B−2)接着剤よりなる接着層およびその接着層の表面に(C−2)マイクロシリカ粒子を含有する導電性高分子よりなる層が形成されかつその導電性高分子よりなる層の最外面の表面は微細凹凸形状を有することを特徴とする導電性フィルムまたは導電性シート。
(5)前記(1)〜(4)のいずれか記載の導電性フィルムを上部基板層として使用した抵抗膜式タッチパネル構造体。
(6)前記(1)〜(4)のいずれか記載の導電性シートを下部基板層として使用した抵抗膜式タッチパネル構造体。
(7)前記(1)〜(4)のいずれか記載の導電性フィルムを上部基板層として使用しかつ前記(1)〜(4)のいずれか記載の導電性シートを下部基板層として使用した抵抗膜式タッチパネル構造体。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、導電性層が導電性高分子よりなる層でありかつその導電性層と透明フィルムまたは透明シートとの間に接着層が介在する導電性フィルムまたは導電性シートであって(1)その接着層中にマイクロシリカ粒子が含有するか、(2)その導電性高分子よりなる層中にマイクロシリカ粒子が含有するか或いは、(3)その導電性高分子よりなる層の最外層の表面は微細凹凸形状を有する導電性フィルムまたは導電性シートが提供され、これら導電性フィルムまたは導電性シートを抵抗膜式タッチパネル構造体の上部基板層または下部基板層として使用した場合、押圧によるあるいは非押圧時の温湿度変化による部分的な撓みによるニュートンリングの発生が抑制されたものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の導電性フィルムまたは導電性シートおよびそれらを使用した抵抗膜式タッチパネル構造体について具体的に説明する。図1〜図4はいずれも本発明の導電性フィルムまたは導電性シートの直角断面における構造を示す模式図である。図1〜4において、1はいずれも透明フィルムまたは透明シートであり、2−aおよび2−bはいずれも接着層であり、2−aはマイクロシリカ粒子および接着剤よりなる接着層を示し、2−bは実質的に接着剤よりなる接着層を示す。3−a、3−bおよび3−cはいずれも導電性を有する導電性高分子よりなる層であり、3−aは導電性高分子よりなる層(表面平滑)を示し、3−bはマイクロシリカ粒子を含有する導電性高分子より形成された層を示し、3−cは最外面の表面が微細凹凸形状を有する導電性高分子よりなる層を示す。
【0011】
先ず図面により本発明の導電性フィルムまたは導電性シートについて説明する。本発明の導電性フィルムまたは導電性シートは大別して下記態様−1、態様−2、態様−3および態様−4に分類することができる。
(1)態様−1
図1で示される断面構造を有している。すなわち(A)透明フィルムまたは透明シート1の片面の表面に、(B−1)マイクロシリカ粒子および接着剤よりなる接着層2−aが形成され、その接着層2−aの表面に導電性高分子よりなる層3−aが形成され一体化されたものである。図1で表される導電性フィルムまたは導電性シートは透明であり導電性を有している。
(2)態様−2
図2で示される断面構造を有している。すなわち(A)透明フィルムまたは透明シート1の片面の表面に、(B−2)実質的に接着剤よりなる接着層2−bが形成され、その接着層の表面に(C−2)マイクロシリカ粒子を含有する導電性高分子よりなる層が形成され一体化されたものである。図2では表される導電性フィルムまたは導電性シートは透明であり導電性を有している。
(3)態様−3
図3で示される断面構造を有している。すなわち(A)透明フィルムまたは透明シート1の片面の表面に、(B−1)マイクロシリカ粒子および接着剤よりなる接着層2−aが形成され、その接着層の表面に(C)導電性高分子よりなる層3−cが形成されて一体化され、かつその導電性高分子よりなる層の最外面の表面は微細凹凸形状を有しているものである。図3で表される導電性フィルムまたは導電性シートは透明であり導電性を有している。
(4)態様−4
図4で示される断面構造を有している。すなわち(A)透明フィルムまたは透明シート1の片面の表面に、(B−2)実質的に接着剤よりなる接着層2−bが形成され、その接着層の表面に(C−2)マイクロシリカ粒子を含有する導電性高分子よりなる層3−cが形成され一体化されかつその導電性高分子よりなる層の最外面の表面は微細凹凸形状を有しているものである。図4で表される導電性フィルムまたは導電性シートは透明であり導電性を有している。
【0012】
図1〜4において、透明フィルム1は透明高分子フィルムであり、タッチパネルのタッチ面に通常使用されているフィルムであればよい。かかるフィルムとしては、ポリエステルフィルム、殊にポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが好適である。透明フィルム1の厚さは、25〜250μm、好ましくは120〜200μmであるのが望ましい。また図1〜図4において透明シート1としては、透明な高分子シートであり、具体的にはポリカーボネート、ポリシクロオレフィンまたはアクリル樹脂のシートが挙げられ、特に好ましいのはビスフェノールAを主たるモノマーとするポリカーボネートシートである。透明シート1の厚みは、0.2〜2.5mm、好ましくは0.4〜2mmが有利である。
【0013】
本発明の導電性フィルムまたは導電性シートにおいては導電性層として導電性高分子よりなる層が使用される。導電性高分子はそれ自体でも或いは層状でも透明フィルムまたは透明シートに直接結合乃至接着させることは困難であるので、導電性高分子を層状に導電性層として機能を発現させるために接着層の使用が有効な手段となる。
透明フィルムまたは透明シート1の表面に形成される接着層(2−aまたは2−b)として使用される接着剤は透明なポリマーが使用され、具体的にはアクリル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ酢酸ビニル共重合体、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アイオノマー樹脂、紫外線硬化型樹脂などが使用される。
透明フィルムまたは透明シート1の表面に接着層(2−a)または(2−b)を形成させる方法は、例えば接着剤を溶融して直接透明フィルムまたは透明シート1の表面に塗布してもよく、また接着剤を溶媒に溶解または分散させてドープを作り、このドープを透明フィルムまたは透明シートに塗布またはスプレーしてもよい。この際、接着剤中にマイクロシリカ粒子を含有させることができる。マイクロシリカ粒子の配合により、ニュートンリングの発生を抑制する効果がいっそう高まる。このマイクロシリカ粒子としては、粒径が1.5μm以下、好ましくは1.0μm以下のものが使用でき、形状は球状乃至楕円形状のものが有利である。平均粒径は0.05〜0.5μm、好ましくは0.1〜0.3μmの範囲のものが望ましい。
【0014】
マイクロシリカ粒子を接着剤に含有させた場合、接着層中のマイクロシリカ粒子は重量で2〜40%、好ましくは5〜20%含有するのが望ましい。接着剤中にマイクロシリカ粒子を含有させた場合、図1および図3の接着層2−aが形成され、マイクロシリカ粒を含有させない場合、図2および図4の接着層2−bが形成される。接着層2−aまたは2−bの厚みは、1〜20μm、好ましくは2〜15μmの範囲が望ましい。
前記接着層2−aまたは2−bの表面に導電性高分子よりなる層を形成させることにより本発明の導電性フィルムまたは導電性シートとなる。導電性高分子よりなる層は、実質的に導電性高分子よりなる層3−aであってもよく、また導電性高分子とマイクロシリカ粒子を混合した層3−bであってもよい。さらに導電性高分子よりなる層はその最外面の表面が微細凹凸形状を有する表面であってもよい(3−c)。
【0015】
本発明の導電性フィルムまたは導電性シートにおいては、導電性層として導電性高分子よりなる層が使用される。透明フィルムまたは透明シート1の表面に導電性高分子よりなる層を形成させる1つの方法は、予め導電性高分子の膜を作成しておき、この高分子の膜を接着剤を使用して透明フィルムまたは透明シートに貼り付ける方法である。もう1つの方法は、導電性高分子の溶液またはドープを透明フィルムまたは透明シートの表面に塗布または印刷すればよい。この導電性高分子としては、透明性に優れかつ電気伝導性を有するものであればよく、その電気伝導度としては、100〜2,000(S/□)、好ましくは200〜1,500(S/□)を有するものが望ましい。
【0016】
導電性高分子膜の具体例としては、主鎖がπ共役系で構成されている有機高分子であるのが有利であり、例えば、ポリピロール類、ポリチオフェン類、ポリアセチレン類、ポリフェンレン類、ポリフェンレンビニレン類、ポリアニリン類、ポリアセン類、ポリチオフェンビニレン類およびこれらの共重合体が挙げられる。これらの中でポリピロール類、ポリチオフェン類、およびポリアニリン類が安定性および膜の形成の容易性の点から好ましい。とりわけ、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリ(N−メチルピロール)、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ(3−メトキシチオフォン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)およびこれらの共重合体が好ましい。これら導電性高分子の溶液を調製するために使用される溶媒としては水;N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、アセトニトリルおよびベンゾニトリルの如き極性有機溶媒;フェノール、クレゾールおよびキシレノールの如き、フェノール類;メタノール、エタノール、プロパノールおよびブタノールの如きアルコール類;アセトンおよびメチルエチルケトンの如きケトン類;ヘキサン、ベンゼン、トルエン、およびキシレンの如き炭化水素類;ジオキサンおよびジエチルエーテルの如きエーテル類などが例示される。これら溶媒は、1種でも或いは2種以上の混合溶媒として使用される。
【0017】
前述した導電性高分子の溶液を透明フィルムまたは透明シート上に塗布または印刷する方法としては、例えば浸漬、コンマコート、スプレーコート、ロールコート、グラビア印刷などが挙げられる。塗布後薄膜を硬化させることが望ましい。
導電性高分子よりなる層が表面に形成された導電性フィルムまたは導電性シートは、導電性を有しておりその表面抵抗値が300〜3,000Ω/□、好ましくは500〜2,500Ω/□であるのが望ましい。
また導電性フィルムまたは導電性シートは、透明性を有しその光透過率(波長550nm)が85%以上、より好ましくは95%以上であるのが有利である。
上記導電性高分子よりなる層(導電性層)には、マイクロシリカ粒子を配合することができる。マイクロシリカ粒子の配合により、ニュートンリングの発生を抑制する効果が一層高まる。このマイクロシリカ粒子としては、粒径が1.5μm以下、好ましくは1.0μm以下のものが使用でき、形状は球状乃至楕円形状のものが有利である。平均粒径は0.05〜0.5μm、好ましくは0.1〜0.3μmの範囲のものが望ましい。マイクロシリカ粒子は、導電性高分子と一緒に混合して溶融または溶液として透明フィルムまたは透明シート上に導電性層を形成することができる。
【0018】
マイクロシリカ粒子を含有する導電性高分子中のマイクロシリカ粒子は、重量で2〜40%、好ましくは5〜20%含有するのが望ましい。
導電性層の厚みは、0.5〜10μm、好ましくは1〜8μmの範囲が適当である。
前述したとおり、導電性高分子よりなる層(またはこれにマイクロシリカ粒子を含有する層)を透明フィルムまたは透明シートの表面に形成させるには、接着剤を使用して貼り合せることもできる。その際使用される接着剤としては、例えばアクリル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アイオノマー樹脂、紫外線硬化型樹脂などを挙げることができる。接着剤の厚みとしては1〜20μm、好ましくは2〜15μmの範囲が望ましい。
【0019】
本発明の導電性フィルムまたは導電性シートにおいて導電性高分子よりなる層(導電性層)の表面は、微細凹凸形状を有することができる。この表面における微細凹凸形状に基づいて、光の反射光が適当に分散し、指やペンによる押圧によってあるいは温湿度〜基板の撓みが起っても、ニュートンリングの発生が防止乃至抑制される。導電性層の最外面における表面の微細凹凸の形状は、高さ(凸部の高さ)が1μm以下、好ましくは0.5μm以下、0.01μm以上、好ましくは0.05μm以上であるのが適当である。高さの平均値は、0.05〜0.5μm、好ましくは0.05〜0.4μmの範囲が望ましい。また微細凹凸におけるピッチ間隔(凸部とそれに隣接する凸部の頂点の間隔)は、0.5〜5μmが好ましく、そのピッチ間隔の平均値は0.05〜2μm、好ましくは0.1〜1μmの範囲が有利である。
【0020】
導電性層の表面に、前記微細凹凸を形成させる手段は特に制限されないが、後述するように表面に微細凹凸形状を有する離形フィルムを準備し、その微細凹凸面において導電性層を形成させて、離形フィルムの表面の微細凹凸形状を導電性層に転写させる方法が好ましい。離形フィルムとしてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル(PET)などのフィルムが使用されるがポリエステルが好ましい。離形フィルムの表面の微細凹凸形状は転写により導電性層の表面に前記した微細凹凸形状が形成される形状であればよい。その微細凹凸形状を形成させる手段は、種々の方法が挙げられるが、例えばサンドブラスト法が採用される。
【0021】
次に、本発明の最外面に微細凹凸形状を有する導電性フィルムまたは導電性シートの製造方法について説明する。具体的には下記製法−(1)〜製法−(2)が好ましい例として挙げられるが、これらの方法は部分的改変されてもよく、適当に組み合わせてもよい。なお、下記製法において“導電性高分子よりなる組成物”とは、導電性高分子の他に、さらにマイクロシリカ粒子や溶媒を含んでいてもよい。
製法−(1)
(a)微細凹凸形状を表面に有する離形フィルムの微細凹凸形状を有する表面側に、導電性高分子よりなる組成物から形成された導電性層を塗設し、
(b)その導電性層の表面に接着層を塗布し、
(c)さらに接着層の表面に、透明フィルムまたは透明シートを貼り合わせ、次いで
(d)上記離形フィルムを剥離・除去する、
ことよりなる表面に微細凹凸形状を有する導電性フィルムまたは導電性シートの製造方法。
製法−(2)
(a)微細凹凸形状を表面に有する離形フィルムの微細凹凸形状を有する表面側に、導電性高分子よりなる組成物から形成された導電性層を塗設し、
(b)その導電性層の表面に、接着層が片面に形成された透明フィルムまたは透明シートを接着層を介して貼り合わせ、次いで
(c)上記離形フィルムを剥離・除去する、
ことよりなる微細凹凸形状を有する導電性フィルムまたは導電性シートの製造方法。
【0022】
前記製法−(1)または製法−(2)において、透明フィルムまたは透明シート、導電性層の組成および厚み、接着層の組成および厚みは前記したとおりである。また導電性層の離形フィルムへの塗設は、前述した導電性層の組成物を調整し、その組成物を溶融して離形フィルムの微細凹凸面上に塗布して行うことができる。さらに別法として前記組成物と溶媒とからなるドープを作り、そのドープを離形シートの微細凹凸面上に塗布するかスプレーして溶媒を乾燥させることにより導電性層を形成させることができる。ドープの作成に使用される溶媒は、組成物の種類やフィルムの種類によって適宜選択される。溶媒としては、水、低級アルコール(メタノール、エタノール、プロパノールなど)、ケトン(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)、エーテル(ジエチルエーテル、ジオキサンなど)、炭化水素(オクタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレンなど)が挙げられる。
【0023】
離形フィルムの微細凹凸面に導電性層を形成させて後に、その表面に接着層を形成させさらに透明フィルムまたは透明シートを貼り合わせる。この貼り合わせは製法−(1)に従って、接着層に透明フィルムまたは透明シートを直接熱圧着させてもよくまた接着剤を介して行ってもよい。さらに製法−(2)に従って、接着層が片面に形成された透明フィルムまたは透明シートを接着層を介して導電性層の表面に貼り合わせることもできる。
以上説明した方法によって離形フィルム/導電性層/接着層/透明フィルムまたは透明シートよりなる構造体が得られる。この構造体から最外層の離形フィルムを剥離除去することにより、離形フィルムの表面の微細凹凸形状が転写された表面を有する導電性層が形成される。かくして本発明の導電性フィルムまたは導電性シートが得られる。
前記の方法により得られた導電性フィルムまたは導電性シートは、その導電性層の表面は、微細凹凸形状を有している。これらの導電性フィルムまたは導電性シートを、抵抗膜式タッチパネル構造体の上部基板層または下部基板層として使用した場合、非押圧時の温湿度変化および押圧によるニュートンリングの発生が一層抑制されたものとなる。
【0024】
本発明の導電性フィルムまたは導電性シートは導電性を有し、その導電性能は表面抵抗値が3,000Ω/□以下、好ましくは2,000Ω/□以下、特に好ましくは600〜1,800Ω/□の範囲である。また本発明の導電性フィルムまたは導電性シートは光透過性に優れており、光透過率(波長550nm)が85%以上、好ましくは90%以上、特に好ましくは93〜99%の範囲である。
本発明によれば、前記した導電性フィルムまたは導電性シートを上部基板層または下部基板層として使用したタッチパネル構造体が提供される。具体的には下記態様−1〜態様−3の構造体が提供される。
(1)態様−1
本発明の前記導電性フィルムを上部基板層として使用し、下部基板層として、本発明以外の導電性シート(“他の導電性シート”という)を使用し、導電性層が押圧により互いに接触しうるように対向して配置されたタッチパネル構造体。
ここで他の導電性シートとしては、前記透明シートまたはガラス板の表面にITO膜、ITO微細粉末層或いは導電性ナノカーボン層を形成させた導電性シートが挙げられる。
(2)態様−2
本発明の前記導電性シートを下部基板層として使用し、上記基板層として、本発明以外の導電性フィルム(“他の導電性フィルム”という)を使用し、導電性層が押圧により互いに接触しうるように対向して配置されたタッチパネル構造体。
ここで他の導電性フィルムとしては、前記透明フィルムの表面に、ITO膜、ITO微細粉末層或いは導電性ナノカーボン層を形成させた導電性フィルムが挙げられる。
(3)態様−3
本発明の前記導電性フィルムを上部基板層として使用し、かつ本発明の前記導電性シートを下部基板層として使用し、導電性層が押圧により互いに接触しうるように対向して配置されたタッチパネル構造体。
【0025】
前記態様−1〜態様−3において、タッチパネル構造体の設計に当たっては。導電性フィルムおよび導電性シートはそれぞれの導電性層が押圧により接触しうるように対向して配置される。導電性フィルムと導電性シートとの間隔およびその間におけるスペーサーの配置などは、通常の抵抗膜式タッチパネル構造体のものと実質的に相違はない。
本発明のタッチパネル構造体は非押圧時の温湿度変化および押圧によるニュートンリングの発生が防止乃至抑制されたものであり、表示面の画像の鮮映度が改良されたものである。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
【実施例1】
【0026】
厚さ188μmのポリエステル(PET)フィルムの片面に、マイクロシリカ粒子を8重量%含有するUV接着剤(紫外線硬化剤)を塗布し、接着層を形成させた。接着層の厚さは10μmであった。この接着層の表面に、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)系の導電性高分子組成物を塗布し導電性層を形成させ、しかる後紫外線を照射し、接着層を硬化した。得られた導電性フィルムを上部基板としITO膜を片面に有するガラス基板(厚さ1.1mm)を下部基板として、導電性層とITO膜が向かい合うようにスペーサーを介して貼り合わせてタッチパネル構造体を作成した。
このタッチパネル構造体の初期外観および環境試験後の外観共にニュートンリングの発生は認められなかった。一方従来のITO膜を片面に有する導電性フィルムを前記導電性フィルム(上部基板)の代りに使用して作成したタッチパネル構造体は初期外観、環境試験後の外観共にニュートンリングの発生が認められた。
これらの結果から、本発明の構造体はマイクロシリカ粒子を含有する接着層を有する導電性層の使用により光分散を生じさせ反射光の干渉を弱めて見えにくくする作用を有することが理解される。
【実施例2】
【0027】
厚さ188μmのポリエステル(PET)フィルムの片面に、UV接着剤(紫外線硬化剤)を塗布し、接着層を形成させた。接着層の厚さは10μmであった。この接着層の表面に、マイクロシリカ粒子を8重量%含有するポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)系の導電性高分子よりなる組成物を塗布し導電性層を形成させ、しかる後紫外線を照射し、接着層を硬化した。
得られた導電性フィルムを上部基板とし、ITO膜を片面に有するガラス基板(厚さ1.1mm)を下部基板として、導電性層とITO膜が向かい合うようにスペーサーを介して貼り合わせてタッチパネル構造体を作成した。
このタッチパネル構造体の初期外観および環境試験後の外観共にニュートンリングの発生は認められなかった。一方従来のITO膜を片面に有する導電性フィルムを前記導電性フィルム(上部基板)の代りに使用して作成したタッチパネル構造体は初期外観、環境試験後の外観共にニュートンリングの発生が認められた。
これらの結果から、本発明の構造体はマイクロシリカ粒子を含有する接着層を有する導電性層の使用により、光分散を生じさせ反射光の干渉を弱めて見えにくくする作用を有することが理解される。
【実施例3】
【0028】
厚さ188μmのポリエステル(PET)フィルム上にサンドブラスト法により表面に微細凹凸形状を形成させた。このフィルム(離形フィルム)の微細凹凸面上にポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)系の導電性高分子よりなる組成物を塗布し導電性層を形成させた。得られたフィルムの導電性層上にマイクロシリカ粒子を8重量%含有するUV(紫外線硬化剤)接着剤を塗布し、その接着剤層(厚さ10μm)の面に、厚さ188μmのポリエステル(PET)フィルム(表面平滑フィルム)を貼り合わせて後、接着剤を硬化した。得られた複合体から、離型フィルムを剥離除去し、透明導電性フィルムの基板を得た。
この透明導電性フィルム基板とITO膜を片面に有するポリカーボネートシート基板(厚さ1.1mm)とを導電性層とITO膜が向かい合うようにスペーサーを介して貼り合わせてタッチパネル構造体を作成した。
このタッチパネル構造体の初期外観および環境試験後の外観共にニュートンリングの発生は認められなかった。一方、従来のITO膜を片面に有する導電性フィルム基板(表面凹凸形状を有しない)を前記フィルム基板の代りに使用して作成したタッチパネル構造体は初期外観、環境試験後の外観共にニュートンリングの発生が認められた。
これらの結果から、本発明は表面微細凹凸形状を有する導電性層の使用により、光分散を生じさせ反射光の干渉を弱めて見えにくくする作用を有することが理解される。
【実施例4】
【0029】
厚さ188μmのポリエステル(PET)フィルム上にサンドブラスト法により表面に微細凹凸形状を形成させた。このフィルム(離形フィルム)の微細凹凸面上にポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)系の導電性高分子よりなる組成物を塗布し導電性層を形成させた。得られたフィルムの導電性層上にUV(紫外線硬化剤)接着剤を塗布し、その接着剤層の面に、厚さ1mmのポリカーボネートシートを貼り合わせて後、接着剤を硬化した。得られた複合体から、離型フィルムを剥離除去し、透明導電性シートの基板を得た。
この導電性シート基板とITO膜を片面に有する厚さ188μmのポリエステル(PET)フィルムを貼り合わせて抵抗膜式タッチパネル構造体を作成した。
このタッチパネル構造体の初期外観および環境試験後の外観共にニュートンリングの発生は認められなかった。一方、ITO膜を片面に有する導電性ポリカーボネートシート(厚さ1mm)の基板(表面凹凸形状を有していない)を、前記導電性シートの基板の代りに使用して作成したタッチパネル構造体は初期外観および環境試験の後、いずれもニュートンリングの発生が認められた。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の導電性フィルムまたは導電性シートの直角断面における構造を示す模式図である。
【図2】本発明の他の導電性フィルムまたは導電性シートの直角断面における構造を示す模式図である。
【図3】本発明のさらに他の導電性フィルムまたは導電性シートの直角断面における構造を示す模式図である。
【図4】本発明のさらに他の導電性フィルムまたは導電性シートの直角断面における構造を示す模式図である。
【符号の説明】
【0031】
1:透明フィルムまたは透明シート
2−a:マイクロシリカ粒子および接着剤よりなる接着層
2−b:接着剤よりなる接着層
3−a:導電性高分子よりなる層
3−b:マイクロシリカ粒子を含有する導電性高分子よりなる層
3−c:表面が微細凹凸形状を有する導電性高分子よりなる層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)透明フィルムまたは透明シートの片面の表面に(B−1)マイクロシリカ粒子および接着剤よりなる接着層およびその接着その表面に(C)導電性高分子よりなる層が形成されていることを特徴とする導電性フィルムまたは導電性シート。
【請求項2】
(A)透明フィルムまたは透明シートの片面の表面に(B−2)接着剤よりなる接着層およびその接着層の表面に(C−2)マイクロシリカ粒子を含有する導電性高分子よりなる層が形成されていることを特徴とする導電性フィルムまたは導電性シート。
【請求項3】
(A)透明フィルムまたは透明シートの片面の表面に(B−1)マイクロシリカ粒子および接着剤よりなる接着層およびその接着その表面に(C)導電性高分子よりなる層が形成されかつその導電性高分子よりなる層の最外面の表面は微細凹凸形状を有することを特徴とする導電性フィルムまたは導電性シート。
【請求項4】
(A)透明フィルムまたは透明シートの片面の表面に(B−2)接着剤よりなる接着層およびその接着層の表面に(C−2)マイクロシリカ粒子を含有する導電性高分子よりなる層が形成されかつその導電性高分子よりなる層の最外面の表面は微細凹凸形状を有することを特徴とする導電性フィルムまたは導電性シート。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか記載の導電性フィルムを上部基板層として使用した抵抗膜式タッチパネル構造体。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか記載の導電性シート下部基板層として使用した抵抗膜式タッチパネル構造体。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか記載の導電性フィルムを上部基板層としかつ請求項1〜4のいずれか記載の導電性シートを下部基板層として使用した抵抗膜式タッチパネル構造体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−193913(P2009−193913A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−35797(P2008−35797)
【出願日】平成20年2月18日(2008.2.18)
【出願人】(504203354)株式会社タッチパネル研究所 (41)
【Fターム(参考)】