説明

導電性ペーストおよびこれを用いた電子部品の実装方法

【課題】導電性ペーストの保存時における導電性フィラーの沈降を抑制し、使用時の液だれを抑制する。
【解決手段】熱硬化性樹脂と、導電性フィラーと、チキソトロピー付与剤と、を含む導電性ペーストであって、導電性フィラーは、球状または略球状の粒子からなり、チキソトロピー付与剤は、有機酸および有機オニウム塩よりなる群から選択される少なくとも1種からなり、チキソトロピー付与剤は、平均粒子径10〜40μmの固体粒子の状態で前記ペーストに含まれている導電性ペースト。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性ペーストに関し、特に、球状または略球状の粒子からなる導電性フィラーを含む導電性ペーストの物性の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
導電性ペーストは、様々な電気機器や電子機器に用いられている。例えば、電子部品を基板に実装する際には、導電性ペーストが接着剤として用いられている。導電性ペーストは、導電性フィラーと、バインダーである樹脂成分とを含み、導電性フィラーは樹脂成分中に分散している。導電性ペーストは、樹脂成分を硬化させる前には、一般的に導電性を有さないが、部品間に塗布された状態で樹脂成分を硬化させると導電性が発現する。これは樹脂の硬化収縮や部品間に印加される圧力により、導電性フィラーの粒子同士が接触もしくは接近するためである。
【0003】
導電性フィラーには、不定形の粒子も用いられるが、球状または略球状の粒子を用いた方が、導電性ペーストの物性は安定化する。しかし、球状または略球状の粒子をフィラーに用いると、導電性ペーストの粘度が低くなり、その保存時に、フィラーが容易に沈降してしまう。また、ペーストの使用時にも、液だれが発生しやすく、例えば基板の電極上に塗布されたペーストが、加熱時にだれ広がることがある。よって、フィラーの沈降や液だれを防止する対策が必要となる。
【0004】
そこで、導電性ペーストを常時攪拌させながら保存すること、導電性ペーストに増粘作用を有する無機物を添加すること、導電性ペーストにチキソトロピーを付与すること、導電性ペーストに粘性の高い樹脂や溶剤を加えることなどが行われている。
【0005】
また、球状の導電性フィラーには、Agなどの貴金属が用いられており、導電性ペーストのコストが高くなる。よって、コストを下げるために、導電性フィラーの量を減らすとともに、樹脂成分にチキソトロピーを付与することが提案されている(特許文献1)。特許文献1においては、導電性フィラーとしてCuおよびNiの単体もしくは合金を使用する場合、チキソトロピーを付与する材料の他に、還元剤を併用する必要があることが記載されている。つまり、酸化されやすい導電性フィラーを用いる場合には、導電性ペーストに還元剤を添加しないと、前記ペーストを用いて導電性が良好な導電層を形成することができない。
さらに、球状または略球状の粒子からなる導電性フィラーを含む導電性ペーストは、フィラー粒子同士の接触点が少ないため、導電性が小さくなりやすいという問題もある。
【特許文献1】特開2003−306659号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、球状または略球状の導電性フィラーを含む導電性ペーストにおいて、その保存時におけるフィラーの沈降を抑制するとともに、その使用時における液だれを抑制することを目的とする。本発明は、また、フィラーの沈降と液だれを抑制すると同時に、ペーストの導電性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、熱硬化性樹脂と、導電性フィラーと、チキソトロピー付与剤とを含む導電性ペーストであって、導電性フィラーは、球状または略球状の粒子からなり、チキソトロピー付与剤は、有機酸および有機オニウム塩よりなる群から選択される少なくとも1種からなり、チキソトロピー付与剤は、平均粒子径10〜40μmの固体粒子の状態でペーストに含まれている導電性ペーストに関する。
25℃でE型粘度計の回転速度を0.5rpmに設定して測定されるこのペーストの粘度:X0.5が100〜500Pa・sであり、25℃でE型粘度計の回転速度を5rpmに設定して測定されるこのペーストの粘度:X5に対するX0.5の比:X0.5/X5が2〜8であることが好ましい。
また、チキソトロピー付与剤は、導電性フィラーに対する還元性を有することが望ましい。
【0008】
チキソトロピー付与剤である有機酸には、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、クロトン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、フタルアルデヒド酸、フェニル酪酸、フェノキシ酢酸、フェニルプロピオン酸、アビエチン酸およびアスコルビン酸よりなる群から選択される少なくとも1種を用いることができる。
【0009】
チキソトロピー付与剤である有機オニウム塩には、例えば、エチルアミン塩酸塩、ジエチルアミン塩酸塩、ジメチルアミン塩酸塩、シクロヘキシルアミン塩酸塩、トリエタノールアミン塩酸塩、グルタミン酸塩酸塩、ジエチルアミン臭化水素酸塩、シクロヘキシルアミン臭化水素酸塩よりなる群から選択される少なくとも1種を用いることができる。
【0010】
本発明は、また、基板と、基板に実装された電子部品と、基板と電子部品とを接合する上記の導電性ペーストとを含む機器に関する。
本発明は、更に、(a)上記導電性ペーストを、基板の所定の領域に塗布する工程と、(b)導電性ペーストが塗布された領域に、電子部品を配置する工程と、(c)電子部品と接した導電性ペーストを、チキソトロピー付与剤が還元性を発揮する第1温度にまで加熱する工程と、(d)第1温度よりも高い第2温度で、熱硬化性樹脂を硬化させる工程とを含む電子部品の実装方法に関する。
ここで、略球状とは、球状に近い形状であり、例えば鶏卵状を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明の導電性ペーストは、所定のチキソトロピー付与剤を、平均粒子径10〜40μmの固体粒子の状態で含むため、好適なチキソトロピーが発現する。よって、沈降しやすい球状または略球状の粒子を導電性フィラーに用いても、導電性ペーストの保存時におけるフィラーの沈降や導電性ペーストの使用時における液だれを防止することが可能である。
【0012】
また、導電性フィラーが球状または略球状の粒子からなり、かつ、高い剪断力を付与した場合の粘度が低いことから、フィラーが沈降したとしても、導電性ペーストを攪拌することにより、容易にフィラーの分散状態を回復させることができる。
【0013】
また、球状または略球状の粒子からなる導電性フィラーは、物性が安定化するため、導電性ペーストの硬化物における抵抗値のバラツキが小さくなる。
【0014】
さらに、チキソトロピー付与剤が導電性フィラーに対する還元性を有する場合、フィラー粒子の酸化皮膜を還元して除去することができる。よって、導電性ペーストの硬化物における抵抗値が小さくなり、導電性が向上する。また、チキソトロピー付与剤の還元性は、導電性ペーストと接する電子部品や基板の電極上の酸化皮膜にも同時に作用する。よって、導電性に優れた電気機器や電子機器が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の好ましい導電性ペーストは、25℃でE型粘度計の回転速度を0.5rpmに設定して測定される粘度(X0.5)が、100〜500Pa・sである。すなわち、低い剪断力を付与した場合には、ペーストの粘度は高くなる。よって、導電性フィラーが球状または略球状の粒子からなる場合でも、ペーストの保存時におけるフィラーの沈降やペーストの使用時における液だれを抑制することができる。
【0016】
また、本発明の導電性ペーストは、25℃でE型粘度計の回転速度を5rpmに設定して測定されるペーストの粘度(X5)に対するX0.5の比(X0.5/X5)が、2〜8であることが好ましい。すなわち、高い剪断力を付与した場合には、ペーストの粘度は低くなる。よって、ペーストの取り扱いが容易であり、作業性も高い。また、万一、フィラーの沈降が起こった場合でも、ペーストを撹拌するだけで、容易にフィラーの分散状態を回復させることができる。
【0017】
上記のような物性を有する導電性ペーストは、熱硬化性樹脂と、球状または略球状の粒子からなる導電性フィラーと、所定のチキソトロピー付与剤とを配合することにより、得ることができる。ここで、チキソトロピー付与剤は、有機酸および有機オニウム塩よりなる群から選択される少なくとも1種からなり、平均粒子径10〜40μmの固体粒子の状態でペーストに含まれている。
【0018】
通常、球状または略球状の導電性フィラーは沈降しやすい。また、導電性フィラーの含有量が少なくなると、ペーストの使用時に液だれが発生しやすい。これに対し、本発明の導電性ペーストにおいては、所定のチキソトロピー付与剤の作用により、好適なチキソトロピーが発現し、フィラーの沈降や液だれが抑制される。例えば、本発明の導電性ペーストを、銅箔、金泊などの金属箔からなる電極上に塗布し、30℃で30分間経過させた場合、塗布面積は1.2倍以内に拡大する程度である。
なお、導電性ペーストの粘度やこのペーストに発現されるチクソトロピーの程度は、例えば、チクソトロピー付与剤の添加量を変化させることにより、制御することができる。導電性ペーストの粘度は、樹脂、硬化剤、および/または導電性フィラーの添加量を変化させることによっても、制御することができる。
【0019】
ただし、チキソトロピー付与剤は、平均粒子径10〜40μmの固体粒子の状態でペーストに含まれている必要があり、平均粒子径15〜30μmで含まれていることが好ましい。固体粒子の平均粒子径が10μmより小さくなると、剪断力の大きさにかかわらず、導電性ペーストの粘度が大きくなりすぎる。よって、ペーストの取り扱いが困難となり、作業性も低下する。一方、固体粒子の平均粒子径が40μmより大きくなると、ペーストを均質に塗布することが困難になる。例えば、スクリーン印刷法により導電性ペーストを基板に塗布する場合、塗膜にスジが生じる。固体粒子の平均粒子径は、導電性フィラー同士の接触ができるだけ妨げられないように、導電性フィラーの平均粒子径より小さいことが望ましい。例えば、チキソトロピー付与剤の固体粒子の平均粒子径は、フィラー粒子の平均粒子径の0.8倍以下であることが望ましい。
なお、導電性ペーストの製造および保存は、一般に常温以下で行われるため、チキソトロピー付与剤は、常温以下で固体である必要がある。すなわち、チキソトロピー付与剤の融点は、25℃以上であることが必要である。ただし、ペーストの安定性を高める観点から、チキソトロピー付与剤の融点は、50℃以上であることが好ましい。常温で液体状のチキソトロピー付与剤が導電性ペーストに含まれていると、導電性ペーストにチクソトロピーを付与できなくなる。
【0020】
チキソトロピー付与剤は、導電性フィラーに対する還元性を有することが好ましい。チキソトロピー付与剤が導電性フィラーに対する還元性を有する場合、導電性ペーストを加熱して硬化させる際に、フィラー粒子の酸化皮膜を還元して除去することができる。よって、導電性ペーストの硬化物における抵抗値が小さくなり、導電性が向上する。導電性フィラーが、銀や銅合金のように硫化もしくは酸化されやすい材料からなる場合には、還元性を有するチキソトロピー付与剤を用いることが特に有効である。また、導電性ペーストを加熱して硬化させる際に、チキソトロピー付与剤の還元性は、導電性ペーストと接する電子部品や基板の電極上の酸化皮膜にも同時に作用する。還元性は、熱硬化性樹脂を硬化させる温度よりも低い温度で発現することが望ましい。また、異なる温度で還元性を発現する複数種のチキソトロピー付与剤を用いて、導電性ペーストの硬化の際に還元性を長期間持続させることが望ましい。なお、チキソトロピー付与剤の融点が高すぎると、還元性が発現しにくい。よって、チキソトロピー付与剤の融点は、50℃以上であることが好ましい。
なお、チクソトロピー付与剤は、溶融し液体となった状態で、還元性を有することが好ましい。チクソトロピー付与剤が常温時でも液体であると、樹脂や導電性フィラーに悪影響を与える可能性がある。
【0021】
チキソトロピー付与剤として好適な有機酸には、例えば、飽和脂肪族モノカルボン酸であるラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、不飽和脂肪族モノカルボン酸であるクロトン酸、飽和脂肪族ジカルボン酸であるシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、不飽和脂肪族ジカルボン酸であるマレイン酸、フマル酸、芳香族系カルボン酸であるフタルアルデヒド酸、フェニル酪酸、フェノキシ酢酸、フェニルプロピオン酸、アビエチン酸、アスコルビン酸などを用いることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いることもできる。有機酸は、カルボキシル基を2つ有することが、高い還元性が得られる点で好ましく、特に、炭素原子の数が10個以下であるものが好ましい。なかでも、一般的な導電性接着剤の硬化温度以下で溶融することから、アジピン酸がチキソトロピー付与剤として最も適している。
【0022】
チキソトロピー付与剤として好適な有機オニウム塩には、例えば、アミン塩酸塩であるエチルアミン塩酸塩、ジエチルアミン塩酸塩、ジメチルアミン塩酸塩、シクロヘキシルアミン塩酸塩、トリエタノールアミン塩酸塩、グルタミン酸塩酸塩、アミン臭化水素酸塩であるジエチルアミン臭化水素酸塩、シクロヘキシルアミン臭化水素酸塩などを用いることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0023】
導電性フィラーを構成する球状または略球状の粒子には、金属粒子を用いることが好ましい。例えば、金、銀、銅、ニッケルなどの金属単体またはこれらの2種以上からなる合金の粉末を用いることが好ましい。これらは単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いることもできる。あるいは、金属粒子として、スズ合金(例えばハンダ材料)を用いることもできる。ハンダ材料としては、例えばSnBi系合金およびこれにInを添加した合金、SnAg系合金、SnCu系合金、SnAgCu系合金およびこれらにBiおよび/またはInを添加した合金などが挙げられる。
【0024】
導電性フィラーの平均粒子径は、特に限定されないが、あまりに小さいと導電性ペーストの粘度が急増して、フィラーを少量しか添加できず、大きすぎると、導電性ペーストの粘度が低くなりすぎ、樹脂の保持ができなくなるため、1〜50μmが好ましく、10〜40μmが更に好ましい。
【0025】
熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ビスマレイミド樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、オキセタン樹脂など、様々な樹脂を含むことができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうちでは、特にエポキシ樹脂が好適である。
【0026】
熱硬化性樹脂は、単一の成分からなるものでもよいが、通常は、複数種の成分を含んでいる。例えば、エポキシ樹脂を含む硬化性樹脂は、エポキシ樹脂の硬化剤となる樹脂や硬化促進剤を含むことが多い。硬化剤となる樹脂は、エポキシ基と反応して架橋構造を形成する官能基を有する。硬化剤や硬化促進剤は、熱硬化性樹脂の構成要素として扱われる。
【0027】
エポキシ樹脂は、分子内に少なくとも1つのエポキシ基を有する。なかでも1分子あたり2個以上のグリシジル基を有するモノマーもしくはオリゴマーが好適である。エポキシ樹脂は、1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いてもよい。エポキシ樹脂のエポキシ当量は、特に制限されないが、例えば150〜1000の範囲が好適である。
【0028】
エポキシ樹脂には、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などが好適に用いられる。これらを変性させたエポキシ樹脂も用いられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
エポキシ樹脂の硬化剤には、例えば、酸無水物、フェノール誘導体、ポリアミン化合物、ジシアンジアミド、ジシアンジアミド誘導体、有機酸ヒドラジド、イミダゾール誘導体などを用いることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。硬化剤は、導電性ペーストの使用環境や用途に応じて、好適なものが選択される。
【0030】
導電性ペーストにおける、熱硬化性樹脂、導電性フィラーおよびチキソトロピー付与剤の含有量は、ペーストが上記粘度物性を有するように制御する。例えば、導電性フィラーの量は、熱硬化性樹脂100重量部あたり、25〜600重量部が好ましい。また、チキソトロピー付与剤の量は、熱硬化性樹脂100重量部あたり、1〜100重量部が好ましい。ただし、各成分の含有量は特に限定されない。
【0031】
次に、導電性ペーストを用いた電子部品の実装方法について説明する。ここでは、基板と、基板に実装された電子部品と、基板と電子部品とを接合する導電性ペーストとを含む機器の製造方法を中心に説明する。
まず、導電性ペーストを、基板の所定の領域に塗布する。例えば、プリント配線基板の特定の領域(例えばランド上)に導電性ペーストを供給する。導電性ペーストのプリント配線基板への供給は、例えばスクリーン印刷法、インクジェット法、スピンコート法などにより行うことができる。また、ディスペンサーを用いて、導電性ペーストをプリント配線基板の所定の領域に供給してもよい。
【0032】
スクリーン印刷法を用いる場合、導電性ペーストのプリント配線基板への供給は、所定のパターンの開口部を有するマスクを用いて行う。マスクを基板上に所定の位置に配置し、そのマスク上に適量の導電性ペーストを供給する。次に、スキージを導電性ペーストが供給されたマスクに押し付けながら移動させることにより、導電性ペーストを基板に印刷することができる。このとき、導電性ペーストの厚さを均一にするためには、金属製のマスク(メタルマスク)を用いることが好ましく、スキージはフッ素樹脂製であることが好ましい。導電性ペーストを印刷後、マスクは基板から除去される。
【0033】
プリント配線基板は、一般に、絶縁性材料からなる基板と、基板の少なくとも一方の面に接合された導電性材料からなる配線とで構成されている。絶縁性材料には、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネイト、ポリイミド、エポキシ樹脂、アラミド不織布、ガラス織布、ガラス不織布などが単独で、もしくは複合化して用いられる。配線となる導電性材料には、例えば、銅や金が用いられる。導電性ペーストの硬化物を配線として用いることもできる。プリント配線基板には、公知のものを特に限定なく、用いることができる。様々なプリント配線基板が商業的に入手可能である。
【0034】
次に、導電性ペーストが塗布された領域に、電子部品を配置する。電子部品は、特に限定されない。本発明の導電性ペーストは、電子部品を基板に表面実装する場合にも、挿入実装する場合にも用いることができる。電子部品は、そのリード(電極)が導電性ペーストと接触するように、基板に対して位置合わせして装着する。電子部品の装着の仕方は、電子部品の種類によって異なるが、表面実装の場合には、一般に、導電性ペーストの上に電子部品を載置するだけでよい。このような装着の仕方でも、後の加熱工程で導電性ペーストの粘度が低下し、電子部品のリードは導電性ペーストで十分に覆われる。もちろん、電子部品を導電性ペーストに押し付けて両者を十分に密着させてもよい。
【0035】
次に、電子部品と接した導電性ペーストを、チキソトロピー付与剤が還元性を発揮する第1温度にまで加熱する。第1温度には、例えばチキソトロピー付与剤の融点を選択することができる。導電性ペーストの温度がチキソトロピー付与剤の融点に達すると、チキソトロピー付与剤は液体となり、還元性が活性化する。このとき、導電性フィラーと、基板上のランドや電子部品のリードに形成されている酸化皮膜が還元される。ただし、チキソトロピー付与剤は、固体のままで還元性を発現する場合もある。
【0036】
第1温度は、特に限定されないが、例えば40〜200℃であることが好ましい。ただし、第1温度は一定値である必要はなく、変化してもよい。導電性ペーストの温度を、チキソトロピー付与剤が還元性を発揮する温度を通過させ、熱硬化性樹脂の硬化温度に至るまで、徐々に昇温するだけでもよい。
【0037】
次に、第1温度よりも高い第2温度まで導電性ペーストを加熱し、熱硬化性樹脂の硬化を進行させて、硬化を完了させる。第2温度は、熱硬化性樹脂の組成によって異なるが、例えば70〜250℃であることが好ましい。第2温度も一定値である必要はなく、変化してもよい。
【0038】
導電性ペーストは、熱硬化性樹脂の硬化が完了すると、導電性の硬化物となる。よって、電子部品と基板とが、導電性の硬化物によって、機械的に接合されると同時に、電気的にも接続され、実装が完了する。チキソトロピー付与剤が還元性を有する場合、導電性フィラーや電極が有する酸化皮膜は除去されるため、電気的接続の状態は良好となる。
【0039】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
《実施例1〜2》
表1に示す熱硬化性樹脂、導電性フィラーおよびチキソトロピー付与剤を、表2に示す割合で混合して、実施例1および2の導電性ペーストを調製した。
ここで、導電性ペーストに含まれる熱硬化性樹脂には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製の「エピコート828(商品名)」)と、イミダゾール系硬化剤(四国化成工業(株)製の「キュアゾール2P4MHZ(商品名)」)との混合物を用いた。チキソトロピー付与剤には、平均粒子径25μmになるまで粉砕したアジピン酸を用いた。また、導電性フィラーには、球状で平均粒子径8μmの銀粒子(福田金属箔工業(株)製の「シルコートAgC(商品名)」)または球状で平均粒子径32μmのSnBi合金(融点138℃)を用いた。
【0040】
《比較例1〜2》
チキソトロピー付与剤を添加しなかったこと以外、実施例1および2と同様にして、それぞれ比較例1および2の導電性ペーストを調製した。
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】

【0043】
[評価]
(粘度の測定)
各導電性ペーストについて、E型粘度計を用いて、25℃で、半径14mmのコーンを0.5rpmで回転させたときの2回転目の粘度(X0.5)を求めた。結果を表3に示す。
【0044】
(チキソトロピーの測定)
各導電性ペーストについて、E型粘度計を用いて、25℃で、コーンの回転速度を5rpmとしたときの3回転目の粘度(X5)を求めた。そして、X5に対するX0.5の比(X0.5/X5)を求めた。結果を表3に示す。
【0045】
(体積抵抗率の測定)
各導電性ペーストを、銅板上に円形(直径40mm)に塗布し、150℃で、15分間加熱して硬化させた。その後、得られた硬化物の体積抵抗値を、JIS−K 6911に準拠して測定した。結果を表3に示す。
【0046】
【表3】

【0047】
表3より、比較例1および2の導電性ペーストは、粘度(X5)やチキソトロピーが低いことがわかる。このため、比較例1および2の導電性ペーストを、25℃で3日間静置したところ、導電性フィラーの沈降が著しかった。一方、実施例1および2の導電性ペーストを、25℃で3日間静置したところ、導電性フィラーの沈降は、ほとんど見られなかった。
【0048】
また、比較例1および2の導電性ペーストを硬化させる際には、銅板上に塗布した導電性ペーストがだれ広がり、塗布面積が2倍に拡大した。一方、実施例1および2の場合、液だれがほとんど見られず、塗布面積は1.2倍にしか拡大しなかった。
【0049】
更に、実施例1の導電性ペーストの硬化物は、比較例1よりも、体積抵抗率が低くなっていた。これは、実施例1の導電性ペーストに含まれるアジピン酸が、導電性フィラーの酸化皮膜に対する還元性を発揮したためと考えられる。同様に、実施例2の導電性ペーストの硬化物は、比較例2よりも、体積抵抗率が低くなっていた。また、SnBi合金は酸化されやすい合金であるため、チキソトロピー付与剤の還元性が体積抵抗率に与える影響は大きく、実施例2と比較例2の体積抵抗率には顕著な差が生じた。実施例2では、比較例に比べて、導電性フィラーの粒子同士が充分に接合できたものと考えられる。
【0050】
《実施例3〜4》
チキソトロピー付与剤をシクロヘキシルアミン塩酸塩に変更し、導電性ペーストの組成を表5に示すように変更したこと以外、実施例1と同様に、導電性ペーストを調製し、同様に評価した。結果を表6に示す。
【0051】
【表4】

【0052】
【表5】

【0053】
【表6】

【0054】
表6の結果から、チクソトロピー付与剤として、シクロヘキシルアミン塩酸塩を用いた場合でも、体積抵抗率の小さい硬化物が得られることがわかる。また、チクソトロピー付与剤の量を増加させることにより、硬化物の体積抵抗率が低下することがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の導電性ペーストは、広範な用途に適用することができるが、特に、電子部品を含む機器の形成技術の分野において有用である。例えば、様々な電子部品を基板に実装する際の接合材料として好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂と、導電性フィラーと、チキソトロピー付与剤と、を含む導電性ペーストであって、
前記導電性フィラーは、球状または略球状の粒子からなり、
前記チキソトロピー付与剤は、有機酸および有機オニウム塩よりなる群から選択される少なくとも1種からなり、
前記チキソトロピー付与剤は、平均粒子径10〜40μmの固体粒子の状態で前記ペーストに含まれている、導電性ペースト。
【請求項2】
25℃でE型粘度計の回転速度を0.5rpmに設定して測定される前記ペーストの粘度:X0.5が100〜500Pa・sであり、25℃でE型粘度計の回転速度を5rpmに設定して測定される前記ペーストの粘度:X5に対するX0.5の比:X0.5/X5が2〜8である、請求項1記載の導電性ペースト。
【請求項3】
前記チキソトロピー付与剤が、前記導電性フィラーに対する還元性を有する、請求項1記載の導電性ペースト。
【請求項4】
前記有機酸が、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、クロトン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、フタルアルデヒド酸、フェニル酪酸、フェノキシ酢酸、フェニルプロピオン酸、アビエチン酸およびアスコルビン酸よりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1記載の導電性ペースト。
【請求項5】
前記有機オニウム塩が、エチルアミン塩酸塩、ジエチルアミン塩酸塩、ジメチルアミン塩酸塩、シクロヘキシルアミン塩酸塩、トリエタノールアミン塩酸塩、グルタミン酸塩酸塩、ジエチルアミン臭化水素酸塩、シクロヘキシルアミン臭化水素酸塩よりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1記載の導電性ペースト。
【請求項6】
基板と、前記基板に実装された電子部品と、前記基板と前記電子部品とを接合する請求項1記載の導電性ペーストとを含む機器。
【請求項7】
(a)請求項2記載の導電性ペーストを、基板の所定の領域に塗布する工程と、
(b)前記導電性ペーストが塗布された領域に、電子部品を配置する工程と、
(c)前記電子部品と接した前記導電性ペーストを、前記チキソトロピー付与剤が還元性を発揮する第1温度にまで加熱する工程と、
(d)前記第1温度よりも高い第2温度で、前記熱硬化性樹脂を硬化させる工程と、
を含む電子部品の実装方法。


【公開番号】特開2007−179772(P2007−179772A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−374366(P2005−374366)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】